説明

房部を有する経編レース地

【課題】側縁部において緯方向に延出する房部を有し、房部からのほつれの虞がなく、また房部の形態を良好に保持でき、しかも糸の太さを変えずに間隔を変化させることも可能な房部を有する経編レース地、特には房部の延出方向に対し直角方向の伸縮性を持たせることが可能な経編レース地を提供する。
【解決手段】経編レース地Aの側縁部1aにおいて経方向に間隔をおいて緯方向に延出する房部5を設け、房構成糸50の根元部分51を側縁部に対し挿入編成により編み込んで保持する。地編組織2に対して伸縮性糸を配して経編編成し、少なくとも経方向に伸縮性を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縁飾りとしての房部を有する経編レース地、特には経方向に対し側縁部に房部を有する経編レース地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラジャー、ショーツ等の女性用下着を始めとする各種衣料において、房あるいはアイラッシュと呼ばれる、先端が切断された糸条よりなる縁飾りとしての房部を有する経編レース地を使用したものがある。
【0003】
従来の経編編成による経編レース地は、縁飾りとしての前記の房部が、編立方向つまりは編地経方向の両端縁部において前記経方向と同方向に設けられてなるものであり(例えば、特許文献1)、そのため、次のような問題がある。
【0004】
(1) 前記房部は、編立方向(経方向)に連続する編目形成糸により形成されているため、房部の先端の切断個所からほつれが発生し易いものである。そのため、特許文献1のように、編目形成糸を複数枚の筬(例えば、2枚筬)で編成することとして、複数の編目形成糸を絡ませて1本の糸条にするように編成して房部を形成する必要があり、組織が限定されることになる。
【0005】
(2) 前記のように複数の編目形成糸により1本の房部を形成する場合、その組織構成上、各房部の間隔等の変更はせいぜい数ウエールまでであり、間隔の変化に対するバリエーションが少ない。例えば、房部の間隔を狭くすると、房部の太さが細くなり、また間隔を広くすると、房部の太さが太くなってしまうため、間隔を変化させ難いものである。
【0006】
(3) また、経編レース地が伸縮性を持つ場合、経編編成による構造上、経方向あるいは経緯の両方向に伸縮性を持つものであって、経編レース地の緯方向に伸縮性を持つものはなく、そのため、前記房部の延出方向に対して直角方向のみに伸縮性を持たせることができないものであった。
【0007】
(4) 経方向の伸縮性を有する経編レース地の場合は、経方向に延出する房部も同じように経方向の伸縮性を有することになり、また、非伸縮性の経編レース地の場合は、房部も同じように非伸縮性になるのが普通であり、限られた用途にしか使用できないものであった。
【0008】
(5) 編目形成糸により房部を形成しているために、房部の糸種を部分的に変更したり、房の色を変化させることができない。
【特許文献1】登録実用新案3030490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになしたものであり、先端部が切断された房部を有する経編レース地として、経編レース地の側縁部において経方向に間隔をおいて緯方向に延出する房部を設けたもので、該房部からの編地のほつれの虞がなく、しかも房部の形態を良好に保持できるとともに、房部の太さを変えずに間隔を任意に設定できる経編レース地、さらには、房部の抜けや切断端からの撚りのほぐれも殆ど生じない経編レース地を提供するものである。また、本発明は、前記房部の延出方向に対して直角方向の伸縮性を持たせることができる房部を有する経編レース地を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する本発明は、先端部が切断された房部を有する経編レース地であって、該房部が該経編レース地の側縁部において経方向に間隔をおいて緯方向に延出するように設けられてなり、前記房部を構成する房構成糸は、前記房部の根元になる部分が前記経編レース地に対して挿入編成により編み込まれて保持されており、該房構成糸の前記根元部分から緯方向に延出する部分が先端を切断した房部として形成されてなることを特徴とする。
【0011】
このような構成による本発明の房部を有する経編レース地によれば、前記房部が挿入組織で編成されることになるため、編目形成糸により形成したもの、特には複数本の編目形成糸を絡ませて形成した房部とは違い、房部からの編地のほつれが生じる虞もなく、しかも、房部の形態保持性がよく、全体として太さの揃った房部を形成でき、また、該房部と房部の間隔を、糸の太さを変えずに無段階で適宜変化させることができる。さらに、房構成糸が挿入組織で編み込まれるものであるため、房部の糸種を部分的に変更したり、色を変化させることもできる。それゆえ、目的に応じた装飾効果の高い房部を形成することができる。
【0012】
前記経編レース地は、地編組織に対して伸縮性糸が配されて経編編成され、少なくとも経方向に伸縮性が付与されてなるものとすることができる。これにより、前記房部の延出方向に対し直角方向の伸縮性を持たせることができる。
【0013】
前記経編レース地としては、複数の経編レース地が、製品に使用しない捨て編み生地部を介して編幅方向に並列状に連接されて編成され、前記捨て編み生地部を除去することにより各経編レース地毎に分離可能に形成されてなるものとすることができる。
【0014】
前記経編レース地としては、前記側縁部が大きなカーブの湾曲状やスカラップとしての略波形状をなすものとすることができる。
【0015】
また、前記経編レース地において、前記房構成糸としては、その一部に熱融着性の繊維を含む糸よりなるものとすることができる。これにより、房部の切断端からの撚りのほぐれを防止でき、また挿入組織で編み込まれた房部の抜けも防止できる。
【0016】
さらに、前記経編レース地の地編組織において、前記房構成糸の前記根元部分が編み込まれているウエールのうち、少なくとも房部と房部の間隔が最も狭い個所の根元部分が編み込まれたウエールの編目形成糸が、その一部に熱融着性の繊維を含む糸よりなるものとすることもできる。これにより、前記挿入組織で編み込まれた房部の抜けを防止できる。
【0017】
また、前記房部を構成する房構成糸としては、繊度が300〜1000dtexの糸であるものが好ましい。すなわち、房構成糸の繊度が前記300dtex未満になると、房の糸が細くなり、充分な装飾効果が得られなくなる。また、繊度が1000dtexを超えると、太くなりすぎてレース地の房部としての装飾性が損なわれる虞がある。装飾効果等の点から、特に好ましくは、繊度が500〜900dtexの糸である。
【0018】
また、前記の経編レース地において、前記房部を構成する房構成糸の根元部分においては、該房構成糸よりレース地表面側と裏面側とにそれぞれ柄糸が横振りして編み込まれてなるものが好ましい。これにより、レース表面への房構成糸の根元部分の露出を防止でき、かつレース裏面の当触感も良好に保持される。
【発明の効果】
【0019】
上記した本発明によれば、経編レース地の側縁部において経方向に適宜の間隔をおいて緯方向に延出する房部を設けた経編レース地を提供することができ、特に、前記房部の根元になる部分を挿入編成により編み込んで保持した構成により、該房部からの編地のほつれの虞がなく、しかも房部の形態を良好に保持できるとともに、房部の太さを変えずに間隔を任意に設定でき、種々の用途に広範囲に利用できる房部を有する経編レース地を提供することができる。
【0020】
さらに、本発明は、地編組織対して伸縮性糸を配することにより、特に前記房部の延出方向に対して直角方向の伸縮性を持たせた経編レース地を提供でき、また房構成糸として、あるいは該房構成糸の根元部分が編み込まれた一部のウエールの編目形成糸として、熱融着性の繊維を含む糸を用いることにより、根元部分を挿入編成により編み込んで保持した房部先端の切断個所からの撚りのほぐれ、あるいは房部の抜けを防止でき、房部の形態を良好に保持できる経編レース地を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明の経編レース地の実施例を示す略示平面図、図2は同上経編レース地の編成上の房構成糸を含む主要糸のラッピング状態を略示する一部の編組織図、図3は同上の経編レース地の編成上の捨て編生地部を含めた略示平面図、図4は同上の経編レース地をショーツに使用した例を示す略示斜視図、図5は房部の間隔と長さを異にする別の実施例の経編レース地の略示平面図である。
【0023】
図1において、本発明の経編レース地Aは、基本的に、基布となる地編の組織を編成するいわゆる地筬とは別に、柄を編成するための複数枚(通常、数十枚にもなる)の柄筬を備える経編機、あるいは、前記柄筬と共に、ジャカード装置でガイドニードルの運動を制御することにより穴地、薄地、厚地等の組合せによるジャカードレース柄やメッシュ状等の地編組織を編成する少なくとも1枚のジャカードガイド筬を備える経編機により編成される。
【0024】
図1及び図2の経編レース地Aは、その本体部1において、平地やメッシュ状等の地編組織2に対して、柄糸(図示せず)が所定のパターンで挿入編成されることにより、該経編レース地Aの中にレース柄と共に該柄糸による比較的大きな柄部3が形成され、また本体部1の編立て方向に対して交差する両側縁部1a,1bには湾曲形状や波状のスカラップ4が形成されている。前記両側縁部1a,1bについては、必ずしも前記のスカラップ4を側縁部全長に渡って連続して形成しておく必要はなく、直線状の部分とともに部分的にスカラップを形成したり、あるいはスカラップを有さない側縁部形状、例えば直線や大きなカーブの曲線形状とする場合もある。
【0025】
さらに、この経編レース地Aには、必要に応じて、基本となる本体部1の地編組織2において、ポリウレタン繊維等よりなる伸縮性糸(弾性糸)が全体に配されて地編組織2を構成するように挿入編成されることにより、レース地全体として少なくとも経方向に、すなわち経方向にあるいは経緯両方向に伸縮性が付与される。この場合において、前記伸縮性糸の本数、太さ、種類等による特性の変化により、部分的に伸縮性が変化せしめられてなるものとすることができる。地編組織としては、前記以外の種々の実施が可能であり、また柄の構成についても任意に設定して実施できる。
【0026】
そして、前記経編レース地Aの本体部1における両側縁部1a,1bの少なくとも一方、例えば図1の左方の側縁部1aには、該側縁部1aより編立て方向に沿う経方向に所要の間隔をおいて編幅方向に沿う緯方向への延出状をなし、かつ先端部が切断された所定長の糸条よりなる房部5が多数並列して形成されている。図の場合、前記スカラップ4の波形状の山部4aに対応する部分毎に間隔をおいて、多数の房部5が並列してアイラッシュ状をなすように形成されている。
【0027】
前記の緯方向に延出する房部5としては、必ずしも、編地の経方向つまり編立て方向に対して略直角の方向に延出するもののみには限らず、斜め緯方向に延出するものも含むものとし、前記経方向に対し略直角の緯方向に延びる房部と、斜め緯方向に延びる房部とを混在させておくこともできる(図示せず)。
【0028】
また、前記房部5を構成する房構成糸50は、編目形成糸ではなく、他の挿入編成される柄糸等と同様に、本体部1の地編組織2に対して挿入編成により編み込まれる柄糸の一種からなるものである。すなわち、図2の編組織図の例に示すように、該房構成糸50の前記房部5の根元になる部分51が、前記側縁部1a付近の地編組織2に対し挿入編成により後述するように編み込まれて保持されるものであり、該房構成糸50の前記根元部分51から連続して前記側縁部1aより緯方向に延出する部分52がその先端を切断した房部5として形成されている。この房構成糸50としては、縁飾りとしての効果、形態保持性等の点から、通常、繊度が300〜1000dtexの糸、好ましくは繊度500〜900dtexの糸で、中でも双糸等の複数の糸を撚り合わせた諸糸で、撚り数が500T/m以上の糸、好ましくは900〜1200T/mの糸が用いられる。前記のように房構成糸50が編目形成されずに編み込まれる糸であるため、編目形成糸による房とは異なり、房部5の形態保持性がよくて安定し、全体として太さの揃った房部5を形成でき、該房部からの編地のほつれ等も生じない。もちろん、用途によって、前記範囲以外の繊度、撚り数の糸を用いることもでき、また糸種を変更することもできる。例えば、本体部1の伸縮性に関係なく、伸縮性糸及び非伸縮性糸のいずれを使用することもできる。また、房構成糸の糸種を、部分的に変更したり、異色の糸を使用することもできる。
【0029】
前記の房部5を有する経編レース地Aは、通常、図3のように、前記房部5が形成される側縁部1aの外側方に前記房部5の長さに対応した所要の間隔、例えば数ウエール〜十数ウエールの間隔をおいて複数ウエールの幅の捨て編生地部10を配して編成される。この経編レース地Aの編成状態について、図2に基づいて説明する。図2の(a)は前記捨て編み生地部10とともに経編レース地Aを編成する場合の一部の編組織を示し、同図の(b)は同組織の地筬の糸通し図を示している。
【0030】
図2において、GB1は編目形成糸6を導糸する地筬であり、主に非伸縮性糸により同一ウエールで編立て方向に連続して鎖編を行う。GB2は非伸縮性糸又は伸縮性糸よりなる挿入糸7を導糸する地筬であって、前記地筬GB1により編成される鎖編のウエールに対し横振り挿入されて地編組織2が編成される。この地筬GB2をジャカード筬にして、ジャカード制御により穴地、薄地、厚地等のジャカード組織で編成する場合もある。前記地筬GB1及びGB2には、図2(b)の糸通し図に示すように、経編レース地Aにおける地編組織2の最外側端のウエールW1と捨て編み生地部10との間は、糸抜き等の手段で房部5の長さに対応した針数分の間隔をあけて編成される。
【0031】
図2において、PB2は、房部5を編成し形成するための房構成糸50を導糸する柄筬であり、PB1は前記柄筬PB2より前側の柄筬,PB3は前記柄筬PB2より後側の柄筬であり、前記房構成糸50の前後をカバーする柄糸8,9を導糸して挿入編成を行う。
【0032】
前記柄筬PB2により導糸する房構成糸50については、図2(a)の編組織のように、経編レース地Aの本体部1の側縁部1aの形状に応じて、該房構成糸50による房部5の根元になる部分51を、経編レース地Aの本体部1のウエール、特には前記側縁部1aの部分の最外端のウエール又は該ウエールから1もしくは数ウエール内方さらにはそれ以上内方のウエールに対して挿入編成し、房部5の間隔に応じたコース数に渡ってジグザグ状に、かつ適宜にウエールを移行させながら編み込む。同時に、前記柄筬PB1,PB3により導糸する柄糸8,9を前記房構成糸50の移行に合わせて順次移行させながら横振り挿入するように編成する。そして、房部5を形成するコース位置において、前記房構成糸50を、前記捨て編み生地部10の位置まで横振り移行させて、該捨て編み生地部10の端部のウエールW01に対し房部5の間隔に応じたコース数に渡って挿入編成しジグザグ状に編み込む。この後、前記房構成糸50を、前記本体部1の元のウエールの位置に横振り移行させて戻し、前記同様に根元部分51を前記ウエールに挿入編成により編み込む。
【0033】
このようにして、前記房構成糸50を、房部5を形成するコース毎に、経編レース地Aの本体部1の側縁部1aから前記捨て編み生地部10の側へ、または前記捨て編み生地部10から前記本体部1の側へ横振り移行させるとともに、房部5を形成するコースとコースの間では前記本体部1の側縁部1aにおけるウエールと、前記捨て編み生地部10のウエールに対してそれぞれジグザグ状に編み込む編成を繰り返し、図3のように、経編レース地Aの本体部1と捨て編み生地部10とを房構成糸50で連接して一体に編成する。
【0034】
この編成後、編成された経編レース地Aを、図3のように幅方向に張った状態で熱セットすることにより、前記本体部1の側縁部1aにおけるスカラップ4の山部4aの部分が、前記房構成糸50により外方へ引っ張られて湾曲した山状に張り出し、図3のような波形状をなすスカラップ4が形成される。
【0035】
特に、前記捨て編み生地部10において、図3のように、前記スカラップ4の谷部4bに対応する部分に穴部11が形成されていると、前記の幅方向に張った状態での熱セットにより、谷の深さが比較的深い波形状をなすスカラップ4が形成されることになる。また、前記本体部1の地編組織2の端が同一ウエールで編成されているものでも、前記のように波形状をなすスカラップ4を作ることができる。また、図示説明は省略するが、編目形成糸を斜めに移行させるアトラス編等の編組織を利用することにより、さらに深い谷のスカラップを形成することができる。
【0036】
そして、前記の編成及び熱セットの後、前記房構成糸50の側縁部1aから延出する部分52を、前記捨て編み生地部10の側縁部に沿うラインCでカットし、前記捨て編生地部10を除去することにより、図1のように、編立て方向に対する側縁部1aにおけるスカラップ4の山部4a毎に、緯方向に延出したアイラッシュ状の房部5が形成されてなる経編レース地Aを得ることができる。特に、前記房構成糸50の前記根元部分51は、これを中間にしてその前後、つまり該房構成糸50よりレース地表面側と裏面側とに前記縁構成用の柄糸8,9が配されていて、該両柄糸8,9により挟まれているため、前記房構成糸50の前記根元部分51がレース表面から見えにくく外観的な体裁が良好であり、しかも、レース裏面に比較的太い房構成糸50の根元部分51が露出することがないため、肌触りも良好なものになる。
【0037】
上記の経編レース地Aの編成において、前記房部5同士の間隔は、前記本体部1の側縁部1a及び捨て編生地部10のウエールに対する房構成糸50の編み込みのコース数により適宜設定でき、編み方向において前記間隔を変化させるのも容易である。また、前記房部5の長さについては、前記本体部1の側縁部1aと前記捨て編み生地部10との間の糸抜きの針数の増減によって適宜変更し設定することができる。このほか、房構成糸50について、糸のテンションの変化、複数筬の使用、捨て編み生地部の組織変化や糸使い等を適宜組み合わせることにより、後述する図5の例のように、房部5の長さや間隔を所々部分的に変化させることも可能である。
【0038】
前記経編レース地Aは、通常、複数の経編レース地Aを、それぞれの間に捨て編生地部10を介して並列状に連接して編成する。この場合も、上記と同様に、各経編レース地Aの本体部1と各捨て編み生地部10との間に所定の間隔を保有し、かつ房構成糸50を所定のコース位置において、本体部1から捨て編み生地部10へ、あるいは捨て編み生地10から本体部1に横振り移行させて本体部1の側縁部1aあるいは捨て編み生地部10のウエール対し挿入して編み込むことにより、上記同様に編成することができる。そして、編成後に、上記同様に熱セットし、房構成糸50をカットし、捨て編み生地部10を除去することにより、上記同様の複数の経編レース地Aを同時に得ることができる。
【0039】
前記のように編成され製造される経編レース地Aにおいて、前記房構成糸50は、前記根元部分51が挿入により地編組織2のウエールに編み込まれ、また側縁部1aから緯方向への延出部分52で切断されて房部5になるので、該房部5の切断端からの撚りのほぐれを防止し、かつ地編組織2から抜け易くなるのを防止するのが望ましい。
【0040】
その手段の一つとして、前記房構成糸50としては、その一部に熱融着性の繊維を、例えば5〜40%程度、好ましくは5〜25%程度含む糸を使用する。一例として、非熱融着性繊維よりなる235dtexの糸と、熱融着性繊維よりなる44dtexの糸とを軽く撚り合わせた279dtexの双糸を、さらに3本撚りした837dtexの諸糸を使用する。これにより、編成後の熱セットにより、前記熱融着性繊維の糸が溶融して非熱融着性繊維の糸が接着されることになって、房部5の切断端からの撚りのほぐれを防止できる。また、地編組織2に編み込まれた前記房構成糸50の根元部分51においては、該房構成糸50が地編組織2の糸、例えば編目形成糸とも接着されることになって、挿入で編み込まれているだけであるにも拘わらず、容易に抜け難くなる。なお、房構成糸50として熱融着性繊維を含む糸を使用する場合、熱融着性繊維の割合が多くなりすぎると、房部5の風合いが損なわれることになるので、前記熱融着性繊維の割合は前記範囲が好ましい。
【0041】
また、前記経編レース地Aの本体部1の地編組織2において、前記房構成糸50の前記根元部分51が編み込まれているウエールのうち、少なくとも房部5と房部5の間隔が最も狭い個所の根元部分51が編み込まれた一部のウエール、例えば図2のウエールW3の編目形成糸6aとして、前記同様に一部に熱融着性の繊維を含む糸を使用する。これにより、編成後の熱セットにより、前記熱融着性繊維が溶融して前記房構成糸50と地編組織2の編目形成糸とが接着されることになって、房構成糸50の両端が房部5として切断されているものであっても、抜け難くなる。前記編目形成糸6aに使用する糸が、熱融着性繊維のみよりなる糸、あるいは熱融着性繊維が多く含む糸であると、編成後の熱融着性繊維の溶融により編組織が乱れる虞があるので、熱融着性繊維は20〜70%、好ましくは30〜60%程度含む糸を使用するのがよい。
【0042】
上記のように編成され製造された経編レース地Aは、ブラジャーやショーツ等の女性用下着を始めとする各種衣料に使用できる。図4は前記経編レース地Aをショーツ20の腰部に使用した例を示し、レース地の経方向をショーツ20の横方向にして、前記側縁部1aに有する房部5をショーツ20の上縁に出すようにして、ショーツ下部の生地部分21と縫製して使用している。このほか、前記ショーツ下部の生地部分21も経編レース地Aの一部として一体に編成しておくこともできる。
【0043】
このような使用において、前記房部5は経編レース地Aの経方向すなわち編立て方向に対して緯方向に延びているので、該房部5の延びる方向に対して直角方向の伸縮性を持たせることが可能になる。すなわち、経方向に伸縮性を有する経編レース地の場合、前記房部5の延出方向に対し少なくとも直角方向の伸縮性を有するものになる。そのため、図4のショーツ20での使用において、周方向の伸縮性を持たせることが可能になる。
【0044】
また、前記房部5は、編目形成糸ではなく、挿入組織で編成されるものであるため、房部5からの編地のほつれが発生する虞がなく、しかも、房部5の形態保持性がよく、全体として太さの揃った房部5を形成でき、また、該房部5と房部5の間隔を、糸の太さを変えずに無段階で適宜変化させることができる。さらに、房部5の糸種を部分的に変更したり、色を変化させることができる。そのため、使用上の目的に応じた装飾効果の高い房部5を形成することができる。
【0045】
図5は、本発明の経編レース地Aの他の実施例を示しており、本体部1の両側縁部1a,1bの双方にスカラップ4を形成するとともに、両側縁部1a,1bのスカラップ4の各山部4a毎に、それぞれ長短2種の房部5を間隔を異にして形成している。この実施例においても、基本的な構成、すなわち本体部1の組織や編成状態、房部5の形成方法や編み込み形態、糸使い等は上記と同様に実施でき、同構成部分に同符号を付している。この実施例の経編レース地Aも、ブラジャーやショーツ等の女性用下着を始めとする各種衣料に使用でき、上記同様の効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ブラジャー、ショーツ等の女性用下着を始めとする各種衣料に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の経編レース地の実施例を示す略示平面図である。
【図2】同上経編レース地の編成上の房構成糸を含む主要糸のラッピング状態を略示する一部の編組織図である。
【図3】同上の経編レース地の編成上の捨て編生地部を含めた略示平面図である。
【図4】同上の経編レース地をショーツに使用した例を示す略示斜視図である。
【図5】房部の間隔と長さを異にする別の実施例の経編レース地の略示平面図である。
【符号の説明】
【0048】
A…経編レース地、1…本体部、1a,1b…両側縁部、2…地編組織、3…柄部、4…スカラップ、4a…山部、4b…谷部、5…房部、6…編目形成糸、7…挿入糸、8,9…縁構成用の柄糸、10…捨て編み生地部、11…穴部、20…ショーツ、21…生地部分、50…房構成糸、51…根元部分、52…延出部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が切断された房部を有する経編レース地であって、該房部が該経編レース地の側縁部において経方向に間隔をおいて緯方向に延出するように設けられてなり、前記房部を構成する房構成糸は、前記房部の根元になる部分が前記経編レース地に対して挿入編成により編み込まれて保持されており、該房構成糸の前記根元部分から緯方向に延出する部分が先端を切断した房部として形成されてなることを特徴とする房部を有する経編レース地。
【請求項2】
前記経編レース地が、地編組織に対して伸縮性糸が配されて経編編成され、少なくとも経方向に伸縮性が付与されてなる請求項1に記載の房部を有する経編レース地。
【請求項3】
複数の前記経編レース地が、製品に使用しない捨て編み生地部を介して編幅方向に並列状に連接されて編成され、前記捨て編み生地部を除去することにより各経編レース地毎に分離可能に形成されてなる請求項1又は2に記載の房部を有する経編レース地。
【請求項4】
前記経編レース地の側縁部が、大きなカーブの湾曲状やスカラップとしての波形状をなす請求項1〜3のいずれか1項に記載の房部を有する経編レース地。
【請求項5】
前記房構成糸が、その一部に熱融着性の繊維を含む糸よりなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の房部を有する経編レース地。
【請求項6】
前記経編レース地の地編組織において、前記房構成糸の前記根元部分が編み込まれているウエールのうち、少なくとも房部と房部の間隔が最も狭い個所の根元部分が編み込まれたウエールの編目形成糸が、その一部に熱融着性の繊維を含む糸よりなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の房部を有する経編レース地。
【請求項7】
前記房部を構成する房構成糸の繊度が300〜1000dtexであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の房部を有する経編レース地。
【請求項8】
前記房部を構成する房構成糸の根元部分においては、該房構成糸よりレース地表面側と裏面側とにそれぞれ柄糸が横振りして編み込まれてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の房部を有する経編レース地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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