説明

成形品およびその製造

【課題】少なくとも1つの多孔質酸化物材料を含有しかつ固定床中で触媒として使用されるべき十分な機械的安定性を有する成形品を提供する。
【解決手段】次の工程:
(I)少なくとも1つのアルコールおよび水を含有する混合物を、多孔質酸化物材料を含有する混合物またはこの中の2種類以上からなる混合物に添加し、かつ
(II)添加後に工程(I)による混合物を混練し、成形し、乾燥し、かつ焼成することを有する方法によって得ることができる、少なくとも1つの多孔質酸化物材料を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの多孔質酸化物材料を含有する成形品、その製造法、有機化合物の反応、殊に少なくとも1個のC=C二重結合を有する有機化合物のエポキシ化のための該材料の使用に関する。本明細書中に記載された成形品は、高い耐摩耗性および卓越した機械的性質を有している。
【背景技術】
【0002】
触媒活性の材料からなる耐摩耗性の成形品は、数多くの化学的方法、殊に固定床を用いる方法に使用される。従って、この主題に対しては、数多くの刊行物が存在する。しかし、殊にこのような材料の成形品に関連して、多孔質の酸化物材料、例えばゼオライトに基づく触媒の使用に関する刊行物は、著しく少ない。
【0003】
固体の製造に関連して、結合剤、粘度を高める有機化合物および材料をペーストに変換する液体は、一般に触媒活性材料、即ち多孔質の酸化物材料に添加され、この混合物は、混合装置もしくは混練装置または押出機中で圧縮される。次に、生じるプラスチック材料は、殊に押出成型機または押出機を用いて形成され、生じる成形品は、乾燥され、焼成される。
【0004】
多数の無機化合物は、結合剤として使用される。
【0005】
例えば、米国特許第5430000号明細書の記載によれば、二酸化チタンまたは二酸化チタン水和物は、結合剤として使用される。更に、公知技術水準の結合剤の例は、次の通りである:
アルミナ水和物またはアルミニウム含有結合剤(WO94/29408);珪素とアルミニウム化合物との混合物(WO94/13584);
珪素化合物(欧州特許出願公開第0592050号明細書);
クレー鉱物(特開平3−37156号公報);
アルコキシシラン(欧州特許第0102544号明細書)。
【0006】
粘度を高める有機物質は、一般に親水性のポリマー、例えばセルロースまたはポリアクリレートである。
【0007】
更に、出願人自身のドイツ連邦共和国特許出願公開第19623611.8号明細書には、ゼオライト構造を有する圧縮造形法によって成形された酸化触媒ならびにオレフィンおよび水素エポキシドからのエポキシドの製造への酸化触媒の使用が記載されており、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19623609.6号明細書には、ゼオライト構造を有する珪酸チタンまたは珪酸バナジウムを基礎歳、同様に圧縮造形法によって成形され、かつこの公開明細書中に定義された1種以上の貴金属0.01〜30質量%を含有する酸化触媒が記載されている。
【0008】
上記の公知技術水準による全ての刊行物において、水は、ペーストへの材料の変換のための液体として、前記刊行物の記載された成形品の製造のために使用される(ペースト化剤)。
【0009】
しかし、多孔質の酸化物材料、例えばゼオライトおよび殊に珪酸チタンを基礎とする前記成形品は、著しい欠点を有している。
【0010】
即ち、上記刊行物に記載された成形品は、固定床中の触媒として使用するには、不十分な機械的強度を有する。
【0011】
これは、一定の結合剤の二次反応が望ましくない場合には、特に重要であり、この理由のために、このような成形品に十分な強度を付与しうる全種類の結合剤は、他の不利な性質のために使用することができるとはかぎらない。例えば、アルミニウム含有結合剤は、例えば過酸化水素を用いてのプロピレンのエポキシ化のための触媒として使用される珪酸チタンの製造に使用されることはできない。それというのも、アルミニウム含有結合剤によって誘発される酸度は、大規模な環の開裂および副生成物の形成を生じるからである。更に、チタン含有結合剤は、このチタン含有結合剤が成形品中に検出可能な二酸化チタン含量を生じる場合には、使用される過酸化水素の高い分解速度を生じうる。
【0012】
また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を100ppmを超えて含有する結合剤を使用することは、望ましくない。このような結合剤を使用する場合には、例えば珪酸チタンの触媒活性は、著しく不利な影響を及ぼしうる。それというのも、触媒活性Ti中心は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンによって失活されているからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5430000号明細書
【特許文献2】WO94/29408
【特許文献3】WO94/13584
【特許文献4】欧州特許出願公開第0592050号明細書
【特許文献5】特開平3−37156号公報
【特許文献6】欧州特許第0102544号明細書
【特許文献7】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19623611.8号明細書
【特許文献8】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19623609.6号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、少なくとも1つの多孔質酸化物材料を含有しかつ固定床中で触媒として使用されるべき十分な機械的安定性を有する成形品を提供することである。この成形品を触媒反応に使用する場合には、添加された結合剤の二次反応による活性または選択度の損失は、公知技術水準の触媒と比較して回避されるべきである。また、この成形品の製造方法も提供される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
意外なことに、この目的は、少なくとも1つのアルコールおよび水を成形品の製造の際にペースト剤として使用する場合に、少なくとも1つの多孔質材料を含有しかつ実質的に活性および選択度の損失を示さないかまたは全く示さない成形品を得ることができることによって達成されることが見い出された。
【0016】
更に、本明細書中に記載された型の改善された成形品は、金属酸エステルまたはこの中の2種類以上からなる混合物を上記のペースト剤とともに結合剤として使用する場合に得られる。
【0017】
従って、本発明は、少なくとも1つの多孔質酸化物材料を含有しかつ次の工程:
(I)少なくとも1つのアルコールおよび水を含有する混合物を、多孔質酸化物材料またはこの中の2種類以上からなる混合物を含有する混合物に添加し、かつ
(II)添加後に工程(I)による混合物を混練し、成形し、乾燥し、かつ焼成すること
を有する方法によって得ることができる成形品、および次の工程:
(I)少なくとも1つのアルコールおよび水を含有する混合物を、多孔質酸化物材料またはこの中の2種類以上からなる混合物を含有する混合物に添加し、かつ
(II)添加後に工程(I)による混合物を混練し、成形し、乾燥し、かつ焼成すること
からなる少なくとも1つの多孔質酸化物材料を含有する成形品の製造法に関する。
【0018】
粉末の形の多孔質酸化物材料から出発する上記の成形品の新規製造は、少なくとも1つの多孔質酸化物材料、結合剤、少なくとも1つのアルコールおよび水を含有する混合物、必要に応じて粘度を高める1種以上の有機物質およびさらに公知技術水準の添加剤を含有するプラスチック材料の形成によって特徴付けられる。
【0019】
上記成分の十分な混合、殊に混練によって得られるプラスチック材料は、好ましくは押出成形または押出により成形され、次に生じる成形品は、乾燥され、最終的に焼成される。
【0020】
前記材料から出発して本明細書中に記載されたように成形品を製造することができる限り、新規の成形品の製造に使用されることができる多孔質酸化物材料に関連して特に制限はない。
【0021】
多孔質酸化物材料は、好ましくはゼオライト、特に好ましくはチタン、ジルコニウム、ニオブ、鉄またはバナジウムを含有するゼオライト、殊に珪酸チタンである。
【0022】
ゼオライトは、規則的な孔路および微孔を有するかご構造を有している結晶性アルミノ珪酸塩であることが知られている。本発明で使用される微孔の用語は、Pure Appl. Chem.45(1976), 第71頁以降、殊に第79頁に記載の定義に相応し、2nm未満の直径を有する孔を表わす。このようなゼオライトの網目構造は、共通の酸素橋を介して結合されているSiOおよびAlO四面体から構成されている。公知構造の概観は、例えばW.M.MeierおよびD.H.Olsonによって、Atlas of Zeolite Structure Types, Elsevier,第4版,London 1996 に記載されている。
【0023】
アルミニウムを含有せずかつ幾つかのSi(IV)が珪酸塩格子中のTi(IV)としてのチタンによって代替されているゼオライトも存在する。チタンゼオライト、殊にMFI型の結晶構造を有するもの、およびその製造法は、例えば欧州特許出願公開第0311983号明細書または欧州特許出願公開第0405978号明細書に記載されている。珪素およびチタン以外に、このような材料は、付加的な元素、例えばアルミニウム、ジルコニウム、錫、鉄、コバルト、ニッケル、ガリウム、硼素または少量の弗素を含有していてもよい。
【0024】
記載されたゼオライトにおいて、その中のチタンそれ自体の幾つかまたは全部は、バナジウム、ジルコニウム、クロム、ニオブまたは鉄によって代替されていてよい。チタンおよび/またはバナジウム、ジルコニウム、クロム、ニオブまたは鉄と珪素およびチタンおよび/またはバナジウム、ジルコニウム、クロム、ニオブまたは鉄とのモル比は、一般に0.01:1〜0.1:1である。
【0025】
MFI構造を有するチタンゼオライトは、X線回折図中の一定のパターンおよび付加的に約960cm−1での赤外領域(IR)での構造的な振動バンドによって同定可能であることが知られており、したがってアルカリ金属チタン酸塩または結晶性TiO相および無定形TiO相とは異なる。
【0026】
通常、記載されたチタンゼオライト、ジルコニウムゼオライト、クロムゼオライト、ニオブゼオライト、鉄ゼオライトおよびバナジウムゼオライトは、SiO2源、チタン源、ジルコニウム源、クロム源、ニオブ源、鉄源またはバナジウム源、例えば二酸化チタンまたは相応する酸化バナジウム、ジルコニウムアルコラート、酸化クロム、酸化ニオブもしくは酸化鉄およびテンプレートとしての窒素含有有機塩基、例えばテトラプロピルアンモニウムヒドロキシドを有する水性混合物を、必要に応じて塩基性化合物を添加しながら耐圧容器中で高められた温度で数時間または数日間反応させることによって製造され、この場合には、結晶性生成物が形成される。これは、濾別され、洗浄され、乾燥され、高められた温度で燃焼され、有機窒素塩基を除去する。こうして得られた粉末において、若干または全てのチタンまたはジルコニウム、クロム、ニオブ、鉄および/またはバナジウムは、4、5または6の重畳する配位で変動量でゼオライト構造内に存在する。触媒挙動を改善するために、硫酸を含有する過酸化水素溶液を用いて繰り返される洗浄もその後に実施されてよく、その後にチタンまたはジルコニウム、クロム、ニオブ、鉄またはバナジウムゼオライト粉末は、1回再び乾燥されなければならず、燃焼されなければならず;これは、引続きゼオライトをH形から陽イオン形に変換させるために、アルカリ金属化合物で処理されることができる。次に、こうして得られたチタンまたはジルコニウム、クロム、ニオブ、鉄またはバナジウムゼオライト粉末は、処理され、下記のように成形品を生じる。
【0027】
好ましいゼオライトは、チタン、ジルコニウム、クロム、ニオブまたはバナジウムゼオライト、特に好ましくはペンタシルゼオライト構造、殊にX線分析によって指定された型BEA、MOR、TON、MTW、FER、MFI、MEL、CHA、ERI、RHO、GIS、BOG、NON、EMT、HEU、KFI、FAU、DDR、MTT、RUT、LTL、MAZ、GME、NES、OFF、SGT、EUO、MFS、MCM−22またはMFI/MEL混合構造を有するものである。この型のゼオライトは、例えばマイヤー(Meier)およびオルソン(Olson)による上記刊行物中に記載されている。UDT−1、CIT−1、CIT−S、ZSM−48、MCM−48、ZSM−12、フェリエライト、β−ゼオライトまたはモルデナイト構造を有するチタン含有ゼオライトも本発明にとって可能である。このようなゼオライトは、なかんずく米国特許第5430000号明細書およびWO94/29408に記載されており、これらの刊行物は、参考のために本明細書中に記載されている。
【0028】
また、新規の成形品の孔構造に関連して特別な制限はなく、即ち新規の成形品は、マクロ孔、メソ孔、マクロ孔、マクロ孔およびメソ孔、ミクロ孔およびマクロ孔またはミクロ孔、メソ孔およびマクロ孔を有していてよく、メソ孔およびマクロ孔の用語の定義は、同様にPure Appl. Chem.による上記刊行物中の記載に対応し、それぞれ2nmを上廻り約50nmまでの直径、および約50nmを上廻る直径を有する孔を表わす。
【0029】
更に、新規の成形体は、メソ孔を有する珪素含有酸化物および珪素含有キセロゲルを基礎とする材料であることができる。
【0030】
Ti、V、Zr、Sn、Cr、NbまたはFe、殊にTi、V、Zr、Cr、Nbまたはこれらの中の2種類以上からなる混合物をも含有する、メソ孔を有する珪素含有酸化物は、特に好ましい。
【0031】
適当な結合剤は、原理的にこのような目的のためのデータに使用される全ての化合物である。珪素、アルミニウム、硼素、燐、ジルコニウムおよび/またはチタンの化合物、殊に酸化物は、有利に使用される。結合剤として特に重要であるのは、シリカであり、この場合SiOは、シリカゾルとしてかまたはテトラアルコキシシランの形で造形工程に導入されてもよい。更に、マグネシウムならびにベリリウムおよびクレーの酸化物、例えばモンモリロン石、カオリン、ベントナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライトおよびアナウキサイトは、結合剤として使用されてもよい。
【0032】
しかし、金属酸エステルまたはその中の2種以上からなる混合物は、好ましくは新規方法の工程(I)において結合剤として添加される。これらの特別な例は、オルト珪酸エステル、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシチタネート、トリアルコキシアルミネート、テトラアルコキシジルコネートおよびその中の2種以上からなる混合物である。
【0033】
しかし、テトラアルコキシシランは、本発明において結合剤として特に有利に使用される。詳細な例は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランおよびテトラブトキシシラン、類似のテトラアルコキシチタン化合物およびテトラアルコキシジルコニウム化合物ならびにトリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウムおよびトリブトキシアルミニウムであり、この場合テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランは、特に好ましい。
【0034】
新規の成形品は、好ましくはそのつど成形品の全質量に対して約80質量%まで、特に好ましくは約1〜約50質量%、殊に約3〜30質量%の結合剤を含有し、この場合結合剤含量は、形成された金属酸化物の量から計算される。
【0035】
有利に使用される金属酸エステルは、成形品中の生じる金属酸化物含量が成形品の全質量に対して約1〜約80質量%、好ましくは約2〜約50質量%、殊に約3〜約30質量%であるような量で使用される。
【0036】
上記の記載から既に明らかなように、上記結合剤の中の2種類以上からなる混合物は、勿論、使用されてもよい。
【0037】
少なくとも1つのアルコールおよび水を含有する混合物を新規成形品の製造においてペースト化剤として使用することは、本発明にとって本質的なことである。この混合物のアルコール含量は、一般にそのつど混合物の全重量に対して約1〜約80質量%、好ましくは約5〜約70質量%、殊に約10〜約60質量%である。
【0038】
有利に使用されるアルコールは、結合剤として有利に使用される金属酸エステルのアルコール成分に相当するが、しかし、別のアルコールを使用することは、重要なことではない。
【0039】
使用されてもよいアルコールに関連して制限は、全く存在しない、この場合アルコールは、水混和性である。従って、炭素原子数1〜4のモノアルコールおよび水混和性の多価アルコールの双方が使用されてよい。殊に、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第三ブタノールおよびこれらの中の2種以上からなる混合物が使用される。
【0040】
使用される粘度を高める有機物質は、同様に前記目的に適した任意の公知技術水準の物質であってもよい。好ましいものは、有機の、殊に親水性のポリマー、例えばセルロース、澱粉、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリイソブテンおよびポリテトラヒドロフランである。これらの物質は、主に一次粒子を橋かけしかつさらに成形工程および乾燥工程の間に成形品の機械的安定性を保証することによって、混練工程、成形工程および乾燥工程の間にプラスチック材料の形成を促進する。これらの物質は、焼成の間に成形品から除去される。
【0041】
アミンまたはアミン類似化合物、例えばテトラアルキルアンモニウム化合物またはアミノアルコールおよび炭酸塩含有物質、例えば炭酸カルシウムは、他の添加剤として使用されてよい。このような他の添加剤は、欧州特許出願公開第0389041号明細書、欧州特許出願公開第0200260号明細書およびWO 95/19222に記載されており、これらの刊行物は、参考のために本明細書中に記載されている。
【0042】
また、塩基性添加剤の代わりに酸性添加剤を使用することもできる。この酸性添加剤は、なかんずく多孔質の酸化物材料を有する金属酸エステルの迅速な反応を生じうる。成形工程の後に焼成によって燃焼させることができる有機酸性化合物は、好ましい。カルボン酸は、特に好ましい。勿論、上記添加剤の中の2種類以上からなる混合物を配合することもできる。
【0043】
多孔質酸化物材料を含有する材料の成分の添加順序は、重要ではない。まず、結合剤を添加し、次に粘度を高める有機物質および必要に応じて添加剤を添加し、最後に少なくとも1つのアルコールおよび水を含有する混合物を添加するか、或いは結合剤、粘度を高める有機物質および添加剤に関連する順序を入れ替えることができる。
【0044】
粘度を高める有機物質が既に添加されていてもよい多孔質酸化物粉末への結合剤の添加後、一般になお粉末状の材料は、混練機または押出機中で10〜180分間均質化される。概して、約10℃ないしペースト剤の沸点の温度および大気圧または僅かに超大気圧が使用される。次に、残りの成分が添加され、こうして得られた混合物は、押出成形機または押出機中で成形されうるプラスチック材料が形成されるまで混練される。
【0045】
原理的に、混練および成形は、全ての常用の混練装置および成形装置または混練方法および成形方法を用いて行なうことができ、これらの多くは、公知技術水準に開示されており、一般に例えば触媒成形品の製造のために使用される。
【0046】
しかし、既に指摘したように、好ましい方法は、成形が常用の押出機中での押出によって行なわれ、例えば通常約1〜10mm、殊に約2〜5mmの直径を有する押出品を生じるようなものである。このような押出装置は、例えばUllmann's Enzyclopaedie der Technischen Chemie,第4版,第2巻,第295頁以降,1972に記載されている。押出機の使用とともに、押出成形機も好ましくは成形のために使用される。
【0047】
押出成形または押出の終結後に、生じる成形品は、一般に約30〜140℃で乾燥され(大気圧で1〜20時間)、約400〜約800℃で焼成される(大気圧で3〜10時間)。
【0048】
生じる成形品または押出品は、勿論粉砕されてもよい。これら成形品または押出品は、好ましくは粉砕され、0.1〜5mm、殊に0.5〜2mmの粒径を有するグラニュールまたはチップを生じる。
【0049】
これらグラニュールまたはチップならびに別の方法によって得られた成形品は、約0.1mmの最小粒径を有するものよりも微細な画分および粒子を実際に全く含有しない。
【0050】
多孔質の酸化物材料を含有するか或いは新規方法によって製造された本発明による成形品は、改善された機械的安定性を有し、他方、同時に相応する公知技術水準の成形品と比較して活性および選択性を留めている。
【0051】
本発明による成形品または本発明により製造された成形品は、有機分子の触媒変換に使用されてもよい。この型の反応は、例えば酸化、オレフィンのエポキシ化、例えばプロピレンおよびHからの酸化プロピレンの製造、フェノールおよびHからの芳香物質、例えばヒドロキノンのヒドロキシル化、アルコール、アルデヒドおよび酸へのアルカンの変換、異性化反応、例えばアルデヒドへのエポキシドの変換、ならびにこのような成形品、殊に例えばW. Hoelderich, Zeolites: Catalysts for the Synthesis of Organic Compounds, Elsevier, Stud. Surf. Sci. Catal., 49, Amsterdam (1989), pp. 69〜93に記載されているようなゼオライト触媒を用いての刊行物中に記載された他の反応および殊にB. Notari, Stud. Surf. Sci. Catal., 37 (1987), 413〜425による可能な酸化反応である。
【0052】
上記に詳細に記載されたゼオライトは、オレフィン、好ましくは炭素原子数2〜8のもの、特に好ましくはエチレン、プロピレンまたはブテン、殊にプロピレンのエポキシ化に特に好適であり、相応するオレフィン酸化物を生じる。従って、本発明は、殊にプロピレンおよび過酸化水素から出発して酸化プロピレンを製造するための本明細書中に記載された成形品の使用に関する。
【0053】
更に、本発明は、最も一般的な実施態様において、少なくとも1つの多孔質の酸化物材料を含有する成形可能な混合物を製造するために、少なくとも1つのアルコールおよび水をペースト剤として含有する混合物を、好ましくは結合剤としての金属酸エステルとの組合せ物で使用することに関する。
【0054】
実施例
例1
オルト珪酸テトラエチルエステル910gを最初に4 lの四口フラスコ中に入れ、オルトチタン酸テトライソプロピルエステル15gを攪拌(250rpm、パドル撹拌機)しながら30分間に亘って滴下漏斗から添加した。無色の澄明な混合物が形成された。次に、濃度20質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド1600g(アルカリ金属含量10ppm未満)を添加し、攪拌をさらに1時間連続させた。加水分解により形成されたアルコール混合物(約900g)を90〜100℃で留去した。混合物を水3 lで充填させ、その間に僅かに不透明なゾルを5 lのステンレス鋼製の攪拌型オートクレーブに移した。
【0055】
密閉されたオートクレーブ(馬蹄形撹拌機、200rpm)を3℃/分の加熱速度で175℃の反応温度にもたらした。反応を92時間後に完結させた。冷却された反応混合物(白色の懸濁液)を遠心分離し、沈積物をこれが中和するまで水で数回洗浄した。得られた固体を24時間に亘って110℃で乾燥させた(えられた質量298g)。
【0056】
次に、ゼオライト中に残存する型板を550℃で空気の下で5時間焼却させた(焼成損失:14質量%)。 湿式化学分析によれば、純粋な白色の生成物は、1.5質量%のTi含量および100ppm未満の残留アルカリ金属含量を有していた。収率は、使用されたSiOに対して97%であった。結晶は、0.05〜0.25μmの寸法を有し、生成物は、IRで約960cm−1で典型的なバンドを示した。
【0057】
例2
例1により合成された珪酸チタン粉末120gを混練機中で2時間テトラメトキシシラン48gと混合した。次に、ワロセル(Walocel)6g(メチルセルロース)を添加した。次に、ペーストへの変換のために、メタノール25質量%を含有する水/メタノール混合物77mlを添加した。得られた材料を混練機中でさらに2時間圧縮させ、次に押出成形機中で成形し、2mmの成形品を生じた。得られた成形品を120℃で16時間乾燥させ、次に、500℃で5時間焼成した。生じる成形品の横方向の圧縮強さを試験した。横方向の圧縮強さは4.11kgであった。こうして得られた成形品10gを処理し、チップ(粒径1〜2mm)を生じさせ、過酸化水素を用いてのプロペンのエポキシ化において触媒Aとして使用した。
【0058】
比較例1
例1により合成されたチタンシリカライト粉末120gを混練機中で2時間テトラメトキシシラン48gと混合した。次に、ワロセル(Walocel)6g(メチルセルロース)を添加した。次に、ペーストへの変換のために、水80mlを添加した。得られた材料を混練機中でさらに2時間圧縮させ、次に押出成形機中で成形し、2mmの成形品を生じた。得られた成形品を120℃で16時間乾燥させ、次に、500℃で5時間焼成した。生じる成形品の横方向の圧縮強さを試験した。横方向の圧縮強さは3.59kgであった。こうして得られた成形品10gを処理し、チップ(粒径1〜2mm)を生じさせ、過酸化水素を用いてのプロペンのエポキシ化において触媒Bとして使用した。
【0059】
例3
例1により合成されたチタンシリカライト粉末120gをワロセル(Walocel)6g(メチルセルロース)と乾式配合し、混練機中で30分間テトラエトキシシラン48gと混合した。次に、ペーストへの変換のために、エタノール50質量%を含有する水/エタノール75mlを添加した。得られた材料を混練機中でさらに1時間圧縮させ、次に押出成形機中で成形し、2mmの成形品を生じた。得られた成形品を120℃で16時間乾燥させ、次に、500℃で5時間焼成した。生じる成形品の横方向の圧縮強さを試験した。横方向の圧縮強さは3.08kgであった。こうして得られた成形品10gを処理し、チップ(粒径1〜2mm)を生じさせ、過酸化水素を用いてのプロペンのエポキシ化において触媒Cとして使用した。
【0060】
比較例2
例1により合成されたチタンシリカライト粉末120gを混練機中で2時間テトラエトキシシラン48gと混合した。次に、ワロセル(Walocel)6g(メチルセルロース)を添加した。次に、ペーストへの変換のために、水79mlを添加した。得られた材料を混練機中でさらに2時間圧縮させ、次に押出成形機中で成形し、2mmの成形品を生じた。得られた成形品を120℃で16時間乾燥させ、次に、500℃で5時間焼成した。生じる成形品の横方向の圧縮強さを試験した。横方向の圧縮強さは1.92kgであった。こうして得られた成形品10gを処理し、チップ(粒径1〜2mm)を生じさせ、過酸化水素を用いてのプロペンのエポキシ化において触媒Dとして使用した。
【0061】
比較例3
例1により合成されたチタンシリカライト粉末120gを混練機中で2時間ワロセル(Walocel)6g(メチルセルロース)、シリカゾル30g(Ludox AS-40)および水85mlと一緒に緊密にさせた。次に、こうして得られた材料を押出成形機中で成形し、2mmの成形品を生じた。得られた成形品を120℃で16時間乾燥させ、次に、500℃で5時間焼成した。生じる成形品の横方向の圧縮強さを試験した。横方向の圧縮強さは0.89kgであった。こうして得られた成形品10gを処理し、チップ(粒径1〜2mm)を生じさせ、過酸化水素を用いてのプロペンのエポキシ化において触媒Eとして使用した。
【0062】
例4〜8
触媒A〜Eをバスケットインサートおよびガス抜き撹拌機を備えた鋼製オートクレーブ中にそのつど取り付けられる珪酸チタンの質量が0.5gであるようなグラムでの量で取り付けた。このオートクレーブをメタノール100gで充填し、密閉し、漏れを試験した。次に、オートクレーブを40℃に加熱し、液体プロペン11gをオートクレーブ中に定量供給した。次に、過酸化水素水溶液9.0g(溶液の過酸化水素含量30質量%)をHPLCを用いてオートクレーブ中にポンプ給送し、次に供給管路中の過酸化水素残留物をメタノール16mlを用いてオートクレーブ中にフラッシュした。反応溶液の最初の過酸化水素含量は、2.5質量%であった。2時間の反応時間後、オートクレーブを冷却し、圧力を低下させた。液体の排出量をセリウム滴定により過酸化水素に対して試験した。酸化プロピレン含量の分析および測定をガスクロマトグラフィーによって実施した。
【0063】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程:
(I)少なくとも1つのアルコールおよび水を含有する混合物を、多孔質酸化物材料を含有する混合物またはこの中の2種類以上からなる混合物に添加し、かつ
(II)添加後に工程(I)による混合物を混練し、成形し、乾燥し、かつ焼成することを有する方法によって得ることができる、少なくとも1つの多孔質酸化物材料を含有する成形品。
【請求項2】
少なくとも1つの多孔質酸化物材料を含有する成形品を製造する方法において、次の工程:
(I)少なくとも1つのアルコールおよび水を含有する混合物を、多孔質酸化物材料を含有する混合物またはこの中の2種類以上からなる混合物に添加し、かつ
(II)添加後に工程(I)による混合物を混練し、成形し、乾燥し、かつ焼成することを特徴とする、少なくとも1つの多孔質酸化物材料を含有する成形品の製造法。
【請求項3】
金属酸エステルまたはその中の2種類以上からなる混合物を付加的に工程(I)の混合物に添加する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
金属酸エステルをオルト珪酸エステル、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシチタネート、トリアルコキシアルミネート、テトラアルコキジルコネートおよびその中の2種以上からなる混合物からなる群から選択する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
親水性の有機ポリマーまたはその中の2種類以上からなる混合物を付加的に工程(I)中の混合物に添加する、請求項2から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのアルコールおよび水を含有する混合物中のアルコールが金属酸エステル中のアルコールに相当する、請求項3から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(I)で得られた混合物を押出成形または押出によって成形する、請求項2から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
多孔質酸化物材料は、ゼオライト、特にチタン含有、ジルコニウム含有、クロム含有、ニオブ含有、鉄含有またはバナジウム含有のゼオライト、メソ孔を有する珪素含有酸化物または珪素含有キセロゲルおよび殊にチタンシリカライトである、請求項2から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
多孔質酸化物材料を含有する成形品は、ミクロ孔、ミソ孔、マクロ孔、ミクロ孔およびミソ孔、ミクロ孔およびマクロ孔またはミクロ孔、ミソ孔およびマクロ孔を有している、請求項2から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1個のC=C二重結合を有する有機化合物のエポキシ化、芳香族有機化合物のヒドロキシル化またはアルコール、ケトン、アルデヒドおよび酸へのアルカンの変換のための請求項1に記載の成形品もしくは請求項2から9までのいずれか1項に記載の方法によって製造された成形品またはこれらの中の2種類からなる混合物の使用。
【請求項11】
オレフィンのエポキシ化のため、好ましくはプロピレンおよび過酸化水素から出発する酸化プロピレンの製造のための請求項1に記載の成形品または請求項2から9までのいずれか1項に記載の方法によって製造された成形品の使用。
【請求項12】
少なくとも1つの多孔質酸化物材料を含有する成形可能な混合物を製造するための、好ましくは結合剤としての金属酸エステルとの組合せ物での、少なくとも1つのアルコールおよび水をペースト剤として含有する混合物の使用。

【公開番号】特開2012−6835(P2012−6835A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216608(P2011−216608)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【分割の表示】特願平11−501545の分割
【原出願日】平成10年6月5日(1998.6.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】