説明

成型ポテトチップス用乳化剤製剤及びそれを用いた成型ポテトチップスの製造方法

【課題】特徴のある軽い食感を成型ポテトチップスに付与し得る成型ポテトチップス用乳化剤製剤及びそれを用いた成型ポテトチップスの製造方法を提供する。
【解決手段】溶融した二種以上のグリセリン脂肪酸エステル(例えば、反応モノグリセライド及びグリセリン有機酸エステル)を−196〜15℃の温度条件下で噴霧し、冷却固化して得られる成型ポテトチップス用乳化剤製剤、および該成型ポテトチップス用乳化剤製剤を成型ポテトチップス原料に添加して生地を調製する工程を含むことを特徴とする成型ポテトチップスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型ポテトチップス用乳化剤製剤及びそれを用いた成型ポテトチップスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生のじゃがいもを原料とするポテトチップスは、原料じゃがいもの大きさや形によって得られる製品が不揃いになったり、原料じゃがいもに含まれる還元糖やアミノ酸量の多少によって、製品の色調にバラツキが生じるという問題がある。そこで、このような問題を解消するため、乾燥マッシュポテトなどを主原料とする成型ポテトチップスが開発され、製品化されている。
【0003】
このような成型ポテトチップスの技術分野では、多様化する消費者の嗜好に対応するため、軽い歯ざわりの食感を有する成型ポテトチップスがこれまでに種々開発されている。
【0004】
例えば、HLB7〜15のポリグリセリン脂肪酸エステルを添加することを特徴とする成型ポテトチップスおよびポテトスナック菓子(特許文献1参照)、リゾレシチンを含有することを特徴とするポテトチップスおよびポテト菓子(特許文献2参照)などが知られている。
【0005】
しかし、消費者の嗜好の多様化に伴い、単に軽いだけでなく更に特徴ある食感が付与された成型ポテトチップスが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−245384号公報
【特許文献2】特開2000−245383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特徴のある軽い食感を成型ポテトチップスに付与し得る成型ポテトチップス用乳化剤製剤及びそれを用いた成型ポテトチップスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、二種類のグリセリン脂肪酸エステルを特定の方法で一剤化して得られる乳化剤製剤に、崩壊感のある軽い歯ざわりを成型ポテトチップスに付与する効果を見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)溶融した二種以上のグリセリン脂肪酸エステルを−196〜15℃の温度条件下で噴霧し、冷却固化して得られる成型ポテトチップス用乳化剤製剤、
(2)前記二種類のグリセリン脂肪酸エステルは、少なくとも反応モノグリセライド及びグリセリン有機酸エステルであることを特徴とする前記(1)記載の成型ポテトチップス用乳化剤製剤、
(3)前記(1)又は(2)記載の成型ポテトチップス用乳化剤製剤を成型ポテトチップス原料に添加して生地を調製する工程を含むことを特徴とする成型ポテトチップスの製造方法、から成っている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の成型ポテトチップス用乳化剤製剤を使用することにより、もろい食感(即ち、
口の中で崩壊するような歯ざわり)を有する成型ポテトチップスを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で用いられるグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応生成物、グリセリンと脂肪酸とのエステル交換反応生成物、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、グリセリン酢酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステルから選ばれる二種以上のものが挙げられ、好ましくはグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応生成物及びグリセリン有機酸脂肪酸エステルである。
【0012】
グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応生成物としては、反応モノグリセライドが好ましく用いられる。この反応モノグリセライドは、グリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物、またはグリセリンと油脂(トリグリセライド)とのエステル交換反応生成物から未反応のグリセリンを可及的に除去したものであって、モノグリセライド(グリセリンモノ脂肪酸エステル)、ジグリセライド(グリセリンジ脂肪酸エステル)及びトリグリセライド(グリセリントリ脂肪酸エステル)を含有する混合物である。該反応モノグリセライド100%中のモノグリセライドの含有量は、通常約40〜60%である。
【0013】
本発明で用いられる反応モノグリセライドの原料として用いられる脂肪酸としては、好ましくは食用可能な動植物油脂を起源とする炭素数6〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸など)などが挙げられ、より好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などである。
【0014】
本発明で用いられる反応モノグリセライドの製法としては、例えば、グリセリンと油脂のエステル交換反応による製法、グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応による製法が挙げられる。これら製法の概略を、以下の(1)および(2)に示す。
【0015】
(1)エステル交換反応による反応モノグリセライドの製法
例えば、攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板などを備えた通常の反応容器に、グリセリンおよび油脂を2:1のモル比で仕込み、通常触媒として、例えば水酸化ナトリウムを加えて攪拌混合し、窒素ガス雰囲気下、例えば約180〜260℃、好ましくは約200〜250℃で、約0.5〜15時間、好ましくは約1〜3時間加熱してエステル化反応する。反応圧力条件は、常圧下または減圧下が好ましい。得られた反応液は、グリセリン、モノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライドなどを含む混合物である。
反応終了後、反応液中に残存する触媒を中和し、次に反応液を、好ましくは、減圧下で蒸留して残存するグリセリンを留去し、必要であれば脱塩、脱色、ろ過などの処理を行い、最終的に、モノグリセライドを約40〜60%含む反応モノグリセライドを得る。
【0016】
(2)エステル化反応による反応モノグリセライドの製法
例えば、攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板などを備えた通常の反応容器にグリセリン及び脂肪酸を1:1のモル比で仕込み、必要に応じ酸またはアルカリを触媒として添加し、窒素または二酸化炭素などの任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば約180〜260℃の範囲、好ましくは約200〜250℃で約0.5〜5時間、好ましくは約1〜3時間加熱してエステル化反応を行う。得られた反応液は、グリセリン、モノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライドなどを含む混合物である。
反応終了後、反応液中に残存する触媒を中和し、次に反応液を、好ましくは、減圧下で蒸留して残存するグリセリンを留去し、必要であれば脱塩、脱色、ろ過などの処理を行い、最終的に、モノグリセライドを約40〜60%含む反応モノグリセライドを得る。
【0017】
反応モノグリセライドとしては、例えば、ポエムP−200(製品名;モノグリセライド含量約52%;理研ビタミン社製)、ポエムV−200(製品名;モノグリセライド含量約50%;理研ビタミン社製、)およびポエムB−200(製品名;モノグリセライド含量約47%;理研ビタミン社製)などが商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0018】
上記グリセリン有機酸脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルなどが挙げられ、好ましくはグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルである。
【0019】
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルは、通常グリセリンモノ脂肪酸エステル(別称:モノグリセライド)とジアセチル酒石酸若しくはジアセチル酒石酸の酸無水物との反応、またはグリセリンとジアセチル酒石酸と脂肪酸との反応により得ることができる。
【0020】
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルの製法の概略は以下の通りである。即ち、グリセリンモノ脂肪酸エステルを溶融し、これにジアセチル酒石酸の酸無水物を加え、温度120℃前後で約90分間反応する。グリセリンモノ脂肪酸エステルとジアセチル酒石酸の酸無水物との比率はモル比で1/1〜1/2が好ましい。さらに、反応中は生成物の着色、臭気を防止するために、反応器内を不活性ガスで置換する方が好ましい。得られたグリセリンモノ脂肪酸エステルとジアセチル酒石酸の酸無水物との反応物は、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルの他に、ジアセチル酒石酸、未反応のグリセリンモノ脂肪酸エステル、その他を含む混合物である。
【0021】
上記グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸等の群から選ばれる一種あるいは二種以上の混合物が挙げられ、好ましくはステアリン酸を約50質量%以上含有する脂肪酸又は脂肪酸混合物である。
【0022】
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルとしては、例えばポエムW−70(理研ビタミン社製)などが商業的に製造・販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0023】
本発明の成型ポテトチップス用乳化剤製剤は、二種以上のグリセリン脂肪酸エステルを融点以上に加熱して溶融・混合し、得られた溶融物を−196〜15℃、好ましくは−196〜0℃、更に好ましくは−196〜−20℃の温度条件で噴霧冷却することにより製造される。
【0024】
溶融温度は、グリセリン脂肪酸エステルとして、反応モノグリセライド及びグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを用いる場合、通常約80〜100℃である。
【0025】
二種以上のグリセリン脂肪酸エステルの比率は、使用するグリセリン脂肪酸エステルの種類などにより異なり一様ではないが、例えば反応モノグリセライドとグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルとの比率は質量比で10/90〜90/10が好ましく、30/70〜70/30がより好ましい。
【0026】
噴霧冷却は、例えば、一般的な噴霧冷却装置を使用し、該溶融物を例えば冷却した気体の充填された塔内に噴霧することにより実施される。塔内の気体を冷却するために液体窒素を用いる場合、液体窒素は塔内の上段、中段および下段のいずれから注入しても良く、また2箇所以上から注入しても良い。噴霧には加圧式噴霧ノズルや回転円盤式噴霧ノズルなどが用いられ、好ましくは加圧式噴霧ノズルである。噴霧された溶液は冷却されて粉末となって塔下部に落下し捕集される。得られる粉末の平均粒子径は、好ましくは約50〜1000μm、より好ましくは約100〜500μmである。
【0027】
更に、上記噴霧冷却で得られた粉末同士の付着を抑制するため、粉末100質量部に流動化剤約5〜17質量部を加えて混合することが好ましく行われる。流動化剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、二酸化ケイ素、酸化チタン、タルクなどが挙げられる。
【0028】
本発明の成型ポテトチップスの製造方法は、成型ポテトチップス原料に上記成型ポテトチップス用乳化剤製剤を添加して生地を調製する工程を含むものである。
【0029】
成型ポテトチップスを製造するための原料(成型ポテトチップス原料)としては、通常乾燥マッシュポテトが用いられる。乾燥マッシュポテトには、その形状によりフレーク状と粒状のものがあり、それぞれポテトフレークおよびポテトグラニュールなどと呼称されることがある。更に所望により、でんぷん、加工でんぷん、α化でんぷんなどのでんぷん類;小麦粉、米粉またはコーンフラワーなどの穀粉類;粉末油脂、チーズ粉末、糖類、食塩、香辛料、調味料、香料、酸味料、甘味料、色素などを配合しても良い。
【0030】
成型ポテトチップスの生地は、上述した乾燥マッシュポテト等に適量の水を加えて混捏することにより調製される。成型ポテトチップス用乳化剤製剤は混捏の工程で添加されることが好ましい。好ましくは、成型ポテトチップス用乳化剤製剤と、乾燥マッシュポテト等の水以外の成型ポテトチップス原料とを予め粉体混合したものに適量の水を加えて混捏する。
【0031】
本発明の成型ポテトチップス用乳化剤製剤の添加量は、成型ポテトチップス用乳化剤製剤と、乾燥マッシュポテト、水等の成型ポテトチップス原料とから得られる生地全体、すなわち生地100質量%中、約0.1〜10質量%の範囲である。
【0032】
得られた生地をローラーで圧延してシート状とすることにより、生地シートが得られる。生地シートの厚さは、通常約0.4〜2.5mmの範囲で適宜選択される。
【0033】
該生地シートは、所望の最終製品のサイズおよび形状、例えば円形、長円形、三角形、正方形などに型を抜いて成型され、フライヤーでフライされる。また、フライ前に、予め成型された生地を、熱風乾燥、遠赤外線乾燥またはマイクロウェーブによる乾燥など公知の方法により乾燥し、水分含量を調整しても良い。また、成型された生地は、上下を金網で挟み込んだ状態でフライされるのが好ましい。フライに用いられる油は、通常フライ油として用いられている食用油脂であれば良く、特に制限はない。フライ油の温度は約150〜205℃、好ましくは約160〜190℃である。フライ時間は、通常10〜180秒程度である。なお、フライ油の温度およびフライ時間は、得られる成型ポテトチップスの色調や水分量を基準に適宜決定される。例えば、得られる成型ポテトチップスの表面積の50%以上が黄茶色(JIS Z 8102 : 2001 「物体色の色名」に採録されている慣用色名)となるようにフライ油の温度およびフライ時間を設定することができる。また、フライ油の温度およびフライ時間は、得られる成型ポテトチップスの水分量が3%以下、好ましくは2%以下になるように適宜調整することが、保存性や食感などの点で好ましい。
【0034】
該成型ポテトチップスには、所望により、糖類、食塩、香辛料、粉末醤油、調味料、香料、酸味料、甘味料などをまぶすなどの方法で調味付けが行われても良い。
【0035】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
[実施例]
(1)成型ポテトチップス用乳化剤製剤の製造
反応モノグリセライド(商品名:ポエムP−200;理研ビタミン社製)2.5kgをタンクに仕込み95℃で溶融し、これにグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムW−70;理研ビタミン社製)2.5kgを加え、95℃で溶融・混合した。得られた溶融液を、塔内部の空気が送風温度−20℃で冷却された噴霧冷却装置(試験機)に供給して噴霧冷却し、冷却固化した乳化剤の粒子を塔下部で回収した。該粉末の収量は4.8kg、その平均粒子径は約300μmであった。得られた粉末と第三リン酸カルシウム0.53kgとを混合(いわゆる粉々混合)し、成型ポテトチップス用乳化剤製剤(実施例品)5.33gを得た。
【0037】
(2)成型ポテトチップスの製造
ポテトフレーク(ギャバン社製)39.6g、ポテトグラニュール(ギャバン社製)39.6g、馬鈴薯澱粉(幸田商店社製)39.6g、食塩1.2gおよび成型ポテトチップス用乳化剤製剤(実施例品)0.665gを30℃で1分間混合し、混合物をニーダー(商品名:レディースニーダー KN−30;大正電機社製)に入れ、30℃のイオン交換水95.0gを加えて30℃で3分間混捏した。得られた生地をローラーで約2.2mmの厚さに圧延し、直径2.8mmの円形セルクルで型抜きしたものを165℃のショートニング(商品名:フライメート;ミヨシ油脂社製)により該生地の表面積の50%以上が黄茶色(JIS Z 8102 : 2001 「物体色の色名」に採録されている慣用色名。以下同じ。)となるまでフライし、成型ポテトチップス(試作品1)を得た。得られた成型ポテトチップスの水分量は1.89%であった。
【0038】
[比較例1]
(1)成型ポテトチップス用乳化剤製剤の製造
反応モノグリセライド(商品名:ポエムV−200;理研ビタミン社製)52.5g、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムW−70;理研ビタミン社製)52.5g、デキストリン(商品名:パインデックス#2;松谷化学社製)420g、イオン交換水975gを加え混合し、混合液の温度を70℃とした後にクレアミックス(エムテクニック社製)を用いて7000rpmで3分撹拌して均一な水分散液を調製した。得られた水分散液をスプレードライヤ(型式:L−8i;大川原化工機社製)を使用して、噴霧乾燥(送風温度150℃、排風出口温度90℃)し、成型ポテトチップス用乳化剤製剤(比較例品1)300gを得た。得られた成型ポテトチップス用乳化剤製剤の水分量は2.62%であり、乳化剤含有量は18.6%であった。
【0039】
(2)成型ポテトチップスの製造
ポテトフレーク(ギャバン社製)39.6g、ポテトグラニュール(ギャバン社製)39.6g、馬鈴薯澱粉(幸田商店社製)39.6g、食塩1.2gおよび成型ポテトチップス用乳化剤製剤(比較例品1)3.24gを30℃で1分間混合し、混合物をニーダー(商品名:レディースニーダー KN−30;大正電機社製)に入れ、30℃のイオン交換水95.0gを加えて30℃で3分間混捏した。得られた生地をローラーで約2.2mmの厚さに圧延し、直径2.8mmの円形セルクルで型抜きしたものを165℃のショートニング(商品名:フライメート;ミヨシ油脂社製)により該生地の表面積の50%以上が黄茶色となるまでフライし、成型ポテトチップス(試作品2)を得た。得られた成型ポテトチップスの水分量は1.13%であった。
【0040】
[比較例2]
(1)成型ポテトチップス用乳化剤製剤の製造
反応モノグリセライドを噴霧冷却することにより製造された市販の粉末状の乳化剤製剤(商品名:ポエムP−200;理研ビタミン社製)90gと第三リン酸カルシウム10gとを粉々混合し、成型ポテトチップス用乳化剤製剤(比較例品2)100gを得た。
【0041】
(2)成型ポテトチップスの製造
ポテトフレーク(ギャバン社製)39.6g、ポテトグラニュール(ギャバン社製)39.6g、馬鈴薯澱粉(幸田商店社製)39.6g、食塩1.2gおよび乳化剤製剤(比較例品2)0.665gを30℃で1分間混合し、混合物をニーダー(商品名:レディースニーダー KN−30;大正電機社製)に入れ、30℃のイオン交換水95.0gを加えて30℃で3分間混捏した。得られた生地をローラーで約2.2mmの厚さに圧延し、直径2.8mmの円形セルクルで型抜きしたものを165℃のショートニング(商品名:フライメート;ミヨシ油脂社製)により該生地の表面積の50%以上が黄茶色となるまでフライし、成型ポテトチップス(試作品3)を得た。得られた成型ポテトチップスの水分量は1.98%であった。
【0042】
[比較例3]
(1)成型ポテトチップス用乳化剤製剤の製造
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムW−70;理研ビタミン社製)90g、第三リン酸カルシウム10gと混合して、小型粉砕機(型番:SM−1C;AS ONE社製)を用いて「スピード5」で粉砕し、成型ポテトチップス用乳化剤製剤(比較例品3)90gを得た。
【0043】
(2)成型ポテトチップスの製造
ポテトフレーク(ギャバン社製)39.6g、ポテトグラニュール(ギャバン社製)39.6g、馬鈴薯澱粉(幸田商店社製)39.6g、食塩1.2gおよび乳化剤製剤(比較例品3)0.665gを30℃で1分間混合し、混合物をニーダー(商品名:レディースニーダー KN−30;大正電機社製)に入れ、30℃のイオン交換水95.0gを加えて30℃で3分間混捏した。得られた生地をローラーで約2.2mmの厚さに圧延し、直径2.8mmの円形セルクルで型抜きしたものを165℃のショートニング(商品名:フライメート;ミヨシ油脂社製)により該生地の表面積の50%以上が黄茶色となるまでフライし、成型ポテトチップス(試作品4)を得た。得られた成型ポテトチップスの水分量は1.48%であった。
【0044】
[対照例]
ポテトフレーク(ギャバン社製)39.6g、ポテトグラニュール(ギャバン社製)39.6g、馬鈴薯澱粉(幸田商店社製)39.6g、食塩1.2gを30℃で1分間混合し、混合物をニーダー(商品名:レディースニーダー KN−30;大正電機社製)に入れ、30℃のイオン交換水95.0gを加えて30℃で3分間混捏した。得られた生地をローラーで約2.2mmの厚さに圧延し、直径2.8mmの円形セルクルで型抜きしたものを165℃のショートニング(商品名:フライメート;ミヨシ油脂社製)により該生地の表面積の50%以上が黄茶色となるまでフライし、成型ポテトチップス(試作品5)を得た。得られた成型ポテトチップスの水分量は1.53%であった。
【0045】
[官能評価試験]
実施例および比較例1〜3で得た成型ポテトチップス(試作品1〜4)について、下記表1に示す評価基準に従い、食べたときのもろい食感(口の中で崩壊するような歯ざわり)を評価した。官能試験は10名のパネラーで行い、10名の評点の合計点を結果とした。結果を表2に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
表2から明らかなように、本発明の成型ポテトチップス用乳化剤製剤を用いて製造した成型ポテトチップスは、比較例のものに比べてもろい食感を有していた。
【0049】
[物性評価試験]
実施例、比較例1〜3および対照例で得た成型ポテトチップス(試作品1〜5)についてテクスチャーアナライザー(英弘精機社製)を用いた物性評価試験を実施した。試験では、円筒形のステンレス製の台(直径2.3mm、高さ46.0mm、厚さ1.1mm)に成型ポテトチップスを置き、テクスチャーアナライザーの球状(直径5mm)アダプターの先端が該成型ポテトチップスの中心部に接触した状態から該アダプターの速度10mm/sで成型ポテトチップスに侵入し、侵入開始から成型ポテトチップスが破断するまでの時間を測定して破断歪とした。この破断歪が小さいほど、もろい食感である可能性が高いことを示す。結果を表3に示した。
【0050】
【表3】

【0051】
表3から明らかなように、本発明の成型ポテトチップス用乳化剤製剤を用いて製造した成型ポテトチップスは、他のものに比べて破断歪が最も小さく、上記官能評価試験の結果にほぼ対応していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融した二種以上のグリセリン脂肪酸エステルを−196〜15℃の温度条件下で噴霧し、冷却固化して得られる成型ポテトチップス用乳化剤製剤。
【請求項2】
前記二種以上のグリセリン脂肪酸エステルは、少なくとも反応モノグリセライド及びグリセリン有機酸エステルであることを特徴とする請求項1記載の成型ポテトチップス用乳化剤製剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の成型ポテトチップス用乳化剤製剤を成型ポテトチップス原料に添加して生地を調製する工程を含むことを特徴とする成型ポテトチップスの製造方法。