説明

成形金型の冷却液流路構造および成形金型

【課題】冷却液の流路を長くとることができ、冷却水の流量調節を適宜変更したり、流量設計も複雑になることのない成形金型の冷却構造を提供すること。
【解決手段】溶融樹脂を冷却する成形金型の冷却構造において、冷却液の流路11は、成形金型の内部に形成された内孔14と、パイプ本体21cの外周面が内孔の内周面と間隔を空けて配設される一対のパイプ状部材21とを備え、パイプ状部材21にはパイプ本体21cの内周側に冷却水の内周流路11bを設け、内孔14の内周面とパイプ本体21cの外周面との間には、内周流路11bと連通する外周流路11aを形成し、冷却水がパイプ本体21cの外周流路11aから内周流路11bを流れるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形金型を冷却液によって効率良く冷却できる成形金型の冷却液流路構造に関し、特に樹脂製容器のプリフォーム成形用金型の冷却液流路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ポリエチレンテレフタレート製容器(PETボトル)の前成形体としてのプリフォームは、射出成形機や圧縮成形機などによって形成される。このようなプリフォームは、上部には容器本体の飲料の注入口となる部分である口頸(ノズル)部が形成され、口頸部の下部にはプリフォームの径方向外側に突出する環状フランジが形成され、環状フランジの下部には胴部が形成され、胴部はブロー成形によって延伸される。プリフォームの口頸部を形成する部分は、ネックハーフやネックリングハーフ、ネックリング金型、スライドインサート金型などと呼ばれる分割金型が用いられている。
プリフォームは成形時に温度が高温となり、分割金型の冷却効率が悪いと成形完了時における分割金型の離型の際に、口頸部の冷却固化が不十分のため変形や白化が生じることがある。その対策手段として分割金型の内部に冷却液の流路を形成し、冷却液として通常、冷却水を流すことによって口頸部を冷却するようにしている。
【0003】
下記の特許文献1は、分割金型を径方向の内外に分割して内層ブロックと外層ブロックとによって形成し、内層ブロックと外層ブロックとの接合面に冷却水の流路となる溝を形成している。そして、外層ブロック側の外面から溝の一端に冷却水の供給路を連通し、溝の他端に冷却水の排水路を連通して冷却水の流路を各割金型に形成している。
下記の特許文献2では、分割金型に冷却水の流路となる貫通孔(チャネルセグメント)を形成し、貫通孔の両端にある各々の開口には、閉塞部材である蓋部材と、蓋部材に取付けられ流路内に差し込まれるに仕切り板を設けたプラグを設けている。冷却水の流路には、冷却水の供給路と排水路が形成されている。このような、分割金型の冷却水の流路は、一方の仕切り板の表面から裏面へ、次いで仕切り板の裏面から表面へ迂回させることによって、冷却液の流路を長くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−326241号公報
【特許文献2】特開2008−542066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1によると、内層材と外層材と異なる材料が使用できるなどの利点があるが、2つのブロック部材から構成されており組み付け精度など構成が複雑となり高価な物となる。また、冷却液の流路の長さを長くとりにくく、他にも冷却液の流路を適宜変更できないなどの不都合な点もある。
特許文献2によると、冷却水を仕切り板の表側と裏側に流すことによって長くする利点がある。この特許文献2には、孔の開口をプラグの蓋部材で閉塞するときに、ろう付けやねじによって閉塞する例が開示されているが、ろう付けで蓋部材を固定したときには、蓋部材の交換が困難となり、冷却液の流路断面積を適宜変更することができない。また、蓋部材をねじで螺着させた場合には、仕切り板の取付角度が規定角度にくるよう固定できなかったり、一対の仕切り板の取付角度が一致しなかったりする欠点がある。このような場合は、金型が所望とする冷却性能を十分発揮できないおそれもある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、冷却水の流路を簡便に長くすることができ、冷却液の流路断面積を適宜変更したり、流路断面積設計も複雑になることのない成形金型の冷却液流路構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の成形金型の冷却流路構造は、成形金型に冷却液を通すための流路構造であって、前記金型内に設けられた内孔と前記内孔内に挿入されるパイプ本体とで形成された、前記パイプ本体の内周面側の内周流路と、前記内孔の内周面とパイプ本体の外周面との間に形成される外周流路からなる二重孔を二本備え、前記内周流路と外周流路とは、先端部側では連通し、後端部側では連通不能となるよう前記外周流路が閉塞部によって閉塞され、前記二本の二重孔の内周流路は互いに後端部側で連通路によって接続され、前記外周流路の前記閉塞部近傍と、前記金型外部とを通液可能にする内孔通液路が設けられるようにした。
また、上記目的を達成するために、本発明の成形金型の冷却液流路構造は、成形金型の内部に向かって交差させて形成される2本の内孔と、前記内孔内の装着部によって取付けられる、中空のパイプ本体と中空の取付部とからなるパイプ状部材2本と、前記内孔開口端を閉塞する2つの蓋部材と、前記金型外部から前記内孔に達する2つの内孔通液路と、からなり、前記内孔同士の交差箇所を連通路とし、前記パイプ状部材は、前記取付部によって取付部外周と前記内孔装着部の内周とを封じ、前記内孔の連通路より奥側に配設され、前記内孔通液路は、前記装着部近傍と金型外部とを連通させ、前記連通路と前記内孔の先端部とが前記パイプ状部材の孔によって連通し、前記パイプ状部材の孔からなる内周流路と、前記内孔内周面と前記パイプ本体の外周面とからなる外周流路と、を備えている。
上記成形金型の冷却液流路構造は、前記内孔通液路の一方から前記外周流路の一方を通り、以下該一方の外周流路側の内周流路、他方の内周流路、他方の外周流路、他方の内孔通液路の順に冷却液が流れるように構成することができる。
上記成形金型の冷却液流路構造は、前記パイプ本体が円筒状であり、前記パイプ本体が配設される箇所の前記内孔内周面の形状が円形断面であることが好ましい。
上記成形金型の冷却液流路構造の前記パイプ状部材の取付部は雄ねじが形成され、該雄ねじを前記内孔の装着部に形成された雌ねじに螺着させて、取付けするとともに、前記雄ねじの頭部には、冷却液を流通可能にし、且つパイプ状部材の取付け取外しの際に、前記雄ねじを回転させる着脱器具を係止させる、流通孔が形成されていることが好ましい。
上記成形金型の冷却液流路構造の前記成形金型は樹脂製容器のプリフォームを形成するための成形金型であって、前記冷却液通構造が前記プリフォームの口頸部を実質的に成形する分割金型に設けることができる。
本発明の上記各成形金型の冷却液流路構造は、冷却液流路構造を備えた成形金型にも適用が可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の成形金型の冷却液流路構造は、パイプ本体の内周側を通る内周流路と外周側を通る外周流路とからなる2重構造の冷却液の流路を採用しているので、冷却液の流路を長くすることができる。
また内孔の交差箇所を連通路とすることで簡単な構造となる。
さらにまた、形成された冷却液の流路に順に冷却液を流れるように構成することで冷却液の流路を長くとることができる。
さらにまた、パイプ本体が円筒状であり、その箇所で内孔内周面も円筒状であるので、この2重構造となる箇所での冷却液の流路断面積の設計が容易である。
また、取付部により、パイプ状部材を成形金型の装着部に着脱自在にすることによって、パイプ状部材の交換により冷却液による冷却能力を適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリフォーム成形金型の型締め状態における断面図である。
【図2】図1に示すインサートスライド金型を上下逆さまに置いたときの(図1のキャビティ金型側から見た)斜視図である。
【図3】図2に示すインサートスライド金型を水平方向へ切断した断面図である。
【図4】図2に示すインサートスライド金型の一方の分割金型における冷却液の流路を上方から見た平面図である。
【図5】インサートスライド金型の冷却路に配設されるパイプ状部材であり、Aは斜視図、Bは側面図、Cは断面図である。
【図6】図2に示すインサートスライド金型を下方(図1のスライド対側)から見た底面図である。
【図7】スライドインサート金型の別形態を示す左半分の断面図と側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態としてプリフォームの成形金型について説明する。
図1は、プリフォーム成形金型の例として射出成形用プリフォーム金型を示し、成形金型が閉じられた状態の断面図である。
プリフォーム成形金型33は、雌型であるキャビティ金型34、雄型であるコア金型35、分割金型であるスライドインサート金型36(上述のように、ネックハーフやネックリングハーフ、ネックリング金型とも呼ばれる)を備えている。
なお、本実施形態のような射出成形用プリフォーム金型の場合は、通常は図1の金型上下方向を水平方向に向け寝かせて使用する。
【0010】
次に、スライドインサート金型36の冷却構造について説明する。
図2は図1のスライドインサート金型36を上下逆さまに置いたときの斜視図であるが、以下の説明では図2の向きに倣ってスライドインサート金型36の上下など位置関係を説明する。
スライドインサート金型36は左右に2分割された面対称の半円環状であり、両者が一体となって環状になる。スライドインサート金型36は、分割金型が組み付けられた状態で中央を上下に貫通するノズル形成孔36aが形成され、ノズル形成孔36aはプリフォームのノズル部の外周面及びノズル本体部の上側一部を形成し、雄ねじやフランジ部を形成するノズル形成部となる。
【0011】
図3及び図4を参照にして、スライドインサート金型36を構成する分割金型36A,36Bの各々の内部には、冷却液、好適には冷却水の流路11,11が形成されている。分割金型36A,36Bの冷却水の流路11,11は、同じ構造(点対称)であるので、主として一方の分割金型36Aの冷却液流路構造について説明するが、分割金型36Bも適宜用いて説明する。
図3及び図4を参照にして、分割金型36Aには、冷却液の流路を斜めの孔として穴開け形成しやすくするための、構造孔12が形成されている。構造孔12より奥には、分割金型36Aの外側面に対し斜め直線方向(本実施形態ではより好適例な例として側面に対し傾斜角45度)に形成される第1の内孔14と、同じく分割金型36Aの外側面に対し斜め直線方向(本実施形態ではより好適例な例として側面に対し傾斜角135度)に形成される第2の内孔15とが形成され、第1の内孔14と第2の内孔15とが交差(本実施形態ではより好適な例として直交)して形成されている。なお、外側面に対する傾斜角や内孔14,15の交差角は適宜設定してよいし、構造孔12は省略することも可能である。
【0012】
第1の内孔14は、開口側から順に栓孔14a、連通路17、装着部18a,冷却室19aとから構成され、第2の内孔15は、開口側から順に栓孔15a、連通路17,装着部18b,冷却室19bとから構成されている。連通路17は第1の内孔14と第2の内孔15との交差部で互いに共有している。内孔14,15は、本実施形態では各々軸心を一致させた段差のある孔によって形成されているが、段差のない真っ直ぐな管となっていてもよい。また、内孔14,15は円筒状で円形断面となっていると、流路断面積の設計が容易になり好ましい。
これらのうち、栓孔14a,15aは冷却水の流路11を閉塞するための蓋部材13が装着される。なお、図3は、図中の左側に示す分割金型36Aには、栓孔14a,15aに蓋部材13,13が装着されているが、右側に示す分割金型36Bでは構造説明のため、蓋部材13が装着されていない状態を示す(実施の際は分割金型36Aと同様蓋部材13,13を装着する)。蓋部材13,13は、本実施形態ではねじ(好ましくは配管栓用のテーパねじ)による回転によって栓孔14a,15aの雌ねじ16a,16bに固定し、第1の内孔14及び第2の内孔15の開口側を閉塞する。蓋部材13の頭部には、蓋部材13を回転させて着脱するためのレンチ用孔として六角孔13aが形成され、六角レンチによって着脱できる。
【0013】
第1の内孔14の先端側と第2の内孔15の先端側はプリフォームの口頸部を形成するノズル形成孔36aを跨ぐように配置され、内孔先端部は分割金型36Aの分割面(成形時において分割金型36Aが他方の分割金型36Bに当接する端面)の近くまで達し、袋小路状に閉じられている。
第1の内孔14の装着部18a及び冷却室19aには上流側のパイプ状部材21が配設され、第2の内孔15の装着部18b及び冷却室19bにもパイプ状部材22が配設されるが、部品種類数削減のため、パイプ状部材21と22とを同一形態のものにできるよう内孔14,15を形成するのが好ましい。
【0014】
パイプ状部材21,22は図5のA〜Cに示すように、取付部21a,22a、中栓21b,22b、パイプ本体21c,22cとから構成されている。パイプ本体は、断面が円環形状の円筒状であると、前述の内孔14,15と同様、流路断面積の設計が容易になり好ましい。取付部21a,22aには、雄ねじ21d,22dが形成され、雄ねじ21d,22dは装着部18a,18bに形成された雌ねじに螺着されることによって締結される。なお、螺着の際、取付部21aと装着部18aとの間、および取付部22aと装着部18bとの間を閉塞するようにしてもよい。その際は、雄ねじ21d,22dおよび装着部18a,18bに形成された雌ねじをそれぞれ配管用テーパねじ構造とすると好ましい。
【0015】
パイプ状部材21,22の中栓21b,22bは、本実施形態ではパイプ本体21c,22cが内孔14,15の所定位置(好ましくは中央)に組み付け配置されるよう組み付けガイドの役割を担わせている。なお、中栓21b,22bと内孔14,15との間を閉塞する役割(その際はOリングなどのシール部材を介在させると好ましい)を担わせてもよい。これらの役割を担わせない場合は、中栓21b、22bは省略可能である。
パイプ状部材21,22を内孔14,15に取付けた状態で、中栓21b,22bから内孔14,15の奥行き方向へ突出する中空円柱形のパイプ本体21c,22cの外周面は、好ましくは内孔14,15の内周面に対して(内孔径方向に)間隔を空けて配設される。パイプ本体21c,22cの先端部は、内孔14,15の最深部で開放されて内孔と連通している。これによって、パイプ本体21c,22cの各々は、パイプ本体21c,22cの内周側と外周側とが、先端開口を介して連通して冷却液の流路を形成することになる。
上述した中栓21b,22bおよび取付部21a,22aには内部にパイプ本体21c,22cと連通路17とを連通させて冷却水を流通させるための孔21g,22gが形成され、取付部21a,22aの頂面には、流通孔21f,22fが形成されている。流通孔21f,22fはパイプ状部材21,22を回転させて着脱させるための着脱器具(好ましくは六角レンチ)を係止するための着脱器具係止溝(好ましくは六角穴形状)として活用できるよう形成されると好ましい。また、着脱器具係止溝を兼ねる流通孔21f,22fの深さは適宜変更可能で、取付部21a,22aの途中まででもよいし、中栓21b,22bにまで達していてもよい。
【0016】
図3及び図4に戻って、冷却室19aには、第1の内孔14の内周面とパイプ本体21cの外周面との間に外周流路11aが形成され、パイプ本体21cの内周側に内周流路11bが形成され、冷却室19bには、パイプ本体22cの内周側に内周流路11cが形成され、第2の内孔15の内周面とパイプ本体22cとの間に外周流路11dが形成されている。
内孔は内孔通液路によって分割金型36Aの外部に連通するが、内孔通液路として、第1の内孔14の冷却室19aの中栓21b側には、冷却水の給水路24が形成され、第2の内孔15の冷却室19bの中栓22b側には、冷却水の排水路25が形成されている。図6示すように、分割金型36Aの底面には、給水路24に連通する給水口24aと排水路25に連通する排水口25aが形成されている。給水口24aは、スライドインサート金型36Aを取付け、当接・分離移動するスライド対(スライド機構ともよぶ)39の内部流路39a(図1参照)を介して図示しない開閉弁、冷却水を送水するポンプ、冷却水の温度を計測する温度計、流量計、熱交換器、冷却水を貯める貯水槽などの補機類が接続され、排水口25aは、スライドインサート金型36Aを取付けるスライド対39の内部流路39b(図1参照)を介して貯水槽などの補機類に接続されている。なお、給水口24a、および排水口25aが、分割金型36Aの分割面を除く側面、または、図6における上面側にくるよう給水路24および排水路25を設け、スライド対を介さずに給水口24a,排水口25aを直接補機類に接続してもよい。
パイプ状部材を分割金型36A,36Bに取付ける手順は、図3の分割金型36Bに示すように、初めに第1の内孔14,および第2の内孔15にバイプ状部材21,22を1本ずつ取付け、その後図3の分割金型36Aに示すように、蓋部材13,13で第1の内孔14及び第2の内孔15を閉塞する。
【0017】
本実施形態では、上述したように、インサートスライド金型36の分割金型36A,36Bには、冷却水が流れる冷却水の流路11,11が形成されている。
図3及び図4を参照にして、一方の分割金型36Aで説明すると、冷却水は図示しない圧送手段によって、スライド対39の内部流路39a(図1参照)から冷却水の流路11に供給される。詳しくは冷却水を分割金型36A,36Bの底面にある給水口24aから給水路24に冷却水を供給し、第1の冷却室19aの外周流路11aへ供給される。第1の冷却室19aでは、パイプ本体21cの先端開口が外周流路11aと連通しているので、冷却水はパイプ本体21cの内周流路11bに流れ込む。そして、孔21g、連通孔21fを通過して連通路17に流れ込む。連通路17は第1の内孔14と第2の内孔15とが交差している箇所であり、冷却水は連通路17から流通孔22f、孔22gを通って、パイプ本体22cの内周流路11cへ供給される。パイプ本体22cの先端開口が外周流路11dに連通しているので冷却水は外周流路11dへ供給される。そして、外周流路11dから排水路25を通って冷却水は排水口25aからスライド対39の内部流路39b(図1参照)に排水され、好ましくは再び貯水槽などに集められ、熱交換機を通して再度冷却水として用いられる。
【0018】
このように、冷却室19a側では外周流路11aと内周流路11bの内外の2重構造を採っているので、冷却水の流路を長くでき、冷却室19b側では内周流路11cと外周流路11dの内外の2重構造を採っているので、冷却水の流路を長くできる。そして、第1の冷却室19aと第2の冷却室19bとがノズル形成孔36aを跨ぐようにして配置されているので、分割金型36A,36Bのノズル成形孔36aの周辺を冷却し、ノズル部を形成する溶融樹脂を効率良く冷却できる。
【0019】
この分割金型により成形されるプリフォームは、この好適な冷却水の流路による冷却によって、ノズル部(口頸部)のヒケや変形を防止し、安定した製品(半製品)となる。
本発明のパイプ状部材21,22は、断面が円環形状であり、また第1の内孔14(及び第1の冷却室19a)、第2の内孔15(及び第2の冷却室19b)が円形断面の空間の2重円断面構造であるため、冷却水の流路断面積の設計が容易である。また、パイプ状部材21,22がどの回転角度で取付けられても、冷却路の形状は変化しない。したがって、各成形金型毎の冷却のばらつきを抑えることができる。
ねじによるパイプ状部材21,22の取付け、取り外しができるので、パイプ状部材21,22のパイプ本体21c,22cの長さ、内径、外径(肉厚)を変更して、適宜冷却水の流路断面積や内周流路と外周流路の断面積比、あるいは内孔先端の流路形状の設計を変更できる。また、ねじ式の蓋部材13と相俟って、流路の清掃を容易かつ十分に行うことが可能となる。すなわち、蓋部材13,13およびパイプ状部材21,22を取り外して各々を清掃する共に、取り外し後の内孔14,15および連通路17を清掃後、再びパイプ状部材21,22および蓋部材13,13を取付けることで流路の分解清掃作業が可能となる。
【0020】
以上、本発明を実施形態に基づいて添付図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、更に他の変形あるいは変更が可能である。
例えば、冷却液は冷却水に限らず、冷却油など、様々な冷却液を用いてもよい。
また、上記実施形態では、プリフォームのノズル形成孔36aを形成するインサートスライド金型36の半割型である分割金型36A,36Bに冷却水の流路11,11を形成したが、その他の半円状物、円弧状物、V字状物、U字状物の成形金型などに本発明の冷却水の流路を形成してもよい。また、成形金型は樹脂の射出成形用に限らず樹脂の圧縮成形用成形金型に適用してもよいし、プレス加工用金型など、様々な成形金型に用いることができる。
また、二重孔、内孔、パイプ状部材等を2本備えた冷却液流路構造の例を示したが、実施形態で挙げた2本を一組とした冷却液流路構造を一つの金型に複数組備えていてもよい。
【0021】
さらに、実施形態では連通路17を内孔14,15の交差箇所としたが、図7のようにパイプ状部材21,22の孔21g,22g内に配管用雌ねじを設け、そこにホースを連結するためのジョイントを締結し、ホース17aによって内周流路11b,11c同士を接続してもよい。
蓋部材13、パイプ状部材21,22については、内孔14,15にねじによって取付けるようにしたが、パイプ状部材を頻繁に付け換える必要のないときは、圧入,溶接などによって取付けてもよい。
冷却室19a,19bにおける内孔14,15の内周面には、熱伝達のよいスリーブ状の部材を装着し、熱交換の効率を向上させるようにしてもよい。
本実施形態で説明した冷却水の流路については、一例であり、例えば連通路17に直接達する冷却水の給水路および給水口を別途形成し、連通路17から内周流路11b,11cへ冷却水を流し、各内周流路11b,11cから外周流路11a,11dへ冷却水を流し、給水路24及び排水路25から冷却水を排水できるし、その逆も可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 合成樹脂供給装置
11 冷却水の流路
11a,11d 外周流路
11b,11c 内周流路
13 蓋部材
13a 六角孔
14 第1の内孔
14a,15a 栓孔
15 第2の内孔
19a,19b 冷却室
21,22 パイプ状部材
21a,22b 取付部
21b,22b 中栓
21c,22c パイプ本体
21d,22d 雄ねじ
21f,22f 流通孔
21g,22b 孔
31 圧縮成型装置
33 圧縮成形金型
34 キャビティ金型
35 コア金型
36 スライドインサート金型
36A,36B 分割金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形金型に冷却液を通すための流路構造であって、
前記金型内に設けられた内孔と前記内孔内に挿入されるパイプ本体とで形成された、前記パイプ本体の内周面側の内周流路と、前記内孔の内周面とパイプ本体の外周面との間に形成される外周流路とからなる二重孔を二本備え、
前記内周流路と外周流路とは、先端部側では連通し、後端部側では連通不能となるよう前記外周流路が閉塞部によって閉塞され、
前記二本の二重孔の内周流路は互いに後端部側で連通路によって接続され、
前記外周流路の前記閉塞部近傍と、前記金型外部とを通液可能にする内孔通液路が設けられていることを特徴とする、成形金型の冷却液流路構造。
【請求項2】
成形金型の内部に向かって交差させて形成される2本の内孔と、
前記内孔内の装着部によって取付けられる、中空のパイプ本体と中空の取付部とからなるパイプ状部材2本と、
前記内孔開口端を閉塞する2つの蓋部材と、
前記金型外部から前記内孔に達する2つの内孔通液路と、からなり、
前記内孔同士の交差箇所を連通路とし、
前記パイプ状部材は、前記取付部によって取付部外周と前記内孔装着部の内周とを封じ、前記内孔の連通路より奥側に配設され、
前記内孔通液路は、前記装着部近傍と金型外部とを連通させ、
前記連通路と前記内孔の先端部とが前記パイプ状部材の孔によって連通し、
前記パイプ状部材の孔からなる内周流路と、前記内孔内周面と前記パイプ本体の外周面とからなる外周流路と、を備えていることを特徴とする、成形金型の冷却液流路構造。
【請求項3】
前記内孔通液路の一方から前記外周流路の一方を通り、以下該一方の外周流路側の内周流路、他方の内周流路、他方の外周流路、他方の内孔通液路の順に冷却液が流れるように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の成形金型の冷却液流路構造。
【請求項4】
前記パイプ本体が円筒状であり、前記パイプ本体が配設される箇所の前記内孔内周面の形状が円形断面であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の成形金型の冷却液流路構造。
【請求項5】
前記パイプ状部材の取付部は雄ねじが形成され、該雄ねじを前記内孔の装着部に形成された雌ねじに螺着させて、取付けするとともに、前記雄ねじの頭部には、冷却液を流通可能にし、且つパイプ状部材の取付け取外しの際に、前記雄ねじを回転させる着脱器具を係止させる、流通孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の成形金型の冷却液流路構造。
【請求項6】
前記成形金型は樹脂製容器のプリフォームを形成するための成形金型であって、前記冷却液通構造が前記プリフォームの口頸部を実質的に成形する分割金型に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成形金型の冷却液流路構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の冷却液流路構造を備えたことを特徴とする成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−224906(P2011−224906A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97975(P2010−97975)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】