説明

成形シート材料の搬送方法並びに搬送装置

【課題】成形シート材料を加熱軟化処理して成形金型に搬送する成形シート材料の搬送方法及び搬送装置であって、加熱後のドローダウンを確実に防止して、成形性能を高めるとともに、成形シート材料のセット作業における作業性を高める。
【解決手段】成形シート材料Sの搬送装置50は、搬送機構に連結され、所定の搬送経路に沿って搬送される搬送用担体60と、搬送用担体60の上面に重合されるフッ素樹脂シート等の剥離性に富む樹脂シート70とから構成され、成形シート材料Sを樹脂シート70面に載置することで、セットが完了し、フラット面で受けるため、ドローダウンがなくなり、かつセット作業も簡素化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品の素材として好適な成形シート材料の搬送方法並びに搬送装置に係り、特に、成形シート材料の加熱時におけるドローダウンを抑え、均一な加熱処理を可能にするとともに、成形シート材料のセット作業が簡単に行なえ、作業性を高めた成形シート材料の搬送方法並びに搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用内装部品の一例として、ドアトリムを例示して図9,図10を基に説明する。このドアトリム1は、所望の曲面形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材2の表面に表皮3が一体貼着され、発泡樹脂基材2の裏面所定箇所には、剛性低下部位の剛性を強化するとともに、周縁部の反り変形等を抑えるための樹脂リブ4が所定パターン形状に沿って形成されている。そして、軽量化された自動車用ドアトリム1の成形方法としては、図11に示すように、発泡樹脂基材2の素材である成形シート材料Sを搬送装置5で支持した状態で加熱炉6内に投入して、所定温度に加熱軟化処理した後、成形金型7内に供給して、所望の曲面形状にプレス成形するとともに、発泡樹脂基材2の裏面に所定パターン形状の樹脂リブ4を射出成形により一体化している。
【0003】
上記搬送装置5の構成としては、枠体5aに固定用ピン5bが設けられており、これら固定用ピン5bに成形シート材料Sを突き刺して成形シート材料Sを搬送装置5に支持した状態で加熱炉6内での加熱処理及び成形金型7への搬送処理を行なっている。尚、参考までに成形金型7の構成について簡単に説明すると、成形金型7は、所定ストローク上下動可能な成形上型7aと固定側の成形下型7bと、成形下型7bに連設され、樹脂リブ4の素材である溶融樹脂を供給する射出機7cとから構成されており、成形上下型7a,7bが型開き状態にある時、加熱軟化処理した成形シート材料Sを搬送装置5の駆動により成形金型7内に投入して、成形上下型7a,7bを型締めすることで発泡樹脂基材2を所要形状に成形する一方、発泡樹脂基材2の裏面に射出機7cから溶融樹脂Mを射出充填することで、所定パターン形状の樹脂リブ4を発泡樹脂基材2の裏面に一体化している。尚、上記ドアトリム1の構成及び製造方法については、特許文献1に詳細に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−106590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の成形シート材料Sの成形方法においては、加熱炉6や成形金型7に成形シート材料Sを搬送する搬送装置5として、枠体5aの上面に固定用ピン5bを立設した構造のものを使用し、成形シート材料Sの周縁部分を保持して、加熱軟化処理を行なうため、枠体5a内部はフリーな状態となり、ドローダウン現象が生じ易く、ドローダウンした部分は加熱炉6のヒーターに近くなるため、加熱速度が上がる傾向にある。また、逆に枠体5a上の部位は熱が遮断されるため、加熱速度が下がる傾向にあり、その結果、成形シート材料Sにおける加熱分布が均等でないことから、成形シート材料Sを二次発泡させて発泡樹脂基材2を成形する際に加熱ムラが原因となり、剛性や弾性度、あるいは厚み寸法等にバラツキが生じ、均一な品質性能が期待できないという欠点が指摘されている。更に、成形シート材料Sを搬送装置5にセットする工程及び加熱後の成形シート材料Sを搬送装置5から外して、成形金型7内にセットする工程において、成形シート材料Sを固定用ピン5bに突き刺す作業並びに固定用ピン5bから成形シート材料Sを剥がす作業が非常に面倒であり、作業性の低下は免れなかった。
【0006】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、熱成形可能な成形シート材料を加熱軟化処理して成形金型に供給する成形シート材料の搬送方法並びに搬送装置であって、加熱軟化処理しても成形シート材料のドローダウンを確実に防止でき、加熱ムラをなくし、製品の品質性能を良好に維持するとともに、成形シート材料の搬送装置へのセット作業並びに搬送装置から取り外して成形金型へのセット作業を円滑に行なえるようにした成形シート材料の搬送方法並びに搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意研究の結果、熱成形可能な成形シート材料を搬送する搬送装置及び搬送方法において、成形シート材料を周縁部のみ保持するのではなく、フラットなシート全面で保持することで、ドローダウンをなくし、かつシート材料を載置する形態を採用することで、セット作業を簡素化できることに着目し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、熱成形可能な成形シート材料を加熱軟化処理した後、成形金型内に供給する成形シート材料の搬送方法であって、搬送機構により駆動される搬送用担体上に剥離性に富む樹脂シートを重合してなる搬送装置を使用し、該搬送装置の樹脂シート面上に成形シート材料を載置して、加熱炉内に投入して所定温度に加熱軟化処理した後、成形シート材料をフラット状に保持し、ドローダウン現象を回避しながら成形金型内の所定位置に供給することを特徴とする。
【0009】
更に、本発明方法に使用する搬送装置は、熱成形可能な成形シート材料を加熱軟化処理した後、成形金型内に供給する成形シート材料の搬送装置において、前記搬送装置は、搬送機構に連結され、所定の軌跡に沿って駆動される搬送用担体と、この搬送用担体の上面に支持される剥離性に富む樹脂シートとから構成され、成形シート材料を樹脂シートの上面に載置するだけでセットが完了し、加熱軟化処理時における成形シート材料の垂れ下がりを回避できることを特徴とする。
【0010】
ここで、成形シート材料としては、熱成形が可能な熱可塑性樹脂シート全般に適用できる。また、熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した発泡樹脂シートを使用することができる。尚、熱可塑性樹脂は、1種類の熱可塑性樹脂でも、2種類以上の熱可塑性樹脂からなっても良い。好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用できる。また、成形シート材料に使用する発泡剤としては、アゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤の使用が可能である。
【0011】
そして、成形シート材料を加熱軟化処理する加熱炉としては、赤外線加熱炉が使用され、成形シート材料の上下側からヒーターにより加熱されるが、上側ヒーターのヒーター温度を200℃、下型ヒーターのヒーター温度を400℃のように、搬送装置により遮熱される部分を見越して、下側ヒーターのヒーター温度を高く設定するのが好ましい。また、成形金型は、コールドプレス成形金型、真空成形金型等、熱成形全般の成形金型に適用することができる。
【0012】
次いで、搬送装置としては、搬送用担体の上面に剥離性に富む樹脂シートが重合されていれば良い。搬送用担体は、シリンダ、コンベア等の搬送機構に連結されて所定の搬送経路に沿って可動する。例えば、搬送用担体は成形シート材料を加熱炉内に投入して、成形シート材料を加熱軟化処理した後、成形金型の所定位置に供給するという所定の搬送経路に沿って可動する。上記搬送用担体としては、搬送機構に連結されるネット、枠体、プレート、ガラスマット等、形態は成形シート材料の物性や用途において適宜選択することができる。そして、搬送用担体の上面にフッ素樹脂シート、シリコーン樹脂シート等、剥離性に優れた合成樹脂シートを重合させる。
【0013】
従って、本発明方法によれば、成形シート材料は搬送用担体に支持されている剥離性に富む樹脂シート上に成形シート材料のシート全面が支持されるようにセットして、加熱軟化処理した後、成形金型に搬送するというものであるから、ドローダウンが生じることがなく、材料の加熱分布が均等となり、剛性、弾性度、厚み寸法等にバラツキが生じることがなく、品質性能を良好に維持することができる。また、成形シート材料を搬送装置にセットするには単純に成形シート材料を樹脂シートの上面に載置すれば良いため、セット作業が簡単に行なえ、かつ搬送装置から取り外す際は、剥離性に富む樹脂シートであるから簡単に成形シート材料を剥がすことができ、成形金型へのセット作業を簡単に行なえる等、良好な作業性を維持できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明した通り、本発明に係る成形シート材料の搬送方法並びに搬送装置は、搬送用担体の上面に剥離性に富む樹脂シートを重合した搬送装置を使用し、剥離性に富む樹脂シートのフラット面に成形シート材料を載置して、加熱炉内に投入し、加熱軟化処理した後、成形金型に搬送するというものであるから、成形シート材料にフリー部分がなく、ドローダウンが生じることがない。
【0015】
従って、ドローダウンが原因となる加熱ムラが発生しないため、厚みや剛性、弾性度にバラツキが生じることがなく、品質性能に優れた成形品を成形できるとともに、搬送装置へのセット作業についても単純に成形シート材料を載置するだけで済み、かつ成形金型にセットする際には搬送装置から簡単に成形シート材料を剥離操作できるため、作業性を向上させることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る成形シート材料の搬送方法並びに搬送装置の好適な実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0017】
図1乃至図8は本発明の一実施例を示すもので、図1は本発明方法を適用して成形したドアトリムを示す正面図、図2は同ドアトリムの構成を示す断面図、図3は同ドアトリムにおける樹脂リブのパターン形状を示す説明図、図4は本発明方法を示す概要図、図5乃至図8は本発明方法を適用したドアトリムの成形方法を示す各工程説明図である。
【0018】
図1乃至図3において、本発明に係る自動車用内装部品の構成を適用したツートンタイプの自動車用ドアトリム10の構成について説明する。自動車用ドアトリム10は、積層構造体からなるドアトリムアッパー20と、樹脂単体品からなるドアトリムロア30との上下二分割体から構成されている。そして、ドアトリム10に装着される機能部品としては、ドアトリムアッパー20にインサイドハンドルエスカッション11、パワーウインドウスイッチエスカッション12が取り付けられている。また、ドアトリムロア30には、ドアポケット用開口13が開設され、その背面側には、図2に示すように、ポケットバックカバー(樹脂成形体から構成されている)14が取り付けられており、ドアトリムロア30のフロント側にスピーカグリル15がドアトリムロア30と一体、あるいは別体に設けられている。
【0019】
ところで、本発明に係る自動車用ドアトリム10は、製品の軽量化が図られているとともに、良好な表面外観と強固な製品剛性が確保されている。すなわち、ドアトリムアッパー20は、図2に示すように、所望の曲面形状に成形され、保形性を有する発泡樹脂基材21と、この発泡樹脂基材21の裏面側に一体化される樹脂リブ22と、発泡樹脂基材21の表面側に積層一体化される加飾機能をもつ加飾材23とから大略構成されている。尚、図中符号16は車体パネルを示す。
【0020】
上記発泡樹脂基材21は、保形性を備えるように、発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に熱成形、例えば、所望の型面を有する成形金型でコールドプレス成形して、形状が付与されている。上記発泡樹脂シートは、汎用の熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した構成であり、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用でき、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤や重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤が使用できる。この実施例では、ポリプロピレン系樹脂に発泡剤として重炭酸ナトリウムを適宜添加した発泡樹脂シートを使用している。また、この発泡樹脂基材21の発泡倍率は、2〜10倍に設定され、厚みは0.5〜30mm、特に好ましくは1〜10mmの範囲に設定されている。
【0021】
次いで、樹脂リブ22は、図3に示すように、縦横方向、あるいは斜め方向等に延びる格子状パターンに設定されている。そして、この樹脂リブ22は、汎用の合成樹脂成形体からなり、通常好ましく使用できる合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等から適宜選択されて良く、本実施形態では、環境面、リサイクル面を考慮してポリプロピレン系樹脂が使用されている。また、この樹脂リブ22には、上記熱可塑性樹脂中に適宜フィラー、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維や、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子等の充填剤が混入されていても良い。
【0022】
このように、図1乃至図3に示すドアトリム10は、積層構造体からなるドアトリムアッパー20と、合成樹脂単体品であるドアトリムロア30とから構成され、外観上のアクセント効果により、優れた外観意匠性を備えている。更にドアトリムアッパー20は、保形性を有する発泡樹脂基材21と、発泡樹脂基材21の裏面に積層一体化される樹脂リブ22とから構成されているため、従来のように製品の全面に亘り占有していた樹脂芯材を廃止でき、かつ軽量な発泡樹脂基材21を使用する一方、樹脂リブ22は骨状であり、荷重が加わる部位、例えば、クリップ取付座、ウエストフランジ、アームレスト部上面等を除いた部位は、肉抜き構造となっている関係で、製品の重量について、従来例に比し40%以上の軽量化を図ることができるとともに、樹脂材料も大幅に節約でき、コストダウンにも貢献できる。
【0023】
更に、発泡樹脂基材21は、多孔質構造であるため、ドアトリムアッパー20は、吸音性能に優れ、車室内外の騒音を低減することができる。また、発泡樹脂基材21の表面に所望ならば加飾材を積層一体化しても良い。その場合は、車室内騒音を対象とした吸音性能を高めるために、発泡樹脂基材21の表面に積層一体化される加飾材は、織布、不織布、編布等の通気性を備えたシート材料が好ましい。尚、加飾材は、織布、不織布、編布等の通気性シート以外にも塩ビシートやTPOシート等の合成樹脂シート(TPOシートを使用すればリサイクルが可能)、合成樹脂フィルム、発泡体、網状体等を使用することができる。尚、廉価構成として、加飾材を省略し、発泡樹脂基材21の表面に塗装や印刷処理を施すようにしても良い。
【0024】
次いで、上述した構成のドアトリムアッパー20、ドアトリムロア30からなるドアトリム10の成形方法について、図4の概要図を基に説明する。まず、ドアトリム10の成形に使用する成形金型40の構成について説明すると、成形金型40は、所定ストローク上下動可能な成形上型41と、成形上型41と対をなす固定側の成形下型42と、成形下型42に接続される2基の射出機43a,43bとから大略構成されている。更に詳しくは、成形上型41は、製品形状に合致したキャビティ部411が形成されており、成形上型41の上面に連結された昇降シリンダ412により所定ストローク上下駆動される。また、成形上型41の4隅部には、ガイド機構となるガイドブッシュ413が設けられている。
【0025】
一方、成形下型42には、成形上型41のキャビティ部411に対応するコア部421が設けられている。また、このコア部421の型面に溶融樹脂を供給するために、マニホールド422a,422b、ゲート423a,423bが設けられており、このマニホールド422a,422b、ゲート423a,423bの樹脂通路を経て射出機43a,43bから供給される溶融樹脂M1,M2がコア部421の上面に供給される。尚、樹脂リブ22を形成するために、コア部421上面に溶融樹脂M1が供給される溝部424が穿設される一方、ドアトリムロア30を形成するために、成形上下型41,42間に所定クリアランスのキャビティ425が設定されている。また、成形下型42の4隅部には、ガイド機構となるガイドポスト426が突設され、このガイドポスト426は、成形上下型41,42が型締めされる際、ガイドブッシュ413内に案内されることで成形上型41のプレス姿勢を適正に維持できる。
【0026】
ところで、本発明は、発泡樹脂基材21の素材である成形シート材料Sを加熱軟化させても、ドローダウンの発生がなく、かつ成形シート材料Sのセット作業を円滑に行なえる搬送方法及び搬送装置を提供することが課題である。すなわち、搬送装置50は、搬送用担体60と、この搬送用担体60の上面に重合されたフッ素樹脂シート、シリコーン樹脂シート等、剥離性に富む樹脂シート70とから構成されている。更に詳しくは、搬送用担体60は、所望の剛性を備えていれば構造は特に限定するものではなく、形状についてはプレート体でも枠体でも、また、材質については金属製でも合成樹脂製でも構わない。そして、図示しないシリンダやベルトコンベア等の搬送機構の駆動により、所定の搬送経路に沿って搬送用担体60を搬送させれば良い。
【0027】
従って、本発明に係る搬送装置50を使用すれば、加熱炉80(上側ヒーター80A、下型ヒーター80Bで符号化する)で加熱軟化処理する際、発泡樹脂基材21の素材である成形シート材料Sは、その全面において剥離性に富む樹脂シート70で支持されているため、ドローダウン現象が生じることがなく、加熱ムラが原因となる成形不良を未然に防止でき、品質性能に優れた発泡樹脂基材21の成形が可能になるとともに、固定用ピンに突き刺したり、固定用ピンから外す等の面倒な作業が必要でなく、搬送装置50上に載置するだけで成形シート材料Sのセットが完了し、かつ剥離性に富む樹脂シート70から簡単に剥がれるため、成形金型40へのセット作業も円滑に行なえる。
【0028】
次いで、図5乃至図8に基づいて、ドアトリム10の成形方法について順次説明する。まず、図5に示すように、搬送装置50に成形シート材料Sを載置して、加熱炉80に投入する。この時、加熱炉80において、上型ヒーター80Aのヒーター温度は200℃に、また、下側ヒーター80Bのヒーター温度は400℃にそれぞれ設定され、ドローダウンが生じることがないため、従来より加熱時間を長く設定しても良く、成形シート材料Sに対して均一かつ充分な加熱処理を施すことができる。そして、図6に示すように、加熱軟化処理した成形シート材料Sをドアトリムアッパー20対応箇所における成形上型41のキャビティ部411と成形下型42のコア部421で画成されるキャビティの上半部分にセットする。また、成形シート材料Sの一方面には加飾材23が予めラミネートされている。尚、この実施例では、成形シート材料Sとして、ポリプロピレン製発泡シート(住化プラステック製、商品名:スミセラー発泡PPシート、発泡倍率=3倍、厚み3mm)が使用されている。上記成形シート材料Sをセットした後、図7に示すように、成形上型41の昇降シリンダ412が動作して、成形上型41が所定ストローク下降して、成形上下型41,42が型締めされ、成形シート材料Sがキャビティ形状に沿って賦形される。
【0029】
次に、成形シート材料Sから発泡樹脂基材21を所望の曲面形状に成形した後、図8に示すように、第1の射出機43aからマニホールド422a、ゲート423aを通じてドアトリムアッパー20における樹脂リブ22を形成するために、溶融樹脂M1が成形下型42の溝部424内に射出充填される。更に、ドアトリムロア30を成形するために、第2の射出機43bからマニホールド422b、ゲート423bを通じてキャビティ425内に溶融樹脂M2が射出充填され、ドアトリムロア30が所要形状に成形される。尚、この溶融樹脂M1,M2としては、住友ノーブレンBUE81E6(住友化学工業製ポリプロピレン、メルトインデックス=80g/10分)にタルク等のフィラーが適宜割り合いで混入されている樹脂材料を使用している。従って、第1の射出機43aから溶融樹脂M1を溝部424、端末部424a内に射出充填する一方、第2の射出機43bから溶融樹脂M2をキャビティ425内に射出充填することにより、ドアトリムアッパー20における樹脂リブ22を所要形状に成形するとともに、これと一体にドアトリムロア30が一体成形される。
【0030】
このように、ドアトリム10が成形金型40により所要形状に成形されるが、本発明に係る搬送装置50を使用する搬送方法を採用すれば、成形シート材料Sのドローダウンを確実に防止できることから、加熱ムラが生じることがなく、かつ充分に加熱軟化処理が可能となることで、成形性を良好に維持でき、部位毎に物性にバラツキが生じるという不具合等がなく、品質性能の良好なドアトリム10を成形することが可能となる。また、成形シート材料Sを搬送装置50にセットする作業や、搬送装置50から成形シート材料Sを剥離して成形金型40にセットする作業については、従来の固定用ピンに突き刺したり、固定用ピンから剥がすという面倒な作業を廃止でき、作業性を向上させたことで、生産性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明した実施例は、ツートンタイプの自動車用ドアトリム10における発泡樹脂基材21の素材である成形シート材料Sの搬送方法及び搬送装置50に本発明を適用したが、対象としては、一体型のドアトリム、あるいはドアトリム以外の内装部品、例えば、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等、内装トリム全般に適用することができる。また、成形シート材料Sとしては、発泡剤を混入しない単なる合成樹脂シートを使用することもでき、また、コールドプレス成形、真空成形等の成形金型に成形シート材料Sを搬送する際に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明方法を採用して製作した自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】図1に示すドアトリムにおけるドアトリムアッパーの樹脂リブとドアトリムロアとを示す正面図である。
【図4】図1に示すドアトリムの成形方法の概要を示す全体図である。
【図5】図1に示すドアトリムの成形方法における成形シート材料の加熱工程を示す説明図である。
【図6】図1に示すドアトリムの成形方法における成形金型への成形シート材料のセット工程を示す説明図である。
【図7】図1に示すドアトリムの成形方法における発泡樹脂基材のプレス成形工程を示す説明図である。
【図8】図1に示すドアトリムの成形方法における溶融樹脂の射出充填工程を示す説明図である。
【図9】従来のドアトリムを示す正面図である。
【図10】図9中X −X 線断面図である。
【図11】従来のドアトリムの製造方法の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
10 ツートンタイプの自動車用ドアトリム
20 ドアトリムアッパー
22 樹脂リブ
23 加飾材
30 ドアトリムロア
40 成形金型
41 成形上型
42 成形下型
43a,43b 射出機
50 搬送装置
60 搬送用担体
70 剥離性に富む樹脂シート
80 加熱炉
80A 上側ヒーター
80B 下側ヒーター
M1,M2 溶融樹脂
S 成形シート材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱成形可能な成形シート材料(S)を加熱軟化処理した後、成形金型(40)内に供給する成形シート材料(S)の搬送方法であって、搬送機構により駆動される搬送用担体(60)上に剥離性に富む樹脂シート(70)を重合してなる搬送装置(50)を使用し、該搬送装置(50)の樹脂シート(70)面上に成形シート材料(S)を載置して、加熱炉(80)内に投入して所定温度に加熱軟化処理した後、成形シート材料(S)をフラット状に保持し、ドローダウン現象を回避しながら成形金型(40)内の所定位置に供給することを特徴とする成形シート材料の搬送方法。
【請求項2】
熱成形可能な成形シート材料(S)を加熱軟化処理した後、成形金型(40)内に供給する成形シート材料(S)の搬送装置(50)において、
前記搬送装置(50)は、搬送機構に連結され、所定の軌跡に沿って駆動される搬送用担体(60)と、この搬送用担体(60)の上面に支持される剥離性に富む樹脂シート(70)とから構成され、成形シート材料(S)を樹脂シート(70)の上面に載置するだけでセットが完了し、加熱軟化処理時における成形シート材料(S)の垂れ下がりを回避できることを特徴とする成形シート材料の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−126429(P2008−126429A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310674(P2006−310674)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】