説明

成形シートの打抜き型

【課題】 成形シートの寸法誤差に対して打抜き刃の位置を簡単に調整できるようにした成形シートの打抜き型を提供する。
【解決手段】 取付け板(11)の表面側には縦方向又は横方向の複数の凹溝(13)を形成し、裏面側には直交する方向の複数の凹溝を形成し、凹溝の両端には拡大凹部(16)を形成する。複数の凹溝にはねじ棒(15)又はボルトを挿入し、拡大凹部で座金(17)を介してナット(18)を螺合させる。両端ナットを相互に螺進退させるか又はボルト頭部に対してナットを螺進退させることにより、取付け板を縦方向及び/又は横方向に締付けその締付けを弛め、取付け板の全体を伸縮させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は成形シートの打抜き型に関し、特に成形シートの寸法誤差に対して打抜き刃の位置を簡単に調整できるようにした打抜き型に関する。
【背景技術】
【0002】
生鮮食品、例えば魚、肉、果実などは食品用トレイに小分けにしラッピングして棚などに陳列することがよく行われる。通常、この種の食品用トレイでは真空成形や圧空成形によって例えば図5に示されるような1枚の大きなシート100として成形され、成形後に打抜き型を用いて成形シート100から個々のトレイ110を打抜くことによって製造される。
【0003】
上述の成形シートの打抜き型では取付け板上に、トレイの形状に合わせて複数の打抜き刃を縦横に並べて固定した構造が採用されている。しかし、原料樹脂の熱収縮率のばらつきや製造条件の変動などに起因して製造ロットごとに成形シートに寸法誤差が生ずることがある。寸法誤差があるとトレイの打抜きが所定の位置で行われず、製品不良となる。
【0004】
これに対し、打抜きユニットに打抜き刃を固定し、複数の打抜きユニットを取付け板にボルト・ナットによって取付け位置を調節できるように取付け、打抜き刃の位置を調整できるようにした打抜き型が提案されているが(特許文献1、特許文献2、特許文献3)、複数の打抜きユニットの位置を個別に調整する必要があって作業が煩雑である。
【0005】
他方、取付け板を複数の支持板に分割し、隣接する支持板を隙間部材を挟んでスラスト棒で固定する一方、取付け板に複数の打抜き刃を支持板をまたぐように縦横に並べて固定するようにした打抜き型が提案されている(特許文献4)。
【0006】
この打抜き型ではスラスト棒を回転又は逆転させることによってスラスト棒両端のスラスト板を接近又は離間させ、隣接する支持板の間隔を小さく又は大きくして複数の打抜き刃の位置を調整することができ、調整の煩雑さは比較的少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3613481号公報
【特許文献2】特開2009−18378号公報
【特許文献3】特開2004−330388号公報
【特許文献4】実開平06−27100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、本件発明者らが成形シートの寸法誤差について種々検討したところ、成形シートの寸法誤差は複数のうちの特定のトレイの位置がずれるということは少なく、成形シート全体が縦方向や横方向に伸縮していることが多いことを知見するに至った。
【0009】
上述の知見からすると、特許文献4記載の打抜き型では隣接する支持板ごとに位置を調整しているのであるから、この点で改良の余地がある。
【0010】
本発明はかかる点に着目し、成形シートの寸法誤差に対して打抜き刃の位置を簡単に調整できるようにした成形シートの打抜き型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明に係る成形シートの打抜き型は、複数のトレイを縦横に並べて形成した成形シートから個々のトレイを打抜くための成形シートの打抜き型において、取付け板には成形シートからトレイを打ち抜くための複数の打抜き刃が縦横に並べて固定され、上記取付け板の表面側には縦方向又は横方向の全長にわたって延びる複数の凹溝が相互に間隔をあけて形成される一方、上記取付け板の裏面側には上記表面側の凹溝と直交する方向の全長にわたって延びる複数の凹溝が相互に間隔をあけて形成され、上記複数の凹溝には両端部におねじが形成されたねじ棒又は一端部に頭部が形成され他端部におねじが形成されたボルトが挿入され、上記複数の凹溝の両端には拡大凹部が形成され、該拡大凹部にはねじ棒の両端おねじに螺合するナット、又はボルト頭部とナットが座金を介して嵌め込まれており、両端ナットを相互に螺進退させるか又はボルト頭部に対してナットを螺進退させることにより上記取付け板が縦方向及び/又は横方向に締付けられその締付けが弛められるようになしたことを特徴とする。
【0012】
本発明の特徴の1つは取付け板の表裏面に縦横に延びる複数の凹溝を形成してねじ棒又はボルトを挿通し、 ねじ棒に対してナットを螺進退させるか又はボルト頭部に対してナットを螺進退させて取付け板を縦方向及び/又は横方向に締付け、その締付けを弛めるようにした点にある。
【0013】
これにより、縦横の締付けによって凹溝が撓み、締付けの解放によって撓みが元に戻り、取付け板の全体が縦方向及び/又は横方向に伸び縮みして打抜き刃の位置が調整される結果、打抜き刃の位置を簡単に調整することができる。
【0014】
取付け板は一体的に構成されていてもよいが、打抜き刃の調整できる寸法が短い場合が懸念される。そこで、取付け板を複数の支持板に分割し、隣接する支持板の間のスペーサを交換可能に挿入するようにすると、打抜き刃の調整できる任意の寸法を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る成形シートの打抜き型の好ましい実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】上記実施形態を示す平面図である。
【図3】図1の要部斜視図である。
【図4】第2の実施形態を示す概略斜視図である。
【図5】成形シートの1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図3は本発明に係る成形シートの打抜き型の好ましい実施形態を示す。図において、打抜き型10は合板などの取付け板11に埋込み用溝をレーザビーム加工などによって成形シート100のトレイ110の配列に対応した形状に例えば上下に貫通して形成し、埋込み用溝に複数の打抜き刃12を埋め込んで構成されている。
【0017】
この打抜き刃12はそのコーナー部位において隣接する打抜き刃12とすり合わされており、打抜き刃12に加わる横荷重に対して打抜き刃12が縦方向及び/又は横方向にその位置を変化させることによって横荷重を吸収するようになっている。
【0018】
取付け板11の表面側には縦方向の全長にわたって延びる複数の凹溝13が相互に等しい間隔をあけて形成され、取付け板11の裏面側には表面側の凹溝13と直交する方向、即ち横方向の全長にわたって延びる複数の凹溝(図示せず)が相互に等しい間隔をあけて形成されている。
【0019】
複数の凹溝13にはねじ棒15が挿入され、ねじ棒15の両端部にはおねじが形成され、又複数の凹溝13の両端には拡大凹部16が形成され、拡大凹部16には座金17及びナット18が挿入され、ナット18はねじ棒15のおねじに螺合されている。
【0020】
例えば、打抜き刃12の縦方向の位置を調整する場合、縦方向に伸びるねじ棒15両端のナット18を螺進する方向に回転させる。すると、取付け板11裏面の横方向に伸びる複数の凹溝が撓み、取付け板11の全体が縦方向に縮むので、打抜き刃12の位置を縦方向の間隔が狭くなるように調整することができる。
【0021】
他方、縦方向に伸びるねじ棒15両端のナット18を螺退する方向に回転(逆回転)させると、横方向に伸びる複数の凹溝の撓みが解放され、取付け板11の縦方向の縮みが解放されるので、打抜き刃12の位置を縦方向の間隔が広くなるように調整することができる。
【0022】
打抜き刃12の横方向の位置を調整する場合、横方向に延びるねじ棒の両端のナット18を螺進する方向に回転させ、螺退する方向に回転(逆回転)させればよい。
【0023】
以上のように、ナット18の螺進退させるという簡単な作業によって打抜き刃12の位置を調整することができる。
【0024】
図4は第2の実施形態を示し、図において図1ないし図3と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例では取付け板11が複数の支持板11Aに分割され、隣接する支持板11Aの間にはスペーサ20が挿入され、スペーサ20にはねじ棒15が挿通され、スペーサ20を交換することによって打抜き刃12の位置を調整できる寸法を任意に設定できるようにしている。
【符号の説明】
【0025】
10 打抜き型
11 取付け板
11A 支持板
12 打抜き刃
13 凹溝
15 ねじ棒
16 拡大凹部
17 座金
18 ナット
20 スペーサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトレイを縦横に並べて形成した成形シートから個々のトレイを打抜くための成形シートの打抜き型において、
取付け板(11)には成形シート(100)からトレイ(110)を打ち抜くための複数の打抜き刃(12)が縦横に並べて固定され、
上記取付け板(11)の表面側には縦方向又は横方向の全長にわたって延びる複数の凹溝(13)が相互に間隔をあけて形成される一方、上記取付け板(11)の裏面側には上記表面側の凹溝(13)と直交する方向の全長にわたって延びる複数の凹溝が相互に間隔をあけて形成され、
上記複数の凹溝(13)には両端部におねじが形成されたねじ棒(15)又は一端部に頭部が形成され他端部におねじが形成されたボルトが挿入され、
上記複数の凹溝(13)の両端には拡大凹部(16)が形成され、該拡大凹部(16)にはねじ棒(15)の両端おねじに螺合するナット(18)、又はボルト頭部とナットが座金を介して嵌め込まれており、
上記両端ナット(18)を相互に螺進退させるか又はボルト頭部に対してナットを螺進退させることにより上記取付け板(11)が縦方向及び/又は横方向に締付けられその締付けが弛められることを特徴とする成形シートの打抜き型。
【請求項2】
上記取付け板(11)が複数の支持板(11A)に分割され、隣接する支持板(11A)の間のスペーサ(20)が交換可能に挿入されている請求項1記載の成形シートの打抜き型。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−71373(P2012−71373A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217018(P2010−217018)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(592190383)株式会社黒岩 (9)
【Fターム(参考)】