説明

成形体およびその製造方法

【課題】 透明性と耐熱性に優れた透明かつ結晶化した成形体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂およびアミド化合物を配合してなる樹脂組成物からなる、透明かつ下記式(1)で表される成形体の結晶化の割合が60%以上である結晶化した成形体。
[(ΔHm−ΔHc)/ΔHm]×100 (1)
[式中、ΔHmは成形体の結晶融解エンタルピーを表し、ΔHcは成形体の昇温時結晶化エンタルピーを表す。]さらにアミド化合物を配合することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂を配合してなり、透明性と耐熱性に優れ、かつ十分に結晶化した成形体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸樹脂は、生分解性を有し、かつ高い融点を持ち、また溶融成形可能であり、成形直後は透明な非晶性成形体として得られるため、実用上優れた生分解性ポリマーとして期待されている。しかし、透明な成形体の状態では、非晶性であるために、耐熱性に劣るという実用上の大きな問題があった。
【0003】
この耐熱性を向上させるために、成形時に金型温度を結晶化温度付近に保持したり、成形後に得た透明な成形体を熱処理するなどして結晶化度を上げると球晶サイズが可視光の波長よりも大きくなり不透明となるので、透明性と耐熱性を両立させるのは大変難しい問題であった。
【0004】
この問題に対して、特許文献1や特許文献2では、特定の温度範囲に融点を有する化合物を脂肪族ポリエステル、特にポリ乳酸樹脂に配合して、成形時もしくは成形直後に結晶化させる方法が開示されている。しかし、この方法においては、透明性は向上するものの、耐熱性はまだ十分に満足するまでには至っていない。
【0005】
一方、2種またはそれ以上のポリマーを配合して用いる技術は、ポリマーアロイとして広く知られており、このポリマーアロイは個々のポリマーの欠点を改良する目的で広く利用されている。しかしながら、2種以上のポリマーを混合した場合、多くはポリマー同士の分散性が悪く、ペレットや成形品の形状に加工できなかったり、劣った特性を示す傾向となる。
【0006】
しかし、まれに2種のポリマーが均一な非晶相を形成する場合があり、この種のものは一般に相溶性または混和性のポリマーアロイとして、透明性など優れた特性を示すことが期待されているが、その例は少ない。
【0007】
ポリ乳酸樹脂と相溶性のあるポリマーとしては、ポリエチレングリコール(例えば、非特許文献1)や、ポリメチルメタクリレート(例えば、非特許文献2)が知られているが、これらのポリマーを混合した場合には、ポリ乳酸樹脂の耐熱性が大きく低下してしまうという問題があった。
【0008】
また、ポリアセタール樹脂と相溶性のあるポリマーとしては、ポリビニルフェノール(例えば、非特許文献3)が知られているが、ポリビニルフェノールは分子量が一般に低いことから、この場合には混合後の樹脂物性が低下するという問題があった。
【0009】
一方、特許文献3には、ポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂が相溶することが開示されている。しかしながら、同文献記載の方法を用いても透明かつ結晶化した成形体を得るまでには至っていない。
【特許文献1】特開平9−278991号公報([0018]−[0045]段落)
【特許文献2】特開平11−5849号公報([0013]−[0023]段落)
【特許文献3】国際公開第03/014224号パンフレット
【非特許文献1】Polymer 37(26),5849−5857頁(1996)
【非特許文献2】Polymer 39(26),6891−6897頁(1998)
【非特許文献3】Polymer 33(4),760−766頁(1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、その目的とするところは、透明性と耐熱性に優れ、かつ十分に結晶化した成形体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂を配合してなる樹脂組成物が、上記の目的に合致した優れた特性を発揮することを見い出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂およびアミド化合物を配合してなる樹脂組成物からなる、透明かつ下記式(1)で表される成形体の結晶化の割合が60%以上である成形体、
[(ΔHm−ΔHc)/ΔHm]×100 (1)
[式中、ΔHmは成形体の結晶融解エンタルピーを表し、ΔHcは成形体の昇温時結晶化エンタルピーを表す。]
(2)前記ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリ乳酸樹脂99〜50重量部である上記(1)に記載の成形体、
(3)前記ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、前記アミド化合物の配合量が0.1〜10重量部である上記(1)または(2)に記載の成形体、
(4)前記アミド化合物が、脂環族アミドおよび芳香族アミドであるから選択される少なくとも1種上記(1)〜(3)のいずれかに記載の成形体、
(5)前記アミド化合物が、N,N’−ジシクロヘキサンカルボニル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロへキサンジカルボン酸ジアニリド、テレフタル酸ジアニリドから選択される少なくとも1種である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の成形体、
(6)厚みが20μm以上でヘイズ値が30%以下である部分を有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の成形体、
(7)厚みが1mm以上でヘイズ値が20%以下である部分を有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の成形体、
(8)ポリ乳酸樹脂が、総乳酸成分の内、L体が98%以上含まれるかあるいはD体が98%以上含まれるポリ乳酸樹脂であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の成形体、
および
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の成形体を製造する方法であって、ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂を配合してなる樹脂組成物を成形し、その後にポリ乳酸樹脂のガラス転移温度以上ポリ乳酸樹脂の融点以下の温度範囲で熱処理することを特徴とする成形体の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の成形体は、透明性と耐熱性に優れた優れた結晶化した成形体であり、これらの優れた特性を生かして、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、各種包装材料および日用品など各種用途に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明に用いられるポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、本発明の目的を損なわない範囲で、乳酸以外の他の共重合成分を他のモノマー単位として含んでいてもよい。ここでいう他のモノマー単位の具体例としては、エチレングリコール、ブロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸および5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸およびヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトンおよび1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類などを挙げることができる。これらの共重合成分は、単独ないし2種以上用いることができる。また、これらの共重合成分の含有量としては、全単量体成分中、通常30モル%以下の含有量とするのが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
【0016】
本発明においては、相溶性の観点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることがより好ましく、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることがさらに好ましく、L体が98%以上含まれるかあるいはD体が98%以上含まれることが特に好ましい。また、L体またはD体の含有量の上限は通常100%以下である。
【0017】
ポリ乳酸樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましく、特に160℃以上であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂の融点は、通常乳酸成分の光学純度を高くすることにより高くなり、融点が120℃以上のポリ乳酸樹脂は、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることにより、また融点が150℃以上のポリ乳酸樹脂は、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%
以上含まれることにより、得ることができる。
【0018】
ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、機械的特性に優れる成形体が得られるという観点から、重量平均分子量としては、通常1万以上、好ましくは4万以上、さらに8万以上であることが好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の重量平均分子量である。
【0019】
ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法およびラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
【0020】
本発明に用いられるポリアセタール樹脂は、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とするポリマーであり、ホルムアルデヒドもしくはトリオキサンを主原料として、重合反応によって得られる、いわゆるポリアセタールホモポリマー、あるいは主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2〜8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を15重量%以下含有するいわゆるポリアセタールコポリマーのいずれであってもよく、また他の構成単位を含有するコポリマー、すなわち、ブロックコポリマー、ターポリマー、架橋ポリマーのいずれであってもよく、これらは1種または2種以上で用いることができるが、熱安定性の観点からはポリアセタールコポリマーであることが好ましい。
【0021】
本発明におけるポリアセタール樹脂の製造方法については特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。ポリアセタールホモポリマーの代表的な製造方法の例としては、高純度のホルムアルデヒドを有機アミン、有機あるいは無機の錫化合物、金属水酸化物のような塩基性重合触媒を含有する有機溶媒中に導入して重合し、重合体を濾別した後、無水酢酸中、酢酸ナトリウムの存在下で加熱してポリマー末端をアセチル化して製造する方法などが挙げられる。
【0022】
また、代表的なポリアセタールコポリマーの製造方法としては、高純度のトリオキサンおよびエチレンオキシドや1,3−ジオキソランなどの共重合成分を、シクロヘキサンのような有機溶媒中に導入し、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体のようなルイス酸触媒を用いてカチオン重合した後、触媒の失活と末端基の安定化を行うことによる製造法、あるいは溶媒を全く使用せずに、セルフクリーニング型撹拌機の中へ、トリオキサン、共重合成分および触媒を導入して塊状重合した後、さらに不安定末端を分解除去することにより製造する方法などが挙げられる。
【0023】
これらポリアセタール樹脂の粘度については、成形材料として使用できる程度のものであれば特に制限はないが、ASTMD1238法によるメルトインデックス(MI)が測定可能であり、MIが1.0〜50g/10分の範囲のものであることが好ましく、1.5〜35g/10分のものであることが特に好ましい。
【0024】
また、ポリアセタール樹脂としては、あらかじめ熱安定剤や発生ガス捕捉剤を含有しているものを用いることが好ましく、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、カルシウムリシノレート、シアノグアナジン、ヘキサメチレンビス(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシアナメート)、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ナイロン6/66、ナイロン66/610/6、ナイロン612/6、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシアナメート)]メタン、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール[3−(3,5−ジ−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]の少なくとも1種が含有されていることが好ましい(“/”は共重合を示す)。
【0025】
本発明において、ポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂との配合組成は、透明性を有し、かつ結晶化の割合が本発明範囲内にある成形体の製造を容易にし、さらに優れた耐熱性を付与するために、ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の合計100重量部に対し、ポリ乳酸樹脂99〜50重量部とすることが好ましく、99〜60重量部とすることがより好ましく、99〜70重量部とすることがさらに好ましく、99〜80重量部であることが最も好ましい。ポリ乳酸樹脂が99重量部を越えると耐熱性が不十分であり、50重量部未満であると透明性が損なわれる場合がある。また、この配合組成においては、ポリ乳酸樹脂が有する特性を活かして生分解性を伴ってもかまわない。
【0026】
本発明においては、成形品中でポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂とは通常相溶化している。そのため、高結晶性のポリアセタール樹脂を使用しているにもかかわらず、透明性が達成できる。ここでいう「相溶化」とは、分子レベルで非晶相内に均一相を形成する重合体の混合物を形成することを説明するために用いられる。つまり、配合物の一方または両方が結晶相および非晶相の両方を形成する場合、相溶性とは、非晶相が分子レベルで混合していることを意味する。
【0027】
配合物中の相溶性の判断は、いくつかの方法で行うことができる。相溶性について判断する最も一般的な方法は、ガラス転移温度で判断する方法である。相溶性配合物中では、ガラス転移温度が各々単独のものより変化し、多くの場合、単一のガラス転移温度を示す。ガラス転移温度の測定方法としては、示差走査熱量計(DSC)で測定する方法、および動的粘弾性試験により測定する方法のいずれをも用いることができる。
【0028】
しかしながら、ポリアセタール樹脂は高結晶性であるために、ポリアセタール樹脂の含有量が多い場合には、ガラス転移温度が不明確になるという問題がある。この場合、相溶性の判断としては、ポリアセタール樹脂の結晶化温度を用いることができる。すなわち、ポリアセタール樹脂がそれ自体よりも結晶化速度の遅い樹脂と相溶性配合物を形成した場合には、ポリアセタール樹脂の結晶化速度が単体の場合よりも低下するからである。したがって、この結晶化速度の低下を、DSCで測定した降温時の結晶化温度で判断することができる。
【0029】
本発明においては、透明性と耐熱性がさらに向上するという観点から、アミド化合物を配合する。
【0030】
本発明で用いるアミド化合物としては、通常アミド結合と呼ばれる結合を有する化合物であれば、特に限定されるものではなく、脂肪族アミド、脂環族アミド、芳香族アミドなどいずれをも用いることができるが、特に透明性と耐熱性が向上するという観点から、脂環族アミド、芳香族アミドがより好ましい。
【0031】
脂肪族アミドとは、分子内に脂環もしくは芳香環などの環構造を一切含有しない鎖状分子で構成されるアミド化合物であれば、特に限定されるものではない。
【0032】
その具体例としては、酢酸アミド、プロピオン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、へキサメチレンビスステアリン酸アミド、へキサメチレンビスベヘニン酸アミド、へキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、シュウ酸アミド、マロン酸アミド、コハク酸アミド、グルタル酸アミド、アジピン酸アミド、ピメリン酸アミド、スベリン酸アミド、アゼライン酸アミド、セバシン酸アミド、1,12−ドデカン二酸アミド、1,14−テトラデカン二酸アミド、1,18−オクタデカン二酸アミド、クエン酸アミド、メタントリカルボン酸アミド、トリカルバリル酸アミド、プロペントリカルボン酸アミド、ペンタントリカルボン酸アミド、エタンテトラカルボン酸アミド、プロパンテトラカルボン酸アミド、ペンタンテトラカルボン酸アミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸アミド、ドデカンテトラカルボン酸アミド、ペンタンペンタカルボン酸アミド、テトラデカンヘキサカルボン酸アミド、エチレンジアミン四酢酸アミド、ニトリロ三酢酸アミド、エチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)N,N,N’,N’−四酢酸アミド、ジエチレントリアミン五酢酸アミド、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸アミド、1,3−ジアミノプロパン−2−オール−,N,N’,N’−四酢酸アミド、1,2−ジアミノプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸アミド、トリエチレンテトラミン六酢酸アミド、ニトリロ三プロピオン酸アミド、1,6−ヘキサンジアミン四酢酸アミド、N−(2−カルボキシエチル)イミノ二酢酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’−ジアセチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N,N’−ジアセチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジエチルカルボニル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジブチルカルボニル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルカルボニル−1,6−ヘキサンジアミン、N−ブチル−N’−ステアリル尿素、N−プロピル−N’−ステアリル尿素、N,N’−ビスステアリル尿素、ヘキサメチレンビスステアリル尿素などが挙げられ、透明性と耐熱性が向上するという観点から、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジアセチルエチレンジアミン、N,N’−ジアセチル−1,6−ヘキサンジアミンが好ましく、さらにエチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドがより好ましい。
【0033】
脂環族アミドとは、分子内に脂環構造を含有し、芳香環を含有しないアミド化合物であれば、特に限定されるものではない。
【0034】
その具体例としては、シクロプロパンカルボン酸アミド、シクロブタンカルボン酸アミド、シクロペンタンカルボン酸アミド、シクロペンテンカルボン酸アミド、シクロヘキサンカルボン酸アミド、シクロヘキセンカルボン酸アミド、シクロヘプタンカルボン酸アミド、メチルシクロペンタンカルボン酸アミド、ブチルシクロヘキセンカルボン酸アミド、メチルシクロヘプタンカルボン酸アミド、メチルシクロヘキサンカルボン酸アミド、エチルシクロヘキサンカルボン酸アミド、プロピルシクロヘキサンカルボン酸アミド、ブチルシクロヘキサンカルボン酸アミド、ペンチルシクロヘキサンカルボン酸アミド、ヘキシルシクロヘキサンカルボン酸アミド、フェニルシクロヘキサンカルボン酸アミド、クロロシクロヘキサンカルボン酸アミド、ブロモシクロヘキサンカルボン酸アミド、ジメチルシクロヘキサンカルボン酸アミド、ジ−t−ブチルシクロヘキサンカルボン酸アミド、メトキシシクロヘキサンカルボン酸アミド、エトキシシクロヘキサンカルボン酸アミド、ジメトキシシクロヘキサンカルボン酸アミド、ジエトキシシクロヘキサンカルボン酸アミド、ジクロロシクロヘキサンカルボン酸アミド、トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アミド、トリメトキシシクロヘキサンカルボン酸アミド、トリエトキシシクロヘキサンカルボン酸アミド、シクロヘキシル酢酸アミド、メチルシクロヘキシル酢酸アミド、メトキシシクロヘキシル酢酸アミド、シクロヘキシルプロピオン酸アミド、シクロヘキシル酪酸アミド、N−オレイルシクロヘキサンカルボン酸アミド、N−ステアリルシクロヘキサンカルボン酸アミド、メチロールシクロヘキサンカルボン酸アミド、メチレンビスシクロヘキサンカルボン酸アミド、エチレンビスシクロヘキサンカルボン酸アミド、ヘキサメチレンビスシクロヘキサンカルボン酸アミド、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸アミド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸アミド、1,4−シクロヘキサンジ酢酸アミド、シクロヘキサントリカルボン酸アミド、シクロブタンテトラカルボン酸アミド、シクロペンタンテトラカルボン酸アミド、シクロヘキサンテトラカルボン酸アミド、5−(コハク酸アミド)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸アミド、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸アミド、シクロヘキサンヘキサカルボン酸アミド、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸アミド、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸アミド、6−メチル−4−シクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸アミド、3,5,6−トリカルボキシノルボネン−2−酢酸アミド、チオビス(ノルボネン−2,3−ジカルボン酸アミド)、ビシクロ[4.2.0]オクタン−3,4,7,8−テトラカルボン酸アミド、1,1’−ビシクロプロパン−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸アミド、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸アミド、2,3,4,5,6,7,12,13−オクタヒドロフェナントレン−3,4,5,6−テトラカルボン酸アミド、N,N’−ジオレイル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸アミド、N,N’−ジオレイル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸アミド、N,N−ジステアリル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸アミド、N,N’−ジステアリル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸アミド、酢酸シクロへキシルアミド、プロピオン酸シクロへキシルアミド、ラウリン酸シクロへキシルアミド、パルチミン酸シクロへキシルアミド、オレイン酸シクロへキシルアミド、ステアリン酸シクロへキシルアミド、エルカ酸シクロへキシルアミド、ベヘニン酸シクロへキシルアミド、リシノール酸シクロへキシルアミド、ヒドロキシステアリン酸シクロへキシルアミド、シュウ酸ジシクロへキシルアミド、マロン酸ジシクロへキシルアミド、コハク酸ジシクロへキシルアミド、グルタル酸ジシクロへキシルアミド、アジピン酸ジシクロへキシルアミド、ピメリン酸ジシクロへキシルアミド、スベリン酸ジシクロへキシルアミド、アゼライン酸ジシクロへキシルアミド、セバシン酸ジシクロへキシルアミド、1,12−ドデカン二酸ジシクロへキシルアミド、1,14−テトラデカン二酸ジシクロへキシルアミド、1,18−オクタデカン二酸ジシクロへキシルアミド、クエン酸トリシクロへキシルアミド、メタントリカルボン酸トリシクロへキシルアミド、トリカルバリル酸トリシクロへキシルアミド、プロペントリカルボン酸トリシクロへキシルアミド、ペンタントリカルボン酸トリシクロへキシルアミド、エタンテトラカルボン酸テトラシクロへキシルアミド、プロパンテトラカルボン酸テトラシクロへキシルアミド、ペンタンテトラカルボン酸テトラシクロへキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロへキシルアミド、ドデカンテトラカルボン酸テトラシクロへキシルアミド、ペンタンペンタカルボン酸ペンタシクロヘキシルアミド、テトラデカンヘキサカルボン酸ヘキサシクロへキシルアミド、エチレンジアミン四酢酸テトラシクロへキシルアミド、ニトリロ三酢酸トリシクロへキシルアミド、エチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)N,N,N’,N’−四酢酸テトラシクロへキシルアミド、ジエチレントリアミン五酢酸ペンタシクロヘキシルアミド、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸トリシクロへキシルアミド、1,3−ジアミノプロパン−2−オール−N,N,N’,N’−四酢酸テトラシクロへキシルアミド、1,2−ジアミノプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸テトラシクロへキシルアミド、トリエチレンテトラミン六酢酸ヘキサシクロへキシルアミド、ニトリロ三プロピオン酸トリシクロへキシルアミド、1,6−ヘキサンジアミン四酢酸テトラシクロへキシルアミド、N−(2−カルボキシエチル)イミノ二酢酸ジシクロへキシルアミド、1,2−シクロヘキサンカルボン酸シクロへキシルアミド、1,4−シクロヘキサンカルボン酸シクロへキシルアミド、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロへキシルアミド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロへキシルアミド、1,4−シクロヘキサンジ酢酸ジシクロへキシルアミド、シクロヘキサントリカルボン酸トリシクロへキシルアミド、シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラシクロへキシルアミド、シクロヘキサンヘキサカルボン酸ヘキサシクロへキシルアミド、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸テトラシクロへキシルアミド、N,N’−ジアセチル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N’−ジシクロへキサンカルボニル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジシクロヘキサンカルボニル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N’−ジシクロヘキサンカルボニル−1,2−ジアミノシクロヘキサン、N,N’−ジシクロへキシル尿素、N−(p−アセチルベンゼンスルホニル)−N’−シクロヘキシル尿素などが挙げられ、透明性と耐熱性が向上するという観点から、シクロヘキサンカルボン酸アミド、ラウリン酸シクロへキシルアミド、ステアリン酸シクロへキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロへキシルアミド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロへキシルアミド、N,N’−ジシクロヘキサンカルボニル−1,4−ジアミノシクロヘキサンが好ましく、さらに、ラウリン酸シクロへキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロへキシルアミド、N,N’−ジシクロヘキサンカルボニル−1,4−ジアミノシクロヘキサンがより好ましく、さらにN,N’−ジシクロヘキサンカルボニル−1,4−ジアミノシクロヘキサンが最も好ましい。
【0035】
芳香族アミドとは、分子内に芳香環もしくは芳香環が縮合した芳香族多環構造を含有するアミド化合物であれば、特に限定されるものではない。
【0036】
その具体例としては、安息香酸アミド、1−ナフトエ酸アミド、2−ナフトエ酸アミド、メチル安息香酸アミド、エチル安息香酸アミド、プロピル安息香酸アミド、ブチル安息香酸アミド、p−t−ブチル安息香酸アミド、ペンチル安息香酸アミド、ヘキシル安息香酸アミド、フェニル安息香酸アミド、シクロヘキシル安息香酸アミド、クロロ安息香酸アミド、ブロモ安息香酸アミド、メトキシ安息香酸アミド、エトキシ安息香酸アミド、ジメチル安息香酸アミド、ジ−t−ブチル安息香酸アミド、ジメトキシ安息香酸アミド、ジエトキシ安息香酸アミド、ジクロロ安息香酸アミド、トリメチル安息香酸アミド、トリメトキシ安息香酸アミド、トリエトキシ安息香酸アミド、フェニル酢酸アミド、メチルフェニル酢酸アミド、メトキシフェニル酢酸アミド、フェニルプロピオン酸アミド、フェニル酪酸アミド、N−オレイル安息香酸アミド、N−ステアリル安息香酸アミド、N−シクロへキシル安息香酸アミド、メチレンビス安息香酸アミド、エチレンビス安息香酸アミド、ヘキサメチレンビス安息香酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、o−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、m−キシリレンビスシクロヘキサンカルボン酸アミド、m−キシリレンジ安息香酸アミド、o−キシリレンジ安息香酸アミド、p−フェニレン二酢酸アミド、p−フェニレンジエタン酸アミド、フタル酸アミド、4−t−ブチルフタル酸アミド、イソフタル酸アミド、5−t−ブチルイソフタル酸アミド、テレフタル酸アミド、1,8−ナフタル酸アミド、1,4−ナフタレンジカルボン酸アミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド、2,7−ナフタレンジカルボン酸アミド、ジフェン酸アミド、3,3’−ビフェニルジカルボン酸アミド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸アミド、4,4’−ビナフチルジカルボン酸アミド、ジチオサリチル酸アミド、トリメシン酸アミド、トリメリト酸アミド、フェニルシクロペンタンカルボン酸アミド、ベンゼンテトラカルボン酸アミド、ベンゾフェノンテトラカルボン酸アミド、ビフェニルテトラカルボン酸アミド、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸アミド、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸アミド、ジフェニルメタンテトラカルボン酸アミド、ペリレンテトラカルボン酸アミド、ナフタレンテトラカルボン酸アミド、4,4’−ジナフタル酸アミド、ベンジジン−3,3’−ジカルボキシル−N,N’−四酢酸アミド、ジフェニルプロパンテトラカルボン酸アミド、アントラセンテトラカルボン酸アミド、フタロシアニンテトラカルボン酸アミド、ベンゼンヘキサカルボン酸アミド、イソフタル酸ジオレイルアミド、テレフタル酸ジオレイルアミド、イソフタル酸ジステアリルアミド、テレフタル酸ジステアリルアミド、テレフタル酸ジシクロへキシルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジステアリルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロへキシルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(2−メチルシクロへキシルアミド)、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、トリメシン酸トリス(2−メチルシクロへキシルアミド)、トリメリト酸トリス(t−ブチルアミド)、トリメリト酸トリス(2−メチルシクロへキシルアミド)、酢酸アニリド、酢酸ベンジルアミド、酢酸−4−シクロへキシルアニリド、酢酸−p−トルイジンアミド、プロピオン酸アニリド、ラウリン酸アニリド、ラウリン酸ベンジルアミド、ラウリン酸−4−シクロへキシルアニリド、ラウリン酸−p−トルイジンアミド、パルチミン酸アニリド、オレイン酸アニリド、ステアリン酸アニリド、ステアリン酸ベンジルアミド、ステアリン酸−4−シクロへキシルアニリド、ステアリン酸−p−トルイジンアミド、エルカ酸アニリド、ベヘニン酸アニリド、リシノール酸アニリド、ヒドロキシステアリン酸アニリド、シュウ酸ジアニリド、シュウ酸ジベンジルアミド、シュウ酸ビス(4−シクロへキシルアニリド)、シュウ酸ビス(p−トルイジンアミド)、マロン酸ジアニリド、コハク酸ジアニリド、グルタル酸ジアニリド、アジピン酸ジアニリド、アジピン酸ジベンジルアミド、アジピン酸ビス(4−シクロへキシルアニリド)、アジピン酸ビス(p−トルイジンアミド)、ピメリン酸ジアニリド、スベリン酸ジアニリド、アゼライン酸ジアニリド、セバシン酸ジアニリド、1,12−ドデカン二酸ジアニリド、1,14−テトラデカン二酸ジアニリド、1,18−オクタデカン二酸ジアニリド、クエン酸トリアニリド、メタントリカルボン酸トリアニリド、トリカルバリル酸トリアニリド、プロペントリカルボン酸トリアニリド、ペンタントリカルボン酸トリアニリド、エタンテトラカルボン酸テトラアニリド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラアニリド、ドデカンテトラカルボン酸テトラアニリド、ペンタンペンタカルボン酸ペンタアニリド、テトラデカンヘキサカルボン酸ヘキサアニリド、エチレンジアミン四酢酸テトラアニリド、1,4−シクロへキサンカルボン酸アニリド、1,4−シクロへキサンカルボン酸−4−シクロへキシルアニリド、1,4−シクロヘキサンカルボン酸−p−トルイジンアミド、1,4−シクロへキサンカルボン酸ベンジルアミド、1,4−シクロへキサンジカルボン酸ジアニリド、1,4−シクロへキサンジカルボン酸ビス(4−シクロへキシルアニリド)、1,4−シクロへキサンジカルボン酸ジベンジルアミド、1,4−シクロへキサンジカルボン酸ビス(p−トルイジンアミド)、安息香酸アニリド、安息香酸−p−トルイジンアミド、安息香酸ベンジルアミド、テレフタル酸ジアニリド、テレフタル酸ジベンジルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアニリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジベンジルアミド、トリメシン酸トリアニリド、トリメシン酸トリ(4−シクロへキシルアニリド)、トリメシン酸トリ−p−トルイジンアミド、トリメシン酸トリベンジルアミド、トリメリト酸トリベンジルアミド、N,N’−ジアセチル−o−フェニレンジアミン、N,N’−ジアセチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジアセチル−2,3−ジアミノトルエン、N,N’−ジアセチル−1,5−ジアミノナフタレン、N,N’,N”−トリアセチル−1,3,5−トリアミノベンゼン、N,N’−ジシクロへキサンカルボニル−o−フェニレンジアミン、N,N’−ジシクロへキサンカルボニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジシクロへキサンカルボニル−2,3−ジアミノトルエン、N,N’−ジシクロへキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、N,N’,N”−トリシクロへキサンカルボニル−1,3,5−トリアミノベンゼン、N,N’−ジベンゾイル−1,4−ジアミノブタン、N,N’−ジベンゾイル−1,6−ジアミノヘキサン、N,N’−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N’−ジベンゾイル−o−フェニレンジアミン、N,N’−ジベンゾイル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジベンゾイル−2,3−ジアミノトルエン、N,N’−ジベンゾイル−1,5−ジアミノナフタレン、N,N’,N"−トリベンゾイル−1,3,5−トリアミノベンゼン、キシリレンビスステアリル尿素、トルイレンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスラウリル尿素、N−フェニル−N’−ステアリル尿素が挙げられ、透明性と耐熱性が向上するという観点から、エチレンビス安息香酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−キシリレンビスステアリン酸アミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロへキシルアミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、トリメシン酸トリス(2−メチルシクロへキシルアミド)、アジピン酸ジアニリド、アジピン酸ジベンジルアミド、アジピン酸ビス(4−シクロへキシルアニリド)、アジピン酸ビス(p−トルイジンアミド)、1,4−シクロへキサンジカルボン酸ジアニリド、1,4−シクロへキサンジカルボン酸ビス(p−トルイジンアミド)、テレフタル酸ジアニリド、テレフタル酸ジベンジルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアニリド、トリメシン酸トリアニリド、トリメシン酸トリ(4−シクロへキシルアニリド)、トリメシン酸トリ−p−トルイジンアミド、トリメシン酸トリベンジルアミド、トリメリト酸トリベンジルアミド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ビス(p−トルイジンアミド)、N,N’−ジシクロへキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、N,N’−ジベンゾイル−1,4−ジアミノブタン、N,N’−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N’−ジベンゾイル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジベンゾイル−1,5−ジアミノナフタレンが好ましく、さらにトリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロへキシルアミド、1,4−シクロへキサンジカルボン酸ジアニリド、テレフタル酸ジアニリド、テレフタル酸ジベンジルアミド、N,N’−ジシクロへキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、N,N’−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサンがより好ましく、さらにトリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロへキサンジカルボン酸ジアニリド、テレフタル酸ジアニリドが最も好ましい。
【0037】
本発明で用いるアミド化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、透明性と耐熱性が向上するという観点から、 ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、0.1〜10重量部が好ましく、さらに0.1〜8重量部がより好ましく、特に0.1〜5重量部が最も好ましい。0.1重量部よりも少ない範囲では、透明性および耐熱性を向上させる効果は不十分であり、10重量部を超える範囲では、透明性を損なう場合がある。
【0038】
本発明で用いるアミド化合物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、脂肪族、脂環族もしくは芳香族カルボン酸およびその誘導体と脂肪族、脂環族もしくは芳香族アミンおよびその誘導体を用いて、公知の方法によりアミド化することにより製造することができる。
【0039】
本発明の成形体において、透明とは、新聞など文字が印刷されている印刷物に成形体を重ねたときに、その文字を読みとることができる部分があることをいう。本発明においては成形体の厚みが20μm以上である部分でヘイズ値が30%以下である部分を有する成形体であることが好ましく、ヘイズ値が20%以下である部分を有する成形体であることがより好ましく、15%以下である部分を有する成形体であることがさらに好ましい。なかでも、成形体の厚みが100μm以上である部分で上記ヘイズ値を満たす部分を有する成形体であることがより好ましく、成形体の厚みが500μm以上、特に好ましくは1mm以上である部分で、上記ヘイズ値を満たす部分を有するものである。なお、ヘイズは、JIS−K7105に準じて、ヘイズメーターなどを用いて測定することができる。
【0040】
本発明の成形体は、下記式(1)により表される成形体の結晶化の割合が60%以上と、十分に結晶化した成形体である。
[(ΔHm−ΔHc)/ΔHm]×100 (1)
[式中、ΔHmは成形体の結晶融解エンタルピーを表し、ΔHcは成形体の昇温時結晶化エンタルピーを表す。]
【0041】
なお、ΔHmおよびΔHcは、示差走査熱量計(DSC)による熱的測定により求めることができ、成形体から切り出した試料10mg、窒素雰囲気下中、昇温速度20℃/分で0℃〜30℃の温度領域から200℃以上の温度領域まで昇温することにより測定される。
【0042】
本発明において、上記式(1)で表される成形体の結晶化の割合は、高い方が好ましいが、具体的には70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。上記式(1)で表される成形体の結晶化の割合が60%以上、好ましくは80%以上であれば、耐熱性が著しく向上する。
【0043】
ΔHmおよびΔHcについては、上記(1)式で表される割合が本発明の範囲を満足する限り特に限定されるものではないが、ΔHmが高く、ΔHcが低い方が結晶化の割合が大きくなり、耐熱性に優れるという効果を奏するため好ましい。具体的にはΔHmが20J/g以上、好ましくは40J/g以上、より好ましくは50J/g以上、さらに好ましくは60J/g以上である場合に耐熱性が著しく向上し、ΔHcが30J/g以下、好ましくは20J/g以下、より好ましくは10J/g以下、さらに好ましくは1J/g未満である場合に耐熱性が著しく向上する。
【0044】
また、本発明においては、成形体中のポリ乳酸樹脂の結晶化の程度が高いことが好ましい。成形品中のポリ乳酸樹脂の結晶化の程度としては、下記式(2)で表される式の値、すなわちエンタルピーの合計量が、20J/g以上、好ましくは30J/g以上、より好ましくは40J/g以上である場合に、成形体においてポリ乳酸樹脂が結晶化していると判断でき、この値が20J/g以上、好ましくは30J/g以上、より好ましくは40J/g以上であれば成形体の耐熱性が著しく向上する。
ΔHc1d+ΔHc2u (2)
[式中、ΔHc1dは1回目の測定のポリ乳酸樹脂の降温時結晶化エンタルピーを表し、ΔHc2uは2回目の測定のポリ乳酸樹脂の昇温時結晶化エンタルピーを表す。]
【0045】
ここで、ΔHc1dおよびΔHc2uは、DSCによる熱的測定から求めることができ、成形体から切り出した試料10mg、窒素雰囲気下中、1回目の測定として、昇温速度20℃/分で30℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度20℃/分で200℃から30℃まで降温し、30℃で1分間保持した後、さらに2回目の測定として、昇温速度20℃/分で30℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度20℃/分で200℃から30℃まで降温することにより測定される。この測定において、1回目の測定の降温時に観察されるポリ乳酸樹脂の結晶化エンタルピーがΔHc1dに相当し、2回目の測定の昇温時に観察されるポリ乳酸樹脂の結晶化エンタルピーがΔHc2uに相当する。
【0046】
本発明の成形体の製造方法としては、特に限定されるものではなく、射出成形、押出成形、ブロー成形、インフレーション成形、真空圧空成形など一般に行われる成形方法をいずれも適用することができる。
【0047】
本発明において、透明かつ上記(1)式で表される結晶化の割合が本発明で規定した範囲内である成形品を得るためには、例えば上記ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂、必要に応じて任意成分であるアミド化合物を配合してなる樹脂組成物を成形し、その後にポリ乳酸樹脂のガラス転移温度(Tg)以上ポリ乳酸樹脂の融点(Tm)以下温度範囲で熱処理する方法が好ましく挙げられる。ここで、TgおよびTmは、配合に供するポリ乳酸樹脂の値を意味する。本発明の成形体に用いる樹脂組成物はポリ乳酸樹脂にポリアセタール樹脂を含有するため、成形体を加熱処理しても、優れた透明性を保持しながら、十分に結晶化させることが可能である。
【0048】
熱処理する方法は、ポリ乳酸樹脂のガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)以下温度範囲で、一定温度で熱処理する方法、連続的に、もしくは、少なくとも2段階以上の温度で段階的に昇温して熱処理する方法などの方法を好ましく採用することができる。その中でも、透明性と耐熱性の観点から、連続的、もしくは、少なくとも2段階以上の温度で段階的に昇温して熱処理する方法がより好ましく、具体的には、前記温度範囲において、昇温速度が、0.5℃/分、好ましくは0.3℃/分、より好ましくは0.25℃/分となるように連続的に昇温する方法、もしくは、1分、好ましくは10分、より好ましくは15分、さらに好ましくは30分ごとに60℃、好ましくは40℃、より好ましくは20℃、さらに好ましくは10℃ずつ段階的に昇温する方法、などいずれをも適用することができるが、透明性と耐熱性に優れた成形体が得られるという観点から、少なくとも2段階以上、より好ましくは3段階以上の温度に設定して段階的に昇温する方法が好ましい。
【0049】
熱処理の温度範囲については、好ましくはTg+5℃〜Tm−10℃、より好ましくはTg+7℃〜Tm−20℃の温度範囲である。さらにポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂を配合してなる樹脂組成物の結晶化温度(Tc)が、Tm−20℃より低い温度である場合には、Tg+7℃〜Tcの温度範囲、好ましくはTg+7℃〜Tc−5℃、より好ましくはTg+7℃〜Tc−15℃、さらに好ましくはTg+7℃〜Tc−30℃の温度範囲で熱処理した後、Tc以上、好ましくはTc+5℃以上、より好ましくはTc+10℃以上で熱処理するというように段階的に昇温することが特に好ましい。熱処理の温度がTgより低い場合は、ほとんど結晶化せず、Tmより高い場合は、結晶化時間を短くしても透明かつ結晶化した成形体が得られにくい。
【0050】
熱処理の時間については、成形体が十分に結晶化する時間であれば、特に限定されるものではないが、少なくとも10秒以上、より好ましくは1分以上、より好ましくは10分以上、特に好ましくは30分以上であり、1時間程度熱処理すれば十分に結晶化する。
【0051】
本発明の成形体を形成する樹脂組成物に対しては、本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、合成マイカ、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土など)、安定剤(ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系およびシアノアクリレート系などの紫外線吸収剤および酸化防止剤)、滑剤または可塑剤(高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなど)、離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステラアマイドおよびエチレンワックスなど)、変色防止剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩など)、難燃剤(ハロゲン系難燃剤、燐系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤など)、染料および顔料を含む着色剤、結晶核剤(タルク、有機カルボン酸金属塩など)および帯電防止剤などの添加剤を含有させてもよい。これらの添加剤は単独ないし2種以上を併用して用いることができる。
【0052】
また、本発明の成形体を形成する樹脂組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミドおよびポリエーテルイミドなど)および熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂およびエポキシ樹脂など)および軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマーおよびエチレン/ブテン−1共重合体など)などの少なくとも1種以上をさらに含有させることができる。
【0053】
本発明において、樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えばポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂、必要に応じて任意成分であるアミド化合物、もしくはその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、1軸または2軸押出機で、均一に溶融混練する方法や溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられる。
【0054】
本発明の成形体としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フイルムおよびシートなどが挙げられる。本発明の効果を十分に活かす観点から、厚みが20μm以上の部分を有する成形体であることが好ましく、100μm以上の部分を有する成形体であることが特に好ましく、1mm以上の部分を有する成形体であることが好ましい。さらに、その透明性を十分活かす観点から、厚みが20μm〜3mmの部分を有する成形体であることが好ましく、20μm〜2mmの部分を有する成形体であることがより好ましく、20μm〜1.5mmの部分を有する成形体であることがさらに好ましい。
【0055】
なお、本発明の成形体は、延伸処理をしなくても十分に透明性と耐熱性に優れた成形体として得ることができ、厚みが100μm以上、好ましくは500μm以上、さらに好ましくは1mm以上の未延伸フィルムおよびシートとして利用することができる。成形体の厚みの上限は特に限定されるものではないが、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1.5mm以下がさらに好ましい。
【0056】
また、これら本発明の成形品、フィルム、シートおよび繊維は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、各種包装材料および日用品など各種用途に利用することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに詳細に説明する。ここで、実施例中の部数は、重量部を示す。
【0058】
なお、実施例中の各種特性の評価は、次に説明する方法にしたがって行った。
【0059】
[透明性]
日本電色工業製ヘイズメーターNDH−300Aを用いて、JIS−K7105に準じ、成形体から縦横3cm角に切り出した試料のヘイズを測定した。
【0060】
[結晶化の割合]
パーキンエルマー製DSC7を用いて、成形品から切り出した試料10mgを窒素雰囲気下中、昇温速度20℃/分で30℃から200℃まで昇温し、得られた昇温時結晶化エンタルピー(ΔHc)および結晶融解エンタルピー(ΔHm)を用いて下記式(1)から結晶化の割合を求めた。
[(ΔHm−ΔHc)/ΔHm]×100 (1)
[式中、ΔHmは成形体の結晶融解エンタルピーを表し、ΔHcは成形体の昇温時結晶化エンタルピーを表す。]
【0061】
さらに、実施例14〜21および比較例4〜6については、上記測定に加えて、パーキンエルマー製DSC7を用いて、成形品から切り出した試料10mg、窒素雰囲気下中、1回目の測定として、昇温速度20℃/分で30℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度20℃/分で200℃から30℃まで降温し、30℃で1分間保持した後、さらに2回目の測定として、昇温速度20℃/分で30℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度20℃/分で200℃から30℃まで降温し、得られた1回目の測定の降温時に観察されるポリ乳酸樹脂の結晶化エンタルピー(ΔHc1d)および2回目の測定の昇温時に観察されるポリ乳酸樹脂の結晶化エンタルピー(ΔHc2u)を用いて下記式(2)からポリ乳酸樹脂の結晶化の状態を評価した。下記式(2)で求められる値が多い方が、成形体中のポリ乳酸樹脂がより結晶化していると判断される。
ΔHc1d+ΔHc2u (2)
[式中、ΔHc1dは1回目の測定のポリ乳酸樹脂の降温時結晶化エンタルピーを表し、ΔHc2uは2回目の測定のポリ乳酸樹脂の昇温時結晶化エンタルピーを表す。]
【0062】
[耐熱性]
得られた成形体もしくは切り出した試料を熱風乾燥機中で片端を水平支持し、徐々に昇温し成形体先端が垂れ下がった温度を測定し熱変形温度とした。
【0063】
[比較例1〜3]
D体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万、ガラス転移温度が60℃、融点が170℃であるポリL乳酸樹脂、190℃で測定したメルトインデックス値が27g/10分であり、融点が170℃であるポリアセタールコポリマー(東レ製アミラスS731)を、それぞれ表1に示した割合で混合し、40mm径の1軸押出機で、シリンダー温度200℃、回転数50rpmの条件で溶融混練を行うことにより樹脂組成物を得た。
【0064】
得られた樹脂組成物を、射出成形機を用い、シリンダー温度200℃、金型温度20℃で成形し、厚み1mm×縦10cm×横10cmのシート状成形品を作製し、結晶化温度、結晶化の割合、ヘイズ、熱変形温度を測定した。さらに、このシートを熱風乾燥機を用いて、下記の条件で熱処理した後、結晶化の割合、ヘイズ、熱変形温度を測定した。結果を表1に併せて示す。
熱処理方法a:70℃で20分→90℃で20分→110℃で10分
熱処理方法b:80℃で35分→140℃で15分
熱処理方法c:110℃で50分
【0065】
【表1】

【0066】
表1の結果から明らかなように、本発明のポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂を配合してなる樹脂組成物からなる成形体は、透明性と耐熱性に優れた透明かつ結晶化した成形体であることがわかる。
【0067】
[実施例1〜8、比較例4〜6]
D体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万、ガラス転移温度が60℃、融点が170℃であるポリL乳酸樹脂、190℃で測定したメルトインデックス値が27g/10分であり、融点が170℃であるポリアセタールコポリマー(東レ製アミラスS731)および表2に示すアミド化合物を、それぞれ表2に示した割合で混合し、40mm径の1軸押出機で、温度200℃、回転数50rpmの条件で溶融混練を行うことにより樹脂組成物を得た。
【0068】
ここで使用したアミド化合物は下記の通りである。なお、A〜Dは、対応するカルボン酸クロリドとアミン化合物を公知の方法に従い反応させて得た。
A:テレフタル酸ジアニリド
B:トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)
C:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド
D:N,N’−ジシクロへキサンカルボニル−1,4−ジアミノシクロヘキサン
E:エチレンビスラウリン酸アミド(日本化成製スリパックスL)
【0069】
得られた樹脂組成物を、射出成形機を用い、シリンダー温度200℃、金型温度20℃で成形し、厚み1mm×縦10cm×横10cmの成形体を作製し、結晶化の割合、ヘイズ、熱変形温度を測定した。さらに、この成形体を熱風乾燥機を用いて、下記の条件で熱処理した後、結晶化の割合、ヘイズ、熱変形温度を測定した。結果を表3に併せて示す。
熱処理方法a:70℃で15分→90℃で15分→110℃で10分
熱処理方法b:110℃で40分
【0070】
【表2】

【0071】
表2の結果から明らかなように、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂およびアミド化合物を配合してなる樹脂組成物からなる成形体は、透明性と耐熱性に優れ、かつ十分に結晶化した成形体であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂およびアミド化合物を配合してなる樹脂組成物からなる、透明かつ下記式(1)で表される成形体の結晶化の割合が60%以上である成形体。
[(ΔHm−ΔHc)/ΔHm]×100 (1)
[式中、ΔHmは成形体の結晶融解エンタルピーを表し、ΔHcは成形体の昇温時結晶化エンタルピーを表す。]
【請求項2】
前記ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリ乳酸樹脂99〜50重量部である請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、前記アミド化合物の配合量が0.1〜10重量部である請求項1または2に記載の成形体。
【請求項4】
前記アミド化合物が、脂環族アミドおよび芳香族アミドから選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の成形体。
【請求項5】
前記アミド化合物が、N,N’−ジシクロヘキサンカルボニル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロへキサンジカルボン酸ジアニリド、テレフタル酸ジアニリドから選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに1項に記載の成形体。
【請求項6】
厚みが20μm以上で、ヘイズ値が30%以下である部分を有する請求項1〜5のいずれか記載の成形体。
【請求項7】
厚みが1mm以上で、ヘイズ値が20%以下である部分を有する請求項1〜5のいずれか記載の成形体。
【請求項8】
ポリ乳酸樹脂が、総乳酸成分の内、L体が98%以上含まれるかあるいはD体が98%以上含まれるポリ乳酸樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の成形体を製造する方法であって、ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂を配合してなる樹脂組成物を成形し、その後にポリ乳酸樹脂のガラス転移温度以上ポリ乳酸樹脂の融点以下の温度範囲で熱処理することを特徴とする成形体の製造方法。

【公開番号】特開2008−303399(P2008−303399A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214147(P2008−214147)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【分割の表示】特願2003−86556(P2003−86556)の分割
【原出願日】平成15年3月26日(2003.3.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】