説明

扉の地震時開放防止具

【課題】 平常時の些細な振動では誤作動することがなく、地震発生時の連続的又は断続的な振動では確実に作動する扉の地震時開放防止具を提案する。
【解決手段】 可動体11をスライド自在とした直線スライド機構13を設けたスライド部材10と、可動体11の先端が挿通される受け具20とで構成され、家具の扉1の開き側の側端にスライド部材10を取り付け、水平方向移動自在の可動体11が前端から出没自在とし、両開き式の扉1では他方の扉2、片開き式の扉1では側板3等に、受け具20をスライド部材10に対向して取り付け、地震発生時の振動により可動体11が揺動して前方方向移動し、所定のスライド量で先端を受け具20に挿通するとともに、この状態で可動体11を保持するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キャビネット、本棚、タンス等の収納家具(以下、家具という)の扉に取り付け、地震発生時に扉をロックする扉の地震時開放防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、箱状本体の開口面に丁番を用いて両開き式(観音開き式)や片開き式の扉を取り付けた家具では、扉を閉じた状態を保持するために、マグネット式等の扉の係止手段が採られている。しかし、地震時の振動等でこの保持力以上の力が加わると、扉が開放して収納物が飛び出し、落下するなど大変危険である。これに対し、地震発生時に扉をロックして開放防止する手段として、特開平9−328944号公報(特許文献1)、特開平9−78926号公報(特許文献2)、特開2000−220336号公報(特許文献3)等に示された金具や装置類が提案されている。
【特許文献1】特開平9−328944号公報
【特許文献2】特開平9−78926号公報
【特許文献3】特開2000−220336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、地震発生時に扉の開放を防止する手段において、平常時の些細な振動で誤作動し、扉がロックされることは好ましくなく、一方、大きな振動等で係止手段の保持力以上の力が加わる場合には、確実に作動することが求められる。従来の金具や装置類は、こうした振動の感知に課題があるとともに、構造が複雑で、取り付け等の取り扱いも容易ではなかった。
【0004】
この発明は、こうした課題を解決することを目的とするもので、平常時の些細な振動では誤作動することがなく、地震発生時の連続的又は断続的な振動では確実に作動する扉の地震時開放防止具を提案するものである。また、構造が簡単で、扉への取り付け等の取り扱いも容易である扉の地震時開放防止具を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
こうした目的を達成するため、この発明の扉の地震時開放防止具は、可動体11をスライド自在とした直線スライド機構13を設けたスライド部材10と、可動体11の先端が挿通される受け具20とで構成され、家具の扉1の開き側の側端にスライド部材10を取り付け、水平方向移動自在の可動体11が前端から出没自在とし、両開き式の扉1では他方の扉2、片開き式の扉1では側板3等に、受け具20をスライド部材10に対向して取り付ける。そして、地震発生時の振動により可動体11が揺動して前方方向移動し、所定のスライド量で先端を受け具20に挿通するとともに、この状態で可動体11を保持するように構成するものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明の扉の地震時開放防止具は、地震発生時の連続的又は断続的な振動で、可動体11が振り子の原理で揺動して前方方向移動し、所定のスライド量で先端を受け具20に挿通するとともに、この状態で可動体11が保持される。したがって、扉1は閂状態でロックされ、開放を防止することができる。
【0007】
また、可動体11はスライド自在であり、平常時の些細な振動による小さなスライド量では保持されない。したがって、平常時の些細な振動では誤作動することがなく、地震発生時の連続的又は断続的な振動による所定のスライド量で確実に作動するものである。
【0008】
また、この発明の扉の地震時開放防止具は、スライド部材10と受け具20を対向して取り付けるだけであり、作動後は可動体11を後方へ押し込んでスライド部材10内に収納し、元の状態に簡単に復帰するなと取り扱いも容易である。さらに、構造が簡単であるとともにメンテナンスフリーであり、スライド部材10と受け具20が取付可能であれば、キャビネット、本棚、タンス等の様々な収納家具の両開き式の扉、片開き式の扉に適用するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、この発明を実施するための最良の形態について、図面の実施例に基づいて具体的に説明する。
図1から3は、この発明の最初の実施例で、家具の両開き式の扉1、2に、この発明の地震時開放防止具を取り付けたものである。スライド部材10には、長尺プレート状の可動体11の両側縁にベアリング14が摺接し、可動体11をスライド自在とした直線スライド機構13が設けられている。直線スライド機構13の後部に永久磁石15が取り付けられ、この永久磁石15に吸着する鉄製のストッパー12が可動体11の後端に設けられ、ストッパー12が当接して緩衝するコイルバネ16がスライド部材10の後部に設けられている。
【0010】
スライド部材10は、扉1の開き側の側端の任意の高さ位置に取り付けられ、水平方向移動自在の可動体11が前端から出没自在とされている。可動体11の先端が挿通される受け具20は、スライド部材10に対向するように他方の扉2の開き側の側端に取り付けられる。
【0011】
この地震時開放防止具において、平常時は可動体11が後方へ押し込まれ、スライド部材10内に収納された状態である(図1参照)。地震発生時の連続的又は断続的な振動で、可動体11が振り子の原理で揺動して前方方向移動し、先端を受け具20に挿通するとともに、ストッパー12が永久磁石15に吸着する(図2参照)。可動体11はこの状態で保持され、扉1、2が閂状態でロックされる。作動後は可動体11を後方へ押し込んでスライド部材10内に収納し、元の状態に復帰する。一方、ストッパー12が可動体11の後端に設けられているので、平常時の些細な振動で可動体11が揺動しても、小さなスライド量では、ストッパー12が永久磁石15の磁界A(図1中、一点鎖線)の範囲外となって吸着されない。したがって、平常時の些細な振動では誤作動することはない。
【0012】
図4は、この発明の別の実施例で、家具の片開き式の扉1に、この発明の地震時開放防止具を取り付けたものである。前例と同一の構造のスライド部材10は、扉1の開き側の側端の任意の高さ位置に取り付けられ、水平方向移動自在の可動体11が前端から出没自在とされ、受け具20は、側板3にスライド部材10に対向して取り付けられている。本例においても、地震発生時の連続的又は断続的な振動で可動体11が前方方向移動し、先端を受け具20に挿通するとともに、ストッパー12が永久磁石15に吸着し、扉1が閂状態でロックされる。このように、スライド部材10と受け具20が対向して取付可能であれば、両開き式の扉の他、片開き式の扉にも適用することができる。
【0013】
以上、実施例について説明したが、この発明の扉の地震時開放防止具はこれに限定されるものではない。可動体11を保持するよう手段は、実施例に示す永久磁石15を用いることなく、他の係止手段を採ることもでき、永久磁石15を用いる場合、先端を受け具20に挿通した状態で可動体11を吸着保持することができれば、その取付箇所も任意である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の最初の実施例で、スライド部材10のカバーを外した正面図。
【図2】スライド部材10のカバーを外した作動状態の正面図。
【図3】スライド部材10のカバーを装着した正面図。
【図4】この発明の別の実施例で、スライド部材10のカバーを装着した正面図。
【符号の説明】
【0015】
1 扉
2 扉
3 側板
10 スライド部材
11 可動体
13 直線スライド機構
20 受け具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動体11をスライド自在とした直線スライド機構13を設けたスライド部材10と、可動体11の先端が挿通される受け具20とで構成され、
家具の扉1の開き側の側端にスライド部材10を取り付け、水平方向移動自在の可動体11が前端から出没自在とし、両開き式の扉1では他方の扉2、片開き式の扉1では側板3等に、受け具20をスライド部材10に対向して取り付け、
地震発生時の振動により可動体11が揺動して前方方向移動し、所定のスライド量で先端を受け具20に挿通するとともに、この状態で可動体11を保持するように構成した扉の地震時開放防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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