説明

成形金型用Ni−W電鋳液、成形金型の製造方法、成形金型および成形品の製造方法

【課題】離型性、耐熱性、加工性に優れ、大面積化が可能であり、製造コストが低廉であり、低環境負荷である成形金型用Ni−W電鋳液、成形金型の製造方法、成形金型および成形品の製造方法を提供する。また、環境負荷の小さい成分を含有する成形金型用Ni−W電鋳液およびこれを用いた成形金型の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】表面に凹凸状のパターンを有する成形品の成形加工に用いられる成形金型を電鋳によって作製する際に用いられる成形金型用Ni−W電鋳液であって、少なくともスルファミン酸ニッケルとタングステン酸ナトリウムを合計で0.40mol/l含み、かつ、スルファミン酸ニッケルを0.04mol/l〜0.20mol/l含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な加工が必要とされるガラス部品や、アルミ合金部品、プラスチック部品の成形加工に用いられる成形金型用Ni−W電鋳液、成形金型の製造方法、成形金型および成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯プロジェクタ用マイクロレンズ、カメラレンズ用無反射構造体、抗体チップの微細周期構造、ガラス製マイクロリアクター、マイクロ流体デバイスチップ等には、微細な加工が必要とされるガラス成形(ガラスインプリント)品が使用される。そして、このようなガラス成形品は、対象となるガラス成形品の形状に対応して加工されたガラス成形金型を用いて、高温でガラス材料をプレス成形することによって製造される。
【0003】
ここで、前記したようなガラス成形品には、一般的に耐薬品性、耐候性、光学特性が要求されるため、当該ガラス成形品のガラス材料としては、例えばこれらの特性に優れた硼珪酸ガラスが多く用いられている。そのため、従来から硼珪酸ガラスに対して微細形状パターンを転写できる耐久性に優れたガラス成形金型が要求されている。
【0004】
前記したようなガラス成形品に用いられるガラス成形金型の金型材料としては、例えば金属ガラス、SiC、GC(ガラス状カーボン)が知られている。また、特許文献1では、耐熱性に優れ、ナノ結晶であるNi−Wめっき膜を金型材料として選択し、最小線幅:400nmのナノパターンをFIB(集束イオンビーム)によって加工したガラス成形金型が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−266077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した金属ガラス(一例として,Zr55Al10Cu30Ni、ガラス転移温度:681K(参考文献:日本機械学会 2007年度年次大会講演論文集(1)、P598))は、ガラス転移温度が硼珪酸ガラスのガラス転移点(約560℃)よりも低いため、硼珪酸ガラスを成形するためのガラス成形金型の金型材料としては不向きであるという問題があった。また、前記したSiCは、耐熱性に優れる半面、温暖化係数が二酸化炭素の2万倍と非常に大きいSF(六フッ化硫黄)を使用するため、環境負荷が大きいという問題があった。また、SiCは、脆性材料であるため割れ易く、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)やPt−Ir等を用いた離型処理が必要であるという問題があった。さらに、前記したGCは、耐熱性に優れ、離型処理が不要であり、酸素プラズマによってドライエッチングが容易である等の利点を持つ半面、エッチング面が荒れ易いという問題があった。
【0007】
そして、前記した特許文献1で提案された技術は、ナノ結晶を金型材料として用いるため、前記したSiC,GC等の金型材料に共通した脆性による「脆さ」という問題点を克服することはできるものの、FIBを用いた加工では、大面積化に時間とコストがかかりすぎるため、実用化が困難であるという問題があった。また、特許文献1で提案された金型材料は、W含有率が16原子%と低いため、数回のガラスインプリントで金型がガラス材料に張り付いてしまうという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、離型性、耐熱性、加工性に優れ、大面積化に対応でき、製造コストが低廉である成形金型用Ni−W電鋳液、成形金型の製造方法、成形金型および成形品の製造方法を提供することを課題とする。また、環境負荷の小さい成分を含有する成形金型用Ni−W電鋳液およびこれを用いた成形金型の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するために本発明に係る成形金型用Ni−W電鋳液は、表面に凹凸状のパターンを有する成形品の成形加工に用いられる成形金型を電鋳によって作製する際に用いられる成形金型用Ni−W電鋳液であって、少なくともスルファミン酸ニッケルとタングステン酸ナトリウムを合計で0.40mol/l含み、かつ、前記スルファミン酸ニッケルを0.04mol/l〜0.20mol/l含む構成とした。
【0010】
このような構成からなる成形金型用Ni−W電鋳液は、結晶化開始温度の高いナノ結晶材料であるNi−W合金層を得られるため、当該電鋳液中で電鋳を行うことで、耐熱性および加工性に優れた成形金型を作製することができる。また、成形金型用Ni−W電鋳液は、スルファミン酸ニッケルおよびタングステン酸ナトリウムを含有しているため、環境負荷も小さい。
【0011】
また、成形金型用Ni−W電鋳液を用いて電鋳を行うことで、成形金型の大面積化を図ることができるとともに、ドライエッチング処理や離型処理が不要となるため、低コスト化を図ることができる。また、成形金型用Ni−W電鋳液は、スルファミン酸ニッケルおよびタングステン酸ナトリウムの合計の含有率が所定値に規制されているため、作製される成形金型のNi−W合金層の内部応力を所定範囲に制御できるとともに、当該Ni−W合金層中におけるW含有率を27原子%〜34原子%に制御することができる。従って、ガラス材料等に対する離型性に優れた成形金型を作製することができる。
【0012】
前記した課題を解決するために本発明に係る成形金型の製造方法は、前記した成形金型用Ni−W電鋳液中でパルス電流を印加することで、Ni基合金またはNi−Fe基合金からなる基材上に厚さが略均一なNi−W合金層を形成するNi−W合金層第1電鋳工程と、前記Ni−W合金層上にレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、前記成形金型用Ni−W電鋳液中でパルス電流を印加することで、前記レジストパターンをマスクとして、前記Ni−W合金層上に凹凸状のパターンを形成するNi−W合金層第2電鋳工程と、を行う手順とした。
【0013】
このような手順を行う成形金型の製造方法は、Ni−W電鋳液から結晶化開始温度の高いナノ結晶材料であるNi−W合金層を得られるため、耐熱性および加工性に優れた成形金型を作製することができる。また、成形金型の製造方法は、スルファミン酸ニッケルおよびタングステン酸ナトリウムを含有する成形金型用Ni−W電鋳液を用いて成形金型を作製するため、環境負荷も小さい。また、成形金型の製造方法は、Ni−W電鋳液を用いて電鋳を行うことで、成形金型の大面積化を図ることができるとともに、ドライエッチング処理や離型処理が不要となるため、低コスト化を図ることができる。
【0014】
また、本発明に係る成形金型の製造方法は、前記Ni−W合金層第1電鋳工程および前記Ni−W合金層第2電鋳工程において、前記成形金型用Ni−W電鋳液のpHを7〜9、温度を57℃〜63℃とし、前記パルス電流の電流密度を1000A/m〜1500A/mとすることとした。
【0015】
このような手順を行う成形金型の製造方法は、スルファミン酸ニッケルおよびタングステン酸ナトリウムの合計の含有率が所定値に規制された電鋳液を用い、当該電鋳液中において所定条件下のパルス電流を用いて電鋳を行うため、作製される成形金型のNi−W合金層の内部応力を所定範囲に制御できるとともに、当該Ni−W合金層中におけるW含有率を27原子%〜34原子%に制御することができる。従って、ガラス材料等に対する離型性に優れた成形金型を作製することができる。
【0016】
また、本発明に係る成形金型の製造方法は、前記レジストパターン形成工程において、パターン同士の間隔が20μm以下のレジストパターンを形成することとした。
【0017】
このような手順を行う成形金型の製造方法は、表面に凹凸状の微細なパターンを有するNi−W合金層を基材上に形成することができる。
【0018】
前記した課題を解決するために本発明に係る成形金型は、Ni基合金またはNi−Fe基合金からなる基材と、前記基材上に形成され、表面に凹凸状のパターンを有するNi−W合金層と、を備え、前記Ni−W合金層が、Wを27原子%〜34原子%含有する構成とした。
【0019】
このような構成からなる成形金型は、結晶化開始温度の高いナノ結晶材料であるNi−Wからなる合金層が基材上に形成されているため、耐熱性および加工性に優れている。また、Ni−W合金層中におけるW含有率が所定範囲に制御されているため、ガラス材料等に対する離型性が向上し、成形品を容易に作製することができる。
【0020】
前記した課題を解決するために本発明に係る成形品の製造方法は、0.1Pa以下の圧力に減圧した容器内において、前記した成形金型を用いて、転移点以上の温度で金型材料をプレス成形する手順とした。
【0021】
このような手順を行う成形品の製造方法は、一度に大面積にわたる微細な成形加工を行うことができるとともに、高温でのガラス材料等のプレス成形によって金型表面が酸化するのを防ぎ、またガラス材料等の金型への融着を防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る成形金型用Ni−W電鋳液、成形金型の製造方法、成形金型および成形品の製造方法によれば、離型性、耐熱性、加工性に優れ、大面積化に対応でき、製造コストが低廉である成形金型用Ni−W電鋳液、成形金型の製造方法、成形金型および成形品の製造方法を提供することができる。また、環境負荷の小さい成分を含有する成形金型用Ni−W電鋳液およびこれを用いた成形金型の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るガラス成形金型の縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガラス成形金型の製造工程を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係るガラス成形金型を用いて、微細加工を施したガラス成形品をプレス成形によって作製する工程を示す概略図である。
【図4】第1の実験例において作製された電鋳母型を示すSEM画像であって、スルファミン酸ニッケルを含む電鋳液を用いて作製された実施例1に係る電鋳母型を示すSEM画像である。
【図5】第1の実験例において作製されたガラス成形金型のNi−W合金層を示すSEM画像であって、硫酸ニッケルを含む電鋳液を用いて作製された比較例1に係るガラス成形金型のNi−W合金層を示すSEM画像である。
【図6】第1の実験例において作製されたガラス成形金型のNi−W合金層を示すSEM画像であって、スルファミン酸ニッケルを含む電鋳液を用いて作製された実施例1に係るガラス成形金型のNi−W合金層を示すSEM画像である。
【図7】第1の実験例において作製されたガラス成形金型によるプレス成形の結果を示すSEM画像であって、(a)は、実施例1に係るガラス成形金型によって27回目にプレス成形されたガラス成形品のガラスインプリントパターンを示すSEM画像、(b)は、27回目のプレス成形後における実施例1に係るガラス成形金型を示すSEM画像、である。
【図8】第2の実験例において作製された電鋳母型を示すSEM画像であって、(a)は、L/Sパターンが形成された実施例2に係る電鋳母型を示すSEM画像、(b)は、ドットパターンが形成された実施例3に係る電鋳母型を示すSEM画像、である。
【図9】第2の実験例において作製されたガラス成形金型を示すSEM画像であって、(a)は、実施例3に係るガラス成形金型を示すSEM画像、(b)は、(a)を拡大したSEM画像、である。
【図10】第3の実験例において作製されたアルミ合金成形品を示すSEM画像であって、(a)は、真空中の温度を400℃とした場合、(b)は、真空中の温度を450℃とした場合、(c)は、真空中の温度を500℃とした場合、のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る成形金型用Ni−W電鋳液、成形金型の製造方法、成形金型および成形品の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、まず成形金型について説明した後、成形金型の製造方法の中で成形金型用Ni−W電鋳液について説明し、最後に成形品の製造方法について説明することとする。また、以下の説明では、成形品の具体例として、ガラス成形品について説明を行うとともに、成形金型の具体例としてガラス成形金型について説明を行う。なお、各図に示した構成の寸法・縮尺は、説明の便宜上誇張して示している。
【0025】
[ガラス成形金型]
ガラス成形金型1は、例えば硼珪酸ガラス等のガラス材料をプレス成形して微細な加工を施すためのものである。ガラス成形金型1は、具体的には、ガラス転移点以上の温度で繰り返しガラス材料を成形するために用いる。ガラス成形金型1は、図1に示すように、基材3と、基材3上に形成されたNi−W合金層2と、から構成されている。
【0026】
Ni−W合金層2は、基材3上に形成された合金層である。Ni−W合金層2は、図1に示すように、表面に凸部5aと凹部5bとからなる凹凸部5(凹凸状のパターン)を有している。この凹凸部5は、ガラス成形金型1を用いてガラス成形品を作製することで当該ガラス成形品に転写されるパターンに対応したものである。ここで、凹部5bの幅は、20μm以下にすることができる。
【0027】
Ni−W合金層2は、結晶化開始温度の高いナノ結晶材料であるNi−Wの合金層で構成されている。従って、例えば金属ガラス、SiC,GC等を金型材料とする場合と比較して、耐熱性および加工性に優れている。また、Ni−W合金層2は、ここではWを27原子%〜34原子%含有している。Ni−W合金層2中におけるWの含有率は、例えば蛍光X線装置で分析することができる。Ni−W合金層2は、後記するように、電鋳(電気鋳造)によって基材3上に形成する。また、Ni−W合金層2の厚さは、5μm以上とすることができる。
【0028】
基材3は、ガラス成形金型1のベースとなるものである。基材3は、具体的には、耐熱性の高いNi基合金またはNi−Fe基合金から構成される。ここで、Ni基合金またはNi−Fe基合金とは、Ni単独またはNiとFeとを合わせた含有率が50原子%以上の合金のことを意味している。また、基材3は、室温から100℃までの線膨張係数が、1.3×10−6/℃〜12.8×10−6/℃であることが好ましい。基材3の線膨張係数がこの範囲にある場合、ガラス転移点以上の温度でガラス材料を成形して冷却する工程を繰り返しても、Ni−W合金層2にクラックが発生することがない。
【0029】
基材3の具体例としては、例えば「インコロイ(登録商標)909(38Ni−42Fe−13Co−4.7Nb−1.5Ti−0.4Si)」を挙げることができるが、Ni単独またはNiとFeとを合わせた含有率が前記した範囲内であり、室温から100℃までの線膨張係数が前記した範囲内であれば、特に限定されない。
【0030】
以上のような構成を備えるガラス成形金型1は、結晶化開始温度の高いナノ結晶材料であるNi−Wからなる合金層が基材3上に形成されているため、耐熱性および加工性に優れている。また、Ni−W合金層2中におけるW含有率が所定範囲に制御されているため、ガラス材料に対する離型性が向上し、ガラス成形品を容易に作製することができる。また、ガラス成形金型1は、後記するように、スルファミン酸ニッケルおよびタングステン酸ナトリウムを含有するガラス成形金型用Ni−W電鋳液を用いて作製されるため、環境負荷も小さい。
【0031】
[ガラス成形金型の製造方法]
以下、本発明の実施形態に係るガラス成形金型1の製造方法について、図2を参照しながら説明する。ガラス成形金型1の製造方法は、図2に示すように、(a)基材研磨工程、(b)Ni−W合金層第1電鋳工程、(c)レジストパターン形成工程、(d)Ni−W合金層第2電鋳工程、(e)レジスト剥離工程、に大別される。
【0032】
(a)基材研磨工程
基材研磨工程は、基材3の表面を研磨する工程である。基材研磨工程では、図2(a)に示すように、基材3の基材上面3aおよび基材下面3bが平行になるように研磨する。また、基材研磨工程では、Ni−W合金層2の付着力を増大させるために、基材3の基材上面3aおよび基材下面3bに形成されている酸化膜をエッチング液等で除去することが好ましい。この場合のエッチング液としては、例えば「三菱ガス化学株式会社製 CPE−1000」を2倍希釈したものを用いることが好ましい。また、当該エッチング液を用いる場合の時間は、例えば30秒とすれば十分である。
【0033】
(b)Ni−W合金層第1電鋳工程
Ni−W合金層第1電鋳工程は、基材研磨工程によって研磨された基材3の基材上面3aに、電鋳によって厚さが略均一なNi−W合金層を形成する工程である。Ni−W合金層第1電鋳工程では、少なくともスルファミン酸ニッケルおよびタングステン酸ナトリウムを合計で0.4mol/l含み、かつ、スルファミン酸ニッケルを0.04mol/l〜0.20mol/l含む電鋳液を用いて電鋳を行う。Ni−W合金層第1電鋳工程では、より具体的には、少なくともスルファミン酸ニッケルを0.04mol/l〜0.20mol/l含むとともに、タングステン酸ナトリウムを0.20mol/l〜0.36mol/l含む電鋳液を用いて電鋳を行うことができる。また、Ni−W合金層第1電鋳工程では、電流密度を1000A/m〜1500A/m、通電時間を10msec、非通電時間を70msec、に設定したパルス電流を用いて電鋳を行う。
【0034】
電流密度を1000A/m〜1500A/mとする理由は、電流密度を当該範囲内として電鋳を行うことで、Ni−W合金層2中におけるWの含有量を最も増大させることができるためである。なお、電流密度は1200A/mとすることがより好ましい。また、通電時間を10msecおよび非通電時間を70msecとする理由については、通電時間および非通電時間を当該値として電鋳を行うことで、Ni−W合金層2中におけるWの含有量を最も増大させ、基材3との密着性を向上させることができるためである。例えば、通電時間を1msecおよび非通電時間を7msecとした場合には、Ni−W合金のパターンができず、あるいは、通電時間を100msecおよび非通電時間を700msecとして電鋳を行うと、レジストが剥離しやすい。
【0035】
その他の電鋳条件としては、例えば電鋳液のpH:7〜9、めっき温度:57℃〜63℃、電源:最大電流10Aのパルス電源、めっき時間:10分〜15分、陽極と陰極との距離:2cm、とすることが好ましい。ここで、陽極と陰極との距離を前記した値とする理由は、陽極と陰極とが離れすぎると、電気力線が拡がって均一な電鋳が困難となるためである。電鋳に用いる陽極としては、例えばステンレス鋼であるSUS304を用いることが好ましく、陽極の大きさは幅7cm×高さ10cmとし、陰極の大きさは10cmとすることが好ましい。Ni−W合金層第1電鋳工程では、このような条件下で電鋳を行うことで、図2(b)に示すように、基材3上に下地層としてNi−W合金層2aが形成された金型材料6が作製される。
【0036】
(c)レジストパターン形成工程
レジストパターン形成工程は、Ni−W合金層第1電鋳工程で作製された金型材料6に電鋳用レジストパターンを形成し、電鋳母型を作製する工程である。レジストパターン形成工程では、図2(c)に示すように、フォトリソグラフィによって、基材3上にレジストパターンを形成する。ここで、図2(c)に示すレジスト4としては、例えば「日本化薬マイクロケム株式会社製 SU8−10」等のネガ型厚膜レジストを用いることができる。なお、レジスト4の厚みは5μm〜10μmとすることが好ましく、フォトリソグラフィの際の露光量は100mJ/cm〜300mJ/cm、現像時間は1分〜10分、とすることが好ましい。
【0037】
また、レジストパターン形成工程では、パターン同士の間隔が20μm以下のレジストパターンを形成することが好ましい。これにより、表面に凹凸状の微細なパターンを有するNi−W合金層2を基材上に形成することができる。
【0038】
(d)Ni−W合金層第2電鋳工程
Ni−W合金層第2電鋳工程は、レジストパターン形成工程で作製された電鋳母型上に、電鋳によって凹凸状のパターンを有するNi−W合金層を形成する工程である。Ni−W合金第2電鋳工程では、図2(d)に示すように、電鋳母型上レジストパターンをマスクとして、前記したNi−W合金第1電鋳工程と同様の電鋳条件で電鋳を行う。なお、Ni−W合金層第2電鋳工程では、前記したCPE−1000でNi−W合金層2上の酸化膜を除去した後にNi−W電鋳を行う。
【0039】
Ni−W合金層第2電鋳工程では、少なくともスルファミン酸ニッケルおよびタングステン酸ナトリウムを合計で0.4mol/l含み、かつ、スルファミン酸ニッケルを0.04mol/l〜0.20mol/l含む電鋳液を用いて電鋳を行う。Ni−W合金層第2電鋳工程では、より具体的には、少なくともスルファミン酸ニッケルを0.04mol/l〜0.20mol/l含むとともに、タングステン酸ナトリウムを0.20mol/l〜0.36mol/l含む電鋳液を用いて電鋳を行うことができる。また、Ni−W合金層第1電鋳工程では、電流密度を1000A/m〜1500A/m(好ましくは1200A/m)、通電時間を10msec、非通電時間を70msec、に設定したパルス電流を用いて電鋳を行う。
【0040】
その他の電鋳条件としては、例えば電鋳液のpH:7〜9、めっき温度:57℃〜63℃、電源:最大電流10Aのパルス電源、めっき時間:10分〜15分、陽極と陰極との距離:2cm、とすることが好ましい。また、電鋳に用いる陽極としては、例えばステンレス鋼であるSUS304を用いることが好ましく、陽極の大きさは幅7cm×高さ10cmとし、陰極の大きさは10cmとすることが好ましい。Ni−W合金層第2電鋳工程では、このような条件下で電鋳を行うことで、図2(d)に示すように、レジスト4の間にNi−W合金層2が形成される。
【0041】
(e)レジスト剥離工程
レジスト剥離工程は、レジスト4を剥離する工程である。レジスト剥離工程では、図2(e)に示すように、剥離液等を用いてNi−W合金層2上のレジスト4を剥離してガラス成形金型1を作製する。なお、剥離液は例えば60℃〜80℃に加熱し、除去時間を50分として用いることが好ましい。また、剥離液としては、例えば「日本化薬マイクロケム株式会社製 リムーバーPG」を用いることができる。
【0042】
以上のような手順を行うガラス成形金型1の製造方法は、Ni−W電鋳液から結晶化開始温度の高いナノ結晶材料であるNi−W合金層を得られるため、耐熱性および加工性に優れたガラス成形金型1を作製することができる。また、ガラス成形金型1の製造方法は、スルファミン酸ニッケルおよびタングステン酸ナトリウムを含有するガラス成形金型用Ni−W電鋳液を用いてガラス成形金型を作製するため、環境負荷も小さい。
【0043】
また、ガラス成形金型1の製造方法は、Ni−W電鋳液を用いて電鋳を行うことで、ガラス成形金型1の大面積化を図ることができるとともに、ドライエッチング処理や離型処理が不要となるため、低コスト化を図ることができる。また、ガラス成形金型1の製造方法は、スルファミン酸ニッケルおよびタングステン酸ナトリウムの合計の含有率が所定値に規制された電鋳液を用い、当該電鋳液中において所定条件下のパルス電流を用いて電鋳を行うため、作製されるガラス成形金型1のNi−W合金層2の内部応力を所定範囲に制御できるとともに、当該Ni−W合金層2中におけるW含有率を27原子%〜34原子%に制御することができる。従って、ガラス材料に対する離型性に優れたガラス成形金型1を作製することができる。
【0044】
[ガラス成形品の製造方法]
以下、本発明の実施形態に係るガラス成形金型1を用いたガラス成形品の製造方法について、図3を参照しながら説明する。ガラス成形品は、ガラス成形金型1を用いて、図3(a)および(b)に示す工程により作製される。
【0045】
(f)ガラス成形品作製工程
まず、図3(a)に示すように、メインバルブ12および真空ポンプ13により真空引きされ、内部が0.1Pa以下の圧力に保持される真空容器10内に上部ヒータ11aと下部ヒータ11bが設置される。下部ヒータ11bは断熱材15上に設置され、上部ヒータ11aは真空容器10の上側壁を貫通し外部に連通する荷重負荷軸14に接合されている。
【0046】
次に、図3(a)に示すように、上部ヒータ11aと下部ヒータ11bとの間に、ガラス成形金型1とガラスプレート7aを配置し、ガラス成形金型1を上部ヒータ11aにより加熱し、ガラス材料であるガラスプレート7aを下部ヒータ11bにより加熱する。ガラスプレート7aとしては、例えば「ショット社製 D263(線膨張係数:7.2×10−6/℃、ガラス転移点:557℃)」等の硼珪酸ガラスを用いる。ガラスプレート7aはそのガラス転移点よりも高い温度で保持されるように上部ヒータ11aと下部ヒータ11bを制御する。なお、加熱温度は、例えば610℃に設定することが好ましい。
【0047】
次に、ガラスプレート7aをそのガラス軟化点よりも高い温度で保持し、荷重負荷軸14により上部ヒータ11aに荷重を負荷し、ガラスプレート7aに所定の圧力が所定時間負荷されるようにする。その結果、図3(b)に示すように、ガラスプレート7aの表面部分がガラス成形金型1のNi−W合金層2の凹凸部5に倣って変形する。そして、ガラスプレート7aをガラス転移点以下の温度まで徐々に冷却し、ガラス成形金型1から離型することで、ガラス成形品7が形成される。なお、ガラスプレート7aに負荷される圧力は、例えば0.89MPaとし、圧力保持時間は、例えば10分とすることができる。
【0048】
ここでガラス成形金型1のNi−W合金層2中におけるW含有率が27原子%未満である場合、ガラス転移点以上で行うガラス成形の際にガラスプレート7aがNi−W合金層2に融着し、ガラス成形品7をガラス成形金型1から離型できなくなるため、Ni−W合金層2に含まれるWの含有率は前記した範囲内とする。
【0049】
以上のような手順からなるガラス成形品7の製造方法は、一度に大面積にわたる微細なガラス成形加工を行うことができるとともに、高温でのガラス材料のプレス成形によって金型表面が酸化するのを防ぎ、またガラス材料の金型への融着を防止できる。
【実施例】
【0050】
[第1の実験例]
次に、本発明の要件を満たす実施例1と本発明の要件を満たさない比較例1の効果を確認した実験例を示す。第1の実験例では、まず、本発明の要件を満たす電鋳液と、本発明の要件を満たさない電鋳液と、でそれぞれガラス成形金型を作製し、電鋳液の成分の違いがガラス成形金型に与える影響について実験を行った。以下、ガラス成形金型を作製する場合の各工程に沿って、説明を行う。
【0051】
(a)基材研磨工程
基材研磨工程は、実施例1と比較例1とで同様の処理を行った。すなわち、Ni基合金であるインコロイ(登録商標)909の直径30mmの丸棒を10mm厚さの円盤状サンプルに切り出し、この円盤状サンプルの上下面を研磨して両面の平行出しをして実施例1および比較例1に係る基材をそれぞれ作製した。また、Ni−W合金層の付着力を増大させるために、円盤状サンプルの上下面の酸化膜を「三菱ガス化学株式会社製 CPE−1000」を2倍希釈したエッチング液(原液40cc、純水40cc)によって除去した。なお、酸化膜のエッチングは、室温において30秒間行った。
【0052】
(b)Ni−W合金層第1電鋳工程
Ni−W合金層第1電鋳工程は、実施例1と比較例1とで異なる処理を行った。すなわち、実施例1は、スルファミン酸ニッケルを所定量含有する電鋳液を用いて、電流密度を1200A/m、通電時間を10msec、非通電時間を70msecに設定したパルス電流を用いて電鋳を行った。一方、比較例1は、硫酸ニッケルを所定量含有する電鋳液を用いて、パルス電流ではない通常の電流によって電鋳を行った。ここで、硫酸ニッケルは、従来の電鋳液においてニッケルの供給源として慣用されているものである。実施例1および比較例1で用いられた電鋳液の組成を以下の表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
なお、その他の電鋳条件は、実施例1と比較例1とで同様のものを用いた。すなわち、電鋳液のpH:7、めっき温度:60℃、電源:最大電流10Aのパルス電源、めっき時間:10分、陽極と陰極との距離:2cm、とした。また、電鋳に用いる陽極として、幅7cm×高さ10cmのSUS304を用いた。
【0055】
(c)レジストパターン形成工程
レジストパターン形成工程は、実施例1と比較例1とで同様の処理を行った。すなわち、実施例1および比較例1に係る金型材料のNi−W合金層の表面に、ネガ型厚膜レジストである「日本化薬マイクロケム株式会社製 SU8−10」を用いてレジストパターンを形成した。また、レジストの厚みは10μm、露光量は300mJ/cm、現像時間は10分、とした。レジストパターン形成工程において作製した実施例1に係る電鋳母型のSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)画像を図4に示す。
【0056】
(d)Ni−W合金層第2電鋳工程
Ni−W合金層第2電鋳工程は、実施例1と比較例1とで異なる処理を行った。すなわち、実施例1は、まずCPE−1000でNi−W合金層上の酸化膜を除去した。そして、スルファミン酸ニッケルを所定量含有する電鋳液を用いて、通電時における電流密度を1200A/mで一定とし、通電時間を10msec、非通電時間を70msecに設定したパルス電流を用いて電鋳を行った。一方、比較例1は、硫酸ニッケルを所定量含有する電鋳液を用いて、パルス電流ではない通常の電流によって電鋳を行った。実施例1および比較例1で用いられた電鋳液の組成は、前記した表1と同様のものである。
【0057】
なお、その他の電鋳条件は、実施例1と比較例1とで同様のものを用いた。すなわち、電鋳液のpH:7、めっき温度:60℃、電源:最大電流10Aの電源、めっき時間:15分、陽極と陰極との距離:2cm、とした。また、電鋳に用いる陽極として、幅7cm×高さ10cmのSUS304を用いた。Ni−W合金層第2電鋳工程を行った後の比較例1のSEM画像を図5に示す。
【0058】
図5に示すように、比較例1は、硫酸ニッケルを含有する電鋳液を用いて作製されたため、基材上に形成されたNi−W合金層の内部応力が大きくなり、Ni−W合金層のパターンが電鋳母材のレジストパターンを押しつぶしてしまっていることが確認できる。一方、実施例1は、図示は省略したものの、スルファミン酸ニッケルを含有する電鋳液を用い、かつ、所定条件のパルス電流を用いて作製されたため、内部応力によるレジストの変形がなく、レジスト間にNi−W合金層の凹凸部が適切に形成されていた。
【0059】
このように、電鋳液におけるニッケルの供給源を、従来慣用されていた硫酸ニッケルからスルファミン酸ニッケルに変更することで、Ni−W合金層の凹凸部を適切に形成することができるため、製造コストが低廉であり、一度に大面積にわたる微細なガラス成形加工が可能なガラス成形金型を作製することができる。
【0060】
第1の実験例では、次に、前記した実施例1に係るガラス成形金型で実際にガラス成形品を作製し、当該ガラス成形品を所定回数作成した後のガラス成形金型の状態とガラス成形品の状態とを確認した。ここでは、実施例1について、第1の実験のNi−W合金層第2電鋳工程に引き続き、レジスト剥離工程とガラス成形品作製工程とを行って、ガラス成形金型を完成されるとともに、ガラス成形品を作製した。
【0061】
(e)レジスト剥離工程
レジスト剥離工程では、70℃に加熱した「日本化薬マイクロケム株式会社製 リムーバーPG」を用いて、除去時間を50分としてレジストを剥離し、実施例1に係るガラス成形金型を完成させた。実施例1に係るガラス成形金型は、図6に示すように、Ni−W合金層の凹凸部が適切に形成されている。また、実施例1に係るガラス成形金型は、最小パターン幅20μm、高さ6μmのパターンとなっている。
【0062】
(f)ガラス成形品作製工程
ガラス成形品作製工程では、実施例1に係るガラス成形金型を用いて、硼珪酸ガラスをプレス成形し、ガラス成形品を作製した。硼珪酸ガラスとしては、「ショット社製 D263(線膨張係数:7.2×10−6/℃、ガラス転移点:557℃)」を用いた。また、プレス成形の際における真空中の温度は610℃とし、圧力は0.89MPaとし、圧力保持時間は10分とした。そして、これらと同じ条件下で、合計27回のプレス成形を行い、ガラス成形金型の状態とガラス成形品の状態とを確認した。
【0063】
図7(a)は、実施例1のガラス成形金型によって27回目にプレス成形されて作成されたガラス成形品のガラスインプリントパターンのSEM画像であり、図7(b)は、27回目のプレス成形が終わった後のガラス成形金型のSEM画像である。
【0064】
図7(a)に示すように、本発明の要件を満たす実施例1のガラス成形金型を用いることで、27回目のプレス成形であっても1回目と同一形状および同一寸法のガラスインプリントパターンを形成でき、離型性に優れていることが確認できた。また、図7(b)に示すように、本発明の要件を満たす実施例1のガラス成形金型は、27回目のプレス成形を経た後であっても、凹凸部が欠けることなく、強度にも優れていることが確認できた。
【0065】
[第2の実験例]
次に、本発明の要件を満たす実施例2,3の効果を確認した実験例を示す。第2の実験例では、前記した実施例1とは異なるパターンを形成した電鋳母材を作成し、当該電鋳母材を用いてガラス成形金型を作成した。
【0066】
第2の実験例では、基板研磨工程、Ni−W合金層第1電鋳工程については、実施例1と同様の処理を行った。そして、レジストパターン形成工程において、実施例1で用いられたレジストよりも厚みが薄い「日本化薬マイクロケム株式会社製 SU8−5」を用いて、レジストの厚みを5μm、露光量を100mJ/cm、現像時間を1分、としてレジストパターンを形成した。実施例2に係る電鋳母材を図8(a)に、実施例3に係る電鋳母材を図8(b)に示す。
【0067】
図8(a)は、L/S(ラインアンドスペース)パターンが形成された電鋳母型であり、図8(b)は、ドットパターンが形成された電鋳母型である。図8(a)および図8(b)に示すように、本発明の要件を満たす条件で電鋳を行うことで、実施例1とは異なるレジストパターンも適切に形成されていることがわかる。
【0068】
次に、実施例3について、実施例1と同様の条件でNi−W合金層第2電鋳工程を行うとともに、レジスト剥離工程において、75℃に加熱した「日本化薬マイクロケム株式会社製 リムーバーPG」を用いて、除去時間を50分としてレジストを剥離し、図9に示すようなガラス成形用金型を作製した。図9に示すように、本発明の要件を満たす条件で電鋳を行うことで、最小パターン幅10μm以下、すなわち5μm前後のドットパターンを形成することができた。なお、図示は省略したものの、実施例2についても同様の条件でガラス成形用金型を作製した結果、最小パターン幅20μm以下のL/Sパターンを形成することができた。
【0069】
[第3の実験例]
次に、本発明の要件を満たす実施例1の効果をさらに確認した実験例を示す。第3の実験例では、前記した実施例1に係る成形金型を用いて、アルミ合金をプレス成形し、アルミ合金成形品を作製した。アルミ合金としては、ジュラルミンA2017を用いた。また、プレス成形の際における真空中の温度は350℃,400℃,450℃,475℃,500℃,600℃とし、圧力は0.89MPaとし、圧力保持時間は10分とした。
【0070】
真空中の温度を350℃とした場合、パターンを転写することはできなかった。また、真空中の温度を400℃とした場合、図10(a)に示すようなパターンを転写することができた。深さは1.817μmである。また、真空中の温度を450℃とした場合、図10(b)に示すようなパターンを転写することができた。深さは2.823μmである。また、真空中の温度を475℃とした場合、パターンを転写することができた(図示省略)。深さは3.986μmである。また、真空中の温度を500℃とした場合、図10(c)に示すようなパターンを転写することができた。深さは4.094μmであり、細線では20μmを転写することができた。また、真空中の温度を600℃とした場合、アルミ合金(A2017)が成形金型に張り付いてしまい、パターンを転写することができなかった。
【0071】
以上より、発明の要件を満たす実施例1の成形金型は、真空中の温度を400℃〜500℃の範囲内とすることで、ガラス材料のみならずアルミ合金材料からも成形品を形成できることが確認できた。
【0072】
以上、成形金型用Ni−W電鋳液、成形金型の製造方法、成形金型および成形品の製造方法について、発明を実施するための形態および実施例により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【0073】
例えば、本発明に係る成形金型は、前記したようにガラス材料のみならず、例えばアルミ合金材料やプラスチック材料等も成形品の材料として用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 ガラス成形金型
2 Ni−W合金層
3 基材
3a 基材上面
3b 基材下面
4 レジスト
5 凹凸部
5a 凸部
5b 凹部
6 金型材料
7 ガラス成形品
7a ガラスプレート
10 真空容器
11a,11b ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸状のパターンを有する成形品の成形加工に用いられる成形金型を電鋳によって作製する際に用いられる成形金型用Ni−W電鋳液であって、
少なくともスルファミン酸ニッケルとタングステン酸ナトリウムを合計で0.40mol/l含み、かつ、前記スルファミン酸ニッケルを0.04mol/l〜0.20mol/l含むことを特徴とする成形金型用Ni−W電鋳液。
【請求項2】
請求項1に記載の成形金型用Ni−W電鋳液中でパルス電流を印加することで、Ni基合金またはNi−Fe基合金からなる基材上に厚さが略均一なNi−W合金層を形成するNi−W合金層第1電鋳工程と、
前記Ni−W合金層上にレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
前記成形金型用Ni−W電鋳液中でパルス電流を印加することで、前記レジストパターンをマスクとして、前記Ni−W合金層上に凹凸状のパターンを形成するNi−W合金層第2電鋳工程と、
を行うことを特徴とする成形金型の製造方法。
【請求項3】
前記Ni−W合金層第1電鋳工程および前記Ni−W合金層第2電鋳工程は、前記成形金型用Ni−W電鋳液のpHを7〜9、温度を57℃〜63℃とし、前記パルス電流の電流密度を1000A/m〜1500A/mとすることを特徴とする請求項2に記載の成形金型の製造方法。
【請求項4】
前記レジストパターン形成工程は、パターン同士の間隔が20μm以下のレジストパターンを形成することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の成形金型の製造方法。
【請求項5】
Ni基合金またはNi−Fe基合金からなる基材と、
前記基材上に形成され、表面に凹凸状のパターンを有するNi−W合金層と、を備え、
前記Ni−W合金層は、Wを27原子%〜34原子%含有することを特徴とする成形金型。
【請求項6】
0.1Pa以下の圧力に減圧した容器内において、請求項5に記載の成形金型を用いて、転移点以上の温度で金型材料をプレス成形することを特徴とする成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−193395(P2012−193395A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56385(P2011−56385)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000192903)神奈川県 (65)
【出願人】(510078171)株式会社LEAP (4)
【Fターム(参考)】