説明

成形用材料、それを用いた成形品およびその製造方法

【課題】散乱や着色の影響がほとんどなく透明で、かつ高い機械特性と低熱膨張係数を有する成形用材料、それを用いた成形品および成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、重合性官能部位を有するシルセスキオキサン化合物とシリカ微粒子を含有する成形用材料において、前記シルセスキオキサン化合物と前記シリカ微粒子の合計の含有量が95重量%以上であり、かつ前記シリカ微粒子の平均粒子径が1nm以上100nm以下である成形用材料。前記重合性官能部位がアクリル、メタクリル、ビニルまたはエポキシから選ばれる基からなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用材料、それを用いた成形品および成形品の製造方法に関する。特に本発明は、例えばレンズ、フィルター、光ファイバー、ミラー、屈折光学素子、そして回折光学素子等に適用可能な成形用透明材料、それを用いた成形品および成形品の製造方法に関する。また本発明は有機−無機ハイブリッド材料に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な樹脂材料は光ファイバーや光学レンズなどの光学材料として幅広い分野で用いられている。このような透明な樹脂材料の代表としてはポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィンなどがよく知られている。
【0003】
しかし、これらの樹脂材料はガラス材料と比較して機械特性が低く熱膨張係数が高い。レンズなどの光学部材に用いる場合、熱膨張係数が高いことは温度変化に対する屈折率の変化が大きいことを意味する。したがって樹脂材料をバルク体として用いることは難しく、樹脂材料は限定的な分野でしか用いられていなかった。
【0004】
一般的に、樹脂材料の機械特性の向上や熱膨張係数の低下を図る場合、材料に含まれる無機成分比を増加させることが有効である。材料の無機成分比を増加させるためには、樹脂に無機微粒子などの充填材を添加する方法が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
また、無機成分を含む高分子材料として、有機成分と無機成分の骨格が直接結合している材料も多く提案されている(特許文献3、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2003−147090号公報
【特許文献2】特開2005−055852号公報
【特許文献3】特開平11−255883号公報
【特許文献4】特開2005−298575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが透明樹脂材料に対して無機充填剤を添加・分散させた場合、樹脂材料と無機充填材の屈折率差により散乱が発生し、材料全体として透明性を損なう可能性がある。散乱は樹脂材料と無機充填材との屈折率差が大きいほど発生しやすいという特徴があり、一般的に無機充填材は樹脂材料よりも屈折率が高いことがほとんどである。特に酸化ジルコニウムや酸化チタンなどの無機充填材では屈折率が2を大きく超える。代表的な透明樹脂材料であるポリアクリルやポリカーボネート、ポリシクロオレフィンなどの屈折率はおよそ1.5から1.6の値であるため、屈折率差による散乱は必然的に大きくなる。屈折率差による散乱を抑えるためには、樹脂材料と無機充填材の屈折率差をより小さくすることが望ましく、従って樹脂材料と無機充填材の組み合わせを考慮する必要がある。
【0007】
また散乱は粒子径が大きいほど発生しやすい。散乱は粒子径の増大に従って階乗的に大きくなるため、散乱を抑えるためには粒子径を小さくすることが有効である。一方で、樹脂材料中の無機充填材の濃度を高めるためには、添加する微粒子の粒子径が大きいほうが有利である。そのため、散乱の抑制と無機成分比の増大をともに満たすことは困難であった。
【0008】
さらに多くの無機充填材は可視域に吸収をもっているため、樹脂材料に高い充填率で添加した場合は着色の要因になるという問題もある。
上記に述べた散乱と着色のデメリットを考えた場合、従来の方法では樹脂材料の機械特性や熱膨張係数を改善できるほど十分な量の無機充填材を添加することができないのが実際である。
【0009】
一方、有機成分と無機成分を直接結合させた有機−無機ハイブリッド材料は、材料中の無機成分比を高め、機械特性や耐熱性を向上させるために用いられている。これまで様々な有機−無機ハイブリッド材料が提案されているが、機械特性の向上や熱膨張係数の低減を図るためには無機成分比をより高くすることが望ましい。
【0010】
無機成分比を向上させるためには、有機−無機ハイブリッド材料に無機微粒子を添加することが考えられる。例えば、特開2005−331708号公報では有機−無機ハイブリッド材料であるシルセスキオキサン化合物に酸化タンタルを添加している。しかし酸化タンタルの屈折率はおよそ2.1と高く、シルセスキオキサン化合物との屈折率差にともなう散乱が発生し、さらには酸化タンタルによる着色という問題が残っていた。
【0011】
本発明は、この様な従来技術に鑑みてなされたものであり、散乱や着色の影響がほとんどなく透明で、かつ高い機械特性と低熱膨張係数を有する成形用材料、それを用いた成形品および成形品の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する成形用材料は、少なくとも、重合性官能部位を有するシルセスキオキサン化合物とシリカ微粒子を含有する成形用材料において、前記シルセスキオキサン化合物と前記シリカ微粒子の合計の含有量が95重量%以上であり、かつ前記シリカ微粒子の平均粒子径が1nm以上100nm以下であることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する成形品は、上記の成形用材料からなることを特徴とする。
上記課題を解決する成形品の製造方法は、上記の成形用材料を型とガラス板の空隙に充填した後、光を照射することにより前記成形用材料を硬化させて前記ガラス板と一体化し、一体化した成形用材料とガラス板を前記型から剥離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による重合性官能部位を有するシルセスキオキサン化合物とシリカ微粒子を含有する成形用材料によれば、散乱や着色の影響がほとんどなく透明で、かつ高い機械特性と低熱膨張係数を有する成形品を作製することが可能である。
【0015】
本発明では、ベース材料として有機−無機ハイブリッド材料であるシルセスキオキサン化合物を、無機充填材としてシリカ微粒子を添加している。そのため、ベース材料と微粒子の構造が似ているため、ほぼ同等の屈折率を有する。その結果、微粒子起因の散乱が小さく透明性の高い樹脂材料を得ることができる。
【0016】
またシルセスキオキサン化合物中に存在するシロキサン構造よりも粒子径の大きいシリカ微粒子を添加することで、透明材料中により多くの無機成分を含有させることができる。その結果、低熱膨張係数でかつ優れた機械特性を有する樹脂材料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る成形用材料は、少なくとも、重合性官能部位を有するシルセスキオキサン化合物とシリカ微粒子を含有する成形用材料において、前記シルセスキオキサン化合物と前記シリカ微粒子の合計の含有量が95重量%以上であり、かつ前記シリカ微粒子の平均粒子径が1nm以上100nm以下であることを特徴とする。
【0018】
前記重合性官能部位がアクリル、メタクリル、ビニルまたはエポキシから選ばれる基からなることが好ましい。
次に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
本発明は、重合性官能部位を有するシルセスキオキサン化合物にシリカ微粒子を添加し分散させることで、高い機械特性と低熱膨張係数を有しながら、十分な透明性を有する成形用材料を提供するものである。
【0020】
シルセスキオキサン化合物は、重合性官能部位からなる有機骨格とSiO3/2を主骨格とするシルセスキオキサン構造からなる無機骨格を同時に有する有機−無機ハイブリッド材料である。本発明ではこの材料をベース材料として用い、シリカ微粒子を無機充填材として添加することで、材料全体としての無機成分比を高くすることができる。
【0021】
本発明で用いる重合性官能部位を有するシルセスキオキサン化合物は、下記の一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0022】
【化1】

(式中、Rは重合性官能基を表し、nは任意の自然数を表す。)
【0023】
一般式(1)中のRは重合性官能基を表し、例えばビニル、アクリル、メタクリル、エポキシを含む官能基などがあげられるが、これらに限定されるものではない。なかでも、アクリルやメタクリルなどの重合性官能基はシリカ微粒子と屈折率が近いため、屈折率差に起因する散乱を抑えるのに非常に有利である。
【0024】
nは任意の自然数を表し、好ましくは3以上の整数である。
シルセスキオキサン化合物は、三官能のアルコキシシランを加水分解することで合成することが可能である。シルセスキオキサン化合物の重合性官能基Rは三官能アルコキシシランの選択によって決まる。例えばアクリル系の三官能アルコキシシランを用いれば、Rにアクリル部位をもつシルセスキオキサン化合物を合成することができる。
【0025】
重合性官能部位を有する三官能アルコキシシランとして、具体的には、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリイソプロポキシシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ブテニルトリメトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリエトキシシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、7−オクテニルトリエトキシシラン、10−ウンデセニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、5,6エポキシエキシルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリロキシウンデセニルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0026】
シルセスキオキサン化合物中にシリカ微粒子を分散させることを考慮すると、シルセスキオキサン化合物は常温で液状であることが望ましいが、シルセスキオキサン化合物の重合性官能基Rの種類や合成条件によっては、常温で固体になることもある。
【0027】
シリカ微粒子はシルセスキオキサン構造と同じシロキサン構造を持つ無色透明な無機充填材である。シリカ微粒子とシルセスキオキサン化合物は同じ構造を有するために、屈折率差が小さい。従ってシングルナノレベルの粒子径を有するシリカ微粒子を用いることで、材料の着色や散乱を抑えることができる。
【0028】
シリカ微粒子の表面には、シルセスキオキサン化合物に対する分散性を向上させるために表面修飾を施してもよい。例えばRにメタクリロキシプロピル基を有するシルセスキオキサン化合物に対しては、メタクリロキシプロピル基を表面修飾されたシリカ微粒子を用いることで分散性を向上させることができる。表面修飾の種類とシルセスキオキサン化合物のRの種類によっては、シリカ微粒子が分散しないこともあるので注意が必要である。
【0029】
シリカ微粒子の粒子径が大きいほど無機充填率を大きくできるが、同時に散乱も大きくなり透明性が低下する。一方、一般式(1)に示すようなシルセスキオキサン化合物中のシロキサン構造の直径が最小で約0.5nmであるため、無機充填率を大きくするためには、これよりも大きな粒子径のシリカ微粒子を添加する必要がある。そのため、添加するシリカ微粒子の粒子径は1nm以上100nm以下であることが好ましい。さらにより散乱を低下させるためには添加するシリカ微粒子の粒子径は1nm以上50nm以下であることが好ましい。
【0030】
成形用材料において、シルセスキオキサン化合物とシリカ微粒子の合計の含有量が95重量%以上、好ましくは98重量%以上であるのが好ましい。
また、シルセスキオキサン化合物とシリカ微粒子の含有割合は、シルセスキオキサン化合物A/シリカ微粒子Bが、A/B=20から80/80から20であるのが好ましい。
【0031】
シリカ微粒子を凝集させることなくシルセスキオキサン化合物中に分散させるためには、分散媒中にシリカ微粒子が分散した分散液を用いることが最もハンドリング性のよい方法である。このとき、分散液の分散媒はシルセスキオキサン化合物と相溶性のよいものを選択する必要がある。また成形物の特性向上のためには、分散液は分散剤をできるだけ含まないものを用いることが望ましい。
【0032】
シリカ微粒子の分散液に対して、重合性官能基を有するシルセスキオキサン化合物を混合する。シリカ微粒子の分散が困難な場合には、超音波式ホモジナイザーやビーズミルなどの分散装置を適宜使用してもよい。十分にシルセスキオキサン化合物を混合したシリカ微粒子の分散液を攪拌しながら減圧吸引し、溶媒のみを除去することで、シリカ微粒子分散透明材料を得ることができる。
混合条件によっては溶媒除去後に透明性を損なうことがある。そのため混合比や微粒子の粒子径、微粒子濃度、シルセスキオキサン化合物の無機成分比や重合性官能基Rの種類を適宜調整していく必要がある。
【0033】
シリカ微粒子分散透明材料を硬化させるためには、重合性官能部位と硬化プロセスに即した硬化剤、あるいは重合開始剤を添加する。例えばメタクリロキシプロピル基の二重結合を利用して光重合反応を行うのであれば、光重合開始剤を添加し、任意の波長の光を照射することで硬化させることが可能である。光重合開始剤はシリカ微粒子の分散液から溶媒を除去する前に添加してもよいし、溶媒を除去した後に添加してもよい。しかし溶媒除去後のシリカ微粒子分散透明材料は高粘度になりやすいため、材料の均一性を考えた場合、光重合開始剤は溶媒を除去する前に添加することが望ましい。透明性の低下や着色を防ぐため、光重合開始剤の量はシリカ微粒子分散透明材料100重量部中に対して5重量部未満であることが望ましく、さらに好ましくは2重量部以下である。またシルセスキオキサン化合物の重合性官能基Rにエポキシ基を選択し、アミン系の硬化剤でエポキシ基を開環させながら重合させることも可能である。この場合、硬化剤は溶媒を除去した後に添加されることになるため、材料への気泡混入を防ぐ必要がある。
【0034】
本発明に係る成形品は、上記の成形用材料からなる。
前記成形品としては、レンズ、屈折光学素子、そして回折光学素子等などの光学素子が挙げられる。
本発明に係る成形品の製造方法は、上記の成形用材料を型とガラス板の空隙に充填した後、前記成形用材料を硬化させて前記ガラス板と一体化し、一体化した成形用材料とガラス板を前記型から剥離することを特徴とする。
【0035】
具体的には、前記成形用材料を型の上に塗布し、前記成形用材料をガラス板にて押し広げて、成形用材料を型とガラス板の空隙に充填することが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
実施例1
シルセスキオキサン化合物の重合性官能部位が、メタクリルである実施例について説明する。
【0037】
<ベース材料の合成>
メタノール160重量部に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS710;チッソ社製)を30重量部加え、そこにアンモニア水溶液(4.9wt%)10重量部を滴下し、攪拌した。約10分の攪拌を経て、メタノールの存在下において重合性官能基Rにメタクリロキシプロピル基を有するシルセスキオキサン化合物100を合成した。エバポレーターによりメタノールを除去し、シルセスキオキサン化合物のみを抽出し、さらにロータリーポンプにて十分に真空引きを行った。
【0038】
<シリカ微粒子の混合>
シリカ微粒子のトルエン分散液(10wt%)100重量部に上記で作製したメタクリロキシプロピル基のシルセスキオキサン化合物10重量部を混合し、よく攪拌した。ここで用いたシリカ微粒子は、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランにより表面修飾されており、トルエンに良好に分散する。このシリカ微粒子の粒子径は動的光散乱法により測定した結果、個数平均分布で14nmであった。さらに光重合開始剤(イルガキュア184;チバスペシャリティーケミカルズ社製)をベース材料であるシルセスキオキサン化合物10重量部に対して2wt%になるように混合した。さらにエバポレーターにてトルエンを除去し、シリカ微粒子分散透明材料を得た。
【0039】
<成形>
前記シリカ微粒子分散透明材料をガラス板上に塗布し、対面となるもう一枚のガラス板との間に挟み込んだ。このとき、二枚のガラス板間には0.5mm厚のスペーサーを挟み、シリカ微粒子分散材料11の膜厚を調整した。また、片側のガラス板にはコロナ放電処理後にシランカップリング処理を施しておき、シリカ微粒子分散透明材料と十分に密着するようにしておいた。
【0040】
なおシランカップリング処理はシランカップリング剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用い、ガラスに塗布後80℃にて60分間乾燥させて行った。ガラス板に挟まれたシリカ微粒子分散透明材料に高圧水銀灯(EX250;HOYA CANDEO OPTRONICS社製)の光を照射し、シリカ微粒子分散透明材料を硬化させた。続いてシランカップリング処理がなされていないガラス板を剥離することで、0.5mm厚の平坦な透明膜を得た。
【0041】
実施例2
シルセスキオキサン化合物の重合性官能部位が、ビニルである実施例について説明する。
【0042】
<ベース材料の合成>
ベース材料の合成は、実施例1の3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン30重量部の代わりに10−ウンデセニルトリメトキシシラン(Gelest社製)27重量部を加え、実施例1と同様の手順にて行った。
【0043】
<シリカ微粒子の混合>
シリカ微粒子のアセトン分散液(8wt%)80重量部に10−ウンデセニルトリメトキシシランによって合成したシルセスキオキサン化合物10重量部を混合し、よく攪拌した。ここで用いたシリカ微粒子は10−ウンデセニルトリメトキシシランにより表面修飾されており、アセトンに良好に分散する。このシリカ微粒子の粒子径は動的光散乱法により測定した結果、個数平均分布で14nmであった。さらに光重合開始剤(イルガキュア184;チバスペシャリティーケミカルズ社製)をベース材料であるシルセスキオキサン化合物の重量に対して2wt%になるように混合した。さらにエバポレーターにてアセトンを除去し、シリカ微粒子分散透明材料を得た。
【0044】
<成形>
成形は実施例1と同様にして行い、透明膜を得た。
【0045】
比較例1
実施例1で合成した、重合性官能基Rがメタクリロキシプロピル基のシルセスキオキサン化合物を、シリカ微粒子を添加せずに成形し、透明膜を得た。成形方法は実施例1と同様にして行った。
【0046】
表1に、実施例1および実施例2で作製した透明膜、比較例1で作製した透明膜の硬度、熱膨張係数、透過率の評価結果を示す。
【0047】
(硬度)
硬度はナノインデンターで測定した。
○:0.5GPa以上の値を示す。
×:0.5GPa未満の値を示す。
【0048】
(熱膨張係数)
熱膨張係数はTMA(TA5000;TAインスツルメンツ社製)の針入方式により測定した。
○:100×10−6/℃未満の値を示す。
×:100×10−6/℃以上の値を示す。
【0049】
(透過率)
透過率は分光光度計(U4000;日立製作所社製)により測定した。
○:波長400nmにて95%以上の値を示す。
【0050】
【表1】

表1の結果から、比較例1の透明膜に比べ、本発明の実施例1および実施例2の透明膜では、硬度の向上と熱膨張係数の低下がみられた。また実施例1および実施例2の透明の透過率も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の成形用材料は、散乱や着色の影響がほとんどなく透明で、かつ高い機械特性と低熱膨張係数を有するので、レンズ、フィルター、光ファイバー、ミラー、屈折光学素子、回折光学素子等に適用可能な成形用透明材料として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、重合性官能部位を有するシルセスキオキサン化合物とシリカ微粒子を含有する成形用材料において、前記シルセスキオキサン化合物と前記シリカ微粒子の合計の含有量が95重量%以上であり、かつ前記シリカ微粒子の平均粒子径が1nm以上100nm以下であることを特徴とする成形用材料。
【請求項2】
前記重合性官能部位がアクリル、メタクリル、ビニルまたはエポキシから選ばれる基からなることを特徴とする請求項1に記載の成形用材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の成形用材料からなる成形品。
【請求項4】
前記成形品が光学素子である請求項3に記載の成形品。
【請求項5】
請求項1または2に記載の成形用材料を型とガラス板の空隙に充填した後、前記成形用材料を硬化させて前記ガラス板と一体化し、一体化した成形用材料とガラス板を前記型から剥離することを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項6】
前記成形用材料を型の上に塗布し、前記成形用材料をガラス板にて押し広げて、成形用材料を型とガラス板の空隙に充填することを特徴とする請求項5記載の成形品の製造方法。

【公開番号】特開2009−138059(P2009−138059A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314012(P2007−314012)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】