説明

感熱記録材料

【課題】表面が樹脂で形成された支持体とバック層との接着性が良好で、耐水性、バック層塗工液の安定性に優れ、粘着剤を設けた場合でもバック層の剥がれ・カール等の発生がない感熱記録材料の提供。
【解決手段】支持体の一方の面に感熱記録層を備え、他方の面にバック層を備える感熱記録媒体であって、前記支持体は、表面が樹脂で形成された支持体であり、前記バック層はコア−シェル型アクリル樹脂とオキサゾリン系樹脂、及び/または、コア−シェル型アクリル樹脂とオキサゾリン系樹脂との反応物を含むことを特徴とする感熱記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の多様化やニーズの拡大に伴い、情報記録分野において各種の記録材料が研究・開発され実用化されている。
中でも感熱記録材料は、(1)加熱プロセスのみによる簡易な画像の記録が可能であり、(2)必要な装置のメカニズムが簡単でコンパクト化が容易であり、記録材料が取扱い易く安価である、などという利点を有する。
【0003】
そのため、感熱記録材料は、情報処理分野(卓上計算機、コンピュータ等のアウトプット)、医療計測用のレコーダ分野、低速並びに高速ファクシミリ分野、自動券売機分野(乗車券、入場券等)、感熱複写分野、POSシステムのラベル分野、タブ分野等、多岐に亘って用いられており、例えば、耐湿気性包装材料面に貼付されるラベル等、一度貼付されたラベルを再び剥がす等、様々な用途に応じるために、折れ破れに強い物理強度、寸法安定性、水に溶けないなどの諸性質を同時に満足することが要求され、感熱記録材料の支持体として、合成紙又は合成樹脂フィルムが使用されることが多くなっている。
【0004】
また、特にPOSシステムのラベル分野、タブ分野等においては、裏面に粘着剤層を設けて使用されることが多く、永久接着を目的とする粘着剤、再剥離を目的とする粘着剤や、冷凍食品用ラベルに用いられる低温でも粘着力を有する粘着剤等、裏面に設けられる粘着剤の種類も多岐に亘っている。
【0005】
支持体に(紙に比べて)平滑度の高い合成紙やプラスチックフィルムを用いた場合、特に粘着層を設けると、カールが生じることがある。また、支持体と粘着層の間にバック層を設けると、バック層と支持体との接着性が低下して、そこから剥がれが生じることがある。
【0006】
前記剥がれやカールの原因は明らかにされていないが、支持体が合成紙やプラスチックフィルムであると、粘着剤中に含まれる可塑剤やタッキファイヤー(粘着付与剤)、乳化剤等の低分子量成分がバック層や支持体へ移行し、バック層の結着性を低下させたり、支持体の片面に可塑性が付与されたりすることが考えられる。
【0007】
特許文献1の特開平6−227119号公報には、感熱記録紙の紙支持体の裏面に、コア−シェル型アクリルエマルジョンと吸油量が50ml/100g未満の無機顔料とを含有するバックコート層を設け、バックコート層に対する粘着剤層の糊密着性を向上させ、耐水性を向上させることが開示されているが、バックコート層の成膜性が低く、バリア性が充分でなく、支持体が合成紙やプラスチックフィルムであると剥がれ・カールが生じてしまう。
また、バックコート層を硬化剤により硬化することができる旨記載されているが、これは、セルロース質支持体の耐水性をより強くする目的のために硬化剤を用いることができるとするものであって、粘着剤や支持体中の易マイグレーション性有機材料に起因する接着強度低下防止を目的とするものではない。
【0008】
また、特許文献2の特開2003−276330号公報には、感熱層及び保護層を紙支持体に塗工した後、裏塗り層を塗工し、感熱層及び保護層の形成時に生じたカールを矯正することが開示され、また、コア−シェル型アクリル樹脂を裏塗り層に用いることができる旨記載されているが、これは、親水性である紙の耐水性を向上させるためのもので、粘着剤や支持体中の有機材料のマイグレーションによる弊害防止に着目したものではない。また、裏塗り層自体の強度及び裏塗り層と支持体との接着強度が充分でない場合、支持体が合成紙やプラスチックフィルムであると経時により部分的に剥離、カールが生じてしまう。
【0009】
また、我々は先に、特許文献3の2005−81626号公報にて、感熱記録材料支持体の裏面と粘着剤との間に、非発泡性プラスチック中空フィラー、酸価が200以上で且つTgが80℃以上であるスチレン−アクリル共重合体及びアクリルエマルジョン樹脂を含有するバック層を炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸ジルコニウムアンモニウムにより強化することを提案しているが、この技術は、粘着剤層のアクリル系粘着剤と架橋反応させ、バック層−粘着剤層間の剥離を防止することがものであって、バック層−支持体間の剥がれを防止するものではない。
また、この感熱記録材料のバック層はある程度バリア性を有するものであるが、粘着剤中の揮発性有機材料による弊害に着目するものでなく、広範な粘着剤には適用できず、用いる粘着剤によっては、部分剥離によるカールが生じてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、表面が樹脂で形成された支持体とバック層との接着性が良好で、耐水性、バック層塗工液の安定性に優れ、粘着剤を設けた場合でもバック層の剥がれ・カール等の発生がない感熱記録材料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、特定水分散性高分子重合物と特定架橋剤とから形成された感熱記録材料の樹脂質支持体のバック層は、耐水性・密着性・耐久性に格別優れることを見いだし、これに基いてなされたものである。
すなわち、上記課題は本発明の下記(1)〜(10)によって解決される。
(1)「支持体の一方の面に感熱記録層を備え、他方の面にバック層を備える感熱記録媒体であって、前記支持体は、表面が樹脂で形成された支持体であり、前記バック層はコア−シェル型アクリル樹脂とオキサゾリン系樹脂、及び/または、コア−シェル型アクリル樹脂とオキサゾリン系樹脂との反応物を含むことを特徴とする感熱記録材料」、
(2)「前記オキサゾリン系樹脂の含有量がコア−シェル型アクリル樹脂1部に対して0.1部以上1.2部以下であることを特徴とする前記第(1)項に記載の感熱記録材料」、
(3)「前記支持体が合成紙であることを特徴とする前記第(1)項または第(2)項に記載の感熱記録材料」、
(4)「前記支持体が合成紙であり、該合成紙はポリプロピレンを含むことを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の感熱記録材料」、
(5)「支持体バック層側の表面の濡れ指数が40dyn/cm以上であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の感熱記録材料」、
(6)「前記バック層は、さらに帯電防止剤を含有するものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の感熱記録材料」、
(7)「前記帯電防止剤は、アクリル系ポリマーであることを特徴とする前記第(6)項に記載の感熱記録材料。」、
(8)「前記バック層上に粘着層が設けられた前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載の感熱記録材料」、
(9)「前記バック層上に粘着層が設けられ、該粘着層が再剥離可能な弱粘糊を含むことを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載の感熱記録材料」、
(10)「前記バック層上に粘着層が設けられ、該粘着層ホットメルト糊を含むことを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載の感熱記録材料」。
【発明の効果】
【0012】
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、本発明によれば、感熱記録材料の樹脂質支持体とバック層との接着性が良好で、耐水性、バック層塗工液の安定性に優れ、粘着剤を設けた場合でもバック層の剥がれ・カール等の発生がない感熱記録材料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の感熱記録材料について詳細に説明する。
(感熱記録材料)
本発明の感熱記録材料は、支持体と、バック層と感熱記録層とを備え、更に必要に応じて、粘着層、保護層、中間層などの他の部材を含む。
【0014】
(バック層)
本発明の感熱記録材料は、水分散性高分子重合物と架橋剤との反応物を含むバック層を有するものである。
前記水分散性高分子重合物は、アクリロニトリル基のような極めて高い親水性基含有高分子材料を必須成分とするコアとメタクリルアマイドのような親水性高分子材料と(メタ)アクリル酸の共重合体を必須成分とするシェルからなるコア−シェル型アクリル樹脂を含むものであり、かつ特定架橋剤による架橋処理後は、バリア性、耐水性、成膜性に優れるものとなる。
このようなコア−シェル型アクリル樹脂は、特開平6−227119号公報、特開平9−254555号公報、特開2000−158815号公報により従来公知であり、また、例えば、バリアスター(三井化学社製)の名称で市販されているものを採用することができる。
【0015】
また、前記コア−シェル型アクリル樹脂の特定架橋物が有する優れたバリア性、耐水性、成膜性を失わせない範囲で他の樹脂を併用することもできる。
前記コア−シェル型アクリル樹脂と併用できる樹脂としては、例えば、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリル樹脂エマルジョン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、変性澱粉、カゼイン、澱粉、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ゼラチンなどが挙げられる。
前記コア−シェル型アクリル樹脂の含有量は、感熱記録材料の使用目的等にもよるが、水分散性高分子重合物中50質量%以上であることが好ましく、さらに70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0016】
前記架橋剤は、オキサゾリン系樹脂を用いる。オキサゾリン系樹脂は、主鎖のポリマー鎖(アクリル系、スチレン系など)に弱いルイス塩基であるオキサゾリン基がグラフトした分子構造を有するものである。
前記オキサゾリン基は、開環して、あるいはそのまま付加する等、コア−シェル型アクリル樹脂表面に存在するカルボキシ基との様々な反応により、前記コア−シェル型アクリル樹脂と架橋反応またはグラフト反応し、バリア性、耐水性、耐溶剤性、耐熱性、強度等を向上させ、特に、乳化剤やタッキーファイヤーなどの低分子量物質によるバック層の剥離防止に非常に有効である。
【0017】
また、オキサゾリン系樹脂は、カルボキシル基との反応性が高いものであるが、常温での反応性はアジリジン基などに比べ低く、ゲル化が抑制されるため、バック層塗工液の安定性が向上する。
【0018】
オキサゾリン系樹脂の添加量は、コア−シェル型アクリル樹脂1部に対し、0.1部以上1.2部以下であることが好ましく、0.2部以上0.8部以下であることがさらに好ましい。0.1部未満では、耐水性が低下することがあり、1.2部を超えるとバリア性が低下し、剥がれが生じることがある。
【0019】
バック層の塗工量は1〜5g/mが好ましい。1g/m未満では、バリア性が充分ではなく、粘着剤層中に含まれる低分子量成分により、剥がれが生じたり、カールが生じたりする傾向がある。
【0020】
また、本発明の感熱記録材料のバック層には、必要に応じて帯電防止剤を添加することもできる。
前記帯電防止剤としては、多種多様なものが知られているが、バック層の帯電防止機能としては、表面抵抗値1010Ωcm以下が必要である。
この程度の導電性を付与できる帯電防止剤としては、大きく分けて界面活性剤を用いるもの、導電性ポリマーを用いるもの、導電性金属酸化物を用いるものがある。
前記界面活性剤を用いるものは、比較的安価であり、種類も豊富でまた帯電防止性能が優れるが、界面活性剤自体の水分の吸着によって導電性を実現しているものが多く、また導電性金属酸化物は吸湿性が高いものが多いため、湿度の影響を受けやすく、かつバック層の耐水性が低下することがあるため、導電性ポリマーを用いた帯電防止剤が好ましい。
中でも、アクリル系ポリマーを用いた帯電防止剤は、帯電防止性能が高く、かつ、バック層の耐水性が低下し難いため、好ましく使用できる。
帯電防止剤の含有量は、バック層固形分100部に対して25部以下であることが好ましい。
【0021】
(支持体)
本発明で使用される支持体は、表面が樹脂で形成された支持体であり、合成樹脂を主原料とする、合成紙、プラスチックフィルム、ラミネート紙、コート紙等が挙げられる。
前記合成樹脂としては、従来公知のポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン等を主原料とするものを使用できる。これらの中でも、合成紙が好ましい。
【0022】
前記合成紙としては、合成樹脂に無機フィラーおよび少量の添加剤を配合して、二軸延伸フィルム成形法により製造されたもの、合成樹脂を原料にして作られた樹脂ファイバーをバルプの代わりの原料とし、バインダー等を加えて抄紙機で製紙されたもの、従来の紙をベースにして表面をラミネートすることで耐水性、機械的強度を向上させたもの等を使用できる。前記合成樹脂としては、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0023】
前記支持体は密度が60〜150g/mであることが好ましく、60〜90g/mである低密度支持体であると、より発色性に優れて好ましい。支持体が低密度であると、支持体内に空気層が多くあることになり、優れた断熱効果を有し、サーマルヘッドからの熱エネルギーを有効に感熱発色層に吸収させて発色性が向上する。
密度が90g/mを超えると、断熱効果が少なくなるために発色性が低下することがあり、また密度が60g/m未満になると、支持体の剛性が脆弱になり、寸法安定性、物理強度に劣り、合成紙またはプラスチックフィルムの必要とする機能をなさず実用的でないものになる。
【0024】
本発明の支持体は、濡れ指数が30dyn/cm以上であることが好ましく、40dyn/cm以上であることがさらに好ましい。
濡れ指数が30dyn/cm未満であると塗膜の形成が困難になる。
本発明における濡れ指数とは、JIS K6768に規定されている濡れ性試験法により測定した値である。具体的には、市販されている濡れ性標準試薬を綿棒に浸し、これを支持体の表面に塗布することにより測定した値である。
【0025】
(粘着層)
本発明の感熱記録材料は、必要に応じてバック層上に粘着層を設けることができる。
本発明のバック層はバリア性に優れ、粘着剤の影響を受けにくいため、感熱記録材料の使用目的に応じて、従来から感熱記録材料に使用されている様々な粘着剤を使用することができ、例えば、一般糊、再剥離可能な弱粘糊、冷凍用糊、ホットメルト糊等を使用できる。
【0026】
前記粘着層は、例えば従来公知のバーコーター、ロールコーター、アプリケーター、ホットメルトコーター等により塗工後、熱風乾燥、赤外線、マイクロ波、高周波等の乾燥を行い作製される。
粘着層の塗布量は、乾燥重量で5〜50g/m程度の範囲で調節される。粘着剤は剥離紙の剥離剤面に塗工してもよく、感熱記録材料のバック層上に塗工してもよい。
【0027】
(感熱記録層)
感熱記録層は、一般に水を分散媒体とし、ロイコ染料、電子受容性酸性物質、必要により増感剤、保存性改良剤などを共に、あるいは別々にボールミル、アトライター、サンドミルなどの撹拌・粉砕機により平均粒子径が2μm以下となるように微粉砕した後、水性結合剤を添加して調製された感熱記録層用塗液を支持体の一方の面に塗布乾燥して形成されるが、乾燥後の塗工量は通常2〜8g/m2、好ましくは3〜6g/m2程度である。また感熱記録層の表面をスーパーカレンダー、グロスカレンダー、マシンカレンダー等により平滑化処理をすることにより、記録濃度、感度を向上させることができる。
【0028】
本発明で用いられるロイコ染料は電子供与性を示す化合物であり、単独または2種以上混合して適用されるが、それ自体無色或いは淡色の染料前駆体であり、特に限定されず従来公知のもの、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチジアン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好ましく用いられ、また二種以上の化合物を併用することもできる。
【0029】
また、本発明で用いられる顕色剤としては、前記ロイコ染料に対して加熱時に反応して、これを発色させる、フェノール性化合物、有機または無機酸性化合物あるいはそれらエステルや塩など、種々の電子受容性物質が好ましく用いられ、また二種以上の化合物を併用することもできる。
【0030】
また、本発明の感熱記録層においては、前記ロイコ染料及び顕色剤と共に、必要に応じて、更に、この種の感熱記録材料に慣用される補助添加成分、例えば、水溶性高分子及び/又は水性エマルジョン樹脂、フィラー、熱可融性物質、界面活性剤等を併用することができる。
【0031】
前記フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、タルク、表面処理されたカルシウムやシリカ等の無機系微粉末の他、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂等の有機系の微粉末を挙げることができ、また熱可融性物質としては、例えば、高級脂肪酸又はそのエステル、アミド又は金属塩の他、各種ワックス類、芳香族カルボン酸とアミンとの縮合物、安息香酸フェニルエステル、高級直鎖グリコール、3,4−エポキシ−ヘキサヒドロフタル酸ジアルキル、高級ケトン、p−ベンジルビフェニル、その他の熱可融性有機化合物等の50〜200℃の程度の融点を持つものが挙げられる。
【0032】
(保護層)
本発明において耐薬品性、耐水性、ヘッドマッチング性向上のために感熱記録層上に保護層を設けることができる。
保護層は、顔料及び樹脂を主成分とするが、主に用いられる顔料はホスフェートファイバー、チタン酸カリウム、針状水酸化マグネシウム、ウィスカー、タルク、マイカ、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、板状炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、板状水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、カオリン、焼成クレー、ハイドロタルイサイト等の無機フィラーや架橋ポリスチレン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、シリコーン樹脂、架橋ポリメタクリル酸メチルアクリレート樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂等の有機フィラーが挙げられる。
【0033】
保護層に用いられる樹脂として、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、澱粉及びその誘導体、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸及びその誘導体、スチレン/アクリル酸共重合体及びその誘導体、ポリ(メタ)アクリルアミド及びそれらの誘導体、スチレン/アクリル酸/アクリルアミド共重合体、アミノ基変性ポリビニルアルコール、エポキシ変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、水性ポリエステル、水性ポリウレタン、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体及びその誘導体等の水溶性樹脂や、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル酸エステル系(共)重合体、スチレン/アクリル系共重合体、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル及びこれらの誘導体が挙げられるが、中でも水溶性樹脂が好ましい。
【0034】
更には保護層の耐水性を向上させるために、耐水化剤を共に用いることが特に好ましく、具体例としては、グリオキザール、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂等が挙げられる。
【0035】
また、保護層には上記の顔料および樹脂の他に、従来より用いられている補助添加成分、例えば界面活性剤、熱可融物質、滑剤、圧力発色防止剤などを併用することができる。この場合、熱可融物質の具体例としては、前記感熱記録層との関連において例示されたものと同様なものが挙げられる。
【0036】
本発明においては、さらに支持体と感熱記録層との間に、発色性、平滑性、接着性の向上などの必要に応じて顔料、バインダー、熱可融性物質、中空フィラーなどを含有する中間層を設けることができる。
【0037】
本発明の感熱記録材料の記録方法は使用目的によって、熱ペン、サーマルヘッド、レーザ加熱等を使用でき、特に限定されない。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。
なお、以下における部および%はいずれも重量基準である。
【0039】
(実施例1)
(1)感熱記録層塗布液の調製
[A液]染料分散液
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン 10部
10%イタコン酸変成ポリビニルアルコール水溶液 10部
水 30部
[B液]顕色剤分散液
4−イソプロポキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン 30部
シュウ酸ジ−(p−メチルベンジル) 10部
10%イタコン酸変成ポリビニルアルコール水溶液 50部
シリカ 15部
水 197部
【0040】
上記組成からなる[A液]および[B液]をそれぞれ平均粒径が2μm以下になるようにサンドミルを用いて分散して染料分散液[A液]、顕色剤分散液[B液]を調製した。
続いて、以下のように攪拌配混合して、感熱記録層塗布液[C液]を調製した。
[C液]感熱記録層塗布液
染料分散液[A液] 50部
顕色剤分散液[B液] 292部
【0041】
(2)保護層塗布液の調製
[D液]
水酸化アルミニウム 10部
10%イタコン酸変成ポリビニルアルコール水溶液 80部
25%ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂 16部
30%ステアリン酸亜鉛分散体 25部
水 164部
上記組成の材料を攪拌混合して、保護層塗布液[D液]を調製した。
【0042】
(3)バック層塗布液の調製
[E液]
コアシェル型アクリルエマルション(固形分20%) 64部
(三井化学製 バリアスターB−2000)
オキサゾリン系架橋剤(固形分39%) 13部
(日本触媒製 エポクロスWS−500)
水 23部
上記組成のように各薬品を攪拌混合して、バック層塗布液[E液]を調製した。
【0043】
次に支持体として厚み100μmのポリプロピレンフィルムを含む合成樹脂(PL−100、NAN YA PLASTICS CORP.製;密度:76g/m 表面濡れ性:32dyn/cm) の表面に、感熱層および保護層を各々乾燥後の付着量が5.0g/m 、3.5g/mになるように順次塗布乾燥し、裏面にバック層を乾燥後の付着量が2.0g/m となるように塗布乾燥し、キャレンダー掛けにより、保護層の表面の王研式平滑度が約1000秒になるように処理した。そして、40℃環境で2日間キュアを行い、実施例1の感熱記録材料を得た。
さらに、バック層表面に下記3種類の粘着層各々を設け、その粘着層上に剥離紙を順次設けて、常温環境下で4日間保管して、各々の粘着層を有する実施例1の感熱記録材料を得た。
3種類の粘着層として、ホットメルト粘着剤(MQ7829W、ヘンケルジャパン株式会社製)を付着量が15g/mとなるように塗布した粘着層、アクリルエマルジョン粘着剤(一般糊)(AT1202、サイデン化学株式会社製)を付着量が15g/mとなるように塗布した粘着層、及び、アクリルエマルジョン粘着剤(弱粘糊)(PA−310、株式会社レヂテックス製)を付着量が15g/mとなるように塗布した粘着層を用いた。
【0044】
(実施例2)
実施例1の支持体を厚み100μmのポリプロピレンフィルムを含む合成樹脂(PL−100、NAN YA PLASTICS CORP.製;密度:76g/m 表面濡れ性:40dyn/cm)とした以外は実施例1と同様にして実施例2の感熱記録材料を得た。
【0045】
(実施例3)
実施例1の支持体を厚み100μmのPETフィルム(密度:140g/m 表面濡れ性:32dyn/cm)とした以外は実施例1と同様にして実施例3の感熱記録材料を得た。
【0046】
(実施例4)
実施例1の[E液]中のオキサゾリン系架橋剤の添加量を33部、水の添加量を46部とした以外は実施例1と同様にして実施例4の感熱記録材料を得た。
【0047】
(実施例5)
実施例1の[E液]中のオキサゾリン系架橋剤の添加量を2部、水の添加量を9部とした以外は実施例1と同様にして実施例5の感熱記録材料を得た。
【0048】
(実施例6)
実施例1の[E液]中に帯電防止剤:ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(三洋化成製 ケミスタットSA−101 固形分33%)を8部添加した以外は実施例1と同様にして実施例6の感熱記録材料を得た。
【0049】
(実施例7)
実施例1の[E液]中に帯電防止剤:アクリル系ポリマー(新中村化学製 WS−52U 固形分10%)を26部添加した以外は実施例1と同様にして実施例7の感熱記録材料を得た。
【0050】
(実施例8)
実施例7の支持体を厚み100μmのポリプロピレンフィルムを含む合成樹脂(PL−100、NAN YA PLASTICS CORP.製;密度:76g/m 表面濡れ性:40dyn/cm)とした以外は実施例7と同様にして実施例8の感熱記録材料を得た。
【0051】
(比較例1)
実施例1の支持体を厚み100μmの紙(密度:105g/m)とした以外は実施例1と同様にして比較例1の感熱記録材料を得た。
【0052】
(比較例2)
実施例2の[E液]中のコアシェル型アクリルエマルションを除き、水の添加量を16部とし、実施例2と同様にして比較例2の感熱記録材料を得た。
【0053】
(比較例3)
実施例2の[E液]中のコアシェル型アクリルエマルションの代わりに水溶性アクリル(BASF製 ジョンクリル63J 固形分30%)とし、添加量を34部とし、オキサゾリン系架橋剤を除いた以外は実施例2と同様にして比較例3の感熱記録材料を得た。
【0054】
(比較例4)
比較例2の[E液]中の水溶性アクリルの代わりにアクリルエマルション(BASF製 ジョンクリルPDX−7370 固形分42%)とし、添加量を17部とした以外は比較例2と同様にして比較例4の感熱記録材料を得た。
【0055】
(比較例5)
実施例2の[E液]中のオキサゾリン系架橋剤を除き、水の添加量を29部とした以外は実施例2と同様にして比較例5の感熱記録材料を得た。
【0056】
(比較例6)
実施例2の[E液]中のオキサゾリン系架橋剤の代わりにカルボジイミド系架橋剤(日清紡製 カルボジライトV−02−L2 固形分40%)とした以外は実施例2と同様にして比較例6の感熱記録材料を得た。
【0057】
(比較例7)
実施例2の[E液]中のオキサゾリン系架橋剤の代わりにポリアミドエピクロロヒドリン系架橋剤(星光PMC製 WS−4024 固形分25%)とし、添加量を21部とし、水の添加量を15部とした以外は実施例2と同様にして比較例7の感熱記録材料を得た。
【0058】
(比較例8)
実施例2の[E液]中のオキサゾリン系架橋剤の代わりにジルコニウム系架橋剤(日本軽金属製 ベイコート20 固形分20%)とし、添加量を26部とし、水の添加量を10部とした以外は実施例2と同様にして比較例8の感熱記録材料を得た。
【0059】
(比較例9)
実施例2の[E液]中のオキサゾリン系架橋剤の代わりにアジリジン系架橋剤(日本触媒製 ケミタイトPZ−33 固形分100%)とし、添加量を5部とし、水の添加量を31部とした以外は実施例2と同様にして比較例9の感熱記録材料を得た。
【0060】
(比較例10)
実施例2の[E液]中のコアシェル型アクリルエマルションの代わりにアクリルエマルション(BASF製 ジョンクリルPDX−7370 固形分42%)とし、添加量を29部とし、水の添加量を59部とした以外は実施例2と同様にして比較例10の感熱記録材料を得た。
【0061】
作製した感熱記録材料の耐水性、基材−バック層間の密着性、基材−バック層間の密着性の経時変化、ホットメルト糊粘着ラベルのカール、及びバック層塗布液の安定性を以下の方法により評価した。
評価結果を表1に示す。
【0062】
(耐水性)
各感熱記録材料の粘着剤を設けずにキュアまで行ったサンプルにおいて、30分間水に浸したあと、バック層が塗られた面を指で擦り、バック層が剥がれるまでの回数を測定した。
◎:耐水指こすり51回以上
○:耐水指こすり31〜50回
×:耐水指こすり30回以下
【0063】
(基材−バック層間の密着性)
各感熱記録材料の粘着剤を設けずにキュアまで行ったサンプルにおいて、30分間水に浸したあと、バック層が塗られた面にテープを張り、剥がし方とバック層の剥がれ状態を評価した。
◎・・・テープをサンプルに対し90度で急速に剥離してもバック層の剥がれなし。
○・・・テープをサンプルに対し90度で急速に剥離するとバック層が剥がれる。
△・・・テープをサンプルに対し90度でゆっくり剥離してもバック層が剥がれる。
×・・・テープをサンプルに対し180度でゆっくり剥離してもバック層が剥がれる。
【0064】
(糊を塗った後の基材−バック層密着力経時変化)
バック層上に、一般糊を含む粘着層、再剥離可能な弱粘糊を含む粘着層を、それぞれ設けた各感熱記録材料を40℃90%RH環境下で1週間保管した後、糊面とテープを張り合わせ、70m/minの速度でテープを剥離させ、バック層の剥がれ状態を評価した。
○:バック層と基材の間ではがれず、糊面中あるいは糊面とバック層との間で剥がれる。
あるいはテープが破断する。
△:一部バック層と基材の間で剥がれる。
×:バック層と基材の間で剥がれる。
【0065】
(ホットメルト糊粘着ラベルのカール)
ホットメルト粘着剤を含む粘着層を有する各感熱記録材料の剥離紙を剥がし、20℃65%RH環境下で3時間調湿後にカール量(mm)を測定した。
【0066】
(バック層塗工液の安定性)
バック層液を調合後、常温環境下で放置し、液が増粘、白濁するまでの時間を測定した。
○・・・4日以上30日未満問題なし。
△・・・1日以上4日未満問題なし。
×・・・24時間未満で液の異常が確認される。
【0067】
【表1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開平6−227119号公報
【特許文献2】特開2003−276330号公報
【特許文献3】特開2005−81626号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一方の面に感熱記録層を備え、他方の面にバック層を備える感熱記録媒体であって、前記支持体は、表面が樹脂で形成された支持体であり、前記バック層はコア−シェル型アクリル樹脂とオキサゾリン系樹脂、及び/または、コア−シェル型アクリル樹脂とオキサゾリン系樹脂との反応物を含むことを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
前記オキサゾリン系樹脂の含有量がコア−シェル型アクリル樹脂1部に対して0.1部以上1.2部以下であることを特徴とする請求項1に記載の感熱記録材料。
【請求項3】
前記支持体が合成紙であることを特徴とする請求項1または2に記載の感熱記録材料。
【請求項4】
前記支持体が合成紙であり、該合成紙はポリプロピレンを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項5】
支持体バック層側の表面の濡れ指数が40dyn/cm以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項6】
前記バック層は、さらに帯電防止剤を含有するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項7】
前記帯電防止剤は、アクリル系ポリマーであることを特徴とする請求項6に記載の感熱記録材料。
【請求項8】
前記バック層上に粘着層が設けられた請求項1乃至7のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項9】
前記バック層上に粘着層が設けられ、該粘着層が再剥離可能な弱粘糊を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項10】
前記バック層上に粘着層が設けられ、該記粘着層ホットメルト糊を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の感熱記録材料。

【公開番号】特開2013−49265(P2013−49265A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166109(P2012−166109)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】