成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子及びその製造方法、並びにこれを用いた発泡ポリスチレン成形物
本発明は、成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子及びその製造方法、並びにこれを用いた発泡ポリスチレン成形物に関するものである。本発明に係る成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子は、粒子表面に熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、無機系接着剤、蛋白質系接着剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれるバインダーを含むスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子において、該スキン層がメチレンジフェニルジイソシアネートを含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ポリスチレンに係り、特に、発泡ポリスチレン粒子の表面を、無機難燃剤のような機能性添加剤を含むコーティング液でコーティングして形成されたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子を使用することによって、スチーム加熱発泡成形時に発生する成形性の低下及び成形物の品質不良といった問題を改善した、成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子及びその製造方法、並びにこれを用いた発泡ポリスチレン成形物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡ポリスチレン(expanded polystyrene)成形物は、ポリスチレンホモポリマー、またはスチレンモノマーを含むスチレンコポリマーを含む樹脂に、ペンタンやブタンのような発泡体を添加して製造された発泡性ポリスチレン(expandable polystyrene)粒子を、スチームのような熱源を用いて加熱することによって、粒子内に起泡を発生させ、膨脹させながら成形してなる発泡体構造の成形物で、白くて軽いながらも、耐水性、断熱性、吸音性、緩衝性などに優れていることから、包装材料や建築材料などの分野に広く使用されている。
【0003】
発泡性ポリスチレン粒子を、1〜2回の予備発泡及び熟成により予備発泡粒子にした後、これを型に注入してスチーム加熱発泡成形をする従来の発泡ポリスチレンの成形工程は、通常の発泡ポリスチレン成形物を製造する際には、成形において別に問題を発生させていないが、特殊な機能性を有する機能性発泡ポリスチレン成形物を製造する際には、成形においていくつかの問題点を発生させており、これを解決する必要がある。
【0004】
すなわち、発泡ポリスチレンの主要用途の一つである建築用断熱材などに使用するための発泡成形物は、発泡体という特殊性から、樹脂中に一般的な難燃剤や不燃剤を添加するだけでは充分な難燃効果が得られず、難燃性を獲得することが難しかった。
【0005】
これを解消するために、本発明者は、溶液型熱可塑性樹脂系接着剤などのバインダー成分及び多量の無機難燃剤を含むコーティング液を、予備発泡がされた発泡粒子形態のポリスチレン粒子の表面に塗布してスキン層を形成し、これらのスキン層が互いに融着した形態の発泡成形物を製造することによって、このスキン層の融着により形成された難燃性隔壁によって火事の伝播を遮断し、難燃性を発揮できる技術を提案するに至った。
【0006】
この技術は、難燃性のような優れた機能性を発揮するのに非常に有効だったが、コーティング液中に多量の無機添加剤が含まれる場合には成形性が低下するという問題があった。すなわち、難燃性のような高度な機能性を発揮するには、バインダーの役割を担う樹脂の量と略同一の量の無機物難燃剤を添加してコーティング液を製造すべきであるが、これを予備発泡樹脂粒子の表面に塗布してスキン層を形成した後、スチーム加熱発泡成形工程を行う際、多量の無機物添加剤の存在により、スキン層がスチームにより溶脱されるため、スチームの内部侵入が円滑にされない、または、成形時の真空冷却段階で発生する凝縮水を無機添加剤が吸収するため、発泡ポリスチレン粒子同士の接着力が低下するといった問題を生じる。その結果、成形物にクラック、内部融着性の不良、収縮による歪みのような成形不良が多少高くなり、生産性に悪い影響を及ぼすことになる。
【0007】
一方、溶液状の熱可塑性樹脂系接着剤以外のエマルジョン状の熱可塑性樹脂接着剤などの他の種類の接着剤をバインダーとする場合は、成形性に悪影響を及ぼす無機添加剤が含まれていなくても、スチーム加熱発泡成形過程において水分によりスキン層の樹脂成分が溶脱される等、成形性が非常に不良であり、これらの接着剤は、発泡ポリスチレンの成形には適用そのものが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような機能性の付与などを目的にスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子を用いた成形物製造において、スチーム加熱発泡成形工程などの成形過程で発生する問題点を解消するために案出されたもので、その目的は、バインダーの接着力を強化し、かつ投入されたスチームの冷却により発生する凝縮水を效果的に除去することによって、成形物の不良率を下げながら、曲げ強度や耐水性のような成形物の物性が向上するように改良された形態の優れた成形性のスキン層を粒子の表面に有する発泡ポリスチレン粒子及びその製造方法、並びにこれを用いた発泡ポリスチレン成形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来技術における問題点は、スキン層の接着力などを強化して成形性を改善した本発明の下記構成によって解消できる。
【0010】
したがって、本発明に係る成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子は、
粒子表面に熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、無機系接着剤、蛋白質系接着剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれるバインダーを含むスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子において、前記スキン層がメチレンジフェニルジイソシアネートを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明で使われる前記メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)は、アニリンとホルムアルデヒドとが縮合して生成されたジフェニルメタンジアミンに、ホスゲン(COCl2)を処理(ホスゲン化)して得られる物質であり、水分と反応して硬化することによって優れた接着力を有することとなる。MDIは、貯蔵性や使用便宜性を考慮して、ポリメリックMDI(Polymeric MDI)、モディファイMDI(Modified MDI)、モノメリックMDI(Monomeric MDI)、ピュアMDI(prepolymer)のような様々な形態のMDIが製造されているが、本発明では、これら様々な形態のMDIのいずれをも使用可能であり、その形態は特に制限されない。したがって、作業条件や作業環境、安全性、効率性、費用などを考慮して適切な形態のものを選択して使用すればよい。
【0012】
これらのメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)は、発泡ポリスチレン粒子の重量対比0.1乃至30%範囲で使用することが最も好ましい。使用量が0.1重量%未満の場合は、成形性改善効果が微小であり、30重量%を超えると、熱水分解によりポリスチレンを分解させる副産物が発生するため、スチーム加熱発泡成形自体は可能であるものの、発泡ポリスチレンが溶解して収縮現象が発生することがあり、好ましくない。
【0013】
一方、本発明において、前記バインダーとして最も好適な形態は、発泡ポリスチレン粒子の表面への影響が少なく、かつスチーム加熱発泡成形において最も問題の生じない溶液状の熱可塑性樹脂系接着剤であるが、この熱可塑性樹脂は、スチーム加熱発泡成形時の条件を勘案して、発泡ポリスチレンの軟化点及び融点よりも低い温度の軟化点及び融点を有する樹脂を用いることが好ましい。軟化点と融点が発泡ポリスチレンに比べて高い樹脂を使用する場合は、ポリスチレンの適正加熱発泡条件において発泡力低下による融着性が低下し、一方、適正加熱条件を越えると、表面が溶融して外観が悪くなり、また成形サイクルが延びる等の問題点につながる。
【0014】
特に、酢酸ビニル系樹脂を、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、カルボキシ酸類、芳香族類及びハロゲン化炭化水素類から選ばれるいずれか一つまたは2つ以上を混合した形態の溶媒に溶解して酢酸ビニル系樹脂の濃度を3〜80重量%にした熱可塑性樹脂溶液が、発泡ポリスチレン粒子との親和性、無害性、作業性、成形性などの側面において好ましい。
【0015】
前記スキン層には、各種機能性を発現するために、またはスキン層形成時のコーティング液の機能を向上させるために、多様な機能性添加剤を添加することができる。該機能性添加剤は、発泡剤、核剤、潤滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、生物安定剤、充填剤、補強剤、可塑剤、着色剤、耐衝撃剤、難燃剤、帯電防止剤、架橋剤、蛍光増白剤、熱伝導性付与剤、電気伝導性付与剤、透過性調節剤、磁性付与剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、医薬剤、溶媒、硬化剤、吸湿剤、強化剤、香料、抗菌剤のような様々な形態の機能性を付与する物質から適宜選択すればよい。これらの機能性添加剤は、いずれか一つが使用されてもよく、共使用可能な複数のものが使用されてもよく、また、その発現される機能性の種類は特に制限されない。以下、同様である。そして、これらは、有機系の添加剤であってもよく、無機系の添加剤であってもよい。
【0016】
ただし、本発明の構成は、難燃性や不燃性の付与などのために比較的多量の無機系添加剤が添加されたスキン層を形成する場合に、成形性の改善において特に有用である。
【0017】
本発明における発泡ポリスチレン粒子は、スチレンモノマーのホモポリマーの他、スチレンモノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、またはこれらとブレンド可能なポリマーの発泡性粒子を発泡して得られるいずれの発泡粒子も含むものとし、以下同様である。
【0018】
一方、本発明に係る成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法は、
熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、無機系接着剤、蛋白質系接着剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれるバインダーを含むコーティング液を製造する段階と、
前記コーティング液を発泡ポリスチレン粒子の表面に均一に塗布する段階と、
前記塗布されたコーティング液を乾燥する段階と、を含んでなり、粒子の表面にスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子を製造する方法において、
前記スキン層がメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を含むことを特徴とする。
【0019】
前記MDIは、バインダー成分を含むコーティング液に混合して発泡ポリスチレン粒子の表面に塗布してもよく、コーティング液の塗布前または塗布後に別途に塗布してもよい。
一方、本発明に係る発泡ポリスチレン成形物は、上述の優れた成形性を有するスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子をスチーム加熱により発泡成形することによって製造されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る発泡ポリスチレン成形物は、粒子表面に熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、無機系接着剤、蛋白質系接着剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれるバインダーを含むスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子が、前記スキン層同士が互いに融着して粒子間に隔壁形態で存在する発泡ポリスチレン成形物において、前記スキン層にバインダーとメチレンジフェニルジイソシアネートの水分との反応による硬化変性物が含まれ、粒子間の接着力が強化したことを特徴とする。
【0021】
MDIは、上述したように、スチーム加熱発泡成形工程において水分と反応して硬化変性することで接着力を発揮するもので、このようなMDIの硬化変性物の存在によって、発泡ポリスチレン成形物の機械的特性、成形物の形態、クラック発生防止などのような成形性が著しく改善する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る粒子表面にスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子及びこれを用いた発泡ポリスチレン成形物は、スキン層に機能性を発現するための多量の無機添加剤が含まれた場合にも、クラック発生、内部の融着不良、収縮による歪みのような成形不良を画期的に改善することができ、機能性発泡ポリスチレン成形物の生産性と品質を向上させることができる。
【0023】
なお、本発明に係る発泡ポリスチレン粒子を用いてスチーム加熱発泡成形をする場合、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)が水分との反応により硬化して強い接着力を示し、かつ、未反応の一部MDIは、予備発泡したポリスチレン粒子の表面を溶解して表面に凹凸を発生させるため、バインダー樹脂成分のスチームによる溶脱を妨げ、完成した発泡成形物の機械的性質を向上させる等、製品の品質を向上させることができる。
【0024】
本発明に係る発泡ポリスチレン粒子を用いると、多量の無機系機能性添加剤を含まない場合にも、従来の成形性不良によりスチーム加熱発泡成形工程を用いては成形が不可能だった種類のバインダー、例えば、エマルジョン状の熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系・無機系・蛋白質系接着剤などを含むコーティング液を用いても、優れた成形性及び物性を示すポリスチレン発泡成形物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】比較例1で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図2】実施例1で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図3】比較例2で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図4】実施例2で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図5】比較例3で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図6】実施例3で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図7】比較例4で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図8】実施例4で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図9】比較例5で製造されたポリスチレン発泡成形物の内部断面写真である。
【図10】実施例5で製造されたポリスチレン発泡成形物の内部断面写真である。
【図11】比較例6で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図12】実施例6で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図13】比較例7で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図14】実施例7で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例に挙げて本発明をより詳細に説明する。
【0027】
実施例1〜7、比較例1〜7
(A)予備発泡した発泡ポリスチレン粒子の用意
各実施例及び比較例で使用した発泡ポリスチレン粒子は、市販のEPS粒子(発泡性ポリスチレン粒子、シンホ油化社製)を発泡器を用いて103〜105℃の温度で予備発泡させて乾燥した後、サイロで熟成したものを使用した。発泡比率は、平均105倍だった。
【0028】
(B)スキン層の形成
上記の(A)段階で製造された発泡ポリスチレン粒子に、各実施例及び比較例別に、下記表1に示す組成の各コーティング液を、発泡ポリスチレン粒子との重量比を表1のようにして塗布及び乾燥し、スキン層を形成した。ここで、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)にはポリメリックMDI(BASF社製)を用い、これをコーティング液に混合して塗布した。ただし、実施例2は、バインダー及び無機添加剤を含んでいるコーティング液をまず投入して塗布した後、MDIを投入して塗布及び乾燥して、スキン層を形成した。
【0029】
具体的には、容量200リットルのミキサーに、上記の発泡ポリスチレン粒子を2kgずつ入れ、50rpmの速度で撹はんしながら、用意したコーティング液2kgを投入して1分程度続けて撹はんをすることで、発泡ポリスチレン粒子の表面にコーティング液が均一に塗布されるようにした。続いて、コーティング液に使用された溶剤を揮発させるために60℃程度の熱風を吹き込み、溶剤が完全に揮発するまで乾燥をすることで、各発泡ポリスチレン粒子の表面にコーティング液によるスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子を得た。
【0030】
【表1】
【0031】
(C)スチーム加熱発泡成形
上記の各実施例及び比較例で製造された、スキン層の形成された発泡ポリスチレン粒子を型に投入し、110〜120℃の高温の蒸気を注入して型の内部温度を108〜116℃にし、発泡ポリスチレン粒子中に含まれた発泡剤を発泡させることで、発泡成形物を製造した。発泡成形物の密度は、約16kg/m3になった。
【0032】
各発泡成形物をオシレーティング切断器で切断し、その内部の融着状態及び物性を確認した。
【0033】
(D)試験及び評価
各実施例及び比較例で製造された発泡成形物に対して、曲げ強度、耐水性、成形性、融着性を評価し、その結果を表2に表した。
【0034】
曲げ強度は、KS M 3808に規定された曲げ強度測定装置で試験した。保温板4号に明示された15/m3以上を基準とし、この基準以上は優秀、未満は不良と判断した。
【0035】
耐水性は、50℃に設定された恒温水槽に、各発泡成形物から採取した試料の一部を入れ、1時間浸漬した後、曲げ強度測定装置で強度を測定し、上記の曲げ強度と同じ基準にして判断した。
【0036】
成形性は、成形後の製品の状態を数値変化と肉眼で判断した。
【0037】
融着性は、発泡成形品を裁断した後、表面の平滑度を肉眼で判断したものと、曲げ強度測定値とを組み合わせ、総合的に判断した。融着性の判断基準は、外力を加えた時、全体破壊面に対する、発泡粒子同士の断面部分ではなく発泡粒子の内部で破壊された面積を表すもので、今回の試験では、肉眼で発泡粒子同士の間隔と平滑度を確認し、80%未満の製品を不良と評価した。
【0038】
一方、上記の各実施例及び比較例で製造された発泡成形物の形態を撮影し、図1乃至図14にそれぞれ示し、表2に、それぞれの形態に対して評価した結果を記載した。
【0039】
表2及び図面からわかるように、実施例では、バインダー成分の種類にかかわらず、スキン層にMDIが添加されることから、スチーム加熱発泡成形において水分により生じてきた大部分の成形不良の問題が改善され、成形物の形態をはじめとして、曲げ強度、耐水性、成形性及び融着性といったいずれの面においても優れた結果が得られることがわかった。
【0040】
一方、MDIを使用しない比較例においては、バインダー成分の種類によって、評価した各項目別に違いはあるが、表面収縮現象をはじめとして、大部分の発泡成形物において様々な不良の問題が起こることがわかった。
【0041】
したがって、実施例は、バインダー成分の種類にかかわることなく、MDIの添加により、バインダー成分を含むスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子のスチーム加熱発泡成形における成形性と物性を大きく改善できるということが確認された。
【0042】
【表2】
【産業の上利用可能性】
【0043】
本発明は、断熱材などの建築材料に広く使われる発泡ポリスチレン成形物の製造に活用すると、優れた機能性を有しながらも、成形性と外観物性などの側面においても問題の生じない優れた品質の発泡ポリスチレン成形物を製造することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ポリスチレンに係り、特に、発泡ポリスチレン粒子の表面を、無機難燃剤のような機能性添加剤を含むコーティング液でコーティングして形成されたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子を使用することによって、スチーム加熱発泡成形時に発生する成形性の低下及び成形物の品質不良といった問題を改善した、成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子及びその製造方法、並びにこれを用いた発泡ポリスチレン成形物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡ポリスチレン(expanded polystyrene)成形物は、ポリスチレンホモポリマー、またはスチレンモノマーを含むスチレンコポリマーを含む樹脂に、ペンタンやブタンのような発泡体を添加して製造された発泡性ポリスチレン(expandable polystyrene)粒子を、スチームのような熱源を用いて加熱することによって、粒子内に起泡を発生させ、膨脹させながら成形してなる発泡体構造の成形物で、白くて軽いながらも、耐水性、断熱性、吸音性、緩衝性などに優れていることから、包装材料や建築材料などの分野に広く使用されている。
【0003】
発泡性ポリスチレン粒子を、1〜2回の予備発泡及び熟成により予備発泡粒子にした後、これを型に注入してスチーム加熱発泡成形をする従来の発泡ポリスチレンの成形工程は、通常の発泡ポリスチレン成形物を製造する際には、成形において別に問題を発生させていないが、特殊な機能性を有する機能性発泡ポリスチレン成形物を製造する際には、成形においていくつかの問題点を発生させており、これを解決する必要がある。
【0004】
すなわち、発泡ポリスチレンの主要用途の一つである建築用断熱材などに使用するための発泡成形物は、発泡体という特殊性から、樹脂中に一般的な難燃剤や不燃剤を添加するだけでは充分な難燃効果が得られず、難燃性を獲得することが難しかった。
【0005】
これを解消するために、本発明者は、溶液型熱可塑性樹脂系接着剤などのバインダー成分及び多量の無機難燃剤を含むコーティング液を、予備発泡がされた発泡粒子形態のポリスチレン粒子の表面に塗布してスキン層を形成し、これらのスキン層が互いに融着した形態の発泡成形物を製造することによって、このスキン層の融着により形成された難燃性隔壁によって火事の伝播を遮断し、難燃性を発揮できる技術を提案するに至った。
【0006】
この技術は、難燃性のような優れた機能性を発揮するのに非常に有効だったが、コーティング液中に多量の無機添加剤が含まれる場合には成形性が低下するという問題があった。すなわち、難燃性のような高度な機能性を発揮するには、バインダーの役割を担う樹脂の量と略同一の量の無機物難燃剤を添加してコーティング液を製造すべきであるが、これを予備発泡樹脂粒子の表面に塗布してスキン層を形成した後、スチーム加熱発泡成形工程を行う際、多量の無機物添加剤の存在により、スキン層がスチームにより溶脱されるため、スチームの内部侵入が円滑にされない、または、成形時の真空冷却段階で発生する凝縮水を無機添加剤が吸収するため、発泡ポリスチレン粒子同士の接着力が低下するといった問題を生じる。その結果、成形物にクラック、内部融着性の不良、収縮による歪みのような成形不良が多少高くなり、生産性に悪い影響を及ぼすことになる。
【0007】
一方、溶液状の熱可塑性樹脂系接着剤以外のエマルジョン状の熱可塑性樹脂接着剤などの他の種類の接着剤をバインダーとする場合は、成形性に悪影響を及ぼす無機添加剤が含まれていなくても、スチーム加熱発泡成形過程において水分によりスキン層の樹脂成分が溶脱される等、成形性が非常に不良であり、これらの接着剤は、発泡ポリスチレンの成形には適用そのものが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような機能性の付与などを目的にスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子を用いた成形物製造において、スチーム加熱発泡成形工程などの成形過程で発生する問題点を解消するために案出されたもので、その目的は、バインダーの接着力を強化し、かつ投入されたスチームの冷却により発生する凝縮水を效果的に除去することによって、成形物の不良率を下げながら、曲げ強度や耐水性のような成形物の物性が向上するように改良された形態の優れた成形性のスキン層を粒子の表面に有する発泡ポリスチレン粒子及びその製造方法、並びにこれを用いた発泡ポリスチレン成形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来技術における問題点は、スキン層の接着力などを強化して成形性を改善した本発明の下記構成によって解消できる。
【0010】
したがって、本発明に係る成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子は、
粒子表面に熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、無機系接着剤、蛋白質系接着剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれるバインダーを含むスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子において、前記スキン層がメチレンジフェニルジイソシアネートを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明で使われる前記メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)は、アニリンとホルムアルデヒドとが縮合して生成されたジフェニルメタンジアミンに、ホスゲン(COCl2)を処理(ホスゲン化)して得られる物質であり、水分と反応して硬化することによって優れた接着力を有することとなる。MDIは、貯蔵性や使用便宜性を考慮して、ポリメリックMDI(Polymeric MDI)、モディファイMDI(Modified MDI)、モノメリックMDI(Monomeric MDI)、ピュアMDI(prepolymer)のような様々な形態のMDIが製造されているが、本発明では、これら様々な形態のMDIのいずれをも使用可能であり、その形態は特に制限されない。したがって、作業条件や作業環境、安全性、効率性、費用などを考慮して適切な形態のものを選択して使用すればよい。
【0012】
これらのメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)は、発泡ポリスチレン粒子の重量対比0.1乃至30%範囲で使用することが最も好ましい。使用量が0.1重量%未満の場合は、成形性改善効果が微小であり、30重量%を超えると、熱水分解によりポリスチレンを分解させる副産物が発生するため、スチーム加熱発泡成形自体は可能であるものの、発泡ポリスチレンが溶解して収縮現象が発生することがあり、好ましくない。
【0013】
一方、本発明において、前記バインダーとして最も好適な形態は、発泡ポリスチレン粒子の表面への影響が少なく、かつスチーム加熱発泡成形において最も問題の生じない溶液状の熱可塑性樹脂系接着剤であるが、この熱可塑性樹脂は、スチーム加熱発泡成形時の条件を勘案して、発泡ポリスチレンの軟化点及び融点よりも低い温度の軟化点及び融点を有する樹脂を用いることが好ましい。軟化点と融点が発泡ポリスチレンに比べて高い樹脂を使用する場合は、ポリスチレンの適正加熱発泡条件において発泡力低下による融着性が低下し、一方、適正加熱条件を越えると、表面が溶融して外観が悪くなり、また成形サイクルが延びる等の問題点につながる。
【0014】
特に、酢酸ビニル系樹脂を、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、カルボキシ酸類、芳香族類及びハロゲン化炭化水素類から選ばれるいずれか一つまたは2つ以上を混合した形態の溶媒に溶解して酢酸ビニル系樹脂の濃度を3〜80重量%にした熱可塑性樹脂溶液が、発泡ポリスチレン粒子との親和性、無害性、作業性、成形性などの側面において好ましい。
【0015】
前記スキン層には、各種機能性を発現するために、またはスキン層形成時のコーティング液の機能を向上させるために、多様な機能性添加剤を添加することができる。該機能性添加剤は、発泡剤、核剤、潤滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、生物安定剤、充填剤、補強剤、可塑剤、着色剤、耐衝撃剤、難燃剤、帯電防止剤、架橋剤、蛍光増白剤、熱伝導性付与剤、電気伝導性付与剤、透過性調節剤、磁性付与剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、医薬剤、溶媒、硬化剤、吸湿剤、強化剤、香料、抗菌剤のような様々な形態の機能性を付与する物質から適宜選択すればよい。これらの機能性添加剤は、いずれか一つが使用されてもよく、共使用可能な複数のものが使用されてもよく、また、その発現される機能性の種類は特に制限されない。以下、同様である。そして、これらは、有機系の添加剤であってもよく、無機系の添加剤であってもよい。
【0016】
ただし、本発明の構成は、難燃性や不燃性の付与などのために比較的多量の無機系添加剤が添加されたスキン層を形成する場合に、成形性の改善において特に有用である。
【0017】
本発明における発泡ポリスチレン粒子は、スチレンモノマーのホモポリマーの他、スチレンモノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、またはこれらとブレンド可能なポリマーの発泡性粒子を発泡して得られるいずれの発泡粒子も含むものとし、以下同様である。
【0018】
一方、本発明に係る成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法は、
熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、無機系接着剤、蛋白質系接着剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれるバインダーを含むコーティング液を製造する段階と、
前記コーティング液を発泡ポリスチレン粒子の表面に均一に塗布する段階と、
前記塗布されたコーティング液を乾燥する段階と、を含んでなり、粒子の表面にスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子を製造する方法において、
前記スキン層がメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を含むことを特徴とする。
【0019】
前記MDIは、バインダー成分を含むコーティング液に混合して発泡ポリスチレン粒子の表面に塗布してもよく、コーティング液の塗布前または塗布後に別途に塗布してもよい。
一方、本発明に係る発泡ポリスチレン成形物は、上述の優れた成形性を有するスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子をスチーム加熱により発泡成形することによって製造されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る発泡ポリスチレン成形物は、粒子表面に熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、無機系接着剤、蛋白質系接着剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれるバインダーを含むスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子が、前記スキン層同士が互いに融着して粒子間に隔壁形態で存在する発泡ポリスチレン成形物において、前記スキン層にバインダーとメチレンジフェニルジイソシアネートの水分との反応による硬化変性物が含まれ、粒子間の接着力が強化したことを特徴とする。
【0021】
MDIは、上述したように、スチーム加熱発泡成形工程において水分と反応して硬化変性することで接着力を発揮するもので、このようなMDIの硬化変性物の存在によって、発泡ポリスチレン成形物の機械的特性、成形物の形態、クラック発生防止などのような成形性が著しく改善する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る粒子表面にスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子及びこれを用いた発泡ポリスチレン成形物は、スキン層に機能性を発現するための多量の無機添加剤が含まれた場合にも、クラック発生、内部の融着不良、収縮による歪みのような成形不良を画期的に改善することができ、機能性発泡ポリスチレン成形物の生産性と品質を向上させることができる。
【0023】
なお、本発明に係る発泡ポリスチレン粒子を用いてスチーム加熱発泡成形をする場合、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)が水分との反応により硬化して強い接着力を示し、かつ、未反応の一部MDIは、予備発泡したポリスチレン粒子の表面を溶解して表面に凹凸を発生させるため、バインダー樹脂成分のスチームによる溶脱を妨げ、完成した発泡成形物の機械的性質を向上させる等、製品の品質を向上させることができる。
【0024】
本発明に係る発泡ポリスチレン粒子を用いると、多量の無機系機能性添加剤を含まない場合にも、従来の成形性不良によりスチーム加熱発泡成形工程を用いては成形が不可能だった種類のバインダー、例えば、エマルジョン状の熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系・無機系・蛋白質系接着剤などを含むコーティング液を用いても、優れた成形性及び物性を示すポリスチレン発泡成形物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】比較例1で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図2】実施例1で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図3】比較例2で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図4】実施例2で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図5】比較例3で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図6】実施例3で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図7】比較例4で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図8】実施例4で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図9】比較例5で製造されたポリスチレン発泡成形物の内部断面写真である。
【図10】実施例5で製造されたポリスチレン発泡成形物の内部断面写真である。
【図11】比較例6で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図12】実施例6で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図13】比較例7で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【図14】実施例7で製造されたポリスチレン発泡成形物の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例に挙げて本発明をより詳細に説明する。
【0027】
実施例1〜7、比較例1〜7
(A)予備発泡した発泡ポリスチレン粒子の用意
各実施例及び比較例で使用した発泡ポリスチレン粒子は、市販のEPS粒子(発泡性ポリスチレン粒子、シンホ油化社製)を発泡器を用いて103〜105℃の温度で予備発泡させて乾燥した後、サイロで熟成したものを使用した。発泡比率は、平均105倍だった。
【0028】
(B)スキン層の形成
上記の(A)段階で製造された発泡ポリスチレン粒子に、各実施例及び比較例別に、下記表1に示す組成の各コーティング液を、発泡ポリスチレン粒子との重量比を表1のようにして塗布及び乾燥し、スキン層を形成した。ここで、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)にはポリメリックMDI(BASF社製)を用い、これをコーティング液に混合して塗布した。ただし、実施例2は、バインダー及び無機添加剤を含んでいるコーティング液をまず投入して塗布した後、MDIを投入して塗布及び乾燥して、スキン層を形成した。
【0029】
具体的には、容量200リットルのミキサーに、上記の発泡ポリスチレン粒子を2kgずつ入れ、50rpmの速度で撹はんしながら、用意したコーティング液2kgを投入して1分程度続けて撹はんをすることで、発泡ポリスチレン粒子の表面にコーティング液が均一に塗布されるようにした。続いて、コーティング液に使用された溶剤を揮発させるために60℃程度の熱風を吹き込み、溶剤が完全に揮発するまで乾燥をすることで、各発泡ポリスチレン粒子の表面にコーティング液によるスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子を得た。
【0030】
【表1】
【0031】
(C)スチーム加熱発泡成形
上記の各実施例及び比較例で製造された、スキン層の形成された発泡ポリスチレン粒子を型に投入し、110〜120℃の高温の蒸気を注入して型の内部温度を108〜116℃にし、発泡ポリスチレン粒子中に含まれた発泡剤を発泡させることで、発泡成形物を製造した。発泡成形物の密度は、約16kg/m3になった。
【0032】
各発泡成形物をオシレーティング切断器で切断し、その内部の融着状態及び物性を確認した。
【0033】
(D)試験及び評価
各実施例及び比較例で製造された発泡成形物に対して、曲げ強度、耐水性、成形性、融着性を評価し、その結果を表2に表した。
【0034】
曲げ強度は、KS M 3808に規定された曲げ強度測定装置で試験した。保温板4号に明示された15/m3以上を基準とし、この基準以上は優秀、未満は不良と判断した。
【0035】
耐水性は、50℃に設定された恒温水槽に、各発泡成形物から採取した試料の一部を入れ、1時間浸漬した後、曲げ強度測定装置で強度を測定し、上記の曲げ強度と同じ基準にして判断した。
【0036】
成形性は、成形後の製品の状態を数値変化と肉眼で判断した。
【0037】
融着性は、発泡成形品を裁断した後、表面の平滑度を肉眼で判断したものと、曲げ強度測定値とを組み合わせ、総合的に判断した。融着性の判断基準は、外力を加えた時、全体破壊面に対する、発泡粒子同士の断面部分ではなく発泡粒子の内部で破壊された面積を表すもので、今回の試験では、肉眼で発泡粒子同士の間隔と平滑度を確認し、80%未満の製品を不良と評価した。
【0038】
一方、上記の各実施例及び比較例で製造された発泡成形物の形態を撮影し、図1乃至図14にそれぞれ示し、表2に、それぞれの形態に対して評価した結果を記載した。
【0039】
表2及び図面からわかるように、実施例では、バインダー成分の種類にかかわらず、スキン層にMDIが添加されることから、スチーム加熱発泡成形において水分により生じてきた大部分の成形不良の問題が改善され、成形物の形態をはじめとして、曲げ強度、耐水性、成形性及び融着性といったいずれの面においても優れた結果が得られることがわかった。
【0040】
一方、MDIを使用しない比較例においては、バインダー成分の種類によって、評価した各項目別に違いはあるが、表面収縮現象をはじめとして、大部分の発泡成形物において様々な不良の問題が起こることがわかった。
【0041】
したがって、実施例は、バインダー成分の種類にかかわることなく、MDIの添加により、バインダー成分を含むスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子のスチーム加熱発泡成形における成形性と物性を大きく改善できるということが確認された。
【0042】
【表2】
【産業の上利用可能性】
【0043】
本発明は、断熱材などの建築材料に広く使われる発泡ポリスチレン成形物の製造に活用すると、優れた機能性を有しながらも、成形性と外観物性などの側面においても問題の生じない優れた品質の発泡ポリスチレン成形物を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子であって、
該粒子表面にスキン層が形成されてなり、
前記スキン層が、熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、無機系接着剤、蛋白質系接着剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれるバインダーを含んでなり、
前記スキン層が、メチレンジフェニルジイソシアネートを含むことを特徴とする、発泡ポリスチレン粒子。
【請求項2】
前記メチレンジフェニルジイソシアネートが、発泡ポリスチレン粒子の重量を基準に、0.1乃至30重量%の量で含まれたことを特徴とする、請求項1に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子。
【請求項3】
前記バインダーが、発泡ポリスチレンに比べて低い軟化点及び融点を有する熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂系接着剤であることを特徴とする、請求項1に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子。
【請求項4】
前記バインダーが、酢酸ビニル系樹脂を、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、カルボキシ酸類、芳香族類及びハロゲン化炭化水素類から選ばれるいずれか一つ、または2つ以上を混合した形態の溶媒に溶解して、酢酸ビニル系樹脂の濃度を3〜80重量%にした形態の熱可塑性樹脂溶液であることを特徴とする、請求項3に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子。
【請求項5】
前記スキン層が機能性添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子。
【請求項6】
前記機能性添加剤は、発泡剤、核剤、潤滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、生物安定剤、充填剤、補強剤、可塑剤、着色剤、耐衝撃剤、難燃剤、帯電防止剤、架橋剤、蛍光増白剤、熱伝導性付与剤、電気伝導性付与剤、透過性調節剤、磁性付与剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、医薬剤、溶媒、硬化剤、吸湿剤、強化剤、香料、抗菌剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれることを特徴とする、請求項5に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子。
【請求項7】
熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、無機系接着剤、蛋白質系接着剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれるバインダーを含むコーティング液を製造する段階と、
前記コーティング液を発泡ポリスチレン粒子の表面に均一に塗布する段階と、
前記塗布されたコーティング液を乾燥する段階と、を含んでなる、粒子の表面にスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子を製造する方法であって、
前記スキン層にメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を含ませることを特徴とする、成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項8】
前記メチレンジフェニルジイソシアネートは、バインダー成分を含むコーティング液に混合して発泡ポリスチレン粒子の表面に塗布したり、コーティング液の塗布前または塗布後に別途に塗布することを特徴とする、請求項7に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項9】
前記メチレンジフェニルジイソシアネートは、発泡ポリスチレン粒子の重量を基準に、0.1乃至30重量%の量で使われることを特徴とする、請求項7に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項10】
前記コーティング液が機能性添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項11】
前記機能性添加剤は、発泡剤、核剤、潤滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、生物安定剤、充填剤、補強剤、可塑剤、着色剤、耐衝撃剤、難燃剤、帯電防止剤、架橋剤、蛍光増白剤、熱伝導性付与剤、電気伝導性付与剤、透過性調節剤、磁性付与剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、医薬剤、溶媒、硬化剤、吸湿剤、強化剤、香料、抗菌剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれることを特徴とする、請求項10に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項12】
前記バインダーは、発泡ポリスチレンに比べて低い軟化点及び融点を有する熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂系接着剤であることを特徴とする、請求項7に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂系接着剤は、前記熱可塑性樹脂が水、アルコール類、エステル類、ケトン類、カルボキシ酸類、芳香族類、ハロゲン化炭化水素類及びこれらの混合物で構成された群から選ばれる溶媒に溶解された形態であることを特徴とする、請求項12に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載のスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子をスチーム加熱により発泡成形してなることを特徴とする、発泡ポリスチレン成形物。
【請求項15】
粒子表面に、熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、無機系接着剤、蛋白質系接着剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれるバインダーを含むスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子が、前記スキン層同士が互いに融着して粒子間に隔壁形態で存在する発泡ポリスチレン成形物であって、
前記スキン層に、バインダーとメチレンジフェニルジイソシアネートの水分との反応による硬化変性物が含まれ、粒子間の接着力が強化されたことを特徴とする、発泡ポリスチレン成形物。
【請求項16】
前記スキン層には、発泡剤、核剤、潤滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、生物安定剤、充填剤、補強剤、可塑剤、着色剤、耐衝撃剤、難燃剤、帯電防止剤、架橋剤、蛍光増白剤、熱伝導性付与剤、電気伝導性付与剤、透過性調節剤、磁性付与剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、医薬剤、溶媒、硬化剤、吸湿剤、強化剤、香料、抗菌剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれる機能性添加剤がさらに含まれていることを特徴とする、請求項15に記載の発泡ポリスチレン成形物。
【請求項17】
前記機能性添加剤は、無機物であることを特徴とする、請求項16に記載の発泡ポリスチレン成形物。
【請求項1】
成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子であって、
該粒子表面にスキン層が形成されてなり、
前記スキン層が、熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、無機系接着剤、蛋白質系接着剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれるバインダーを含んでなり、
前記スキン層が、メチレンジフェニルジイソシアネートを含むことを特徴とする、発泡ポリスチレン粒子。
【請求項2】
前記メチレンジフェニルジイソシアネートが、発泡ポリスチレン粒子の重量を基準に、0.1乃至30重量%の量で含まれたことを特徴とする、請求項1に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子。
【請求項3】
前記バインダーが、発泡ポリスチレンに比べて低い軟化点及び融点を有する熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂系接着剤であることを特徴とする、請求項1に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子。
【請求項4】
前記バインダーが、酢酸ビニル系樹脂を、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、カルボキシ酸類、芳香族類及びハロゲン化炭化水素類から選ばれるいずれか一つ、または2つ以上を混合した形態の溶媒に溶解して、酢酸ビニル系樹脂の濃度を3〜80重量%にした形態の熱可塑性樹脂溶液であることを特徴とする、請求項3に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子。
【請求項5】
前記スキン層が機能性添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子。
【請求項6】
前記機能性添加剤は、発泡剤、核剤、潤滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、生物安定剤、充填剤、補強剤、可塑剤、着色剤、耐衝撃剤、難燃剤、帯電防止剤、架橋剤、蛍光増白剤、熱伝導性付与剤、電気伝導性付与剤、透過性調節剤、磁性付与剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、医薬剤、溶媒、硬化剤、吸湿剤、強化剤、香料、抗菌剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれることを特徴とする、請求項5に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子。
【請求項7】
熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、無機系接着剤、蛋白質系接着剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれるバインダーを含むコーティング液を製造する段階と、
前記コーティング液を発泡ポリスチレン粒子の表面に均一に塗布する段階と、
前記塗布されたコーティング液を乾燥する段階と、を含んでなる、粒子の表面にスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子を製造する方法であって、
前記スキン層にメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を含ませることを特徴とする、成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項8】
前記メチレンジフェニルジイソシアネートは、バインダー成分を含むコーティング液に混合して発泡ポリスチレン粒子の表面に塗布したり、コーティング液の塗布前または塗布後に別途に塗布することを特徴とする、請求項7に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項9】
前記メチレンジフェニルジイソシアネートは、発泡ポリスチレン粒子の重量を基準に、0.1乃至30重量%の量で使われることを特徴とする、請求項7に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項10】
前記コーティング液が機能性添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項11】
前記機能性添加剤は、発泡剤、核剤、潤滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、生物安定剤、充填剤、補強剤、可塑剤、着色剤、耐衝撃剤、難燃剤、帯電防止剤、架橋剤、蛍光増白剤、熱伝導性付与剤、電気伝導性付与剤、透過性調節剤、磁性付与剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、医薬剤、溶媒、硬化剤、吸湿剤、強化剤、香料、抗菌剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれることを特徴とする、請求項10に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項12】
前記バインダーは、発泡ポリスチレンに比べて低い軟化点及び融点を有する熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂系接着剤であることを特徴とする、請求項7に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂系接着剤は、前記熱可塑性樹脂が水、アルコール類、エステル類、ケトン類、カルボキシ酸類、芳香族類、ハロゲン化炭化水素類及びこれらの混合物で構成された群から選ばれる溶媒に溶解された形態であることを特徴とする、請求項12に記載の成形性に優れたスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載のスキン層を有する発泡ポリスチレン粒子をスチーム加熱により発泡成形してなることを特徴とする、発泡ポリスチレン成形物。
【請求項15】
粒子表面に、熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、無機系接着剤、蛋白質系接着剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれるバインダーを含むスキン層が形成された発泡ポリスチレン粒子が、前記スキン層同士が互いに融着して粒子間に隔壁形態で存在する発泡ポリスチレン成形物であって、
前記スキン層に、バインダーとメチレンジフェニルジイソシアネートの水分との反応による硬化変性物が含まれ、粒子間の接着力が強化されたことを特徴とする、発泡ポリスチレン成形物。
【請求項16】
前記スキン層には、発泡剤、核剤、潤滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、生物安定剤、充填剤、補強剤、可塑剤、着色剤、耐衝撃剤、難燃剤、帯電防止剤、架橋剤、蛍光増白剤、熱伝導性付与剤、電気伝導性付与剤、透過性調節剤、磁性付与剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、医薬剤、溶媒、硬化剤、吸湿剤、強化剤、香料、抗菌剤及びこれらの混合物で構成された群から選ばれる機能性添加剤がさらに含まれていることを特徴とする、請求項15に記載の発泡ポリスチレン成形物。
【請求項17】
前記機能性添加剤は、無機物であることを特徴とする、請求項16に記載の発泡ポリスチレン成形物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−525464(P2012−525464A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508389(P2012−508389)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002397
【国際公開番号】WO2010/128760
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(506265015)ポルマ、カンパニー、リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】POLMA CO., LTD.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002397
【国際公開番号】WO2010/128760
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(506265015)ポルマ、カンパニー、リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】POLMA CO., LTD.
【Fターム(参考)】
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