説明

感震システム

【課題】設置コストおよび設置スペースを増大させずに、地震による振動とそれ以外の原因による振動とを正確に区別することが可能な、信頼性の高い感震システムを提供することを課題とする。
【解決手段】建物の揺れを感知する感震システム1を、建物に設けられ、振動を検知する複数のセンサユニット7、8と、センサユニット7、8によって同時に振動が検知された場合に、建物が揺れていると判定する、制御ユニット2と、を備え、センサユニット7、8は、制御ユニット2にカスケード接続され、センサユニット7、8に対して地震に起因する振動が与えられた場合に、センサユニット7、8が一の地震から略同一の振動を取得し得る位置に、一の人間または動物が同時にセンサユニット7、8に対して振動を与え得る間隔よりも長い間隔をもって設けられる、感震システム1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の揺れを感知する感震システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体内に3つの感震部を収め、そのうち2つ以上の感震部が揺れを検出したときに、制御信号を出力する感震器がある(特許文献1を参照)。
【0003】
また、検出された加速度に係る信号を所定のフィルタにかけて異常性を判断することで、振動異常の検出制度を向上させた感震器があり(特許文献2を参照)、加速度センサの出力信号をレベル弁別し、断続的に弁別レベル以上の出力が所定時間以上にわたって得られるときに、地震による振動であると弁別する、振動の種類の弁別方法がある(特許文献3を参照)また、加速度が第1の加速度以上であるときに刻時動作を開始し、その後加速度が所定の時間以上連続して第2の加速度以上であるときに、遮断弁を用いてガスを遮断するガスメータがある(特許文献4を参照)。
【0004】
また、地震等の異常が検出された場合に、ガスを遮断するガス遮断装置がある。
【特許文献1】特開2000−28737号公報
【特許文献2】特開2000−346701号公報
【特許文献3】特開平08−304555号公報
【特許文献4】特開2001−59761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、地震等の揺れを感知するために、加速度センサ等を備えた感震器が用いられている。感震器は、揺れを感知した場合に、制御信号等を出力し、外部機器に地震への対応を行わせる(例えば、ガスの供給を止める)ことで、地震発生時に建物や交通等の安全を確保する上で重要な機器である。しかし、この種の機器は、地震が発生していない時に地震が発生していると誤認したり、地震が発生している場合に地震が発生していないと誤認したりといった誤動作があると、その誤動作の影響や波及効果が大きい。例えば、人または何らかの物体が衝突したときの振動を地震の発生として誤検出してガスの供給が遮断され、ガスの供給が遮断されたガスメータを復旧するためにサービスマンなどの作業者が出動するとすれば、大きな労力と費用が必要となる。特に、ガスメータは極めて多数の個所で使用されているために、誤作動による遮断を確実に防ぐこと、即ち、システムの高い信頼性が要求される。
【0006】
信頼性を確保するために複数のセンサを備えて2個以上のセンサが揺れを検知した場合に地震と判断する感震器等があるが、このような感震器によっても、動物によって与えられる振動や、人によって誤ってまたは悪戯で与えられる振動による誤作動の虞がある。また、このような誤作動を防ぐために、従来は、感震器をカバーで覆ったり、建物に感震器を設置するためのピットを設けたりといったことが行われてきた。しかし、このような設置方法では感震器のサイズ以上に大きな空間が必要となり、また、建物改修時に感震器を追加設置することは困難である。
【0007】
更に、センサが設置される場所は、機械室等、外乱ノイズの大きい場所であることが多い。このような場所にセンサを配置した場合、通信距離が長くなると(例えば10m以上のケーブルを用いた通信等)、外乱ノイズの影響で通信内容の信頼性が低下し、最悪通信が不可能となるという問題が発生する。また、この問題に対処するためにシールドケーブ
ルを使用すると、ケーブルが高価となる、ケーブル径が大きくなる、等の理由で、設置コストや設置スペースの問題が生じてしまう。
【0008】
本発明の目的は、設置コストおよび設置スペースを増大させずに、地震による振動とそれ以外の原因による振動とを正確に区別することが可能な、信頼性の高い感震システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記した課題を解決するために、複数のセンサユニットを所定の間隔をもって設けることで、設置コストおよび設置スペースを増大させずに、地震による振動とそれ以外の原因による振動とを正確に区別することが可能な、信頼性の高い感震システムを提供することを可能にした。
【0010】
詳細には、本発明は、建物の揺れを感知する感震システムであって、前記建物に設けられ、振動を検知し、振動が与えられた場合に発生するアナログ信号をデジタル信号へ変換する複数のセンサユニットと、前記センサユニットにおいて変換されて出力されたデジタル信号を受信して、少なくとも2の前記センサユニットによって同時に振動が検知された場合に、前記建物が揺れていると判定する、判定ユニットと、を備え、前記複数のセンサユニットは、前記判定ユニットにカスケード接続され、該複数のセンサユニットに対して地震に起因する振動が与えられた場合に、該複数のセンサユニットが一の地震から略同一の振動を取得し得る位置に、一の人間または動物が同時に2以上の前記センサユニットに対して振動を与え得る間隔よりも長い間隔をもって設けられる、感震システムである。
【0011】
本発明に係る感震システムは、センサユニットによって検知された振動に基づいて建物の揺れを感知する感震システムである。本感震システムは、誤判定を防止するために、センサユニットが所定の間隔をもって設けられ、少なくとも2のセンサユニットによって同時に振動が検知された場合に建物が揺れていると判定する。このようにすることで、センサユニットの故障等に起因する誤判定を防止可能であるのみならず、動物や人によってセンサユニットに与えられた振動を建物の揺れとして誤判定することを防止することが可能である。
【0012】
ここで、所定の間隔とは、建物の揺れのみが2以上の前記センサユニットに対して同時に振動を与え得る間隔であり、例えば、前記所定の間隔は、一の人間または動物が同時に2以上の前記センサユニットに対して振動を与え得る間隔よりも長い間隔である。
【0013】
また、前記複数のセンサユニットは、該複数のセンサユニットに対して地震に起因する振動が与えられた場合に、該複数のセンサユニットが一の地震から略同一の振動(振動波形)を取得し得る位置に設けられる。複数のセンサユニットがこのような位置に設けられることで、誤作動または誤検知を防止しつつ、異なる振動波形が取得されてしまうことを防止することが可能となる。
【0014】
また、判定ユニットがセンサユニットより受信する信号をデジタル信号とすることで、高電圧機器等からのノイズの影響を低減させ、センサユニット同士、またはセンサユニットと判定ユニットとを、従来に比べて離れた位置に設置することが可能となる。即ち、アナログ通信を採用した場合に比べてより離れた位置に夫々のユニットを設置することが可能となり、より効果的に誤作動、誤検知を防止することが出来る。この際、各ユニット間の通信方式として、CAN通信方式が採用されてもよい。
【0015】
更に、複数のセンサユニットをカスケード接続することで、ユニット間の配線量を少なくすることが可能となり、既設建物で配線を配置することが出来る空間が少ない場合にも
、容易に感震ユニットを追加設置することが出来る。また、設置に必要なコストも従来に比べて少なく済ませることが可能である。
【0016】
また、前記所定の間隔は、一のセンサユニットに与えられた、前記建物全体を揺らさない振動が、他のセンサユニットによって検知されない間隔であってもよい。即ち、本発明に係る複数のセンサユニットは、動物や人が同時に触れることができない間隔を互いにもって設置され、また、一つのセンサユニットに与えられた、地震等以外による振動が、他のセンサユニットに伝わらないか、伝わったとしても地震として誤検知されない程度に十分に減衰する間隔を互いにもって設置されることが好ましい。
【0017】
また、前記複数のセンサユニットは、例えば、夫々独立した筐体に加速度センサが納められたセンサユニットである。センサユニットが各々独立した筐体からなることで、前記所定の間隔をおいてセンサユニットを配置することが容易となる。
【0018】
また、前記判定ユニットは、前記複数のセンサユニットの夫々を一対一で管理する複数の処理部を有し、前記複数の処理部の夫々は、管理するセンサユニットから取得した情報を、他の処理部から取得することで、管理するセンサユニットの状態を相互に監視してもよい。
【0019】
即ち、本発明に係る感震システムは、センサユニットごとにこのセンサユニットからの信号を受け付け、センサユニットを管理する専用の処理部を有する。そして、各処理部は、他の処理部から、他の処理部が管理するセンサユニットの情報を取得して他の処理部によって管理されるセンサユニットを監視する。このようにして、独立したセンサユニットを一対一で管理する処理部同士が、互いに管理するセンサユニットの状態を監視することで、単一の処理部が複数のセンサを管理する従来の方式に比べて、システム全体の信頼性が高まり、誤動作、誤判定の確率を非常に低い確率に抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によって、設置コストおよび設置スペースを増大させずに、地震による振動とそれ以外の原因による振動とを正確に区別することが可能な、信頼性の高い感震システムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る感震システムの実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る感震システムの構成を示す図である。感震システム1は、2つのセンサユニット7、8と、センサユニット7、8から取得した信号に基づいた演算を行い、必要に応じて演算結果の表示を行う制御ユニット2と、を備える。
【0023】
図2は、本実施形態に係る感震システム1の外観における構成を示す図である。本実施形態では、複数のセンサユニット7、8は、別々の筐体に収められ、建物の地下フロアの壁に設置される。ここで、2つのセンサユニット7、8は、保守等の目的のため、人がアクセス可能な位置に設ける必要があるが、本実施形態では、更に、誤判定の防止のため、少なくとも人間が両腕を広げても両方のセンサユニット7、8に同時に触れることが出来ない程度の距離(所定の間隔)をおいて設置される。また、センサユニット7、8は、この間隔をおきつつ、地震発生時に、センサユニット7、8より受信した情報に基づいてCPU31、41によって算出された振動波形が非類似の振動波形となってしまうことのない位置(換言すると、略同一の振動波形が得られる位置)に設けられる。また、感震システム1から出力される制御信号は、ガス供給系統の操作を行う操作盤9へ入力される。操作盤9は、ガス配管に設置された遮断弁91の制御を行うことで、ガス器具へのガス供給
を制御する。
【0024】
図3および図4は、本実施形態における感震システム1のセンサユニット7、8の配置を示す図である。本実施形態では、センサユニット7、8は、同一の壁または柱に、上記所定の間隔をおいて取り付けられる。ここで、センサユニット7、8は、壁や柱の同一の面に取り付けられてもよいし(図3を参照)、壁や柱の異なる面、例えば、直交する面に取り付けられてもよい(図4を参照)。即ち、センサユニット7、8をある程度離れた位置に取り付けることで、誤ってまたは悪戯で2つのセンサユニット7、8に同時に振動を与えることを出来なくしつつ、2つのセンサユニット7、8を単一の構造物(連続した一の壁や柱)に取り付けることで、2つのセンサユニット7、8から略同一の振動が得られるようにしている。特に、異なる面に取り付けられた場合には、誤ってまたは悪戯で2つのセンサユニット7、8に同時に振動を与えることがより困難である。なお、複数のセンサユニットの配置は、上記した例に限定されるものではなく、人または動物による誤検知を防止可能で、一の地震から略同一の振動が得られる位置であればよい。例えば、複数のセンサユニットは、フロア内の異なる部屋に設置されるか、または同一の部屋内の対向する壁に夫々設けられてもよい。
【0025】
制御ユニット2は、本発明の判定ユニットに対応し、入出力部5、電源部6、および夫々のセンサユニット7、8に一対一で対応する2つの処理部3、4を備える。更に詳細には、処理部3、4は、センサユニット7、8と通信を行うためのCAN(Controller Area Network)通信ユニット34、44と、センサユニット7、8より受信した加速度信号等に基づいてSI(Spectral Intensity)値演算処理等を行うCPU(Central Processing Unit)31、41と、システム時刻を出力する時計32、42と、地震発生時に演算された振動波形を記憶する波形記憶用メモリ33、43と、を有する。
【0026】
CPU31、41は、センサユニット7、8より受信した情報に基づいて、各種演算を行う。CPU31、41によって算出される情報としては、SI値、2軸加速度のベクトル合成値、振動波形等がある。更に、CPU31、41は、センサユニット7、8より各種ステータス情報を取得する。ここでCPU31、41は、他のCPU41、31から(即ち、CPU31はCPU41から、CPU41はCPU31から)、自己の管理対象ではないセンサユニット7、8のステータス情報等を取得することで、他のCPU41、31およびセンサユニット7、8の状態を把握、異常が発生していないか否かを判定する相互故障監視処理を行う。相互故障監視処理としては、CPU31、41が互いに定期的にデータの送受信を行い、相手CPUからの通信がなかった場合に故障を判断する処理や、CPU31、41が同一処理を実行し、結果を互いに送信して相手CPUの結果が異なっていた場合には何れかが故障していると判断する処理等が実行される。このようにして、夫々のCPU31、41が他のCPU41、31およびセンサユニット7、8の状態を監視することで、相互監視が行われる。
【0027】
入出力部5は、バーグラフ加速度表示器51、バーグラフSI値表示器52、インジケータ(警報/故障ランプ)53、警報出力部54、制御信号出力部55、リセットスイッチ56、テスト遮断スイッチ57、およびUSB(Universal Serial Bus)接続端子58を有する。なお、入出力部5は、CPU31、41によって制御される。バーグラフ加速度表示器51およびバーグラフSI値表示器52は、一列に並んだLEDの点灯個数によって、CPU31、41によって算出された水平2軸の加速度のベクトル値およびSI値を表示する。但し、加速度およびSI値の表示方法は、液晶画面による表示など、その他の方法であってもよい。
【0028】
インジケータ53は、警報または故障を示すためのLEDを点灯または点滅させること
で、地震等に起因する建物の揺れが感知されたこと、または感震システム1の何れかの部分が故障したことをユーザに知らせる。警報出力部54は、加速度またはSI値が所定の閾値を超えた場合に、警報音を鳴らす等の方法で、警報を出力する。制御信号出力部55は、後述する建物の揺れを感知する処理において地震等が発生し建物が揺れていると判定された場合に、ガス供給システム等に対して、地震発生時の制御を行うよう制御信号を出力する。地震発生を示す制御信号を受けたガス供給系統の操作を行う操作盤9は、ガス配管に設置された遮断弁91に遮断信号を送信し、ガス器具へのガス供給を遮断させる。
【0029】
リセットスイッチ56は、警報出力部54によって出力された警報を止めるか、または点灯したインジケータ53の警報LEDを消灯するためのスイッチである。テスト遮断スイッチ57は、テスト目的で手動で警報を出力するためのスイッチであり、USB接続端子58は、PCを制御ユニット2に接続し、設定情報等の各種情報を入出力するために設けられた端子である。即ち、システムの管理者は、システムの保守作業時に、USB接続端子58を介してPCを接続し、設定等の作業を行う。
【0030】
電源部6は、AC/DCコンバータ61、バックアップ用電池62、および電源回路63を有する。AC/DCコンバータ61は、建物に供給される商用電力をコンセント等から取得し、直流電流に変換して制御ユニット2の動力源とする。バックアップ用電池62は、災害、人災等の要因による商用電力の供給停止に遭遇した場合にも、感震システム1が停止することがないように、感震システム1へ電力を供給する。電源回路63は、AC/DCコンバータ61によって直流電流に変換された12Vの電流を5Vの直流電流に変換し、制御ユニット2の各構成に電力を供給する。また、AC/DCコンバータ61またはバックアップ用電池62からの電力は、電源ラインを介して各センサユニット7、8へ送られる。
【0031】
本実施形態では、センサユニット7、8同士は、所定の間隔をもって設置されるが、従来、センサユニット7、8間およびセンサユニット7、8と制御ユニット2との間の通信にはアナログ信号の送受信が用いられていたため、ノイズによる影響を受け易く、これらのユニットを互いに離れた箇所に設置するのは困難であった。特に、建物内または近辺に高電圧機器が設置されている場合、この高電圧機器から受けるノイズによって、検出値に影響を受ける可能性が高い。そこで、本実施形態では、センサユニット7、8間およびセンサユニット7、8と制御ユニット2との間の通信にCAN通信を採用することで、これらのユニットを上記所定の間隔をもって設置した場合でも、ノイズの影響を受けにくくしている。
【0032】
即ち、本実施形態では、センサによって検出された信号はデジタル情報に変換され、CAN通信ラインで送受信されるため、アナログ信号を送受信する従来のシステムに比べてノイズに強く、センサユニット7、8同士、またはセンサユニット7、8と制御ユニット2とを従来に比べて離れた箇所に設置することが可能となっている。また、複数のセンサユニット7、8は、CAN通信ラインによって数珠繋ぎ、所謂カスケード接続されるため、制御ユニット2にセンサユニット数分の通信ラインを接続することなく、省スペースでシステムを設置することが可能である。
【0033】
センサユニット7、8は、夫々、2軸加速度センサ75、85、ローパスフィルタ74、84、A/Dコンバータ73、83、CPU72、82、CAN通信ユニット71、81、および電源回路76、86を備える。2軸加速度センサ75、85は、X軸方向の加速度を検知する加速度センサと、Y軸方向の加速度を検知する加速度センサとを有し、X軸方向の加速度およびY軸方向の加速度をアナログ信号で出力する。ローパスフィルタ74、84は、カットオフ周波数が30Hzに設定されたフィルタであり、2軸加速度センサ75、85から出力された信号のうち、30Hz以上の振動波形をカットすることで、
2軸加速度センサから出力されたアナログ信号をサンプリングによってデジタル信号へ変換する際に生じるエイリアスの問題を回避する。A/Dコンバータ73、83は、フィルタリング後のアナログ信号をサンプリング周波数100Hzでサンプリングすることで、デジタル信号へ変換する。
【0034】
センサユニット7、8に設けられたCPU72、82は、ローパスフィルタ74、84、A/Dコンバータ73、83を介して入力された加速度信号を送信形式に整形し、CAN通信ユニット71、81を介してCAN通信ラインへ送出する。また、CPU72、82は、システム起動時に設置状態でのセンサの出力電圧を計測し、正常電圧範囲(本実施形態では、2−3V)の外である場合に取付け不良と判断する処理や、センサに供給される電源の電圧を測定し、正常電圧範囲(本実施形態では、4.74−5.25V)外である場合に電源電圧の異常と判断する処理、センサの出力電圧を測定し、正常電圧範囲(本実施形態では、0.5−4.5V)外である場合は電源電圧の異常と判断する処理等、センサユニット7、8の各構成から得られた情報を、予め保持する正常値の範囲等と比較してセンサの診断処理を行うことで、センサユニット7、8を自己診断機能つきのセンサユニット7、8として動作させる。電源回路76、86は、センサユニット7、8の動作に必要な電源を電源ラインより取得し、5Vの直流電流に変換して、センサユニット7、8の各動作部に供給する。
【0035】
図5は、本実施形態に係る感震システム1が建物の揺れを感知する処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートに示された処理は、感震システム1の電源が投入され、起動時の自己診断処理が終了し、感震システム1の起動が完了した後に繰り返し実行される。また、本フローチャートには、複数のセンサユニット7、8および処理部3、4において平行して揺れの感知処理が実行される様子が示されている。
【0036】
ステップS101からステップS103では、水平2方向の振動にともなって加速度信号がセンサより出力され、出力された加速度信号が整形される。2軸加速度センサ75、85は、水平2方向の振動に伴って発生したアナログ信号をローパスフィルタ74、84へ出力する(ステップS101)。ローパスフィルタ74、84は、その後の演算において使用される所定の周波数以上の振動をカットする(ステップS102)。本実施形態では、30Hz以上の振動がカットされる。そして、ローパスフィルタ74、84を通過したアナログ信号は、A/Dコンバータ73、83に入力され、A/Dコンバータ73、83によってデジタル信号へ変換される(ステップS103)。加速度信号がA/Dコンバータ73、83によってデジタル信号へ変換されることで、その後のCPU72、82での処理およびCAN通信による情報送信が可能となる。その後、処理はステップS104へ進む。
【0037】
ステップS104では、2軸加速度センサ75、85の故障診断が行われる。CPU72、82は、入力された加速度信号に基づいて、2軸加速度センサ75、85が正常に作動しているか否かを判定する。入力された加速度信号が正常であり、センサの故障がないと判定された場合、CPU72、82は、CAN通信ユニット71、81を介して、加速度信号に基づく加速度情報を制御ユニット2へ送信する(ステップS105)。
【0038】
ステップS106以降の処理は、制御ユニット2において実行される処理である。ステップS106では、CAN通信ラインを介して受信された加速度情報が、デジタルハイパスフィルタにかけられる。CPU31、41は、ROM(図示は省略する)からフィルタソフトウェアを読み出して実行することで、加速度情報から取り出した加速度信号から、所定の周波数以下の振動をカットする。本実施形態において、ハイパスフィルタはソフトウェアを実行するCPU31、41によって実現される。このため、デジタルフィルタによるカットオフ周波数は、システム設置後において長周期側の必要周波数を変更する場合
でも、ソフトウェアの書き替えによって変更することが可能である。なお、本実施形態では、0.05Hz以下の振動がカットされる。
【0039】
ステップS107では、システムの故障診断が行われる。制御ユニット2のCPU31、41は、他のCPU41、31から加速度情報およびセンサユニット7、8のステータス情報を受け取り、この情報の内容をチェックすることで、CPU31、41間での通信による作動監視、およびセンサユニット7、8との通信の監視を行い、システムの故障診断を行う。
【0040】
ステップS108からステップS110では、SI値および加速度レベルに基づいた振動判定が行われる。CPU31、41は、加速度情報に基づいてSI値および加速度レベルを算出し、算出されたSI値または加速度の何れか片方以上が所定の閾値以上である場合に、振動判定の結果を真(TRUE)として出力する。算出されたSI値および加速度がいずれも所定の閾値以下である場合、CPU31、41は、振動判定の結果を偽(FALSE)として出力する。
【0041】
ステップS111およびステップS112では、閾値以上であると判定された振動が、建物の揺れに起因する振動であるか否かが判定され、警報が出力される。CPU31、41は、他のCPU41、31から出力された振動判定の結果と、自己の振動判定の結果のANDを取り(ステップS111)、結果が真である場合、即ち、双方のセンサによって検出された加速度に基づく振動判定が何れも真であった場合に、建物が揺れていると判定し、警報および制御信号を出力する(ステップS112)。ここで、制御信号とは、ガス供給管の弁を開閉する装置に対して送信される供給停止信号等である。その後、本フローチャートに示された処理は終了する。
【0042】
なお、本実施形態では、センサユニットが2つである場合について説明したが、センサユニットが3以上ある場合(図2の破線で示されたセンサユニットを参照)は、所定の数(例えば2)以上のCPUにおいて振動判定が真となったことを建物が揺れていると判定する基準としてもよいし、全てのCPUにおいて振動判定が真となったことを建物が揺れていると判定する基準としてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、センサユニット7、8は、地下フロアの壁に設けられることとしているが、複数のセンサユニットは、地下以外のフロアに設けられてもよいし、建物内の異なるフロアに分散されて設置されてもよい。また、同一のフロアに設けられる場合には、異なる部屋に分散されて設けられてもよい。
【0044】
本実施形態では、センサユニット7、8間の通信およびセンサユニット7、8と制御ユニット2との間の通信にCAN通信が採用され、カスケード接続が可能となっているため、通信ラインを設置するために必要なスペースが従来のシステムに比べて省スペースで済む。このため、既設の建物にシステムを追加する場合に有利である。例えば、通信ラインを設置するためのパイプシャフトの残りスペースが少ない場合でも、本実施形態に係る感震システム1であれば設置することが出来る。また、設置に必要な工数および費用も少なくて済むため、従来のシステムに比べてコスト面においても有利である。
【0045】
また、本実施形態に係る感震システム1に拠れば、制御ユニット2内の複数のCPU31、41が、複数のセンサユニット7、8の正常稼働について相互監視を行うため、誤動作、誤判定の確率を低減させ、高い信頼性を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施形態に係る感震システムの構成を示す図である。
【図2】実施形態に係る感震システムの外観における構成を示す図である。
【図3】実施形態において感震システムのセンサユニットを同一の壁面に配置した状態を示す図である。
【図4】実施形態において感震システムのセンサユニットを直交する壁面に配置した状態を示す図である。
【図5】実施形態に係る感震システムが建物の揺れを感知する処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
1 感震システム
2 制御ユニット
3、4 処理部
5 入出力部
6 電源部
7、8 センサユニット
9 操作盤
31、41 CPU
55 制御信号出力部
72、82 CPU
73、83 A/Dコンバータ
75、85 2軸加速度センサ
91 遮断弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の揺れを感知する感震システムであって、
前記建物に設けられ、振動を検知し、振動が与えられた場合に発生するアナログ信号をデジタル信号へ変換する複数のセンサユニットと、
前記センサユニットにおいて変換されて出力されたデジタル信号を受信して、少なくとも2の前記センサユニットによって同時に振動が検知された場合に、前記建物が揺れていると判定する、判定ユニットと、を備え、
前記複数のセンサユニットは、前記判定ユニットにカスケード接続され、該複数のセンサユニットに対して地震に起因する振動が与えられた場合に、該複数のセンサユニットが一の地震から略同一の振動を取得し得る位置に、一の人間または動物が同時に2以上の前記センサユニットに対して振動を与え得る間隔よりも長い間隔をもって設けられる、
感震システム。
【請求項2】
前記センサユニットおよび判定ユニットは、CAN通信機能を有する、
請求項1に記載の感震システム。
【請求項3】
前記複数のセンサユニットは、夫々独立した筐体に加速度センサが納められたセンサユニットである、
請求項1または2に記載の感震システム。
【請求項4】
前記判定ユニットは、前記複数のセンサユニットの夫々を一対一で管理する複数の処理部を有し、
前記複数の処理部の夫々は、管理するセンサユニットから取得した情報を、他の処理部から取得することで、管理するセンサユニットの状態を相互に監視する、
請求項1から3の何れかに記載の感震システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−150729(P2009−150729A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327936(P2007−327936)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】