説明

懸垂型碍子装置用バランスウェイト

【課題】送電線の経路の邪魔になることなく、また、錘の重量を不必要に大きくすることなく、効果的にバランスをとることができる懸垂型碍子装置用バランスウェイトを提供すること。
【解決手段】送電線Dを吊り下げた状態で支持する懸垂型碍子装置100に取り付けるバランスウェイト12であって、懸垂型碍子装置の鉛直下方を中心にする重量の偏りを解消する側に配設される錘部16を備えており、該錘部は分割錘部16a、16bに分割されて対称となる位置に、懸垂型碍子装置に連結されている支持部材14(14a、14b)により支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸垂型碍子装置用バランスウェイトに関し、詳しくは、懸垂型碍子装置に機能を持たせるために各種部材を取り付けたときのバランスを調整するものに関する。
【背景技術】
【0002】
送電線を鉄塔などに架線する際には、碍子を直列に連結した懸垂型碍子装置を利用して送電線を吊り下げた状態に支持して架線することが知られており(例えば、特許文献1)、例えば、図4に示すように、その懸垂型碍子装置100は、懸垂型碍子列101の直下に設けられているクランプ112により略水平姿勢の送電線Dを挟持して保持するようになっている。
【0003】
この種の懸垂型碍子装置としては、碍子沿面のフラッシュオーバーを防止するアークホーンが取り付けられたり、そのアークホーンに追加して避雷装置を設けることも行われており(例えば、特許文献2、3)、図4に示す懸垂型碍子装置100では、アークホーン113の片側に避雷装置114が位置するように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−205980号公報
【特許文献2】特開平5−12943号公報
【特許文献3】特開平10−92242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような懸垂型碍子装置にあっては、図4に示すように、片側に避雷装置114を追加するために、懸垂型碍子装置100が送電線Dを水平方向に延在する姿勢で適正に保持することができるように、懸垂型碍子列101を鉛直姿勢になるように避雷装置114の反対側にバランスウェイト115を設けられる場合がある。
【0006】
しかしながら、その懸垂型碍子装置100にあっては、保持する送電線Dが配線経路によって上向きになる場合には、バランスウェイト115に干渉してしまうことから、そのバランスウェイト115の錘115aを重くするのと同時に支持する金具115bを短くしなければならず、全体の重量が増加してしまう。また、このバランスウェイト115では、錘115aを重くするにしても有効に機能させるのに限界があり、そのために、懸垂型碍子装置100に追加する避雷装置104やその他の装置の重量などが制限されてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、送電線の経路の邪魔になることなく、また、錘の重量を不必要に大きくすることなく、効果的にバランスをとることができる懸垂型碍子装置用バランスウェイトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する懸垂型碍子装置用バランスウェイトの発明は、送電線を吊り下げた状態で支持する懸垂型碍子装置に取り付けるバランスウェイトであって、前記懸垂型碍子装置の鉛直下方を中心にする重量の偏りを解消する側に配設される錘部を備えており、該錘部は、分割して、前記懸垂型碍子装置に連結されている支持部材により支持されることを特徴とするものである。
【0009】
この発明では、懸垂型碍子装置の鉛直下方を中心にする重量の偏りを解消する側に、例えば、懸垂型碍子装置のバランスを崩す追加装置の反対側で離隔する方向に、延在して分割(分岐)されている支持部材に、錘部も分割されて支持される。したがって、例えば、懸垂型碍子装置の鉛直下方の錘部の間に送電線を通す形態で保持することができ、懸垂型碍子装置の片側に追加装置を設置したとしても、その送電線の両側の支持部材の長さや分割錘部の重量により追加装置とのバランスをとることができる。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、懸垂型碍子装置の鉛直下方に保持する送電線の両側などに支持部材を分割延在させて分割錘部を支持させることにより、懸垂型碍子装置に設置する追加装置の重量による偏りを解消することができる。したがって、送電線に干渉することがなく(経路の邪魔になることなく)、錘部を不必要に重くすることなく、懸垂型碍子装置のバランスを取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る懸垂型碍子装置用バランスウェイトの第1実施形態を示す図であり、その懸垂型碍子装置に取り付けた状態を示す正面図である。
【図2】その第1実施形態の全体構成を示す正面図である。
【図3】本発明に係る懸垂型碍子装置用バランスウェイトの第2実施形態の全体構成を示す正面図である。
【図4】懸垂型碍子装置用バランスウェイトの関連技術の全体構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態としては、上記の課題解決手段のように、送電線を吊り下げた状態で支持する懸垂型碍子装置に取り付けるバランスウェイトであって、前記懸垂型碍子装置の鉛直下方を中心にする重量の偏りを解消する側に配設される錘部を備えており、該錘部は、分割して、前記懸垂型碍子装置に連結されている支持部材により支持されることを基本構成とするのに加えて、次の構成を備えてもよい。
【0013】
第1の形態としては、前記支持部材は、前記懸垂型碍子装置の鉛直下方の片側側方に延在して当該鉛直下方からの側方延長線を中心とする対称位置に拡開して前記錘部の分割錘部をそれぞれ支持するようにしてもよい。
【0014】
第2の形態としては、前記支持部材は、前記懸垂型碍子装置の吊り下げる前記送電線の両側の対称位置に前記錘部の分割錘部をそれぞれ支持するようにしてもよい。
【0015】
第3の形態としては、送電線を吊り下げた状態で支持する懸垂型碍子装置であって、上記の基本構成または第1、第2の形態のいずれかに記載のバランスウェイトを備える懸垂型碍子装置を構成する場合には、前記送電線の吊下中心の両側にアークホーンを備えるとともに、該アークホーンの片側に避雷装置が設けられており、前記バランスウェイトは、前記避雷装置の反対側の対称位置に前記錘部の分割錘部をそれぞれ配置するようにしてもよい。
【0016】
第5の形態としては、前記分割錘部の重量または前記支持部材の長さあるいは分割本数を分割位置に応じて変えることにより重量の偏りのバランスを取るようにしてもよい。
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1および図2は本発明に係る懸垂型碍子装置用バランスウェイトの第1実施形態を示す図である。
【0018】
図1において、懸垂型碍子装置用バランスウェイト12は、懸垂型碍子装置100の直下に送電線Dを保持するクランプ102と共に設置されており、この懸垂型碍子装置100は、クランプ112が挟持して保持する送電線Dを不図示の鉄塔などに吊り下げた状態にして略水平姿勢に架線するようになっている。
【0019】
ここで、懸垂型碍子装置100は、碍子101aが直列に連結されることにより絶縁性を確保するようになっており、鉄塔側に連結するU字ボルト102を吊り下げ具103に貫通させて碍子列101の上部を支持させることにより懸垂状態に設置するとともに、その碍子列101の下部の吊り下げ具103にクランプ112を取り付けることにより水平姿勢の送電線D(図2を参照)を挟持して保持するようになっている。
【0020】
また、懸垂型碍子装置100は、碍子101aの沿面におけるフラッシュオーバーを防止するアークホーン113a、113bが取り付けられており、その図中右側には、そのアークホーン113a、113bのそれぞれに追加して避雷装置114a、114bが取り付けられている。
【0021】
この懸垂型碍子装置100は、碍子列101の片側に避雷装置114a、114bを追加するために生じる、その碍子列101直下を中心にする重量バランスの偏りを解消する側、ここでは、避雷装置114a、114bの反対側にバランスウェイト11、12を配設しており、バランスウェイト11は、碍子列101の上部の吊り下げ具103に固定する支持部材13の先端側に錘部15を固定することにより機能させる一方、バランスウェイト12は、碍子列101の下部の吊り下げ具103に固定する支持部材14の先端側に錘部16を固定することにより機能させるようになっている。
【0022】
バランスウェイト11は、懸垂型碍子装置100の上部に位置して構成部品以外に干渉する部材はないことから、支持部材13は、碍子列101の上部から避雷装置114a、114bの反対側の水平方向に延長されて、その先端に1つの錘部15を固設するようになっている。
【0023】
一方、バランスウェイト12は、懸垂型碍子装置100の下部に位置して直下にはクランプ112が設置されて水平方向に延在する送電線Dが保持されていることから、図2に示すように、支持部材14は、碍子列101の下部から分岐(分割)されるとともに避雷装置114a、114bの反対側の水平方向の延長線L上に架線されている送電線Dを中心とする両側の対称位置に拡開延長されて、その支持部材14a、14bのそれぞれの先端に2つに分割された分割錘部16a、16bを固設するようになっている。
【0024】
これにより、バランスウェイト12は、懸垂型碍子装置100下部のクランプ112により保持される送電線Dが斜め上方に傾斜する経路を取るように架線されるために、避雷装置114a、114bの反対側の水平方向にそのまま延長する延長線Lの位置がその送電線Dの架線経路に重複する場合でも、その送電線D(延長線L)の両側の対称位置に、支持部材14a、14bを十分な長さに延在させるとともに、その先端に必要十分な重量の分割錘部16a、16bを位置させて十分な荷重を掛けることができ、懸垂型碍子装置100の下部側でも碍子列101の片側に避雷装置114a、114bを追加したことによる重量の偏りを解消して送電線Dを所望の姿勢で架線することができる。
【0025】
このように本実施形態においては、懸垂型碍子装置100の直下に通す送電線Dの両側の対称位置にバランスウェイト12の分割錘部16a、16bが位置することにより、送電線Dとの干渉を回避しつつ、避雷装置114a、114bによるバランスの偏りを解消することができ、バランスウェイト12が邪魔になることなく、送電線Dを架線することができる。したがって、バランスウェイト12の錘部16を不必要に重くすることなく、送電線Dを架線する懸垂型碍子装置100のバランスを取って鉛直な懸垂状態にすることができる。
【0026】
次に、図3は本発明に係る懸垂型碍子装置用バランスウェイトの第2実施形態を示す図である。ここで、本実施形態は、上述実施形態と略同様に構成されていることから、同様の構成には同一の符号を付して特徴部分を説明する。
【0027】
図3において、懸垂型碍子装置用バランスウェイト12は、支持部材14a、14bのそれぞれの先端に、重量の異なる分割錘部26a、26bが固設されており、図面の表裏側に重量の偏りのある装置を追加される懸垂型碍子装置100に合わせて、その重量の偏りを解消するように分割錘部26a、26bの重量バランスが設定されている。
【0028】
このように本実施形態においては、上述実施形態による作用効果に加えて、懸垂型碍子装置100の直下に通す送電線Dの両側の対称位置にバランスウェイト12の分割錘部26a、26bが位置することにより、送電線Dとの干渉を回避しつつ、追加装置によるバランスの偏りを解消することができるとともに、懸垂型碍子装置100が送電線Dに対する直交方向に傾いてしまうことを回避することができる。したがって、送電線Dに対する直交方向にバランスのずれている装置でも懸垂型碍子装置100に追加して設置することができ、追加装置の設置制限を緩和することができる。
【0029】
本実施形態の他の態様としては、図示することは省略するが、分割錘部16a、16bを支持する支持部材14a、14bの延長長さを変えることにより、また、その支持部材の分割本数と共に錘部の分割個数を変えることにより、重量の偏りのバランスを取るようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。例えば、上述実施形態では、懸垂型碍子装置に取り付ける場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、他の装置に設置するバランスウェイトに適用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
12……懸垂型碍子装置用バランスウェイト 14、14a、14b……支持部材 16、26……錘部 16a、16b、26a、26b……分割錘部 100……懸垂型碍子装置 101……碍子列 101a……碍子 103……吊り下げ具 112……クランプ 113、113a、113b……アークホーン 114、114a、114b……避雷装置 D……送電線 L……延長線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線を吊り下げた状態で支持する懸垂型碍子装置に取り付けるバランスウェイトであって、
前記懸垂型碍子装置の鉛直下方を中心にする重量の偏りを解消する側に配設される錘部を備えており、
該錘部は、分割して、前記懸垂型碍子装置に連結されている支持部材により支持されることを特徴とする懸垂型碍子装置用バランスウェイト。
【請求項2】
前記支持部材は、前記懸垂型碍子装置の鉛直下方の片側側方に延在して当該鉛直下方からの側方延長線を中心とする対称位置に拡開して前記錘部の分割錘部をそれぞれ支持することを特徴とする請求項1に記載の懸垂型碍子装置用バランスウェイト。
【請求項3】
前記支持部材は、前記懸垂型碍子装置の吊り下げる前記送電線の両側の対称位置に前記錘部の分割錘部をそれぞれ支持することを特徴とする請求項2に記載の懸垂型碍子装置用バランスウェイト。
【請求項4】
送電線を吊り下げた状態で支持する懸垂型碍子装置であって、
上記請求項1から3のいずれかに記載のバランスウェイトを備えることを特徴とする懸垂型碍子装置。
【請求項5】
前記送電線の吊下中心の両側にアークホーンを備えるとともに、該アークホーンの片側に避雷装置が設けられており、
前記バランスウェイトは、前記避雷装置の反対側の対称位置に前記錘部の分割錘部をそれぞれ配置することを特徴とする請求項4に記載の懸垂型碍子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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