説明

扁平重量物の荷降ろし装置

【課題】板ガラスなどの扁平な形態の重量物を、トラック荷台などの高位置から路上などの低位置へ降ろす作業に適した扁平重量物の荷降ろし装置を提供する。
【解決手段】重量物の荷重とその荷降ろし機構35の荷重を支える構造強度を備え、重量物の荷降ろし機構の一部となる上下方向のガイドレール17、18を有する装置本体11と、ガイドレールに沿って移動するガイドローラー36、37によって上下方向へ移動可能に設けられた荷降ろし架台40と、上下方向へ移動可能な移動部とそれを支える基部を有する少なくとも1基の圧縮ばね装置45と、そのストロークを増大するために配置した動滑車を構成するプーリー53、53′…と、一端を圧縮ばね装置の移動部側に接続し、中間部分を上記複数段のプーリーに掛け回し、他端は吊り下げ状態にて荷降ろし架台40側に接続するワイヤー54、54′とを備えて扁平重量物の荷降ろし装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば板ガラスなどの扁平な形態の重量物を対象として、それらを高位置から低位置へ降ろす作業に適した荷降ろし装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板ガラスのように、割れ易く、また、薄いために力を加えにくい扁平な形態の重量物は運搬に特別の配慮が必要であるため、トラック輸送では荷台に板ガラス積載用基台を装備した特別の車両を使用し、上記の基台に板ガラスを立て掛けて固定する方式が取られている。基台を使用したトラック輸送の場合、生産工場で積載するのであれば、そこには積載設備も整っていると考えて良いが、配送先などでは荷降ろし設備が整っているとは限らないため、板ガラスをトラック荷台上から降ろす者と、下で受け取る者との少なくとも2名の人員が荷降ろし作業に必要であった。
【0003】
上記の問題に対して、特開平11−11684号の自動昇降式板硝子移載装置が提案されている。この発明の装置は、トラックの荷台の中央部の前後方向に木枠を設置し、その木枠の左右両側に側面形状がほぼL字型の板硝子載置台を配置し、木枠と板硝子載置台をリンクで結合し、かつ、第1進退手段と称するピストンシリンダー装置によって、トラック荷台上から板硝子載置台を荷台側方へ突き出させ、さらに、第2進退手段と称するピストンシリンダー装置によって、板硝子載置台を路面近傍まで下げ又はそこから上げる構成を有している。このため、二組のピストンシリンダー装置が必要であり、その上これらのピストンシリンダー装置は油圧等を駆動源とするものであるから、油圧等の制御回路と操作機器なども必要になる。
【0004】
このように、板ガラスなどの割れ易く扁平な形態の重量物の荷降ろしを行うには、内外方向と上下方向の動きを組み合わせる必要があるため、ピストンシリンダー装置などの油圧駆動或いは電動の駆動装置を複数台用いて、必要な動作とストロークを得るというのが通常の方法であった。しかしながら従来の装置はコストが高くつき、荷降ろしだけでなく荷積みも行うため、装置自体は大掛かりとなり、かつ、大重量ともなるので、採用したくてもできないという状況であり、機材の軽量化が望まれた。なお、板ガラスなどの工業製品は生産工場から出荷するため積載設備は整っている場合が多いと考えられるので、出荷先において荷降ろしを作業者が一人で行えるという要求を満たす方が、より現場の状況に適合するものと判断される。
【0005】
【特許文献1】特開平11−11684号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、板ガラスなどの扁平な形態の重量物を、トラック荷台などの高位置から路上などの低位置へ降ろす作業に適した扁平重量物の荷降ろし装置を提供することである。また、本発明の他の課題は、例えば重量物を運搬するトラックのドライバー1人でも、重量物の配送先において、容易かつ安全に荷降ろしが可能であり、荷の迅速な配送に寄与する扁平重量物の荷降ろし装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明は、特に扁平な形態の重量物を高位置から低位置へ降ろす作業に適した荷降ろし装置として、重量物の荷重とその荷降ろし機構の荷重を支える構造強度を備え、また、重量物の荷降ろし機構の一部となる上下方向のガイドレールを有する装置本体と、上記ガイドレールとともに荷降ろし機構を構成し、ガイドレールに沿って移動するガイドローラーによって上下方向へ移動可能に設けられた重量物を載せる荷降ろし架台と、上下方向へ向けて移動可能に設けられた移動部とそれを支える基部とを有し、上記移動部又は基部の一端を装置本体に、他端を荷降ろし架台に取り付けた少なくとも1基の圧縮ばね装置と、圧縮ばね装置のストロークを増大するために、下部の装置本体側と上部の荷降ろし架台側にそれぞれ配置した動滑車を構成する複数段のプーリーと、一端を圧縮ばね装置の移動部側に接続するとともに、中間部分を上記複数段のプーリーに掛け回し、他端は荷降ろし架台を吊り下げる状態にて荷降ろし架台側に接続するワイヤーとを備えて構成するという手段を講じたものである。
【0008】
本発明の装置は、重量物の荷降ろしを、作業者が一人で行えるようにすることを目的とするものであり、従って、荷積みは目的としない。また、本発明は、油圧駆動或いは電動のピストンシリンダー装置などの駆動装置を必要とせず、最小限度の機材、器具等を使用して、軽量、かつ、低コストに構成することができる扁平重量物の荷降ろし装置の提供を目的とするものである。荷降ろしの対象となる重量物は、例えば前述の板ガラスが典型的なものであるがこれに止まらず、特に扁平で扱い難く、かつ、重い物品が本発明の装置による荷降ろしに適している。
【0009】
本発明の装置は、重量物を支える装置としての強度を有するとともに、他の機構や機器を取り付ける構造体となる装置本体と、重量物を載せる荷降ろし架台と、重量物の荷重を弾力的に支持するための圧縮ばね装置と、動滑車を構成するプーリー及びワイヤーとを備えて構成されている。本発明の装置は、トラックの荷台等から荷降ろしする際に使用することが想定されているが、その際、本発明の装置をトラックの荷台に立て掛けるだけでも使用することができるので、トラックの荷台等に本発明の装置を固定する手段は、装置構成に含めなくても良い。同様に、荷台の高さに合わせて装置本体の高さを調節することも必要であるが、特定のトラック専用の場合には高さ調節も不要なので、これも必須の要件というものではない。
【0010】
装置本体は、重量物の荷重とその荷降ろし機構の荷重を支える構造強度を備え、また、重量物の荷降ろし機構の一部となる上下方向のガイドレールを有している。つまり、装置本体はそれ自体が構造体であると同時に、ガイドレールを有していて荷降ろし機構の一部を構成している。このような装置本体は、左右両側に配置される上下方向の縦枠と、それらの縦枠を上下にて結合する左右方向の横枠及び上下の横枠を中央部にて結合する中央枠とを具備する扁平な形態を設けた構成とすることが望ましい。装置本体を上下方向の左右縦枠と左右方向の上下横枠及び中央枠から成る構造とすることによって、扁平でありながら、強固な構造が得られ、かつ、軽量化も達成される。
【0011】
上記装置本体は、左右両側に配置される上下方向の縦枠と、それらの縦枠を上下にて結合する左右方向の横枠及び上下の横枠を中央部にて結合する中央枠とを具備する扁平な形態を有しているとともに、装置本体を設置場所に置く脚部を装置本体の下部に長さ調節可能に設け、トラックの荷台に掛け止める係止部を装置本体の上部より後方へ突き出させて設けた構成を有していることは、前記専用トラックの用途があるにしても、望ましい構成である。係止部は、例えば、トラックの荷台といわゆるあおり板との間の隙間に挿入して係止することができる。
【0012】
上記荷降ろし架台は、ガイドレールとともに荷降ろし機構を構成し、ガイドレールに沿って移動するガイドローラーを有し、それによって上下方向へ移動可能に設けられた、重量物を載せるための構成を有している。荷降ろし架台は、扁平な形態の重量物の一辺を載せるために装置本体の左右方向に細長く前後に短く形成され、左右両端部にガイドローラーを設けた構成とすることが望ましい。この構成は、ガイドレール及びガイドローラー等を全て装置本体の左右両端部にのみ配置して中間部分を使用せず、そのため装置は扁平な枠状構造のものとなるので、例えばドライバーが一人で扱うにも無理のない大きさと重さにまとめられる。
【0013】
上記圧縮ばね装置は、上下方向へ向けて移動可能に設けられた移動部とそれを支える基部とを有し、上記移動部又は基部の一端を装置本体に、他端を荷降ろし架台に取り付けた少なくとも1基のものから成る。圧縮ばね装置は、一端を装置本体に、他端を荷降ろし架台に取り付けた主圧縮ばね装置と、同じく、一端を装置本体に、他端を荷降ろし架台に係脱可能に取り付けた少なくとも1基の副圧縮ばね装置とから構成することもあり得る。これは、重量物の荷重が重く、1基では不足する場合に耐荷重を補うために、圧縮ばね装置を複数基併用するケースがあることを述べている。複数基の圧縮ばね装置は、その内の何基かを選択使用することも可能である。
【0014】
さらに、圧縮ばね装置は、基部に該当するシリンダーと、シリンダーに摺動可能に組み合わされて移動部に該当するピストンを有し、シリンダー内部に圧縮ガスを封入式に充填したいわゆるガススプリングから成るものであることが望ましい。シリンダー内部に圧縮ガスを封入式に充填したいわゆるガススプリングは、常に伸張方向へ作用力が働いて、重量物の荷重をその作用力に対抗させるもので、従来のピストンシリンダー装置などの油圧駆動或いは電動の駆動装置と異なり、外部で制御する必要がなく、使用時には重量物を端に乗せるだけで良いので、操作が非常に容易である。また、メンテナンスの必要もなく、コストも相対的に安価である。なお、コイルばねから成る装置も、圧縮ばね装置として当然使用可能である。
【0015】
本発明の装置は、上記圧縮ばね装置のストロークを増大するために、下部の装置本体側と上部の荷降ろし架台側にそれぞれ配置した動滑車を構成する複数段のプーリーと、一端を圧縮ばね装置の移動部側に接続するとともに、中間部分を上記複数段のプーリーに掛け回し、他端は荷降ろし架台を吊り下げる状態にて荷降ろし架台側に接続するワイヤーとを備えて構成される。上記動滑車において、その上下方向の位置を変えるのは上部の荷降ろし架台側に配置したプーリーであり、下部の装置本体側に配置したプーリーの位置は固定している。
【0016】
動滑車は荷とともに上下動し、荷の荷重を減ずる作用をするが、本発明では動滑車を構成するワイヤーの動きがワイヤー1本に付き2倍となる点に着目して、圧縮ばね装置のストロークを増大させたことを特徴とする。具体的には、図示の実施形態の如く2個のプーリーを用いて4本のワイヤーを使用した場合を説明すると、圧縮ばね装置のストロークの4倍の高低差を得ることができるから、圧縮ばね装置のストロークが200mmであるとすれば荷降ろし架台の上下動距離は800mmとなる。なお、動滑車の構成を用いて吊り下げられた荷降ろし架台にて支えることができる荷重は、動滑車を構成するプーリーの段数に従うから、支え得る荷重は動滑車を用いない場合の何分の1かになり、上記の例でいえば動滑車を用いない場合の4分の1となる。そこで、このような場合に耐荷重を補うために、前述した圧縮ばね装置を複数基併用することが有用になるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、板ガラスなどの扁平な形態の重量物を、トラック荷台などの高位置から路上などの低位置へ降ろす作業に適した扁平重量物の荷降ろし装置を提供することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、重量物を運搬するトラックのドライバー1人でも、重量物の配送先において、容易かつ安全に荷降ろしが可能であり、荷の迅速な配送に寄与する扁平重量物の荷降ろし装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は本発明に係る扁平重量物の荷降ろし装置10の一例を示す正面図であり、11は装置本体を示しており、装置本体11は左右両側に配置される上下方向の縦枠12、13と、それらの縦枠を上下にて結合する左右方向の横枠14、15及び上下の横枠を中央部にて結合する中央枠16、16′とを具備する扁平な形態を有している。上の横枠14が上端にあり下の横枠15が下端よりも上にあり、中央に左右一対から成る中央枠16、16′があるため、全体として見るとほぼ「円」の字に似た正面形状になっている。
【0019】
装置本体11は、型鋼などを材料として強固に形成した構造体であり、上記のように左右縦枠12、13と上下横枠14、15及び中央枠16、16′から成る構造とすることによって、扁平でありながら強固な構造が得られ、かつ、軽量化も達成される。このような装置本体11は、また、重量物の荷降ろし機構の一部となる、上下方向のガイドレール17、18を有している。ガイドレール17、18は、横断面形状がほぼS字型に形成されている縦枠12、13の一部として縦枠12、13の外側面に設けられている(図2、図4参照)。
【0020】
図示の例の装置10においては、装置本体11を設置場所に置く脚部19、20を装置本体の下部に長さ調節可能に設けている。脚部19、20は、ともに左右縦枠12、13の下端部にそれらと平行に配置される可動脚21と、可動脚21を左右縦枠12、13の下端部に摺動可能に取り付けるために設けられているブラケット22と、可動脚21を挿入する孔を有し、その穴の縁が可動脚21に対して傾斜状態で接触することによってブレーキとして働くように左右縦枠12、13側に取り付けられたブレーキ板23と、ブレーキ板23を傾斜する方向へ加圧する圧縮ばね24を備えている。図示のブラケット22はほぼコの字型に形成されていて、コの字の上下の平行な片部に可動脚21を通す孔が開けてあり、下の片部とブレーキ板23との間に圧縮ばね24を配置している。25、25′はシューであって、自在継手26を介して可動脚21の下端に取り付けられ、接地面27に接するシュー25、25′と可動脚21との傾斜を調節している。
【0021】
また、装置本体11には、トラックの荷台28に掛け止める係止部30が装置本体11の上部より後方へ突き出すように設けられている(図3、図5参照)。図示の例における係止部30は装置本体11の上部より後方へ軸29によって回転可能に取り付けられた補助台31と、その補助台31の後端部に側面から見てほぼL字型を成すように下向きに軸32によって取り付けられた係止爪33、33′とを有している。係止爪33、33′はトラックの荷台といわゆるあおり板との間の隙間に挿入して係止し、装置本体11の背面と係止爪33、33′との間の空所34に、あおり板が入り込む。
【0022】
上記装置本体11の正面には、ガイドレール17、18とともに荷降ろし機構35を構成し、ガイドレール17、18に沿って移動するガイドローラー36、37を有し、それによって上下方向へ移動可能に設けられ、かつ、正面に突き出すように設けた一対の受け架38、39を有する荷降ろし架台40が設けられている。図示の荷降ろし架台40は、上下方向及び前後方向の幅が狭く左右方向に細長い板状を有し、その上部に受け架38、39を設け、正面板部分40aに窓を形成したものである。正面板部分40aの左右両端の上下に、各2個ずつ計4個のガイドローラー36、37を取り付け、かつまた、ガイドレール17、18の側面に接して移動する振れ止めローラー36′、37′を取り付け、全体として安定に昇降可能な状態設けられている。
【0023】
また、荷降ろし架台40の受け架38、39には、前後のストッパー38a、39a、38b、39bが重量物のずれ止めとして設けられており、後部ストッパー38b、39bの前面には傾斜が付けられ、重量物が受け架38、39へ正しく誘導されるように図っている。このような荷降ろし架台40は、扁平な形態の重量物の一辺を載せるために、装置本体11の左右方向に細長く前後に短く形成されており、かつ、左右両端部にのみガイドローラー36、37、36′、37′を配置しているので装置全体の扁平性も損なわれていない。
【0024】
さらに本発明は、一端を装置本体11に、他端を荷降ろし架台40に取り付けた圧縮ばね装置45を備えている。図示の例において、圧縮ばね装置45は、上下方向へ向けて移動可能に設けられた移動部41とそれを支える基部42とを有し、上記基部42を一端側として装置本体11に、移動部41を他端側として荷降ろし架台40に取り付けた1基の主圧縮ばね装置46と、同じく、上下方向へ向けて移動可能に設けられた移動部43とそれを支える基部44とを有し、上記基部44を一端側として装置本体11に、移動部42を他端側として荷降ろし架台40に取り付けた1基の副圧縮ばね装置47とから構成されている。なお、圧縮ばね装置45は、基部42、44に該当するシリンダーと、シリンダーに摺動可能に組み合わされて移動部41、43に該当するピストンを有し、シリンダー内部に圧縮ガスを充填したいわゆるガススプリングから成る。
【0025】
上記の主圧縮ばね装置46は、基部42が枢軸48によって下部横枠15に設けたブラケット15aに軸支されており、かつ、移動部41も上部横枠14に枢軸49によってブラケット14aに軸支されているので、荷重が加えられると常時その荷重に対抗するように作用する。他方の副圧縮ばね装置47は、下部においては主圧縮ばね装置46と同様に枢軸48によって下部横枠15に設けたブラケット15bに軸支されているが、上部においては移動部43を荷降ろし架台側に係脱可能に取り付けている。即ち、図6はその具体例を示しており、基部44を軸支した下部枢軸48を中心として副圧縮ばね装置47を回転可能に設けるとともに、係合部50を移動部43の上端に設け、副圧縮ばね装置47の上部を、上部枢軸49と係合部50が係合する状態と、係合部50を後方へずらせて係合を脱する状態を取る。係合部50はほぼC字型のフック形状を有し、その内部の溝50aに上部枢軸49が進入して係合する。
【0026】
51は係脱切り替え部材を示しており、副圧縮ばね装置47の基部44に上下方向へ摺動可能に設けられている。係脱切り替え部材51は後方に突き出た係止部51aを有しており、また、係脱切り替え部材51は、左右の中央枠16、16′に取り付けた架材52に後面が接触する位置にあって、係止部51aはその接触時に係止すると上部枢軸49と係合部50が係合する状態を取る(図6A参照)。架材52には部材を介して係止軸52aが設けられており、係止軸52aには係止部51aが係止可能であり、その係止時に係合部50が後方へずれて上部枢軸49との係合を脱する構成である(図6B参照)。
【0027】
上記の圧縮ばね装置45は、荷降ろし架台40に加えられる上下方向荷重を負担する手段であるが、移動部41のストロークが限られているため、本発明ではこれを補うべくストロークの増大を図る。本発明におけるストロークの増大機構は、下部の装置本体側と上部の荷降ろし架台側にそれぞれ配置した、動滑車を構成する2段のプーリー53、53′と、一端54aを圧縮ばね装置45の移動部側に接続するとともに、中間部分を上記複数段のプーリー53に掛け回し、他端54bは荷降ろし架台40を吊り下げる状態にて荷降ろし架台側に接続するワイヤー54とを備えて構成されている(図7参照)。副圧縮ばね装置47においてもワイヤー54′の一端54′aを移動部側に接続するとともに、中間部分を上記複数段のプーリー53に掛け回し、他端54′bは荷降ろし架台40を吊り下げる状態にて荷降ろし架台側に接続する。
【0028】
上段のプーリー53は上部枢軸49を取り付け軸とてしており、下段のプーリー53′は下部枢軸48を取り付け軸としているので、ワイヤー54は荷降ろし架台40に接続された他端54bから、上段のプーリー53、下段のプーリー53′、再度上段のプーリー53を経て、一端54aを圧縮ばね装置45の移動部側に接続することになる。つまり、4本のワイヤー54が関与するので、移動部42のストロークSは、荷降ろし架台40の移動ストロークを4S倍の長さに増大する構成である。
【0029】
図8は、荷降ろし架台40に対する位置決め機構55を示すもので、重量物の荷重が掛かる荷降ろし架台40を最高位置と最低位置との間の数か所の位置にて停止させることを可能にする。位置決め機構55は、装置本体11の中央枠16、16′に上下動可能に取り付けた可動部材56と、その背板に形成した数か所の停止孔57と、任意の停止孔57に挿入、抜け出し可能に設けたロックピン58を有しており、ロックピン58は左右の中央枠16、16′に取り付けた架材59に挿入、抜け出し可能に設けられ、かつ、挿入方向へばね60を用いて付勢されている。なお、ばね60はロックピン58に設けられているつば部58aの後部と架材59との間に圧縮状態で配置されている。
【0030】
上記可動部材56は、装置本体11の中央枠16、16′をガイドレールとして移動する上下各1対のガイドローラー61、61、62、62を有しており、これらは荷降ろし架台40と一体である。従って、可動部材56の移動量もまた動滑車のメカニズムによって増大するので、背板に形成した数か所の停止孔57の間隔は荷降ろし架台40の上下全ストロークを分割して決めることができる。図示の例では、荷降ろし架台40の上下全ストロークを4等分する位置に5箇所の停止孔57を設けているので、荷降ろし架台40を等間隔の位置に5段階に停止させることができる(図10参照)。
【0031】
また、ロックピン58の後端にはレバー63の一端部が作用しており、レバー63は架材59に揺動可能に取り付けられ、レバー63の他端部には、操作ケーブル64の一端部が接続されている。操作ケーブル64の他端部は、位置決め機構55の操作部になるフートペダル65の作用端65aに接続されており、作業者が足で踏んで操作するように構成されている。66はフートペダル台部であり、上記フートペダル65が軸66aによって開閉可能に結合されており、また、フートペダル65との間にはばね67が圧縮状態で配置されている。66bはシース固定片であり、フートペダル台部66の前端部にて操作ケーブル64のシースを固定している。
【0032】
各図中、符号68は補助ローラーを示しており、この補助ローラー68は受け架38、39に誘導されている重量物に接触して回転し、スムーズな荷降ろしを行うために、荷降ろし架台40の左右と中央に、軸68aとブラケット68bをそれぞれ用いて計3個設けられている(図5参照)。このような構成を有する本発明の装置10は、そのシュー25を接地面27に降ろし、また、図11に示すように、トラックの荷台に設けられているあおり70を切ったときに荷台との間にできる隙間69に係止爪33、33′を挿入してトラックの荷台28に立て掛けてセットを行い、それから、重量物Wの荷降ろし作業を行うための作業に入るものである。なお、脚部19、20はブレーキ板23を手動操作して可動脚21を下げて長くしたり、或いは可動脚21を上げて短くしたりすることによって、シュー25の位置を上下に調節してあるものとする。
【0033】
図示の例は板ガラスが重量物Wである場合の例であり、図10及び図11では1枚の重量物W即ち板ガラスを作業者が両手で抱えて、その下辺部分を受け架38、39に載置した状態を示している。重量物Wを受け架38、39に載置する直前の状態では、シリンダー内部に圧縮ガスを充填したいわゆるガススプリングから成る主圧縮ばね装置46によって荷降ろし架台40が最高位置に押し上げられており、また、位置決め機構55のロックピン58が最低位置の停止孔57に挿入されていることから、受け架38、38に重量物Wの荷重が掛かっても、荷降ろし架台40は静止状態のままである(図10の実線図示の位置)。ここで作業者がフートペダル65を踏むと、操作ケーブル64が引かれてレバー63が揺動し(図8C)、ロックピン58が最低位置の停止孔57を脱するので、荷重によって荷降ろし架台40が下降し得る状態になる。ロックピン58が最低位置の停止孔57を脱した後、直ぐにフートペダル65から足を離した場合には、ロックピン58はばね60によって可動部材56に対して付勢されるので、そこに形成されている次の停止孔57に挿入されることになる。従って、荷台上の重量物Wを配送先などにおける接地面27に容易かつ安全に荷降ろしすることができる。
【0034】
このような、荷降ろし作業において、重量物W等の荷重は受け架38、39から動滑車構成のワイヤー54、プーリー53、53′を介して主圧縮ばね装置46に掛り、シリンダー内部の圧縮ガスを加圧しそれが抵抗となるので、重量物Wを希望する下降速度にて下方へ移動させることができるのであるが、下降速度が速過ぎる等、修正の必要がある場合がある。そのとき本発明の装置10では、副圧縮ばね装置47を併用する。この場合、図6Bに示されるように、通常は係合部50が後方へずれていて、上部枢軸49との係合を脱した状態にある係合部50を上方へ移動させ、係脱切り替え部材51の係止部51aを係止軸52aに係止した状態から外して、副圧縮ばね装置47を手前に引き寄せ、上部枢軸49と係合部50を係合状態にする(図6A)。これによって、副圧縮ばね装置47の荷重負担効果が主圧縮ばね装置46に加わることになるから、より大きな重量物Wの荷重に耐えることができるようになり、或いは、同じ重量物Wの荷重であるならば、よりゆっくりとした荷降ろしが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る扁平重量物の荷降ろし装置の一例を示す正面説明図である。
【図2】同上装置の装置本体の一例を示すもので、Aは正面図、Bは側面図である。
【図3】同上装置を示す平面図である。
【図4】同じく装置本体を示すもので、Aは中間部の横断面図、Bは平面図である。
【図5】同上装置を示す側面図である。
【図6】副圧縮装置を示すもので、Aは使用時の、Bは不使用時の側面図である。
【図7】主圧縮ばね装置におけるストローク増大を示す説明図である。
【図8】位置決め機構を示すもので、Aは最高位置の、Bは下降位置の、Cは操作中の状態を示す説明図である。
【図9】同じく位置決め機構の操作部を示すもので、Aは平面図、Bは不操作時の、Cは操作中の状態を示す説明図である。
【図10】荷降ろし架台の位置決め状態を示す側面説明図である。
【図11】本発明の装置による作業開始状態を示す斜視図である。
【図12】同じく荷降ろし完了状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
10 扁平重量物の荷降ろし装置
11 装置本体
12、13 縦枠
14、15 横枠
16、16′ 中央枠
17、18 ガイドレール
19、20 脚部
21 可動脚
22 ブラケット
23 ブレーキ板
24 圧縮ばね
25 シュー
26 自在継手
27 接地面
28 トラックの荷台
29、32 軸
30 係止部
31 補助台
33、33′ 係止爪
34 空所
35 荷降ろし機構
36、37、61、62 ガイドローラー
38、39 受け架
40 荷降ろし架台
41、43 移動部
42、44 基部
45 圧縮ばね装置
46 主圧縮ばね装置
47 副圧縮ばね装置
48、49 枢軸
50 係合部
51 係脱切り替え部材
52、59 架材
53、53′、53″ プーリー
54、54′ ワイヤー
55 位置決め機構
56 可動部材
57 停止孔
58 ロックピン
60、67 ばね
63 レバー
64 操作ケーブル
65 フートペダル
66 フートペダル台部
68 補助ローラー
69 隙間
70 あおり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な形態の重量物を高位置から低位置へ降ろす作業に適した荷降ろし装置であって、
重量物の荷重とその荷降ろし機構の荷重を支える構造強度を備え、また、重量物の荷降ろし機構の一部となる上下方向のガイドレールを有する装置本体と、
上記ガイドレールとともに荷降ろし機構を構成し、ガイドレールに沿って移動するガイドローラーを有し、それによって上下方向へ移動可能に設けられた荷降ろし架台と、
上下方向へ向けて移動可能に設けられた移動部とそれを支える基部とを有し、上記移動部又は基部の一端を装置本体に、他端を荷降ろし架台に取り付けた少なくとも1基の圧縮ばね装置と、
圧縮ばね装置のストロークを増大するために、下部の装置本体側と上部の荷降ろし架台側にそれぞれ配置した動滑車を構成する複数段のプーリーと、
一端を圧縮ばね装置の移動部側に接続するとともに、中間部分を上記複数段のプーリーに掛け回し、他端は荷降ろし架台を吊り下げる状態にて荷降ろし架台側に接続するワイヤーと
を備えて構成された扁平重量物の荷降ろし装置。
【請求項2】
装置本体は、左右両側に配置される上下方向の縦枠と、それらの縦枠を上下にて結合する左右方向の横枠及び上下の横枠を中央部にて結合する中央枠とを具備する扁平な形態を有しており、荷降ろし架台は、扁平な形態の重量物の一辺を載せるために装置本体の左右方向に細長く前後に短く形成されており、左右両端部にガイドローラーが設けられている請求項1記載の扁平重量物の荷降ろし装置。
【請求項3】
装置本体は、左右両側に配置される上下方向の縦枠と、それらの縦枠を上下にて結合する左右方向の横枠及び上下の横枠を中央部にて結合する中央枠とを具備する扁平な形態を有しており、装置本体を設置場所に置く脚部を装置本体の下部に長さ調節可能に設け、トラックの荷台に掛け止める係止部を装置本体の上部より後方へ突き出させて設けた構成を有している請求項2記載の扁平重量物の荷降ろし装置。
【請求項4】
圧縮ばね装置は、一端側を装置本体に、他端側を荷降ろし架台に取り付けた主圧縮ばね装置と、同じく、一端を装置本体に、他端を荷降ろし架台に係脱可能に取り付けた少なくとも1基の副圧縮ばね装置とから成る請求項1記載の扁平重量物の荷降ろし装置。
【請求項5】
圧縮ばね装置は、基部に該当するシリンダーと、シリンダーに摺動可能に組み合わされて移動部に該当するピストンを有し、シリンダー内部に圧縮ガスを充填したいわゆるガススプリングから成る請求項1記載の扁平重量物の荷降ろし装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−116483(P2011−116483A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273741(P2009−273741)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000227216)日通商事株式会社 (27)
【出願人】(000155045)株式会社本宏製作所 (41)
【Fターム(参考)】