説明

成形体切断装置、セラミック成形体の切断方法、及び、ハニカム構造体の製造方法

【課題】切断後の切断面の変形や構成材料の再付着等を防止しつつ、押出成形体を切断することができる成形体切断装置を提供する。
【解決手段】押出成形された柱状のセラミック成形体を搬送する第一の搬送部材と、上記第一の搬送部材の移動方向と平行方向に移動するとともに、鉛直方向にも移動し、上記セラミック成形体の内部を通過することにより、上記セラミック成形体を所定の長さに切断する切断部材と、上記切断部材により所定の長さに切断されたセラミック成形体を搬送する第二の搬送部材とを備え、上記セラミック成形体を切断する前は、上記第一の搬送部材の搬送速度と、上記切断部材の上記平行方向への移動速度とが略同一であり、上記セラミック成形体を切断した後は、第一の搬送部材の搬送速度、上記切断部材の上記平行方向への移動速度、及び、上記第二の搬送部材の搬送速度が後者ほど速いことを特徴とする成形性切断装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体切断装置、セラミック成形体の切断方法、及び、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バス、トラック等の車両や建設機械等の内燃機関から排出される排ガス中に含有されるスス等のパティキュレートが環境や人体に害を及ぼすことが最近問題となっている。
そこで、排ガス中のパティキュレートを捕集して、排ガスを浄化するフィルタとして多孔質セラミックからなるハニカム構造体を用いたハニカムフィルタが種々提案されている。
【0003】
従来、ハニカム構造体を製造する際には、例えば、まず、セラミック粉末とバインダと分散媒液等とを混合して湿潤混合物を調製する。そして、この湿潤混合物をダイスにより連続的に押出成形し、押し出された未切断の成形体を成形体切断装置により所定の長さに切断することにより、角柱形状のハニカム成形体を作製する。
【0004】
次に、得られたハニカム成形体を乾燥させ、その後、所定のセルに目封じを施し、セルのいずれかの端部が封口材層により封止された状態とした後、脱脂処理及び焼成処理を施し、ハニカム焼成体を製造する。
【0005】
この後、ハニカム焼成体の側面にシール材ペーストを塗布し、ハニカム焼成体同士を接着させることにより、シール材層(接着剤層)を介してハニカム焼成体が多数結束した状態のハニカム焼成体の集合体を作製する。次に、得られたハニカム焼成体の集合体に、切削機等を用いて円柱、楕円柱等の所定の形状に切削加工を施してセラミックブロックを形成し、最後に、セラミックブロックの外周にシール材ペーストを塗布してシール材層(コート層)を形成することにより、ハニカム構造体の製造を終了する。
【0006】
なお、本明細書において、ハニカム成形体、ハニカム焼成体及びハニカム構造体のいずれの形態においても、それぞれの外形状をなす面のうち、セルが露出している面を端面といい、端面以外の面を側面という。
【0007】
ここで、連続的に押出成形した未切断のセラミック成形体を切断するための装置として、押出成形機から押し出される成形体の下面に受台を供給して、押出成形体を受台に載置した状態にし、間隔検出器によって受台間の間隔を検出しながら、押出成形体の移動速度及び移動方向と同速度及び同方向で切断具を移動させて押出成形体を移動方向に垂直に切断する自動切断装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】特開昭61−241094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の自動切断装置によって、押出成形体の搬送や切断を自動化するとともに、切断面が垂直となるような成形体の切断は可能であった。しかし、この自動切断装置は、押出成形体の切断後には単に原位置へ上昇して次の切断処理を行うだけであるので、切断具の上昇の際に、切断された成形体と切断具とが接触して成形体の変形や欠け等を引き起こすおそれがあった。また、押出成形体の切断時に切断具に付着した成形体の構成材料が、切断具の引上げの際に成形体の切断面に付着するおそれもあった。特に、被切断体が、非常に薄いセル壁で隔てられたセルを有するハニカム成形体であると、切断具が上昇する際に成形体と接触することによってセル壁の変形や欠けを発生させたり、構成材料の付着によってセルを塞いでしまったりするという不具合を引き起こし、問題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行ない、成形体切断装置において、第一の搬送部材の搬送速度、切断部材の移動速度及び第二の搬送部材の搬送速度を所定の関係を満たすように設定することにより、切断後の切断面における変形や構成材料の再付着等を防止しつつ、セラミック成形体を切断することができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の成形性切断装置は、押出成形された柱状のセラミック成形体を搬送する第一の搬送部材と、
上記第一の搬送部材の移動方向と平行方向に移動するとともに、鉛直方向にも移動し、上記セラミック成形体の内部を通過することにより、上記セラミック成形体を所定の長さに切断する切断部材と、
上記切断部材により所定の長さに切断されたセラミック成形体を搬送する第二の搬送部材とを備え、
上記セラミック成形体を切断する前は、上記第一の搬送部材の搬送速度と、上記切断部材の上記平行方向への移動速度とが略同一であり、
上記セラミック成形体を切断した後は、第一の搬送部材の搬送速度、上記切断部材の上記平行方向への移動速度、及び、上記第二の搬送部材の搬送速度が後者ほど速いことを特徴とする。
以下、本明細書において、切断部材の平行方向への移動速度とは、切断部材が第一の搬送部材の移動方向と平行方向に移動する際の移動速度をいう。
【0012】
上記切断部材は、線状体であることが望ましく、また、金属線の周囲に樹脂が被覆されたものであることが望ましい。
【0013】
本発明の成形体切断装置は、セラミック成形体を切断する毎に、上記線状体を移動させる構成を備えていることが望ましい。
【0014】
また、本発明の成形体切断装置は、上記切断部材を上記平行方向に移動させるボールネジと、上記切断部材を鉛直方向に移動させるシリンダとを備えることが望ましい。
【0015】
本発明のセラミック成形体の切断方法は、押出成形された柱状のセラミック成形体を成形体切断装置を用いて所定の長さに切断するセラミック成形体の切断方法であって、
上記成形体切断装置は、押出成形された未切断の柱状のセラミック成形体を搬送する第一の搬送部材と、
上記第一の搬送部材の移動方向と平行方向に移動するとともに、鉛直方向にも移動し、上記セラミック成形体の内部を通過することにより、上記セラミック成形体を所定の長さに切断する切断部材と、
上記切断部材により所定の長さに切断されたセラミック成形体を搬送する第二の搬送部材とを備え、
上記セラミック成形体を切断する前は、上記第一の搬送部材の搬送速度と、上記切断部材の上記平行方向への移動速度とが略同一であり、
上記セラミック成形体を切断した後は、第一の搬送部材の搬送速度、上記切断部材の上記平行方向への移動速度、及び、上記第二の搬送部材の搬送速度が後者ほど速いことを特徴とする。
【0016】
本発明のセラミック成形体の切断方法において、上記切断部材は、線状体であることが望ましく、また、金属線の周囲に樹脂が被覆されたものであることが望ましい。
【0017】
本発明のセラミック成形体の切断方法において用いられる成形体切断装置は、セラミック成形体を切断する毎に、上記線状体を移動させる構成を備えていることが望ましい。
また、上記成形体切断装置は、上記切断部材を上記平行方向に移動させるボールネジと、上記切断部材を鉛直方向に移動させるシリンダとを備えることが望ましい。
【0018】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、セラミック原料を押出成形することで、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、上記ハニカム成形体を成形体切断装置を用いて所定の長さに切断して、その後、上記ハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
上記成形体切断装置は、押出成形された未切断の柱状のハニカム成形体を搬送する第一の搬送部材と、
上記第一の搬送部材の移動方向と平行方向に移動するとともに、鉛直方向にも移動し、上記ハニカム成形体の内部を通過することにより、上記ハニカム成形体を所定の長さに切断する切断部材と、
上記切断部材により所定の長さに切断されたハニカム成形体を搬送する第二の搬送部材とを備え、
上記ハニカム成形体を切断する前は、上記第一の搬送部材の搬送速度と、上記切断部材の上記平行方向への移動速度とが略同一であり、
上記ハニカム成形体を切断した後は、第一の搬送部材の搬送速度、上記切断部材の上記平行方向への移動速度、及び、上記第二の搬送部材の搬送速度が後者ほど速いことを特徴とする。
【0019】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記切断部材は、線状体であることが望ましく、また、金属線の周囲に樹脂が被覆されたものであることが望ましい。
【0020】
また、本発明のハニカム構造体の製造方法で用いられる成形体切断装置は、ハニカム成形体を切断する毎に、上記線状体を移動させる構成を備えていることが望ましい。
また、上記成形体切断装置は、上記切断部材を上記平行方向に移動させるボールネジと、上記切断部材を鉛直方向に移動させるシリンダとを備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の成形体切断装置によれば、セラミック成形体を搬送する第一の搬送部材の移動方向と平行方向及び鉛直方向に移動し、かつ、第一の搬送部材の移動速度と略同速度で移動する切断部材を備えているので、長手方向に直交する切断面を形成するようにセラミック成形体を切断することができる。
【0022】
上記セラミック成形体を切断した後は、(1)第一の搬送部材の搬送速度、(2)切断部材の上記平行方向への移動速度、(3)第二の搬送部材の搬送速度の各部材についての速度において、(1)<(2)<(3)の関係を満たすことから、切断された成形体と切断部材とが上昇する際に接触することがない。従って、成形体の切断面の変形等の不具合を防止することができ、特に、極めて薄いセル壁で隔てられたセルを有するハニカム成形体では、セルの変形や欠け等が発生することなく、また、切断の際に切断部材に付着した構成材料が切断面に再び付着してセルを塞ぐこともないので、精度よく成形体を切断することができ、表面状態の整った切断面を有する成形体を得ることができる。
【0023】
上記切断部材が線状体であると、セラミック成形体との接触面積が極めて小さく、不必要な応力等がセラミック成形体に負荷されないので、切断の際にセラミック成形体を変形させることなく、しかも、容易に切断することができる。
特に、上記線状体が金属線で構成されていると、耐久性や強度が高いことから消耗による交換頻度を低下させることができるとともに、金属線の周囲に樹脂が被覆されていると、切断時及び切断後において線状体へのセラミック成形体の構成材料の付着が有効に抑制されることから、切断面への構成材料の付着を有効に防止することができる。
【0024】
また、上記のように、樹脂で被覆された線状体を用いると上記構成材料の切断面への付着が有効に抑制されるが、成形体切断装置がさらに線状体を移動させる構成を有していると、切断部材を完全に新たな切断部材に置き換えることができるので、切断不良品の発生等を起こすことなく良好にセラミック成形体を切断することができる。
【0025】
本発明の成形体切断装置が、上記切断部材を上記平行方向に移動させるボールネジと、上記切断部材を鉛直方向に移動させるシリンダとを備えていると、上記切断部材の上記平行方向及び鉛直方向でのスムーズな移動が可能となり、切断工程の全自動化を含めた製造ラインの効率化を図ることができる。
【0026】
本発明のセラミック成形体の切断方法では、本発明の成形体切断装置を用いて押出成形されたセラミック成形体を切断するので、セラミック成形体の長手方向に垂直な方向での切断を効率的かつ容易に行うことができる。また、切断後は、第一の搬送部材、切断部材、第二の搬送部材のそれぞれの速度が所定の関係を満たすので、切断部材の上昇の際に切断部材とセラミック成形体とが接触することがない。従って、セラミック成形体の切断面における変形や欠け等の発生を抑制することができ、また、セラミック成形体が上記ハニカム成形体の場合には、セルの変形や欠け等が発生するのを防止するとともに、セラミック成形体の構成材料がセルを塞ぐことを防止することができる。
【0027】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、押出成形工程において作製した押出成形機から連続するハニカム成形体を本発明の成形体切断装置で切断することにより、長手方向に直交する断面を有し、かつ、切断面の状態が整ったハニカム成形体を効率的に作製することができるので、製造ラインの効率化や製品ロスの削減等を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
まず、本発明の成形体切断装置及びセラミック成形体の切断方法について図面を参照しながら説明する。
本発明の成形性切断装置は、押出成形された柱状のセラミック成形体を搬送する第一の搬送部材と、
上記第一の搬送部材の移動方向と平行方向に移動するとともに、鉛直方向にも移動し、上記セラミック成形体の内部を通過することにより、上記セラミック成形体を所定の長さに切断する切断部材と、
上記切断部材により所定の長さに切断されたセラミック成形体を搬送する第二の搬送部材とを備え、
上記セラミック成形体を切断する前は、上記第一の搬送部材の搬送速度と、上記切断部材の上記平行方向への移動速度とが略同一であり、
上記セラミック成形体を切断した後は、第一の搬送部材の搬送速度、上記切断部材の上記平行方向への移動速度、及び、上記第二の搬送部材の搬送速度が後者ほど速いことを特徴とする。
【0029】
また、本発明のセラミック成形体の切断方法は、押出成形された柱状のセラミック成形体を成形体切断装置を用いて所定の長さに切断するセラミック成形体の切断方法であって、
上記成形体切断装置は、押出成形された未切断のセラミック成形体を搬送する第一の搬送部材と、
上記第一の搬送部材の移動方向と平行方向に移動するとともに、鉛直方向にも移動し、上記セラミック成形体の内部を通過することにより、上記セラミック成形体を所定の長さに切断する切断部材と、
上記切断部材により所定の長さに切断されたセラミック成形体を搬送する第二の搬送部材とを備え、
上記セラミック成形体を切断する前は、上記第一の搬送部材の搬送速度と、上記切断部材の上記平行方向への移動速度とが略同一であり、
上記セラミック成形体を切断した後は、第一の搬送部材の搬送速度、上記切断部材の上記平行方向への移動速度、及び、上記第二の搬送部材の搬送速度が後者ほど速いことを特徴とする。
なお、本明細書において、「柱状」には、円柱状や楕円柱状、多角柱状等の任意の柱の形状を含む。
【0030】
本発明の成形体切断装置による切断の対象としては、押出成形により得られる成形体であれば特に限定されず、例えば、長手方向に貫通する多数のセルを有するハニカム成形体であってもよく、また、単なる筒状の成形体であってもよい。以下では、セラミック成形体の例として、ハニカム構造を有するセラミック成形体(ハニカム成形体)について説明する。
【0031】
図1(a)は、本発明の成形体切断装置を構成する切断ユニットの実施形態の一例を示す側面図であり、図1(b)は、本発明の成形体切断装置を構成する切断ユニットの実施形態の一例を示す正面図であり、図2(a)〜(e)は、本発明の成形体切断装置の切断動作を模式的に示す側面図である。
【0032】
本発明の成形体切断装置は、図2(a)に示すように、連続して押出成形された未切断のセラミック成形体(以下、連続セラミック成形体ともいう)30を搬送する第一の搬送部材31と、第一の搬送部材31の移動方向と平行方向に移動するとともに、鉛直方向にも移動し、連続セラミック成形体30の内部を通過することにより、連続セラミック成形体30を所定の長さに切断する切断部材28と、切断部材28により切断されたセラミック成形体を搬送する第二の搬送部材32とを備える。また、第二の搬送部材の搬送方向の下流には、切断されたセラミック成形体の通過を検知する通過センサ33(後述)が設置されている。
なお、図2(a)〜(e)に示す切断部材28の配置状態は、図1(b)に示す切断ユニット20を右手から見たときの切断部材28及び切断部材支持部22を拡大した状態に対応し、シリンダ23は省略している。
【0033】
第一の搬送部材31と第二の搬送部材32とは、押出成形機40から押出成形された連続セラミック成形体30を押出方向と平行方向に搬送可能なように、それぞれの上面が同一平面内に存在し、同一搬送方向を有する。また、切断部材28は、連続セラミック成形体30に対して切り込む切込部28aが連続セラミック成形体30の長手方向と直交するように配置されている。
【0034】
まず、図1(a)、(b)を参照しつつ切断部材28を含む切断ユニット20について説明する。
切断ユニット20の概要としては、図1(b)に示すように、基盤21に、切断部材28を送り出す送出ボビン11と切断部材28を巻き取る巻取ボビン12とを備えるとともに、上記切断部材28を送出ボビン11から切断部材支持部22を介して巻取ボビン12まで導く複数のプーリーを備えている。また、連続セラミック成形体30の切断時には、切断ユニット20は、連続セラミック成形体30の押出速度と同一速度で連続セラミック成形体30を搬送する第一の搬送部材31と同期した速度で移動しながら、切断部材28を連続セラミック成形体30の内部を通過するように移動させ、連続セラミック成形体30の長手方向と直交するように切断するという構成を有している。
【0035】
詳細には、この切断ユニット20の基盤21には、切断部材28を送り出す送出ボビン11と切断部材28を巻き取る巻取ボビン12とが設けられるとともに、切断部材28を送出ボビン11から切断領域を含めて巻取ボビン12まで導く大型プーリー13及び他の6個のプーリー14、15、16、17、18、19が設けられている。
【0036】
送出ボビン11は円柱形状であり、多量の切断部材28が巻き付けてある。送出ボビン11の両端には、送出ボビン11の軸方向と直交するつば部が設けられており、切断部材28の巻き付けの状態を維持することができ、また、巻き付けられた多量の切断部材28を連続的又は断続的に送り出すことができる。大型プーリー13は、送出ボビン11とほぼ同じ形状で同じ高さに取り付けてある。この大型プーリー13により、例えば、送出ボビン11に巻き付けられた切断部材28の量が少なくなり、切断部材28が大型プーリー13の上部より低い位置から送り出された場合にも、送出ボビン11に対して低い位置にある次のプーリー14に自然に切断部材28を導くようになっている。
【0037】
基盤21の左下には、切断部材支持部22が設けられており、この切断部材支持部22の端部に取り付けられたプーリー16、17間に切断部材28が架けられている。また、切断部材支持部22は、基盤21を下降させることにより、押出成形されたセラミック成形体をまたぐような構成を有している。さらに、大型プーリー13の右斜め下にあるプーリー14は、その位置を移動させることができるようになっており、これにより、切断部材28の張り具合を調整することができる。
【0038】
このようなボビンやプーリーが設けられた基盤21は、上下に移動が可能なシリンダ23に固定され、このシリンダ23は、前後に(すなわち、セラミック成形体の搬送方向と平行に)スライド可能なスライド台25に立設されている。シリンダ23は、エアーシリンダ又はオイルシリンダであり、エアー圧又はオイル量を調整することにより、基盤21を鉛直方向に移動させることが可能である。また、スライド台25は、水平に設けられたボールネジ26に螺嵌されており、ボールネジ26が回転する回転方向に従って前後に移動するようになっている。すなわち、ボールネジ26の端部は、モータ27の端部とベルト(図示せず)で連結されており、モータ27の回転に伴ってボールネジ26が回転する。このボールネジ26の回転方向に応じて、スライド台25及びスライド台25に固定されたシリンダ23及び基盤21が、前後に移動する。
【0039】
このように、基盤21は、シリンダ23に固定され、シリンダ23は、スライド台25に固定されているため、基盤21は、前後方向に移動が可能であるとともに、鉛直方向に移動が可能である。従って、押し出されたセラミック成形体を搬送する第一の搬送部材31の移動方向と平行方向に、かつ、その移動と同期させて基盤21を移動させるとともに、所定の速度で下降させることにより、切断部材28は、セラミック成形体の内部を長手方向に垂直な方向で通過し、セラミック成形体を所定の長さに切断することができる。従って、そのセラミック成形体の切断面は、長手方向に直交するように形成される。
【0040】
次に、図2(a)〜(e)を参照しつつ本発明の成形体切断装置を用いてセラミック成形体を切断する一連の動作を説明する。
成形体切断装置では、上記セラミック成形体を切断する前は、上記第一の搬送部材の搬送速度と、上記切断部材の上記平行方向への移動速度とが略同一であり、かつ、上記セラミック成形体を切断した後は、第一の搬送部材の搬送速度、上記切断部材の上記平行方向への移動速度、及び、上記第二の搬送部材の搬送速度が後者ほど速いという相互の速度の関係を有する。
【0041】
まず、図2(a)に図示するように、押出成形機40から押出成形された連続セラミック成形体30は、押出成形の速度と同一の搬送速度Vを有する第一の搬送部材31によって搬送されている。このとき、第二の搬送部材32は第一の搬送部材31の搬送速度Vと同一の搬送速度Vで連続セラミック成形体30を搬送している。一方、切断部材28は切断前の原位置で停止したままである。言うまでもなく、第一の搬送部材31と第二の搬送部材32とは別個にそれぞれの動作を制御可能である。
【0042】
次いで、図2(b)に示すように、連続セラミック成形体30の先端部が通過センサ33の位置に到達したら、通過センサ33が連続セラミック成形体30の通過を検知し、通過の開始とともに通過開始信号を切断部材28の動作を制御する切断制御手段(図示せず)に送信する。この通過開始信号を切断制御手段が受信すると切断部材28の動作が開始される。切断部材28の動作が開始されると、切断部材28は、第一の搬送部材31の移動方向と平行方向に移動するとともに、鉛直下方にも移動し、連続セラミック成形体30の切断を開始する。このとき、第一の搬送部材31の搬送速度Vと、切断部材28の上記平行方向への移動速度Vとは、略同一の関係にある。従って、切断部材28は、連続セラミック成形体30の移動と同期しながら鉛直下方に移動し、連続セラミック成形体30の長手方向に直交するように連続セラミック成形体30を切断する。また、切断部材支持部22が、連続セラミック成形体30に触れることなく、またぐようにして下降し、切断部材支持部22に架けられた切断部材28が連続セラミック成形体30を切断する。
【0043】
成形体切断装置10では、連続セラミック成形体30が通過センサ33を通過し、この通過による通過開始信号を切断制御手段が受信することで切断部材28が動作を開始するので、切断制御手段が通過開始信号を受信した時点における通過センサ33と切断部材28との間の距離が、目的とする切断後の連続セラミック成形体30の長さ(以下、単に切断長ともいう。この切断長は、後述する図2(d)に示すセラミック成形体35の長手方向の長さに対応する。)となる。ゆえに、通過センサ33の配置位置を変更することで、連続セラミック成形体30の切断長を任意の長さに変更することができる。例えば、通過センサ33の配置位置として図2(b)に示す位置ではなく、さらに押出成形機40に近い側に配置すると、連続セラミック成形体30の切断長をさらに短くすることができる。
【0044】
このように、連続セラミック成形体30の切断長を通過センサ33の配置位置を変更することで任意の長さに変更することができることは、連続セラミック成形体30の切断が完了するまでは、第一の搬送部材31の搬送速度Vと切断部材28の平行方向への移動速度Vとは略同一であるので、連続セラミック成形体30の切断長は、通過センサ33と切断部材28との間を通過する時間のみに依存し、それぞれの搬送速度や移動速度には依存することがないことからも明らかであり、また、本発明の特徴の一つでもある。
なお、このときの第一の搬送部材31の搬送速度V、切断部材28の平行方向への移動速度V及び第二の搬送部材32の搬送速度Vは、V=V=Vの関係を満たす。
【0045】
次いで、連続セラミック成形体30の内部を通過しながら、図2(c)に示す位置まで切断部材28が所定の速度で鉛直下方に移動して、連続セラミック成形体30を切断する。その後、切断部材28は上昇して、次の切断処理のために原位置に戻る。ここで、本発明の成形体切断装置では、切断部材28は切断後において単に上昇するのではなく、第一の搬送部材31と切断部材28と第二の搬送部材32とが所定の速度関係を有しつつ上昇するので、セラミック成形体のセルの変形や欠け等を防止することができるとともに、切断部材に付着した構成材料が切断面に付着してセルを塞いでしまうのを防止することができる。連続セラミック成形体30の切断直後の切断部材28の位置を位置Iとし、第二の搬送部材32の第一の搬送部材31と対向する端部の位置を位置IIとして、以下、連続セラミック成形体30の切断後における成形体切断装置10を構成する各部材の動作の詳細を説明する。
【0046】
成形体切断装置10では、連続セラミック成形体30を切断した後は、第一の搬送部材31の搬送速度V、切断部材28の平行方向への移動速度V、及び、第二の搬送部材の搬送速度Vが後者ほど速い。すなわち、連続セラミック成形体30の切断後は、各部材の速度はV<V<Vの関係を有する。
【0047】
切断部材28による連続セラミック成形体30の切断が完了した時点で、切断ユニット20は切断完了を検知して(所定距離鉛直下方へ移動したことをもって、切断完了を検知する)、切断部材28の平行方向への移動速度を、上記関係を満たすVに設定するとともに、切断部材28の鉛直上方への移動を開始し、さらに、第二の搬送部材32の搬送動作を制御する搬送制御手段(図示せず)へと切断完了信号を送信する。この切断完了信号を上記搬送制御手段が受信すると、上記速度の関係を満たすように第二の搬送部材32の搬送速度Vを変更する。
【0048】
連続セラミック成形体30の切断後では、第一の搬送部材31、切断部材28及び第二の搬送部材32が、それぞれ上記のような速度の関係を有する。この速度関係により、切断完了から所定時間t経過後には、図2(d)に示すように、切断されたセラミック成形体35の後端部、切断部材28、及び、新たに切断されることになる連続セラミック成形体36の先端部の各々が、押出成形の方向において、位置Iからそれぞれの速度に応じて所定距離だけ離れた位置に存在する。具体的には、セラミック成形体35の後端部が位置Iから最も離れた位置にあり、連続セラミック成形体36の先端部が位置Iから最も近い位置にあり、切断部材28がセラミック成形体35の後端部と連続セラミック成形体36の先端部との間に位置する。
【0049】
成形体切断装置10によると、第一の搬送部材31の搬送速度Vと切断部材28の平行方向の移動速度Vと第二の搬送部材32の搬送速度Vとが上記のような速度の関係を有することにより、連続セラミック成形体30の切断後において、セラミック成形体35の後端部と切断部材28と新たに連続的に押出成形された連続セラミック成形体36の先端部とが、上記のような位置関係となる。
【0050】
次に、上記の速度の関係を満たしながら、第一の搬送部材31、切断部材28及び第二の搬送部材32とがそれぞれ作動し、切断完了から所定時間t経過後にはセラミック成形体35、切断部材28及び連続セラミック成形体36は図2(e)に示すような位置関係を有するようになる。すなわち、最も速度の大きい第二の搬送部材32によって搬送されたセラミック成形体35においては、その後端部が通過センサ33を抜け出ている。また、最も速度の小さい第一の搬送部材31によって搬送された連続セラミック成形体36においては、その先端部が第二の搬送部材32の端部(図中、位置II)の位置まで搬送されている。切断部材28においては、搬送方向と平行方向の位置がセラミック成形体35の後端部と連続セラミック成形体36の先端部との間にあり、かつ、鉛直方向の位置が原位置と同じ高さまで上昇した位置にある。
【0051】
通過センサ33がセラミック成形体35の存在を検知しなくなった時点において、言い換えると、セラミック成形体35の後端部が通過センサ33を抜け出た時点において、通過センサ33は、第二の搬送部材32の動作を制御する搬送制御手段に通過完了信号を送信する。この通過完了信号を搬送制御手段が受信すると、第二の搬送部材32の搬送速度Vを変更して、第一の搬送部材31の搬送速度Vと同速度に設定する。これにより、新たに切断されることになる連続セラミック成形体36が、第一の搬送部材31により搬送されて位置IIを通過し、第二の搬送部材32上に載ったとしても、第一の搬送部材31の搬送速度と第二の搬送部材32の搬送速度とが同速度であるので、連続セラミック成形体36に対して引張応力や圧縮応力等が生じることがなくスムーズに次の切断処理に供することができる。
なお、上記のように、第二の搬送部材32の搬送速度Vは、切断前においては、第一の搬送部材31の搬送速度Vと同速度であることが望ましいが、連続セラミック成形体30、36の品質を低下させるような変形を生じない限り、切断前及び切断後を通じて、第二の搬送部材32の搬送速度Vの方が第一の搬送部材31の搬送速度Vより大きくてもよい。
【0052】
切断部材28については、図2(e)に示すように切断完了から時間t経過後では、原位置と同じ高さ(図2(a)参照)に上昇しており、その後、原位置まで移動して次の切断処理のために待機する。この図2(e)に示す位置から原位置までの移動の間に、送出ボビン11と巻取ボビン12とが作動し、先の切断処理に使用した切断部材28を所定の長さの分だけ送るように移動させて、新たな切断部材と置き換える。そして、新たに切断されることになるセラミック成形体の先端部が通過センサに到達したら、新たな切断部材が鉛直下方への移動を開始して、セラミック成形体の切断処理を行う。なお、送出ボビン11と巻取ボビン12との作動による切断部材28の置き換えは、次の切断処理のための待機中に行ってもよい。
以上の手順を繰り返すことで、押出成形機から押出成形されたセラミック成形体を連続的に切断することができる。
【0053】
上記切断部材は、線状体であることが望ましい。
上記セラミック成形体を切断する際の切断部材28は、特に限定されるものではなく、例えば、切断部分に刃が形成されているカッタ、レーザ、線状体等が挙げられるが、セラミック成形体との接触面積やランニングコスト等を考慮すると線状体が望ましい。線状体を使用した場合には、セラミック成形体との接触面積が極めて小さいため、セラミック成形体のセルが接触してもクラック、ずり変形等の変形や欠け等を起こすことなく、しかも、レーザのように付帯機器等を必要としないことからランニングコストも低く抑えることもできるので望ましい。
【0054】
切断部材が線状体である場合、線状体の直径としては、特に限定されないが、0.05〜0.5mmが望ましい。
線状体の直径が0.05mm未満であると、強度が低下して耐久性が低下し、一方、0.5mmを超えると、セラミック成形体との接触面積が大きくなって切断面の変形等が生じるおそれがある。
【0055】
さらに、上記線状体は、金属線の周囲に樹脂が被覆されたものであることが望ましい。
切断部材28は、特に限定されるものではなく、金属線でも樹脂線でもよいが、耐久性等を考慮すると金属線が好ましく、非付着性を考慮すると樹脂が好ましい。従って、これらの点から、SUSのような金属線の周囲に樹脂が被覆されたものが好ましい。金属線の周囲に被覆される樹脂としては、特に限定されず、ナイロン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル等の樹脂が挙げられる。
【0056】
上記構成の成形体切断装置10では、金属線の周囲に樹脂が被覆された細い切断部材28を用いている。この切断部材28が、セラミック成形体の押出速度に同期して移動しながら、セラミック成形体の内部を通過することにより上記セラミック成形体を所定の長さに切断している。従って、切断時に切断部材28が上記セラミック成形体と接触している面積は極めて小さく、従って、成形体の形状やセルの形状等に影響を与えることなく、良好に成形体の切断を行うことができる。
【0057】
また、本発明の成形体切断装置は、セラミック成形体を切断する毎に、上記線状体を移動させる構成を備えていることが望ましい。
切断部材28を備える切断ユニット20では、切断部材28が線状体である場合には、1回の切断を行うごとに、新しい線状体が送り出され、新しい線状体を用いて次の連続セラミック成形体30の切断が行われるので、線状体の断線等を防止することができる。加えて、線状体の移動により、切断部材28へのセラミック成形体構成物の付着による切断不良品の発生等を防止することができるし、先の切断処理の際に付着したセラミック成形体の構成材料が、新たな切断の際にセラミック成形体に付着することを防止することもでき、良好に切断を行うことができる。なお、全ての切断部材28が巻取ボビン12に巻き取られた後は、切断部材28に付着したセラミック成形体の構成材料を拭き取ることで、切断部材28を再利用することができる。また、切断部材28は切断直後に拭き取ってもよい。
【0058】
本発明の成形体切断装置は、上記切断部材を上記平行方向に移動させるボールネジと、上記切断部材を鉛直方向に移動させるシリンダとを備えることが望ましい。
上記第一の搬送部際の移動方向と平行方向に上記切断部材を移動させる機構としては、上述したボールネジが望ましいが、ボールネジに限定されず、例えば、コンベア機構、リニアガイド、クロスローラガイド、直動アクチュエータ、回転アクチュエータ等の駆動機構も好適に使用することができる。また、上記切断部材を鉛直方向に移動させる機構としては、上述したシリンダが望ましいが、シリンダに限定されず、例えば、上記切断部材を平行方向に移動させる機構と同様にボールネジ等の機構であってもよい。
【0059】
第一の搬送部材及び第二の搬送部材のセラミック成形体との接触部の構成材料としては、特に限定されず、天然ゴムや、ナイロン、ウレタン、ポリエステル等の樹脂が挙げられる。また、これらの構成材料で形成された上記接触部は、スポンジ状や長繊維が絡み合ったような形状等であって所定の応力が負荷された場合に弾性変形可能な形状であってもよい。接触部がこのような形状であれば、切断部材がセラミック成形体の内部を通過してセラミック成形体の下面にまで達したときに、切断部材はさらに接触部へと沈み込むことができ、セラミック成形体を完全に切断することができる。
【0060】
切断部材28が位置Iに達した時点で連続セラミック成形体30の切断が完了するが(図2(c)参照)、この時点ではセラミック成形体35の後端部は第一の搬送部材31上にあり、その後、第一の搬送部材31の搬送速度より速い第二の搬送部材32の搬送速度に応じてセラミック成形体35が搬送される。従って、位置Iと第一の搬送部材31の端部との間では、セラミック成形体35の後端部は、第一の搬送部材31との間で摩擦が生じることになる。しかし、第一の搬送部材31の連続セラミック成形体30との接触部は、上記のような構成材料で構成されており、かつ、平滑な面であるので、その摩擦は無視しうる程度に小さく、セラミック成形体の表面に何ら影響を及ぼすことはない。
【0061】
なお、本発明の成形体切断装置による切断の対象として、連続的に押出成形した後の連続セラミック成形体を被切断体として説明したが、被切断体としては、セラミック成形体であれば連続セラミック成形体に限定されず、他の形状を有する任意のセラミック成形体であってもよい。
【0062】
次に、本発明のセラミック成形体の切断方法について説明する。
本発明のセラミック成形体の切断方法で用いる成形体切断装置としては、上述の本発明の成形体切断装置を好適に使用することができるので、その詳細な構成はここでは省略し、切断処理の際の条件等を中心に説明する。
【0063】
切断時の切断部材の下降速度は、0.6〜30m/minが好ましい。
下降速度が0.6m/min未満であると、切断の際の応力に対してセラミック成形体が変形したり、切断処理効率が低下したりする。一方、30m/minを超えると、切断処理自体が高速化し、切断部材を含む切断ユニットに対する負荷が大きくなって機器の劣化や消耗が早く進行する場合がある。
【0064】
切断部材が線状体である場合には、線状体の張力は、2〜8Nが好ましい。
線状体の張力が2N未満であると、切断の際にいわゆるたわみが線状体に生じて、良好な切断が行えないことがある。一方、8Nを超えると、線状体の引張強度を超えることから耐久性が低下したり、線状体である切断部材を送り出す送出ボビンやプーリー等に過剰の負荷がかかることで破損が生じたりしやすくなる。
【0065】
本発明のセラミック成形体の切断方法において、セラミック成形体を切断した後は、第一の搬送部材の搬送速度V(以下、単にVともいう)、切断部材の平行方向の移動速度V(以下、単にVともいう)、及び、第二の搬送部材の搬送速度V(以下、単にVともいう)の関係として、V<V<Vの関係が成立する。ここで、各部材の作動順序のバリエーションの例について、図2(c)〜(e)を参照しつつ説明する。
【0066】
まず、図2(c)に示すように、セラミック成形体の切断完了時点の状態を時間t=0の状態とし、そこから所定時間t経過後の例えば図2(d)に示すような状態を時間t=t(以下、単にtともいう)の状態とし、さらに、切断完了から所定時間t経過後の例えば図2(e)に示すような状態を時間t=t(以下、単にtともいう)の状態とする。
【0067】
ここで、本発明の成形体切断装置の説明では、t=tの図2(d)の状態では、切断部材28は切断完了と同時に上記関係を満たすような移動速度Vで平行方向に移動し、かつ、鉛直方向にも移動していると説明した。
【0068】
しかし、それぞれの部材の速度関係や移動のタイミング等については、上記の順序に限定されず、例えば、t=0ではV=V=Vであり、0<t<tにおいては、切断部材28を鉛直上方へ移動させることなく第二の搬送部材32の搬送速度だけを変更してV=V<Vとし、t≦t≦tにおいては、切断部材28を鉛直上方へ移動させながら平行方向の移動速度Vを変更してV<V<Vとしてもよい。
【0069】
この場合はまず、0<t<tにおいて、セラミック成形体35の後端部のみが、連続セラミック成形体36の先端部及び切断部材28から離れるように移動する。従って、切断部材28は連続セラミック成形体36の先端部の下端に位置したままである。その後、t≦t≦tではV<V<Vの関係を満たすように、Vが変更されるので、切断部材28が連続セラミック成形体36の先端部から離れるように平行方向及び鉛直平行に移動し、時間tには図2(e)に示す状態となる。
【0070】
また、上記の例の他、例えば、t=0ではV=V=Vであり、0<t<tにおいては、切断部材28を鉛直上方へ移動させながらV<V<Vとし、t≦t≦tにおいては、切断部材28を鉛直上方へ移動させながらV=V<Vとしてもよい。
いずれの場合であっても、切断部材28がセラミック成形体35及び連続セラミック成形体36に接触することなく原位置と同じ高さまで上昇することができ、一連の切断処理を、効率的にかつ不具合を起こすことなく行うことができる。
以上、切断後の各部材の作動順序のバリエーションについて幾つか例示したが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0071】
ここで、第一の搬送部材31の搬送速度Vと、切断部材28の平行方向の移動速度Vと、第二の搬送部材32の搬送速度Vとの間の速度の比率は、V<V<Vの関係を満たすのであれば特に限定されないが、速度Vを基準とするとV/V=3〜7であり、V/V=5〜10であることが望ましい。
、V、Vがそれぞれ上記の速度比を満たすように設定されると、切断部材28が、切断後のセラミック成形体35や、新たに切断されることになる連続セラミック成形体36に接触することなく、また、成形体切断装置を構成する各部材に対して過度の負荷をかけることなく、原位置と同じ高さまで上昇することができる。
【0072】
なお、第二の搬送部材32の搬送速度Vについては、切断完了からtの間だけ上記の関係(V<V<V)を満たせばよい。上述のように、切断されたセラミック成形体35が通過センサ33を通過して抜け出るまでの時間はtに等しく、その後は、新たに切断されることになる連続セラミック成形体36の先端部が位置IIを越えて第二の搬送部材32に載るからである。従って、Vの設定値として、このセラミック成形体35の長手方向の長さ(ここでは便宜的にLとする)を時間tで除した値(L/t)を採用することができる。また、Vの大きさとしては(L/t)を基準として適宜増減させればよく、例えば、セラミック成形体35の全長のうち半分の長さの部分が通過センサ33を通過するという設定であれば、Vを半減させればよい。すなわち、この場合のVの値は(L/t)を2で除して得た値となる。
【0073】
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。
本発明のハニカム構造体の製造方法は、セラミック原料を押出成形することで、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、上記ハニカム成形体を成形体切断装置を用いて所定の長さに切断して、その後、上記ハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
上記成形体切断装置は、押出成形された未切断の柱状のハニカム成形体を搬送する第一の搬送部材と、
上記第一の搬送部材の移動方向と平行方向に移動するとともに、鉛直方向にも移動し、上記ハニカム成形体の内部を通過することにより、上記ハニカム成形体を所定の長さに切断する切断部材と、
上記切断部材により所定の長さに切断されたハニカム成形体を搬送する第二の搬送部材とを備え、
上記ハニカム成形体を切断する前は、上記第一の搬送部材の搬送速度と、上記切断部材の上記平行方向への移動速度とが略同一であり、
上記ハニカム成形体を切断した後は、第一の搬送部材の搬送速度、上記切断部材の上記平行方向への移動速度、及び、上記第二の搬送部材の搬送速度が後者ほど速いことを特徴とする。
【0074】
図3は、ハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、図4(a)は、上記ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、そのA−A線断面図である。
【0075】
ハニカム構造体130では、図4(a)、(b)に示すようなハニカム焼成体140がシール材層(接着剤層)131を介して複数個結束されてセラミックブロック133を構成し、さらに、このセラミックブロック133の外周にシール材層(コート層)132が形成されている。
また、ハニカム焼成体140は、図4(a)、(b)に示すように、長手方向に多数のセル141が並設され、セル141同士を隔てるセル壁143がフィルタとして機能するようになっている。
【0076】
すなわち、ハニカム焼成体140に形成されたセル141は、図4(b)に示すように、排ガスの入口側又は出口側の端部のいずれかが封口材層142により目封じされ、一のセル141に流入した排ガスは、必ずセル141を隔てるセル壁143を通過した後、他のセル141から流出するようになっており、排ガスがこのセル壁143を通過する際、パティキュレートがセル壁143部分で捕捉され、排ガスが浄化される。
【0077】
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法について、工程順に説明する。
ここでは、構成材料の主成分が炭化ケイ素のハニカム構造体を製造する場合を例に、セラミック原料である炭化ケイ素粉末を使用した場合のハニカム構造体の製造方法について説明する。
勿論、ハニカム構造体の構成材料の主成分は、炭化ケイ素に限定されるわけではなく、他のセラミック原料として、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック等が挙げられる。
これらのなかでは、非酸化物セラミックが好ましく、炭化ケイ素が特に好ましい。耐熱性、機械強度、熱伝導率等に優れるからである。なお、上述したセラミックに金属ケイ素を配合したケイ素含有セラミック、ケイ素やケイ酸塩化合物で結合されたセラミック等のセラミック原料も構成材料として挙げられ、これらのなかでは、炭化ケイ素に金属ケイ素が配合されたもの(ケイ素含有炭化ケイ素)が望ましい。
【0078】
まず、セラミック原料として平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末等の無機粉末と有機バインダとを乾式混合して混合粉末を調製するとともに、液状の可塑剤と潤滑剤と水とを混合して混合液体を調製し、続いて、上記混合粉末と上記混合液体とを湿式混合機を用いて混合することにより、成形体製造用の湿潤混合物を調製する。
【0079】
上記炭化ケイ素粉末の粒径は特に限定されないが、後の焼成工程で収縮の少ないものが好ましく、例えば、0.3〜50μmの平均粒径を有する粉末100重量部と0.1〜1.0μmの平均粒径を有する粉末5〜65重量部とを組み合わせたものが好ましい。
ハニカム焼成体の気孔径等を調節するためには、焼成温度を調節する必要があるが、無機粉末の粒径を調節することにより、気孔径を調節することができる。
【0080】
上記有機バインダとしては特に限定されず、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらのなかでは、メチルセルロースが望ましい。
上記バインダの配合量は、通常、無機粉末100重量部に対して、1〜10重量部が望ましい。
【0081】
上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、グリセリン等が挙げられる。
また、上記潤滑剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系化合物等が挙げられる。
潤滑剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル等が挙げられる。
なお、可塑剤、潤滑剤は、場合によっては、混合原料粉末に含まれていなくてもよい。
【0082】
また、上記湿潤混合物を調製する際には、分散媒液を使用してもよく、上記分散媒液としては、例えば、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられる。
さらに、上記湿潤混合物中には、成形助剤が添加されていてもよい。
上記成形助剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられる。
【0083】
さらに、上記湿潤混合物には、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
上記バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等を挙げることができる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
【0084】
また、ここで調製した、炭化ケイ素粉末を用いた湿潤混合物は、その温度が28℃以下であることが望ましい。温度が高すぎると、有機バインダがゲル化してしまうことがあるからである。
また、上記湿潤混合物中の有機分の割合は10重量%以下であることが望ましく、水分の含有量は8.0〜20.0重量%であることが望ましい。
【0085】
上記湿潤混合物は、調製後搬送され、成形機に投入されることとなる。
上記湿潤混合物を押出成形機に投入した後は、押出成形により所定の形状のハニカム成形体とする。このハニカム成形体を成形体切断装置により所定の長さに切断する。
【0086】
本発明のハニカム構造体の製造方法で用いられる成形体切断装置は、押出成形された未切断の柱状のハニカム成形体を搬送する第一の搬送部材と、上記第一の搬送部材の移動方向と平行方向に移動するとともに、鉛直方向にも移動し、上記ハニカム成形体の内部を通過することにより、上記ハニカム成形体を所定の長さに切断する切断部材と、上記切断部材により所定の長さに切断されたハニカム成形体を搬送する第二の搬送部材とを備え、上記ハニカム成形体を切断する前は、上記第一の搬送部材の搬送速度と、上記切断部材の上記平行方向への移動速度とが略同一であり、上記ハニカム成形体を切断した後は、第一の搬送部材の搬送速度、上記切断部材の上記平行方向への移動速度、及び、上記第二の搬送部材の搬送速度が後者ほど速いことを特徴とする。
このような成形体切断装置としては、本発明の成形体切断装置を好適に使用することができ、また、この成形体切断装置を用いてハニカム成形体を切断する方法としては、本発明のセラミック成形体の切断方法を好適に採用することができる。従って、それらの構成の詳細や作用・効果についてはここでは省略する。
【0087】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記切断部材は、線状体であることが望ましい。
切断部材が線状体であると、切断の際の接触面積が極めて小さいことから過剰な応力が生じないので、上記セラミック成形体のような塑性変形性を有するような被切断体であっても良好に切断することができる。
【0088】
また、切断部材が線状体である場合には、金属線の周囲に樹脂が被覆されたものであることが望ましい。
セラミック成形体の構成材料には、成形性を付与するために成形助剤や有機成分等が含まれている場合がある。このような添加物が構成材料に含まれていると、セラミック成形体自体に粘着性が生じ、切断する際に切断部材にその構成材料が付着することがある。しかし、線状体が金属線の周囲に樹脂が被覆されたものであると、上記構成材料の付着を最小限に抑えることができ、また、金属線であることから耐久性をも向上させることができる。
【0089】
また、本発明のハニカム構造体の製造方法で用いられる成形体切断装置は、セラミック成形体を切断する毎に、上記線状体を移動させる構成を備えていることが望ましい。
このような構成を備えていると、前回の切断時に付着した構成材料によって生じる新たな切断処理の際の切断不良品の発生等や構成材料の切断面への再付着等を防止することができる。
【0090】
さらに、上記成形体切断装置は、上記切断部材を上記平行方向に移動させるボールネジと、上記切断部材を鉛直方向に移動させるシリンダとを備えることが望ましい。
セラミック成形体の切断工程をスムーズに行うことができ、全自動化の推進にも適しているからである。
【0091】
以上のようにして、本発明のハニカム構造体の製造方法では、切断面に付着物等を発生させることなく、また、切断面の変形や欠け等を防止しつつ、押出成形機から押出成形されたセラミック成形体を長手方向に垂直にかつ所定の長さで切断することができる。
【0092】
次に、上記ハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させ、乾燥させたハニカム成形体とする。
【0093】
ここで、切断装置を用いて作製したハニカム成形体の両端を切断する切断工程を行ない、ハニカム成形体を所定の長さに切断する。これにより乾燥時におけるハニカム成形体の収縮を無視することができる。
【0094】
次いで、必要に応じて、入口側セル群の出口側の端部、及び、出口側セル群の入口側の端部に、封止材となる封止材ペーストを所定量充填し、セルを目封じする。このセルの目封じの際には、ハニカム成形体の端面(すなわち切断工程後の切断面)に目封じ用のマスクを当てて、目封じの必要なセルにのみ封止材ペーストを充填する。
【0095】
上記封止材ペーストとしては特に限定されないが、後工程を経て製造される封止材の気孔率が30〜75%となるものが望ましく、例えば、上記湿潤混合物と同様のものを用いることができる。
【0096】
上記封止材ペーストの充填は、必要に応じて行えばよく、上記封止材ペーストを充填した場合には、例えば、後工程を経て得られたハニカム構造体をハニカムフィルタとして好適に使用することができ、上記封止材ペーストを充填しなかった場合には、例えば、後工程を経て得られたハニカム構造体を触媒担持体として好適に使用することができる。
【0097】
次に、上記封止材ペーストが充填されたハニカム成形体を、所定の条件で脱脂(例えば、200〜500℃)、次いで、焼成(例えば、1400〜2300℃)することにより、全体が一の焼成体から構成され、複数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設され、かつ、上記セルのいずれか一方の端部が封止されたハニカム焼成体(図4(a)、(b)参照)を製造することができる。
【0098】
上記ハニカム成形体の脱脂及び焼成の条件は、従来から多孔質セラミックからなるフィルタを製造する際に用いられている条件を適用することができる。
【0099】
次に、ハニカム焼成体の側面に、シール材層(接着剤層)となるシール材ペーストを均一な厚さで塗布してシール材ペースト層を形成し、このシール材ペースト層の上に、順次他のハニカム焼成体を積層する工程を繰り返し、所定の大きさのハニカム焼成体の集合体を作製する。
【0100】
上記シール材ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機繊維及び/又は無機粒子とからなるもの等が挙げられる。
上記無機バインダとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機バインダのなかでは、シリカゾルが望ましい。
【0101】
上記有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記有機バインダのなかでは、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
【0102】
上記無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバー等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機繊維のなかでは、アルミナファイバが望ましい。
【0103】
上記無機粒子としては、例えば、炭化物、窒化物等を挙げることができ、具体的には、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素からなる無機粉末等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機粒子のなかでは、熱伝導性に優れる炭化ケイ素が望ましい。
【0104】
さらに、上記シール材ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
上記バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等を挙げることができる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
【0105】
次に、このハニカム焼成体の集合体を加熱してシール材ペースト層を乾燥、固化させてシール材層(接着剤層)とする。
次に、ダイヤモンドカッター等を用い、ハニカム焼成体がシール材層(接着剤層)を介して複数個接着されたハニカム焼成体の集合体に切削加工を施し、円柱形状のセラミックブロックを作製する。
【0106】
そして、セラミックブロックの外周に上記シール材ペーストを用いてシール材層(コート材層)を形成することで、ハニカム焼成体がシール材層(接着剤層)を介して複数個接着された円柱形状のセラミックブロックの外周部にシール材層(コート材層)が設けられたハニカム構造体とすることができる。
【0107】
その後、必要に応じて、ハニカム構造体に触媒を担持させる。上記触媒の担持は集合体を作製する前のハニカム焼成体に行ってもよい。
触媒を担持させる場合には、ハニカム構造体の表面に高い比表面積のアルミナ膜を形成し、このアルミナ膜の表面に助触媒、及び、白金等の触媒を付与することが望ましい。
【0108】
上記ハニカム構造体の表面にアルミナ膜を形成する方法としては、例えば、Al(NO等のアルミニウムを含有する金属化合物の溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法、アルミナ粉末を含有する溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法等を挙げることができる。
上記アルミナ膜に助触媒を付与する方法としては、例えば、Ce(NO等の希土類元素等を含有する金属化合物の溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法等を挙げることができる。
上記アルミナ膜に触媒を付与する方法としては、例えば、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液([Pt(NH(NO]HNO、白金濃度4.53重量%)等をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法等を挙げることができる。
また、予め、アルミナ粒子に触媒を付与して、触媒が付与されたアルミナ粉末を含有する溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法で触媒を付与してもよい。
【0109】
また、ここまで説明したハニカム構造体の製造方法により製造されたハニカム構造体は、複数のハニカム焼成体がシール材層(接着剤層)を介して結束された構成を有する集合型ハニカム構造体であるが、本発明の製造方法により製造するハニカム構造体は、円柱形状のセラミックブロックが1つのハニカム焼成体から構成されている一体型ハニカム構造体であってもよい。ここで一体型ハニカム構造体の主な構成材料は、コージェライトやチタン酸アルミニウムであることが望ましい。
【0110】
このような一体型ハニカム構造体を製造する場合は、まず、押出成形により成形するハニカム成形体の大きさが、集合型ハニカム構造体を製造する場合に比べて大きい以外は、集合型ハニカム構造体を製造する場合と同様の方法を用いることができる。そして、この方法においても、上記ハニカム成形体を成形体切断装置により切断してハニカム成形体を作製する。
【0111】
次に、集合型ハニカム構造体の製造と同様に、上記ハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させる。
次いで、乾燥させたハニカム成形体の両端部を切断する切断工程を行う。
【0112】
次に、入口側セル群の出口側の端部、及び、出口側セル群の入口側の端部に、封止材となる封止材ペーストを所定量充填し、セルを目封じする。
その後、集合型ハニカム構造体の製造と同様に、脱脂、焼成を行うことによりセラミックブロックを製造し、必要に応じて、シール材層(コート材層)の形成を行うことにより、一体型ハニカム構造体を製造することができる。また、上記一体型ハニカム構造体にも、上述した方法で触媒を担持させてもよい。
【0113】
以上、説明した本発明のハニカム構造体の製造方法では、作業効率よくハニカム構造体を製造することができる。
また、上述した方法によりハニカム構造体を製造する場合、ハニカム成形体の切断を所定の成形体切断装置を用いて行うので、切断面におけるセルの変形や欠け等がなく、付着物等のない平滑な切断面を有するハニカム成形体を容易に作製することができる。また、ハニカム成形体の切断や切断長の変更等を押出成形と連続して全自動で行うことができるので、製造ラインの効率化を図ることができる。
【0114】
またここでは、ハニカム構造体として、排ガス中のパティキュレートを補集する目的で用いるハニカムフィルタを中心に説明したが、上記ハニカム構造体は、排ガスを浄化する触媒担体(ハニカム触媒)としても好適に使用することができる。
【実施例】
【0115】
以下に実施例を掲げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0116】
本発明のハニカム構造体の製造方法のハニカム成形体切断工程において、本発明のセラミック成形体の切断方法を採用し、ハニカム成形体を切断した。このときの切断条件を変更し、得られるハニカム成形体の切断面付近の形状に及ぼす影響を評価した。
【0117】
(実施例1)
平均粒径10μmのα型炭化ケイ素粉末250kgと、平均粒径0.5μmのα型炭化ケイ素粉末100kgと、有機バインダ(メチルセルロース)と20kgとを混合し、混合粉末を調製した。
次に、別途、潤滑剤(日本油脂社製 ユニルーブ)12kgと、可塑剤(グリセリン)5kgと、水65kgとを混合して液体混合物を調製し、この液体混合物と混合粉末とを湿式混合機を用いて混合し、湿潤混合物を調製した。
なお、ここで調製した湿潤混合物の水分含有量は、14重量%であった。
【0118】
次に、搬送装置を用いて、この湿潤混合物を押出成形機に搬送し、押出成形機の原料投入口に投入した。
なお、押出成形機投入直前の湿潤混合物の水分含有量は、13.5重量%であった。
押出成形により、図4(a)、(b)に示した断面形状(封止されていない状態)を有する連続ハニカム成形体を作製した。
【0119】
次いで、図1(a)、(b)及び図2(a)〜(e)に示した本発明の成形体切断装置を用い、押出成形したハニカム成形体を表1に示す条件にて切断し、ハニカム成形体を作製した。具体的には、上記の湿潤混合物を押出成形機40から3.3m/minの押出速度で押出成形し、得られた連続ハニカム成形体30を切断部材28として線状体を用いて切断した。
線状体としては、直径0.03mmのSUS313製の素線を7本S撚りにし、その周囲にナイロン樹脂を被覆したものを使用した。この線状体の直径は、0.09±0.01mmであり、撚りピッチは1.08±0.10mmであった。
このときの線状体の直径d[mm]、線状体の張力T[N]、切断後における第一の搬送部材の搬送速度V[m/min]、切断部材の平行方向への移動速度V[m/min]、第二の搬送部材の搬送速度V[m/min]、速度Vに対する速度Vの比(V/V)、速度Vに対する速度Vの比(V/V)を表1に示す。
【0120】
(実施例2、3)
切断部材である線状体の直径を表1に示す値とした以外は、実施例1と同様にハニカム成形体を切断し、ハニカム成形体を作製した。
【0121】
(実施例4、5)
ハニカム成形体の切断後において、第一の搬送部材の搬送速度、切断部材の平行方向への移動速度、第二の搬送部材の搬送速度を表1に示す値に設定した以外は、実施例1と同様にハニカム成形体を切断し、ハニカム成形体を作製した。
【0122】
(比較例1)
ハニカム成形体の切断後における第一の搬送部材の搬送速度、切断部材の平行方向への移動速度、第二の搬送部材の搬送速度を同一の値に設定した以外は、実施例1と同様にハニカム成形体を切断し、ハニカム成形体を作製した。
【0123】
(セラミック成形体の切断面の評価)
実施例及び比較例においてそれぞれ作製したハニカム成形体について、切断面の外周部近傍の形状、セルの変形、欠け又はクラック、付着物の有無を目視にて評価した。
結果を表1に示す。
【0124】
【表1】

【0125】
表1から明らかなように、実施例1〜5において作製したハニカム成形体の切断面においては、セルの変形、欠け又はクラックが発生しておらず、また、付着物等も存在していないことから、ハニカム成形体が良好に切断されたことを確認した。
【0126】
一方、比較例1で作製したハニカム成形体の切断面では、切断面の外周部において若干の変形がみられ、セルの変形、欠け及びクラックがわずかに確認された。また、ハニカム成形体の切断の際の構成材料と思われる付着物が存在していることも確認された。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1(a)は、本発明の成形体切断装置を構成する切断ユニットの実施形態の一例を示す側面図であり、図1(b)は、本発明の成形体切断装置を構成する切断ユニットの実施形態の一例を示す正面図である。
【図2】図2(a)〜(e)は、本発明の成形体切断装置の切断動作を模式的に示す側面図である。
【図3】図3は、ハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図4】図4(a)は、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、そのA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0128】
10 成形体切断装置
11 送出ボビン
12 巻取ボビン
13 大型プーリー
14、15、16、17、18、19 プーリー
20 切断ユニット
21 基盤
22 切断部材支持部
23 シリンダ
25 スライド台
26 ボールネジ
27 モータ
28 切断部材
28a 切込部
30、35、36 セラミック成形体(ハニカム成形体)
31 第一の搬送部材
32 第二の搬送部材
33 通過センサ
40 押出成形機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形された柱状のセラミック成形体を搬送する第一の搬送部材と、
前記第一の搬送部材の移動方向と平行方向に移動するとともに、鉛直方向にも移動し、前記セラミック成形体の内部を通過することにより、前記セラミック成形体を所定の長さに切断する切断部材と、
前記切断部材により所定の長さに切断されたセラミック成形体を搬送する第二の搬送部材とを備え、
前記セラミック成形体を切断する前は、前記第一の搬送部材の搬送速度と、前記切断部材の前記平行方向への移動速度とが略同一であり、
前記セラミック成形体を切断した後は、第一の搬送部材の搬送速度、前記切断部材の前記平行方向への移動速度、及び、前記第二の搬送部材の搬送速度が後者ほど速いことを特徴とする成形体切断装置。
【請求項2】
前記切断部材は、線状体である請求項1に記載の成形体切断装置。
【請求項3】
前記線状体は、金属線の周囲に樹脂が被覆されたものである請求項2に記載の成形体切断装置。
【請求項4】
セラミック成形体を切断する毎に、前記線状体を移動させる構成を備えている請求項2又は3に記載の成形体切断装置。
【請求項5】
前記切断部材を前記平行方向に移動させるボールネジと、前記切断部材を鉛直方向に移動させるシリンダとを備える請求項1〜4のいずれかに記載の成形体切断装置。
【請求項6】
押出成形された柱状のセラミック成形体を、成形体切断装置を用いて所定の長さに切断するセラミック成形体の切断方法であって、
前記成形体切断装置は、押出成形された未切断の柱状のセラミック成形体を搬送する第一の搬送部材と、
前記第一の搬送部材の移動方向と平行方向に移動するとともに、鉛直方向にも移動し、前記セラミック成形体の内部を通過することにより、前記セラミック成形体を所定の長さに切断する切断部材と、
前記切断部材により所定の長さに切断されたセラミック成形体を搬送する第二の搬送部材とを備え、
前記セラミック成形体を切断する前は、前記第一の搬送部材の搬送速度と、前記切断部材の前記平行方向への移動速度とが略同一であり、
前記セラミック成形体を切断した後は、第一の搬送部材の搬送速度、前記切断部材の前記平行方向への移動速度、及び、前記第二の搬送部材の搬送速度が後者ほど速いことを特徴とするセラミック成形体の切断方法。
【請求項7】
前記切断部材は、線状体である請求項6に記載のセラミック成形体の切断方法。
【請求項8】
前記線状体は、金属線の周囲に樹脂が被覆されたものである請求項7に記載のセラミック成形体の切断方法。
【請求項9】
前記成形体切断装置は、セラミック成形体を切断する毎に、前記線状体を移動させる構成を備えている請求項7又は8に記載のセラミック成形体の切断方法。
【請求項10】
前記成形体切断装置は、前記切断部材を前記平行方向に移動させるボールネジと、前記切断部材を鉛直方向に移動させるシリンダとを備える請求項6〜9のいずれかに記載のセラミック成形体の切断方法。
【請求項11】
セラミック原料を押出成形することで、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、前記ハニカム成形体を成形体切断装置を用いて所定の長さに切断して、その後、前記ハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
前記成形体切断装置は、押出成形された未切断の柱状のハニカム成形体を搬送する第一の搬送部材と、
前記第一の搬送部材の移動方向と平行方向に移動するとともに、鉛直方向にも移動し、前記ハニカム成形体の内部を通過することにより、前記ハニカム成形体を所定の長さに切断する切断部材と、
前記切断部材により所定の長さに切断されたハニカム成形体を搬送する第二の搬送部材とを備え、
前記ハニカム成形体を切断する前は、前記第一の搬送部材の搬送速度と、前記切断部材の前記平行方向への移動速度とが略同一であり、
前記ハニカム成形体を切断した後は、第一の搬送部材の搬送速度、前記切断部材の前記平行方向への移動速度、及び、前記第二の搬送部材の搬送速度が後者ほど速いことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項12】
前記切断部材は、線状体である請求項11に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項13】
前記線状体は、金属線の周囲に樹脂が被覆されたものである請求項12に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項14】
前記成形体切断装置は、ハニカム成形体を切断する毎に、前記線状体を移動させる構成を備えている請求項12又は13に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項15】
前記成形体切断装置は、前記切断部材を前記平行方向に移動させるボールネジと、前記切断部材を鉛直方向に移動させるシリンダとを備える請求項11〜14のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−168609(P2008−168609A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99755(P2007−99755)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】