説明

懸架装置

【課題】 自動二輪車等の鞍乗り用車両におけるフロントフォークやリアクッションユニット等の懸架装置の改良に関する。
【解決手段】 アウターチューブ1とアウターチューブ1内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ2とからなる懸架装置本体と、アウターチューブ1内周とインナーチューブ2外周との間に形成されて両側の開口をシール部材30,31でそれぞれ塞がれる筒状の潤滑隙間3aと、懸架装置本体内に潤滑隙間3aと連通する体積補償室3bを区画する隔壁部材4とを備え、潤滑隙間3aと体積補償室3bとで液溜室3を構成し、液溜室3内に潤滑流体を収容する潤滑流体室Dと、気体を収容する気室Eとが形成される懸架装置において、隔壁部材4が懸架装置本体内に固定される隔壁本体40と、隔壁本体40に着脱自在に取り付けられる蓋体41とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動二輪車等の鞍乗り用車両におけるフロントフォークやリアクッションユニット等の懸架装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗り用車両におけるフロントフォークやリアクッションユニット等の懸架装置は、各種提案がなされており、例えば、特許文献1には二輪車の前輪を懸架するフロントフォークが開示されている。
【0003】
上記フロントフォークは、アウターチューブと、このアウターチューブ内に上下の軸受を介して摺動自在に挿入されるインナーチューブとからなる懸架装置本体を備え、アウターチューブが車体側に、インナーチューブが車輪側に固定されて倒立型に設定される。
【0004】
そして、アウターチューブの下端側開口部内周にはインナーチューブ外周に摺接するシール部材が設けられてなり、当該シール部材は、アウターチューブ内周とインナーチューブ外周との間に形成される筒状の潤滑隙間内に貯留される潤滑流体が外部に漏れ出すことを防止する。
【0005】
即ち、上記シール部材で潤滑隙間内に潤滑流体を保持することにより、潤滑流体で上下の軸受の摺動面を潤滑して摺動性を良好に保ち、インナーチューブがアウターチューブ内に円滑に出没することを可能にする。
【0006】
ところが、特許文献1に開示のフロントフォークにおいて、懸架装置本体内に気体を圧縮しながら封入してエアばねとして機能させ、コイルスプリングからなる懸架ばねを廃止した場合においては、上記オイルシールが損傷した場合、潤滑隙間内に貯留される潤滑流体が上記気体で押圧されて損傷部から噴出する虞がある。
【0007】
そこで、出願人は、上記不具合を解決するため、潤滑隙間を区画して懸架装置本体の内圧が潤滑隙間に作用することがない懸架装置を発明した(特願2009−289437)。
【0008】
上記懸架装置は、図3に示すように、アウターチューブ1内周とインナーチューブ2外周との間に形成されて上下の開口をシール部材30,31でそれぞれ塞がれる筒状の潤滑隙間3aと、この潤滑隙間3aに連通して潤滑隙間3aと共に液溜室3を形成する体積補償室3bとを備える。
【0009】
上記体積補償室3bは、インナーチューブ2とこのインナーチューブ2内周に取り付けられる隔壁部材400との間に形成され、インナーチューブ2に穿設される連通孔2aを介して潤滑隙間3aに連通する。
【0010】
そして、上記液溜室3内には潤滑流体と気体が収容され、潤滑流体の液面O2を介して上側に気室Eが、液面O2の下側に潤滑流体室Dが形成される。
【0011】
そして、隔壁部材400は、インナーチューブ2の連通孔2aより下側内周に密接する環状の底部401と、この底部401内周から起立してインナーチューブ2内周に対向する側部402と、この側部402に連設されてインナーチューブ2の図中上端内周に螺合する天井部403と、この天井部403から起立すると共に外周に上側のシール部材30が係合する断面コ字状の環状溝404aが形成されるシール保持部404とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−64180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記従来の懸架装置においては、上下のシール部材と隔壁部材で潤滑隙間を区画したため、懸架装置本体の内圧が潤滑隙間に作用せず、懸架装置の伸縮に伴い膨縮する潤滑隙間の体積補償を体積補償室で行うことが可能となる点において有用である。
【0014】
しかしながら、上記懸架装置においては、懸架装置本体内に収容される減衰力発生用の作動流体と液溜室内に収容される潤滑用の潤滑流体とが異なる場合、アウターチューブの下端部内周に取り付けられる下側のシール部材等を取り外してアウターチューブの下側から液溜室内に潤滑流体を注入し、液溜室内の液面調整をしなければならず、潤滑流体の注入作業が困難である。
そこで、本発明は、液溜室内への潤滑流体の注入作業や、液溜室内の液面調整を容易にすることが可能な懸架装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための手段は、アウターチューブとこのアウターチューブ内に摺動自在に挿入されるインナーチューブとからなる懸架装置本体と、上記アウターチューブ内周と上記インナーチューブ外周との間に形成されて両側の開口をシール部材でそれぞれ塞がれる筒状の潤滑隙間と、上記懸架装置本体内に上記潤滑隙間と連通する体積補償室を区画する隔壁部材とを備え、上記潤滑隙間と体積補償室とで液溜室を構成し、この液溜室内に潤滑流体を収容する潤滑流体室と、気体を収容する気室とが形成される懸架装置において、上記隔壁部材が懸架装置本体内に固定される隔壁本体と、この隔壁本体に着脱自在に取り付けられる蓋体とを備えることことである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、隔壁部材が隔壁本体に着脱自在に取り付けられる蓋体を備えることにより、液溜室内の液量調整や液溜室内への潤滑流体の注入作業をするときに蓋体を取り外して行うことが可能となり、液溜室内への潤滑流体の注入作業や、液溜室内の液面調整を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態における懸架装置たるフロントフォークを部分的に切り欠いて示す正面図である。
【図2】本発明の一実施の形態における懸架装置たるフロントフォークの主要部を拡大して示す縦断面図である。
【図3】従来の懸架装置の主要部を部分的に切り欠いて示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の一実施の形態を示す懸架装置について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品かまたはそれに対応する部品を示す。
【0019】
本実施の形態に係る懸架装置は、二輪車の車体と前輪との間に介装されて前輪に入力される路面振動を減衰するフロントフォークである。
【0020】
上記フロントフォークは、図1に示すように、アウターチューブ1とこのアウターチューブ1内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ2とからなる懸架装置本体と、上記アウターチューブ1内周と上記インナーチューブ2外周との間に形成されて両側の開口をシール部材30,31でそれぞれ塞がれる筒状の潤滑隙間3aと、上記懸架装置本体内に上記潤滑隙間3aと連通する体積補償室3bを区画する隔壁部材4とを備える。
【0021】
そして、上記潤滑隙間3aと体積補償室3bとで液溜室3を構成し、この液溜室3内に潤滑流体を収容する潤滑流体室Dと、気体を収容する気室Eとが形成され、上記隔壁部材4が懸架装置本体内に固定される隔壁本体40と、この隔壁本体40に着脱自在に取り付けられる蓋体41とを備える。
【0022】
以下に詳細に説明すると、本発明に係るフロントフォークは、アウターチューブ1が車体側に、インナーチューブ2が車輪側にそれぞれ固定される倒立型のフロントフォークである。
【0023】
そして、アウターチューブ1とインナーチューブ2とからなる懸架装置本体の図中上下の開口は、アウターチューブ1の上端部に取り付けられるキャップ部材10と、インナーチューブ2の下端部外周に螺着するボトム部材20とでそれぞれ塞がれてなる。
【0024】
また、アウターチューブ1内周とインナーチューブ2外周との間に形成される筒状の潤滑隙間3aは、両側の開口をシール部材30,31でそれぞれ封止され、体積補償室3bと共に密閉された液溜室3を形成する。
【0025】
したがって、懸架装置本体における液溜室3よりも内部(以下、懸架装置本体内部という)に収容される作動流体や気体が外部や液溜室3に漏れることがなく、また、液溜室3に収容される潤滑流体や気体が外部や懸架装置本体内部に漏れることがない。
【0026】
上記懸架装置本体内部には、収容される作動流体の液面O1を介して上側にリザーバ気室Rが、液面O1の下側に作動流体室(符示せず)が形成されてなる。
【0027】
上記リザーバ気室Rには気体が圧縮されながら封入されており、リザーバ気室Rは、その内圧でフロントフォークを常に伸張方向に附勢し、フロントフォークの伸縮に伴い所定のばね反力を生じる。つまり、リザーバ気室Rが路面からの突き上げ入力を吸収する機能を発揮する。
【0028】
尚、本実施の形態において、このリザーバ気室Rの内圧は、キャップ部材10に取り付けられるエアバルブ(図示せず)によって調整可能である。
【0029】
一方、上記作動流体室は、インナーチューブ2内周に摺接するピストン5で二つの作用室A,Bに区画され、ピストン5の上側に形成されるのが伸側作用室A、ピストン5の下側に形成されるのが圧側作用室Bである。
【0030】
上記伸側作用室Aは、リザーバ気室Rの内圧により液面O1を介して常に加圧されるが、上記したように液溜室3は密閉されているため、リザーバ気室Rの内圧が液溜室3に作用することはない。
【0031】
上記二つの作用室A,Bは、ピストン5に穿設される伸側流路50及び圧側流路(図示せず)を介して連通し、伸側流路50は、その出口側開口をピストン5の圧側作用室B側に積層される伸側減衰バルブV1で開閉可能に塞がれてなり、圧側流路は、その出口側開口をピストン5の伸側作用室A側に積層される圧側減衰バルブV2で開閉可能に塞がれてなる。
【0032】
そして、ピストン5は、キャップ部材10を介してアウターチューブ1に固定されるロッド6の先端に保持されてなり、フロントフォークの伸縮に伴いロッド6と共にインナーチューブ2内を軸方向に移動する。
【0033】
上記構成を備えることにより、フロントフォークの伸長時には、伸側作用室Aがリザーバ気室Rで加圧された状態で圧側作用室Bが減圧されて伸側減衰バルブV1が開き、作動流体が伸側作用室Aから圧側作用室Bに移動して伸側の減衰力が発生する。
【0034】
また、フロントフォークの圧縮時には、圧側作用室Bが加圧されて圧側減衰バルブV2が開き、作動流体が圧側作用室Bから伸側作用室Aに移動して圧側の減衰力が発生する。
【0035】
つまり、路面からの突き上げ入力の吸収に伴うフロントフォークの伸縮運動を伸側減衰バルブV1及び圧側減衰バルブV2で減衰し、乗り心地を良好にすることが可能となる。
【0036】
また、上記ピストン5の直上部には下側ばね受け71がロッド6の外周に固定されてなり、この下側ばね受け71は、フロントフォークが所定量伸張したときにバランススプリング7の下端に当接する。
【0037】
上記バランススプリング7は、隔壁部材5の下側に固定される上側ばね受け70に吊設されてなり、フロントフォークが所定量以上伸張したとき上下のばね受け70,71の間で圧縮されて所定のばね反力を発生する。
【0038】
上記構成を備えることにより、フロントフォークが所定量以上伸張した状態(以下、フロントフォークの最伸張時近傍という)にあるとき、バランススプリング7がリザーバ気室Rのばね反力に抗してフロントフォークが速やかに収縮することを助け、最伸張時近傍における乗り心地を良好に保つことが可能となる。
【0039】
また、上記ロッド6の外周には上下のクッション部材60,61が固定され、上側のクッション部材60がロッド6の上端部に、下側のクッション部材61がロッド6の略中央部に設けられる。
【0040】
したがって、フロントフォークの最伸張時には、図1に示すように、隔壁部材4が下側のクッション部材61に当接することにより最伸張時の衝撃を吸収し、フロントフォークの最圧縮時には、図示しないが、隔壁部材4が上側のクッション部材60に当接することにより最圧縮時の衝撃を吸収することが可能となる。
【0041】
尚、本実施の形態において、インナーチューブ2のボトム部にボトムケース23を設けて空気室Cを区画し、懸架装置本体内部に収容する作動流体の液量を減らし、フロントフォークを軽量化しているがこの限りではなく、必ずしも空気室Cを設ける必要はない。
【0042】
ところで、懸架装置本体内に懸架装置本体内部と区画されて形成される液溜室3は、潤滑隙間3aと体積補償室3bとからなり、液溜室3には潤滑流体を収容する潤滑流体室Dと、気体を収容する気室Eとが形成される。
【0043】
上記潤滑隙間3a内にはインナーチューブ2を軸支する上下の軸受32,33が設けられてなり、上側の軸受32がインナーチューブ1の上端部外周に固定されてアウターチューブ1内周に摺接し、下側の軸受33がアウターチューブ1の下端部内周に固定されてインナーチューブ2外周に摺接する。
【0044】
そして、潤滑隙間3a内に収容される潤滑流体が上記各軸受32,33の摺動面を潤滑して、インナーチューブ2がアウターチューブ1内に円滑に出没できるようにする。
【0045】
潤滑隙間3aの図中上側の開口を塞ぐアウターチューブ1側のシール部材(以下、上側のシール部材30という)は、隔壁部材4の外周に取り付けられてアウターチューブ1内周に摺接するエアシールであり、リザーバ気室Rの気体が潤滑隙間3aに漏れることを防止する。
【0046】
尚、図示しないが、上記エアシールの潤滑隙間3a側にオイルシールを直列に設けて上側のシール部材30を構成し、潤滑隙間3a内の潤滑流体をシールするとしても良い。
【0047】
一方、潤滑隙間3aの図中下側の開口を塞ぐインナーチューブ2側のシール部材(以下、下側のシール部材31という)は、潤滑隙間3a側に設けられるオイルシール31aと、このオイルシール31aの外側に直列に設けられるダストシール31bとからなり、アウターチューブ1の下端部内周における下側の軸受33の下側に固定されてインナーチューブ2外周に摺接する。
【0048】
そして、オイルシール31aで潤滑隙間3a内の作動流体が外部に漏れることを防止し、ダストシール31bでインナーチューブ2外周に付着した異物を取り除き、オイルシール31aが損傷することを防いでいる。
【0049】
したがって、潤滑隙間3aの両側、即ち、図中上下の開口から潤滑流体や気体が漏れることがなく、フロントフォークの伸長時には上下のシール部材30,31が接近して潤滑隙間3aの体積が縮小し、フロントフォークの圧縮時には上下のシール部材30,31が離間して潤滑隙間3aの体積が膨張する。
【0050】
上記潤滑隙間3aと共に液溜室3を構成する体積補償室3bは、インナーチューブ2に穿設される連通孔2aを介して潤滑隙間3aに連通し、隔壁部材4によって緩衝器本体内に区画される。
【0051】
そして、体積補償室3b内には潤滑流体が貯留され、その液面O2を介して上側に気体が収容されて気室Eが形成される。一方、体積補償室3b内の潤滑流体は、連通孔2aを介して潤滑隙間3aとの間を移動することができ、潤滑隙間3a及び体積補償室3bの液面O2の下側に潤滑流体室Dが形成される。
【0052】
上記構成を備えることにより、フロントフォークの伸長時には潤滑隙間3aが縮小して潤滑隙間3a内の潤滑流体が体積補償室3bに流出し、フロントフォークの圧縮時には潤滑隙間3aが拡大して体積補償室3bから潤滑流体が潤滑隙間3aに流入し、潤滑隙間3aの体積変化を体積補償室3bで補償することが可能となる。
【0053】
体積補償室3bを懸架装置本体内に区画する、即ち、懸架装置本体内部と液溜室3とを区画する隔壁部材4は、図2に示すように、インナーチューブ2内周に固定される隔壁本体40と、この隔壁本体40に着脱自在に取り付けられる蓋体41と、同じく隔壁本体40に着脱自在に取り付けられて上記蓋体41を押さえる蓋押さえ42とからなる。
【0054】
そして、隔壁本体41は、インナーチューブ2内周に連通孔2aよりも図中下側にOリング(符示せず)を介して密接する環状の底部41aと、この底部41a内周から起立してインナーチューブ2内周に対向する筒状の側部(符示せず)とを備える。
【0055】
上記側部は、底部41aに連設されて垂直な下側部41bと、この下側部41bの上端から水平に延設される水平下側部41cと、この水平下側部41cの内周から起立して垂直で小径な中側部41dと、この中側部41dの上端から水平に延設されて上記水平下側部41cに対向する水平上側部41eと、この水平上側部41eの外周から起立して垂直な上側部41fとからなる。
【0056】
そして、この上側部41fの外周には断面コ字状の環状溝(符示せず)が形成されてこの環状溝にOリング(符示せず)が装着され、上側部41fの内周には螺子溝が形成されて蓋押さえ42が螺合する。
【0057】
上記隔壁本体40に着脱自在に取り付けられる蓋体41は、環状に形成されてなり、インナーチューブ2のアウターチューブ1側端部、即ち、図中上端部内周に螺合すると共に上側部41f外周に上記Oリングを介して密接する蓋部41aと、この蓋部41aの上方に設けられてインナーチューブ2から突出し、外周に上側のシール部材30が取り付けられる断面L字状の環状溝41bが形成されるシール保持部41cとを備える。
【0058】
また、この蓋体41を押さえる蓋押さえ42は、同じく環状に形成されてなり、上側のシール部材30を図中上側から押さえながら蓋体41を押さえる押さえ部42aと、上側部41f内周に螺合する結合部42bとを有する。
【0059】
尚、上記隔壁部材4を構成する隔壁本体40,蓋体41,蓋押さえ42の内周とロッド6との間には隙間が設けられてなり、リザーバ気室Rに収容される気体は、上記隙間を介して自由に移動する。
【0060】
つまり、本発明に係る懸架装置たるフロントフォークは、蓋体41が着脱可能であるため、従来のように下側のシール部材31等を取り外すことなく体積補償室3bから潤滑流体を注入することが可能となり、例え、潤滑流体と作動流体とが異なる場合においても液溜室3への潤滑流体の注入作業や、液溜室3内の液面調整を容易にすることが可能となる。
【0061】
また、気室Eが体積補償室3b内に形成されると共に液溜室3に収容される潤滑流体の液面O2を介して上側に形成され、気室Eと対向する位置に蓋体41を設けることにより、体積補償室3bの上側から液面O2を見ながら潤滑流体をスポイト等で滴下して液面調整をすることが可能となり、液面調整を容易且つ精度良く行うことが可能となる。
【0062】
また、隔壁本体40がインナーチューブ2内周に密接する環状の底部41aと、底部41a内周から起立してインナーチューブ2内周に対向する筒状の側部とを備え、蓋体42が環状に形成されて上記インナーチューブ2の図中上端部とこれに対向する側部の上側部41fとの間に設けられ、インナーチューブ2内周に螺合すると共に上側部41f外周に密接する蓋部41aを備えることにより、懸架装置本体内に容易に体積補償室3bを区画し、隔壁部材4の取り付け及び蓋体41の着脱が容易に可能となる。
【0063】
また、隔壁部材4が蓋体41を押さえる押さえ部42aと、隔壁本体40に螺合する結合部42bとを有する蓋体押さえ42を備えることにより、体積補償室3bの内圧が高まるフロントフォークの伸張時に蓋体41が隔壁本体40から外れることを確実に防止することが可能となる。
【0064】
また、蓋体41がインナーチューブ2から突出し外周に上側のシール部材30が取り付けられる断面L字状の環状溝41bが形成されるシール保持部41cを備え、上側のシール部材30が押さえ部42aで押さえられることにより、上側のシール部材30の取り付けが容易であり、且つ、上側のシール部材30が蓋体41から脱落することを蓋押さえ42で防止することが可能となる。
【0065】
また、液面O2が常に体積補償室3b内に位置することにより、潤滑隙間3a内の潤滑流体が不足して上側の軸受32の摺動面に潤滑流体の供給不足が生じることを防止して、摺動性を良好に保つことが可能となる。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【0067】
例えば、上記実施の形態において、隔壁部材4が隔壁本体40,蓋体41および蓋押さえ42からなるとしたが、上記蓋押さえ42を必ずしも設ける必要はなく、隔壁部材4の一部が蓋体として構成され、隔壁本体に着脱可能であれば良く、隔壁部材の構成及び形状は適宜変更することが可能である。
【0068】
同じく、フロントフォークの減衰力発生構造は上記の限りではなく、減衰力発生構造として他の周知の構造を採用するとしても良い。
【0069】
同じく、本発明をフロントフォークに具現化するとしたがこの限りではなく、リアクッションユニットや他の緩衝器に具現化するとしても良い。
【符号の説明】
【0070】
A 伸側作用室
B 圧側作用室
C 空気室
D 潤滑流体室
E 気室
R リザーバ気室
1 アウターチューブ
2 インナーチューブ
3 液溜室
3a 潤滑隙間
3b 体積補償室
4 隔壁部材
5 ピストン
6 ロッド
7 バランススプリング
10 キャップ部材
20 ボトム部材
30 上側(アウターチューブ側)のシール部材
31 下側(インナーチューブ側)のシール部材
32,33 軸受
40 隔壁本体
41 蓋体
42 蓋押さえ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターチューブとこのアウターチューブ内に摺動自在に挿入されるインナーチューブとからなる懸架装置本体と、
上記アウターチューブ内周と上記インナーチューブ外周との間に形成されて両側の開口をシール部材でそれぞれ塞がれる筒状の潤滑隙間と、
上記懸架装置本体内に上記潤滑隙間と連通する体積補償室を区画する隔壁部材とを備え、
上記潤滑隙間と体積補償室とで液溜室を構成し、この液溜室内に潤滑流体を収容する潤滑流体室と、気体を収容する気室とが形成される懸架装置において、
上記隔壁部材が懸架装置本体内に固定される隔壁本体と、この隔壁本体に着脱自在に取り付けられる蓋体とを備えることを特徴とする懸架装置。
【請求項2】
上記気室が上記体積補償室に形成されると共に上記液溜室に収容される潤滑流体の液面を介して上側に形成され、この気室と対向する位置に上記蓋体が設けられることを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
上記隔壁本体が上記インナーチューブ内周に密接する環状の底部と、この底部内周から起立してインナーチューブ内周に対向する筒状の側部とを備え、
上記蓋体が環状に形成されて上記インナーチューブのアウターチューブ側端部とこれに対向する上記側部の端部との間に設けられ、上記インナーチューブ内周に螺合すると共に上記側部外周に密接する蓋部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の懸架装置。
【請求項4】
上記隔壁部材は、上記蓋体を押さえる押さえ部と、上記隔壁本体に螺合する結合部とを有する蓋体押さえを備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の懸架装置。
【請求項5】
上記蓋体が上記インナーチューブから突出し、外周にアウターチューブ側のシール部材が取り付けられる断面L字状の環状溝が形成されるシール保持部を備え、
上記アウターチューブ側のシール部材が上記押さえ部で押さえられることを特徴とする請求項4に記載の懸架装置。
【請求項6】
上記液面が常に体積補償室内に位置することを特徴とする請求項2から請求項5の何れかに記載の懸架装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−172722(P2012−172722A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33331(P2011−33331)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】