説明

成型洗浄剤の製造の改良されたプロセス

本発明は、i.細長い鋳型に空隙を形成するために、インサートが実質的に鋳型と共通の範囲に及ぶ剛性の細長い鋳型に剛性のインサートを配置することと、ii.空隙に洗浄剤組成物の溶解物を充填することと、iii.溶解物の凝固を促進するために洗浄剤組成物を冷却することと、iv.細長い鋳型から固形の洗浄剤ログを取り出すこととを
含む複数のバーに切断することが可能な多相成型固形洗浄剤ログを製造するプロセスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相固形洗浄剤バーの成型プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
石鹸または非石鹸洗浄剤品は従来、押出し成形または成型方法のいずれかによって製造される。
【0003】
押出し成形方法による洗浄剤品の加工は、均質化、剪断作業および好適な形状への成形などの種々の作業を包含する。押出し機または押出し成形機は、成形作業の一部に対処するために使用される。押出し成形機による製品は、その後打ち抜かれタブレットまたはバーに成形されるログおよび/またはビレットに切断される。石鹸または洗浄剤塊の押出し成形は、連続的な作業である。
【0004】
洗浄剤バーの成型方法は従来、透明性の高い石鹸を製造するために使用される。成型を可能にするためには、洗浄組成物は、焦げることなく適度な温度、例えば60から150℃の範囲内で溶解することが可能でなければならず、周囲状況、例えば20から40℃の範囲内の温度で固形の状態でなければならない。成型は単一の鋳型で実施されてよい。単一の鋳型は冷却することが可能であり、個々のバーと同じサイズおよび形状である。鋳型は、洗浄剤組成物の溶解物で充填され、バーを形成するために冷却することができる。バーは次いで、鋳型から取り出される。
【0005】
別の製造技術は、溶解した石鹸を剛性の細長い鋳型、例えば管状鋳型であるSchicht冷却機で所望の断面のログに成型することを含み、溶解物が充填され冷却されると、ログが取り出され、個々のバーに切断され、任意選択で面取りされ、打ち抜かれて個々の石鹸バーを製造する。
【0006】
多相洗浄剤バーは、バーの視覚的魅力、および提供される機能上の利点の両方から消費者に好まれる。異なる相が単に異なる色を有してよく、またはバーの1つの相が透明で、別の相が不透明であってよく、または異なる相が別個の洗浄剤組成物であってよい。いくつかの多相バーにおいて、1つの相は基質に提供される有益な作用物質を有してよく、別の相は純粋に清浄機能を有してよい。あるいは、各相の組成物は別個のものでよく、異なる有益な作用物質が異なる相から提供されてよい。
【0007】
本発明者等は、複数のバーへと切断されることが可能な多相成型固形洗浄剤ログ、より詳細には、このログの切断面で、相の少なくとも1つが、別の相と完全に結合されるログを製造するための新規で極めて費用効果の高いプロセスを開発してきた。
【0008】
多相洗浄剤バーを製造するための多くの方法が開示されてきた。
【0009】
EP 0141444(Calstock Corp.1985)は、形成され硬化された原料の第2の部分が、形成される原料の第1の部分に挿入され、その結果原料の第1の部分を形成することによって、原料の第1の部分によって原料の第2の部分の全ての面が密閉されることを特徴とする、原料の別々に着色された部分が結合される石鹸の合成ケークの製造方法を開示する。この公報は、事前に成形された固形ケークの空隙に固形部分を挿入することによって、石鹸の合成ケークを形成する方法を開示する。また、それぞれの石鹸のケークに対してこのプロセス段階を繰り返さなければならないことから、このプロセスは煩雑である。
【0010】
WO0202729(Ovation,2002)は、第1の視覚的特性を有する第1の石鹸要素と、第1の要素中に延び、第1の視覚的特性と目に見えて異なる第2の視覚的特性を有する第2の石鹸要素とを含む石鹸品を開示する。この公報はまた、共有押出し、あるいは打ち抜きまたは成型によって個々に要素を形成すること、および次いで合成された石鹸バーを形成するために2つの要素を組み合わせることを含む石鹸品を形成する方法を記載する。この公報は、2つの要素を一緒に押し出す(共有押出し)ことを教示するが、これは多くの溶解成型組成物では不可能である。また、それぞれおよび全ての石鹸のバーについて、2つの事前形成された固形要素を1つの石鹸バーに組み合わせることは、煩雑なプロセスである。
【0011】
US6376441(Unilever,2002)は、(i)少なくとも2つの空隙を形成するために、空隙を有する単一の鋳型に、バーのxおよびy軸によって形成された面に対して垂直な面に沿って形成される少なくとも1つの取外し可能なディバイダーを配置するステップと、(ii)鋳型、および少なくとも1つの取外し可能なディバイダーによって画定された第1の空隙に第1の溶解した洗浄物質を注入するステップと、(iii)第1の溶解洗浄物質をそれが硬化するまで冷却するステップと、(iv)少なくとも1つのディバイダーを鋳型から除去するステップと、(v)硬化した第1の洗浄物質および鋳型によって画定される第2の鋳型の空隙に第2の溶解洗浄物質を注入するステップと、(vi)第2の溶解洗浄物質をそれが硬化するまで冷却するステップと、(viii)鋳型から硬化した多層式トイレットバー成形品を取り出すステップとを有する多層式トイレットバーを形成するための溶解成型プロセスを開示する。この多層式トイレットバーは、それぞれの単一の鋳型について実施されなければならない一連のステップによって製造されることから、開示のこのプロセスは煩雑である。さらにこの公報は、1つの相が別の相によって完全に結合される多相バーを製造する方法を教示しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の目的は、複数のバーに切断することが可能な多相成型固形洗浄剤ログを製造するためのプロセスを提供することができることである。
【0013】
本発明の別の目的は、断面において、相の1つが、他の相の1つまたは複数と完全に結合される複数のバーに切断することが可能な多相成型固形洗浄剤ログを製造するためのプロセスを提供することができることである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、高い製造量を備えた便利で製造効果が高い方法で、断面において、相の1つが、他の相の1つまたは複数と完全に結合される複数のバーに切断することが可能な多相成型固形洗浄剤ログを製造するためのプロセスを提供することができることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、
i.細長い鋳型に空隙を形成するために、インサートが実質的に鋳型と共通の範囲に及ぶ剛性の細長い鋳型に剛性のインサートを配置することと、
ii.空隙に洗浄剤組成物の溶解物を充填することと、
iii.溶解物の凝固を促進するために洗浄剤組成物を冷却することと、
iv.細長い鋳型から固形の洗浄剤ログを取り出すこととを
含む複数のバーに切断することが可能な多相成型固形洗浄剤ログを製造するプロセスが
提供される。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、
i.細長い鋳型に空隙を形成するために、インサートが実質的に鋳型と共通の範囲に及ぶ剛性の細長い鋳型に剛性のインサートを配置することと、
ii.空隙に第1の洗浄剤組成物の溶解物を充填することと、
iii.溶解物の凝固を促進するために、洗浄剤組成物を冷却することと、
iv.空隙を形成するためにインサートを取り出すことと、
v.空隙に第2の洗浄剤組成物の溶解物を充填することと、
vi.凝固を促進するために溶解物を冷却することと、
vii.細長い鋳型から固形の洗浄剤ログを取り出すこととを
含む複数のバーに切断することが可能な多相成型固形洗浄剤ログを製造するプロセスが
提供される。
【0017】
本発明は、剛性の細長い鋳型で、複数のバーに切断することが可能な多相成型固形洗浄剤ログを製造するためのプロセスを提供する。本発明によれば用語「多相」は、別個の組成物を指すのに使用される。したがって、多相成型固形洗浄剤というフレーズは、空間的に別個の2つ以上の洗浄剤組成物を有する固形の洗浄剤製品を指す。また、ログの1つまたは複数の相は、周辺温度でゲルまたは構造化された半固体の塊として存在し、保存および使用の間、ログとそこから切断されるバーとの統合を確実にすることが可能である。本発明の洗浄剤バーは好ましくは、石鹸を構成する。
【0018】
鋳型の断面は、洗浄剤バーの所望の形状によって選択される。いかなる形状も使用することができるが、剛性の細長い鋳型の最も好ましい断面形状は、矩形、正方形、円形および楕円形である。剛性の細長い鋳型は、その中に充填された溶解した洗浄剤組成物の十分な冷却および凝固を確実にするために、冷却することができる。好ましい冷却構成は、鋳型を被覆することであり、覆いを介して冷却水を循環させることによって冷却が可能になる。鋳型の好ましい構成は、Schicht冷却機である。
【0019】
本発明によれば、複数のインサートを有することが可能である。剛性のインサートは、実質的に鋳型と共通の範囲に及び、好ましくは同軸である。剛性のインサートは、
(i) 成型または押出し成形のいずれかによって別々に製造され、剛性の鋳型に軸方向に挿入され、実質的に鋳型と共通の範囲に及ぶ洗浄剤の固形のログ、または
(ii) 実質的に鋳型と共通の範囲に及び、剛性の管状鋳型から取り出すことが可能な任意の他の物質の剛性の中空のまたは固形のブロックであってよい。
【0020】
洗浄剤の固形ログがインサートである場合、これは多相固形洗浄剤ログの相の1つである。洗浄剤の固形ログは、成型または押出し成形のいずれかによって、好ましくは成型によって別々に製造される。固形インサートはまた、別々に製造され細長い鋳型に挿入される押出しバーであってよい。このような押出しログインサートは、押出しログ内に存在することができるが、溶解成型組成物の温度で劣化するであろう例えばアルミニウムクロロハイドレートのような発汗抑制剤などの温度感受性活性を有することが望ましい場合、特に好ましい。
【0021】
さらに微粒子を含むことが望ましい場合、冷却および凝固の間、溶解成型組成物に対して高い密度差を有する微粒子は重力により細長い鋳型の底に沈殿する傾向にあるため、これらは押出しログインサートに包含されることがあり、このため不十分な質の不均一な洗浄剤ログを提供することになる。洗浄剤ログインサートの位相の断面形状は、所望により選択され、正方形、矩形、円形、楕円形または任意の不規則な形状であってよい。インサートの断面形状は、剛性の細長い鋳型と同様の形状であることが好ましい。これが剛性のインサートとして剛性の細長い鋳型に挿入されると、鋳型の残りの空間が他の相の洗浄剤組成物の溶解物で充填される。溶解物は次いで、冷却されて多相洗浄剤組成物の複合ログを形成する。複合ログは次いで取り出され、任意選択で個々のバーに切断され、所望により面取りされ打ち抜かれる。
【0022】
剛性インサートが他のいずれかの原料である場合、これは中空または固形の、好ましくは中空であってよく、剛性の細長い鋳型から除去することが可能である。剛性インサートが中空の場合、これは好ましくは被覆されており、剛性インサートが中空、例えば細長い鋳型を同軸に挿入された中空管である場合、冷却水が、中空のインサートに充填された溶解物を冷却し凝固させるために、鋳型の環状空間で循環することができる。他の原料は好ましくは金属であり、好ましくはステンレス鋼、鋳鉄、銅または真鍮から選択され、最も好ましくはステンレス鋼である。本発明のこの態様において、洗浄剤組成物の溶解物は、剛性の細長い鋳型に1つまたは複数の剛性インサートを配置することによって形成される空隙の1つに充填される。このように充填された洗浄剤組成物は、固体状態まで冷却される。剛性インサートは次いで、剛性の細長い鋳型から除去される。このように形成された空隙は次いで、別の洗浄剤組成物で充填される。
【0023】
鋳型の全ての多相洗浄剤組成物は次いで、固体状態まで冷却されて複合ログを形成する。複合ログは次いで、鋳型から取り出され、任意選択で複数の洗浄剤バーに切断され、任意選択で面取りされ打ち抜かれる。
【0024】
多相成型固形洗浄剤ログの2つ以上の相が、互いの間で良好な粘着性結合を有さない場合、本発明のプロセスは、個々の相が機械的に相互連結される洗浄剤ログを製造するのに使用することができる。
【0025】
ここで、本発明を以下の本発明によるプロセスの非制限的な例示の実施形態を参照にして、単に例証の目的で図示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図面を参照すると、図1はステンレス鋼で形成された剛性の細長い鋳型(M)の正面図である。鋳型は、冷却水入口(CI1)および冷却水出口(CO1)を有する覆い(J1)を備える。図2は、楕円形断面図を有する鋳型(M)を示す、図1の鋳型の上面図である。
【0027】
使用中、やはりステンレス鋼で形成され、楕円形断面図を有する剛性インサート(I)は、図1および図2に示すように、鋳型(M)に挿入および配置されて、2つの空隙(C1、C2)を形成する。剛性管状インサートの覆いは、冷却水入口(CI2)および冷却水出口(CO2)を有する。洗浄剤組成物(D2)の溶解物が調製され、空隙C2に注入される。D2の洗浄剤組成物については表1を参照のこと。冷却水は覆い(J2)を通って循環し、剛性の管状インサートの洗浄剤組成物D2の冷却および凝固を可能にする。D2が凝固すると、インサート(I)は鋳型(M)から除去される。
【0028】
別の洗浄剤組成物D1の溶解物が調製され、空隙C1に充填され、覆いJ1を通る冷却水の循環によって冷却され凝固して多相洗浄剤組成物を調製する。この上面図が図3に示される。D1の洗浄剤組成物については表1を参照のこと。固体組成物は次いで、ログとして鋳型Mから取り出される。ログは次いで個々のバーに横断する方向で切断され、包装用に面取りされ打ち抜かれる。
【表1】

【0029】
さらに図面を参照すると、図4Aは、2つの相がC1およびC2で示された2相成型洗浄剤複合物の上面図である。図4Bは、互いに対して機械的相互連結する構成の2つの相を明確に示す成型洗浄剤ログの正面図である。図4Cは、図4Bの線X−Yに沿ったログの断面図である。
【0030】
使用中、図4BのC1の正面図を有する成型または押出しログは、鋳型に挿入され、その周りでC2の溶解した合成物が注入され、凝固するまで冷却される。ログは次いで、鋳型から取り出され、線P−Qに沿って切断されて図4Aの上面図を有する個々の洗浄剤バーを製造する。
【0031】
したがって本発明は、バーに切断することが可能な多相成型洗浄剤ログを製造するプロセスを提供する。このプロセスはまた、断面において、相の1つが他の相の1つまたは複数と完全に結合するバーの製造を可能にする。さらに、本発明は上記を高い生産率で、便利で費用効果の高い方法で可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】洗浄剤の多相成型固形ログを調製するための、破線で示される被覆された剛性インサートを備えた剛性の細長い鋳型の正面図である。
【図2】図1の鋳型の上面図である。
【図3】多相成型固形洗浄剤ログの編成上の図1の鋳型の上面図である。
【図4A】機械的に相互連結された構成における2つの異なる相を有する多相成型固形洗浄剤ログの上面図である。
【図4B】機械的に相互連結された構成における2つの異なる相を有する多相成型固形洗浄剤ログの正面図である。
【図4C】機械的に相互連結された構成における2つの異なる相を有する多相成型固形洗浄剤ログの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.細長い鋳型に空隙を形成するために、インサートが実質的に鋳型と共通の範囲に及ぶ剛性の細長い鋳型に剛性のインサートを配置することと、
ii.空隙に洗浄剤組成物の溶解物を充填することと、
iii.溶解物の凝固を促進するために洗浄剤組成物を冷却することと、
iv.細長い鋳型から固形の洗浄剤ログを取り出すこととを
含む複数のバーに切断することが可能な多相成型固形洗浄剤ログを製造するプロセス。
【請求項2】
剛性インサートが成型固形洗浄剤組成物である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
剛性インサートが中空のまたは固形のブロックである、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
剛性インサートが中空のブロックである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
ブロックが金属製である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
溶解物の凝固を促進するために洗浄剤組成物を冷却した後、
i.空隙を形成するためにインサートを取り出すステップと、
ii.空隙に第2の洗浄剤組成物の溶解物を充填するステップと、
iii.凝固を促進するために溶解物を冷却するステップとを
含む、請求項3から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
剛性の細長い鋳型が、矩形、正方形、円形または楕円形の断面を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
剛性の細長い鋳型が、円形または楕円形の断面を有する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
剛性インサートが、剛性の細長い鋳型と同様の断面形状を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
剛性インサートが、剛性の細長い鋳型と同軸である、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
複数の剛性インサートを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
剛性の細長い鋳型が被覆される、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
固形洗浄剤ログが、複数のバーに切断され、バーが面取りされ打ち抜かれる、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
洗浄剤組成物が石鹸を構成する、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2008−523228(P2008−523228A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545881(P2007−545881)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012838
【国際公開番号】WO2006/063691
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】