戸挟み検出装置
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用ドアが閉じた際に身体の一部や持ち物などが挟まったことを検出する戸挟み検出装置に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】列車やバスなどの車両においては、乗降客の安全を確保することを目的として、車両用ドアが閉じた際に身体の一部や持ち物などが挟まったことを検出する戸挟み検出装置が設けられている。この戸挟み検出装置は、例えば、車両用ドアの先端部に戸先ゴムが設けられ、車両用ドアが閉じた際の戸先ゴムの押圧状態を検出することにより、戸挟み状態であるか否かを検出するものである。すなわち、この戸挟み検出装置は、車両用ドアが閉じた際に身体の一部や持ち物などが挟まると、戸先ゴムが通常とは異なった状態で押圧されることから、その戸先ゴムの押圧状態の変化を検出することによって、戸挟み状態を検出することができるものである。
【0003】ところで、このような戸挟み検出装置においては、戸挟み状態であるか否かを検出する際には、車体側から車両用ドア側に電力を供給する必要があり、また、車両用ドア側から車体側に戸挟み状態であることを示す検出信号を送信する必要がある。そのため、従来のものは、車体側と車両用ドア側とをケーブルで接続し、車体側と車両用ドア側との間でケーブルを介して電力の供給や検出信号の送受信を行っていた。この場合、ケーブルとしては、車両用ドアが乗降口を開閉するために頻繁に往復移動し、それに応じて頻繁に屈曲することから、屈曲に対して十分な耐久性を有するものが採用されていた。
【0004】ところが、そのように屈曲に対して十分な耐久性を有するものであっても、疲労や劣化に起因して断線することがあることは否めず、そのため、このようなケーブルを採用した構成のものは、乗降客の安全を確保するという点では、信頼性に欠けるものである。特に、戸挟み状態にあるときに、ケーブルが断線した場合には、例えば身体が挟まれた状態で車両が発進したりする虞がある。
【0005】そこで、このような問題を解決すべく、車体側と車両用ドア側との間における電力の供給や検出信号の送受信を電磁誘導結合を利用して行う方法が考えられる。この場合、具体的な構成としては、車体側と車両用ドア側との双方に、コンデンサとコイルとからなる共振回路を設け、それら共振回路により電磁誘導結合を確立させ、電力の供給や検出信号の送受信を行うことが考えられる。これにより、車体側と車両用ドア側とを接続するケーブルを不要とすることができ、これに伴って、ケーブルが断線することもなく、乗降客の安全を確実に確保することができるようになる。
【0006】しかしながら、この構成では、上記したように共振回路が車体側および車両用ドア側にそれぞれ取付けられるものであり、この場合、車体および車両用ドアが金属で構成されていることを考慮すると、共振回路を構成するコイルの電気的特性が金属の影響を受けて変化してしまうという問題がある。そのため、コイルを車体側および車両用ドア側に取付ける前に、共振点が最適な位置となるようにコイルのインダクタンスを調整しても、コイルを車体側および車両用ドア側に取付けた後では、インダクタンスが減少したり、直流抵抗が増加したりして、共振点が最適な位置からずれてしまうことになる。そうなると、コイルに供給される電力が低下して電力の供給を的確に行うことができなくなったり、検出信号の通信効率が低下して検出信号の送受信を的確に行うことができなくなるという不具合が生じることになる。
【0007】このような事情から、コイルを取付ける前ではなく、コイルを取付けた後に、共振点が最適な位置となるようにコイルのインダクタンスを調整する必要があるが、これでは、コイルを取付けた場所を移動しながら調整することになるので、作業効率が極めて悪いことになる。また、何らかの原因により異常が発生した場合には、コイルが取付けられた状態で検査を行うことになるので、これでは、極めて不便である。
【0008】本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、戸挟み状態であるか否かを的確に検出することによって乗降客の安全を確実に確保することができ、しかも、取付けるに際して作業効率が低下することがなく、さらには、検査を容易に行うことができる戸挟み検出装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の戸挟み検出装置は、車体側に設けられた電力供給手段と、前記車体側の乗降口近傍の第1の取付箇所に取付けられた第1のケースと、この第1のケースに収容され、前記電力供給手段から交流電力が供給される第1のコイルと、前記車体の乗降口を開閉する車両用ドア側の第2の取付箇所に取付けられた第2のケースと、この第2のケースに収容され、前記第1のコイルとの間で電磁誘導結合する第2のコイルと、前記車両用ドア側に設けられ、前記第1のコイルと第2のコイルとが電磁誘導結合したことに応じて、前記第2のコイルにより生成された交流電力から定電圧を生成する定電圧回路と、前記車両用ドア側に設けられ、前記定電圧回路により生成された定電圧に基づいて検出を行い、その検出された検出値を予め決定された判定値と比較することに基づいて戸挟み状態であるか否かを判定し、その判定結果を示す検出信号を前記第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合により前記車体側に送信する検出手段とを備え、前記第1のケースにおける少なくとも前記第1の取付箇所の側は、その第1の取付箇所の材質の透磁率以上の透磁率を有する材質から形成されていると共に、前記第2のケースにおける少なくとも前記第2の取付箇所の側は、その第2の取付箇所の材質の透磁率以上の透磁率を有する材質から形成されているところに特徴を有する(請求項1)。
【0010】このような構成によれば、車体側に設けられた第1のコイルと車両用ドア側に設けられた第2のコイルとが電磁誘導結合すると、車両用ドア側において、定電圧回路は、第1のコイルと第2のコイルとが電磁誘導結合したことに応じて、第2のコイルにより生成された交流電力から定電圧を生成し、検出手段は、定電圧回路により生成された定電圧に基づいて検出を行い、その検出された検出値を予め決定された判定値と比較することに基づいて戸挟み状態であるか否かを判定し、その判定結果を示す検出信号を第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合により車体側に送信する。
【0011】このように、車体側に設けられた第1のコイルと車両用ドア側に設けられた第2のコイルとの間の電磁誘導結合により、車体側から車両用ドア側に交流電力が供給され、また、車両用ドア側から車体側に検出信号が送信されるようになるので、従来のものとは異なって、車体側と車両用ドア側とを接続するケーブルを不要とすることができ、これに伴って、ケーブルが断線することもなくなる。これにより、戸挟み状態であるか否かを的確に検出することができるようになるので、乗降客の安全を確実に確保することができ、信頼性を高めることができる。
【0012】このとき、第1のコイルを収容する第1のケースは、車体側の乗降口近傍の第1の取付箇所に取付けられるものであり、その第1のケースにおける少なくとも第1の取付箇所の側の材質の透磁率は、第1の取付箇所の材質の透磁率以上であることから、第1のケースを第1の取付箇所に取付ける際には、取付ける前後で、インダクタンスが減少したり、直流抵抗が増加したりすることがなく、共振点がずれることがないものである。
【0013】これにより、第1のケースを第1の取付箇所に取付ける前に、共振点が最適な位置となるようにコイルのインダクタンスの調整作業を行えば済むので、取付けた後に調整作業を行う必要がなく、作業効率が低下することがない。また、何らかの原因により異常が発生した場合には、第1のケースを第1の取付箇所から取外して検査を行うことができるので、検査を容易に行うことができる。
【0014】また、第2のコイルを収容する第2のケースと車両用ドア側における第2の取付箇所との関係についても、これと同様の関係にあるので、第2のケースを第2の取付箇所に取付ける前に、共振点が最適な位置となるようにコイルのインダクタンスの調整作業を行えば済み、取付けた後に調整作業を行う必要がなく、作業効率が低下することがない。また、何らかの原因により異常が発生した場合には、第2のケースを第2の取付箇所から取外して検査を行うことができるので、検査を容易に行うことができる。
【0015】また、上記した構成の戸挟み検出装置において、前記車体側に設けられ、前記第1のコイルに供給される交流電力のレベルを制御することにより前記第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合のレベルを制御し、その電磁誘導結合のレベル変化に基づいて信号パターンを生成する第1の信号パターン生成手段を備え、前記検出手段を、前記第1の信号パターン生成手段により生成された信号パターンを判定することにより、検出を開始するように構成しても良い(請求項2)。
【0016】このような構成によれば、車体側において、第1の信号パターン生成手段は、第1のコイルに供給される交流電力のレベルを制御することにより第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合のレベルを制御し、その電磁誘導結合のレベル変化に基づいて信号パターンを生成し、車両用ドア側において、検出手段は、第1の信号パターン生成手段により生成された信号パターンを判定して、検出を開始する。
【0017】このように、車体側から車両用ドア側に交流電力を供給すると共に、電磁誘導結合のレベル変化による信号パターンを利用して検出の開始タイミングを識別することができるので、別途、検出の開始タイミングを識別するための信号を生成する構成を設ける必要がなく、その分、構成の簡素化を図ることができる。
【0018】さらに、上記した構成の戸挟み検出装置において、前記車両用ドア側に設けられ、前記第2のコイルに供給される交流電力のレベルを制御することにより前記第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合のレベルを制御し、その電磁誘導結合のレベル変化に基づいて信号パターンを生成する第2の信号パターン生成手段を備え、前記検出手段を、前記検出信号を前記第2の信号パターン生成手段により生成された信号パターンにより生成するように構成しても良い(請求項3)。
【0019】このような構成によれば、車両用ドア側において、第2の信号パターン生成手段は、第2のコイルに供給される交流電力のレベルを制御することにより第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合のレベルを制御し、その電磁誘導結合のレベル変化に基づいて信号パターンを生成し、検出手段は、検出信号を第2の信号パターン生成手段により生成された信号パターンにより生成する。
【0020】このように、電磁誘導結合のレベル変化による信号パターンを利用して検出信号、つまり、戸挟み状態であるか否かの判定結果を識別することができるので、別途、判定結果を識別するための信号を生成する構成を設ける必要がなく、その分、構成の簡素化を図ることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明を列車に適用した一実施例について図面を参照して説明する。◎まず、図2において、車両1にあって車体2には、車両用ドア3が設けられている。車体2の乗降口4は、車両用ドア3が図2中矢印A1,A2方向に往復移動することに応じて開閉されるようになっている。この場合、車体2および車両用ドア3は、鉄材を主体として構成されているものである。
【0022】戸挟み検出装置5は、コントローラ6、ターミナル7およびユニット8を備えて構成されるもので、コントローラ6は、車体2の床下に取付けられ、ターミナル7は、乗降口4の上方に取付けられ、また、ユニット8は、車両用ドア3の上部に取付けられている。このうち、コントローラ6とターミナル7とは、ケーブル9、ナイロンコネクタ10,11およびケーブル12を介して接続されている。尚、図2では、図中、左側の車両用ドア3に対応したコントローラ6、ターミナル7およびユニット8などのみを示しており、図中、右側の車両用ドア3に対応したコントローラ、ターミナルおよびユニットなどは省略している。
【0023】次いで、上記ターミナル7の具体的な構成について、図3および図4を参照して説明する。図3は、ターミナル7の平面図(a)および正面図(b)を示しており、図4は、ターミナル7の分解図を示している。ターミナル7のケース13(本発明でいう第1のケース)は、鉄製のメインケース14aと樹脂製のカバー14bとが組合わされてなるもので、メインケース14aの内部に、詳しくは後述するようにコンデンサ、抵抗およびNPN型トランジスタなどの種々の電子部品が実装されたプリント配線基板15と、ボビン16に巻回されたコイル17(本発明でいう第1のコイル)とが配設された状態で、カバー14bがメインケース14aにボルト18によりボルト止めされて構成されている。
【0024】また、ターミナル7の所定部位には、上記ケーブル12が接続されており、そのケーブル12の先端部には上記ナイロンコネクタ11が設けられている(図2参照)。尚、図4では、ケーブル12は省略している。この場合、コイル17に電力が供給され、コイル17から電磁界が発生すると、その電磁界は、メインケース14aが鉄製であり、また、カバー14bが樹脂製であることから、カバー14bを通じて空間に放射されるようになっている。
【0025】次いで、上記ユニット8の具体的な構成について、図5および図6を参照して説明する。図5は、ユニット8の平面図(a)、正面図(b)および側面図(c)を示しており、図6は、ユニット8の分解図を示している。ユニット8のケース19(本発明でいう第2のケース)は、取付部20aが一体に形成された鉄製のメインケース20bと樹脂製のカバー20cとが組合わされてなるもので、メインケース20bの内部に、詳しくは後述するようにコンデンサ、抵抗およびNPN型トランジスタなどの種々の電子部品が実装されたプリント配線基板21がボルト22によりナット22aを介してボルト止めされると共に、プリント配線基板21に電気的に接続された圧力センサ23がねじ24によりねじ止めされ、さらに、ボビン25に巻回されたコイル26(本発明でいう第2のコイル)が配設された状態で、カバー20cがメインケース20bにボルト27によりボルト止めされて構成されている。
【0026】圧力センサ23には、2個の圧力ポートとしてのナイロンコネクタ28,29が設けられており、それらナイロンコネクタ28,29は、メインケース20bから突出している。この場合、コイル26に電力が供給され、コイル26から電磁界が発生すると、その電磁界は、メインケース20bが鉄製であり、また、カバー20cが樹脂製であることから、カバー20cを通じて空間に放射されるようになっている。
【0027】図7は、上記ターミナル7が車体2に取付けられている状態およびユニット8が車両用ドア3に取付けられている状態の平面図(a)、正面図(b)および側面図(c)を示している。車体2を構成する鉄板30の内壁面30aには、2個の取付板31が溶接により取付固定されており、ターミナル7は、それら取付板31にねじ止めされていることによって、そのメインケース14aと内壁面30a(本発明でいう第1の取付箇所)とが対向するように、鉄板30の内壁面30aに取付固定されている。このとき、ターミナル7におけるメインケース14aと鉄板の内壁面30aとは、同じ材質であるので、それらの透磁率は等しいものである。
【0028】ユニット8は、そのメインケース20bの取付部20aが車両用ドア3の上部にねじ止めされていることによって、そのメインケース20bと車両用ドア3の上面部3a(本発明でいう第2の取付箇所)とが対向するように、車両用ドア3の上面部3aに取付固定されている。このとき、ユニット8におけるメインケース20bと車両用ドア3の上面部3aとは、同じ材質であるので、それらの透磁率は等しいものである。尚、この場合、車両用ドア3が図2中矢印A1,A2方向に往復移動すると、ユニット8がターミナル7の長手方向に沿うように往復移動するようになっている。
【0029】尚、車両用ドア3が乗降口4を閉鎖している戸閉め位置にあるとき、つまり、上述した図2に示す状態のときには、ターミナル7とユニット8とは、図8中(a)に示すように対向する位置関係になり、つまり、ターミナル7の内部に配設されたコイル17とユニット8の内部に配設されたコイル26とが対向するものである。一方、車両用ドア3が乗降口4を開放している戸開き位置にあるときには、ターミナル7とユニット8とは、図8中(b)に示すように対向しない位置関係になり、つまり、コイル17とコイル26とが対向しないものである。
【0030】図9は、上記車両用ドア3の要部の構成を示している。車両用ドア3の先端部(戸先部)には、車両用ドア3の上端部から下端部の略全体にわたって戸先ゴム32が設けられている。戸先ゴム32は、その断面形状を図10に示すように、断面略半円形状の戸当り部33および断面略矩形状の取付部34を一体に有している。取付部34は、車両用ドア3の先端部に形成された凹部内に挿入固定されており、これにより、戸先ゴム32が車両用ドア3の先端部に固定されている。また、戸当り部33は、車両用ドア3の端面から突出しており、これにより、車両用ドア3が閉じられる際、つまり、車両用ドア3と、それと対になっている車両用ドア3とが衝突する際の衝撃が和らげられるようになっている。
【0031】図10において、戸当り部33の内底壁にあって車内側には、第1の連結部33aが一体に形成されていると共に、戸当り部33の内周壁にあって車内側には、第2の連結部33bが一体に形成されている。これら第1の連結部33aおよび第2の連結部33bの先端部には、円筒状部33cが一体に形成されており、この円筒状部33cの内部が戸先ゴム32の上端部から下端部にかけて貫通する中空部33dとされている。また、戸当り部33の内底壁にあって車外側には、規制壁部33eが一体に形成されている。
【0032】戸当り部33の中空部33dの上端部は、「L」字型のシリコンチューブ連結管35の一端部が挿入されていると共に閉塞され、中空部33dの下端部は、閉塞部材36,37により二重に閉塞されており、これにより、中空部33d内の空気が密封されている。上記シリコンチューブ連結管35の他端部は、シリコンチューブ38を介してユニット8内に配設された上記圧力センサ23の一方の圧力ポートとしてのナイロンコネクタ28に接続されており、これにより、圧力センサ23は、戸当り部33の中空部33d内の空気の圧力を、シリコンチューブ連結管35、シリコンチューブ38を通じて検出することができるようになっている。
【0033】一方、取付部34には、戸先ゴム32の上端部から下端部にかけて貫通する中空部34aが形成されている。取付部34の中空部34aの上端部は、「L」字型のシリコンチューブ連結管39の一端部が挿入されていると共に閉塞され、中空部34aの下端部は、閉塞部材40,41により二重に閉塞されており、これにより、中空部34a内の空気が密封されている。上記シリコンチューブ連結管39の他端部は、シリコンチューブ42を介して上記圧力センサ23の他方の圧力ポートとしてのナイロンコネクタ29に接続されており、これにより、圧力センサ23は、取付部34の中空部34a内の空気を圧力を、シリコンチューブ連結管39、シリコンチューブ42を通じて検出することができるようになっている。
【0034】さらに、戸先ゴム32の上部には、芯ゴム43が設けられていると共に、戸先ゴム32の下部には、芯ゴム44(図10参照)が設けられている。これら芯ゴム43,44は、戸先ゴム32における戸当り部33の補強部材として作用するものである。
【0035】このように構成された戸先ゴム32においては、戸当り部33に車外側への力が作用すると、戸当り部33が弾性変形し、円筒状部33cが第2の連結部33bを介して車外側へ大きく引張られるが、このとき、規制壁部33eにより移動が規制されるようになるので、円筒状部33cが押潰される格好となり、つまり、中空部33d内の空気の圧力が大きく変化するようになる。一方、戸当り部33に車内側への力が作用すると、円筒状部33cが第2の連結部33bを介して車内側へ引張られるが、このとき、移動が規制されることがないので、円筒状部33cが押潰されることはなく、つまり、中空部33d内の空気の圧力が大きく変化することはない。
【0036】また、戸当り部33に車外側への力が作用する場合であっても、また、車内側への力が作用する場合であっても、取付部34は、上記したように、車両用ドア3の凹部内に挿入固定されているので、弾性変形することはなく、つまり、中空部34a内の空気の圧力が変化することはない。
【0037】尚、戸先ゴム32にあって芯ゴム43,44が設けられている区間では、戸当り部33に車外側への力が作用する場合であっても、また、車内側への力が作用する場合であっても、戸当り部33が何ら弾性変形することがなく、この区間以外の区間、つまり、戸先ゴム32にあって芯ゴム43,44が設けられていない区間が、詳しくは後述する戸挟み状態であるか否かを検出可能な区間となっている。
【0038】次に、上記コントローラ6、ターミナル7およびユニット8の電気的な構成について、図1を参照して説明する。まず、上記コントローラ6は、車体2の所定位置に配設された電源装置45(本発明でいう電力供給手段)から電力が供給されるようになっている。入力回路46は、車掌が戸開き操作することに応じて「戸開信号」が与えられると、「戸開信号」をCPU47に出力すると共に、車掌が戸閉め操作することに応じて「戸閉信号」が与えられると、「戸閉信号」をCPU47に出力するようになっている。
【0039】出力回路48は、CPU47から戸挟み状態であることを示す「戸挟み検出信号」が与えられると、「戸挟み検出信号」を例えば車掌室の出力手段(LEDなど)に出力するようになっている。フィルタ回路49は、ターミナル7の復調回路50から復調データが与えられると、復調データからノイズ成分を除去し、ノイズ成分が除去された復調データをターミナル7の発振回路51から出力される発振周波数に同期してCPU47に出力するようになっている。
【0040】CPU47は、マイクロコンピュータにより構成されているもので、記憶されているプログラムを実行することによって、詳しくは後述する処理を実行するようになっている。
【0041】ターミナル7は、上記コントローラ6と同様にして、電源装置45から電力が供給されるようになっている。発振回路51は、所定の発振周波数により電力を生成し、その与えられた電力を分周回路52に出力するようになっている。分周回路52は、発振回路51から電力が与えられると、その与えられた電力を分周し、分周した電力をブースタ53に出力するようになっている。
【0042】ブースタ53は、分周回路52から分周された電力が与えられると、その電力を増幅し、増幅した電力をコンデンサ54と上記コイル17とが直列接続されてなる直列共振回路55に出力するようになっている。直列共振回路55は、ブースタ53から増幅された電力が与えられると、コイル17により電磁界を発生するようになっている。尚、直列共振回路55の他方は、抵抗56を介して接地されている。
【0043】NPN型トランジスタ57は、コントローラ6のCPU47からバッファ58を介してベース電流が与えられると、オン状態となり、直列共振回路55のコンデンサ54に充電されている電力の一部を抵抗59を介してコレクタ電流とし、これにより、直列共振回路55のコイル17に供給される電力を低下させるようになっている。
【0044】このような構成とすることにより、コントローラ6のCPU47は、NPN型トランジスタ57に供給するベース電流をオンオフ制御し、直列共振回路55のコイル17に供給される電力を制御することによって、電磁誘導結合のレベルを制御することができ、例えば、レベルが所定レベルよりも大きい状態をデータ「1」に対応させると共に、レベルが所定レベルよりも小さい状態をデータ「0」に対応させることにより、それらデータ「1」,「0」からなる信号パターンを電磁誘導結合により送信させることができるようになっている。すなわち、本発明でいう第1の信号パターン生成手段60は、これらコントローラ6のCPU47、ターミナル7のNPN型トランジスタ57および直列共振回路55から構成されているものである。
【0045】上記復調回路50は、電磁誘導結合の際に、直列共振回路55のコイル17が受信した受信データを復調処理して復調データを生成し、復調データをコントローラ6のフィルタ回路49に出力するようになっている。
【0046】ユニット8において、上記コイル26とコンデンサ61とが並列接続されてなる並列共振回路62(本発明でいう定電圧回路)は、上記ターミナル7の直列共振回路55との間で電磁誘導結合するようになっており、電磁誘導結合の際にコイル26により生成された交流電力をコンデンサ61に充電するようになっている。
【0047】全波整流回路63は、コンデンサ61に充電された交流電力を整流して直流電力を生成し、直流電力を定電圧回路64に出力するようになっている。定電圧回路64は、全波整流回路61から直流電力が与えられると、その与えられた直流電力を一定電圧に変換し、その一定電圧に変換した電力をCPU65に出力するようになっている。
【0048】クロック抽出回路66は、並列共振回路62のコンデンサ61に充電された交流電力に同期したクロック信号を生成し、クロック信号をAND回路67に出力するようになっている。また、復調回路68は、電磁誘導結合の際に、並列共振回路62のコイル26が受信した受信データを復調処理して復調データを生成し、その復調データをCPU65に出力するようになっている。
【0049】NPN型トランジスタ69は、CPU65から上記したAND回路67を介してベース電流が与えられると、オン状態となり、並列共振回路62のコンデンサ61に充電されている電力の一部を抵抗70を介してコレクタ電流とし、これにより、並列共振回路62のコイル26に供給される電力を低下させるようになっている。
【0050】このような構成とすることにより、CPU65は、NPN型トランジスタ69に供給するベース電流をオンオフ制御し、並列共振回路62のコイル26に供給される電力を制御することによって、電磁誘導結合のレベルを制御することができ、例えば、レベルが所定レベルよりも大きい状態をデータ「1」に対応させると共に、レベルが所定レベルよりも小さい状態をデータ「0」に対応させることにより、それらデータ「1」,「0」からなる信号パターンを電磁誘導結合により送信させることができるようになっている。すなわち、本発明でいう第2の信号パターン生成手段71は、これらCPU65、NPN型トランジスタ69および並列共振回路62から構成されているものである。
【0051】圧力センサ23は、上述したように、圧力ポートとしての2つのナイロンコネクタ28,29を備えているもので、戸先ゴム32にあって戸当り部33の中空部33d内の空気の圧力を検出すると共に、取付部34の中空部34a内の空気の圧力を検出し、それら検出結果をCPU65に出力するようになっている。
【0052】可変抵抗72は、感度調節手段として設けられているもので、詳しくは後述するように、CPU65は、この可変抵抗72により設定された値を判定値として採用し、所定の処理を実行するようになっている。
【0053】CPU65は、マイクロコンピュータにより構成されているもので、記憶されているプログラムを実行することによって、詳しくは後述する処理を実行するようになっている。尚、本発明でいう検出手段73は、以上に説明したユニット8内の各電子部品から構成されているものである。
【0054】次に、上記構成の作用について、図11および図12を参照して説明する。図11は、コントローラ6のCPU47が実行する処理の内容を示し、図12は、ユニット8のCPU65が実行する処理の内容を示しているものである。
【0055】まず、コントローラ6のCPU47は、「戸開信号」を入力したか否かを判断する(ステップS1)。ここで、車掌が車両用ドア3を開放する操作を行うと、コントローラ6のCPU47は、「戸開信号」を入力するようになるので、ステップS1において「YES」と判断し、所定時間待機する(ステップS2)。ここで、この所定時間とは、車両用ドア3が戸閉め位置から戸開き位置への移動を開始してから、ある程度経過するまでの時間のことである。
【0056】コントローラ6のCPU47は、所定時間が経過したことを検出すると、ターミナル7の直列共振回路55に電力を供給することによって、直列共振回路55のコイル17から電磁界を発生させる(ステップS3)。尚、このとき、車両用ドア3は、戸閉め位置から戸開き位置に移動中である。
【0057】さて、ターミナル7における直列共振回路55のコイル17から電磁界が発生されたことを受けて、直列共振回路55のコイル17とユニット8における並列共振回路62のコイル26との間で電磁誘導結合が確立されると、コイル26に交流電力が誘起されるようになり、その交流電力が全波整流回路63で整流されて直流電力が生成され、直流電力が定電圧回路64で一定電圧に変換され、ユニット8のCPU65に与えられるようになる。
【0058】ユニット8のCPU65は、定電圧回路64から所定レベル以上の一定電圧が与えられると、つまり、電源電圧がOKとなると、ステップS21において「YES」と判断し、電磁誘導結合により「ウェイクアップ信号」を送信させる(ステップS22)。このとき、ユニット8のCPU65は、上述したように、NPN型トランジスタ69に供給するベース電流をオンオフ制御することによって、データ「1」,「0」からなる信号パターンを生成し、それを「ウェイクアップ信号」として送信させる。
【0059】次いで、ユニット8から送信された「ウェイクアップ信号」が電磁誘導結合によりターミナル7に受信データとして受信され、その受信データが復調処理され、復調データがコントローラ6のCPU47に与えられると、コントローラ6のCPU47は、ステップS4において「YES」と判断し、電磁誘導結合により「ティーチング開始信号」を送信させる(ステップS5)。このとき、コントローラ6のCPU47は、上述したように、NPN型トランジスタ57に供給するベース電流をオンオフ制御することによって、データ「1」,「0」からなる信号パターンを生成し、それを「ティーチング開始信号」として送信させる。
【0060】次いで、ターミナル7から送信された「ティーチング開始信号」が電磁誘導結合によりユニット8に受信データとして受信され、その受信データが復調処理され、復調データがユニット8のCPU65に与えられると、ユニット8のCPU65は、ステップS23において「YES」と判断し、このときの戸先ゴム32における戸当り部33の中空部33d内の空気圧と、取付部34の中空部34a内の空気圧とを測定し、その差圧を検出値Pとして検出し(ステップS24)、その検出値Pを基準値P0として記憶する(ステップS25)。つまり、ユニット8のCPU65は、車両用ドア3が戸閉め位置から戸開き位置に移動している移動中における戸当り部33の中空部33d内の空気圧と取付部34の中空部34a内の空気圧との差圧を、基準値P0として記憶する。
【0061】次いで、コントローラ6のCPU47は、「戸閉信号」を入力したか否かを判断する(ステップS6)。ここで、車掌が車両用ドア3を閉鎖する操作を行うと、コントローラ6側のCPU47は、「戸閉信号」を入力するようになるので、ステップS6において「YES」と判断し、タイマをスタートさせる(ステップS7)。尚、このとき、車両用ドア3は、戸開き位置から戸閉め位置に移動することになる。
【0062】次いで、ユニット8から送信された「ウェイクアップ信号」が電磁誘導結合によりターミナル7に受信データとして受信され、その受信データが復調処理され、復調データがコントローラ6のCPU47に与えられると、コントローラ6のCPU47は、ステップS8において「YES」と判断し、電磁誘導結合により「測定開始信号」を送信させる(ステップS9)。このとき、コントローラ6のCPU47は、NPN型トランジスタ57に供給するベース電流をオンオフ制御することによって、上述した「ティーチング開始信号」とは異なるデータ「1」,「0」からなる信号パターンを生成し、それを「測定開始信号」として送信させる。
【0063】次いで、ターミナル7から送信された「測定開始信号」が電磁誘導結合によりユニット8に受信データとして受信され、その受信データが復調処理され、復調データがユニット8のCPU65に与えられると、ユニット8のCPU65は、ステップS26において「YES」と判断し、このときの戸先ゴム32における戸当り部33の中空部33d内の空気圧と、取付部34の中空部34a内の空気圧とを測定し、その差圧を検出値Pとして算出する(ステップS27)。つまり、ユニット8のCPU65は、車両用ドア3が閉鎖しているときにおける戸当り部33の中空部33d内の空気圧と取付部34の中空部34a内の空気圧との差圧を、検出値Pとして検出する。
【0064】次いで、ユニット8のCPU65は、可変抵抗72の抵抗値を読込み、その読込んだ抵抗値を判定値P1として演算し(ステップS28)、上述した基準値P0と検出値Pとの差と、判定値P1とを比較する(ステップS29)。
【0065】さて、戸挟み状態でないときには、車両用ドア3が移動中、つまり、車両用ドア3が閉鎖する前における値である基準値P0と、車両用ドア3が閉鎖しているときの値である検出値Pとの差は、判定値P1以下となるので、ユニット8のCPU65は、ステップS29において「NO」と判断し、電磁誘導結合により「検出オフ信号」を送信させる(ステップS30)。このとき、ユニット8のCPU65は、NPN型トランジスタ57に供給するベース電流をオンオフ制御することによって、上述した「ウェイクアップ信号」とは異なるデータ「1」,「0」からなる信号パターンを生成し、それを「検出オフ信号」として送信させる。
【0066】そして、ユニット8から送信された「検出オフ信号」が電磁誘導結合によりターミナル7に受信され、その受信データが復調処理され、復調データがコントローラ6のCPU47に与えられると、コントローラ6のCPU47は、ステップS10において「NO」と判断し、ステップS11において「YES」と判断し、「戸挟み検出信号」の出力をオフとし、つまり、「戸挟み検出信号」を出力することはない(ステップS12)。
【0067】これに対して、戸挟み状態であるときには、基準値P0と検出値Pとの差は、判定値P1を越えるようになるので、ユニット8のCPU65は、ステップS29において「YES」と判断し、電磁誘導結合により「検出オン信号」を送信させる(ステップS31)。このとき、ユニット8のCPU65は、NPN型トランジスタ57に供給するベース電流をオンオフ制御することによって、上述した「ウェイクアップ信号」や「検出オフ信号」とは異なるデータ「1」,「0」からなる信号パターンを生成し、それを「検出オン信号」として送信させる。
【0068】そして、ユニット8から送信された「検出オン信号」が電磁誘導結合によりターミナル7に受信され、その受信データが復調処理され、復調データがコントローラ6のCPU47に与えられると、コントローラ6のCPU47は、ステップS10において「YES」と判断し、「戸挟み検出信号」の出力をオンとし、つまり、「戸挟み検出信号」を出力回路48に出力する(ステップS13)。
【0069】次いで、コントローラ6のCPU47は、タイマがタイムアップとなったか否かを判断し(ステップS14)、タイムアップでないときには、ステップS14において「NO」と判断し、上述したステップS10に戻る。一方、タイムアップであるときには、ステップS14において「YES」と判断し、ターミナル7の直列共振回路55に電力を供給することを停止し(ステップS15)、上述したステップS1に戻る。
【0070】すなわち、ユニット8のCPU65は、電源電圧としての電力が保持されている間は、上述したような判定処理を繰返し実行して「検出オン信号」もしくは「検出オフ信号」を送信し(ステップS27〜S31)、コントローラ6のCPU47は、タイマがタイムアップするまで間は、「検出オン信号」もしくは「検出オフ信号」が受信されたか否かを監視し(ステップS10〜S13)、タイマがタイムアップしたときに、その監視を停止してターミナル7の直列共振回路55に電力を供給することを停止するようになっている(ステップS15)。
【0071】このように本実施例によれば、車体2側に設けられたターミナル7と車両用ドア3側に設けられたユニット8との間で、電磁誘導結合により、電力を供給すると共に、戸挟み状態であるか否かを示す信号(検出オン信号、検出オフ信号)を送受信するように構成したので、従来のものとは異なって、車体2側と車両用ドア3側とを接続するケーブルを不要とすることができ、これに伴って、ケーブルが断線することもなくなる。これにより、戸挟み状態であるか否か的確に検出することができるようになるので、乗降客の安全性を確実に確保することができ、信頼性を高めることができる。
【0072】このとき、ターミナル7のケース13を鉄製のメインケース14aと樹脂製のカバー14bとから構成し、メインケース14aと車体2の鉄板30の内壁面30aとが対向するようにターミナル7を取付ける構成としたので、メインケース14aと鉄板30の内壁面30aとが同じ透磁率であることから、ターミナル7を取付ける前後で、インダクタンスが減少したり、直流抵抗が増加したりすることがなく、共振点がずれることがなくなる。これにより、ターミナル7を取付ける前に、共振点が最適な位置となるようにコイル17のインダクタンスの調整作業を行えば済むので、取付けた後に調整作業を行う必要がなく、作業効率が低下することがない。また、何らかの原因により異常が発生した場合には、ターミナル7を車体2から取外して検査を行うことができるので、検査を容易に行うことができる。
【0073】また、ユニット8についても、これと同様であり、ユニット8のケース19を鉄製のメインケース20bと樹脂製のカバー20cとから構成し、メインケース20bと車両用ドア3の上面部3aとが対向するようにユニット8を取付ける構成としたので、メインケース20bと車両用ドア3の上面部3aとが同じ透磁率であることから、ユニット8を取付ける前後で、インダクタンスが減少したり、直流抵抗が増加したりすることがなく、共振点がずれることがなくなる。これにより、ユニット8を取付ける前に、共振点が最適な位置となるようにコイル26のインダクタンスの調整作業を行えば済むので、取付けた後に調整作業を行う必要がなく、作業効率が低下することがない。また、何らかの原因により異常が発生した場合には、ユニット8を車両用ドア3から取外して検査を行うことができるので、検査を容易に行うことができる。
【0074】また、車両用ドア3が移動中であっても、電力を供給することができると共に、戸挟み状態であるか否かを示す信号を送受信することができ、つまり、車両用ドア3が移動中であるか否かに拘らず、戸挟み状態であるか否か検出することができるので、乗降客の安全性をより確実に確保することができ、信頼性をより高めることができる。
【0075】また、ターミナル7において、コントローラ6のCPU47がNPN型トランジスタ57に供給するベース電流をオンオフ制御することによって、「ティーチング開始信号」および「測定開始信号」を互いに異なる信号パターンにより生成し、それらの信号パターンを利用して圧力センサ23による検出の開始タイミングを識別するように構成したので、別途、検出の開始タイミングを識別するための信号を生成する構成を設ける必要がなく、その分、構成の簡素化を図ることができる。
【0076】さらに、ユニット8において、CPU65がNPN型トランジスタ69に供給するベース電流をオンオフ制御することによって、「検出オン信号」および「検出オフ信号」を互いに異なる信号パターンにより生成し、それらの信号パターンを利用して戸挟み状態であるか否かを識別するように構成したので、別途、戸挟み状態であるか否かを識別するための信号を生成する構成を設ける必要がなく、その分、構成の簡素化を図ることができる。
【0077】本発明は、上記した実施例にのみ限定されるものでなく、次のように変形または拡張することができる。ターミナルのメインケースを、それを取付ける鉄板の内壁面の透磁率よりも高い透磁率を有する材質から構成しても良く、また、ユニットのメインケースを、それを取付ける車両用ドアの上面部の透磁率よりも高い透磁率を有する材質から構成しても良い。
【0078】戸挟み状態であるか否かを検出するに際しては、戸先ゴム内の空気圧の圧力変化を検出するものに限らず、戸先ゴムに作用する押圧力の変化を検出するものであれば良く、例えば、機械的接点を有するテープスイッチによるもの、圧電ゴムによるもの、投光素子および受光素子を利用する光電式によるもの、超音波センサを利用する超音波式によるものなどであっても良い。
【0079】ターミナルおよびユニットは、それらの間で双方向通信する構成に限らず、少なくともユニットからターミナルに戸挟み状態であることを示す「検出オン信号」を送信する単方向通信する構成であっても良い。車両用ドアが戸閉め位置にあるときに電力の供給を停止する構成に限らず、常に、電力を供給する構成であっても良い。
【0080】ターミナルおよびユニットの位置関係を、車両用ドアが戸閉め位置にあるときに対向し、且つ、車両用ドアが戸開き位置にあるときに対向しない構成とすることにより、車両用ドアの移動範囲における限られた範囲でのみ電磁誘導結合を確立させる構成に限らず、車両用ドアが戸閉め位置にあるときに対向し、且つ、車両用ドアが戸開き位置にあるときにも対向する構成とすることにより、車両用ドアの移動範囲における全域にわたる範囲で電磁誘導結合を確立させる構成であっても良い。
【0081】コントローラとターミナルとを別々に設ける構成に限らず、それらを一体に設ける構成であっても良く、また、コントローラとターミナルとを1対1に設ける構成に限らず、1対n(nは複数)に設ける構成としても良く、つまり、集中制御する構成であっても良い。
【0082】
【発明の効果】以上の説明によって明らかなように、本発明の戸挟み検出装置によれば、車体側に設けられた第1のコイルと車両用ドア側に設けられた第2のコイルとの電磁誘導結合により、車体側から車両用ドア側に電力が供給され、また、車両用ドア側から車体側に検出信号が送信されるように構成したので、従来のものとは異なって、車体側と車両用ドア側とを接続するケーブルを不要とすることができ、これに伴って、ケーブルが断線することもなくなる。これにより、戸挟み状態であるか否かを的確に検出することができるようになるので、乗降客の安全性を確実に確保することができ、信頼性を高めることができる。
【0083】このとき、第1のケースにおける少なくとも第1の取付箇所の側を、第1の取付箇所の材質の透磁率以上となる透磁率の材質から構成し、第2のケースにおける少なくとも第2の取付箇所の側を、第2の取付箇所の材質の透磁率以上となる透磁率の材質から構成したので、第1のケースおよび第2のケースを取付ける際には、取付ける前後で、インダクタンスが減少したり、直流抵抗が増加したりすることがなく、共振点がずれることがなくなる。これにより、第1のケースおよび第2のケースを取付ける前に、共振点が最適な位置となるようにコイルのインダクタンスの調整作業を行えば済むので、取付けた後に調整作業を行う必要がなく、作業効率が低下することがない。また、何らかの原因により異常が発生した場合には、第1のケースおよび第2のケースを取外して検査を行うことができるので、検査を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック構成図
【図2】車両の要部を示す正面図
【図3】ターミナルの平面図(a)および正面図(b)
【図4】ターミナルの分解図
【図5】ユニットの平面図(a)、正面図(b)および側面図(c)
【図6】ユニットの分解図
【図7】ターミナルおよびユニットの取付状態を示す平面図(a)、正面図(b)および側面図(c)
【図8】ターミナルおよびユニットの位置関係を示す図
【図9】車両用ドアの要部を示す正面図
【図10】戸先ゴムの断面図
【図11】コントローラ側のCPUの処理内容を示すフローチャート
【図12】ユニット側のCPUの処理内容を示すフローチャート
【符号の説明】
図面中、1は車両、2は車体、3は車両用ドア、3aは上面部(第2の取付箇所)、4は乗降口、5は戸挟み検出装置、13はケース(第1のケース)、17はコイル(第1のコイル)、19はケース(第2のケース)、26はコイル(第2のコイル)、30aは内壁面(第1の取付箇所)、45は電源装置(電力供給手段)、60は第1の信号パターン生成手段、62は並列共振回路(定電圧回路)、71は第2の信号パターン生成手段、73は検出手段である。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用ドアが閉じた際に身体の一部や持ち物などが挟まったことを検出する戸挟み検出装置に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】列車やバスなどの車両においては、乗降客の安全を確保することを目的として、車両用ドアが閉じた際に身体の一部や持ち物などが挟まったことを検出する戸挟み検出装置が設けられている。この戸挟み検出装置は、例えば、車両用ドアの先端部に戸先ゴムが設けられ、車両用ドアが閉じた際の戸先ゴムの押圧状態を検出することにより、戸挟み状態であるか否かを検出するものである。すなわち、この戸挟み検出装置は、車両用ドアが閉じた際に身体の一部や持ち物などが挟まると、戸先ゴムが通常とは異なった状態で押圧されることから、その戸先ゴムの押圧状態の変化を検出することによって、戸挟み状態を検出することができるものである。
【0003】ところで、このような戸挟み検出装置においては、戸挟み状態であるか否かを検出する際には、車体側から車両用ドア側に電力を供給する必要があり、また、車両用ドア側から車体側に戸挟み状態であることを示す検出信号を送信する必要がある。そのため、従来のものは、車体側と車両用ドア側とをケーブルで接続し、車体側と車両用ドア側との間でケーブルを介して電力の供給や検出信号の送受信を行っていた。この場合、ケーブルとしては、車両用ドアが乗降口を開閉するために頻繁に往復移動し、それに応じて頻繁に屈曲することから、屈曲に対して十分な耐久性を有するものが採用されていた。
【0004】ところが、そのように屈曲に対して十分な耐久性を有するものであっても、疲労や劣化に起因して断線することがあることは否めず、そのため、このようなケーブルを採用した構成のものは、乗降客の安全を確保するという点では、信頼性に欠けるものである。特に、戸挟み状態にあるときに、ケーブルが断線した場合には、例えば身体が挟まれた状態で車両が発進したりする虞がある。
【0005】そこで、このような問題を解決すべく、車体側と車両用ドア側との間における電力の供給や検出信号の送受信を電磁誘導結合を利用して行う方法が考えられる。この場合、具体的な構成としては、車体側と車両用ドア側との双方に、コンデンサとコイルとからなる共振回路を設け、それら共振回路により電磁誘導結合を確立させ、電力の供給や検出信号の送受信を行うことが考えられる。これにより、車体側と車両用ドア側とを接続するケーブルを不要とすることができ、これに伴って、ケーブルが断線することもなく、乗降客の安全を確実に確保することができるようになる。
【0006】しかしながら、この構成では、上記したように共振回路が車体側および車両用ドア側にそれぞれ取付けられるものであり、この場合、車体および車両用ドアが金属で構成されていることを考慮すると、共振回路を構成するコイルの電気的特性が金属の影響を受けて変化してしまうという問題がある。そのため、コイルを車体側および車両用ドア側に取付ける前に、共振点が最適な位置となるようにコイルのインダクタンスを調整しても、コイルを車体側および車両用ドア側に取付けた後では、インダクタンスが減少したり、直流抵抗が増加したりして、共振点が最適な位置からずれてしまうことになる。そうなると、コイルに供給される電力が低下して電力の供給を的確に行うことができなくなったり、検出信号の通信効率が低下して検出信号の送受信を的確に行うことができなくなるという不具合が生じることになる。
【0007】このような事情から、コイルを取付ける前ではなく、コイルを取付けた後に、共振点が最適な位置となるようにコイルのインダクタンスを調整する必要があるが、これでは、コイルを取付けた場所を移動しながら調整することになるので、作業効率が極めて悪いことになる。また、何らかの原因により異常が発生した場合には、コイルが取付けられた状態で検査を行うことになるので、これでは、極めて不便である。
【0008】本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、戸挟み状態であるか否かを的確に検出することによって乗降客の安全を確実に確保することができ、しかも、取付けるに際して作業効率が低下することがなく、さらには、検査を容易に行うことができる戸挟み検出装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の戸挟み検出装置は、車体側に設けられた電力供給手段と、前記車体側の乗降口近傍の第1の取付箇所に取付けられた第1のケースと、この第1のケースに収容され、前記電力供給手段から交流電力が供給される第1のコイルと、前記車体の乗降口を開閉する車両用ドア側の第2の取付箇所に取付けられた第2のケースと、この第2のケースに収容され、前記第1のコイルとの間で電磁誘導結合する第2のコイルと、前記車両用ドア側に設けられ、前記第1のコイルと第2のコイルとが電磁誘導結合したことに応じて、前記第2のコイルにより生成された交流電力から定電圧を生成する定電圧回路と、前記車両用ドア側に設けられ、前記定電圧回路により生成された定電圧に基づいて検出を行い、その検出された検出値を予め決定された判定値と比較することに基づいて戸挟み状態であるか否かを判定し、その判定結果を示す検出信号を前記第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合により前記車体側に送信する検出手段とを備え、前記第1のケースにおける少なくとも前記第1の取付箇所の側は、その第1の取付箇所の材質の透磁率以上の透磁率を有する材質から形成されていると共に、前記第2のケースにおける少なくとも前記第2の取付箇所の側は、その第2の取付箇所の材質の透磁率以上の透磁率を有する材質から形成されているところに特徴を有する(請求項1)。
【0010】このような構成によれば、車体側に設けられた第1のコイルと車両用ドア側に設けられた第2のコイルとが電磁誘導結合すると、車両用ドア側において、定電圧回路は、第1のコイルと第2のコイルとが電磁誘導結合したことに応じて、第2のコイルにより生成された交流電力から定電圧を生成し、検出手段は、定電圧回路により生成された定電圧に基づいて検出を行い、その検出された検出値を予め決定された判定値と比較することに基づいて戸挟み状態であるか否かを判定し、その判定結果を示す検出信号を第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合により車体側に送信する。
【0011】このように、車体側に設けられた第1のコイルと車両用ドア側に設けられた第2のコイルとの間の電磁誘導結合により、車体側から車両用ドア側に交流電力が供給され、また、車両用ドア側から車体側に検出信号が送信されるようになるので、従来のものとは異なって、車体側と車両用ドア側とを接続するケーブルを不要とすることができ、これに伴って、ケーブルが断線することもなくなる。これにより、戸挟み状態であるか否かを的確に検出することができるようになるので、乗降客の安全を確実に確保することができ、信頼性を高めることができる。
【0012】このとき、第1のコイルを収容する第1のケースは、車体側の乗降口近傍の第1の取付箇所に取付けられるものであり、その第1のケースにおける少なくとも第1の取付箇所の側の材質の透磁率は、第1の取付箇所の材質の透磁率以上であることから、第1のケースを第1の取付箇所に取付ける際には、取付ける前後で、インダクタンスが減少したり、直流抵抗が増加したりすることがなく、共振点がずれることがないものである。
【0013】これにより、第1のケースを第1の取付箇所に取付ける前に、共振点が最適な位置となるようにコイルのインダクタンスの調整作業を行えば済むので、取付けた後に調整作業を行う必要がなく、作業効率が低下することがない。また、何らかの原因により異常が発生した場合には、第1のケースを第1の取付箇所から取外して検査を行うことができるので、検査を容易に行うことができる。
【0014】また、第2のコイルを収容する第2のケースと車両用ドア側における第2の取付箇所との関係についても、これと同様の関係にあるので、第2のケースを第2の取付箇所に取付ける前に、共振点が最適な位置となるようにコイルのインダクタンスの調整作業を行えば済み、取付けた後に調整作業を行う必要がなく、作業効率が低下することがない。また、何らかの原因により異常が発生した場合には、第2のケースを第2の取付箇所から取外して検査を行うことができるので、検査を容易に行うことができる。
【0015】また、上記した構成の戸挟み検出装置において、前記車体側に設けられ、前記第1のコイルに供給される交流電力のレベルを制御することにより前記第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合のレベルを制御し、その電磁誘導結合のレベル変化に基づいて信号パターンを生成する第1の信号パターン生成手段を備え、前記検出手段を、前記第1の信号パターン生成手段により生成された信号パターンを判定することにより、検出を開始するように構成しても良い(請求項2)。
【0016】このような構成によれば、車体側において、第1の信号パターン生成手段は、第1のコイルに供給される交流電力のレベルを制御することにより第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合のレベルを制御し、その電磁誘導結合のレベル変化に基づいて信号パターンを生成し、車両用ドア側において、検出手段は、第1の信号パターン生成手段により生成された信号パターンを判定して、検出を開始する。
【0017】このように、車体側から車両用ドア側に交流電力を供給すると共に、電磁誘導結合のレベル変化による信号パターンを利用して検出の開始タイミングを識別することができるので、別途、検出の開始タイミングを識別するための信号を生成する構成を設ける必要がなく、その分、構成の簡素化を図ることができる。
【0018】さらに、上記した構成の戸挟み検出装置において、前記車両用ドア側に設けられ、前記第2のコイルに供給される交流電力のレベルを制御することにより前記第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合のレベルを制御し、その電磁誘導結合のレベル変化に基づいて信号パターンを生成する第2の信号パターン生成手段を備え、前記検出手段を、前記検出信号を前記第2の信号パターン生成手段により生成された信号パターンにより生成するように構成しても良い(請求項3)。
【0019】このような構成によれば、車両用ドア側において、第2の信号パターン生成手段は、第2のコイルに供給される交流電力のレベルを制御することにより第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合のレベルを制御し、その電磁誘導結合のレベル変化に基づいて信号パターンを生成し、検出手段は、検出信号を第2の信号パターン生成手段により生成された信号パターンにより生成する。
【0020】このように、電磁誘導結合のレベル変化による信号パターンを利用して検出信号、つまり、戸挟み状態であるか否かの判定結果を識別することができるので、別途、判定結果を識別するための信号を生成する構成を設ける必要がなく、その分、構成の簡素化を図ることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明を列車に適用した一実施例について図面を参照して説明する。◎まず、図2において、車両1にあって車体2には、車両用ドア3が設けられている。車体2の乗降口4は、車両用ドア3が図2中矢印A1,A2方向に往復移動することに応じて開閉されるようになっている。この場合、車体2および車両用ドア3は、鉄材を主体として構成されているものである。
【0022】戸挟み検出装置5は、コントローラ6、ターミナル7およびユニット8を備えて構成されるもので、コントローラ6は、車体2の床下に取付けられ、ターミナル7は、乗降口4の上方に取付けられ、また、ユニット8は、車両用ドア3の上部に取付けられている。このうち、コントローラ6とターミナル7とは、ケーブル9、ナイロンコネクタ10,11およびケーブル12を介して接続されている。尚、図2では、図中、左側の車両用ドア3に対応したコントローラ6、ターミナル7およびユニット8などのみを示しており、図中、右側の車両用ドア3に対応したコントローラ、ターミナルおよびユニットなどは省略している。
【0023】次いで、上記ターミナル7の具体的な構成について、図3および図4を参照して説明する。図3は、ターミナル7の平面図(a)および正面図(b)を示しており、図4は、ターミナル7の分解図を示している。ターミナル7のケース13(本発明でいう第1のケース)は、鉄製のメインケース14aと樹脂製のカバー14bとが組合わされてなるもので、メインケース14aの内部に、詳しくは後述するようにコンデンサ、抵抗およびNPN型トランジスタなどの種々の電子部品が実装されたプリント配線基板15と、ボビン16に巻回されたコイル17(本発明でいう第1のコイル)とが配設された状態で、カバー14bがメインケース14aにボルト18によりボルト止めされて構成されている。
【0024】また、ターミナル7の所定部位には、上記ケーブル12が接続されており、そのケーブル12の先端部には上記ナイロンコネクタ11が設けられている(図2参照)。尚、図4では、ケーブル12は省略している。この場合、コイル17に電力が供給され、コイル17から電磁界が発生すると、その電磁界は、メインケース14aが鉄製であり、また、カバー14bが樹脂製であることから、カバー14bを通じて空間に放射されるようになっている。
【0025】次いで、上記ユニット8の具体的な構成について、図5および図6を参照して説明する。図5は、ユニット8の平面図(a)、正面図(b)および側面図(c)を示しており、図6は、ユニット8の分解図を示している。ユニット8のケース19(本発明でいう第2のケース)は、取付部20aが一体に形成された鉄製のメインケース20bと樹脂製のカバー20cとが組合わされてなるもので、メインケース20bの内部に、詳しくは後述するようにコンデンサ、抵抗およびNPN型トランジスタなどの種々の電子部品が実装されたプリント配線基板21がボルト22によりナット22aを介してボルト止めされると共に、プリント配線基板21に電気的に接続された圧力センサ23がねじ24によりねじ止めされ、さらに、ボビン25に巻回されたコイル26(本発明でいう第2のコイル)が配設された状態で、カバー20cがメインケース20bにボルト27によりボルト止めされて構成されている。
【0026】圧力センサ23には、2個の圧力ポートとしてのナイロンコネクタ28,29が設けられており、それらナイロンコネクタ28,29は、メインケース20bから突出している。この場合、コイル26に電力が供給され、コイル26から電磁界が発生すると、その電磁界は、メインケース20bが鉄製であり、また、カバー20cが樹脂製であることから、カバー20cを通じて空間に放射されるようになっている。
【0027】図7は、上記ターミナル7が車体2に取付けられている状態およびユニット8が車両用ドア3に取付けられている状態の平面図(a)、正面図(b)および側面図(c)を示している。車体2を構成する鉄板30の内壁面30aには、2個の取付板31が溶接により取付固定されており、ターミナル7は、それら取付板31にねじ止めされていることによって、そのメインケース14aと内壁面30a(本発明でいう第1の取付箇所)とが対向するように、鉄板30の内壁面30aに取付固定されている。このとき、ターミナル7におけるメインケース14aと鉄板の内壁面30aとは、同じ材質であるので、それらの透磁率は等しいものである。
【0028】ユニット8は、そのメインケース20bの取付部20aが車両用ドア3の上部にねじ止めされていることによって、そのメインケース20bと車両用ドア3の上面部3a(本発明でいう第2の取付箇所)とが対向するように、車両用ドア3の上面部3aに取付固定されている。このとき、ユニット8におけるメインケース20bと車両用ドア3の上面部3aとは、同じ材質であるので、それらの透磁率は等しいものである。尚、この場合、車両用ドア3が図2中矢印A1,A2方向に往復移動すると、ユニット8がターミナル7の長手方向に沿うように往復移動するようになっている。
【0029】尚、車両用ドア3が乗降口4を閉鎖している戸閉め位置にあるとき、つまり、上述した図2に示す状態のときには、ターミナル7とユニット8とは、図8中(a)に示すように対向する位置関係になり、つまり、ターミナル7の内部に配設されたコイル17とユニット8の内部に配設されたコイル26とが対向するものである。一方、車両用ドア3が乗降口4を開放している戸開き位置にあるときには、ターミナル7とユニット8とは、図8中(b)に示すように対向しない位置関係になり、つまり、コイル17とコイル26とが対向しないものである。
【0030】図9は、上記車両用ドア3の要部の構成を示している。車両用ドア3の先端部(戸先部)には、車両用ドア3の上端部から下端部の略全体にわたって戸先ゴム32が設けられている。戸先ゴム32は、その断面形状を図10に示すように、断面略半円形状の戸当り部33および断面略矩形状の取付部34を一体に有している。取付部34は、車両用ドア3の先端部に形成された凹部内に挿入固定されており、これにより、戸先ゴム32が車両用ドア3の先端部に固定されている。また、戸当り部33は、車両用ドア3の端面から突出しており、これにより、車両用ドア3が閉じられる際、つまり、車両用ドア3と、それと対になっている車両用ドア3とが衝突する際の衝撃が和らげられるようになっている。
【0031】図10において、戸当り部33の内底壁にあって車内側には、第1の連結部33aが一体に形成されていると共に、戸当り部33の内周壁にあって車内側には、第2の連結部33bが一体に形成されている。これら第1の連結部33aおよび第2の連結部33bの先端部には、円筒状部33cが一体に形成されており、この円筒状部33cの内部が戸先ゴム32の上端部から下端部にかけて貫通する中空部33dとされている。また、戸当り部33の内底壁にあって車外側には、規制壁部33eが一体に形成されている。
【0032】戸当り部33の中空部33dの上端部は、「L」字型のシリコンチューブ連結管35の一端部が挿入されていると共に閉塞され、中空部33dの下端部は、閉塞部材36,37により二重に閉塞されており、これにより、中空部33d内の空気が密封されている。上記シリコンチューブ連結管35の他端部は、シリコンチューブ38を介してユニット8内に配設された上記圧力センサ23の一方の圧力ポートとしてのナイロンコネクタ28に接続されており、これにより、圧力センサ23は、戸当り部33の中空部33d内の空気の圧力を、シリコンチューブ連結管35、シリコンチューブ38を通じて検出することができるようになっている。
【0033】一方、取付部34には、戸先ゴム32の上端部から下端部にかけて貫通する中空部34aが形成されている。取付部34の中空部34aの上端部は、「L」字型のシリコンチューブ連結管39の一端部が挿入されていると共に閉塞され、中空部34aの下端部は、閉塞部材40,41により二重に閉塞されており、これにより、中空部34a内の空気が密封されている。上記シリコンチューブ連結管39の他端部は、シリコンチューブ42を介して上記圧力センサ23の他方の圧力ポートとしてのナイロンコネクタ29に接続されており、これにより、圧力センサ23は、取付部34の中空部34a内の空気を圧力を、シリコンチューブ連結管39、シリコンチューブ42を通じて検出することができるようになっている。
【0034】さらに、戸先ゴム32の上部には、芯ゴム43が設けられていると共に、戸先ゴム32の下部には、芯ゴム44(図10参照)が設けられている。これら芯ゴム43,44は、戸先ゴム32における戸当り部33の補強部材として作用するものである。
【0035】このように構成された戸先ゴム32においては、戸当り部33に車外側への力が作用すると、戸当り部33が弾性変形し、円筒状部33cが第2の連結部33bを介して車外側へ大きく引張られるが、このとき、規制壁部33eにより移動が規制されるようになるので、円筒状部33cが押潰される格好となり、つまり、中空部33d内の空気の圧力が大きく変化するようになる。一方、戸当り部33に車内側への力が作用すると、円筒状部33cが第2の連結部33bを介して車内側へ引張られるが、このとき、移動が規制されることがないので、円筒状部33cが押潰されることはなく、つまり、中空部33d内の空気の圧力が大きく変化することはない。
【0036】また、戸当り部33に車外側への力が作用する場合であっても、また、車内側への力が作用する場合であっても、取付部34は、上記したように、車両用ドア3の凹部内に挿入固定されているので、弾性変形することはなく、つまり、中空部34a内の空気の圧力が変化することはない。
【0037】尚、戸先ゴム32にあって芯ゴム43,44が設けられている区間では、戸当り部33に車外側への力が作用する場合であっても、また、車内側への力が作用する場合であっても、戸当り部33が何ら弾性変形することがなく、この区間以外の区間、つまり、戸先ゴム32にあって芯ゴム43,44が設けられていない区間が、詳しくは後述する戸挟み状態であるか否かを検出可能な区間となっている。
【0038】次に、上記コントローラ6、ターミナル7およびユニット8の電気的な構成について、図1を参照して説明する。まず、上記コントローラ6は、車体2の所定位置に配設された電源装置45(本発明でいう電力供給手段)から電力が供給されるようになっている。入力回路46は、車掌が戸開き操作することに応じて「戸開信号」が与えられると、「戸開信号」をCPU47に出力すると共に、車掌が戸閉め操作することに応じて「戸閉信号」が与えられると、「戸閉信号」をCPU47に出力するようになっている。
【0039】出力回路48は、CPU47から戸挟み状態であることを示す「戸挟み検出信号」が与えられると、「戸挟み検出信号」を例えば車掌室の出力手段(LEDなど)に出力するようになっている。フィルタ回路49は、ターミナル7の復調回路50から復調データが与えられると、復調データからノイズ成分を除去し、ノイズ成分が除去された復調データをターミナル7の発振回路51から出力される発振周波数に同期してCPU47に出力するようになっている。
【0040】CPU47は、マイクロコンピュータにより構成されているもので、記憶されているプログラムを実行することによって、詳しくは後述する処理を実行するようになっている。
【0041】ターミナル7は、上記コントローラ6と同様にして、電源装置45から電力が供給されるようになっている。発振回路51は、所定の発振周波数により電力を生成し、その与えられた電力を分周回路52に出力するようになっている。分周回路52は、発振回路51から電力が与えられると、その与えられた電力を分周し、分周した電力をブースタ53に出力するようになっている。
【0042】ブースタ53は、分周回路52から分周された電力が与えられると、その電力を増幅し、増幅した電力をコンデンサ54と上記コイル17とが直列接続されてなる直列共振回路55に出力するようになっている。直列共振回路55は、ブースタ53から増幅された電力が与えられると、コイル17により電磁界を発生するようになっている。尚、直列共振回路55の他方は、抵抗56を介して接地されている。
【0043】NPN型トランジスタ57は、コントローラ6のCPU47からバッファ58を介してベース電流が与えられると、オン状態となり、直列共振回路55のコンデンサ54に充電されている電力の一部を抵抗59を介してコレクタ電流とし、これにより、直列共振回路55のコイル17に供給される電力を低下させるようになっている。
【0044】このような構成とすることにより、コントローラ6のCPU47は、NPN型トランジスタ57に供給するベース電流をオンオフ制御し、直列共振回路55のコイル17に供給される電力を制御することによって、電磁誘導結合のレベルを制御することができ、例えば、レベルが所定レベルよりも大きい状態をデータ「1」に対応させると共に、レベルが所定レベルよりも小さい状態をデータ「0」に対応させることにより、それらデータ「1」,「0」からなる信号パターンを電磁誘導結合により送信させることができるようになっている。すなわち、本発明でいう第1の信号パターン生成手段60は、これらコントローラ6のCPU47、ターミナル7のNPN型トランジスタ57および直列共振回路55から構成されているものである。
【0045】上記復調回路50は、電磁誘導結合の際に、直列共振回路55のコイル17が受信した受信データを復調処理して復調データを生成し、復調データをコントローラ6のフィルタ回路49に出力するようになっている。
【0046】ユニット8において、上記コイル26とコンデンサ61とが並列接続されてなる並列共振回路62(本発明でいう定電圧回路)は、上記ターミナル7の直列共振回路55との間で電磁誘導結合するようになっており、電磁誘導結合の際にコイル26により生成された交流電力をコンデンサ61に充電するようになっている。
【0047】全波整流回路63は、コンデンサ61に充電された交流電力を整流して直流電力を生成し、直流電力を定電圧回路64に出力するようになっている。定電圧回路64は、全波整流回路61から直流電力が与えられると、その与えられた直流電力を一定電圧に変換し、その一定電圧に変換した電力をCPU65に出力するようになっている。
【0048】クロック抽出回路66は、並列共振回路62のコンデンサ61に充電された交流電力に同期したクロック信号を生成し、クロック信号をAND回路67に出力するようになっている。また、復調回路68は、電磁誘導結合の際に、並列共振回路62のコイル26が受信した受信データを復調処理して復調データを生成し、その復調データをCPU65に出力するようになっている。
【0049】NPN型トランジスタ69は、CPU65から上記したAND回路67を介してベース電流が与えられると、オン状態となり、並列共振回路62のコンデンサ61に充電されている電力の一部を抵抗70を介してコレクタ電流とし、これにより、並列共振回路62のコイル26に供給される電力を低下させるようになっている。
【0050】このような構成とすることにより、CPU65は、NPN型トランジスタ69に供給するベース電流をオンオフ制御し、並列共振回路62のコイル26に供給される電力を制御することによって、電磁誘導結合のレベルを制御することができ、例えば、レベルが所定レベルよりも大きい状態をデータ「1」に対応させると共に、レベルが所定レベルよりも小さい状態をデータ「0」に対応させることにより、それらデータ「1」,「0」からなる信号パターンを電磁誘導結合により送信させることができるようになっている。すなわち、本発明でいう第2の信号パターン生成手段71は、これらCPU65、NPN型トランジスタ69および並列共振回路62から構成されているものである。
【0051】圧力センサ23は、上述したように、圧力ポートとしての2つのナイロンコネクタ28,29を備えているもので、戸先ゴム32にあって戸当り部33の中空部33d内の空気の圧力を検出すると共に、取付部34の中空部34a内の空気の圧力を検出し、それら検出結果をCPU65に出力するようになっている。
【0052】可変抵抗72は、感度調節手段として設けられているもので、詳しくは後述するように、CPU65は、この可変抵抗72により設定された値を判定値として採用し、所定の処理を実行するようになっている。
【0053】CPU65は、マイクロコンピュータにより構成されているもので、記憶されているプログラムを実行することによって、詳しくは後述する処理を実行するようになっている。尚、本発明でいう検出手段73は、以上に説明したユニット8内の各電子部品から構成されているものである。
【0054】次に、上記構成の作用について、図11および図12を参照して説明する。図11は、コントローラ6のCPU47が実行する処理の内容を示し、図12は、ユニット8のCPU65が実行する処理の内容を示しているものである。
【0055】まず、コントローラ6のCPU47は、「戸開信号」を入力したか否かを判断する(ステップS1)。ここで、車掌が車両用ドア3を開放する操作を行うと、コントローラ6のCPU47は、「戸開信号」を入力するようになるので、ステップS1において「YES」と判断し、所定時間待機する(ステップS2)。ここで、この所定時間とは、車両用ドア3が戸閉め位置から戸開き位置への移動を開始してから、ある程度経過するまでの時間のことである。
【0056】コントローラ6のCPU47は、所定時間が経過したことを検出すると、ターミナル7の直列共振回路55に電力を供給することによって、直列共振回路55のコイル17から電磁界を発生させる(ステップS3)。尚、このとき、車両用ドア3は、戸閉め位置から戸開き位置に移動中である。
【0057】さて、ターミナル7における直列共振回路55のコイル17から電磁界が発生されたことを受けて、直列共振回路55のコイル17とユニット8における並列共振回路62のコイル26との間で電磁誘導結合が確立されると、コイル26に交流電力が誘起されるようになり、その交流電力が全波整流回路63で整流されて直流電力が生成され、直流電力が定電圧回路64で一定電圧に変換され、ユニット8のCPU65に与えられるようになる。
【0058】ユニット8のCPU65は、定電圧回路64から所定レベル以上の一定電圧が与えられると、つまり、電源電圧がOKとなると、ステップS21において「YES」と判断し、電磁誘導結合により「ウェイクアップ信号」を送信させる(ステップS22)。このとき、ユニット8のCPU65は、上述したように、NPN型トランジスタ69に供給するベース電流をオンオフ制御することによって、データ「1」,「0」からなる信号パターンを生成し、それを「ウェイクアップ信号」として送信させる。
【0059】次いで、ユニット8から送信された「ウェイクアップ信号」が電磁誘導結合によりターミナル7に受信データとして受信され、その受信データが復調処理され、復調データがコントローラ6のCPU47に与えられると、コントローラ6のCPU47は、ステップS4において「YES」と判断し、電磁誘導結合により「ティーチング開始信号」を送信させる(ステップS5)。このとき、コントローラ6のCPU47は、上述したように、NPN型トランジスタ57に供給するベース電流をオンオフ制御することによって、データ「1」,「0」からなる信号パターンを生成し、それを「ティーチング開始信号」として送信させる。
【0060】次いで、ターミナル7から送信された「ティーチング開始信号」が電磁誘導結合によりユニット8に受信データとして受信され、その受信データが復調処理され、復調データがユニット8のCPU65に与えられると、ユニット8のCPU65は、ステップS23において「YES」と判断し、このときの戸先ゴム32における戸当り部33の中空部33d内の空気圧と、取付部34の中空部34a内の空気圧とを測定し、その差圧を検出値Pとして検出し(ステップS24)、その検出値Pを基準値P0として記憶する(ステップS25)。つまり、ユニット8のCPU65は、車両用ドア3が戸閉め位置から戸開き位置に移動している移動中における戸当り部33の中空部33d内の空気圧と取付部34の中空部34a内の空気圧との差圧を、基準値P0として記憶する。
【0061】次いで、コントローラ6のCPU47は、「戸閉信号」を入力したか否かを判断する(ステップS6)。ここで、車掌が車両用ドア3を閉鎖する操作を行うと、コントローラ6側のCPU47は、「戸閉信号」を入力するようになるので、ステップS6において「YES」と判断し、タイマをスタートさせる(ステップS7)。尚、このとき、車両用ドア3は、戸開き位置から戸閉め位置に移動することになる。
【0062】次いで、ユニット8から送信された「ウェイクアップ信号」が電磁誘導結合によりターミナル7に受信データとして受信され、その受信データが復調処理され、復調データがコントローラ6のCPU47に与えられると、コントローラ6のCPU47は、ステップS8において「YES」と判断し、電磁誘導結合により「測定開始信号」を送信させる(ステップS9)。このとき、コントローラ6のCPU47は、NPN型トランジスタ57に供給するベース電流をオンオフ制御することによって、上述した「ティーチング開始信号」とは異なるデータ「1」,「0」からなる信号パターンを生成し、それを「測定開始信号」として送信させる。
【0063】次いで、ターミナル7から送信された「測定開始信号」が電磁誘導結合によりユニット8に受信データとして受信され、その受信データが復調処理され、復調データがユニット8のCPU65に与えられると、ユニット8のCPU65は、ステップS26において「YES」と判断し、このときの戸先ゴム32における戸当り部33の中空部33d内の空気圧と、取付部34の中空部34a内の空気圧とを測定し、その差圧を検出値Pとして算出する(ステップS27)。つまり、ユニット8のCPU65は、車両用ドア3が閉鎖しているときにおける戸当り部33の中空部33d内の空気圧と取付部34の中空部34a内の空気圧との差圧を、検出値Pとして検出する。
【0064】次いで、ユニット8のCPU65は、可変抵抗72の抵抗値を読込み、その読込んだ抵抗値を判定値P1として演算し(ステップS28)、上述した基準値P0と検出値Pとの差と、判定値P1とを比較する(ステップS29)。
【0065】さて、戸挟み状態でないときには、車両用ドア3が移動中、つまり、車両用ドア3が閉鎖する前における値である基準値P0と、車両用ドア3が閉鎖しているときの値である検出値Pとの差は、判定値P1以下となるので、ユニット8のCPU65は、ステップS29において「NO」と判断し、電磁誘導結合により「検出オフ信号」を送信させる(ステップS30)。このとき、ユニット8のCPU65は、NPN型トランジスタ57に供給するベース電流をオンオフ制御することによって、上述した「ウェイクアップ信号」とは異なるデータ「1」,「0」からなる信号パターンを生成し、それを「検出オフ信号」として送信させる。
【0066】そして、ユニット8から送信された「検出オフ信号」が電磁誘導結合によりターミナル7に受信され、その受信データが復調処理され、復調データがコントローラ6のCPU47に与えられると、コントローラ6のCPU47は、ステップS10において「NO」と判断し、ステップS11において「YES」と判断し、「戸挟み検出信号」の出力をオフとし、つまり、「戸挟み検出信号」を出力することはない(ステップS12)。
【0067】これに対して、戸挟み状態であるときには、基準値P0と検出値Pとの差は、判定値P1を越えるようになるので、ユニット8のCPU65は、ステップS29において「YES」と判断し、電磁誘導結合により「検出オン信号」を送信させる(ステップS31)。このとき、ユニット8のCPU65は、NPN型トランジスタ57に供給するベース電流をオンオフ制御することによって、上述した「ウェイクアップ信号」や「検出オフ信号」とは異なるデータ「1」,「0」からなる信号パターンを生成し、それを「検出オン信号」として送信させる。
【0068】そして、ユニット8から送信された「検出オン信号」が電磁誘導結合によりターミナル7に受信され、その受信データが復調処理され、復調データがコントローラ6のCPU47に与えられると、コントローラ6のCPU47は、ステップS10において「YES」と判断し、「戸挟み検出信号」の出力をオンとし、つまり、「戸挟み検出信号」を出力回路48に出力する(ステップS13)。
【0069】次いで、コントローラ6のCPU47は、タイマがタイムアップとなったか否かを判断し(ステップS14)、タイムアップでないときには、ステップS14において「NO」と判断し、上述したステップS10に戻る。一方、タイムアップであるときには、ステップS14において「YES」と判断し、ターミナル7の直列共振回路55に電力を供給することを停止し(ステップS15)、上述したステップS1に戻る。
【0070】すなわち、ユニット8のCPU65は、電源電圧としての電力が保持されている間は、上述したような判定処理を繰返し実行して「検出オン信号」もしくは「検出オフ信号」を送信し(ステップS27〜S31)、コントローラ6のCPU47は、タイマがタイムアップするまで間は、「検出オン信号」もしくは「検出オフ信号」が受信されたか否かを監視し(ステップS10〜S13)、タイマがタイムアップしたときに、その監視を停止してターミナル7の直列共振回路55に電力を供給することを停止するようになっている(ステップS15)。
【0071】このように本実施例によれば、車体2側に設けられたターミナル7と車両用ドア3側に設けられたユニット8との間で、電磁誘導結合により、電力を供給すると共に、戸挟み状態であるか否かを示す信号(検出オン信号、検出オフ信号)を送受信するように構成したので、従来のものとは異なって、車体2側と車両用ドア3側とを接続するケーブルを不要とすることができ、これに伴って、ケーブルが断線することもなくなる。これにより、戸挟み状態であるか否か的確に検出することができるようになるので、乗降客の安全性を確実に確保することができ、信頼性を高めることができる。
【0072】このとき、ターミナル7のケース13を鉄製のメインケース14aと樹脂製のカバー14bとから構成し、メインケース14aと車体2の鉄板30の内壁面30aとが対向するようにターミナル7を取付ける構成としたので、メインケース14aと鉄板30の内壁面30aとが同じ透磁率であることから、ターミナル7を取付ける前後で、インダクタンスが減少したり、直流抵抗が増加したりすることがなく、共振点がずれることがなくなる。これにより、ターミナル7を取付ける前に、共振点が最適な位置となるようにコイル17のインダクタンスの調整作業を行えば済むので、取付けた後に調整作業を行う必要がなく、作業効率が低下することがない。また、何らかの原因により異常が発生した場合には、ターミナル7を車体2から取外して検査を行うことができるので、検査を容易に行うことができる。
【0073】また、ユニット8についても、これと同様であり、ユニット8のケース19を鉄製のメインケース20bと樹脂製のカバー20cとから構成し、メインケース20bと車両用ドア3の上面部3aとが対向するようにユニット8を取付ける構成としたので、メインケース20bと車両用ドア3の上面部3aとが同じ透磁率であることから、ユニット8を取付ける前後で、インダクタンスが減少したり、直流抵抗が増加したりすることがなく、共振点がずれることがなくなる。これにより、ユニット8を取付ける前に、共振点が最適な位置となるようにコイル26のインダクタンスの調整作業を行えば済むので、取付けた後に調整作業を行う必要がなく、作業効率が低下することがない。また、何らかの原因により異常が発生した場合には、ユニット8を車両用ドア3から取外して検査を行うことができるので、検査を容易に行うことができる。
【0074】また、車両用ドア3が移動中であっても、電力を供給することができると共に、戸挟み状態であるか否かを示す信号を送受信することができ、つまり、車両用ドア3が移動中であるか否かに拘らず、戸挟み状態であるか否か検出することができるので、乗降客の安全性をより確実に確保することができ、信頼性をより高めることができる。
【0075】また、ターミナル7において、コントローラ6のCPU47がNPN型トランジスタ57に供給するベース電流をオンオフ制御することによって、「ティーチング開始信号」および「測定開始信号」を互いに異なる信号パターンにより生成し、それらの信号パターンを利用して圧力センサ23による検出の開始タイミングを識別するように構成したので、別途、検出の開始タイミングを識別するための信号を生成する構成を設ける必要がなく、その分、構成の簡素化を図ることができる。
【0076】さらに、ユニット8において、CPU65がNPN型トランジスタ69に供給するベース電流をオンオフ制御することによって、「検出オン信号」および「検出オフ信号」を互いに異なる信号パターンにより生成し、それらの信号パターンを利用して戸挟み状態であるか否かを識別するように構成したので、別途、戸挟み状態であるか否かを識別するための信号を生成する構成を設ける必要がなく、その分、構成の簡素化を図ることができる。
【0077】本発明は、上記した実施例にのみ限定されるものでなく、次のように変形または拡張することができる。ターミナルのメインケースを、それを取付ける鉄板の内壁面の透磁率よりも高い透磁率を有する材質から構成しても良く、また、ユニットのメインケースを、それを取付ける車両用ドアの上面部の透磁率よりも高い透磁率を有する材質から構成しても良い。
【0078】戸挟み状態であるか否かを検出するに際しては、戸先ゴム内の空気圧の圧力変化を検出するものに限らず、戸先ゴムに作用する押圧力の変化を検出するものであれば良く、例えば、機械的接点を有するテープスイッチによるもの、圧電ゴムによるもの、投光素子および受光素子を利用する光電式によるもの、超音波センサを利用する超音波式によるものなどであっても良い。
【0079】ターミナルおよびユニットは、それらの間で双方向通信する構成に限らず、少なくともユニットからターミナルに戸挟み状態であることを示す「検出オン信号」を送信する単方向通信する構成であっても良い。車両用ドアが戸閉め位置にあるときに電力の供給を停止する構成に限らず、常に、電力を供給する構成であっても良い。
【0080】ターミナルおよびユニットの位置関係を、車両用ドアが戸閉め位置にあるときに対向し、且つ、車両用ドアが戸開き位置にあるときに対向しない構成とすることにより、車両用ドアの移動範囲における限られた範囲でのみ電磁誘導結合を確立させる構成に限らず、車両用ドアが戸閉め位置にあるときに対向し、且つ、車両用ドアが戸開き位置にあるときにも対向する構成とすることにより、車両用ドアの移動範囲における全域にわたる範囲で電磁誘導結合を確立させる構成であっても良い。
【0081】コントローラとターミナルとを別々に設ける構成に限らず、それらを一体に設ける構成であっても良く、また、コントローラとターミナルとを1対1に設ける構成に限らず、1対n(nは複数)に設ける構成としても良く、つまり、集中制御する構成であっても良い。
【0082】
【発明の効果】以上の説明によって明らかなように、本発明の戸挟み検出装置によれば、車体側に設けられた第1のコイルと車両用ドア側に設けられた第2のコイルとの電磁誘導結合により、車体側から車両用ドア側に電力が供給され、また、車両用ドア側から車体側に検出信号が送信されるように構成したので、従来のものとは異なって、車体側と車両用ドア側とを接続するケーブルを不要とすることができ、これに伴って、ケーブルが断線することもなくなる。これにより、戸挟み状態であるか否かを的確に検出することができるようになるので、乗降客の安全性を確実に確保することができ、信頼性を高めることができる。
【0083】このとき、第1のケースにおける少なくとも第1の取付箇所の側を、第1の取付箇所の材質の透磁率以上となる透磁率の材質から構成し、第2のケースにおける少なくとも第2の取付箇所の側を、第2の取付箇所の材質の透磁率以上となる透磁率の材質から構成したので、第1のケースおよび第2のケースを取付ける際には、取付ける前後で、インダクタンスが減少したり、直流抵抗が増加したりすることがなく、共振点がずれることがなくなる。これにより、第1のケースおよび第2のケースを取付ける前に、共振点が最適な位置となるようにコイルのインダクタンスの調整作業を行えば済むので、取付けた後に調整作業を行う必要がなく、作業効率が低下することがない。また、何らかの原因により異常が発生した場合には、第1のケースおよび第2のケースを取外して検査を行うことができるので、検査を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック構成図
【図2】車両の要部を示す正面図
【図3】ターミナルの平面図(a)および正面図(b)
【図4】ターミナルの分解図
【図5】ユニットの平面図(a)、正面図(b)および側面図(c)
【図6】ユニットの分解図
【図7】ターミナルおよびユニットの取付状態を示す平面図(a)、正面図(b)および側面図(c)
【図8】ターミナルおよびユニットの位置関係を示す図
【図9】車両用ドアの要部を示す正面図
【図10】戸先ゴムの断面図
【図11】コントローラ側のCPUの処理内容を示すフローチャート
【図12】ユニット側のCPUの処理内容を示すフローチャート
【符号の説明】
図面中、1は車両、2は車体、3は車両用ドア、3aは上面部(第2の取付箇所)、4は乗降口、5は戸挟み検出装置、13はケース(第1のケース)、17はコイル(第1のコイル)、19はケース(第2のケース)、26はコイル(第2のコイル)、30aは内壁面(第1の取付箇所)、45は電源装置(電力供給手段)、60は第1の信号パターン生成手段、62は並列共振回路(定電圧回路)、71は第2の信号パターン生成手段、73は検出手段である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車体側に設けられた電力供給手段と、前記車体側の乗降口近傍の第1の取付箇所に取付けられた第1のケースと、この第1のケースに収容され、前記電力供給手段から交流電力が供給される第1のコイルと、前記車体の乗降口を開閉する車両用ドア側の第2の取付箇所に取付けられた第2のケースと、この第2のケースに収容され、前記第1のコイルとの間で電磁誘導結合する第2のコイルと、前記車両用ドア側に設けられ、前記第1のコイルと第2のコイルとが電磁誘導結合したことに応じて、前記第2のコイルにより生成された交流電力から定電圧を生成する定電圧回路と、前記車両用ドア側に設けられ、前記定電圧回路により生成された定電圧に基づいて検出を行い、その検出された検出値を予め決定された判定値と比較することに基づいて戸挟み状態であるか否かを判定し、その判定結果を示す検出信号を前記第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合により前記車体側に送信する検出手段とを備え、前記第1のケースにおける少なくとも前記第1の取付箇所の側は、その第1の取付箇所の材質の透磁率以上の透磁率を有する材質から形成されていると共に、前記第2のケースにおける少なくとも前記第2の取付箇所の側は、その第2の取付箇所の材質の透磁率以上の透磁率を有する材質から形成されていることを特徴とする戸挟み検出装置。
【請求項2】 前記車体側に設けられ、前記第1のコイルに供給される交流電力のレベルを制御することにより前記第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合のレベルを制御し、その電磁誘導結合のレベル変化に基づいて信号パターンを生成する第1の信号パターン生成手段を備え、前記検出手段は、前記第1の信号パターン生成手段により生成された信号パターンを判定することにより、検出を開始するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の戸挟み検出装置。
【請求項3】 前記車両用ドア側に設けられ、前記第2のコイルに供給される交流電力のレベルを制御することにより前記第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合のレベルを制御し、その電磁誘導結合のレベル変化に基づいて信号パターンを生成する第2の信号パターン生成手段を備え、前記検出手段は、前記検出信号を前記第2の信号パターン生成手段により生成された信号パターンにより生成するように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の戸挟み検出装置。
【請求項1】 車体側に設けられた電力供給手段と、前記車体側の乗降口近傍の第1の取付箇所に取付けられた第1のケースと、この第1のケースに収容され、前記電力供給手段から交流電力が供給される第1のコイルと、前記車体の乗降口を開閉する車両用ドア側の第2の取付箇所に取付けられた第2のケースと、この第2のケースに収容され、前記第1のコイルとの間で電磁誘導結合する第2のコイルと、前記車両用ドア側に設けられ、前記第1のコイルと第2のコイルとが電磁誘導結合したことに応じて、前記第2のコイルにより生成された交流電力から定電圧を生成する定電圧回路と、前記車両用ドア側に設けられ、前記定電圧回路により生成された定電圧に基づいて検出を行い、その検出された検出値を予め決定された判定値と比較することに基づいて戸挟み状態であるか否かを判定し、その判定結果を示す検出信号を前記第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合により前記車体側に送信する検出手段とを備え、前記第1のケースにおける少なくとも前記第1の取付箇所の側は、その第1の取付箇所の材質の透磁率以上の透磁率を有する材質から形成されていると共に、前記第2のケースにおける少なくとも前記第2の取付箇所の側は、その第2の取付箇所の材質の透磁率以上の透磁率を有する材質から形成されていることを特徴とする戸挟み検出装置。
【請求項2】 前記車体側に設けられ、前記第1のコイルに供給される交流電力のレベルを制御することにより前記第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合のレベルを制御し、その電磁誘導結合のレベル変化に基づいて信号パターンを生成する第1の信号パターン生成手段を備え、前記検出手段は、前記第1の信号パターン生成手段により生成された信号パターンを判定することにより、検出を開始するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の戸挟み検出装置。
【請求項3】 前記車両用ドア側に設けられ、前記第2のコイルに供給される交流電力のレベルを制御することにより前記第1のコイルと第2のコイルとの間の電磁誘導結合のレベルを制御し、その電磁誘導結合のレベル変化に基づいて信号パターンを生成する第2の信号パターン生成手段を備え、前記検出手段は、前記検出信号を前記第2の信号パターン生成手段により生成された信号パターンにより生成するように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の戸挟み検出装置。
【図2】
【図6】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【特許番号】特許第3501346号(P3501346)
【登録日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【発行日】平成16年3月2日(2004.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−272061
【出願日】平成10年9月25日(1998.9.25)
【公開番号】特開2000−95106(P2000−95106A)
【公開日】平成12年4月4日(2000.4.4)
【審査請求日】平成12年7月3日(2000.7.3)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【参考文献】
【文献】特開 平3−99972(JP,A)
【文献】実開 昭61−52075(JP,U)
【登録日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【発行日】平成16年3月2日(2004.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成10年9月25日(1998.9.25)
【公開番号】特開2000−95106(P2000−95106A)
【公開日】平成12年4月4日(2000.4.4)
【審査請求日】平成12年7月3日(2000.7.3)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【参考文献】
【文献】特開 平3−99972(JP,A)
【文献】実開 昭61−52075(JP,U)
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