説明

扉の開放力軽減装置

【課題】扉を開けるときの開放の負担を軽減できる扉の開放力軽減装置を提供する。
【解決手段】扉1の回動軸とは別に吊元近傍に回動軸4を設け、回動軸4に第1アーム7を固定し、第1アーム7の一端部と第2アーム8の一端部とを回動自在に連結し、扉1に固定部材9を固定し、固定部材9の一端部と第2アーム8の他端部とを回動自在に連結し、扉1の手前に回動軸4から延伸した扉開放操作部材11を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉の開放力の負担を軽減する扉の開放力軽減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアクローザーを用いて、扉を確実に閉鎖する扉の制御装置が知られている。この扉の制御装置は、扉が閉鎖するにつれて閉鎖力が大きくなる。即ち、扉の閉鎖間際で最も閉鎖力が大きい。
【0003】
また、従来の技術として、例えば、特許文献1に記載された建物等の扉用室内外気圧差解消装置が知られている。この装置は、扉に装備された錠の操作ハンドルを回動操作すると、錠側の昇降棒の移動に対応して室内外気圧差解消窓孔用開閉板が開放する建物等の扉用室内外気圧差解消装置において、扉の一側壁に小切欠開口部を形成し、小切欠開口部に当てがうように上下方向に摺動可能な作動部材を備えた固定板を一側壁に固定し、作動部材の背面側に突出状態に設けた係止腕を錠側の昇降棒に連結状態に係止させ、一方、作動部材の表側に突出状態に設けた駆動杆と、一端部が軸着された室内外気圧差解消窓孔用開閉板の下端部に固着された案内板の斜め方向の案内係合部とを互いに係合させる。
【0004】
これによれば、操作ハンドルの回動に連動して、室内外気圧差解消窓孔用開閉板が開放し、室内外気圧差を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2913587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、扉の閉鎖によりそもそも室内外の圧力差が生じやすく、更にドアクローザーを装着した場合、扉の開き際の開放抵抗が大きいため、高齢者・障害者などは扉を開ける負担が大きい。また、バリアフリー新法(改正ハートビル法)の施行、扉デザインの高度化により扉の幅、高さとともにサイズが大きくなる傾向にあり、これに伴って閉鎖力の強いドアクローザーが用いられ、扉の開放力がさらに増大している。
【0007】
さらに、建物の高気密化が進み、空調、換気扇などの作用で、室間の圧力差が生じ、極端に開放抵抗が大きくなるケースが発生している。
【0008】
一方、災害時の避難局面では、高層建築の付室における加圧防煙、階段室におけるドラフト圧によって扉を開くことが困難であることが以前から指摘されている。
本発明の課題は、扉を開けるときの開放の負担を軽減できる扉の開放力軽減装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る扉の開放力軽減装置は、扉の回動軸とは別に吊元近傍に回動軸を設け、該回動軸に第1アームを固定し、該第1アームの一端部と第2アームの一端部とを回動自在に連結し、前記扉に固定部材を固定し、該固定部材の一端部と前記第2アームの他端部とを回動自在に連結し、前記扉の手前に前記回動軸から延伸した扉開放操作部材を設けた。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る扉の開放力軽減装置によれば、扉開放操作部材を押すことにより、回動軸、第1アーム及び第2アームも回動するので、扉が開放する。このとき、回動軸と第1及び第2アームの連結部と固定部材及び第2アームの連結部と扉の回動軸とから構成される四節リンクにより、開放力を効率良く扉に伝達できるので、開放力を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1の扉の開放力軽減装置を示す図である。
【図2】本発明の実施例1の扉の開放力軽減装置の扉開放操作部材の回動前後の動作を説明するための上面図である。
【図3】本発明の実施例1の扉の開放力軽減装置の扉の開き角と開放抵抗の実測値との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施例2の扉の開放力軽減装置を示す図である。
【図5】本発明の実施例2の扉の開放力軽減装置の扉開放操作部材の回動前後の動作を説明するための上面図である。
【図6】本発明の実施例2の扉開放操作部材に設けられた挟まれ防止機構を説明するための上面図である。
【図7】本発明の実施例3の扉の開放力軽減装置を示す図である。
【図8】本発明の実施例3の扉の開放力軽減装置の扉開放操作部材の回動前後の動作を説明するための上面図である。
【図9】本発明の実施例4の扉の開放力軽減装置を示す図である。
【図10】本発明の実施例4の扉の開放力軽減装置のラッチ解除部の回動前の上面図である。
【図11】本発明の実施例4の扉の開放力軽減装置のラッチ解除部の回動前後の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の扉の開放力軽減装置の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1に示す本発明の実施例1の扉の開放力軽減装置において、扉1の回動軸とは別に枠3には回動自在な円状の回動軸4が取り付けられている。なお、回動軸4は吊元近傍であれば、枠3以外に取り付けても良い。回動軸4には細長い第1アーム7が固定され、第1アーム7の一端部と細長い第2アーム8の一端部とは図2に示す連結部材7bにより回動自在に連結されている。
【0014】
扉1には固定部材9が固定され、固定部材9の一端部と第2アーム8の他端部とは図2に示す連結部材9aにより回動自在に連結されている。扉開放操作側で且つ扉1の手前には、回動軸4から回動軸4に対して略直交する方向に延伸した扉開放操作部材11が設けられている。なお、扉開放操作部材11は、回動軸4と一体化して形成されて良い。
【0015】
図2は本発明の実施例1の扉の開放力軽減装置の扉開放操作部材の回動前後の動作を説明するための上面図である。図2において、扉開放操作部材11の回動前の各部は実線で示し、扉開放操作部材11の回動後の各部は点線で示す。枠側ヒンジ3aと扉側ヒンジ1aとは、枠3に取り付けられる扉1を回動自在に支持する。
【0016】
実施例1の扉の開放力軽減装置によれば、扉1の回動軸である扉側ヒンジ1aとは別に回動軸4を設け、回動軸4を第1アーム7及び第2アーム8を介して扉1に接続し、扉開放操作部材11の先端部を加圧操作して時計方向に回動させると、扉開放操作部材11の回動に伴って回動軸4も回動する。そして、回動軸4の駆動により、第1アーム7が回動し、第2アーム8の駆動を扉1に伝達する。この駆動により扉1は押されて開いていく。
【0017】
このとき、回動軸4と第1及び第2アーム7,8の連結部と固定部材9及び第2アーム8の連結部と扉1の回動軸とから構成される四節リンクにより、開放力を効率良く扉1に伝達できるので、開放力を大幅に軽減することができる。このため、扉1を開ける際に既存のハンドル操作による扉の開放に比べ、開放力を軽減できる。
【0018】
図3は本発明の実施例1の扉の開放力軽減装置の扉の開き角と開放抵抗の実測値との関係を示す図である。図3から、扉1を開いた直後(開き角度が5度〜10度)には、開放力が大幅に低減していることがわかる。
【実施例2】
【0019】
図4に示す実施例2の扉の開放力軽減装置は、より小さい開放力で扉1を開くことができるとともに、扉開放操作部材を用いて扉を開けた際に、扉開放操作部材と扉との間に指や手が挟まれるのを防止する挟み込み防止部を設けて、安全性を高めた。図5は本発明の実施例2の扉開放操作部材に設けられた挟まれ防止機構を説明するための上面図である。図6は本発明の実施例2の扉の開放力軽減装置のヒンジスプリング15aの回動前後の動作を説明するための上面図である。
【0020】
図1に示す実施例1では、固定部材9を用いたが、図4に示す実施例2では、固定部材9よりも長い固定部材9bを設け、固定部材9bの連結部材9aから扉側ヒンジ1aの回動軸までの長さを、図1に示す固定部材9の連結部材9aから扉側ヒンジ1aの回動軸までの長さよりも大きくし、第1アーム7aを、図2に示す第1アーム7よりも短くする。これにより、扉側ヒンジ1aの回動トルクと回動軸4の回動トルクとのトルク比は、実施例1のトルク比よりも大きくなっているので、実施例1よりも小さい開放力で扉1を開くことができる。
【0021】
しかし、開き角度が40度程度になると、扉開放操作部材13が扉1に接触する。このため、実施例2では、スプリングヒンジ15(挟み込み防止部)を設けている。図2において、回動軸4にはコの字状の突起部材12が取り付けられ、突起部材12にはクランク状の平板14の右側平板部が入り込んでいる。右側平板部の先端部には2つの丸穴14aが形成され、各丸穴14aにはスプリングヒンジ15が引っ掛けられている。平板14の左側平板部は図6(b)に示すようにネジ15bにより取付板16に取り付けられている。
【0022】
以上の構成によれば、開き角度が40度程度になったときに、スプリングヒンジ15のバネが作用し、平板14が突起部材12から離れて、扉1の回動方向とは逆方向に回動するので、これに伴って扉開放操作部材13も扉1の回動方向とは逆方向に回動する。このため、扉開放操作部材13と扉1との間に指が挟み込まれるのを防止することができる。
【0023】
また、スプリングヒンジ15のバネは、扉1の閉鎖状態から開き角度が40度程度までは、作用しないため、開放抵抗は大きく軽減されるので、より小さい開放力で扉1を開くことができる。また、実施例2の扉の開放力軽減装置は、実施例1の扉の開放力軽減装置の構成と同様の構成を有するので、実施例1の扉の開放力軽減装置の効果と同様な効果が得られる。
【実施例3】
【0024】
実施例3の扉の開放力軽減装置も、実施例2の扉の開放力軽減装置と同様に、より小さい開放力で扉1を開くことができるとともに、扉開放操作部材を用いて扉を開けた際に、扉開放操作部材と扉との間に指や手が挟まれるのを防止する挟み込み防止部を設けて、安全性を高めた。
【0025】
図7は本発明の実施例3に係る扉の開放力軽減装置が取り付けられた状態を説明するための図である。扉開放操作部材20は、回動軸4に取り付けられ、扉開放操作部材20の内部で且つ回動軸4に近い部分には中折れ機構部21(挟み込み防止部)が設けられている。中折れ機構部21は、図8に示すように、スプリングからなる第1中折れ部材21aとスプリングからなる第2中折れ部材21bとが図示しないワイヤーで連結され、第1中折れ部材21aと第2中折れ部材21bとは、互いに引っ張り合っている。
【0026】
扉開放操作部材20は、第1中折れ部材21aと第2中折れ部材21bとが連結する箇所に対応する位置で一方の面側に第1扉開放操作部材20aと第2扉開放操作部材20bとが丁番22により連結されている。即ち、丁番22を取り付けることで開き方向が制限される。
【0027】
実施例3に係る扉の開放力軽減装置によれば、図8に示すように、扉開放操作部材20の先端部を加圧操作して、時計方向に回動させると、扉開放操作部材20の回動に伴って回動軸4も回動する。そして、回動軸4を回動中心として第1アーム7及び第2アーム8も回動する。このため、第2アーム8の回動力により扉1は押されて、扉1も扉開放操作部材20の回動方向に扉側ヒンジ1aを回動中心として回動していく。
【0028】
このとき、前記回動力により、扉開放操作部材20と扉1との間に指が挟まれそうになった際に(例えば、扉1の開き角度が約40度になったとき)、図8に示すように、扉開放操作部材20の途中、即ち、丁番22の位置で第1扉開放操作部材20a及び第1中折れ部材21aが、前記回動力とは逆方向に折れる。このため、扉開放操作部材20と扉1との間に指が挟み込まれるのを防止することができる。また、実施例3の扉の開放力軽減装置は、実施例2の扉の開放力軽減装置の構成と同様の構成を有するので、実施例2の扉の開放力軽減装置の効果と同様な効果が得られる。
【実施例4】
【0029】
実施例1の扉開放操作部材11を押したのみでは、枠3に取り付けられた係合受部材に係合したラッチ部材を解除できない。そこで、実施例4に係る扉の開放力軽減装置は、扉開放操作部材11を押すのみでラッチ部材を解除する。
【0030】
図9は本発明の実施例4に係る扉の開放力軽減装置を示す図である。図10は本発明の実施例4に係る扉の開放力軽減装置のラッチ解除部の回動前の上面図である。図11は本発明の実施例4に係る扉の開放力軽減装置のラッチ解除部の回動前後の詳細図である。図11では、実線は扉開放操作部材11の回動前の各部の状態を示し、点線は扉開放操作部材11の回動後の各部の状態を示す。
【0031】
ラッチ解除部は、カム33と、トリガーラッチ部材26と、連結ロッド27とを有し、回動軸4の回動によりカム33とトリガーラッチ部材26と連結ロッド27とが動作して、枠3に取り付けられた係合受部材30に係合する戸先ラッチ部材28を解除する。
【0032】
カバー24内にはトリガーラッチ部材26と戸先ラッチ部材28とこれらを連結する連結ロッド27とが設けられている。回動軸4にはカム33が取り付けられ、トリガーラッチ部材26の下端にはバネ34が配置されている。扉開放操作部材11の回動前には、カム33がトリガーラッチ部材26に当接し、バネ34が圧縮された状態になっている。トリガーラッチ部材26は、回動軸26aを中心として回動し、連結ロッド27に端部26bが取り付けられている。
【0033】
戸先ラッチ部材28の下端にはバネ37が配置されている。扉開放操作部材11の回動前には、バネ37が伸張された状態であり、戸先ラッチ部材28は、枠3にネジ31により取り付けられた係合受部材30に係合している。トリガーラッチ調整ネジ35は、トリガーラッチ部材26と螺合しており、ネジ先端部がL字金具36に取り付けられている。このトリガーラッチ調整ネジ35を回動させることで、トリガーラッチ調整ネジ35に螺合したトリガーラッチ部材26が移動するので、トリガーラッチ部材26の位置決めを行うことができる。
【0034】
実施例4に係る扉の開放力軽減装置によれば、図11に示すように、扉開放操作部材11の先端部を加圧操作して、時計方向に回動させると、扉開放操作部材11の回動に伴って回動軸4も回動し、扉1が開いていく。また、回動軸4を回動中心としてカム33も時計方向に回動する。このため、点線で示すように、バネ34が伸張して、トリガーラッチ部材26も回動軸26aを中心として時計方向に回動する。
【0035】
このとき、トリガーラッチ部材26の端部26bは端部26cに移動するので、連結ロッド27が右方向に移動する。このため、戸先ラッチ部材28は、連結ロッド27によって右方向に引っ張られるため、回動軸28aを中心として回動し、バネ37は圧縮され、端部28bは端部28cに移動する。これにより、戸先ラッチ部材28は、係合受部材30から外れて、解除される。従って、扉開放操作部材11を押すのみで戸先ラッチ部材28を解除することができる。
【0036】
なお、本発明は、実施例1乃至4の扉の開放力軽減装置に限定されない。例えば、実施例2の扉の開放力軽減装置と実施例4の扉の開放力軽減装置とを組み合わせて良い。実施例3の扉の開放力軽減装置と実施例4の扉の開放力軽減装置とを組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0037】
1‥扉、1a‥扉側ヒンジ、3‥枠、3a‥縦枠ヒンジ、4‥回動軸、5,6,9‥固定部材、7‥第1アーム、8‥第2アーム、11,13,20‥扉開放操作部材、15a‥スプリングヒンジ、15‥バネ、16‥取付板、20a‥第1扉開放操作部材、20b‥第2扉開放操作部材、21‥中折れ機構部、21a‥第1中折れ部材、21b‥第2中折れ部材、24‥カバー、26‥トリガーラッチ部材、27‥連結ロッド、28‥戸先ラッチ部材、30‥係合受部材、31‥ネジ、33‥カム、34,37‥バネ、35‥トリガーラッチ調整ネジ、36‥L字金具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の回動軸とは別に吊元近傍に回動軸を設け、該回動軸に第1アームを固定し、該第1アームの一端部と第2アームの一端部とを回動自在に連結し、前記扉に固定部材を固定し、該固定部材の一端部と前記第2アームの他端部とを回動自在に連結し、前記扉の手前に前記回動軸から延伸した扉開放操作部材を設けたことを特徴とする扉の開放力軽減装置。
【請求項2】
前記扉を囲む枠に取り付けられた係合受部材に、前記扉に取り付けられた戸先ラッチ部材を係合し、前記回動軸に取り付けられたカムを前記扉開放操作部材の回動に伴う前記回動軸の回動に応じて回動し、前記カムの回動により前記戸先ラッチ部材に取り付けられたラッチ解除部を動作させて前記戸先ラッチ部材を解除することを特徴とする請求項1記載の扉の開放力軽減装置。
【請求項3】
前記扉開放操作部材を回動させると、前記扉開放操作部材の回動力とは逆方向に力が働くことにより指の挟み込みを防止する挟み込み防止部を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の扉の開放力軽減装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−132733(P2011−132733A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292736(P2009−292736)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(392036876)鐵矢工業株式会社 (4)