説明

扁平管および熱交換器

【課題】製造の際の変形を防止しうる扁平管を提供する。
【解決手段】扁平管を適用した冷媒流通管4は、1対の平坦壁13,14と、2つの側壁15,16と、両側壁15,16間に設けられた複数の補強壁17A,17Bとを備えている。補強壁17A,17Bは、一方の平坦壁13に一体成形された第1補強壁用凸条24と、他方の平坦壁14に一体成形され、かつ第1補強壁用凸条17Aに組み合わされた第2補強壁用凸条25とからなる。全補強壁17A,17Bの中には、第1補強壁用凸条24の一側面の一部分と第2補強壁用凸条25の他側面の一部分とが接触した状態で相互にろう付されることにより形成された第1補強壁17Aと、第1補強壁用凸条24の他側面の一部分と第2補強壁用凸条25の一側面の一部分とが接触した状態で相互にろう付されることにより形成された第2補強壁17Bとが混在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱交換器の熱交換管、たとえばカーエアコンのコンデンサやエバポレータの冷媒流通管、自動車用オイルクーラのオイル流通管、自動車用ラジエータのエンジン冷却水流通管、ヒータコアのエンジン冷却水流通管などとして使用される扁平管および扁平管を用いた熱交換器に関する。
【0002】
この明細書において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【背景技術】
【0003】
近時、たとえば自動車用熱交換器として、互いに間隔をおいて配置された1対のアルミニウム製ヘッダタンクと、両ヘッダタンク間にヘッダタンクの長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部がヘッダタンクに形成された管挿入穴内に挿入されてヘッダタンクにろう付された複数のアルミニウム製扁平状熱交換管と、隣り合う熱交換管どうしの間に配置されて熱交換管にろう付されたアルミニウム製コルゲートフィンとを備えたものが広く用いられている。
【0004】
上述した自動車用熱交換器に用いられる熱交換効率に優れた熱交換管に用いられる扁平管として、本出願人は、先に、互いに対向する1対の平坦壁と、両平坦壁の両側縁どうしにまたがって設けられた2つの側壁と、両側壁間において両平坦壁にまたがるとともに長さ方向にのび、かつ相互に所定間隔をおいて設けられた複数の補強壁とを備えており、一方の側壁が両平坦壁と一体に形成されるとともに、他方の側壁が両平坦壁の側縁に一体成形された複数の側壁形成部を組み合わせることにより形成され、補強壁が、一方の平坦壁から内方隆起状に一体成形された補強壁用凸条と、他方の平坦壁から内方隆起状に一体成形された補強壁用凸条との先端面どうしを当接させて接合することにより形成されている扁平管を提案した(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1記載の扁平管は、全体が1枚の金属板よりなり、かつ2つの平坦壁形成部と、両平坦壁形成部を一体に連結しかつ一方の側壁を形成する連結部と、両平坦壁形成部における連結部とは反対側の側縁に、それぞれ平坦壁形成部から隆起するように設けられた第1および第2側壁形成部と、第1平坦壁形成部における連結部とは反対側の側縁を延長することにより設けられた第3側壁形成部用延長部と、両平坦壁形成部に、平坦壁形成部から隆起するように設けられた複数の補強壁用凸条とを備えている扁平管製造用板状体を、連結部の両側においてヘアピン状に折り曲げて第1および第2側壁形成部の先端面どうしを突き合わせるとともに、両平坦壁形成部の補強壁用凸条の先端面どうしを突き合わせること、第3側壁形成部用延長部を、第1および第2側壁形成部の外面を覆うように折り曲げて第3側壁形成部をつくるとともに、第3側壁形成部の先端部を第2平坦壁形成部外面の側縁部に係合させて折り曲げ体を作ること、ならびに折り曲げ体の第1側壁形成部と第2側壁形成部、第1および第2側壁形成部と第3側壁形成部、第3側壁形成部と第2平坦壁形成部、ならびに補強壁用凸条どうしを同時にろう付することにより製造される。特許文献1の扁平管は、熱交換器の製造時に、他の部品のろう付と同時に、上述した折り曲げ体における第1側壁形成部と第2側壁形成部、第1および第2側壁形成部と第3側壁形成部、第3側壁形成部と第2平坦壁形成部、ならびに補強壁用凸条どうしを同時にろう付することにより製造される。
【0006】
ところで、熱交換器の製造にあたって、折り曲げ体を、ヘッダタンクやコルゲートフィンなどの熱交換器の他の部品と組み合わせる際に、第1側壁形成部と第2側壁形成部、および両平坦壁形成部の補強壁用凸条どうしが平坦壁形成部の幅方向にずれて折り曲げ体が変形し、製造された扁平管の形状が設計された正常な形状にならないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−78163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、製造の際の変形を防止しうる扁平管および熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)互いに対向する1対の平坦壁と、両平坦壁の両側縁どうしにまたがって設けられた2つの側壁と、両側壁間において両平坦壁にまたがるとともに長さ方向にのび、かつ相互に所定間隔をおいて設けられた複数の補強壁とを備えており、一方の側壁が両平坦壁と一体に形成されているとともに、他方の側壁が両平坦壁の側縁部に一体成形されるとともに組み合わされた複数の側壁形成部からなり、補強壁が、一方の平坦壁から内方隆起状に一体成形された第1の補強壁用凸条と、他方の平坦壁から内方隆起状に一体成形され、かつ第1補強壁用凸条に組み合わされた第2の補強壁用凸条とからなり、1枚の板状体を折り曲げるとともに、全側壁形成部および両補強壁用凸条どうしを接合することにより形成されている扁平管であって、
第1補強壁用凸条の一側面の一部分と第2補強壁用凸条の他側面の一部分とが接触した状態で相互に接合されることにより形成された第1の補強壁と、第1補強壁用凸条の他側面の一部分と第2補強壁用凸条の一側面の一部分とが接触した状態で相互に接合されることにより形成された第2の補強壁とが混在している扁平管。
【0011】
2)第1補強壁と第2補強壁とが幅方向に交互に設けられている上記1)記載の扁平管。
【0012】
3)2つの平坦壁形成部と、両平坦壁形成部を一体に連結しかつ一方の側壁を形成する連結部と、両平坦壁形成部における連結部とは反対側の側縁に設けられた複数の側壁形成部と、一方の平坦壁形成部に隆起状に設けられた複数の第1補強壁用凸条と、他方の平坦壁形成部に隆起状に設けられた複数の第2補強壁用凸条とを備えている扁平管製造用板状体を、連結部の両側においてヘアピン状に折り曲げるとともに、全側壁形成部および両補強壁用凸条どうしを接合することにより形成されている上記1)または2)記載の扁平管。
【0013】
4)互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンク間に、上記1)〜3)のうちのいずれかに記載された複数の扁平管からなる熱交換管が相互に間隔をおいて並列状に配置され、すべての熱交換管の両端部がヘッダタンクにろう付され、隣り合う熱交換管どうしの間の通風間隙にフィンが配置され、フィンが熱交換管にろう付されている熱交換器。
【発明の効果】
【0014】
上記1)〜3)の扁平管によれば、製造の際に、1枚の扁平管製造用金属板を折り曲げるとともに、全側壁形成部および両補強壁用凸条を組み合わさせて折り曲げ体をつくると、折り曲げ体には、第1補強壁用凸条の一側面の一部分と第2補強壁用凸条の他側面の一部分とが接触した状態の補強壁用凸条の対と、第1補強壁用凸条の他側面の一部分と第2補強壁用凸条の一側面の一部分とが接触した状態の補強壁用凸条の対とが混在することになるので、折り曲げ体に、扁平管製造用金属板における平坦壁を形成する部分の幅方向の力が加わったとしても、両補強壁用凸条どうしのずれが防止される。したがって、製造される扁平管の形状が設計された正常な形状となり、製造される扁平管の変形が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の扁平管からなる冷媒流通管を用いたカーエアコン用コンデンサの実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図1のコンデンサの冷媒流通管を製造するのに使用される冷媒流通管製造用板状体の正面図である。
【図5】図1のコンデンサの冷媒流通管を製造する工程の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態は、この発明による扁平管を、フロン系冷媒を使用したカーエアコンのコンデンサの冷媒流通管に適用したものである。
【0017】
図1はこの発明による扁平管からなる冷媒流通管を有するカーエアコン用コンデンサの全体構成を示し、図2および図3はその要部の構成を示す。また、図4および図5は冷媒流通管の製造方法を示す。
【0018】
なお、図1および図2に示すカーエアコン用コンデンサに関する説明において、図1の上下、左右を上下、左右というものとし、通風方向下流側(図1に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとする。
【0019】
図1において、カーエアコン用のコンデンサ(1)は、左右方向に間隔をおいて配置された上下方向にのびる1対のアルミニウム製ヘッダタンク(2)(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間において幅方向を通風方向に向けるとともに上下方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部が両ヘッダタンク(2)(3)にろう付された複数のアルミニウム押出形材製扁平状冷媒流通管(4)(扁平管)と、隣り合う冷媒流通管(4)どうしの間、および上下両端の冷媒流通管(4)の外側に配置されて冷媒流通管(4)にろう付されたアルミニウム製コルゲートフィン(5)と、上下両端のコルゲートフィン(5)の外側に配置されてコルゲートフィン(5)にろう付されたアルミニウム製サイドプレート(6)とを備えている。
【0020】
左側ヘッダタンク(2)は、高さ方向の中央部よりも上方において仕切部材(7)により上下2つのヘッダ部(2a)(2b)に仕切られ、右側ヘッダタンク(3)は、高さ方向の中央部よりも下方において仕切部材(7)により上下2つのヘッダ部(3a)(3b)に仕切られている。左側ヘッダタンク(2)の上ヘッダ部(2a)に流体入口(図示略)が形成され、流体入口に通じる流入路(8a)を有するアルミニウムベア材製入口部材(8)が上ヘッダ部(2a)にろう付されている。また、右側ヘッダタンク(3)の下ヘッダ部(3b)に流体出口(図示略)が形成され、流体出口に通じる流出路(9a)を有するアルミニウムベア材製出口部材(9)が下ヘッダ部(3b)にろう付されている。
【0021】
左右のヘッダタンク(2)(3)は、少なくとも外面にろう材層を有するアルミニウム製パイプ、たとえば両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなる素板が筒状に成形されるとともに両側縁部が部分的に重ね合わされて相互にろう付された筒状体からなり、かつ前後方向に長い複数の管挿入穴を有するタンク本体(11)と、タンク本体(11)の両端にろう付されてその両端開口を閉鎖するアルミニウム製閉鎖部材(12)とからなる。なお、ヘッダタンク本体(11)の詳細な図示は省略する。また、ヘッダタンク本体(11)は、外周面にろう材が溶射されたアルミニウム押出管からなるものであってもよい。
【0022】
図2および図3に示すように、冷媒流通管(4)はアルミニウム製であり、上下方向に間隔をおいて互いに対向しかつ同一肉厚である1対の平坦壁(13)(14)と、両平坦壁(13)(14)の一方の側縁どうしにまたがりかつ両平坦壁(13)(14)と一体に形成された第1側壁(15)と、両平坦壁(13)(14)の他方の側縁どうしにまたがりかつ両平坦壁(13)(14)の他方の側縁部に一体成形された複数の側壁形成部を組み合わせることにより形成された第2側壁(16)と、両側壁(15)(16)間において両平坦壁(13)(14)にまたがるとともに相互に所定間隔をおいて設けられ、かつ長さ方向に伸びる複数の補強壁(17A)(17B)とよりなり、内部に並列状の複数の冷媒通路(18)を有するものである。
【0023】
第2側壁(16)は、第1平坦壁(13)に一体に形成された第1側壁形成部(19)と、第2平坦壁(14)に一体に形成された第2側壁形成部(21)と、第1平坦壁(13)に一体に形成された第3側壁形成部(22)とを組み合わせてろう付することにより形成されている。
【0024】
第1側壁形成部(19)は、第1平坦壁(13)に第2平坦壁(14)側に突出するように一体に形成されている。第2側壁形成部(21)は、第2平坦壁(14)に第1平坦壁(13)側に突出するように一体に形成され、先端が第1側壁形成部(19)の先端に突き合わされた状態で第1側壁形成部(19)にろう付されている。第1および第2側壁形成部(19)(21)の先端部どうしは相欠き状に突き合わされている。すなわち、第1平坦壁(13)の第1側壁形成部(19)の先端部は前後方向外側半部が欠き取られたような形状となっているとともに、第2平坦壁(14)の第2側壁形成部(21)の先端部は前後方向内側半部が欠き取られたような形状となっており、第1側壁形成部(19)の突出部(19a)が第2側壁形成部(21)の欠き取り部(21b)内に嵌り、第2側壁形成部(21)の突出部(21a)が第1側壁形成部(19)の欠き取り部(19b)内に嵌っている。
【0025】
第3側壁形成部(22)は、第1側壁形成部(19)よりも前後方向外側において、第1平坦壁(13)に第2平坦壁(14)側に突出するように一体に形成されて、第1および第2側壁形成部(19)(21)の外面に沿わされており、その先端部が、第2平坦壁(14)外面の前後方向外側縁部に形成されかつ前後方向外側に向かって第1平坦壁(13)側に傾斜した傾斜面(23)に係合させられた状態で、第1および第2側壁形成部(19)(21)の外面全体、および第2平坦壁(14)の傾斜面(23)にろう付されている。
【0026】
補強壁(17A)(17B)は、第1平坦壁(13)より第2平坦壁(14)側に隆起するように一体成形された第1補強壁用凸条(24)と、第2平坦壁(14)より第1平坦壁(13)側に隆起するように一体成形された第2補強壁用凸条(25)とがろう付されることにより形成されている。両補強壁用凸条(24)(25)は、先端に向かって徐々に肉薄となったテーパ状である。全補強壁(17A)(17B)のうちの一部は、第1補強壁用凸条(24)の前側面(一側面)の略半部(一部分)と第2補強壁用凸条(25)の後側面(他側面)の略半部(一部分)とが接触した状態で相互にろう付されることにより形成された第1の補強壁(17A)であり、全補強壁(17A)(17B)の残部は、第1補強壁用凸条(24)の後側面(他側面)略半部(一部分)と第2補強壁用凸条(25)の前側面(一側面)の略半部(一部分)とが接触した状態で相互にろう付されることにより形成された第2の補強壁(17B)である。第1補強壁(17A)と第2補強壁(17B)とが前後方向に(幅方向)に交互に設けられている。
【0027】
コンデンサ(1)は、以下に述べる方法で製造される。
【0028】
まず、少なくとも外面にろう材層を有する1対の筒状アルミニウム製ヘッダタンク本体素材、閉鎖部材(12)、複数のアルミニウム製コルゲートフィン(5)、サイドプレート(6)、仕切部材(7)、入口部材(8)、および出口部材(9)を用意する。ヘッダタンク本体素材には複数の管挿入穴が形成されている。
【0029】
また、図4に示す冷媒流通管製造用板状体(30)を用いて、以下に述べる方法により冷媒流通管(4)をつくるための折り曲げ体(30A)をつくっておく。冷媒流通管を製造する方法に関する図4および図5の説明において、図4および図5の上下、左右を上下、左右というものとする。
【0030】
冷媒流通管製造用板状体(30)は、全体が両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなる圧延素板を圧延することにより形成されたものであり、両平坦壁(13)(14)を形成する相互に同幅および同肉厚の平らな第1平坦壁形成部(31)および第2平坦壁形成部(32)と、両平坦壁形成部(31)(32)どうしを一体に連結するとともに第1側壁(15)を形成する連結部(33)と、第1平坦壁形成部(31)および第2平坦壁形成部(32)における連結部(33)とは反対側の側縁より上方隆起状に一体成形されかつ第2側壁(16)を形成する第1および第2側壁形成部(19)(21)と、第1平坦壁形成部(31)における連結部(33)とは反対側の側縁を右方に延長することにより形成された第3側壁形成部用延長部(34)と、第1平坦壁形成部(31)および第2平坦壁形成部(32)にそれぞれ左右方向に所定間隔をおいて上方隆起状に一体成形された複数の第1および第2補強壁用凸条(24)(25)とを備えている。
【0031】
第2平坦壁形成部(32)下面における第2側壁形成部(21)側の左側縁部には、左方に向かって上方に傾斜した傾斜面(23)が形成されている。両平坦壁形成部(31)(32)の第1および第2側壁形成部(19)(21)は、それぞれ先端部に突出部(19a)(21a)および欠き取り部(19b)(21b)を有しており、第1平坦壁形成部(31)の第1側壁形成部(19)の突出部(19a)と第2平坦壁形成部(32)の第2側壁形成部(21)の欠き取り部(21b)、および第1平坦壁形成部(31)の第1側壁形成部(19)の欠き取り部(19b)と第2平坦壁形成部(32)の第2側壁形成部(21)の突出部(21a)とが、それぞれ連結部(33)の左右方向の中心線に対して線対称となる位置にある。また、第1および第2側壁形成部(19)(21)の寸法、すなわち高さ、全体の肉厚および突出部(19a)(21a)の肉厚は同一である。第3側壁形成部用延長部(34)の肉厚は第2平坦壁形成部(32)の肉厚と等しくなっている。
【0032】
第1平坦壁形成部(31)には、隣り合う2つの第1補強壁用凸条(24)からなる組(P1)が、左右方向に間隔をおいて複数組設けられており、第2平坦壁形成部(32)には、隣り合う2つの第2補強壁用凸条(25)からなる組(P2)が、左右方向に間隔をおいて複数組設けられている。第1平坦壁形成部(31)における各第1補強壁用凸条組(P1)の両第1補強壁用凸条(24)間の間隔(S1)は、隣り合う2つの第1補強壁用凸条組(P1)間の間隔(S2)よりも大きくなっている。また、第2平坦壁形成部における各第2補強壁用凸条組(P2)の第2補強壁用凸条(25)間の間隔(S3)は、第1平坦壁形成部(31)の各第1補強壁用凸条組(P1)の両第1補強壁用凸条(24)間に嵌るような大きさとなっており、第2平坦壁形成部(32)における隣り合う2つの第2補強壁用凸条組(P2)間の間隔(S4)は、第1平坦壁形成部(31)における隣り合う2つの第1補強壁用凸条組(P1)の近接した2つの第1補強壁用凸条(24)が嵌るような大きさとなっている。したがって、第1平坦壁形成部(31)の第1補強壁用凸条(24)と第2平坦壁形成部(32)の第2補強壁用凸条(25)は、それぞれ連結部(33)の前後方向の中心線に対して前後対称となる位置から若干ずれた位置にある。第1平坦壁形成部(31)の第1補強壁用凸条(24)および第2平坦壁形成部(32)の第2補強壁用凸条(25)の寸法、すなわち高さおよび肉厚は同一である。
【0033】
なお、両面にろう材層が設けられたアルミニウムブレージングシートからなる圧延素板を圧延することにより、第1平坦壁形成部(31)、第2平坦壁形成部(32)、連結部(33)、第1および第2側壁形成部(19)(21)、第3側壁形成部用延長部(34)、ならびに第1および第2補強壁用凸条(25)(26)が一体成形されていることにより、第2平坦壁形成部(32)の第2側壁形成部(21)の側面、および第3側壁形成部用延長部(34)の先端面を除いた全体がろう材層により覆われている。
【0034】
そして、図5に示すように、ロールフォーミング法により、冷媒流通管製造用板状体(30)を連結部(33)の左右両側で順次折り曲げていき(図5(a)参照)、最後にヘアピン状に折り曲げて、第2平坦壁形成部(32)における各第2補強壁用凸条組(P2)の2つの第2補強壁用凸条(25)を、第1平坦壁形成部(31)における各第1補強壁用凸条組(P1)の2つの第1補強壁用凸条(24)間に嵌め入れるとともに、第1平坦壁形成部(31)における隣り合う2つの第1補強壁用凸条組(P1)の近接した2つの第1補強壁用凸条(24)を、第2平坦壁形成部(32)における隣り合う2つの第2補強壁用凸条組(P2)間に嵌め入れ、さらに第1および第2側壁形成部(19)(21)の突出部(19a)(21a)と欠き取り部(21b)(19b)とを嵌め合わせる。このとき、第1補強壁用凸条(24)の一側面の略半部と第2補強壁用凸条(25)の他側面の略半部とが接触するとともに、第1補強壁用凸条(24)の他側面の略半部と第2補強壁(17B)の一側面の略半部とが接触する。
【0035】
ついで、第3側壁形成部用延長部(34)を折り曲げていき、第1および第2側壁形成部(19)(21)の外面に沿わせるとともに、その先端部を第2平坦壁形成部(32)の傾斜面(23)に係合させて第3側壁形成部(22)をつくって折り曲げ体(30A)を得る(図5(b)参照)。
【0036】
ついで、管挿入穴を有する1対のヘッダタンク本体素材を間隔をおいて配置するとともに、両ヘッダタンク本体素材の両端に閉鎖部材(12)を配置し、さらに両ヘッダタンク本体素材に仕切部材(7)を配置してヘッダタンク素材を用意する。また、折り曲げ体(30A)とフィン(5)とを交互に配置し、折り曲げ体(30A)の両端部をヘッダタンク素材の管挿入穴に挿入する。また、両端のコルゲートフィン(5)の外側にサイドプレート(6)を配置し、さらに入口部材(8)および出口部材(9)を配置する。折り曲げ体(30A)を他の部品と組み合わせる際に、折り曲げ体(30A)に平坦壁形成部の幅方向の力が加わったとしても、第1補強壁用凸条(24)の一側面の略半部と第2補強壁用凸条(25)の他側面の略半部とが接触するとともに、第1補強壁用凸条(24)の他側面の略半部と第2補強壁用凸条(25)の一側面の略半部とが接触することによって、折り曲げ体(30A)の変形が防止される。
【0037】
ついで、ヘッダタンク本体素材と閉鎖部材(12)と仕切部材(7)とからなるヘッダタンク素材、折り曲げ体(30A)、コルゲートフィン(5)、サイドプレート(6)、入口部材(8)および出口部材(9)を仮止めして仮止め体をつくるとともに、仮止め体にフラックスを塗布する。その後、仮止め体をろう付炉内に入れるとともに、ろう付炉内において仮止め体を所定温度に加熱し、第1および第2側壁形成部(19)(21)の先端部どうしを相互にろう付するとともに、第3側壁形成部(22)を第1および第2側壁形成部(19)(21)の外面と第2平坦壁形成部(32)の傾斜面(23)にろう付することにより第2側壁(16)を形成する。また、両補強壁用凸条(24)(25)どうしをろう付することにより第1および第2補強壁(17A)(17B)を形成し、連結部(33)により第1側壁(15)を形成し、さらに第1平坦壁形成部(31)により第1平坦壁(13)を、第2平坦壁形成部(32)により第2平坦壁(14)をそれぞれ形成して冷媒流通管(4)を製造する。これと同時に、ヘッダタンク本体素材および閉鎖部材(12)からなるヘッダタンク素材によりヘッダタンク(2)(3)を製造し、冷媒流通管(4)とヘッダタンク(2)(3)、冷媒流通管(4)とコルゲートフィン(5)、コルゲートフィン(5)とサイドプレート(6)、ならびにヘッダタンク(2)(3)と入口部材(8)および出口部材(9)とを、それぞれ同時にろう付する。こうして、コンデンサ(1)が製造される。そして、製造時における折り曲げ体(30A)の変形が防止されていたので、得られた冷媒流通管の形状が、設計通りの正常な形状になる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明による扁平管は、カーエアコンを構成する冷凍サイクルの熱交換器、たとえばカーエアコン用コンデンサの熱交換として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0039】
(1):コンデンサ(熱交換器)
(2)(3):ヘッダタンク
(4):冷媒流通管(扁平管)
(5):コルゲートフィン
(13)(14):平坦壁形成部
(15)(16):側壁
(17A):第1補強壁
(17B):第2補強壁
(19)(21)(22):側壁形成部
(24):第1補強壁用凸条
(25):第2補強壁用凸条
(30):冷媒流通管製造用板状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する1対の平坦壁と、両平坦壁の両側縁どうしにまたがって設けられた2つの側壁と、両側壁間において両平坦壁にまたがるとともに長さ方向にのび、かつ相互に所定間隔をおいて設けられた複数の補強壁とを備えており、一方の側壁が両平坦壁と一体に形成されているとともに、他方の側壁が両平坦壁の側縁部に一体成形されるとともに組み合わされた複数の側壁形成部からなり、補強壁が、一方の平坦壁から内方隆起状に一体成形された第1の補強壁用凸条と、他方の平坦壁から内方隆起状に一体成形され、かつ第1補強壁用凸条に組み合わされた第2の補強壁用凸条とからなり、1枚の板状体を折り曲げるとともに、全側壁形成部および両補強壁用凸条どうしを接合することにより形成されている扁平管であって、
第1補強壁用凸条の一側面の一部分と第2補強壁用凸条の他側面の一部分とが接触した状態で相互に接合されることにより形成された第1の補強壁と、第1補強壁用凸条の他側面の一部分と第2補強壁用凸条の一側面の一部分とが接触した状態で相互に接合されることにより形成された第2の補強壁とが混在している扁平管。
【請求項2】
第1補強壁と第2補強壁とが幅方向に交互に設けられている請求項1記載の扁平管。
【請求項3】
2つの平坦壁形成部と、両平坦壁形成部を一体に連結しかつ一方の側壁を形成する連結部と、両平坦壁形成部における連結部とは反対側の側縁に設けられた複数の側壁形成部と、一方の平坦壁形成部に隆起状に設けられた複数の第1補強壁用凸条と、他方の平坦壁形成部に隆起状に設けられた複数の第2補強壁用凸条とを備えている扁平管製造用板状体を、連結部の両側においてヘアピン状に折り曲げるとともに、全側壁形成部および両補強壁用凸条どうしを接合することにより形成されている請求項1または2記載の扁平管。
【請求項4】
互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンク間に、請求項1〜3のうちのいずれかに記載された複数の扁平管からなる熱交換管が相互に間隔をおいて並列状に配置され、すべての熱交換管の両端部がヘッダタンクにろう付され、隣り合う熱交換管どうしの間の通風間隙にフィンが配置され、フィンが熱交換管にろう付されている熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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