説明

感熱記録材料

【課題】耐水性、未記録部の耐黄変性の良好な感熱記録材料を提供する。
【解決手段】支持体上に電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前躯体と加熱時反応して該染料前躯体を発色させる電子受容性化合物とを含有する感熱記録層と、該感熱記録層上に接着剤を含有する保護層を有する感熱記録材料において、該保護層中に接着剤としてアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含有し、該感熱記録層または該保護層に架橋剤として一般式(1)で表されるアルデヒド化合物を含有することを特徴とする感熱記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性、未記録部の耐黄変性の良好な感熱記録材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料は、一般に支持体上に熱により呈色する感熱記録層を設けたものであり、熱ヘッド、熱ペン、レーザー光等で加熱することにより、染料前駆体と顕色剤とが瞬時反応し記録画像が得られるものである。このような感熱記録材料は、比較的簡単な装置で記録が得られ、保守が容易なこと、騒音の発生がないこと等の利点があり、計測記録計、ファクシミリ、プリンター、コンピューターの端末機、ラベル印字機、乗車券、チケットの発券機等広範囲の分野に利用されている。
【0003】
ハンディターミナル用のような屋外で利用される端末機への用途や食品ラベル用途などで使用される感熱記録材料においては、水分によって印字面が剥がれ落ちることなどがないよう、耐水性が要求されている。
【0004】
感熱記録材料の耐水性を改良することを目的として、さまざまな構成を有する保護層を感熱記録層の上に形成する方法(例えば、特許文献1〜2参照)が提案されているが、未記録部が黄変する等の問題がある。
【0005】
一方、黄変を改良するためにさまざまな構成を有する感熱記録材料(例えば、特許文献3参照)が提案されているが、耐水性が不十分である。
【特許文献1】特開昭59−106995号公報
【特許文献2】特開平8−258426号公報
【特許文献3】特開平11−314457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、これらの問題点を解決し、耐水性、未記録部の耐黄変性の良好な感熱記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、課題を解決することができる本発明の感熱記録材料を発明するに到った。即ち、支持体上に電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前躯体と加熱時反応して該染料前躯体を発色させる電子受容性化合物とを含有する感熱記録層と、該感熱記録層上に接着剤を含有する保護層を有する感熱記録材料において、該保護層中に接着剤としてアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含有し、該感熱記録層または該保護層に架橋剤として一般式(1)で表されるアルデヒド化合物を含有することを特徴とする感熱記録材料である。
【0008】
【化1】

(式中、Rはアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、耐水性、未記録部の耐黄変性の良好な感熱記録材料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の内容をさらに具体的に説明する。本発明の感熱記録材料は、支持体上に熱により呈色する感熱記録層と、該感熱記録層上に接着剤を含有する保護層を有するものである。
【0011】
本発明の感熱記録材料には、保護層の接着剤としてアセトアセチル変性ポリビニルアルコールと、感熱記録層または保護層中に架橋剤として一般式(1)で表されるアルデヒド化合物が含有される。アセトアセチル変性ポリビニルアルコールと一般式(1)で表されるアルデヒド化合物を併用することによって、耐水性、未記録部の耐黄変性の良好な感熱記録材料を得ることができる。
【0012】
本発明において用いられる一般式(1)で表されるアルデヒド化合物の例としては、2,2−ジメトキシエタナール、2,2−ジエトキシエタナール、2−メトキシ−2−エトキシエタナール、2,2−ジプロポキシエタナール、2,2−ジブトキシエタナール、2,2−ジペントキシエタナール、2,2−ジヘキソキシエタナールなどが挙げられる。中でも、2,2−ジメトキシエタナールが好ましい。
【0013】
本発明において用いられる一般式(1)で表されるアルデヒド化合物の含有比率としては、保護層に添加する場合は、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール100質量部に対して、0.5〜30質量部含有させることが好ましく、1〜20質量部がより好ましい。感熱記録層に添加する場合は、感熱記録層中の全固形量の0.1〜20質量%含有することが好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0014】
本発明の感熱記録層または保護層には、本発明の所望の効果を損なわない限りにおいて、一般式(1)で表されるアルデヒド化合物と共にそれ以外の架橋剤も含有することができる。具体的には、ホウ酸、ホウ砂などのホウ素化合物、ジルコニウム、チタン、アルミニウムなどの2価以上の価数を有する金属化合物、ヒドラジド化合物、アミン化合物、エポキシ化合物、N−メチロール化合物、アジリジン化合物およびオキサゾリン化合物等を挙げることができる。
【0015】
本発明の保護層には、本発明の所望の効果を損なわない限りにおいて、その他の接着剤も使用できる。具体的には、完全ケン化または部分ケン化ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、スチレン・無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン・アクリル酸共重合体のアルカリ塩、スチレン・アクリル酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性樹脂、及びスチレン・ブタジエン系ラテックス、アクリル系ラテックス、ウレタン系ラテックス等の疎水性樹脂などが挙げられる。
【0016】
本発明の保護層には、白色度向上、サーマルヘッドへの印字カス防止などの目的に応じて顔料を添加することができる。例えば、水酸化アルミニウム、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、非晶質シリカ、非晶質ケイ酸カルシウム、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイトなどの白色無機顔料、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレンなどの単量体を主成分とする樹脂または、これらの単量体を主成分とする共重合樹脂などを殻とする有機中空粒子、貫通孔を有する有機顔料、開口部を有する有機顔料など公知の顔料が挙げられ、これらは、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0017】
本発明の保護層には、スティッキング性向上のために、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、カスターワックスなどのワックス類を添加することができる。その他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、耐水化剤などを適宜添加することができる。保護層の絶乾塗工量は0.2〜10g/m2が好ましく、0.5〜5g/m2がより好ましい。
【0018】
本発明の感熱記録材料を構成する感熱記録層は、各発色成分を微粉砕して得られる各々の水性分散液と樹脂などを混合し、支持体上に塗工、乾燥することにより得られる。
【0019】
感熱記録層には、顔料として、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、非晶質シリカ、非晶質ケイ酸カルシウム、コロイダルシリカ等の無機顔料、メラミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、ポリエチレン、ナイロン、スチレン、アクリル、炭化水素等からなる有機顔料を使用することができる。
【0020】
感熱記録層には、スティッキング改良等の目的から、滑剤を添加することができる。具体例としては、保護層の説明中に示した滑剤と同様のものが好ましく用いられる。
【0021】
感熱記録層には、耐光性向上等の目的から、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、分散・湿潤剤として、アニオン性、ノニオン性の高分子量のものを含む界面活性剤、さらには蛍光染料、消泡剤等が必要に応じて添加される。感熱記録層の塗工量は、十分な熱応答性を得るためには、通常染料前駆体の絶乾塗工量で0.05〜2.0g/m2が好ましく、0.1〜1.0g/m2がより好ましい。
【0022】
本発明で使用される無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体としては、一般の感圧記録紙、感熱記録紙などに用いられる公知の物質であれば特に制限されない。以下、具体的な例を挙げる。
(1)トリアリールメタン系化合物
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドなど。
【0023】
(2)ジフェニルメタン系化合物
4,4′−ビスジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミンなど。
【0024】
(3)キサンテン系化合物
ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−フェネチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェノキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−メチルフェニルアミノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなど。
【0025】
(4)チアジン系化合物
ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルーなど。
【0026】
(5)スピロ系化合物
3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3,3′−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジル−スピロ−ジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)−スピロピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピランなどを挙げることができる。またこれらの染料前駆体は必要に応じて単独、もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0027】
本発明の感熱記録材料を構成する感熱記録層に含有される電子受容性化合物としては、一般に感圧記録材料、または感熱記録材料で使用される酸性物質に代表されるが、これらに制限されることはない。例えば、フェノール誘導体、芳香族カルボン酸誘導体、N,N′−ジアリールチオ尿素誘導体、アリールスルホニル尿素誘導体、有機化合物の亜鉛塩などの多価金属塩、ベンゼンスルホンアミド誘導体、ウレアウレタン化合物等を挙げることができる。
【0028】
以下に、感熱記録層に含有される電子受容性化合物の具体例を挙げるが、必ずしもこれらの化合物に限定されるものではない。
【0029】
4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−n−プロポキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−メトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−エトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−n−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンジルオキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、3,4,4′−トリヒドロキシジフェニルスルホン、3,4,3′,4′−テトラヒドロキシジフェニルスルホン、2,3,4−トリヒドロキシジフェニルスルホン、3−フェニルスルホニル−4−ヒドロキシジフェニルスルホン、2,4−ビス(フェニルスルホニル)フェノール、
【0030】
4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシアセトフェノン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、4,4′−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、
【0031】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、4,4−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、没食子酸ベンジル、没食子酸ステアリル、ペンタエリスリトールテトラ(4−ヒドロキシ安息香酸)エステル、ペンタエリスリトールトリ(4−ヒドロキシ安息香酸)エステル、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールの重縮合物と4−ヒドロキシ安息香酸との脱水縮合物、
【0032】
N,N′−ジフェニルチオ尿素、4,4′−ビス[3−(4−メチルフェニルスルホニル)ウレイド]ジフェニルメタン、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−フェニル尿素、N−(ベンゼンスルホニル)−N′−[3−(4−トルエンスルホニルオキシフェニル)]尿素、N−(4−トルエンスルホニル)−N′−[3−(4−トルエンスルホニルオキシフェニル)]尿素、
【0033】
サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、サリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ビス(α−メチルベンジル)サリチル酸、4−[2′−(4−メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸、3−(オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸あるいはこれらサリチル酸誘導体の金属塩(例えば亜鉛塩)、
【0034】
N−(4−ヒドロキシフェニル)−4−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−4−トルエンスルホンアミド、N−フェニル−4−ヒドロキシベンゼンスルホンアミドなどである。
【0035】
本発明の感熱記録材料を構成する感熱記録層は、その熱応答性を向上させるために、熱可融性物質を含有させることができる。この場合、60〜180℃の融点を持つものが好ましく、特に80〜140℃の融点を持つものがより好ましく使用される。
【0036】
具体的には、ステアリン酸アミド、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、N−ステアリル尿素、ベンジル−2−ナフチルエーテル、m−ターフェニル、4−ベンジルビフェニル、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、α、α′−ジフェノキシキシレン、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル、アジピン酸ジフェニル、蓚酸ジベンジル、蓚酸ビス(4−メチルベンジル)エステル、蓚酸ビス(4−クロロベンジル)エステル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジベンジル、ベンゼンスルホン酸フェニルエステル、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、4−アセチルアセトフェノン、アセト酢酸アニリド類、脂肪酸アニリド類等公知の熱可融性物質が挙げられるが、高級脂肪酸アミドを用いた場合には、滑剤としても機能するためより好ましい。
【0037】
これらの化合物は単独もしくは2種以上併用して使用することもできる。また、十分な熱応答性を得るためには、感熱記録層の総固形分中、熱可融性物質が5〜50質量%を占めることが好ましい。
【0038】
感熱記録層に用いられる接着剤としては、保護層の場合と同様に通常の塗工で用いられる種々の樹脂を用いることができる。具体例としては、保護層の説明中に示した樹脂と同様のものが好ましく用いられる。中でもアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを用いると良好な耐水性が得られるため好ましい。
【0039】
本発明における感熱記録材料において使用する支持体としては、紙が主として使用されるが、紙の他に各種織布、不織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属箔、蒸着シート、或いはこれらを貼り合わせ等で組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に使用することができる。
【0040】
本発明における感熱記録材料は、必要に応じて支持体と感熱記録層の間に単層あるいは複数層の顔料あるいは樹脂等からなる下塗り層を1層以上設けることができる。本発明における感熱記録材料が下塗り層を設けたものである場合、その下塗り層の絶乾塗工量は、1〜30g/m2が好ましく、3〜20g/m2がより好ましい。
【0041】
下塗り層の顔料としては、一般的には焼成カオリンが使用されるが、それ以外にもケイソウ土、タルク、カオリン、重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、非晶質シリカ、非晶質ケイ酸カルシウム、コロイダルシリカ等の無機顔料、メラミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、ポリエチレン、ナイロン、スチレン、アクリル、炭化水素等からなる有機顔料を使用することができる。
【0042】
下塗り層の樹脂としては、保護層、感熱記録層の場合と同様に通常の塗工で使用される種々の水溶性樹脂または疎水性樹脂を使用することができる。具体例に関しては、保護層の説明中に示した。
【0043】
感熱記録層、保護層または下塗り層の形成方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の技術に従って形成することができる。具体的な例としては、エアナイフ塗工、ロッドブレード塗工、バー塗工、ブレード塗工、グラビア塗工、カーテン塗工、Eバー塗工などの方法により塗液を塗工し、乾燥により感熱記録層、保護層または下塗り層を形成させることができる。また、平版、凸版、フレキソ、グラビア、スクリーン、ホットメルト等の方式による各種印刷機等によって各層を形成させても良い。
【0044】
必要に応じて、下塗り層塗工後、感熱記録層塗工後、または保護層塗工後にスーパーカレンダー処理をし、画質を向上させることもできる。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。ただし、これらに限定されるものではない。なお以下に示す部、ならびに%はいずれも質量基準であり、塗工量は絶乾塗工量である。
【0046】
(実施例1)
下塗り層用塗液の作製
焼成カオリン〔商品名:アンシレックス、エンゲルハード社製〕100部、固形分濃度50%のスチレン/ブタジエン系ラテックス24部および水200部からなる組成物を混合攪拌して下塗り層用の塗液を得た。
【0047】
<分散液A>
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン200gを10%スルホン基変性ポリビニルアルコール水溶液200g、水600gの混合物中に分散し、ビーズミルで平均粒子径が1μmになるまで粉砕し分散液Aを得た。
【0048】
<分散液B>
2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン200gを10%スルホン基変性ポリビニルアルコール水溶液200gと水600gの混合物中に分散し、ビーズミルで平均粒子径が0.7μmになるまで粉砕し分散液Bを得た。
【0049】
<分散液C>
1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン200gを10%スルホン基変性ポリビニルアルコール水溶液200g、水600gの混合物中に分散し、ビーズミルで平均粒子径が1μmになるまで粉砕し分散液Cを得た。
【0050】
<分散液D>
沈降炭酸カルシウム〔商品名:Unibur−70 白石工業社製〕200gを0.2%ポリアクリル酸ナトリウム塩水溶液800g中に分散し、ホモジナイザーで5分間撹拌し、分散液Dを得た。
【0051】
感熱記録層用塗液の作製
上記の分散液を使用して、下記に示す配合で混合し、固形分濃度が17%の水分散液になるように添加水を加え、充分撹拌して感熱記録層塗液を作製した。
分散液A 30部
分散液B 70部
分散液C 70部
分散液D 50部
10%完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業社製、NM−11) 80部
40%ステアリン酸亜鉛分散液 10部
【0052】
<分散液E>
水酸化アルミニウム〔商品名:H−42 昭和電工社製〕200gを0.2%ポリアクリル酸ナトリウム塩水溶液800g中に分散し、ホモジナイザーで5分間撹拌し、分散液Eを得た。
【0053】
保護層用塗液の作製
下記に示す配合で混合し、固形分濃度が10%の水分散液になるように添加水を加え、十分攪拌して保護層用塗液を作製した。
分散液E 80部
10%アセトアセチル変性ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業社製、Z200) 150部
5%2,2−ジメトキシエタナール水溶液 15部
40%ステアリン酸亜鉛分散液 5部
【0054】
感熱記録材料の作製
坪量50g/m2の上質の中性紙の片面に、下塗り層用塗液の固形分塗工量が9g/m2、感熱記録層用塗液の固形分塗工量が染料前駆体の塗工量で0.5g/m2、保護層用塗液の固形分塗工量が2g/m2となるように順次塗工乾燥して下塗り層、感熱記録層および保護層を形成し、カレンダー処理を行って感熱記録材料を作製した。
【0055】
(実施例2)
実施例1の感熱記録材料の作製において、保護層用塗液に用いた5%2,2−ジメトキシエタナール水溶液15部を5%2,2−ジブトキシエタナール水溶液15部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0056】
(実施例3)
実施例1の感熱記録材料の作製において、感熱記録層用塗液に5%2,2−ジメトキシエタナール水溶液30部を添加し、保護層用塗液に5%2,2−ジメトキシエタナール水溶液15部を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0057】
(実施例4)
実施例1の感熱記録材料の作製において、感熱記録層用塗液に5%2,2−ジメトキシエタナール水溶液30部を添加した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0058】
(実施例5)
実施例1の感熱記録材料の作製において、感熱記録層用塗液に用いた10%完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業社製、NM−11)80部を10%アセトアセチル変性ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業社製、Z200)80部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0059】
(比較例1)
実施例1の感熱記録材料の作製において、保護層用塗液に用いた10%アセトアセチル変性ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業社製、Z200)150部を10%完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業社製、NM−11)150部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0060】
(比較例2)
実施例1の感熱記録材料の作製において、保護層用塗液に用いた5%2,2−ジメトキシエタナール水溶液15部を5%グリオキザール水溶液15部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0061】
(比較例3)
実施例1の感熱記録材料の作製において、保護層用塗液に用いた5%2,2−ジメトキシエタナール水溶液15部を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0062】
以上の実施例1〜5、比較例1〜3で作製した感熱記録材料を下記の評価に供した。その結果を表1に示す。
【0063】
[熱応答性試験]
オオクラエンジニアリング社製ファクシミリ試験機TH−PMDを使用して印字した。ドット密度8ドット/mm、ヘッド抵抗1685Ωのサーマルヘッドを使用し、ヘッド電圧21V、パルス幅1.6msecで通電して画像を得た。画像部の濃度をマクベスRD−918型反射濃度計(ビジュアルフィルター)にて測定した。
【0064】
[耐水性試験1]
熱応答性の評価で用いたパルス幅1.6msecで印字した感熱記録材料を20℃の水に24時間浸漬させた後、自然乾燥させて画像部の濃度をマクベスRD−918型反射濃度計(ビジュアルフィルター)にて測定した。
【0065】
[耐水性試験2]
熱応答性の評価で用いた感熱記録材料の記録面に水を10μl垂らし、記録面が内側になるように二つ折りにし、水滴を滴下した記録体上に100g/cm2の荷重をかけ23℃65%RHの環境下で24時間放置し、その後記録面を剥がし評価を行った。評価基準については下記に示す。
○:記録面の剥離が発生しない
×:記録面の剥離が全面に発生する
【0066】
[耐黄変試験]
熱応答性の評価で用いた感熱記録材料を50℃90%RHの環境下で24時間放置し、その後色差計(日本電色工業社製、PF10)を用いて、未記録部のb*値を測定した。評価基準については下記に示す。
○:b*値が2.0未満
×:b*値が2.0以上
【0067】
【表1】

【0068】
実施例1〜5は比較例1〜3に比べ、耐水性、未記録部の耐黄変性に優れる。前者は保護層中の接着剤としてアセトアセチル変性ポリビニルアルコール、感熱記録層または保護層に架橋剤として一般式(1)で表されるアルデヒド化合物を含有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前躯体と加熱時反応して該染料前躯体を発色させる電子受容性化合物とを含有する感熱記録層と、該感熱記録層上に接着剤を含有する保護層を有する感熱記録材料において、該保護層中に接着剤としてアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含有し、該感熱記録層または該保護層に架橋剤として一般式(1)で表されるアルデヒド化合物を含有することを特徴とする感熱記録材料。
【化1】

(式中、Rはアルキル基を示す。)