成形された裁縫リングを有する補綴僧帽心臓弁
【課題】成形された裁縫リングを有する補綴僧帽心臓弁の提供。
【解決手段】より良く僧帽心臓弁と組み合わさる成形された裁縫リングを含む補綴僧帽心臓弁である。裁縫リングは、流入端および流出端を含み、流出端は、少なくとも1つの隆起部分を有する。互いに約120度の間隔を置いて位置し、僧帽心臓弁の2つの前側の三角と適合するように設計された2つの隆起部分が存在し得る。隆起部分は、裁縫リングの流出端の隣接部分の上、約2mmの高さまで緩やかに上向きに曲がり得る。裁縫リングはまた、前側の面よりも後ろ側の面の周りでより柔軟になるように作られることによって、輪の後ろ側の周りに一般的により見られる石灰化した組織に適応する。成形された裁縫リングは、生体補綴弁および機械的な弁を含む様々な種類の心臓弁と組み合され得る。
【解決手段】より良く僧帽心臓弁と組み合わさる成形された裁縫リングを含む補綴僧帽心臓弁である。裁縫リングは、流入端および流出端を含み、流出端は、少なくとも1つの隆起部分を有する。互いに約120度の間隔を置いて位置し、僧帽心臓弁の2つの前側の三角と適合するように設計された2つの隆起部分が存在し得る。隆起部分は、裁縫リングの流出端の隣接部分の上、約2mmの高さまで緩やかに上向きに曲がり得る。裁縫リングはまた、前側の面よりも後ろ側の面の周りでより柔軟になるように作られることによって、輪の後ろ側の周りに一般的により見られる石灰化した組織に適応する。成形された裁縫リングは、生体補綴弁および機械的な弁を含む様々な種類の心臓弁と組み合され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的に僧帽弁輪に対する移植可能な補綴心臓弁に関し、より具体的には、そのような補綴心臓弁に対して成形された裁縫リングに関する。
【背景技術】
【0002】
2つの主だった種類の心臓弁の置換または補綴が公知である。1つは、機械タイプの心臓弁であって、ボールおよびケージの配置、あるいは下部構造に支えられた回転する機械式クロージャを用いることによって一方向性の血流を提供するものであり、Stobieらに対する特許文献1、およびBrendzelらに対する特許文献2において示され、それらの開示は、本明細書中に参照により明確に援用される。もう一方は、組織タイプまたは「生体補綴」弁であり、下部構造によって支えられた柔軟な葉状部を有し、フローストリームに突出して元々のヒトの心臓弁のもののように機能し、それらの自然な屈曲動作を真似ることによって互いと接合し、一方向の血流を確実なものとする。柔軟な葉状弁の一実施例は、Huynhらに対する特許文献3に開示され、その開示は、本明細書中に参照により明確に援用される。
【0003】
組織タイプの弁において、全体的な異種移植の弁(例えば、ブタ)または複数の異種移植の葉状部(例えば、ウシの心膜)は、通常は流体閉塞面を提供する。合成の葉状弁が提案され、従って用語「柔軟な葉状弁」は、自然および人工の「組織タイプ」弁の両方を指す。2つ以上の柔軟な葉状弁が、周囲の支持構造内に取り付けられ、該支持構造は、通常は、流出方向に突出しているポストまたは交連を含み、生得の輪における自然な繊維状の交連を真似る。該弁の構成要素は、通常は1つ以上の生体適合が可能なファブリック(例えば、ダクロン)のカバーを用いて組み立てられ、ファブリックでカバーされた裁縫リングが、末梢の支持構造の流入端に提供される。
【0004】
ほとんどの生体補綴タイプの弁において、金属または重合体の構造が、そこから突出する柔軟な葉状部に対する基部の支持を提供する。そのような支持物のうちの1つは、弾性のある「支持フレーム」であり、時に「ワイヤフォーム」または「ステント」と呼ばれ、複数(通常は3つ)の大型の半径の尖を有し、柔軟な葉状部の尖領域(すなわち、全体的な異種移植の弁または3つの別個の葉状部のいずれか)を支える。隣接する尖の各組の端部は、やや漸近的に集まることによって先細になって終わる直立した交連を形成し、該端のそれぞれは、弓状の尖と向かい合った方向に延びており、比較的により小さな半径を有する。支持フレームは、概して円錐形のチューブであり、小さな直径の端において交連の先端部を有する。これは、波状の基準形状を提供し、大動脈の輪における自然な繊維状の構造のように各葉状部の固定されたエッジが(ファブリックおよび縫合糸などの構成要素を介して)結合する。他の「支持フレーム」の構造は、シートのようなチューブ状の形状を提示するが、それでもなお、その流出端において交連および尖を定義し、例えばGerardらに対する特許文献4に示され、その開示は、本明細書中に参照により明確に援用される。
【0005】
補綴心臓弁が移植される最も一般的な位置は、左心室と関係する大動脈弁および僧帽弁であり、2つの心室のうちで、より高い圧力を生成する。大動脈弁および僧帽弁の解剖学的構造は、かなり異なり、前者は、3つの葉状部の構造であり、後者は、2つの異なる葉状部を有する。大動脈の輪は、実質的に円形のリングの周りに波状の繊維状構造を定義し、生得の葉状部の尖および交連の上下した形状を支える。一方で、僧帽弁輪は、大動脈弁からの心臓の隔膜に渡って、やや繊維状で線状の前側の面を有するが、該輪の大半を定義する後ろ側の面は、比較的に繊維状ではなく、より筋肉質である。また、後ろ側の面は、ほとんど楕円形の形状であり、それによって僧帽弁輪は、奇形の「D」の字型で表される。さらに、僧帽弁輪は、その末梢において大動脈の輪のような上下する波状の形状を提示せず、概して平らであるが、その前側の面は、線維三角の位置においてより低く、その間で高くなるような形をなしており、サドルのような形状をなしている。本発明は、補綴心臓弁に向けられ、特に、僧帽弁輪における移植に適している。
【0006】
左心室LVおよびそれに関連する弁が、前後の面に沿った垂直断面図で図1に図示される。僧帽弁MVは、左心房LAと左心室LVとの間の流れを制御し、大動脈弁AVは、左心室LVと上行大動脈AAとの間で機能する。僧帽弁と大動脈弁との両方は、葉状部を含み、該葉状部は、血液の流路に延び、それぞれの輪によってその末梢の周辺で支えられている。議論の目的のために、通常の健康な心臓の僧帽弁輪は、一般的に、僧帽弁MVを介する平均的な血流方向20(図1を参照)に直角をなして定義される僧帽弁輪面MAPに存在する。通常の僧帽弁輪は、3次元であり得るが、僧帽弁面MAPは、輪の前側および後ろ側に向かって延びる基準面として用いられる。乳頭筋は示されていないが、左心室LVの内壁の下部分に結合し、腱索は、前側および後ろ側の葉状部の乳頭筋および自由エッジとの間に延び、それらをリンクさせる。
【0007】
図2は、手術の間に露出される左心房からの僧帽弁を例示し、図2Aは、一般的に識別される特徴を平面図において模式的に識別する。平均的なヒトの僧帽弁輪の断面域は、5〜11cm2である。僧帽弁輪の前側の面は、「心臓骨格」の一部を形成し、前外側ALTおよび後内側PMTの線維三角を含む。僧帽弁輪MVは、前側の葉状部Aと協同または接合する後ろ側の葉状部(3つの尖P1、P2およびP3に分離される)を有する二尖弁である。前外側ALTおよび後内側PMTの三角は、前側の葉状部Aと後ろ側の葉状部P1およびP3の第1および第3の尖のそれぞれとの分岐点において示される。これらの分岐点はまた、葉状部の間の交連として公知である。
【0008】
図2Aを参照すると、上述のように、僧帽弁輪は、直線部分を有する奇形の「D」の字の形状、つまりは前側の面を有し、該面は、前外側ALTおよび後内側PMTの三角の間に延びている。僧帽弁輪の最長の寸法は、長軸22を定義し、最短の寸法は、短軸24を定義する。短軸24は、概して前側の葉状部Aを2等分する。僧帽弁輪は、円形ではないが、その中心26は、長軸22と短軸24との交わりにおいて定義され得る。放射状の線が、この想像上の中心26から外向きに前外側ALTおよび後内側PMTの三角を通って図示され、その間の角を形成する分離点φを示す。この角を形成する分離点φは、患者によって異なるが、概して僧帽弁輪の周りの円周の3分の1、つまりは120度である。
【0009】
様々な補綴心臓弁が、当該分野において提案されてきたが、概して異なる弁輪の固有の特性を深く考慮したものはなかった。特に、それらの提案において、僧帽弁輪に補綴弁をより良く順応させる試みは、殆どなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,143,025号明細書
【特許文献2】米国特許第6,719,790号明細書
【特許文献3】米国特許第6,585,766号明細書
【特許文献4】米国特許第5,984,973号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面によれば、補綴心臓弁のための裁縫リングは、流入−流出の方向を定義する軸の周りに配列された、縫合糸を通す輪状部材を備えている。該輪状部材は、実質的に平らな流入端と流出端とを有し、該流出端は、該流出端の隣接部分に対して軸方向に隆起する少なくとも一部分を含む。該軸方向への隆起部分は、輪状部材の最も大きな軸方向の寸法の約50%の高さまで緩やかに上向きに隆起し得る。一実施形態において、該輪状部材の最も大きな軸方向の寸法は、約4mmである。好ましくは、約120度に間隔を置いて分離した、2つの軸方向への隆起部分が、流出端上に存在する。
【0012】
輪状部材は、軸方向への該隆起部分の間の中間の点において、隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置し、中間点と正反対に向かい合う位置よりも柔軟であり得ない。輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーから作られ得、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義し、流出端上に間隔を置いて分離した2つの軸方向への隆起部分が存在する。一実施形態において、該放射状の壁は、該軸方向への隆起部分の間の中間点において、該隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置し、中間点と正反対に向かい合う位置における該放射状の壁よりも厚い。別の実施形態において、該空間は、該軸方向への隆起部分の間の中間点において、該隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置し、中間点と正反対に向かい合う位置における該空間よりも小さい。あるいは、輪状部材は、巻かれたファブリックから作られ、流出端上に間隔を置いて分離した2つの軸方向への隆起部分が存在し、該ファブリックは、該軸方向への隆起部分の間の中間点において、該隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置し、中間点と正反対に向かい合う位置における該ファブリックよりもしっかりと巻かれている。
【0013】
本発明の別の局面は、補綴心臓弁のための裁縫リングを提供し、該裁縫リングは、流入−流出の方向を定義する軸の周りに配列された、縫合糸を通す輪状部材を備え、該輪状部材は、その円周の周りに変更可能なコンプライアンスを有する。輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーから作られ得、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義する。一実施形態において、片側の周りの放射状の壁は、別の側の周りの該放射状の壁よりも厚く、代替的な実施形態において、片側の周りの該空間は、別の側の周りの該空間よりも小さい。あるいは、輪状部材は、ポリマーのファブリック、例えば不織のフェルトまたは巻かれたファブリックから作られ得る。後者の構成において、該ファブリックは、片側において別の側よりもよりしっかりと巻かれている。
【0014】
特に好ましい実施形態において、裁縫リングは、前側面と後ろ側面との周りに間隔を置いた2つの三角を有する僧帽状弁の輪における移植のための、僧帽心臓弁の構成要素を形成する。輪状部材は、次いで前側および後ろ側を有し、輪状部材は、その前側において、その後ろ側よりもよりコンプライアンスを有する。輪状部材は、軸の周りに配列されることによって流入端および流出端を定義し得、該流出端は、隣接部分に対して軸方向に隆起した、概して前側を定義する2つの部分を含む。流出端の2つの軸方向への隆起部分は、約120度に分離して間隔を置いている。
【0015】
さらなる局面によれば、僧帽弁輪における移植のための補綴僧帽心臓弁が提供される。該僧帽弁輪は、約120度に分離して間隔を置いている2つの前方の三角を備えている。該心臓弁は、流入−流出の方向に沿った軸の周りのオリフィスを定義する支持フレームと、該支持フレーム上の動きのために取り付けられることによって該オリフィスにおける一方向の弁を提供する複数の葉状部とを備えている。裁縫リングは、該心臓弁を該僧帽弁輪に結合させるために該支持フレームに接続され、その周りに配置される。該裁縫リングは、流入端および流出端を有し、該流出端は、移植時に該2つの前方の三角と適合するように間隔を置かれた該流出端の残りの部分に関連した軸方向への隆起部分を含む。
【0016】
補綴僧帽心臓弁において、支持フレームは、波状の形状を有し、流入方向に延びた3つの尖と互い違いになる、流出方向に延びる3つの軸方向に配置された交連を含む。この場合において、該交連のうちの2つは、裁縫リングの2つの軸方向への隆起部分に隣接して位置し、心臓弁は、該支持フレームの該波状の形状の周りに取り付けられた3つの柔軟な葉状部を含む。あるいは、支持フレームは、概して輪状の輪郭を有し、心臓弁は、該支持フレーム内の旋回運動のために取り付けられた2つの強固な葉状部を含む。一実施形態において、軸方向への隆起部分は、流出端の隣接部分から裁縫リングの最も大きな軸方向の寸法の約50%の高さにまで上向きに緩やかに曲がる。さらに、縫合糸を通す輪状部材は、その円周の周りに可変のコンプライアンスを有し得る。
【0017】
本発明はまた、僧帽弁輪において、補綴僧帽心臓弁を移植する方法を提供し、該輪は、2つの空間を置いた前側の三角を備えている。該方法は、外側に向けられた裁縫リングを有する補綴僧帽心臓弁を提供し、該心臓弁を僧帽弁輪に結合させることであって、該裁縫リングは、流入端および流出端を有し、該流出端は、2つの前方の三角と適合するように間隔を置かれた該流出端の残りの部分に関連した軸方向への隆起部分を含む、ことと、2つの軸方向への隆起部分が、該輪の2つの前側の三角に隣接して位置するように、僧帽弁輪において補綴僧帽心臓弁を移植することとを包含する。
【0018】
好ましくは、裁縫リングは、縫合糸を通す輪状部材を含み、移植のステップは、裁縫リングを僧帽弁輪に縫合することを含む。例えば、裁縫リングは、ファブリックのカバーによって囲繞された縫合糸を通す輪状部材であり得る。補綴僧帽心臓弁は、該弁が移植されたときには、流出方向を向いて心室に延びる3つの軸方向に配置された交連を有し得、最初の2つの交連は、2つの軸方向への隆起部分と同一の位置において心臓弁の周りに位置し、第3の交連は、最初の2つの交連から等距離の位置にある。この場合において、方法は、輪の面に対する角度に該補綴僧帽心臓弁を傾斜させることによって、第3の交連が隣接する心室から離れるような角度になり、その間の接触の可能性を低減させることを含む。
【0019】
別の実施形態において、裁縫リングは、軸方向への該隆起部分において、該軸方向への隆起部分から正反対に向かい合う位置よりも柔軟ではない。方法は、輪の残りの部分よりもより石灰化した部分を有する僧帽弁輪において実施され得る。そのような病理において、方法は、輪状部材の比較的によりコンプライアンスを有する部分が、より石灰化された僧帽弁輪の部分に隣接して位置されるように、僧帽弁輪に補綴僧帽心臓弁を移植することを含む。
【0020】
本発明の別の発明の方法は、弁輪に心臓弁を結合させるために、外向きに向いた裁縫リングを有する補綴心臓弁を最初に提供することによって、患者の心臓弁輪に補綴心臓弁を移植することを含む。裁縫リングは、流入−流出方向を定義する軸の周りに配置された縫合糸を通す輪状部材を有し、その円周において可変のコンプライアンスを有する。方法は、正反対に向かい合う部分よりも比較的によりコンプライアンスを有する輪状部材の部分が、輪の周りの所定の位置に位置付けられるように、輪に補綴心臓弁を移植することを含む。例えば、輪は、該輪の残りの部分よりもより石灰化する面を有し得、移植のステップは、より石灰化する輪の面に隣接する、比較的によりコンプライアンスを有する輪状部材の部分を位置付けることを含む。より具体的には、方法は、前側の面および後ろ側の面を有する僧帽弁輪で実施され得、該輪状部材は、僧帽弁輪の前側の面に結合する前側と、僧帽弁輪の後ろ側に結合する後ろ側とを有し、輪状部材の比較的によりコンプライアンスを有する部分は、その後ろ側に位置する。
【0021】
本発明の本質および利点のさらなる理解は、以下の記述および特許請求の範囲において明らかになり、特に、同等の部分が同等の参照番号で示される添付の図面とともに考察されるときに明らかとなる。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
補綴心臓弁のための裁縫リングであって、
流入−流出の方向を定義する軸の周りに配列された、縫合糸を通す輪状部材を備え、
該輪状部材は、実質的に平らな流入端と流出端とを有し、該流出端は、該流出端の隣接部分に対して軸方向に隆起する少なくとも一部分を含む、裁縫リング。
(項目2)
前記軸方向に隆起した部分は、前記流出端の前記隣接部分から上向きに、前記輪状部材の最も大きな軸方向の寸法の約50%の高さまで緩やかに湾曲する、項目1に記載の裁縫リング。
(項目3)
前記輪状部材の前記最も大きな軸方向の寸法は、約4mmである、項目2に記載の裁縫リング。
(項目4)
約120度に間隔を置いて分離した2つの軸方向への隆起部分が、前記流出端上に存在する、項目1に記載の裁縫リング。
(項目5)
前記輪状部材は、軸方向への該隆起部分の間の中間点において、前記隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置し、該中間点と正反対に向かい合う位置よりも柔軟ではない、項目4に記載の裁縫リング。
(項目6)
前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義し、
前記流出端上に間隔を置いて分離した2つの軸方向への隆起部分が存在し、
該放射状の壁は、該隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置している該軸方向への隆起部分の間の中間点において、前記中間点と正反対に向かい合う位置における該放射状の壁よりも厚い、項目1に記載の裁縫リング。
(項目7)
前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義し、
前記流出端上に間隔を置いて分離した2つの軸方向への隆起部分が存在し、
該空間は、該隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置している該軸方向への隆起部分の間の中間点において、前記中間点と正反対に向かい合う位置における該空間よりも小さい、項目1に記載の裁縫リング。
(項目8)
前記輪状部材は、巻かれたファブリックを含み、
前記流出端上に間隔を置いて分離した2つの軸方向への隆起部分が存在し、
該ファブリックは、該軸方向への隆起部分の間の中間点において、該隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置し、前記中間点と正反対に向かい合う位置における該ファブリックよりもしっかりと巻かれている、項目1に記載の裁縫リング。
(項目9)
補綴心臓弁のための裁縫リングであって、
流入−流出の方向を定義する軸の周りに配列された、縫合糸を通す輪状部材を備え、
該輪状部材は、その円周の周りに変更可能なコンプライアンスを有する、裁縫リング。
(項目10)
前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義し、
片側の周りの前記放射状の壁は、別の側の周りの該放射状の壁よりも厚い、項目9に記載の裁縫リング。
(項目11)
前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義し、
片側の周りの該空間は、別の側の周りの該空間よりも小さい、項目9に記載の裁縫リング。
(項目12)
前記輪状部材は、ポリマーのファブリックを含む、項目9に記載の裁縫リング。
(項目13)
前記輪状部材は、巻かれたファブリックを含み、該ファブリックは、片側において別の側よりもよりしっかりと巻かれている、項目12に記載の裁縫リング。
(項目14)
前記裁縫リングは、前側面と後ろ側面との周りに間隔を置いた2つの三角を有する僧帽状弁の輪における移植のための、僧帽心臓弁の構成要素を形成し、
前記輪状部材は、前側および後ろ側を有し、
該輪状部材は、その前側において、その後ろ側よりもよりコンプライアンスを有する、項目9に記載の裁縫リング。
(項目15)
前記輪状部材は、軸の周りに配列されることによって流入端および流出端を定義し、該流出端は、隣接部分に対して軸方向に隆起した、概して前側を定義する2つの部分を含む、項目14に記載の裁縫リング。
(項目16)
前記流出端の前記2つの軸方向への隆起部分は、約120度に分離して間隔を置いている、項目15に記載の裁縫リング。
(項目17)
僧帽弁輪における移植のための補綴僧帽心臓弁であって、該輪は、約120度に分離して間隔を置いている2つの前方の三角を備えている、該心臓弁は、
流入−流出の方向に沿った軸の周りのオリフィスを定義する支持フレームと、
該支持フレーム上の動きのために取り付けられることによって該オリフィスにおける一方向の弁を提供する複数の葉状部と、
該支持フレームに接続され、その周りに配置され該心臓弁を該僧帽弁輪に結合する裁縫リングであって、該裁縫リングは、流入端および流出端を有し、該流出端は、移植時に該2つの前方の三角と適合するように間隔を置かれた該流出端の残りの部分に関連した軸方向への隆起部分を含む、裁縫リングと
を備えている、補綴僧帽心臓弁。
(項目18)
前記支持フレームは、波状の形状を有し、流入方向に延びた3つの尖と互い違いになる、前記流出方向に延びる3つの軸方向に配置された交連を含み、
該交連のうちの2つは、裁縫リングの2つの軸方向への隆起部分に隣接して位置し、前記心臓弁は、該支持フレームの該波状の形状の周りに取り付けられた3つの柔軟な葉状部を含む、項目17に記載の心臓弁。
(項目19)
前記支持フレームは、概して輪状の輪郭を有し、前記心臓弁は、該支持フレーム内の旋回運動のために取り付けられた2つの強固な葉状部を含む、項目17に記載の心臓弁。
(項目20)
前記軸方向への隆起部分は、前記流出端の前記隣接部分から前記裁縫リングの最も大きな軸方向の寸法の約50%の高さまで上向きに緩やかに曲がる、項目17に記載の心臓弁。
(項目21)
前記縫合糸を通す輪状部材は、その円周の周りに可変のコンプライアンスを有する、項目17に記載の心臓弁。
(項目22)
前記裁縫リングは、前記隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置している軸方向への該隆起部分の間の中間の点において、中間点と正反対に向かい合う中間点よりも柔軟ではない、項目21に記載の心臓弁。
(項目23)
前記裁縫リングは、ファブリックのカバーによって囲繞された縫合糸を通す輪状部材を含み、
該輪状部材は、複数の放射状の壁を有し、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義し、
該放射線状の壁は、前記隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置している該軸方向への隆起部分の間の中間点において、前記中間点と正反対に向かい合う位置における該放射状の壁よりも厚い、項目22に記載の心臓弁。
(項目24)
前記裁縫リングは、ファブリックのカバーによって囲繞された縫合糸を通す輪状部材を含み、
該輪状部材は、複数の壁を有し、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義し、
該空間は、前記隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置している該軸方向への隆起部分の間の中間点において、前記中間点と正反対に向かい合う位置における該空間よりも小さい、項目22に記載の心臓弁。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、左心室LVおよびそれに関連する弁を例示し、前および後の面に沿った部分的な垂直部分として見られる心臓の図である。
【図2】図2は、関連する心房を取り除いて拡大された、大動脈輪および僧帽弁輪の上からの図である。
【図2A】図2Aは、図2に対応して見られる僧帽弁輪の模式図であり、最も突起した解剖上の特徴および学術用語を示す。
【図3A】図3Aは、僧帽弁輪における従来技術の補綴心臓弁の従来的な配置を例示する、前後面に沿った部分的な垂直部分である。
【図3B】図3Bは、僅かに傾斜した移植位置を示す、僧帽弁輪における本発明の補綴心臓弁の配置を例示する、前後面に沿った部分的な垂直部分である。
【図4】図4は、例示的な波状の心臓弁用支持フレームの斜視図である。
【図5】図5は、図4の支持フレームを用いて組み立てられ、本発明の例示的な心臓弁において用いられる3つの柔軟な葉状部の斜視図である。
【図6】図6は、成形された裁縫リングを有する、本発明の、組み立てられた柔軟な葉状部の僧帽心臓弁の斜視図である。
【図7A】図7Aは、本発明の裁縫リングの例示的な輪状部材に関する、流出端の斜視図である。
【図7B】図7Bは、本発明の裁縫リングの例示的な輪状部材に関する、流出端の斜視図である。
【図8】図8は、裁縫リングの輪状部材の片側の正面図である。
【図9】図9は、輪状部材の流入端の平面図である。
【図10】図10は、輪状部材の流出端の平面図であり、複数の放射状の壁を示し、該壁は、その間の様々な大きさの空間を定義する。
【図10A】図10Aは、異なる大きさの空間の詳細を示す、輪状部材の流出端の一部分の拡大図である。
【図11】図11は、輪状部材の別の側の正面図である。
【図11A】図11Aは、輪状部材の別の側を通って取られた半径の断面図である。
【図12】図12は、輪状部材のさらに先の側の正面図である。
【図12A】図12Aは、輪状部材のさらに先の側を通って取られた半径の断面図である。
【図12B】図12Bは、輪状部材を介する半径の断面の拡大図である。
【図13】図13は、成形された裁縫リングを有する、本発明の、組み立てられた強固な葉状部の僧帽心臓弁の斜視図である。
【図13A】図13Aは、異なるコンプライアンスの部分を示す、線13A−13Aに沿って取られた、図13の成形された裁縫リングを介する半径の断面図である。
【図13B】図13Bは、異なるコンプライアンスの部分を示す、線13B−13Bに沿って取られた、図13の成形された裁縫リングを介する半径の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、僧帽弁輪に対する改良された補綴心臓弁を提供する。本明細書中に開示の補綴心臓弁は、時に裁縫カフとして知られる、成形された縫合糸リングまたは裁縫リングを有し、該リングは、僧帽弁輪の構造により良好に適合し、かつ輪の面に対する角度に弁を配置する。裁縫リングは、その流出端に少なくとも1つの軸方向への隆起部分を有し、該部分は、僧帽弁輪の前方の側とぴったりと適合する。例示された実施形態において、2つのそのような軸方向への隆起部分があり、それぞれは、僧帽弁輪の線維三角のうちの1つに対応し、一方で、流出端の後ろ側は、通常は平面である。しかし、理解されるべきは、流出端の後ろ側も、成形され得るか、または輪の面以外の形状を有し得ることである。
【0024】
本明細書中に開示の裁縫リングは、バイオ補綴または機械的などのあらゆる種類の補綴心臓弁、柔軟な葉状部または剛体の葉状部とともに有用である。第1の例示的な実施形態は、柔軟な葉状弁であり、剛体の葉状弁は、図13に例示される。成形された裁縫リングによって具現化された特定の利点は、オクルダー(occluder)構造に関係なく、全ての補綴僧帽心臓弁に適用可能であることを、当業者は理解されたい。例えば、別個の柔軟な葉状部が例示されるが、本発明はまた、全般的な異種移植(例えばブタの)弁とともに用いられ得る。さらに、本出願を通してずっと「裁縫リング」という用語が用いられるが、縫合糸以外の結合構造が、本発明の心臓弁を移植するために用いられ得ることが理解されるべきである。例えば、ステープル、のり、フック、棘なども、裁縫リングを僧帽弁輪に結合するために熟考される。
【0025】
前置きの結びとして、様々な角度の値が、例示された裁縫リングの軸方向への隆起部分および他の構造の間隔を置くために提供される。これらの角度の値は、ある程度は周囲の僧帽状の構造に依存し、ある程度は、オクルダー構造に依存する。例えば、全体的なブタの弁は、3つの葉状部を有するが、該弁の周辺に等距離で間隔を置いていない交連を有することが、しばしばある。交連の一般的な分配は、120度/120度/120度ではなく、むしろ115度/120度/125度の間隔を有する。従って、例えばブタの弁の交連のわずかなオフセットの分配は、支持構造の交連および裁縫リングの軸方向への隆起部分に対応したオフセットの配置を必要とし得る。さらに、僧帽弁輪の元々の三角は、120度より少なく、またはそれより多く間隔を置かれ得る。従って、この状況において、用語「約120度」は、それぞれの側における約20度の角度の値の範囲、または100度〜140度の間を包含することを理解されたい。
【0026】
例示的な補綴心臓弁の構造の詳細な記述の前に、本発明の主だった利点のうちの1つは、図3Aおよび図3Bを参照して説明される。図3Aは、僧帽弁輪の位置に移植された、輪状で平面の裁縫リング32を有する補綴心臓弁30を示す。裁縫リング32および特にその流出端34の平らな性質は、裁縫リングが上述された僧帽弁輪の面(MAP)に平行になるように、弁30の位置を定めさせる。流出方向における血流矢印36は、通常は、MAPに直角に、左心室LVに延びる。示される補綴心臓弁30は、該弁の間の柔軟な葉状部40を支える複数の流出交連38を有する。慣習として、流出交連38のうちの2つは、僧帽弁輪の前側の三角(不図示)に隣接して配置され、一方で、第3(右側に示される)の交連は、後ろ側にあり、左心室LVの左に、その内壁に近接して延びている。この第3の交連38と左心室LVとの間の間隙G1が、示される。
【0027】
図3Bは、僧帽弁輪の位置に移植された本発明の補綴心臓弁50を示す。裁縫リング52は、流出端の隣接部分に対する流出方向において軸方向に突出している部分56を含んだ成形された流出端54を有し、裁縫リングの前の側に位置を定められている。突出部分56の存在は、弁50のその側を高く上げ、裁縫リング52が、僧帽弁輪の面MAPに対する角度δによって偏向されるように該弁の位置が定められる。角度δは、望ましくは約3度〜15度であり、より好適には、約7度である。流出方向における血流矢印58は、MAPには全く垂直ではない角度で左心室LVに延びる。
【0028】
先述の弁30のように、図3Bにおける補綴心臓弁は、該弁の間の柔軟な葉状部64を支える複数の流出交連62を有する。流出交連62のうちの2つは、僧帽弁輪の前の三角(不図示)に隣接して配置され、一方で、第3(右に示される)の交連は、後ろの側にあり、左心室LVの左に、その内壁に近接して延びている。この第3の交連62と左心室LVの内壁との間の間隙G2が、示される。間隙G2は、弁50の傾斜角δのせいで、図3Aに示される間隙G1よりも大きい。左心室LVの内壁に最も近接した交連62の間のこの増加した間隔は、その間の接触を防止することを促進し、これによって左心室への望ましくないトラウマまたは摩損の可能性を低減させる。
【0029】
ここで図4〜図7を参照すると、本発明の例示的な補綴僧帽心臓弁50の基本的な構造が、記述される。図4は、前述の葉状部64を支え、図3Bに見られる弁の交連62を定義する心臓弁支持フレーム70を例示する。支持フレーム70は、流入端の尖74a、74b、74cと互い違いになる流出端の交連72a、72bおよび72cを含む。隣接する尖74のそれぞれの対の端は、漸近的に集中することによって先細になって終わる直立した交連72を形成し、該端のそれぞれは、弓状の尖と向かい合った方向に延びており、比較的により小さな半径を有する。上からの平面図を見た場合には、支持フレーム70の周辺の形状は、実質的にはチューブ状であり、3つの交連72は、等距離に間隔を置かれ、約120度の角距離で分かれている。望ましくは、交連72は、隣接する尖74から僅かに放射状に内側に折り曲がることによって、支持フレーム70が、ほぼ円錐形の形状を定義する。
【0030】
補綴弁50は、3つの柔軟な葉状部64a、64bおよび64cを有する三葉弁である(図5)。3つの葉状部が好まれ、実在する大動脈弁を真似るが、本発明の原理は、2つまたはそれ以上の柔軟な葉状部を有する補綴弁の構造に適用され得る。葉状部64のそれぞれは、直立する交連領域67において終わる弓状の下部尖のエッジ66を含み、共に各葉状部の「末梢的なエッジ」を定義する。各葉状部64は、尖のエッジ66に向かい合う接合またはフリーエッジ68を含む。組み立てられた弁50において、尖のエッジ66および交連領域67は、弁の末梢の周りで固定され、フリーエッジ68は、中央において接するか、または「接合する」ことが可能になる。
【0031】
心臓弁50の例示的な構造において、葉状部64の末梢的なエッジ(66、67)は、支持フレーム70に結合し、従って、流れのオリフィスの形状および葉状部に対する3次元の支持構造を定義する。3つの葉状部64a、64bおよび64cは、図5に示されるように配列され、支持フレーム70は、このアセンブリの上部に下げられることによって、2つの葉状部のそれぞれの並置された末梢のエッジは、支持フレーム70の交連72において定義された軸方向の空間にはめ込まれる。表示されてはいないが、ファブリックは、支持フレーム70をカバーし、通常は縫合糸を用いて葉状部74が接続される結合構造を提供する。上述のように、他の弁の構造は、支持フレーム70を用い得ないが、それでも、成形された裁縫リング52と組み合され得る。
【0032】
組み立てられた補綴僧帽心臓弁50が、図6に示される。弁50の近い側は、前側であり、向かい合う側は、後ろ側である。前述の交連62a、62bおよび62cは、示される向きに、弁50の流出端に向かって「上向き」に突出する。用語「上向き」および「軸方向への隆起」は、図6において見られる弁50の向きに関連して本明細書中に用いられ、流出端が上に向いている。勿論、弁50は、反転されることによって、この方向を以前に図3Aおよび図3Bに見られたように逆向きにし得る。
【0033】
裁縫リング52は、支持フレーム70のファブリックでカバーされた尖74を囲繞し、縫合の糸または他の手段を用いて該尖に結合される。述べたように、裁縫リング52の流出端54は、裁縫リングの流出端の隣接部分に対して流出方向に軸方向に突出する、少なくとも1つの部分56を含む。例示された実施形態において、約120度に間隔を置き、交連62aおよび62bの2つから放射状に外側に配置された、2つのそのような軸方向への隆起部分56が存在する。流出端54に渡って引かれた放射状の線80は、これらの軸方向への隆起部分56aおよび56bの両方の頂部を意味し、裁縫リング52の外部の位置マーカーとして含まれ得る。
【0034】
裁縫リング52の好ましい構造は、ファブリックでカバーされた、図7Aおよび図7Bにおいて見られる縫合糸を通す輪状部材90を含む。輪状部材90は、実質的に平面の流入端92および2つの軸方向への隆起部分96aおよび96bを含む成形された流出端94を有する。好ましくは、輪状部材90は、縫合糸を通す生体適合が可能なポリマー、例えば珪素樹脂から作られ、その間の空間またはセルを定義する複数の壁を有する。図7Aに見られるように、空間は流出端94に開いており、図7Bは、実質的に連続した、閉じた流入端92を例示する。
【0035】
図8〜図12は、縫合糸を通す輪状部材90の例示的な構造上の詳細を描写する。図8は、正面図における輪状部材90および流出端94の残りの部分に関係する隆起部分96aおよび96bを示す。輪状部材90の全体的な軸方向の寸法は、Hとして左に示される。輪状部材の大部分の基準の高さh1は、全体的な輪状部材の高さHの約2分の1であり、軸方向への隆起部分96aおよび96bの追加の高さh2も同様である。言い換えると、軸方向への隆起部分96aおよび96bは、流出端94の隣接部分から輪状部材90の最も大きな軸方向の寸法の約50%の高さに上向きに隆起する。一実施形態に従って、軸方向への隆起部分96aおよび96bは、流出端94の隣接部分から約2mmの高さh2に隆起し、輪状部材90の全体的な高さHは、約4mmである。
【0036】
好ましい実施形態において、軸方向への隆起部分96aおよび96bは、流出端の隣接部分から上向きに、それらの頂部へと緩やかに湾曲し、円周の中点に関して実質的に対称的である。上述のように、輪状部材90の隆起部分96aおよび96bは、該部材の前側に提供される。流出端94の後ろ側97は、図8に見られるように、実質的に平面であり、流入端92に平行である。図11は、トラフ98を中心に置いた2つの隆起部分96aおよび96bの間の対称性を例示する。図12は、実質的に平面である後ろ側97に向かって互いから離れるように湾曲して下がる、隆起部分96aおよび96bを示す。本明細書中に定義されたように、隆起部分96aおよび96bは、「隣接部分」に対して高くなり、通常は、平面である後ろ側97によって一方向に定義され、前側のトラフ98によって他方向に定義される。
【0037】
ここで図10における流出端94の平面図を参照すると、短い放射状の線は、内部棚102(以下により詳細に記述される)に沿った隆起部分96aおよび96bの円周の中点における頂部100を示す。2つの頂部100を2等分しその中心を通過する全体的な対称面104が、輪状部材90を介して図示される。この平面図は、面104に関する頂部100の対称的な円周の分配を例示する。好ましくは、頂部100は、対称面から約60度、または互いから約120度に位置し、輪状部材90の周囲の最短の距離によって計測される。
【0038】
図10〜図12において見られる輪状部材90は、その間の空間またはセルを定義する複数の壁を備えている。図12Bに最も良好に見られるように、比較的厚い連続的な内壁100が、輪状部材90の周囲を360度に渡って延びており、放射状に外側に、かつ内壁110から流出方向に折れ曲がった連続的な円錐形の壁112も同様である。図9における底部および図11における断面から見られるように、内壁110の底面114および円錐形の壁112はともに、流入方向に面する輪状部材90の連続した、または中空でない壁を定義する。図12Bは、隆起部分96aのうちの1つを介した半径の断面図であり、円錐形の壁112の最も外側のリムから上向きに突出する外側の部分的なチューブ状の壁部分116を例示する。内側の部分的なチューブ状の壁部分118は、隆起部分96の領域において内壁110から上向きに突出する。複数の放射状の壁120は、内壁110、円錐形の壁112および外壁部分116を接続し、その間に、流出端94に開いている複数のセルまたは空間122を定義する。上向きに突出している壁部分116、118およびその間の放射状の壁120の結合した形状は、輪状部材90の隆起部分96aおよび96bを定義する。
【0039】
図10に見られるように、放射状の壁120および壁間の空間122は、輪状部材90の全体的な円周の周りに分配されている。図7Aにも見られるように、空間122は、輪状部材90の流出端94に開いている。最終的に、裁縫リング52は、図6に見られるようにファブリックによって包まれ、これによって空間122は、完成した弁においては目に見えない。空間122は、輪状部材90に「ワッフル」構造を提供し、該部材を非常にコンプライアンスを有するものにする。望ましくは、輪状部材90は、適切な生体適合が可能なポリマー、例えば珪素樹脂またはポリウレタンから作られ、空間122は、壁110〜120の形成を容易にし、モールド部品の容易な取り外しを可能にする。
【0040】
図10および図10Aもまた、輪状部材90の円周の周りでの該部材のコンプライアンスを変化させる好ましい構造を例示する。上述のように、突出部分96aおよび96bの頂部100は、約120度に分かれて間隔が置かれている。この弧の中において、壁120は、この弧から向かい合う位置においてよりもより小さな距離によって分離されており、その結果として、空間122はより小さく、輪状部材90はより堅いものとなる。より望ましくは、角度θが、対称面104によって2等分されて示されており、これによって頂部100の間に中心的に配置される。角度θを形成する線は、異なった大きさの空間122の間の変化を定義する放射状の壁120を通って延びる。一実施形態において、角度θ=90度であるが、θは、望ましくは80度〜120度の範囲である。
【0041】
拡大された図10Aは、異なる大きさの空間122の間の変化を最も良好に例示する。放射状の壁120’は、第2の空間122bから第1の空間122aを分離する。第1の空間122aは、角度αに及び、第2の空間122bは、角度βに及び、ここでは、β>αである。この角度をなした関係は、それぞれS1およびS2の弧の寸法をもたらし、該S1およびS2の弧の寸法は、空間122aおよび122bのそれぞれの半径方向の中点を通る基準の半径において取られ、輪状部材90の大きさに依存した大きさを示す。理解されるべきは、心臓弁は、様々な大きさで製造され、通常は、外径において21〜35mmの間であり、従って裁縫リング52および輪状部材90は、様々な大きさで提供される。他の条件が同一だとして、空間122bがより大きな場合は、輪状部材90は、よりコンプライアンスを有することが理解される。
【0042】
以下の表は、27mmの補綴弁のために寸法を取った輪状部材90の例示的な寸法を提供し、それぞれの空間122は、「セル」と呼ばれる。この実施例において、セルの壁120は、全て等しい厚さを有する。
【0043】
【表1】
上述のように、図10の頂部100によって輪郭を描かれた隆起部分96の間の弧は、部材90の角度のある部分に対するものであり、該部分は、僧帽弁輪の前側の面において配置されるように意図される。空間122aは、概して、頂部100の間(または、少なくとも角度θ内)においてより小さく、部材90および裁縫リング52の前側は、従って後ろ側97よりもコンプライアンスを有さない。よりコンプライアンスを有し、比較的に堅くはない後ろ側97は、裁縫リング52が僧帽弁輪の後ろ側の面のしばしば石灰化する組織により容易に順応し得るので望ましい。しかし、好ましい実施形態において、裁縫リングは、隆起部分96の間のより短い距離に位置している、軸方向への該隆起部分の間の中間の点において、中間点と正反対に向かい合う位置におけるよりも柔軟ではない。
【0044】
後ろ側97においてよりコンプライアンスを有するように輪状部材90を設計することは、僧帽弁輪の周囲の組織の特徴に関する特定の理解によって動機付けられた単なる1つの可能な構成であり、この場合においては、後ろ側の面がより石灰化する側面であることを、当業者は理解されたい。勿論、円周の周りのリングのコンプライアンス特性は、他の方法でカスタム化され得、その結果として、該リングは、例えば前側の周囲でよりコンプライアンスを有する。概して、本発明は、円周の周りで可変のコンプライアンスを有する裁縫リング52を熟考する。例えば、熟考される1つの配列は、大きなセルと小さなセルとを交互に有することであり、この場合において、高いコンプライアンスと低いコンプライアンスが交互になる領域は、より小さくかつより多くなり、片側またはもう一方の側に分離されるものと対比される。
【0045】
さらに図10Aを参照すると、裁縫リング52、またはより具体的に輪状部材90のコンプライアンスは、その円周における壁120の間の空間を変化させること以外に、異なるように変化され得る。例えば、壁120自体が、例えば上の表における角度λおよびμを同等でなくすることによって、異なる厚さで提供され得る。移り変わりの壁120’の左に示された、よりコンプライアンスの少ない(堅い)部分において、放射状の壁120は、厚さt1を有し得、一方で移り変わりの壁の右において、放射状の壁120は、厚さt2を有し得、t2<t1の関係(角度に関してλ>μ)である。放射状の壁120を輪状部材90の後ろ側97の周りでより薄くすることによって、該壁も、その領域においてよりコンプライアントを有する。さらに、放射状の壁120の厚さを変化させることは、空間122の寸法を変化させることと組み合されることによって柔軟性においてより大きな差異をもたらし得る。さらに、同等でない柔軟性の領域の間の壁120’におけるはっきりとした移り変わりは、より緩やかな移り変わりと置換され得る。
【0046】
裁縫リングの構造は、図7〜図12において示されるものとは異なり得ることも理解されるべきである。例示される型に入れて作られた珪素樹脂の「ワッフル」を用いて裁縫リングを作ることは、特定の明確な利点があるが、裁縫リングの流出端の前側に軸方向への隆起部分を提供し、柔軟性を変化させることの全般的な利点は、様々な構造を用いて達成され得る。例えば、他のポリマー(例えば、ポリウレタン)が、ワッフル構造を形成するために用いられ得、または壁の特定の配列および空間が修正され得る。特定の生体適合が可能なファブリック、例えば不織で圧縮されていないポリエステルまたはポリエチレンテレフタレートも、裁縫リングを形成するために用いられ得る。実際に、裁縫リングを形成する特に有用な方法の1つは、そのようなファブリックを必要な外形に巻くか、または折り畳み、次いで所望の形状に該ファブリックをヒートセットすることである。そのようなロールあるいは折り畳まれた布またはファブリックは、裁縫リングの円周の周りが異なるコンプライアンスを有するように製造され得る。例えば、そのようなファブリックを裁縫リングの前側によりきつく巻くことによって、前側は、後ろ側97よりもより堅く作られ得る。従って、特に主張されない限り、本発明は、裁縫リングに対する、モールドされた「ワッフルのような」ポリマーの内部部材に限定されないことが理解されるべきである。
【0047】
柔軟な葉状心臓弁の他の部分のアセンブリを容易にする、例示的な輪状部材90の他の特定の構造の詳細は、図7Aおよび図7Bの斜視図、および図11〜図12の詳細な図において示される。より具体的には、図7Aが、最も良好に内部棚102を例示し、該棚は、組み立てられた弁50において支持フレーム70の3つの尖74a、74bおよび74c(図4)の上で支えられている。内部棚102はまた、図11、図12Aおよび図12Bにおける断面図において、後ろ側97の中点における水平プラットフォーム132から小さな水平フランジ134に、およびそこから上向きに隆起部分96aおよび96bにおける頂部100への移り変わりで見られる。棚102は、前側の中点、頂部100の間の中間において別の小さな水平フランジ136へと下がる。図11Aに見られるように、棚102は、そのより低い末端において実質的に水平であり、軸方向に上向きに高くなるにつれて、僅かに内側かつ下向きの角度を有するように移り変わり、図12Bの拡大図において見られるように、頂部100において最高点に達する。
【0048】
弁50のアセンブリを作ることは、本質的に外側に延びているフランジを有するファブリックを用いて図4において示される支持フレーム70をカバーすることを含む。輪状部材90もまた、ファブリックでカバーされ、葉状部64の末梢的なエッジは、支持フレーム70と輪状部材90との間で挟まれ、それらのファブリックのカバーに固定される。述べられたように、支持フレーム70の尖74は、内部棚102の外形に密接に順応し、様々な要素を一緒に縫合する際に、アセンブリは、比較的寸法が安定するように作られる。すなわち、支持フレーム70は、輪状部材90を介する流入方向に移動することを、内部棚102によって防がれる。これらの製作技術のより完全な議論は、Huynhらに対する米国特許第6,585,766号および「ANATOMICALLY APPROXIMATE PROSTHETIC MITRAL HEART VALVE」と題する米国特許出願第11/039,522号に提供され、それらの開示は、本明細書中に参照により明確に援用される。
【0049】
隆起部分96aおよび96bの外形はまた、裁縫リング52と周囲の僧帽弁輪との間の接触を増すために重要であり、かつ左心室壁から全体の弁を離すように傾斜させる、前述の前側を上向きに高く上げる利点を提供するために重要である。図11および図12の正面図に最も良好に見られるように、隆起部分96aおよび96bのそれぞれは、急に露出した角を有さない滑らかな曲率を定義する。図11は、2つの隆起部分96aおよび96bの間の対称性を例示し、ここでは、流出端94の前側は、隆起部分からトラフ98への緩やかに高さを減少させる。トラフ98は、図12の左側に見られるように、輪状部材90の流出端94の向かい合う側とおよそ同一の高さを有する。従って、輪状部材90の軸方向の寸法が、隆起部分96aおよび96bの最も高い点からトラフ98の最も低い点に変化する円周の弧は、約60度である。その一方で、図12を参照すると、隆起部分96aおよび96bの最も高い点と実質的に平らな後ろ側97との間の移り変わりは、比較すると緩やかではないが、それでも滑らかである。隆起部分96aおよび96bと流出端94の平らな後ろ側97との間の円周の弧の距離は、約20度である。
【0050】
ここで図13を参照すると、本発明の代替的な補綴心臓弁150は、本発明の成形された裁縫リング154と結合された機械的な弁部材152を備えている。弁部材152は、周囲の支持フレーム158内の旋回運動のために結合される強固な葉状部156aおよび156bを含む。裁縫リング154は、支持フレーム158の末梢の周りに結合する。この図において、弁部材152の流入端は上にあり、流出端は下にある。2つの隆起部分160aおよび160bは、先に記述された柔軟な葉状部の実施形態のように、裁縫リング154において提供される。隆起部分160aおよび160bは、望ましくは裁縫リング154の前側に、円周上に間隔を開けて置かれることによって元々の三角(通常は、約120度)に一致する。留意されるべきは、機械的な弁部材152は、通常は周囲の支持フレーム158内で回転可能であり、従って、成形された裁縫リング154に関して示される向きは、限定的に考えられるべきではないということである。裁縫リング154は、ファブリックの外面162を有し、該外面は、上述のように内部のワッフルのような輪状部材をカバーし得るか、または巻かれたかまたは折り畳まれたファブリックの構造の単なる外層になり得る。
【0051】
図13Aおよび図13Bは、異なるコンプライアンスの部分を示すそれぞれの線13A−13Aおよび13B−13Bに沿って取られた、図13の成形された裁縫リング154を通る半径の断面図である。この実施形態において、裁縫リング154は、巻かれたファブリック構造で作られ、異なるコンプライアンスは、別の側172よりも片側170においてファブリックをよりしっかりと巻くことによって取得される。望ましくは、よりしっかりと巻き取られ、つまりはより少ないコンプライアンスを有する側170は、僧帽状弁150の前側にあり、より緩やかに巻き取られた、すなわちよりコンプライアンスを有する側172は、後ろ側である。別の市販用の構造において、不織のポリマーファブリックまたはポリエステルのフェルト(枕の詰め物のようなもの)が、用いられる。後者の構造において、ポリエステルのフェルトは、もう一方の側と比較すると、裁縫リング154の片側の周りによりしっかりと詰め込まれ得る。
【0052】
様々な変更が、本発明の意図される範囲から逸脱することなく、この仮出願において記述された本発明の実施例および実施形態になされ得ることも、当業者に認識されたい。本明細書中に記述の本発明の特定の実施形態は、従って、本出願において記述された幅広い発明の概念の実施例として理解されるものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的に僧帽弁輪に対する移植可能な補綴心臓弁に関し、より具体的には、そのような補綴心臓弁に対して成形された裁縫リングに関する。
【背景技術】
【0002】
2つの主だった種類の心臓弁の置換または補綴が公知である。1つは、機械タイプの心臓弁であって、ボールおよびケージの配置、あるいは下部構造に支えられた回転する機械式クロージャを用いることによって一方向性の血流を提供するものであり、Stobieらに対する特許文献1、およびBrendzelらに対する特許文献2において示され、それらの開示は、本明細書中に参照により明確に援用される。もう一方は、組織タイプまたは「生体補綴」弁であり、下部構造によって支えられた柔軟な葉状部を有し、フローストリームに突出して元々のヒトの心臓弁のもののように機能し、それらの自然な屈曲動作を真似ることによって互いと接合し、一方向の血流を確実なものとする。柔軟な葉状弁の一実施例は、Huynhらに対する特許文献3に開示され、その開示は、本明細書中に参照により明確に援用される。
【0003】
組織タイプの弁において、全体的な異種移植の弁(例えば、ブタ)または複数の異種移植の葉状部(例えば、ウシの心膜)は、通常は流体閉塞面を提供する。合成の葉状弁が提案され、従って用語「柔軟な葉状弁」は、自然および人工の「組織タイプ」弁の両方を指す。2つ以上の柔軟な葉状弁が、周囲の支持構造内に取り付けられ、該支持構造は、通常は、流出方向に突出しているポストまたは交連を含み、生得の輪における自然な繊維状の交連を真似る。該弁の構成要素は、通常は1つ以上の生体適合が可能なファブリック(例えば、ダクロン)のカバーを用いて組み立てられ、ファブリックでカバーされた裁縫リングが、末梢の支持構造の流入端に提供される。
【0004】
ほとんどの生体補綴タイプの弁において、金属または重合体の構造が、そこから突出する柔軟な葉状部に対する基部の支持を提供する。そのような支持物のうちの1つは、弾性のある「支持フレーム」であり、時に「ワイヤフォーム」または「ステント」と呼ばれ、複数(通常は3つ)の大型の半径の尖を有し、柔軟な葉状部の尖領域(すなわち、全体的な異種移植の弁または3つの別個の葉状部のいずれか)を支える。隣接する尖の各組の端部は、やや漸近的に集まることによって先細になって終わる直立した交連を形成し、該端のそれぞれは、弓状の尖と向かい合った方向に延びており、比較的により小さな半径を有する。支持フレームは、概して円錐形のチューブであり、小さな直径の端において交連の先端部を有する。これは、波状の基準形状を提供し、大動脈の輪における自然な繊維状の構造のように各葉状部の固定されたエッジが(ファブリックおよび縫合糸などの構成要素を介して)結合する。他の「支持フレーム」の構造は、シートのようなチューブ状の形状を提示するが、それでもなお、その流出端において交連および尖を定義し、例えばGerardらに対する特許文献4に示され、その開示は、本明細書中に参照により明確に援用される。
【0005】
補綴心臓弁が移植される最も一般的な位置は、左心室と関係する大動脈弁および僧帽弁であり、2つの心室のうちで、より高い圧力を生成する。大動脈弁および僧帽弁の解剖学的構造は、かなり異なり、前者は、3つの葉状部の構造であり、後者は、2つの異なる葉状部を有する。大動脈の輪は、実質的に円形のリングの周りに波状の繊維状構造を定義し、生得の葉状部の尖および交連の上下した形状を支える。一方で、僧帽弁輪は、大動脈弁からの心臓の隔膜に渡って、やや繊維状で線状の前側の面を有するが、該輪の大半を定義する後ろ側の面は、比較的に繊維状ではなく、より筋肉質である。また、後ろ側の面は、ほとんど楕円形の形状であり、それによって僧帽弁輪は、奇形の「D」の字型で表される。さらに、僧帽弁輪は、その末梢において大動脈の輪のような上下する波状の形状を提示せず、概して平らであるが、その前側の面は、線維三角の位置においてより低く、その間で高くなるような形をなしており、サドルのような形状をなしている。本発明は、補綴心臓弁に向けられ、特に、僧帽弁輪における移植に適している。
【0006】
左心室LVおよびそれに関連する弁が、前後の面に沿った垂直断面図で図1に図示される。僧帽弁MVは、左心房LAと左心室LVとの間の流れを制御し、大動脈弁AVは、左心室LVと上行大動脈AAとの間で機能する。僧帽弁と大動脈弁との両方は、葉状部を含み、該葉状部は、血液の流路に延び、それぞれの輪によってその末梢の周辺で支えられている。議論の目的のために、通常の健康な心臓の僧帽弁輪は、一般的に、僧帽弁MVを介する平均的な血流方向20(図1を参照)に直角をなして定義される僧帽弁輪面MAPに存在する。通常の僧帽弁輪は、3次元であり得るが、僧帽弁面MAPは、輪の前側および後ろ側に向かって延びる基準面として用いられる。乳頭筋は示されていないが、左心室LVの内壁の下部分に結合し、腱索は、前側および後ろ側の葉状部の乳頭筋および自由エッジとの間に延び、それらをリンクさせる。
【0007】
図2は、手術の間に露出される左心房からの僧帽弁を例示し、図2Aは、一般的に識別される特徴を平面図において模式的に識別する。平均的なヒトの僧帽弁輪の断面域は、5〜11cm2である。僧帽弁輪の前側の面は、「心臓骨格」の一部を形成し、前外側ALTおよび後内側PMTの線維三角を含む。僧帽弁輪MVは、前側の葉状部Aと協同または接合する後ろ側の葉状部(3つの尖P1、P2およびP3に分離される)を有する二尖弁である。前外側ALTおよび後内側PMTの三角は、前側の葉状部Aと後ろ側の葉状部P1およびP3の第1および第3の尖のそれぞれとの分岐点において示される。これらの分岐点はまた、葉状部の間の交連として公知である。
【0008】
図2Aを参照すると、上述のように、僧帽弁輪は、直線部分を有する奇形の「D」の字の形状、つまりは前側の面を有し、該面は、前外側ALTおよび後内側PMTの三角の間に延びている。僧帽弁輪の最長の寸法は、長軸22を定義し、最短の寸法は、短軸24を定義する。短軸24は、概して前側の葉状部Aを2等分する。僧帽弁輪は、円形ではないが、その中心26は、長軸22と短軸24との交わりにおいて定義され得る。放射状の線が、この想像上の中心26から外向きに前外側ALTおよび後内側PMTの三角を通って図示され、その間の角を形成する分離点φを示す。この角を形成する分離点φは、患者によって異なるが、概して僧帽弁輪の周りの円周の3分の1、つまりは120度である。
【0009】
様々な補綴心臓弁が、当該分野において提案されてきたが、概して異なる弁輪の固有の特性を深く考慮したものはなかった。特に、それらの提案において、僧帽弁輪に補綴弁をより良く順応させる試みは、殆どなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,143,025号明細書
【特許文献2】米国特許第6,719,790号明細書
【特許文献3】米国特許第6,585,766号明細書
【特許文献4】米国特許第5,984,973号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面によれば、補綴心臓弁のための裁縫リングは、流入−流出の方向を定義する軸の周りに配列された、縫合糸を通す輪状部材を備えている。該輪状部材は、実質的に平らな流入端と流出端とを有し、該流出端は、該流出端の隣接部分に対して軸方向に隆起する少なくとも一部分を含む。該軸方向への隆起部分は、輪状部材の最も大きな軸方向の寸法の約50%の高さまで緩やかに上向きに隆起し得る。一実施形態において、該輪状部材の最も大きな軸方向の寸法は、約4mmである。好ましくは、約120度に間隔を置いて分離した、2つの軸方向への隆起部分が、流出端上に存在する。
【0012】
輪状部材は、軸方向への該隆起部分の間の中間の点において、隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置し、中間点と正反対に向かい合う位置よりも柔軟であり得ない。輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーから作られ得、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義し、流出端上に間隔を置いて分離した2つの軸方向への隆起部分が存在する。一実施形態において、該放射状の壁は、該軸方向への隆起部分の間の中間点において、該隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置し、中間点と正反対に向かい合う位置における該放射状の壁よりも厚い。別の実施形態において、該空間は、該軸方向への隆起部分の間の中間点において、該隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置し、中間点と正反対に向かい合う位置における該空間よりも小さい。あるいは、輪状部材は、巻かれたファブリックから作られ、流出端上に間隔を置いて分離した2つの軸方向への隆起部分が存在し、該ファブリックは、該軸方向への隆起部分の間の中間点において、該隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置し、中間点と正反対に向かい合う位置における該ファブリックよりもしっかりと巻かれている。
【0013】
本発明の別の局面は、補綴心臓弁のための裁縫リングを提供し、該裁縫リングは、流入−流出の方向を定義する軸の周りに配列された、縫合糸を通す輪状部材を備え、該輪状部材は、その円周の周りに変更可能なコンプライアンスを有する。輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーから作られ得、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義する。一実施形態において、片側の周りの放射状の壁は、別の側の周りの該放射状の壁よりも厚く、代替的な実施形態において、片側の周りの該空間は、別の側の周りの該空間よりも小さい。あるいは、輪状部材は、ポリマーのファブリック、例えば不織のフェルトまたは巻かれたファブリックから作られ得る。後者の構成において、該ファブリックは、片側において別の側よりもよりしっかりと巻かれている。
【0014】
特に好ましい実施形態において、裁縫リングは、前側面と後ろ側面との周りに間隔を置いた2つの三角を有する僧帽状弁の輪における移植のための、僧帽心臓弁の構成要素を形成する。輪状部材は、次いで前側および後ろ側を有し、輪状部材は、その前側において、その後ろ側よりもよりコンプライアンスを有する。輪状部材は、軸の周りに配列されることによって流入端および流出端を定義し得、該流出端は、隣接部分に対して軸方向に隆起した、概して前側を定義する2つの部分を含む。流出端の2つの軸方向への隆起部分は、約120度に分離して間隔を置いている。
【0015】
さらなる局面によれば、僧帽弁輪における移植のための補綴僧帽心臓弁が提供される。該僧帽弁輪は、約120度に分離して間隔を置いている2つの前方の三角を備えている。該心臓弁は、流入−流出の方向に沿った軸の周りのオリフィスを定義する支持フレームと、該支持フレーム上の動きのために取り付けられることによって該オリフィスにおける一方向の弁を提供する複数の葉状部とを備えている。裁縫リングは、該心臓弁を該僧帽弁輪に結合させるために該支持フレームに接続され、その周りに配置される。該裁縫リングは、流入端および流出端を有し、該流出端は、移植時に該2つの前方の三角と適合するように間隔を置かれた該流出端の残りの部分に関連した軸方向への隆起部分を含む。
【0016】
補綴僧帽心臓弁において、支持フレームは、波状の形状を有し、流入方向に延びた3つの尖と互い違いになる、流出方向に延びる3つの軸方向に配置された交連を含む。この場合において、該交連のうちの2つは、裁縫リングの2つの軸方向への隆起部分に隣接して位置し、心臓弁は、該支持フレームの該波状の形状の周りに取り付けられた3つの柔軟な葉状部を含む。あるいは、支持フレームは、概して輪状の輪郭を有し、心臓弁は、該支持フレーム内の旋回運動のために取り付けられた2つの強固な葉状部を含む。一実施形態において、軸方向への隆起部分は、流出端の隣接部分から裁縫リングの最も大きな軸方向の寸法の約50%の高さにまで上向きに緩やかに曲がる。さらに、縫合糸を通す輪状部材は、その円周の周りに可変のコンプライアンスを有し得る。
【0017】
本発明はまた、僧帽弁輪において、補綴僧帽心臓弁を移植する方法を提供し、該輪は、2つの空間を置いた前側の三角を備えている。該方法は、外側に向けられた裁縫リングを有する補綴僧帽心臓弁を提供し、該心臓弁を僧帽弁輪に結合させることであって、該裁縫リングは、流入端および流出端を有し、該流出端は、2つの前方の三角と適合するように間隔を置かれた該流出端の残りの部分に関連した軸方向への隆起部分を含む、ことと、2つの軸方向への隆起部分が、該輪の2つの前側の三角に隣接して位置するように、僧帽弁輪において補綴僧帽心臓弁を移植することとを包含する。
【0018】
好ましくは、裁縫リングは、縫合糸を通す輪状部材を含み、移植のステップは、裁縫リングを僧帽弁輪に縫合することを含む。例えば、裁縫リングは、ファブリックのカバーによって囲繞された縫合糸を通す輪状部材であり得る。補綴僧帽心臓弁は、該弁が移植されたときには、流出方向を向いて心室に延びる3つの軸方向に配置された交連を有し得、最初の2つの交連は、2つの軸方向への隆起部分と同一の位置において心臓弁の周りに位置し、第3の交連は、最初の2つの交連から等距離の位置にある。この場合において、方法は、輪の面に対する角度に該補綴僧帽心臓弁を傾斜させることによって、第3の交連が隣接する心室から離れるような角度になり、その間の接触の可能性を低減させることを含む。
【0019】
別の実施形態において、裁縫リングは、軸方向への該隆起部分において、該軸方向への隆起部分から正反対に向かい合う位置よりも柔軟ではない。方法は、輪の残りの部分よりもより石灰化した部分を有する僧帽弁輪において実施され得る。そのような病理において、方法は、輪状部材の比較的によりコンプライアンスを有する部分が、より石灰化された僧帽弁輪の部分に隣接して位置されるように、僧帽弁輪に補綴僧帽心臓弁を移植することを含む。
【0020】
本発明の別の発明の方法は、弁輪に心臓弁を結合させるために、外向きに向いた裁縫リングを有する補綴心臓弁を最初に提供することによって、患者の心臓弁輪に補綴心臓弁を移植することを含む。裁縫リングは、流入−流出方向を定義する軸の周りに配置された縫合糸を通す輪状部材を有し、その円周において可変のコンプライアンスを有する。方法は、正反対に向かい合う部分よりも比較的によりコンプライアンスを有する輪状部材の部分が、輪の周りの所定の位置に位置付けられるように、輪に補綴心臓弁を移植することを含む。例えば、輪は、該輪の残りの部分よりもより石灰化する面を有し得、移植のステップは、より石灰化する輪の面に隣接する、比較的によりコンプライアンスを有する輪状部材の部分を位置付けることを含む。より具体的には、方法は、前側の面および後ろ側の面を有する僧帽弁輪で実施され得、該輪状部材は、僧帽弁輪の前側の面に結合する前側と、僧帽弁輪の後ろ側に結合する後ろ側とを有し、輪状部材の比較的によりコンプライアンスを有する部分は、その後ろ側に位置する。
【0021】
本発明の本質および利点のさらなる理解は、以下の記述および特許請求の範囲において明らかになり、特に、同等の部分が同等の参照番号で示される添付の図面とともに考察されるときに明らかとなる。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
補綴心臓弁のための裁縫リングであって、
流入−流出の方向を定義する軸の周りに配列された、縫合糸を通す輪状部材を備え、
該輪状部材は、実質的に平らな流入端と流出端とを有し、該流出端は、該流出端の隣接部分に対して軸方向に隆起する少なくとも一部分を含む、裁縫リング。
(項目2)
前記軸方向に隆起した部分は、前記流出端の前記隣接部分から上向きに、前記輪状部材の最も大きな軸方向の寸法の約50%の高さまで緩やかに湾曲する、項目1に記載の裁縫リング。
(項目3)
前記輪状部材の前記最も大きな軸方向の寸法は、約4mmである、項目2に記載の裁縫リング。
(項目4)
約120度に間隔を置いて分離した2つの軸方向への隆起部分が、前記流出端上に存在する、項目1に記載の裁縫リング。
(項目5)
前記輪状部材は、軸方向への該隆起部分の間の中間点において、前記隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置し、該中間点と正反対に向かい合う位置よりも柔軟ではない、項目4に記載の裁縫リング。
(項目6)
前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義し、
前記流出端上に間隔を置いて分離した2つの軸方向への隆起部分が存在し、
該放射状の壁は、該隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置している該軸方向への隆起部分の間の中間点において、前記中間点と正反対に向かい合う位置における該放射状の壁よりも厚い、項目1に記載の裁縫リング。
(項目7)
前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義し、
前記流出端上に間隔を置いて分離した2つの軸方向への隆起部分が存在し、
該空間は、該隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置している該軸方向への隆起部分の間の中間点において、前記中間点と正反対に向かい合う位置における該空間よりも小さい、項目1に記載の裁縫リング。
(項目8)
前記輪状部材は、巻かれたファブリックを含み、
前記流出端上に間隔を置いて分離した2つの軸方向への隆起部分が存在し、
該ファブリックは、該軸方向への隆起部分の間の中間点において、該隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置し、前記中間点と正反対に向かい合う位置における該ファブリックよりもしっかりと巻かれている、項目1に記載の裁縫リング。
(項目9)
補綴心臓弁のための裁縫リングであって、
流入−流出の方向を定義する軸の周りに配列された、縫合糸を通す輪状部材を備え、
該輪状部材は、その円周の周りに変更可能なコンプライアンスを有する、裁縫リング。
(項目10)
前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義し、
片側の周りの前記放射状の壁は、別の側の周りの該放射状の壁よりも厚い、項目9に記載の裁縫リング。
(項目11)
前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義し、
片側の周りの該空間は、別の側の周りの該空間よりも小さい、項目9に記載の裁縫リング。
(項目12)
前記輪状部材は、ポリマーのファブリックを含む、項目9に記載の裁縫リング。
(項目13)
前記輪状部材は、巻かれたファブリックを含み、該ファブリックは、片側において別の側よりもよりしっかりと巻かれている、項目12に記載の裁縫リング。
(項目14)
前記裁縫リングは、前側面と後ろ側面との周りに間隔を置いた2つの三角を有する僧帽状弁の輪における移植のための、僧帽心臓弁の構成要素を形成し、
前記輪状部材は、前側および後ろ側を有し、
該輪状部材は、その前側において、その後ろ側よりもよりコンプライアンスを有する、項目9に記載の裁縫リング。
(項目15)
前記輪状部材は、軸の周りに配列されることによって流入端および流出端を定義し、該流出端は、隣接部分に対して軸方向に隆起した、概して前側を定義する2つの部分を含む、項目14に記載の裁縫リング。
(項目16)
前記流出端の前記2つの軸方向への隆起部分は、約120度に分離して間隔を置いている、項目15に記載の裁縫リング。
(項目17)
僧帽弁輪における移植のための補綴僧帽心臓弁であって、該輪は、約120度に分離して間隔を置いている2つの前方の三角を備えている、該心臓弁は、
流入−流出の方向に沿った軸の周りのオリフィスを定義する支持フレームと、
該支持フレーム上の動きのために取り付けられることによって該オリフィスにおける一方向の弁を提供する複数の葉状部と、
該支持フレームに接続され、その周りに配置され該心臓弁を該僧帽弁輪に結合する裁縫リングであって、該裁縫リングは、流入端および流出端を有し、該流出端は、移植時に該2つの前方の三角と適合するように間隔を置かれた該流出端の残りの部分に関連した軸方向への隆起部分を含む、裁縫リングと
を備えている、補綴僧帽心臓弁。
(項目18)
前記支持フレームは、波状の形状を有し、流入方向に延びた3つの尖と互い違いになる、前記流出方向に延びる3つの軸方向に配置された交連を含み、
該交連のうちの2つは、裁縫リングの2つの軸方向への隆起部分に隣接して位置し、前記心臓弁は、該支持フレームの該波状の形状の周りに取り付けられた3つの柔軟な葉状部を含む、項目17に記載の心臓弁。
(項目19)
前記支持フレームは、概して輪状の輪郭を有し、前記心臓弁は、該支持フレーム内の旋回運動のために取り付けられた2つの強固な葉状部を含む、項目17に記載の心臓弁。
(項目20)
前記軸方向への隆起部分は、前記流出端の前記隣接部分から前記裁縫リングの最も大きな軸方向の寸法の約50%の高さまで上向きに緩やかに曲がる、項目17に記載の心臓弁。
(項目21)
前記縫合糸を通す輪状部材は、その円周の周りに可変のコンプライアンスを有する、項目17に記載の心臓弁。
(項目22)
前記裁縫リングは、前記隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置している軸方向への該隆起部分の間の中間の点において、中間点と正反対に向かい合う中間点よりも柔軟ではない、項目21に記載の心臓弁。
(項目23)
前記裁縫リングは、ファブリックのカバーによって囲繞された縫合糸を通す輪状部材を含み、
該輪状部材は、複数の放射状の壁を有し、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義し、
該放射線状の壁は、前記隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置している該軸方向への隆起部分の間の中間点において、前記中間点と正反対に向かい合う位置における該放射状の壁よりも厚い、項目22に記載の心臓弁。
(項目24)
前記裁縫リングは、ファブリックのカバーによって囲繞された縫合糸を通す輪状部材を含み、
該輪状部材は、複数の壁を有し、該複数の放射状の壁は、該放射状の壁間の空間を定義し、
該空間は、前記隆起部分の間のより短い距離の周囲に位置している該軸方向への隆起部分の間の中間点において、前記中間点と正反対に向かい合う位置における該空間よりも小さい、項目22に記載の心臓弁。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、左心室LVおよびそれに関連する弁を例示し、前および後の面に沿った部分的な垂直部分として見られる心臓の図である。
【図2】図2は、関連する心房を取り除いて拡大された、大動脈輪および僧帽弁輪の上からの図である。
【図2A】図2Aは、図2に対応して見られる僧帽弁輪の模式図であり、最も突起した解剖上の特徴および学術用語を示す。
【図3A】図3Aは、僧帽弁輪における従来技術の補綴心臓弁の従来的な配置を例示する、前後面に沿った部分的な垂直部分である。
【図3B】図3Bは、僅かに傾斜した移植位置を示す、僧帽弁輪における本発明の補綴心臓弁の配置を例示する、前後面に沿った部分的な垂直部分である。
【図4】図4は、例示的な波状の心臓弁用支持フレームの斜視図である。
【図5】図5は、図4の支持フレームを用いて組み立てられ、本発明の例示的な心臓弁において用いられる3つの柔軟な葉状部の斜視図である。
【図6】図6は、成形された裁縫リングを有する、本発明の、組み立てられた柔軟な葉状部の僧帽心臓弁の斜視図である。
【図7A】図7Aは、本発明の裁縫リングの例示的な輪状部材に関する、流出端の斜視図である。
【図7B】図7Bは、本発明の裁縫リングの例示的な輪状部材に関する、流出端の斜視図である。
【図8】図8は、裁縫リングの輪状部材の片側の正面図である。
【図9】図9は、輪状部材の流入端の平面図である。
【図10】図10は、輪状部材の流出端の平面図であり、複数の放射状の壁を示し、該壁は、その間の様々な大きさの空間を定義する。
【図10A】図10Aは、異なる大きさの空間の詳細を示す、輪状部材の流出端の一部分の拡大図である。
【図11】図11は、輪状部材の別の側の正面図である。
【図11A】図11Aは、輪状部材の別の側を通って取られた半径の断面図である。
【図12】図12は、輪状部材のさらに先の側の正面図である。
【図12A】図12Aは、輪状部材のさらに先の側を通って取られた半径の断面図である。
【図12B】図12Bは、輪状部材を介する半径の断面の拡大図である。
【図13】図13は、成形された裁縫リングを有する、本発明の、組み立てられた強固な葉状部の僧帽心臓弁の斜視図である。
【図13A】図13Aは、異なるコンプライアンスの部分を示す、線13A−13Aに沿って取られた、図13の成形された裁縫リングを介する半径の断面図である。
【図13B】図13Bは、異なるコンプライアンスの部分を示す、線13B−13Bに沿って取られた、図13の成形された裁縫リングを介する半径の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、僧帽弁輪に対する改良された補綴心臓弁を提供する。本明細書中に開示の補綴心臓弁は、時に裁縫カフとして知られる、成形された縫合糸リングまたは裁縫リングを有し、該リングは、僧帽弁輪の構造により良好に適合し、かつ輪の面に対する角度に弁を配置する。裁縫リングは、その流出端に少なくとも1つの軸方向への隆起部分を有し、該部分は、僧帽弁輪の前方の側とぴったりと適合する。例示された実施形態において、2つのそのような軸方向への隆起部分があり、それぞれは、僧帽弁輪の線維三角のうちの1つに対応し、一方で、流出端の後ろ側は、通常は平面である。しかし、理解されるべきは、流出端の後ろ側も、成形され得るか、または輪の面以外の形状を有し得ることである。
【0024】
本明細書中に開示の裁縫リングは、バイオ補綴または機械的などのあらゆる種類の補綴心臓弁、柔軟な葉状部または剛体の葉状部とともに有用である。第1の例示的な実施形態は、柔軟な葉状弁であり、剛体の葉状弁は、図13に例示される。成形された裁縫リングによって具現化された特定の利点は、オクルダー(occluder)構造に関係なく、全ての補綴僧帽心臓弁に適用可能であることを、当業者は理解されたい。例えば、別個の柔軟な葉状部が例示されるが、本発明はまた、全般的な異種移植(例えばブタの)弁とともに用いられ得る。さらに、本出願を通してずっと「裁縫リング」という用語が用いられるが、縫合糸以外の結合構造が、本発明の心臓弁を移植するために用いられ得ることが理解されるべきである。例えば、ステープル、のり、フック、棘なども、裁縫リングを僧帽弁輪に結合するために熟考される。
【0025】
前置きの結びとして、様々な角度の値が、例示された裁縫リングの軸方向への隆起部分および他の構造の間隔を置くために提供される。これらの角度の値は、ある程度は周囲の僧帽状の構造に依存し、ある程度は、オクルダー構造に依存する。例えば、全体的なブタの弁は、3つの葉状部を有するが、該弁の周辺に等距離で間隔を置いていない交連を有することが、しばしばある。交連の一般的な分配は、120度/120度/120度ではなく、むしろ115度/120度/125度の間隔を有する。従って、例えばブタの弁の交連のわずかなオフセットの分配は、支持構造の交連および裁縫リングの軸方向への隆起部分に対応したオフセットの配置を必要とし得る。さらに、僧帽弁輪の元々の三角は、120度より少なく、またはそれより多く間隔を置かれ得る。従って、この状況において、用語「約120度」は、それぞれの側における約20度の角度の値の範囲、または100度〜140度の間を包含することを理解されたい。
【0026】
例示的な補綴心臓弁の構造の詳細な記述の前に、本発明の主だった利点のうちの1つは、図3Aおよび図3Bを参照して説明される。図3Aは、僧帽弁輪の位置に移植された、輪状で平面の裁縫リング32を有する補綴心臓弁30を示す。裁縫リング32および特にその流出端34の平らな性質は、裁縫リングが上述された僧帽弁輪の面(MAP)に平行になるように、弁30の位置を定めさせる。流出方向における血流矢印36は、通常は、MAPに直角に、左心室LVに延びる。示される補綴心臓弁30は、該弁の間の柔軟な葉状部40を支える複数の流出交連38を有する。慣習として、流出交連38のうちの2つは、僧帽弁輪の前側の三角(不図示)に隣接して配置され、一方で、第3(右側に示される)の交連は、後ろ側にあり、左心室LVの左に、その内壁に近接して延びている。この第3の交連38と左心室LVとの間の間隙G1が、示される。
【0027】
図3Bは、僧帽弁輪の位置に移植された本発明の補綴心臓弁50を示す。裁縫リング52は、流出端の隣接部分に対する流出方向において軸方向に突出している部分56を含んだ成形された流出端54を有し、裁縫リングの前の側に位置を定められている。突出部分56の存在は、弁50のその側を高く上げ、裁縫リング52が、僧帽弁輪の面MAPに対する角度δによって偏向されるように該弁の位置が定められる。角度δは、望ましくは約3度〜15度であり、より好適には、約7度である。流出方向における血流矢印58は、MAPには全く垂直ではない角度で左心室LVに延びる。
【0028】
先述の弁30のように、図3Bにおける補綴心臓弁は、該弁の間の柔軟な葉状部64を支える複数の流出交連62を有する。流出交連62のうちの2つは、僧帽弁輪の前の三角(不図示)に隣接して配置され、一方で、第3(右に示される)の交連は、後ろの側にあり、左心室LVの左に、その内壁に近接して延びている。この第3の交連62と左心室LVの内壁との間の間隙G2が、示される。間隙G2は、弁50の傾斜角δのせいで、図3Aに示される間隙G1よりも大きい。左心室LVの内壁に最も近接した交連62の間のこの増加した間隔は、その間の接触を防止することを促進し、これによって左心室への望ましくないトラウマまたは摩損の可能性を低減させる。
【0029】
ここで図4〜図7を参照すると、本発明の例示的な補綴僧帽心臓弁50の基本的な構造が、記述される。図4は、前述の葉状部64を支え、図3Bに見られる弁の交連62を定義する心臓弁支持フレーム70を例示する。支持フレーム70は、流入端の尖74a、74b、74cと互い違いになる流出端の交連72a、72bおよび72cを含む。隣接する尖74のそれぞれの対の端は、漸近的に集中することによって先細になって終わる直立した交連72を形成し、該端のそれぞれは、弓状の尖と向かい合った方向に延びており、比較的により小さな半径を有する。上からの平面図を見た場合には、支持フレーム70の周辺の形状は、実質的にはチューブ状であり、3つの交連72は、等距離に間隔を置かれ、約120度の角距離で分かれている。望ましくは、交連72は、隣接する尖74から僅かに放射状に内側に折り曲がることによって、支持フレーム70が、ほぼ円錐形の形状を定義する。
【0030】
補綴弁50は、3つの柔軟な葉状部64a、64bおよび64cを有する三葉弁である(図5)。3つの葉状部が好まれ、実在する大動脈弁を真似るが、本発明の原理は、2つまたはそれ以上の柔軟な葉状部を有する補綴弁の構造に適用され得る。葉状部64のそれぞれは、直立する交連領域67において終わる弓状の下部尖のエッジ66を含み、共に各葉状部の「末梢的なエッジ」を定義する。各葉状部64は、尖のエッジ66に向かい合う接合またはフリーエッジ68を含む。組み立てられた弁50において、尖のエッジ66および交連領域67は、弁の末梢の周りで固定され、フリーエッジ68は、中央において接するか、または「接合する」ことが可能になる。
【0031】
心臓弁50の例示的な構造において、葉状部64の末梢的なエッジ(66、67)は、支持フレーム70に結合し、従って、流れのオリフィスの形状および葉状部に対する3次元の支持構造を定義する。3つの葉状部64a、64bおよび64cは、図5に示されるように配列され、支持フレーム70は、このアセンブリの上部に下げられることによって、2つの葉状部のそれぞれの並置された末梢のエッジは、支持フレーム70の交連72において定義された軸方向の空間にはめ込まれる。表示されてはいないが、ファブリックは、支持フレーム70をカバーし、通常は縫合糸を用いて葉状部74が接続される結合構造を提供する。上述のように、他の弁の構造は、支持フレーム70を用い得ないが、それでも、成形された裁縫リング52と組み合され得る。
【0032】
組み立てられた補綴僧帽心臓弁50が、図6に示される。弁50の近い側は、前側であり、向かい合う側は、後ろ側である。前述の交連62a、62bおよび62cは、示される向きに、弁50の流出端に向かって「上向き」に突出する。用語「上向き」および「軸方向への隆起」は、図6において見られる弁50の向きに関連して本明細書中に用いられ、流出端が上に向いている。勿論、弁50は、反転されることによって、この方向を以前に図3Aおよび図3Bに見られたように逆向きにし得る。
【0033】
裁縫リング52は、支持フレーム70のファブリックでカバーされた尖74を囲繞し、縫合の糸または他の手段を用いて該尖に結合される。述べたように、裁縫リング52の流出端54は、裁縫リングの流出端の隣接部分に対して流出方向に軸方向に突出する、少なくとも1つの部分56を含む。例示された実施形態において、約120度に間隔を置き、交連62aおよび62bの2つから放射状に外側に配置された、2つのそのような軸方向への隆起部分56が存在する。流出端54に渡って引かれた放射状の線80は、これらの軸方向への隆起部分56aおよび56bの両方の頂部を意味し、裁縫リング52の外部の位置マーカーとして含まれ得る。
【0034】
裁縫リング52の好ましい構造は、ファブリックでカバーされた、図7Aおよび図7Bにおいて見られる縫合糸を通す輪状部材90を含む。輪状部材90は、実質的に平面の流入端92および2つの軸方向への隆起部分96aおよび96bを含む成形された流出端94を有する。好ましくは、輪状部材90は、縫合糸を通す生体適合が可能なポリマー、例えば珪素樹脂から作られ、その間の空間またはセルを定義する複数の壁を有する。図7Aに見られるように、空間は流出端94に開いており、図7Bは、実質的に連続した、閉じた流入端92を例示する。
【0035】
図8〜図12は、縫合糸を通す輪状部材90の例示的な構造上の詳細を描写する。図8は、正面図における輪状部材90および流出端94の残りの部分に関係する隆起部分96aおよび96bを示す。輪状部材90の全体的な軸方向の寸法は、Hとして左に示される。輪状部材の大部分の基準の高さh1は、全体的な輪状部材の高さHの約2分の1であり、軸方向への隆起部分96aおよび96bの追加の高さh2も同様である。言い換えると、軸方向への隆起部分96aおよび96bは、流出端94の隣接部分から輪状部材90の最も大きな軸方向の寸法の約50%の高さに上向きに隆起する。一実施形態に従って、軸方向への隆起部分96aおよび96bは、流出端94の隣接部分から約2mmの高さh2に隆起し、輪状部材90の全体的な高さHは、約4mmである。
【0036】
好ましい実施形態において、軸方向への隆起部分96aおよび96bは、流出端の隣接部分から上向きに、それらの頂部へと緩やかに湾曲し、円周の中点に関して実質的に対称的である。上述のように、輪状部材90の隆起部分96aおよび96bは、該部材の前側に提供される。流出端94の後ろ側97は、図8に見られるように、実質的に平面であり、流入端92に平行である。図11は、トラフ98を中心に置いた2つの隆起部分96aおよび96bの間の対称性を例示する。図12は、実質的に平面である後ろ側97に向かって互いから離れるように湾曲して下がる、隆起部分96aおよび96bを示す。本明細書中に定義されたように、隆起部分96aおよび96bは、「隣接部分」に対して高くなり、通常は、平面である後ろ側97によって一方向に定義され、前側のトラフ98によって他方向に定義される。
【0037】
ここで図10における流出端94の平面図を参照すると、短い放射状の線は、内部棚102(以下により詳細に記述される)に沿った隆起部分96aおよび96bの円周の中点における頂部100を示す。2つの頂部100を2等分しその中心を通過する全体的な対称面104が、輪状部材90を介して図示される。この平面図は、面104に関する頂部100の対称的な円周の分配を例示する。好ましくは、頂部100は、対称面から約60度、または互いから約120度に位置し、輪状部材90の周囲の最短の距離によって計測される。
【0038】
図10〜図12において見られる輪状部材90は、その間の空間またはセルを定義する複数の壁を備えている。図12Bに最も良好に見られるように、比較的厚い連続的な内壁100が、輪状部材90の周囲を360度に渡って延びており、放射状に外側に、かつ内壁110から流出方向に折れ曲がった連続的な円錐形の壁112も同様である。図9における底部および図11における断面から見られるように、内壁110の底面114および円錐形の壁112はともに、流入方向に面する輪状部材90の連続した、または中空でない壁を定義する。図12Bは、隆起部分96aのうちの1つを介した半径の断面図であり、円錐形の壁112の最も外側のリムから上向きに突出する外側の部分的なチューブ状の壁部分116を例示する。内側の部分的なチューブ状の壁部分118は、隆起部分96の領域において内壁110から上向きに突出する。複数の放射状の壁120は、内壁110、円錐形の壁112および外壁部分116を接続し、その間に、流出端94に開いている複数のセルまたは空間122を定義する。上向きに突出している壁部分116、118およびその間の放射状の壁120の結合した形状は、輪状部材90の隆起部分96aおよび96bを定義する。
【0039】
図10に見られるように、放射状の壁120および壁間の空間122は、輪状部材90の全体的な円周の周りに分配されている。図7Aにも見られるように、空間122は、輪状部材90の流出端94に開いている。最終的に、裁縫リング52は、図6に見られるようにファブリックによって包まれ、これによって空間122は、完成した弁においては目に見えない。空間122は、輪状部材90に「ワッフル」構造を提供し、該部材を非常にコンプライアンスを有するものにする。望ましくは、輪状部材90は、適切な生体適合が可能なポリマー、例えば珪素樹脂またはポリウレタンから作られ、空間122は、壁110〜120の形成を容易にし、モールド部品の容易な取り外しを可能にする。
【0040】
図10および図10Aもまた、輪状部材90の円周の周りでの該部材のコンプライアンスを変化させる好ましい構造を例示する。上述のように、突出部分96aおよび96bの頂部100は、約120度に分かれて間隔が置かれている。この弧の中において、壁120は、この弧から向かい合う位置においてよりもより小さな距離によって分離されており、その結果として、空間122はより小さく、輪状部材90はより堅いものとなる。より望ましくは、角度θが、対称面104によって2等分されて示されており、これによって頂部100の間に中心的に配置される。角度θを形成する線は、異なった大きさの空間122の間の変化を定義する放射状の壁120を通って延びる。一実施形態において、角度θ=90度であるが、θは、望ましくは80度〜120度の範囲である。
【0041】
拡大された図10Aは、異なる大きさの空間122の間の変化を最も良好に例示する。放射状の壁120’は、第2の空間122bから第1の空間122aを分離する。第1の空間122aは、角度αに及び、第2の空間122bは、角度βに及び、ここでは、β>αである。この角度をなした関係は、それぞれS1およびS2の弧の寸法をもたらし、該S1およびS2の弧の寸法は、空間122aおよび122bのそれぞれの半径方向の中点を通る基準の半径において取られ、輪状部材90の大きさに依存した大きさを示す。理解されるべきは、心臓弁は、様々な大きさで製造され、通常は、外径において21〜35mmの間であり、従って裁縫リング52および輪状部材90は、様々な大きさで提供される。他の条件が同一だとして、空間122bがより大きな場合は、輪状部材90は、よりコンプライアンスを有することが理解される。
【0042】
以下の表は、27mmの補綴弁のために寸法を取った輪状部材90の例示的な寸法を提供し、それぞれの空間122は、「セル」と呼ばれる。この実施例において、セルの壁120は、全て等しい厚さを有する。
【0043】
【表1】
上述のように、図10の頂部100によって輪郭を描かれた隆起部分96の間の弧は、部材90の角度のある部分に対するものであり、該部分は、僧帽弁輪の前側の面において配置されるように意図される。空間122aは、概して、頂部100の間(または、少なくとも角度θ内)においてより小さく、部材90および裁縫リング52の前側は、従って後ろ側97よりもコンプライアンスを有さない。よりコンプライアンスを有し、比較的に堅くはない後ろ側97は、裁縫リング52が僧帽弁輪の後ろ側の面のしばしば石灰化する組織により容易に順応し得るので望ましい。しかし、好ましい実施形態において、裁縫リングは、隆起部分96の間のより短い距離に位置している、軸方向への該隆起部分の間の中間の点において、中間点と正反対に向かい合う位置におけるよりも柔軟ではない。
【0044】
後ろ側97においてよりコンプライアンスを有するように輪状部材90を設計することは、僧帽弁輪の周囲の組織の特徴に関する特定の理解によって動機付けられた単なる1つの可能な構成であり、この場合においては、後ろ側の面がより石灰化する側面であることを、当業者は理解されたい。勿論、円周の周りのリングのコンプライアンス特性は、他の方法でカスタム化され得、その結果として、該リングは、例えば前側の周囲でよりコンプライアンスを有する。概して、本発明は、円周の周りで可変のコンプライアンスを有する裁縫リング52を熟考する。例えば、熟考される1つの配列は、大きなセルと小さなセルとを交互に有することであり、この場合において、高いコンプライアンスと低いコンプライアンスが交互になる領域は、より小さくかつより多くなり、片側またはもう一方の側に分離されるものと対比される。
【0045】
さらに図10Aを参照すると、裁縫リング52、またはより具体的に輪状部材90のコンプライアンスは、その円周における壁120の間の空間を変化させること以外に、異なるように変化され得る。例えば、壁120自体が、例えば上の表における角度λおよびμを同等でなくすることによって、異なる厚さで提供され得る。移り変わりの壁120’の左に示された、よりコンプライアンスの少ない(堅い)部分において、放射状の壁120は、厚さt1を有し得、一方で移り変わりの壁の右において、放射状の壁120は、厚さt2を有し得、t2<t1の関係(角度に関してλ>μ)である。放射状の壁120を輪状部材90の後ろ側97の周りでより薄くすることによって、該壁も、その領域においてよりコンプライアントを有する。さらに、放射状の壁120の厚さを変化させることは、空間122の寸法を変化させることと組み合されることによって柔軟性においてより大きな差異をもたらし得る。さらに、同等でない柔軟性の領域の間の壁120’におけるはっきりとした移り変わりは、より緩やかな移り変わりと置換され得る。
【0046】
裁縫リングの構造は、図7〜図12において示されるものとは異なり得ることも理解されるべきである。例示される型に入れて作られた珪素樹脂の「ワッフル」を用いて裁縫リングを作ることは、特定の明確な利点があるが、裁縫リングの流出端の前側に軸方向への隆起部分を提供し、柔軟性を変化させることの全般的な利点は、様々な構造を用いて達成され得る。例えば、他のポリマー(例えば、ポリウレタン)が、ワッフル構造を形成するために用いられ得、または壁の特定の配列および空間が修正され得る。特定の生体適合が可能なファブリック、例えば不織で圧縮されていないポリエステルまたはポリエチレンテレフタレートも、裁縫リングを形成するために用いられ得る。実際に、裁縫リングを形成する特に有用な方法の1つは、そのようなファブリックを必要な外形に巻くか、または折り畳み、次いで所望の形状に該ファブリックをヒートセットすることである。そのようなロールあるいは折り畳まれた布またはファブリックは、裁縫リングの円周の周りが異なるコンプライアンスを有するように製造され得る。例えば、そのようなファブリックを裁縫リングの前側によりきつく巻くことによって、前側は、後ろ側97よりもより堅く作られ得る。従って、特に主張されない限り、本発明は、裁縫リングに対する、モールドされた「ワッフルのような」ポリマーの内部部材に限定されないことが理解されるべきである。
【0047】
柔軟な葉状心臓弁の他の部分のアセンブリを容易にする、例示的な輪状部材90の他の特定の構造の詳細は、図7Aおよび図7Bの斜視図、および図11〜図12の詳細な図において示される。より具体的には、図7Aが、最も良好に内部棚102を例示し、該棚は、組み立てられた弁50において支持フレーム70の3つの尖74a、74bおよび74c(図4)の上で支えられている。内部棚102はまた、図11、図12Aおよび図12Bにおける断面図において、後ろ側97の中点における水平プラットフォーム132から小さな水平フランジ134に、およびそこから上向きに隆起部分96aおよび96bにおける頂部100への移り変わりで見られる。棚102は、前側の中点、頂部100の間の中間において別の小さな水平フランジ136へと下がる。図11Aに見られるように、棚102は、そのより低い末端において実質的に水平であり、軸方向に上向きに高くなるにつれて、僅かに内側かつ下向きの角度を有するように移り変わり、図12Bの拡大図において見られるように、頂部100において最高点に達する。
【0048】
弁50のアセンブリを作ることは、本質的に外側に延びているフランジを有するファブリックを用いて図4において示される支持フレーム70をカバーすることを含む。輪状部材90もまた、ファブリックでカバーされ、葉状部64の末梢的なエッジは、支持フレーム70と輪状部材90との間で挟まれ、それらのファブリックのカバーに固定される。述べられたように、支持フレーム70の尖74は、内部棚102の外形に密接に順応し、様々な要素を一緒に縫合する際に、アセンブリは、比較的寸法が安定するように作られる。すなわち、支持フレーム70は、輪状部材90を介する流入方向に移動することを、内部棚102によって防がれる。これらの製作技術のより完全な議論は、Huynhらに対する米国特許第6,585,766号および「ANATOMICALLY APPROXIMATE PROSTHETIC MITRAL HEART VALVE」と題する米国特許出願第11/039,522号に提供され、それらの開示は、本明細書中に参照により明確に援用される。
【0049】
隆起部分96aおよび96bの外形はまた、裁縫リング52と周囲の僧帽弁輪との間の接触を増すために重要であり、かつ左心室壁から全体の弁を離すように傾斜させる、前述の前側を上向きに高く上げる利点を提供するために重要である。図11および図12の正面図に最も良好に見られるように、隆起部分96aおよび96bのそれぞれは、急に露出した角を有さない滑らかな曲率を定義する。図11は、2つの隆起部分96aおよび96bの間の対称性を例示し、ここでは、流出端94の前側は、隆起部分からトラフ98への緩やかに高さを減少させる。トラフ98は、図12の左側に見られるように、輪状部材90の流出端94の向かい合う側とおよそ同一の高さを有する。従って、輪状部材90の軸方向の寸法が、隆起部分96aおよび96bの最も高い点からトラフ98の最も低い点に変化する円周の弧は、約60度である。その一方で、図12を参照すると、隆起部分96aおよび96bの最も高い点と実質的に平らな後ろ側97との間の移り変わりは、比較すると緩やかではないが、それでも滑らかである。隆起部分96aおよび96bと流出端94の平らな後ろ側97との間の円周の弧の距離は、約20度である。
【0050】
ここで図13を参照すると、本発明の代替的な補綴心臓弁150は、本発明の成形された裁縫リング154と結合された機械的な弁部材152を備えている。弁部材152は、周囲の支持フレーム158内の旋回運動のために結合される強固な葉状部156aおよび156bを含む。裁縫リング154は、支持フレーム158の末梢の周りに結合する。この図において、弁部材152の流入端は上にあり、流出端は下にある。2つの隆起部分160aおよび160bは、先に記述された柔軟な葉状部の実施形態のように、裁縫リング154において提供される。隆起部分160aおよび160bは、望ましくは裁縫リング154の前側に、円周上に間隔を開けて置かれることによって元々の三角(通常は、約120度)に一致する。留意されるべきは、機械的な弁部材152は、通常は周囲の支持フレーム158内で回転可能であり、従って、成形された裁縫リング154に関して示される向きは、限定的に考えられるべきではないということである。裁縫リング154は、ファブリックの外面162を有し、該外面は、上述のように内部のワッフルのような輪状部材をカバーし得るか、または巻かれたかまたは折り畳まれたファブリックの構造の単なる外層になり得る。
【0051】
図13Aおよび図13Bは、異なるコンプライアンスの部分を示すそれぞれの線13A−13Aおよび13B−13Bに沿って取られた、図13の成形された裁縫リング154を通る半径の断面図である。この実施形態において、裁縫リング154は、巻かれたファブリック構造で作られ、異なるコンプライアンスは、別の側172よりも片側170においてファブリックをよりしっかりと巻くことによって取得される。望ましくは、よりしっかりと巻き取られ、つまりはより少ないコンプライアンスを有する側170は、僧帽状弁150の前側にあり、より緩やかに巻き取られた、すなわちよりコンプライアンスを有する側172は、後ろ側である。別の市販用の構造において、不織のポリマーファブリックまたはポリエステルのフェルト(枕の詰め物のようなもの)が、用いられる。後者の構造において、ポリエステルのフェルトは、もう一方の側と比較すると、裁縫リング154の片側の周りによりしっかりと詰め込まれ得る。
【0052】
様々な変更が、本発明の意図される範囲から逸脱することなく、この仮出願において記述された本発明の実施例および実施形態になされ得ることも、当業者に認識されたい。本明細書中に記述の本発明の特定の実施形態は、従って、本出願において記述された幅広い発明の概念の実施例として理解されるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補綴心臓弁のための裁縫リングであって、
流入−流出の方向を定義する軸の周りに配列された、縫合糸を通す輪状部材を備え、
前記輪状部材は、前記輪状部材の少なくとも片側がその側と正反対に向かい合う位置においてより小さいコンプライアンスを有するように、その円周の周りに変更可能なコンプライアンスを有する、裁縫リング。
【請求項2】
前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、前記複数の放射状の壁は、前記放射状の壁間の空間を定義し、
前記片側の周りの前記放射状の壁は、反対側の前記放射状の壁よりも厚い、請求項1に記載の裁縫リング。
【請求項3】
前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、前記複数の放射状の壁は、前記放射状の壁間の空間を定義し、
前記片側の周りの前記空間は、反対側の前記空間よりも小さい、請求項1に記載の裁縫リング。
【請求項4】
前記輪状部材は、ポリマーのファブリックを含む、請求項1に記載の裁縫リング。
【請求項5】
前記輪状部材は、巻かれたファブリックを含み、前記ファブリックは、前記片側において反対側よりもよりしっかりと巻かれている、請求項4に記載の裁縫リング。
【請求項6】
前記裁縫リングは、前側面と後ろ側面との周りに間隔を置いた2つの三角を有する僧帽弁輪における移植のための僧帽心臓弁の構成要素を形成し、
前記輪状部材は、後ろ側の反対側の前側を有し、
前記輪状部材は、後ろ側において、前側よりもコンプライアンスを有する、請求項1に記載の裁縫リング。
【請求項7】
前記輪状部材は、軸の周りに配列されることによって流入端および流出端を定義し、前記流出端は、隣接部分に対して軸方向に隆起した、概して前側を定義する2つの部分を含む、請求項6に記載の裁縫リング。
【請求項8】
前記流出端の前記2つの軸方向に隆起した部分は、約120度だけ分離して間隔を置いている、請求項7に記載の裁縫リング。
【請求項9】
前記軸方向に隆起した部分は、前記流出端の前記隣接部分から上向きに、前記輪状部材の最も大きな軸方向の寸法の約50%の高さまで緩やかに湾曲する、請求項7に記載の裁縫リング。
【請求項10】
前記輪状部材の前記最も大きな軸方向の寸法は、約4mmである、請求項9に記載の裁縫リング。
【請求項11】
僧帽弁輪における移植のための補綴僧帽心臓弁であって、前記輪は、約120度だけ分離して間隔を置いている2つの前方の三角を備えており、前記心臓弁は、
流入−流出の方向に沿った軸の周りのオリフィスを定義する支持フレームと、
前記支持フレーム上の動きのために取り付けられることによって前記オリフィスにおける一方向の弁を提供する複数の葉状部と、
前記支持フレームに接続され、その周りに配置され前記心臓弁を前記僧帽弁輪に結合する、縫合糸を通す裁縫リングであって、前記裁縫リングは、少なくとも片側が別の位置より小さいコンプライアンスを有するように、その円周の周りに変更可能なコンプライアンスを有するように周りに配置される、裁縫リングと
を備えている、心臓弁。
【請求項12】
前記裁縫リングは、輪状部材を含み、前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、前記複数の放射状の壁は、前記放射状の壁間の空間を定義し、
より小さいコンプライアンスを有する側の周りの前記放射状の壁は、別の位置における前記放射状の壁よりも厚い、請求項11に記載の心臓弁。
【請求項13】
前記裁縫リングは、輪状部材を含み、前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、前記複数の放射状の壁は、前記放射状の壁間の空間を定義し、
より小さいコンプライアンスを有する側の周りの前記空間は、別の位置における前記空間よりも小さい、請求項11に記載の心臓弁。
【請求項14】
前記裁縫リングは、輪状部材を含み、前記輪状部材は、ポリマーのファブリックを含む、請求項11に記載の心臓弁。
【請求項15】
前記輪状部材は、巻かれたファブリックを含み、前記ファブリックは、より小さいコンプライアンスを有する側の周りにおいて別の位置よりもよりしっかりと巻かれている、請求項14に記載の心臓弁。
【請求項16】
前記裁縫リングは、輪状部材を含み、前記輪状部材は、後ろ側の反対側の前側を有し、前記前側は、前記後ろ側よりも小さいコンプライアンスを有する、請求項11に記載の心臓弁。
【請求項17】
前記輪状部材は、流入端および流出端を定義し、前記流出端は、隣接部分に対して軸方向に隆起した、概して前側を定義する2つの部分を含む、請求項16に記載の心臓弁。
【請求項18】
前記流出端の前記2つの軸方向に隆起した部分は、移植時に前記2つの前方の三角と適合するように約120度だけ分離して間隔を置いている、請求項17に記載の心臓弁。
【請求項19】
前記軸方向に隆起した部分は、前記流出端の前記隣接部分から上向きに、前記輪状部材の最も大きな軸方向の寸法の約50%の高さまで緩やかに湾曲する、請求項17に記載の心臓弁。
【請求項20】
前記輪状部材の前記最も大きな軸方向の寸法は、約4mmである、請求項19に記載の心臓弁。
【請求項21】
前記支持フレームは、波状の形状を有し、流入方向に延びた3つの尖と互い違いになる、前記流出方向に延びる3つの軸方向に配置された交連を含み、
前記心臓弁は、前記支持フレームの前記波状の形状の周りに取り付けられた3つの柔軟な葉状部を含む、請求項11に記載の心臓弁。
【請求項22】
前記支持フレームは、概して輪状の構成を有し、前記心臓弁は、前記支持フレーム内の旋回運動のために取り付けられた2つの強固な葉状部を含む、請求項11に記載の心臓弁。
【請求項1】
補綴心臓弁のための裁縫リングであって、
流入−流出の方向を定義する軸の周りに配列された、縫合糸を通す輪状部材を備え、
前記輪状部材は、前記輪状部材の少なくとも片側がその側と正反対に向かい合う位置においてより小さいコンプライアンスを有するように、その円周の周りに変更可能なコンプライアンスを有する、裁縫リング。
【請求項2】
前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、前記複数の放射状の壁は、前記放射状の壁間の空間を定義し、
前記片側の周りの前記放射状の壁は、反対側の前記放射状の壁よりも厚い、請求項1に記載の裁縫リング。
【請求項3】
前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、前記複数の放射状の壁は、前記放射状の壁間の空間を定義し、
前記片側の周りの前記空間は、反対側の前記空間よりも小さい、請求項1に記載の裁縫リング。
【請求項4】
前記輪状部材は、ポリマーのファブリックを含む、請求項1に記載の裁縫リング。
【請求項5】
前記輪状部材は、巻かれたファブリックを含み、前記ファブリックは、前記片側において反対側よりもよりしっかりと巻かれている、請求項4に記載の裁縫リング。
【請求項6】
前記裁縫リングは、前側面と後ろ側面との周りに間隔を置いた2つの三角を有する僧帽弁輪における移植のための僧帽心臓弁の構成要素を形成し、
前記輪状部材は、後ろ側の反対側の前側を有し、
前記輪状部材は、後ろ側において、前側よりもコンプライアンスを有する、請求項1に記載の裁縫リング。
【請求項7】
前記輪状部材は、軸の周りに配列されることによって流入端および流出端を定義し、前記流出端は、隣接部分に対して軸方向に隆起した、概して前側を定義する2つの部分を含む、請求項6に記載の裁縫リング。
【請求項8】
前記流出端の前記2つの軸方向に隆起した部分は、約120度だけ分離して間隔を置いている、請求項7に記載の裁縫リング。
【請求項9】
前記軸方向に隆起した部分は、前記流出端の前記隣接部分から上向きに、前記輪状部材の最も大きな軸方向の寸法の約50%の高さまで緩やかに湾曲する、請求項7に記載の裁縫リング。
【請求項10】
前記輪状部材の前記最も大きな軸方向の寸法は、約4mmである、請求項9に記載の裁縫リング。
【請求項11】
僧帽弁輪における移植のための補綴僧帽心臓弁であって、前記輪は、約120度だけ分離して間隔を置いている2つの前方の三角を備えており、前記心臓弁は、
流入−流出の方向に沿った軸の周りのオリフィスを定義する支持フレームと、
前記支持フレーム上の動きのために取り付けられることによって前記オリフィスにおける一方向の弁を提供する複数の葉状部と、
前記支持フレームに接続され、その周りに配置され前記心臓弁を前記僧帽弁輪に結合する、縫合糸を通す裁縫リングであって、前記裁縫リングは、少なくとも片側が別の位置より小さいコンプライアンスを有するように、その円周の周りに変更可能なコンプライアンスを有するように周りに配置される、裁縫リングと
を備えている、心臓弁。
【請求項12】
前記裁縫リングは、輪状部材を含み、前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、前記複数の放射状の壁は、前記放射状の壁間の空間を定義し、
より小さいコンプライアンスを有する側の周りの前記放射状の壁は、別の位置における前記放射状の壁よりも厚い、請求項11に記載の心臓弁。
【請求項13】
前記裁縫リングは、輪状部材を含み、前記輪状部材は、複数の放射状の壁を有するモールドされたポリマーを含み、前記複数の放射状の壁は、前記放射状の壁間の空間を定義し、
より小さいコンプライアンスを有する側の周りの前記空間は、別の位置における前記空間よりも小さい、請求項11に記載の心臓弁。
【請求項14】
前記裁縫リングは、輪状部材を含み、前記輪状部材は、ポリマーのファブリックを含む、請求項11に記載の心臓弁。
【請求項15】
前記輪状部材は、巻かれたファブリックを含み、前記ファブリックは、より小さいコンプライアンスを有する側の周りにおいて別の位置よりもよりしっかりと巻かれている、請求項14に記載の心臓弁。
【請求項16】
前記裁縫リングは、輪状部材を含み、前記輪状部材は、後ろ側の反対側の前側を有し、前記前側は、前記後ろ側よりも小さいコンプライアンスを有する、請求項11に記載の心臓弁。
【請求項17】
前記輪状部材は、流入端および流出端を定義し、前記流出端は、隣接部分に対して軸方向に隆起した、概して前側を定義する2つの部分を含む、請求項16に記載の心臓弁。
【請求項18】
前記流出端の前記2つの軸方向に隆起した部分は、移植時に前記2つの前方の三角と適合するように約120度だけ分離して間隔を置いている、請求項17に記載の心臓弁。
【請求項19】
前記軸方向に隆起した部分は、前記流出端の前記隣接部分から上向きに、前記輪状部材の最も大きな軸方向の寸法の約50%の高さまで緩やかに湾曲する、請求項17に記載の心臓弁。
【請求項20】
前記輪状部材の前記最も大きな軸方向の寸法は、約4mmである、請求項19に記載の心臓弁。
【請求項21】
前記支持フレームは、波状の形状を有し、流入方向に延びた3つの尖と互い違いになる、前記流出方向に延びる3つの軸方向に配置された交連を含み、
前記心臓弁は、前記支持フレームの前記波状の形状の周りに取り付けられた3つの柔軟な葉状部を含む、請求項11に記載の心臓弁。
【請求項22】
前記支持フレームは、概して輪状の構成を有し、前記心臓弁は、前記支持フレーム内の旋回運動のために取り付けられた2つの強固な葉状部を含む、請求項11に記載の心臓弁。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図10A】
【図11】
【図11A】
【図12】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図13A】
【図13B】
【図2】
【図2A】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図10A】
【図11】
【図11A】
【図12】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図13A】
【図13B】
【公開番号】特開2013−39428(P2013−39428A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−255112(P2012−255112)
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【分割の表示】特願2008−521405(P2008−521405)の分割
【原出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(500218127)エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション (93)
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−255112(P2012−255112)
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【分割の表示】特願2008−521405(P2008−521405)の分割
【原出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(500218127)エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション (93)
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
【Fターム(参考)】
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