説明

扉付移動壁

【課題】 安全性に優れた扉付移動壁を提供する。
【解決手段】
基枠2は、横枠体21と縦枠体22と受け部23とを有する。縦枠体22に、所定の位置で上部材81を縦枠体22から伸ばしてレール12に係合させるとともに下部材を縦枠体22から伸ばして床に係合させて基枠2を固定する固定機構8を設ける。横枠体21に、扉3に解除可能に係合して扉3を閉状態に保持する保持部材9を設ける。基枠2に、保持部材9で扉3を閉状態に保持しているとき、固定機構8による基枠2の固定とその固定の解除を行え、この基枠2の固定が解除されている状態では保持部材9が閉状態にロックされ、かつ、固定機構8で基枠2を固定しているとき、保持部材9による扉3の閉状態の保持とその扉3への係合の解除を行え、この保持部材9による扉3の係合が解除された状態では基枠2の固定がロックされる連動機構10を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールを走行する吊車装置に吊り下げ支持される基枠に扉を回転可能に取り付けた扉付移動壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベンションホール、宴会場、会議室、研修室、ギャラリー、美術館、博物館等において、広い空間を使用目的に応じて手動で移動できる移動壁で所定のサイズに間仕切りすることが行われている。移動壁は、天井に敷設されたレールに案内されて走行する吊車装置によって吊り下げ支持されている矩形平板状の壁体である。
移動壁の中には、レールを走行する吊車装置に吊り下げ支持される基枠に、矩形 平板状の扉を回転可能に取り付けた扉付移動壁があり(例えば、特許文献1参照。)、所定の箇所に扉付移動壁を設置することで移動壁によって仕切られた空間を行き来することができるようになる。
【0003】
特許文献1に記載されている扉付移動壁は、基枠の上端から上方に進退可能な上部材と基枠の下端から下方に進退可能な下部材とを有し、所定の位置で上部材を基枠から伸ばして天井に係合させるとともに下部材を基枠から伸ばして床に係合させて基枠を固定する固定機構を備えている。また、扉の上方の基枠には、扉を閉状態にロックするロック棒が上下方向に移動可能に設けられており、ロック棒が基枠から伸びて扉に係合することで、扉が閉状態にロックされる。さらに、ロック棒と固定機構とを連動させる連動機構を備えている。連動機構は、上部材及び下部材が基枠から伸びて基枠が固定されると、この上部材及び下部材の移動に伴ってロック棒が縮んで(基枠から突出する長さが短くなって)扉のロック状態が解除され、逆に上部材及び下部材が縮んで基枠の固定が解除されると、この上部材及び下部材の移動に伴ってロック棒が基枠から伸びて扉がロックされるようになっている。
【0004】
これにより、上部材及び下部材が基枠に退避されているときには、ロック棒が扉に係合して扉が閉状態にロックされているために、扉付移動壁を移動させる際には、扉が開くことがない。この扉付移動壁を所定の位置に設置するには、所定の位置に移動させた後に上部材及び下部材を基枠からそれぞれ伸ばして天井及び床に係合させることで、基枠が固定される。このとき、上部材及び下部材の移動に伴ってロック棒が縮んで自動的に扉のロック状態が解除されるので、基枠の固定と扉のロックの解除とを1つの動作で行うことが可能となる。そして、この固定された扉付移動壁を他に移動させるには、基枠から伸びた上部材及び下部材をそれぞれ縮めることで、基枠の固定が解除される。このとき、上部材及び下部材の移動に伴ってロック棒が伸びて扉と係合し扉が閉状態に自動的にロックされるので、基枠の固定の解除と扉のロックとを1つの動作で行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−66376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載されている扉付移動壁では、扉付移動壁を所定の位置に固定した状態から他に移動させるには、基枠の固定を解除するが、基枠の固定の解除と扉のロックとを1つの動作で行うために、基枠の固定を解除するときには、扉が固定されていないので、扉が完全に閉じていないときでも基枠の固定の解除を行える。このため、基枠の固定を解除するときに扉が動くことがあり、また、ロック棒が扉に係合する前に扉が開くことがある。その結果、基枠の固定の解除を安全に行えず、かつ、この状態のまま扉付移動壁を移動させると、移動中に扉が動くので、安全に扉付移動壁の移動を行えない。
また、この扉付移動壁を所定の位置に設置するのに、移動後、基枠を固定するが、基枠の固定と扉のロックの解除とを1つの動作で行うために、基枠を固定する動作の途中で扉のロックが解除されて基枠が完全に固定される前に扉が開くことがある。その結果、基枠を完全に固定するときに扉が開いたり、基枠を固定する動作を行ったが基枠の固定を行えなかったときにこの動作途中で扉のロックが解除されて扉が開いたりして、安全に扉付移動壁の設置を行えない。すなわち、扉付移動壁の安全が十分ではなかった。
本発明が解決しようとする課題は、安全性に優れた扉付移動壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る扉付移動壁は、レールを走行する吊車装置に吊り下げ支持される基枠に、扉を回転可能に取り付けた扉付移動壁であって、前記基枠は、前記吊車装置に吊り下げ支持され水平方向に延びる横枠体と、前記横枠体の一方の端部から下方に延びる縦枠体とを有し、前記縦枠体に、前記縦枠体の上端から上方に進退可能な上部材、及び前記縦枠体の下端から下方に進退可能な下部材を有し、所定の位置で前記上部材を前記縦枠体から伸ばして前記レールに係合させるとともに前記下部材を前記縦枠体から伸ばして床に係合させて前記基枠を固定しかつ前記上部材及び前記下部材を移動させてその固定を解除する固定機構を設け、前記横枠体に、前記扉に解除可能に係合して前記扉を閉状態に保持する保持部材を設け、前記基枠に、前記保持部材で前記扉を閉状態に保持しているとき、前記固定機構による前記基枠の固定とその固定の解除を行え、この基枠の固定が解除されている状態では前記保持部材が前記閉状態にロックされ、かつ、前記固定機構で前記基枠を固定しているとき、前記保持部材による前記扉の閉状態の保持とその扉への係合の解除を行え、この保持部材による扉の係合が解除された状態では前記基枠の固定がロックされる連動機構を設けたことを特徴とする。
【0008】
これにより、扉付移動壁の移動時には、基枠の固定を解除した状態であり、この状態は、保持部材で扉が閉状態に保持されたときで、このとき保持部材が閉状態にロックされているので、扉が開くことなく安全に扉付移動壁を移動させることができる。また、扉付移動壁を収納するときには、移動時と同じ状態で収納することで、扉が開くことなく安全に扉付移動壁を収納することができる。
扉付移動壁を所定の位置に設置する場合には、所定の位置に移動後、基枠を固定するが、基枠の固定が解除されている状態では保持部材が閉状態にロックされているので、基枠を固定しないと、保持部材による扉の係合を解除できない。すなわち、基枠を固定してから扉のロック状態を解除するので、基枠を固定する動作中に扉のロックが解除されて扉が開くことはない。また、基枠を固定する動作を行ったが、基枠の固定を行えなかったときに扉が開くこともない。よって、安全に扉付移動壁の設置を行えることになる。また、扉の係合が解除された状態では基枠の固定がロックされるので、基枠が動くことなく安全に扉の開閉を行える。
扉付移動壁を所定の位置に固定した状態から他に移動させるには、基枠の固定を解除するが、保持部材による扉の係合が解除された状態では基枠の固定がロックされているので、保持部材で扉を閉状態に保持しないと、基枠の固定を解除できない。すなわち、扉を閉状態に保持してから基枠の固定を解除するので、基枠の固定を解除する動作中に扉が開くことはない。よって、安全に基枠の固定の解除を行えることになる。
したがって、本発明に係る扉付移動壁は安全性に優れたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安全性に優れた扉付移動壁が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る一実施形態の扉付移動壁を含む移動壁で間仕切りを行う状態を模した一例を示す概略斜視図である。
【図2】本実施形態の扉付移動壁の一例を示す図で、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は平面図である。
【図3】本実施形態の扉付移動壁に用いた扉と基枠の内部構造の一例を示す正面図である。
【図4】本実施形態の扉付移動壁の基枠の角部と扉の内部構造の一例を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)中のA−A線矢視断面図である。
【図5】本実施形態の扉付移動壁の基枠の角部と扉の内部構造の一例を示す一部分解斜視図である。
【図6】本実施形態の扉付移動壁に用いた第1軸調節部の一例を示す図で、(a)は分解斜視図、(b)は第1回転軸が扉の角部から離れた状態を示す斜視図、(c)は第1回転軸が扉の角部から離れた状態を示す正面図、(d)は第1回転軸が扉の角部に近づいた状態を示す斜視図、(e)は第1回転軸が扉の角部に近づいた状態を示す正面図である。
【図7】本実施形態の扉付移動壁に用いた第2軸調節部の一例を示す図で、(a)は分解斜視図、(b)は扉の角部が縦枠体に近づいた状態を示す斜視図、(c)は扉の角部が縦枠体に近づいた状態を示す正面図、(d)は扉の角部が縦枠体から離れた状態を示す斜視図、(e)は扉の角部が縦枠体から離れた状態を示す正面図である。
【図8】本実施形態の扉付移動壁に用いた上部材の一例を示す図で、(a)は基枠に対して縮めた状態を示す正面図、(b)は基枠に対して縮めた状態を示す斜視図、(c)は基枠に対して伸ばした状態を示す正面図、(d)は基枠に対して伸ばした状態を示す斜視図である。
【図9】本実施形態の扉付移動壁に用いた上部材の一例を示す図で、(a)は分解斜視図、(b)は斜視図である。
【図10】本実施形態の扉付移動壁に用いた吊部材及び連動機構の一部の一例を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)中のB−B線矢視断面図である。
【図11】本実施形態の扉付移動壁に用いた吊部材及び連動機構の一部の一例を示す一部分解斜視図である。
【図12】本実施形態の扉付移動壁に用いた吊部材及び連動機構の一部の一例を示す分解斜視図である。
【図13】本実施形態の扉付移動壁に用いた連動機構を説明するための図で、固定機構による基枠の固定が解除されて吊部材による扉の吊り下げ支持がロックされている状態を示す図である。
【図14】本実施形態の扉付移動壁に用いた連動機構を説明するための図で、固定機構により基枠が固定された状態を示す図である。図14中、Cで示した図は、吊部材を係合位置から解除位置に回転させる途中を示す図である。
【図15】本実施形態の扉付移動壁に用いた連動機構を説明するための図で、吊部材による扉の吊り下げ支持が解除されて固定機構による基枠の固定がロックされている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る扉付移動壁の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の扉付移動壁1は、所定の箇所に設置することで移動壁15によって仕切られた互いの空間を行き来できるようにするためのものである。扉付移動壁1は、移動壁15と同様に、幅方向の両側近傍の上端にそれぞれ吊車装置11が取り付けられ、手動で2つの吊車装置11とともにレール12に沿って移動することができるようになっている。レール12は、断面横長の略矩形筒体の下辺の中央が開口されたスリットを有している形状を基本形状として形成されている。このレール12内を吊車装置11の主たる構成要素である車輪を備えた車体が走行する。車体の下面からレール12のスリットを介して下方に延びる連結部11a(図3参照。)に扉付移動壁1が取り付けられて、扉付移動壁1が吊車装置11に吊り下げ支持されている。なお、図1中、符号16は複数の移動壁15で間仕切りを行う際に両側又は一方の側に配置される本実施形態の扉付移動壁1とは異なる扉付移動壁を示している。
【0012】
扉付移動壁1は、レール12を走行する吊車装置11の連結部11aに取り付けられて吊車装置11に吊り下げ支持される基枠2と、基枠2に回転可能に取り付けられている扉3とを備えている。
【0013】
基枠2は、図2に示すように、吊車装置11に吊り下げ支持され水平方向に延びる横枠体21と、横枠体21の一方の端部から下方に延びる縦枠体22と、縦枠体22の下端から横枠体21側に突出される受け部23とを有している。基枠2は、受け部23を有しているが、全体的に横枠体21と縦枠体22とで略L字状に形成されている。基枠2は、扉3の割合が大きくなるように横枠体21の高さ方向の長さと縦枠体22の幅(水平方向の長さ)とができるだけ短く形成されていることが好ましい。このため、基枠2は、図4、図5、図10及び図11に示すように、一対の表面パネル24とブロック体25(内装体26を含む)との間に一対の補強板27が設けられてなる。これら一対の表面パネル24、一対の補強板27及びブロック体25は、ネジ止めにより互いに固定されている。基枠2の角部の縦枠体22の内面の延長線上の箇所すなわち横枠体21の一方の端部近傍と横枠体21の他方の端部である先端部近傍には、吊車装置11の連結部11aを取り付ける吊車取付部材18がそれぞれ固定されている。
【0014】
これら2つの吊車取付部材18の形状及び吊車取付部材18が固定される横枠体21の構造は、略同じであるので、基枠2の角部側のみを説明し、横枠体21の先端部側の説明は省略する。吊車取付部材18は、横枠体21の長手方向に延びる細長の扁平な直方体状に形成され、中央部に厚さ方向(上下方向)に貫通し吊車装置11の連結部11aが螺合されるネジ穴18aが設けられている(特に図5参照)。吊車取付部材18の長手方向に延びる両端面(扉3の厚さ方向の両側の面)には、それぞれ面から断面矩形状に突出する凸部18bが設けられている。これら2つの凸部18bがそれぞれ一対の補強板27の各嵌合部27aに嵌合して固定されている。この吊車取付部材18が一対の補強板27に固定された箇所は、上方が開放され、かつ、下方がブロック体25との間に空間が設けられている箇所(図示例では、後述するロックバー103に連結部11aの下方が挿入され得る矩形状の穴103aが設けられている箇所を含む。)である。このため、一対の補強板27に固定された吊車取付部材18のネジ穴18aに上方から吊車装置11の連結部11aを螺合させることで、扉付移動壁1の幅方向の両側近傍の上端の2箇所それぞれで吊車装置11に吊り下げ支持されるようになっている。また、吊車取付部材18への吊車装置11の連結部11aの螺合箇所を上下に移動させることにより、吊車装置11の連結部11aに対する扉付移動壁1の高さ方向(上下)の位置の調節を行えるようになっている。なお、図5中、符号27bは、ロックバー103の穴103aを設けた箇所の幅方向の両側側部を突出させて形成した突片103bがロックバー103の長手方向にスライド可能に嵌合する凹部を示している。この凹部27bは、ロックバー103を長手方向に移動させるガイドとして作用している。
【0015】
扉3は、図1〜図3に示すように、基枠2のL字状の内側の幅と高さの寸法の矩形と略同じか若干小さな矩形の平板状に形成されている。扉3は、特に限定されないが、ガラス扉であることが好ましい。この扉3は、例えば、矩形平板状のガラス板30の上辺及び下辺がそれぞれ断面凹状の上下フレーム31,32に嵌合されて形成されている。上下フレーム31,32は、基枠2と同様に高さ方向の長さができるだけ短くなるように、一対の表面パネル33とブロック体34(図6参照。)や内装体との間に一対の補強板35が設けられて形成されている。これにより、扉3はほとんどがガラス板30であるので見栄えがよいものとなる。上下フレーム31,32すなわち扉3が上下の回転軸4,5を介して基枠2に回転可能に取り付けられている。なお、扉3は、蝶番を用いて基枠2に回転可能に取り付けてもよいが、上下の回転軸4,5を介して回転可能に取り付けることが好ましい。また、図1及び図2中、符号39は把手を示している。
【0016】
上方の回転軸である第1回転軸4は、図3〜図5に示すように、上部が横枠体21内で回転可能に吊り下げ支持され、下方が扉3に取り付けられてなる。第1回転軸4は、頭部4a例えば六角形状の頭部4aを有しているネジ部材であり、頭部4a及び上部が横枠体21内に位置される部分で、横枠体21から突出する箇所にネジ溝が形成されてネジ部4bが形成されてなるものである。ネジ部4bは、第1回転軸4の上部に形成されていてもよい。第1回転軸4の上部が横枠体21の第1回転軸支持部41に支持される。第1回転軸支持部41は、横枠体21の2つの吊車取付部材18が固定される固定箇所間であって縦枠体22側(基枠2の角部側)の固定箇所の近傍に設けられていることが好ましい。すなわち、第1回転軸4は、縦枠体22側の吊車取付部材18の近傍の横枠体21に配置されていることが好ましい。
【0017】
第1回転軸支持部41は、ブロック体25と一対の補強板27により形成されている。すなわち、横枠体21を構成するブロック体25が水平方向に分割された2つのブロック体25からなり、これらブロック体25の間隔を第1回転軸4の直径より若干大きな寸法で形成し、これら2つのブロック体25間に第1回転軸4が嵌合された状態で上方から挿入されるようになっている。これら2つのブロック体25の互いに対向する面の上方がそれぞれ階段上に窪んで段部42として形成されている(特に図4参照。)。これら段部42を形成した空間とこれら空間の間の空間に対応する一対の補強板27の箇所には、矩形状の穴43aがそれぞれ設けられている(特に図5参照。)。これら穴43aを形成する底面がブロック体25の段部42と面一に形成されている。一対の補強板27の穴43は、矩形状の穴43aがそれぞれ上方に例えば2倍の高さまで延びさらに縦枠体22とは反対側の横枠体21の長手方向に延びて略L字状に形成されている。これら一対の補強板27のL字状の穴43とブロック体25の段部42によって第1回転軸支持部41が形成されている。
【0018】
2つのブロック体25の段部42と一対の補強板27の穴43(実際には矩形状の穴43a)を形成する底面上に矩形平板状の受け板44が載置されている。受け板44は、補強板27の厚さ方向の長さが一対の補強板27のそれぞれの外面と外面との間の長さと略同じ寸法で形成され、かつ、横枠体21の長手方向の長さが、2つのブロック体25の段部42により形成され互いに対向する垂直面間の長さより若干短い寸法で形成されてなる。また、受け板44の中央部には、第1回転軸4のネジ部4bが挿入されそのネジ部4bより若干大きな径の穴が設けられている。これにより、受け板44が2つのブロック体25の段部42と一対の補強板27の穴43を形成する底面上に嵌合された状態で載置されるようになっている。この受け板44上にリング状の軸受45を介して第1回転軸4の頭部4aが載置されるようになっている。すなわち、第1回転軸4の先端からリング状の軸受45及び受け板44をネジ部4bの外周に順次通し、この先端を2つのブロック体25の間に上方から挿入して横枠体21から下方に突出させ、かつ、受け板44を2つのブロック体25の段部42と一対の補強板27の穴43を形成する底面上に嵌合された状態で載置することで、受け板44上にリング状の軸受45を介して頭部4aが載置されるようになっている。これにより、第1回転軸4は、横枠体21に対する位置がずれることなく横枠体21に回転可能に吊り下げ支持されるようになっており、この第1回転軸4のネジ部4bに扉3を取り付けることで、扉3の上部が第1回転軸4によって回転可能に吊り下げ支持されることになる。
【0019】
第1回転軸4の扉3への取り付けは、扉3に取り付けることができれば特に限定されないが、第1回転軸4に対する扉3の取付位置を調節し得るようにすることが好ましく、例えば、図4〜図6に示すように、扉3に係合しかつ第1回転軸4に螺合するヒンジナット46と、第1回転軸4に螺合するナット47とを用いて行うことが好ましい。
【0020】
ヒンジナット46は、矩形平板状に形成され、中央部に第1回転軸4が螺合するネジ穴46aが設けられている。ヒンジナット46の扉3の厚さ方向の長さは、上フレーム31の一対の補強板35のそれぞれの外面である表面間の長さと略同じ寸法で形成されている。ヒンジナット46の扉3の幅方向の長さは、上フレーム31の一対の補強板35にそれぞれ対向して設けられた扉3の幅方向に細長の矩形状のスライド穴36の長手方向の長さより短く形成されている。ヒンジナット46の厚さは、スライド穴36の高さ方向の長さより若干短い寸法で形成されている。これにより、ヒンジナット46は、上フレーム31の一対の補強板35の各スライド穴36にスライド穴36の長手方向にスライド可能に係合されている。
【0021】
ナット47は、特に限定されず、例えば、六角ナットが用いられている。このナット47を第1回転軸4のネジ部4bに螺合させてから第1回転軸4の先端を後述する第1スライド部材61の軸穴61aに挿入し上フレーム31の一対の補強板35のスライド穴36に係合されているヒンジナット46に螺合させ、このヒンジナット46とナット47とで上フレーム31と第1スライド部材61とを締め付けることで、第1回転軸4に扉3の一方の角部近傍の上端が固定されるようになっている。また、ヒンジナット46とナット47とで上フレーム31と第1スライド部材61とを締め付ける際にヒンジナット46とナット47の第1回転軸4に対する螺合箇所を上下に移動させることにより、第1回転軸4に対する扉3の高さ方向(上下)の位置の調節を行えるようになっている。
【0022】
また、第1回転軸4の扉3の幅方向に対する位置の調節を行う第1軸調節部6が扉3つまり上フレーム31に設けられていることが好ましい。第1軸調節部6は、上フレーム31に扉3の幅方向にスライド可能に設けられる第1スライド部材61と、第1スライド部材61をスライドさせる第1アジャスタ部材とを有している。第1スライド部材61は、扉3の幅方向に延びる細長の扁平な直方体状に形成されている。第1スライド部材61の扉3の厚さ方向の長さは、上フレーム31の一対の補強板35のそれぞれの外面である表面間の長さと略同じ寸法で形成されている。第1スライド部材61は、上フレーム31の一対の補強板35の上端面上に載置されている。第1スライド部材61の一方の端部である横枠体21側の端部側には、第1回転軸4が挿入される上下方向に貫通する軸穴61aが設けられている。軸穴61aの径は、第1回転軸4のネジ部4bの径より若干大きな寸法で形成されている。第1スライド部材61の長手方向の中央及び他方の端部側には、上下方向に貫通しその長手方向に長い長穴61bがそれぞれ設けられている。各長穴61bには、頭部を有している第1固定部材であるスライドボルト62が上方から挿入され、これらスライドボルト62が上フレーム31のブロック体34に設けられた2つのネジ穴34aにそれぞれ螺合されるようになっている。これにより、スライドボルト62をネジ穴34aに対して締め付ける方向に回転させることで、スライドボルト62の頭部とブロック体25とで第1スライド部材61が扉3の上フレーム31に固定されるようになっている。また、スライドボルト62がネジ穴34aから離脱しない範囲でスライドボルト62をネジ穴34aに対して離脱する方向に回転させてスライドボルト62の頭部とブロック体34との締め付けがされていない緩んだ状態にすることで、第1スライド部材61が扉3の幅方向にスライド可能になっている。
【0023】
第1アジャスタ部材は、例えば、第1調節ネジ63である。第1スライド部材61の横枠体21とは反対側(扉3の上方の横枠体21に近い角部である第1角部とは反対側)の端面には、第1スライド部材61の長手方向に延び長穴61b(端部側の長穴61b)に貫通し、第1調節ネジ63が螺合するネジ穴61cが設けられている。このネジ穴61cに第1調節ネジ63を螺合させて第1調節ネジ63の先端を長穴61bに挿入されているスライドボルト62に当接するようにする。これにより、2つのスライドボルト62を緩めた状態で、第1調節ネジ63を長穴61bから突出する長さが長くなるようにネジ穴61cに対して回転させることで、第1スライド部材61が第2幅方向(扉3の第1角部から第1角部とは反対側の第2角部側の幅方向)にスライドして第1回転軸4の扉3に対する幅方向の位置が第2幅方向に移動するようになっている。逆に、第1調節ネジ63を長穴61bから突出する長さが短くなるようにネジ穴61cに対して回転させることで、扉3の自重により第1スライド部材61が第2幅方向とは反対方向の第1幅方向にスライドして第1回転軸4の扉3に対する幅方向の位置が第1幅方向に移動するようになっている。よって、第1調節ネジ63をネジ穴61cに対して回転させることで、第1回転軸4の扉3に対する幅方向の位置を調節することができるようになっている。この第1回転軸4の扉3に対する幅方向の移動範囲である第1スライド部材61のスライド範囲は、スライドボルト62が長穴61bを移動し得る範囲又はヒンジナット46がスライド穴36を移動し得る範囲であるので、長穴61bやスライド穴36の長手方向の長さを調節することで、第1スライド部材61のスライド範囲を調節することができる。
【0024】
下方の回転軸である第2回転軸5は、図7に示すように、扉3の下部を回転可能に基枠2の受け部23に取り付けるものである。第2回転軸5は、円柱状に形成されている。第2回転軸5は、扉3の下端の前記の第1角部側の下角部近傍に取り付けてもよいが、受け部23に取り付けることが好ましい。受け部23は、縦枠体22の下端から横枠体21側に横枠体21と平行に突出した例えば断面略矩形状に形成されている。受け部23の突出長さは、第2回転軸5を取り付けることができる範囲から任意設定されるが、できるだけ短い寸法で形成することが好ましい。第2回転軸5は、軸が扉3の上下方向と平行で受け部23の上面から上方に突出するように受け部23に固定されて取り付けられている。
【0025】
扉3の下フレーム32の下面の下角部及びその近傍は、上方に窪んだ段部32aとして形成され、この段部32aに第2回転軸5が回転可能に挿入される後述する第2スライド部材71が取り付けられている。第2スライド部材71には、第2回転軸5が挿入される上下方向に延びる軸穴71aが設けられている。軸穴71aの径は、第2回転軸5の径より若干大きな寸法で形成されている。また、扉3の段部32aの上下方向の長さ、第2スライド部材71の上下方向の長さ及び軸穴71aの軸方向の長さは、第2回転軸5の先端が軸穴71aの途中に位置される寸法で形成されている。これにより、第2回転軸5は、第2スライド部材71に回転可能に支持され、すなわち、扉3の下部が第2回転軸5を介して受け部23に回転可能に支持されるようになっている。
【0026】
また、第2回転軸5の扉3の幅方向に対する位置の調節を行う第2軸調節部7が下フレーム32に設けられていることが好ましい。第2軸調節部7は、下フレーム32に扉3の幅方向にスライド可能に設けられる第2スライド部材71と、扉3に固定される第2固定部材72と、第2スライド部材71をスライドさせる第2アジャスタ部材とを有している。第2スライド部材71は、扉3の幅方向に延びる細長の扁平な直方体状に形成されている。第2スライド部材71の扉3の厚さ方向の長さは、下フレーム32の一対の補強板38のそれぞれの外面である表面間の長さと略同じ寸法で形成されている。第2スライド部材71は、下フレーム32の段部32aの下端面に取り付けられている。第2スライド部材71の一方の端部である縦枠体22側の第1端部側には、第2回転軸5が挿入される上下方向に貫通する軸穴71aが設けられている。第2スライド部材71の長手方向の中央及び他方の端部である第2端部側には、上下方向に貫通しその長手方向に長い長穴71bがそれぞれ設けられている。また、第2スライド部材71の第1端部側の端面には、その長手方向に延び軸穴71aに貫通する通し穴71cが設けられている。
【0027】
第2固定部材72は、第2スライド部材71の下面及び第1端部側の端面を覆うL字板状に形成され、第2スライド部材71の下面に面接触する基部72aと第2スライド部材71の端面と対向する片部72bとからなる。第2スライド部材71の軸穴71aに対応する箇所の第2固定部材72の基部72aには、第2回転軸5が挿入され基部72aの長手方向に延びる長穴72cが設けられている。また、第2スライド部材71の2つの長穴71bに対応する箇所の基部72aには、それぞれ挿入穴72dが設けられている。第2スライド部材71の通し穴71cに対応する箇所の片部72bには、ネジ穴72eが設けられている。第2スライド部材71を下フレーム32の段部32aの下端面に接触させ、この第2スライド部材71の下面に第2固定部材72の基部72aを接触させた状態で、第2固定部材72の2つの挿入穴72dからそれぞれスライドボルト74を挿入して、これらスライドボルト74が第2スライド部材71の長穴71bを通って下フレーム32のブロック体37に設けられた2つのネジ穴37aにそれぞれ螺合されるようになっている。これにより、スライドボルト74をネジ穴37aに対して締め付ける方向に回転させることで、スライドボルト74の頭部とブロック体37とで第2固定部材72及び第2スライド部材71が扉3の下フレーム32に固定されるようになっている。また、スライドボルト74がネジ穴37aから離脱しない範囲でスライドボルト74をネジ穴37aに対して緩める方向に回転させてスライドボルト74の頭部とブロック体37との第2固定部材72及び第2スライド部材71の締め付けがされていない緩んだ状態にすることで、第2スライド部材71が扉3の幅方向にスライドするようになっている。
【0028】
第2アジャスタ部材は、例えば、第2調節ネジ73である。第2スライド部材71の片部72bのネジ穴72eに第2調節ネジ73を螺合させつつ第2スライド部材71の通し穴71cに挿入して第2調節ネジ73の先端を第2スライド部材71の軸穴71aに挿入されている第2回転軸5に当接するようにする。これにより、2つのスライドボルト74を緩めた状態で、第2調節ネジ73を頭部が第2固定部材72の片部72bに近づくようにネジ穴72eに対して回転させることで、第2スライド部材71が第2幅方向にスライドして第2回転軸5の扉3に対する幅方向の位置が第2幅方向に移動するようになっている。逆に、第2調節ネジ73を頭部が第2固定部材72から離れるようにネジ穴72eに対して回転させることで、第2スライド部材71が第1幅方向にスライドして第2回転軸5の扉3に対する幅方向の位置が第1幅方向に移動するようになっている。よって、第2調節ネジ73をネジ穴72eに対して回転させることで、第2回転軸5の扉3に対する幅方向の位置を調節することができるようになっている。この第2回転軸5の扉3に対する幅方向の移動範囲である第2スライド部材71のスライド範囲は、スライドボルト74が長穴71bを移動し得る範囲又は第2回転軸5が長穴72cを移動し得る範囲であるので、両長穴71b、72cの長手方向の長さを調節することで、第2スライド部材71のスライド範囲を調節することができる。
【0029】
基枠2の縦枠体22には、図3〜図5、図8、図9及び図13〜図15に示すように、基枠2を所定の箇所に固定する固定機構8が設けられている。固定機構8は、縦枠体22の上端から上方に進退可能な上部材81と、縦枠体22の下端から下方に進退可能な下部材とを有している。なお、上部材81が突出する箇所は、実際には横枠体21と縦枠体22との区別がつかないので便宜上縦枠体22とした。
【0030】
上部材81は、縦枠体22内で上下方向に移動可能に設けられ上端が縦枠体22の上端から上方に進退する圧接バー83と、圧接バー83の上端にその長手方向である上下方向に移動可能で突出する方向に付勢されて設けられた平板状の圧接プレート84と、圧接プレート84に設けられた位置決めピン85とを有している。
【0031】
圧接バー83は、上下方向に延びる細長の板状の棒状部材である。圧接バー83の下端には、連結バー288に連結するための連結穴83aが設けられている(図9参照。)。圧接バー83の上端部には、厚さ方向に貫通するピン穴83bが設けられている。圧接バー83の厚さ方向と平行で上下方向に延びる2つの面のうち縦枠体22内に取り付けられたとき横枠体21側の面の上方には、幅方向に矩形状に突出する係合片86が設けられている。圧接バー83の上方の係合片86が設けられている箇所及び下方には、取付穴83cがそれぞれ設けられている。圧接バー83の上下方向に延びる残りの2つの面である表面には、一対の補強圧接板87が取り付けられている。一対の補強圧接板87の圧接バー83の取付穴83cに対応する箇所には、それぞれ取付穴87aが設けられ、例えば、一対の補強圧接板87の一方に設けられた取付穴87aがネジ穴に形成されて、ネジ部材によって圧接バー83及び一対の補強圧接板87が面接触状態で互いに重ね合わされた状態で取り付けられている。一対の補強圧接板87は、圧接バー83の係合片86より上方がなく、かつ、下端が短い形状に形成され、圧接バー83のみが係合片86より上方に突出するように形成されている。すなわち、圧接バー83の係合片86より下方が一対の補強圧接板87で補強されている。また、係合片86の上面及び一対の補強圧接板87の上面が受け面88として形成されている。
【0032】
受け面88上には、圧接バー83が嵌合された状態で通る細長の矩形状の穴89aを有している矩形平板状のバネ座89が載置されている。バネ座89上には、弾性部材としての圧接バネ180が載置されている。圧接バネ180は、例えば、圧接バー83の外周を覆うようにコイル状に形成されている。圧接バネ180上には、扉3の幅方向に長い矩形平板状の圧接座181が載置されている。圧接座181には、圧接バー83の断面の矩形状より若干大きな矩形状に形成されており、圧接座181は、圧接バー83に対して上下方向に摺動状態で移動するようになっている。また、圧接座181の長手方向の両端部近傍には、ネジ穴181aがそれぞれ設けられている。圧接バー83の受け面88上に、バネ座89及び圧接バネ180を順次積層し、さらに圧接バネ180上に圧接バネ180の付勢力に抗して圧接バネ180を縮めて圧接座181をピン穴83bより受け面88側に移動させた状態でピン穴83bに抜け止ピン182を嵌合させて挿入することで、圧接座181が抜け止ピン182に当接して圧接座181、圧接バネ180及びバネ座89が圧接バー83から抜け出ることがなく、かつ、圧接バネ180の付勢力で圧接座181が常に抜け出る方向に付勢されて抜け止ピン182に当接した状態になっている。
【0033】
圧接座181の上面には、圧接プレート84が取り付けられている。圧接プレート84は、矩形平板状に形成され、例えば、扉3の厚さ方向の長さがレール12の幅と略同じ寸法で、扉3の幅方向の長さが圧接座181より長い寸法でそれぞれ形成されている。圧接プレート84の中央部には、圧接バー83と抜け止ピン182が通る通し穴84aが設けられている。また、圧接プレート84の圧接座181のネジ穴181aと対向する箇所には、貫通穴84bがそれぞれ設けられ、例えば、2つの取付ネジ183を各貫通穴84aを通してネジ穴181aに螺合させることで、圧接座181の上面に圧接プレート84が面接触状態で取り付けられる。これにより、圧接プレート84は、圧接座181とともに移動し、かつ、上方に圧接バネ180によって付勢される。また、圧接プレート84のレール12の一対の下面と対向する箇所には、ピン取付穴84cがそれぞれ設けられている。
【0034】
各ピン取付穴84cには、圧接プレート84から上方に突出する断面円形状の位置決めピン85がそれぞれ嵌合されて挿入後、例えば溶接により固定されている。位置決めピン85の上方は、円錐台状や図示例では円錐状につまり先端に行くにつれて漸次縮径された縮径部85aとして形成されている。これら位置決めピン85は、レール12の一対の下辺の下面の所定の箇所にそれぞれ取り付けたピン受けプレート14の係合穴14aに挿入されてさらにレール12の一対の下辺の穴12aに挿入され圧接プレート84がピン受けプレートに面接触状態となることで、基枠2の上部がレール12に固定されるようになっている。ピン受けプレート14の係合穴14aは、レール12側の開口から圧接プレート84側の開口に向かって漸次拡径された形状に形成することで、位置決めピン85の上方に縮径部85aが設けられていることと互いに作用しあって、位置決めピン85が係合穴14aに挿入され易くなっている。また、圧接プレート84と圧接座181が扉3の基枠2の角部近傍の上端の凹部2aに位置されている状態が退避状態であり、圧接バー83は、退避位置から基枠2の上部がレール12に固定される固定位置の間で移動可能に縦枠体22内に設けられている。すなわち、上部材81である圧接バー83は、横枠体21に退避された退避位置と、横枠体21から延びてレール12に係合して基枠2を固定する固定位置との間で上下方向に移動可能に横枠体21に設けられている。
【0035】
下部材は、縦枠体22内で上下方向に移動可能に設けられ下端が縦枠体22の下面から下方に進退する移動バー82である(特に図3、図13〜図15参照。)。移動バー82の下端は、円柱状の係合突部82aとして形成されている。係合突部82aの下方は、円錐台状や円錐状につまり先端に行くにつれて漸次縮径された縮径部82bとして形成されている。この係合突部82aは、床19の所定の箇所に設けた係合穴19aに挿入されて係合されることで、基枠2の下部すなわち縦枠体22の下部が床19に位置決めされて動きが抑制されるようになっている。このとき、係合突部82aの下方に縮径部82bが設けられていることで、係合突部82aが係合穴19aに挿入され易くなっている。また、係合突部82aの下端である先端が床19から所定の距離はなれて係合突部82aの全部又は一部が縦枠体22内に位置されている状態が退避状態であり、移動バー82は、退避位置から係合突部82aが床19の係合穴19aに係合されている係合位置の間で移動可能に縦枠体22内に設けられている。この退避位置と係合位置となるために移動バー82が移動する範囲である長さが、圧接バー83が退避位置と固定位置となるために移動する長さと同じ寸法で形成されていることが好ましい。
【0036】
また、固定機構8は、図3、図13〜図15に示すように、上部材81と下部材とを連動させて作動させる連動操作部280を備えている。連動操作部280は、圧接バー83と移動バー82との間に設けられ、圧接バー83及び移動バー82をそれぞれ突出方向又は退避方向に連動させて作動させるものである。連動操作部280としては、公知のものを用いて構成してもよいが、例えば、ピニオンラック機構を用いてもよい。この連動操作部280は、縦枠体22に取り付けられた基体281と、基体281に回転可能に設けられたピニオン282と、上下方向に移動可能に設けられ、ピニオン282に螺合し、かつ、上端及び下端が圧接バー83及び移動バー82に連結されるラック部材283と、縦枠体22の表面に開口して設けられ、工具等の操作治具が嵌合されて挿入されピニオン282を回転させる例えば断面正方形状の操作穴284とを有している。
【0037】
ラック部材283は、上下方向に延びる細長の板状部材で形成されている。ラック部材283の上端及び下端には、上下の連結ピン285a、285bがそれぞれ設けられている。これら上下の連結ピン285a、285bは、縦枠体22に上下方向に延びて設けられた2つのガイド穴286a、286bにそれぞれ挿入されている。これにより、上下の連結ピン285a、285bがそれぞれガイド穴286a、286bに上下方向に案内される範囲でラック部材283が上下方向に移動するようになっている。この上下の連結ピン285a、285bは、圧接バー83及び移動バー82が退避位置に位置されているときにガイド穴286a、286bの一番下に位置され、圧接バー83及び移動バー82が固定位置及び係合位置に位置されているときにガイド穴286a、286bの一番上に位置されるように、ガイド穴286a、286bの位置及び長さが設定されている。
【0038】
上方の連結ピン285aには、上連動バー287の下端が取り付けられている。上連動バー287は、1つ又は複数の連結バー288を介して圧接バー83の下端に連結されている。これら上連動バー287及び連結バー288は、縦枠体22に上下方向に移動可能にそれぞれ設けられており、上方の連結ピン285aが上下方向に移動すると、上連動バー287及び上連結バー288を介して圧接バー83が上下方向に移動するようになっている。なお、上連動バー287と連結バー288との連結、連結バー288同士の連結、及び連結バー288と圧接バー83との連結は、それぞれ連結ピンを用いて互いに回転可能に連結され、かつ、これら連結ピンがそれぞれガイド穴に挿入されてガイド穴によって縦枠体22の上下方向への上連動バー287及び連結バー288の移動が案内されるようになっている。
【0039】
下方の連結ピン285bには、第1下連動バー381の上端が取り付けられている。第1下連動バー381の下端は、方向変換バー382の第1辺382aに連結されている。方向変換バー382は、上下方向の動きを逆方向に変換するもので屈曲状に形成され、屈曲されて形成される角部を軸に縦枠体22に回転可能に取り付けられている。方向変換バー382は、下方の連結ピン285bがガイド穴286bの一番下に位置されているときに、2つの辺がそれぞれ下方側に向けて配置されている(特に図13参照。)。この方向変換バー382の一方の第1辺382a、図示例では左側の辺の先端部に第1下連動バー381の下端が連結され、他方の第2辺382b、図示例では右側の辺の先端部に第2下連動バー383の上端が連結されている。また、方向変換バー382は、下方の連結ピン285bがガイド穴286bの一番下から一番上に移動したときに、図示例では時計回りに回転して第1辺382aの先端が円弧状に上方側に移動して方向変換バー382の回転軸より上方側に位置され、かつ、第2辺382bの先端が円弧状に下方側に移動して方向変換バー382の回転軸の垂直方向の下方(すなわち、第2辺382bの先端が垂直方向の一番下方(最下位)の位置)を少し超えたところで停止するように形成されている(特に図14及び図15参照。)。これら第1辺382a及び第2辺382bの移動は、連結ピン386a、386bがガイド穴385a、385bによって案内されることで行われている。このように、下方の連結ピン285bがガイド穴286bの一番下から一番上に移動したときに、方向変換バー382が回転して第2辺382bの先端に連結されている第2下連動バー383が下方に移動するようになっている。
【0040】
第2下連動バー383は、縦枠体22に上下方向に移動可能に設けられている1つ又は複数の連結バー384を介して移動バー82の上端に連結されており、下方の連結ピン285bが上下方向に移動すると、第1下連動バー381、方向変換バー382、第2下連動バー383及び連結バー384を介して移動バー82が連結ピン285bとは逆方向の上下方向に移動するようになっている。これにより、操作穴284に工具等の操作治具を嵌合させて挿入してピニオン282を回転させ、ガイド穴286a、286bの一番下に位置されている上下の連結ピン285a、285bをガイド穴286a、286bの一番上に移動させると、圧接バー83と移動バー82とが連動して圧接バー83が退避位置から固定位置に移動するとともに移動バー82が退避位置から係合位置に移動するようになっている。また、操作治具によりピニオン282を回転させ、ガイド穴286a、286bの一番上に位置されている上下の連結ピン285a、285bをガイド穴286a、286bの一番下に移動させると、圧接バー83と移動バー82とが連動して圧接バー83が固定位置から退避位置に移動するとともに移動バー82が係合位置から退避位置に移動するようになっている。なお、第2下連動バー383と連結バー384との連結、連結バー384同士の連結、及び連結バー384と移動バー82との連結は、それぞれ連結ピンを用いて互いに回転可能に連結され、かつ、これら連結ピンがそれぞれガイド穴に挿入されてガイド穴によって縦枠体22の上下方向への第2下連動バー383及び連結バー384の移動が案内されるようになっている。
【0041】
また、第2下連動バー383と移動バー82を連結する連結バー384には、連結バー384を上方に付勢する付勢手段が設けられている。付勢手段は、例えば、コイル状の付勢バネ387である。この付勢バネ387は、連結バー384の外周に巻回されるように装着され、一端が縦枠体22に固定されている受け座388に当接し、他端が連結バー384に固定されている当接座389に当接して、常に連結バー384を上方に付勢するものである。これにより、方向変換バー382は、第2辺382bの先端が最下位に位置されているときを境に付勢される方向が変わる。すなわち、方向変換バー382の回転軸を含む垂直面である境面を境界として第1辺382aの先端が位置される側と異なる側、図示例では最下位位置から右側に第2辺382bの先端が位置されている場合には、図示例では反時計回りに第2辺382bの先端が回転するように付勢される、つまり、第1辺382aの先端が下方に移動するように付勢されて、圧接バー83及び移動バー82が、それぞれ退避位置に位置されているときには付勢バネ387の付勢力によって退避位置にそれぞれ保持されるようになっている(図13参照。)。逆に、境面を境界として第1辺382aの先端と同じ側、図示例では最下位位置から左側に第2辺382bの先端が位置されている場合には、図示例では時計回りに第2辺382bの先端が回転するように付勢される、つまり、第1辺382aの先端が上方に移動するように付勢されて、圧接バー83及び移動バー82が、固定位置及び係合位置に位置されているときには付勢バネ387の付勢力によって固定位置及び係合位置にそれぞれ保持されるようになっている(図14及び図15参照。)。すなわち、方向変換バー382と付勢手段である付勢バネ387とを有し、圧接バー83及び移動バー82を固定位置及び係合位置又は退避位置に保持する保持機構が構成されている。
【0042】
また、方向変換バー382の第2辺382bの先端の移動範囲は、ほとんどが境面より右側で、境面より左側になる範囲は少ない。この左側になる範囲は、圧接バー83及び移動バー82が固定位置及び係合位置に位置されているときや、又はこれら位置に位置される直前を含む場合である。このため、圧接バー83及び移動バー82がそれぞれ縦枠体22から伸びて、圧接バー83の圧接プレート84の位置決めピン85がレール12に取り付けたピン受けプレート14の係合穴14aに係合して挿入されさらに圧接プレート84がピン受けプレート14に面接触して基枠2の上部がレール12に固定され、かつ、移動バー82の係合突部82aが床19の係合穴19aに挿入されて係合し基枠2(縦枠体22)の下部が床19に位置決めされて動きが抑制されて固定される、すなわち、圧接バー83及び移動バー82が完全に固定位置及び係合位置に位置されて基枠2が固定された状態にならないと、方向変換バー382の第2辺382bの先端の位置が境面より右側であり、基枠2が完全に固定されていない状態で、操作治具による操作をやめてピニオン282及びラック部材283への力が解除されると、付勢バネ387の付勢力によって方向変換バー382が反時計回りに回転して圧接バー83及び移動バー82がそれぞれ退避位置に位置されるようになっている。これにより、基枠2が固定されたか否かを容易に把握することができる。
【0043】
また、横枠体21には、図3及び図10〜図15に示すように、扉3を解除可能に閉状態に保持する保持部材9が回転可能に設けられている。保持部材9は、扉3を閉状態に保持するときに扉3を吊り下げ支持する吊部材であることが好ましい。すなわち、保持部材9は、扉3を吊り下げ支持して閉状態に保持するものである。保持部材9は、扉3に取り付けられた支持ピン90に係合して扉3を吊り下げ支持する係合位置と、支持ピン90との係合が解除されて扉3の開閉を行える解除位置との間で回転可能に横枠体21に設けられている。保持部材9は、2つの吊車取付部材18が固定されている固定箇所間であって扉3の第2角部側の固定箇所の近傍に設けられていることが好ましい。すなわち、保持部材9は、縦枠体22から離れた側の吊車取付部材18の近傍の横枠体21の箇所に配置されていることが好ましい。
【0044】
保持部材9は、高さ方向に延びる略直方体状に近い略矩形平板状に形成されている。保持部材9の上端部が基部であり、この基部には、保持部材9を回転可能に軸支する回転部材91が挿入されて係合する軸穴9cが設けられている。また、保持部材9の上端面の縦枠体22側は、下方に窪んだ段部93として形成されている。保持部材9の第2角部側の側面の下端部近傍には、水平方向に延びる切り欠き95が設けられ、保持部材9の下端部がフック部94として形成されている。フック部94を形成する切り欠き95の奥側は、開口より幅広な凹部95aが形成されている。これにより、フック部94の切り欠き95に支持ピン90が挿入された状態、すなわち、フック部94が支持ピン90に係合した状態のとき、切り欠き95に凹部95aが形成されていることで、支持ピン90が切り欠き95から抜け難くなるので、フック部94の支持ピン90への係合を保持することができる。また、保持部材9の下端面である先端面のフック部94の開口側が窪んだ段部96として形成されている。
【0045】
保持部材9は、2枚の吊部板9a、9bを重ね合わせて例えば2つのネジにより固定して形成することが好ましい。この場合、一方の吊部板9aに一方の側面から幅方向に延びるスリット9dを形成し、他方の吊部板9bに他方の側面から幅方向に延びるスリット9eを形成し、これら2つの吊部板9a、9bを重ね合わせたとき、両スリット9d、9eにより軸穴9cが形成されるようにする。この軸穴9cに挿入される回転部材91は、円柱状に形成されている。回転部材91の軸穴9cに対応する箇所には、互いに平行な係合部91aが設けられている。この係合部91aに保持部材9の軸穴9cが係合するように保持部材9を形成する2枚の吊部板9a、9bのスリット9d、9eの幅は、係合部91a間の長さより若干長い寸法で形成されている。保持部材9の軸穴9cへの回転部材91の係合は、回転部材91の係合部91aに一方の吊部板9aのスリット9dを係合させ、かつ、この係合部91aに他方の吊部板9bのスリット9eを係合させる。このとき、回転部材91の係合部91aに吊部板9a、9bを係合させる方向が異なる。両吊部板9a、9bを回転部材91の係合部91aに係合させて互いに重ね合わせて2つのネジにより固定する。これにより、保持部材9の軸穴9cに回転部材91が係合して回転部材91を回転させることで、回転部材91を軸に保持部材9が回転するようになっている。回転部材91は、略L字平板状の操作レバー92の一方の端部側の一方の表面に固定されている。操作レバー92の他方の端部の他方の表面には、表面から突出する係合部92aが設けられており、操作部材を係合部92aに係合させることで高所に操作レバー92が位置されていても操作レバー92を操作することが可能になっている。なお、図中、9fは、ネジを通す通し穴、9gはそのネジが螺合するネジ穴をそれぞれ示している。
【0046】
扉3の上フレーム31内には、扉3の厚さ方向に延び保持部材9のフック部94が係合して扉3が吊り下げ支持される支持ピン90が取り付けられている。支持ピン90は、保持部材9の軸穴の高さ方向の下方の位置の上フレーム31に取り付けられている。支持ピン90は、上フレーム31に固定されていてもよいが、支持ピン90の位置を例えば高さ方向に調節するピン調節部190を介して設けることが好ましい。
【0047】
ピン調節部190は、図10〜図12に示すように、上フレーム31の一対の補強板35間に取り付けられる固定部材191と、固定部材191に高さ方向に移動可能に取り付けられ、かつ、支持ピン90が取り付けられる移動部材とを有している。固定部材191は、厚さが薄い直方体の縦枠体22側の下方を水平方向に突出させたL字状のブロック体として形成されている。固定部材191の下方の幅方向の長さが長い箇所が取付部191aとして形成され、残りの箇所である上方が支持部191bとして形成されている。固定部材191の取付部191aの幅方向の両側近傍には、厚さ方向に貫通する通し穴191cがそれぞれ設けられている。固定部材191の支持部191bには、幅方向に間隔をあけて高さ方向に延びかつ厚さ方向に貫通する長穴191dが2つ設けられている。また、固定部材191の上面の長穴191dからずれた2箇所には、高さ方向に延びるネジ穴191eがそれぞれ設けられている。固定部材191は、上フレーム31の一対の補強板35間に挟持された状態で取り付けられている。
【0048】
一対の補強板35の保持部材9の下方に位置される箇所の上方は、扉3の幅方向に長い細長矩形状に凹みさらに横枠体21側の下方が水平方向に奥へと凹んで制限凹部193aとして形成された略L字状の嵌合凹部193がそれぞれ設けられている。嵌合凹部193の制限凹部193aが設けられていない箇所の幅方向の長さは、固定部材191の取付部191aの幅方向の長さより少し長い寸法で形成されている。また、嵌合凹部193の高さ方向の長さは、固定部材191の支持部191bの高さ方向の長さより短い寸法で形成されている。一方の補強板35の嵌合凹部193の下方には、取付ネジを通しかつその取付ネジの頭部を収容する2つの穴194aが固定部材191の取付部191aの通し穴191cに対応して設けられている。他方の補強板35の固定部材191の取付部191aの通し穴191cに対応する箇所には、それぞれ取付ネジが螺合するネジ穴194bが設けられている。これら一対の補強板35の穴194a及びネジ穴194は、固定部材191の通し穴191cと穴あわせした状態で取付ネジを用いて固定部材191が上フレーム31の一対の補強板35間に挟持された状態で取り付けられ、かつ、固定部材191の支持部191bが一対の補強板35の嵌合凹部193間に位置されるとともに支持部191bの上面が補強板35の上端面より上方に位置されるように形成されている。
【0049】
移動部材は、一対の補強板35の嵌合凹部にそれぞれ嵌合される一対の移動板192で形成されている。一対の移動板192は、扉3の幅方向に細長の矩形平板状の縦枠体22側の上端面が上方に突出されてピン取付部192aとして形成された略L字板状に形成されている。移動板192の厚さは、補強板35の厚さと略同じ寸法で形成されている。移動板192のピン取付部192aが設けられていない箇所の高さ方向の長さは、嵌合凹部193の高さ方向の長さより長く、かつ、固定部材191の支持部191bの高さ方向の長さより短い寸法で形成されている。移動板192の幅方向の長さは、制限凹部193aが設けられていない箇所の嵌合凹部193の幅方向の長さより若干短い寸法で形成されており、移動板192が嵌合凹部193に嵌合されるようになっている。
【0050】
移動板192のピン取付部192a側の端面の下部には、幅方向に矩形状に突出して嵌合凹部193に嵌合時に制限凹部193a内に位置される凸部192bが設けられている。凸部192bの突出長さ、すなわち、凸部192bが設けられた箇所の移動板192の幅方向の長さは、制限凹部193aが設けられている箇所の嵌合凹部193の幅方向の長さより若干短い寸法で形成されている。凸部192bの高さ方向の長さは、制限凹部193aの高さ方向の長さより短い寸法で形成されている。これにより、嵌合凹部193に移動板192を嵌合させたとき、移動板192のピン取付部192a側の移動板192の高さ方向の移動は、凸部192bが制限凹部193a内で上下に移動し得る範囲で行われるようになっている。
【0051】
一方の移動板192の固定部材191の長穴191dに対応する箇所には、調節ネジを通しかつその調節ネジの頭部を収容する2つの穴192cが設けられている。また、他方の移動板192の固定部材191の長穴191dに対応する箇所には、調節ネジが螺合する2つのネジ穴192dが設けられている。これにより、嵌合凹部193に移動板192を嵌合させたとき、移動板192のピン取付部192aが設けられていない側の移動板192の高さ方向の移動は、調節ネジが長穴191dを上下に移動し得る範囲で行われるようになっている。この移動範囲は、移動板192の凸部192bが制限凹部193a内で上下に移動し得る範囲と略同じになるように形成することが好ましい。よって、移動板192は、上下方向に移動可能に設けられ、この移動は、調節ネジが長穴191dを移動し得る範囲又は移動板192の凸部192bが制限凹部193a内を移動し得る範囲であるので、長穴191dや移動板192の凸部192b、制限凹部193aの長さを調節することで、移動板192の上下に移動する範囲を調節することができる。
【0052】
また、固定部材191の支持部191bの上面には、押え板195が取付ボルト196によって面接触状態で取り付けられる。押え板195は、扉3の長手方向に長い矩形平板状に形成されている。押え板195の長手方向の長さは、固定部材191の支持部191bの長手方向の長さと略同じ寸法で形成されている。押え板195の幅方向の長さは、一対の補強板35の外面間の長さと同じ寸法で形成されている。これにより、押え板195は、移動板192のピン取付部192aが設けられていない箇所の上方に位置されているために、移動板192の嵌合凹部193からの抜け出を防止する機能を有している。
【0053】
さらに、一対の移動板192のピン取付部192aは、固定部材191の支持部191bが設けられていない箇所に対応した位置に形成されている。これらピン取付部192aの保持部材9の回転軸の垂直方向の下方又は下方近傍に位置され得る箇所には、支持ピン90の両端部を嵌合された状態で挿入するピン穴192eがそれぞれ設けられている。支持ピン90の一対の移動板192間の外周には、その外周上を周方向に摺動する円筒状のカバー90aが設けられている。これにより、保持部材9のフック部94が支持ピン90に係合する際には支持ピン90の外周にその周方向に摺動するカバー90aに係合するので、フック部94の支持ピン90への係合が行われ易くなっている。
【0054】
この保持部材9と固定機構8を連動させる連動機構10が基枠2に設けられている。連動機構10は、図4、図5、図10〜図15、特に図13〜図15に示すように、保持部材9で扉3を吊り下げ支持して閉状態に保持しているとき、固定機構8による基枠2の固定とその固定の解除を行え、この基枠2の固定が解除されている状態では保持部材9が閉状態にロックされ、かつ、固定機構8で基枠2を固定しているとき、保持部材9による扉3の閉状態の保持とその扉への係合の解除を行え、この保持部材9による扉の係合が解除された状態では基枠2の固定がロックされるように構成されている。すなわち、連動機構10は、保持部材9により扉3が閉塞状態に保持されているとき、固定機構8による基枠2の固定とその固定の解除を行えるが、この基枠2の固定が解除されている状態では保持部材9が閉状態にロックされているので、扉3のロックの解除が基枠2を固定してからでないと行えないようになっている。また、連動機構10は、基枠2が固定されているとき、保持部材9による扉3の閉塞状態の保持とその扉3への係合の解除を行え、この保持部材9による扉3の係合が解除された状態では基枠2の固定がロックされているので、基枠2の固定の解除が扉3を閉塞状態に保持してからでないと行えないようになっている。
【0055】
連動機構10は、保持部材9を係合位置にロックする第1ロック位置と圧接バー83を固定位置にロックする第2ロック位置との間で回転可能に横枠体21に設けられているロックカム101と、圧接バー83の退避位置から固定位置への移動を許容する第1位置と圧接バー83を固定位置にロックする第2位置との間で回転可能に横枠体21に設けられているリンクカム102と、ロックカム101を第1ロック位置にロックするロックカム101ロック位置とリンクカム102を第2位置にロックするリンクカム102ロック位置との間で移動可能に横枠体21に設けられているロックバー103と、保持部材9を解除位置にロックする係合フック104とを有している。
【0056】
ロックカム101は、扉3の幅方向に長い矩形平板状の下側の横枠体21側の角部が斜め下方に突出してカム部105として形成された形状に形成されている。ロックカム101の横枠体21と反対側の幅方向の端部近傍が回転軸101aを介して横枠体21に回転可能に取り付けられている。ロックカム101の回転軸101aの下方の箇所からカム部105の下面である第1面105aまでは、保持部材9の上端面に面接触し得る形状に形成されている。すなわち、ロックカム101のカム部105の第1面105aが保持部材9の上端面の段部93に接している。ロックカム101の横枠体21側の端面とカム部105との境は、扉3の幅方向に平行なカム面105bとして形成されている。カム部105の第1面105a以外の残りの面である第2面105cは、ロックカム101が第2ロック位置のとき高さ方向に平行な垂直面となるように傾斜されている。ロックカム101は、保持部材9が係合位置に位置されているとき、長手方向が扉3の幅方向とほぼ平行で下面の一部及びカム部105の第1面105aが保持部材9の上面に接して保持部材9を係合位置にロックするための第1ロック位置に位置されている。このロックカム101は、保持部材9を係合位置から解除位置に回転させたとき、この保持部材9の回転に伴って第1ロック位置から第2ロック位置に回転する。すなわち、保持部材9を係合位置から解除位置に回転させると、まず、保持部材9の上端面の段部93でロックカム101のカム部105の第1面105aを押し上げてロックカム101を回転させ、そして、保持部材9の第1面105aを押し上げる箇所が段部から側端面に移動して保持部材9が約90°回転して上フレーム31内に収容されて解除位置になると、ロックカム101の回転が停止する。この停止位置が圧接バー83を固定位置にロックするための第2ロック位置である。また、ロックカム101は、保持部材9を解除位置から係合位置に回転させると、自重で第2ロック位置から第1ロック位置に回転して自然に戻るようになっている。
【0057】
リンクカム102は、基枠2の角部近傍内で吊車取付部材18が固定される固定箇所と圧接バー83の係合片86との間に設けられている。リンクカム102は、上下方向に延び、上方が回転軸を介して基枠2に回転可能に取り付けられている。吊車取付部材18が固定される箇所側のリンクカム102の側面の下方は、ロックバー103が当接する当接部102aとして形成されている。また、当接部102aと反対側のリンクカム102の側面の下方には、圧接バー83が退避位置に位置されているとき、斜め下方に略矩形状に突出するカム部106が設けられている。このカム部106の突出する先端面が第1面106aで、カム部106の上方側の面が第2面106bとしてそれぞれ形成されている。リンクカム102は、カム部106の第1面106aが圧接バー83の係合片86の先端面に接して圧接バー83の退避位置から固定位置への移動を許容する第1位置と、圧接バー83を退避位置から固定位置に移動したとき、カム部106の第2面106bに圧接バー83の係合片86の下面が接して圧接バー83を固定位置にロックするための第2位置との間で回転可能に設けられている。
【0058】
ロックバー103は、一端がロックカム101に係合するかロックカム101の近傍に位置され、他端がリンクカム102の当接部102aに当接する横枠体21内に長手方向に延びる棒状部材で形成されている。ロックバー103は、例えば、内装体26上に載置された状態で横枠体21内を長手方向に移動可能に設けられている。また、ロックバー103は、横枠体21内に長手方向に移動可能に設けられている。ロックバー103は、ロックカム101が第1ロック位置に位置され、かつ、圧接バー83が退避位置に位置されているとき、一端がロックカム101のカム部105のカム面105bに係合し、かつ、カム部106の第1面106aが圧接バー83の係合片86の先端面に接しているリンクカム102の当接部102aに他端が当接して、ロックカム101を第1ロック位置にロックし得る長さで形成されている。また、このロックバー103は、圧接バー83が固定位置に位置されて圧接バー83の係合片86の下面にカム部106の第2面106bが接しているリンクカム102の当接部102aに他端が当接したとき、一端がロックカム101の回転を許容し、かつ、ロックカム101が第2ロック位置に位置されたときに、一端面がロックカム101のカム部105の垂直になった第2面105cに近接した状態で対向しこの第2面105cに一端面が当接してもリンクカム102のカム部106の第2面106bが圧接バー83の係合片86の下面に接した係合状態が解除されない長さにも形成されている。これにより、ロックバー103は、一端がロックカム101に係合し他端がリンクカム102に当接してロックカム101を第1ロック位置にロックするロックカムロック位置と、他端が第2位置に位置されたリンクカム102に当接し一端がロックカム101の回転を許容するとともにロックカム101が第2ロック位置のときに他端から一端への移動を防止してリンクカム102を第2位置にロックするリンクカムロック位置との間で移動可能に横枠体21に設けられている。
【0059】
また、ロックバー103は、一端から他端側に付勢されている。この付勢を行う付勢手段は、特に限定されず、例えば、コイル状の付勢バネ107が用いられる。付勢バネ107は、ロックバー103の外周に巻回されるように装着され、一端が受け座108に当接し、他端が当接座109に当接している。受け座108は、ロックバー103が貫通する貫通穴108aを有している平板状に形成され、両側が一対の補強板の嵌合穴27cに嵌合されて嵌合穴27cを形成する面に当接している。当接座109は、ロックバー103が貫通する貫通穴109a及び係合フック104が接触する接触片109bを有し嵌合穴27cに嵌合する平板状に形成され、ロックバー103の凸部103cに当接している。これにより、付勢バネ107の付勢力によって、常にロックバー103を一端から他端側に付勢するようになっている。これら受け座108、付勢バネ107及び当接座109は、解除位置の保持部材9の上方に位置されるように取り付けられている。また、ロックバー103の凸部103cは、嵌合穴27cに連通しロックバー103を長手方向に移動させるガイド穴27dに挿入されている。
【0060】
この付勢バネ107によって、ロックバー103の他端がリンクカム102の当接部102aに当接して、カム部106が圧接バー83に押し付けられるようにリンクカム102が付勢される。これにより、圧接バー83が退避位置に位置されて圧接バー83の係合片86の先端面にリンクカム102のカム部106の第1面106aが接しているとき、ロックバー103の一端がロックカム101のカム部105のカム面105bに係合しているので、圧接バー83を固定位置に位置させるつまり基枠2を固定しない限りは、保持部材9を回転させることができず扉3がロック状態に保持されるようになっている(図13参照。)。また、圧接バー83を退避位置から固定位置に移動させるつまり基枠2を固定すると、圧接バー83が上方に移動してリンクカム102のカム部106が圧接バー83の係合片86に接する箇所が先端面から下面に移動し、かつ、カム部106の係合片86に接する箇所も第1面106aから第2面106bに移動し、すなわち、付勢バネ107の付勢力によってロックバー103が一端から他端側に移動してリンクカムロック位置に位置されるようになっている。このとき、ロックバー103の一端のロックカム101のカム部105のカム面105bとの係合が解除されている(図14参照。)。つまり、基枠2を固定すると、扉3のロックを解除できるようになっている。この状態で、保持部材9を係合位置から解除位置に回転させると、この回転にともなってロックカム101も回転してロックカム101が第1ロック位置から第2ロック位置に移動する。なお、図14のCで示す図はこの保持部材9の回転の途中の状態を示す図である。ロックカム101が第1ロック位置から第2ロック位置に移動したとき、ロックカム101のカム部105の第2面105cにロックバー103の一端面が近接した状態で対向しているので、この第2面105cに一端面が当接してもリンクカム102のカム部106の第2面106bが圧接バー83の係合片86の下面に接した係合状態が解除されず、圧接バー83がロック状態に保持されるようになっている(図15参照。)。つまり、扉3の開閉を行えるとき(保持部材9により扉3の吊り下げ支持が行われていないとき)には、基枠2が固定された状態にロックされて基枠2の固定を解除できないようになっている。この状態から保持部材9を解除位置から係合位置に回転させることで、圧接バー83を固定位置から退避位置に移動させることが可能となる。
【0061】
係合フック104は、当接座109の近傍で当接座109よりリンクカム102側の横枠体21内に設けられている。係合フック104は、上下方向に延びた基部104aの上端が当接座109側に直交する側に曲がって先端が当接座109の接触片109bに当接し得る当接部104bとして形成され、かつ、基部104aの下端が当接座109側に下方が傾斜された直角三角形状に突出した係合部104cとして形成された略コ字状に形成されている。係合フック104の基部104aの中央部より上方側が回転軸104dを介して横枠体21に回転可能に取り付けられている。係合フック104は、当接部104bと係合部104cとの間の長さが保持部材9の下端面の段部96を除いた保持部材9の幅方向の長さより長い寸法で形成されてなる。
【0062】
これにより、ロックバー103がリンクカム102ロック位置に位置されているときに付勢バネ107が当接されている側とは反対側の当接座109の接触片109bが当接部104bに当接し、この状態で保持部材9が係合位置から解除位置に回転すると、回転の途中で保持部材9の段部96が設けられていない下方の角部が係合部104cに接触して係合フック104を当接部104bの付勢力に抗して回転軸104dを軸に回転させ、図示例では反時計回りに回転させ、保持部材9の段部96を除いた下端が係合部104cより上方に至って保持部材9が解除位置になると、付勢バネ107の付勢力によって係合フック104が逆方向に回転して係合部104cが保持部材9の段部96を形成する面に係合して保持部材9が解除位置にロックされるようになっている。また、保持部材9を解除位置にロックした状態から保持部材9を解除位置から解除される方向で付勢バネ107の付勢力より大きな力を作用させると、保持部材9が回転してかつ係合フック104も回転して係合フック104による係合が解除されて、保持部材9が係合位置に至るようになっている。すなわち、係合フック104は、保持部材9を解除位置にロックするロック位置と保持部材9の係合を解除する解除位置との間で回転可能に設けられている。
【0063】
さて、この扉付移動壁1は、移動壁15つまり扉3が付いていない移動壁15と同じように、幅方向の両側近傍の上端にそれぞれ吊車装置11の連結部11aが取り付けられ、手動で2つの吊車装置11とともにレール12に沿って所定の箇所に移動させることができる。よって、複数の移動壁15で仕切る際に所定の位置に扉付移動壁1を移動させ、移動後、操作治具を操作穴284に嵌合させて挿入し、この操作穴284を縦枠体22に対して回転させて圧接バー83を縦枠体22から伸ばしてレール12に係合させるとともに移動バー82を縦枠体22から下方に伸ばして床19に係合させて基枠2を固定する。これにより、扉付移動壁1が所定の位置に固定された状態で設置され(図1参照)、扉3の開閉時には、扉3ががたつくことがなく扉3の開閉を行える。扉3は、基枠2の横枠体21及び受け部23に第1回転軸4と第2回転軸5を介して回転可能に取り付けられているので、扉3を開けるときには、手前側にも奥側にも両方向に扉3を回転させることができる。また、ドアクローザー20を扉3の上フレーム31と横枠体21との間に設けることにより、扉3は開かれた後に自動的に閉じられる。
【0064】
扉3を基枠2に回転可能に取り付けるための第1回転軸4は、扉3の上端に取り付けられ、その第1回転軸4の上部が横枠体21内で回転可能に吊り下げ支持されている。第2回転軸5は、受け部23に取り付けられ、かつ、扉3に回転可能に支持されている。このように、扉3は、第1回転軸4に吊り下げ支持されながら第1回転軸4及び第2回転軸5を介して回転可能に基枠2に取り付けられている。また、基枠2の横枠体21には、扉3を解除可能に吊り下げ支持して閉状態に保持する保持部材9が設けられている。この保持部材9は、連動機構10によって固定機構8と連動されている。このため、扉付移動壁1の安全性が高くなる。
【0065】
すなわち、扉付移動壁1の移動を行うときには、基枠2の固定を解除した状態であり、この状態は、保持部材9で扉3が吊り下げ支持されて閉状態に保持されているときで、このとき扉3が閉状態にロックされている。具体的には、扉付移動壁1の移動を行うときには、保持部材9を支持ピン90に係合させて扉3を保持部材9によって吊り下げ支持させつつ扉3の開閉が行われないように扉3をロックし、かつ、固定機構8による基枠2の固定を解除する、つまり、圧接バー83及び移動バー82を退避位置に位置させる。この状態のときのみ、扉付移動壁1の移動を行える。このとき、圧接バー83が退避位置に位置されて圧接バー83の係合片86の先端面にリンクカム102のカム部106の第1面106aが接しているので、ロックバー103の一端がロックカム101のカム部105のカム面105bに係合している。このため、圧接バー83を固定位置に位置させるつまり基枠2を固定しない限りは、保持部材9を回転させることができず扉3がロックされたままで扉3を開閉することができない(図13参照。)。よって、扉3が開くことなく安全に扉付移動壁1の移動を行える。このとき、圧接バー83は、付勢バネ387の付勢力によって退避位置に保持されることから、扉付移動壁1を移動中に圧接バー83が動くことがないので、より安全に扉付移動壁1の移動を行える。また、扉付移動壁1を収納するときには、移動時と同じ状態で収納することで、扉3が開くことなく安全に扉付移動壁1を収納することができる。
【0066】
また、扉付移動壁1を所定の位置に移動させた後は、操作治具を操作穴284に嵌合させて挿入し、この操作穴284を縦枠体22に対して回転させて圧接バー83を縦枠体22から伸ばしてレール12に係合させるとともに移動バー82を縦枠体22から下方に伸ばして床19に係合させて基枠2を固定する。これにより、扉付移動壁1が所定の位置に固定された状態で設置される。このとき、圧接バー83は、付勢バネ387の付勢力によって固定位置に保持されることから、扉付移動壁1はその位置に確実に固定される。
【0067】
このように、圧接バー83を退避位置から固定位置に移動させるつまり基枠2を固定すると、圧接バー83は上方に移動して、この移動に伴ってリンクカム102のカム部106が圧接バー83の係合片86に接する箇所が先端面から下面に移動し、かつ、カム部106の係合片86に接する箇所も第1面106aから第2面106bに移動する。すなわち、付勢バネ107の付勢力によってロックバー103が一端から他端側に移動してリンクカムロック位置に位置され、ロックバー103の一端のロックカム101のカム部105のカム面105bとの係合が解除される(図14参照。)。
【0068】
これにより、保持部材9を係合位置から解除位置に回転させることが可能となる、すなわち、扉3のロックを解除することが可能となる。操作レバー92の係合部92aに操作部材を係合させて操作レバー92を回転部材91を軸に保持部材9が解除位置になるように回転させる。すると、保持部材9が回転部材91によって係合位置から解除位置に回転する。この回転にともなってロックカム101も回転してロックカム101が第1ロック位置から第2ロック位置に移動する。このとき、ロックカム101のカム部105の第2面105cにロックバー103の一端面が近接した状態で対向しているので、この第2面105cに一端面が当接してもリンクカム102のカム部106の第2面106bが圧接バー83の係合片86の下面に接した係合状態が解除されず、圧接バー83がロック状態に保持される(図15参照。)。すなわち、基枠2の固定がロックされる。よって、基枠2を固定しないと、扉3の開閉を行えないから、基枠2を固定する動作中に扉3のロックが解除されて扉3が開くことはないので、安全に扉付移動壁1の設置を行えることになる。また、基枠2を固定する動作を行ったが、基枠2の固定を行えなかったときに扉3が開くこともない。さらに、扉3の開閉を行うときには、必ず基枠2が固定されているので、基枠2が動くことなく安全に扉3の開閉を行える。また、保持部材9が解除位置に位置されると、付勢バネ107の付勢力によって係合フック104を介して保持部材9が解除位置にロックされるので、より安全に扉3の開閉を行える。
【0069】
また、扉3の開閉を行えるとき、すなわち、保持部材9により扉3の吊り下げ支持が行われていないときには、基枠2が固定された状態にロックされて基枠2の固定を解除できない。このため、扉3の開閉を行うときに基枠2の固定が誤って解除されることがないので、扉3の開閉をより安全に行える。
【0070】
そして、扉付移動壁1を所定の位置に設置した状態のまま、例えば、夜間等で扉3の開閉を行わないときには、操作部材を操作レバー92の係合部92aに係合させて操作レバー92を回転部材91を軸に保持部材9が係合位置になるように回転させる。すると、保持部材9が回転部材91によって解除位置から係合位置に回転して、保持部材9が扉3の支持ピン90に係合して扉3が吊り下げ支持される。これにより、基枠2を固定したまま扉3の開閉を行えないようにすることができる。
【0071】
また、所定の位置に設置した扉付移動壁1を他に移動させるには、保持部材9を解除位置から係合位置に回転させて支持ピン90に係合させ保持部材9でも扉3を吊り下げ支持させる。このように保持部材9が回転すると、ロックカム101が自重で第2ロック位置から第1ロック位置に回転し、かつ、ロックカム101のカム部105の第2面105cがロックバー103の一端面に近接した状態が解除される。この状態は図14に示す状態である。この状態のまま、操作治具を操作穴284に嵌合させて挿入し、この操作穴284を縦枠体22に対して回転させて圧接バー83を縦枠体22に退避させてレール12との係合を解除するとともに移動バー82を縦枠体22に退避させて床19との係合を解除して基枠2の固定を解除する。このように、保持部材9による扉3の係合が解除された状態では基枠2の固定がロックされているから、保持部材9で扉を閉状態に保持しないと、基枠2の固定を解除できないので、基枠2の固定を解除する動作中に扉が開くことはない。よって、安全に基枠2の固定の解除を行えることになる。
【0072】
したがって、本実施形態の扉付移動壁1は、安全性に優れたものである。
【0073】
また、扉付移動壁1の移動時又は収納時には、扉3は、横枠体21つまり基枠2に第1回転軸4と保持部材9の2つの部材により吊り下げ支持されるから、扉3の荷重が第1回転軸4と支持ピン90に分散されるので、扉3の全荷重が第1回転軸4にのみ作用することがない。また、支持ピン90の扉3に対する位置を上下方向に移動すなわち調節することができるので、第1回転軸4にかかる荷重も調節することができる。
【0074】
また、基枠2を固定して扉3の開閉を行うときには、保持部材9による扉3の吊り下げ支持を解除するが、この解除は、連動機構10によって固定機構8の圧接バー83を縦枠体22から伸ばしてレール12に係合させるとともに移動バー82を縦枠体22から下方に伸ばして床19に係合させて基枠2が固定されてからでないと行えない。このため、扉3の開閉時には、第2回転軸5は、床19に係合された縦枠体22の近傍から突出する受け部23に取り付けられているので、第2回転軸5で扉3の荷重の一部が支えられることになり、扉3の全荷重が第1回転軸4にのみ作用することがない。
【0075】
このように、本実施形態の扉付移動壁1は、扉3の全荷重が第1回転軸4にのみ作用することがないので、第1回転軸4が曲がったり縦枠体22が曲がったりすることがなく、扉3を十分に支えることができる。
【0076】
また、連動機構10を、保持部材9を係合位置にロックする第1ロック位置と圧接バー83を固定位置にロックする第2ロック位置との間で回転可能に横枠体21に設けられているロックカム101と、圧接バー83の退避位置から固定位置への移動を許容する第1位置と圧接バー83を固定位置にロックする第2位置との間で回転可能に横枠体21に設けられているリンクカム102と、ロックカム101を第1ロック位置にロックするロックカムロック位置とリンクカム102を第2位置にロックするリンクカムロック位置との間で移動可能に横枠体21に設けられているロックバー103と、保持部材9を解除位置にロックする係合フック104とを有している構成にすることで、簡単な構造で確実に扉付移動壁1の安全性を確保することができる。
【0077】
また、圧接バー83を縦枠体22から伸ばしてレール12に係合させて基枠2の上部を固定する際、圧接バー83の先端部に、圧接バネ180により上方に付勢される圧接プレート84を設け、この圧接プレート84に設けた2つの位置決めピン85をレール12の一対の下辺の下面にそれぞれ取り付けたピン受けプレート14の係合穴14aに挿入させて位置決めを行うので、基枠2の上部を所定の位置に確実に位置決めすることができる。このとき、位置決めピン85の上方に縮径部85aが設けられ、かつ、ピン受けプレート14の係合穴14aがレール12側の開口から圧接プレート84側の開口に向かって漸次拡径された形状に形成されていることで、位置決めピン85の係合穴14aへの挿入を確実に行える。そして、位置決めピン85がピン受けプレート14の係合穴14aに挿入されてから、圧接プレート84がピン受けプレート14に面接触して基枠2の上部が固定される。このとき、圧接プレート84は、圧接バネ180により上方に付勢されているから、レール12が設けられている箇所までの高さに誤差が生じても、圧接バネ180の付勢力によりその誤差を吸収でき、確実に基枠2の上部の固定を行える。
【0078】
また、固定機構8に、方向変換バー382と付勢手段である付勢バネ387とからなる保持機構を設けたことで、退避位置の圧接バー83及び移動バー82をその退避位置にそれぞれ保持でき、かつ、固定位置の圧接バー83及び係合位置の移動バー82をその固定位置及び係合位置にそれぞれ保持できる。また、屈曲状に形成した方向変換バー382を、圧接バー83又は移動バー82が退避位置から固定位置及び係合位置に移動したとき、第2辺382bの先端が円弧状に下方側に移動して方向変換バー382の回転軸の垂直方向の下方の最下位を少し超えたところで停止するように形成することで、圧接バー83及び移動バー82が完全に固定位置及び係合位置になって基枠2が固定された状態にならないと、方向変換バー382が付勢バネ387の付勢力により回転して圧接バー83及び移動バー82が退避位置に移動する。すなわち、基枠2が完全に固定されていない状態では、圧接バー83及び移動バー82が退避位置に戻るので、基枠2の固定状態を容易に把握することができる。
【0079】
また、第1回転軸4の扉3の幅方向に対する位置の調節を行う第1軸調節部6と、第2回転軸5の扉3の幅方向に対する位置の調節を行う第2軸調節部7とを備えたことで、第1回転軸4及び第2回転軸5の位置をそれぞれ調節することができ、基枠2に対する扉3の回転が円滑になるように調節できる。
【0080】
第1軸調節部6を、上フレーム31に扉3の幅方向にスライド可能に設けられる第1スライド部材61と、第1スライド部材61をスライドさせる第1アジャスタ部材である第1調節ネジ63とを含む構成として、第1調節ネジ63を先端が第1スライド部材61との螺合箇所から離れる方向にこの第1スライド部材61に対して回転させることで扉3の上方が第1回転軸4に対して第1幅方向とは反対方向の第2幅方向に移動し、かつ、第1調節ネジ63を先端が第1スライド部材61の螺合箇所に近づく方向にこの第1スライド部材61に対して回転させることで扉3の上方が自重で第1回転軸4に対して第1幅方向に移動するようにしたので、簡単な構造で確実に第1回転軸4の位置の調節を行える。
【0081】
第2軸調節部7を、下フレーム32に扉3の幅方向にスライド可能に設けられる第2スライド部材71と、扉3に固定される第2固定部材72と、第2スライド部材71をスライドさせる第2調節ネジ73とを含む構成として、第2調節ネジ73を先端が第2固定部材72との螺合箇所から離れる方向にこの第2固定部材72に対して回転させることで扉3の下方が前記第2回転軸5に対して第2幅方向に移動し、かつ、第2調節ネジ73を先端が第2固定部材72の螺合箇所に近づく方向にこの第2固定部材72に対して回転させることで扉3の下方が自重で第2回転軸5に対して第1幅方向に移動するようにしたので、簡単な構造で確実に第2回転軸5の位置の調節を行える。
【0082】
第1回転軸4が、吊車装置11の連結部11aが取り付けられる吊車取付部材18が固定される横枠体21の2つの固定箇所の間であって縦枠体22側の固定箇所の近傍に配置されていることで、横枠体21の第1回転軸4を支持する箇所と吊車装置11の連結部11aによって吊り下げ支持される箇所との間が狭いので、扉3の荷重が作用する横枠体21の箇所が狭く、扉3をバランスよく安定して吊り下げ支持することができる。また、保持部材9が、横枠体21の2つの吊車取付部材18の固定箇所の間であって縦枠体22から離れた側の固定箇所の近傍に配置されていることで、横枠体21の保持部材9を支持する箇所と吊車装置11の連結部11aによって吊り下げ支持される箇所との間が狭いので、扉3の荷重が作用する横枠体21の箇所が狭く、扉3を保持部材9によってバランスよく安定して吊り下げ支持することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 扉付移動壁
2 基枠
3 扉
4 第1回転軸
5 第2回転軸
6 第1軸調節部
7 第2軸調節部
8 固定機構
9 保持部材
10 連動機構
11 吊車装置
12 レール
21 横枠体
22 縦枠体
23 受け部
81 上部材
82 移動バー(下部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールを走行する吊車装置に吊り下げ支持される基枠に、扉を回転可能に取り付けた扉付移動壁であって、
前記基枠は、前記吊車装置に吊り下げ支持され水平方向に延びる横枠体と、前記横枠体の一方の端部から下方に延びる縦枠体とを有し、
前記縦枠体に、前記縦枠体の上端から上方に進退可能な上部材、及び前記縦枠体の下端から下方に進退可能な下部材を有し、所定の位置で前記上部材を前記縦枠体から伸ばして前記レールに係合させるとともに前記下部材を前記縦枠体から伸ばして床に係合させて前記基枠を固定しかつ前記上部材及び前記下部材を移動させてその固定を解除する固定機構を設け、
前記横枠体に、前記扉に解除可能に係合して前記扉を閉状態に保持する保持部材を設け、
前記基枠に、前記保持部材で前記扉を閉状態に保持しているとき、前記固定機構による前記基枠の固定とその固定の解除を行え、この基枠の固定が解除されている状態では前記保持部材が前記閉状態にロックされ、かつ、前記固定機構で前記基枠を固定しているとき、前記保持部材による前記扉の閉状態の保持とその扉への係合の解除を行え、この保持部材による扉の係合が解除された状態では前記基枠の固定がロックされる連動機構を設けたことを特徴とする扉付移動壁。
【請求項2】
前記保持部材は、前記扉に係合して前記扉を閉状態に保持する係合位置と前記扉との係合が解除されて前記扉の開閉を行える解除位置との間で移動可能に前記横枠体に設けられ、
前記上部材は、前記横枠体に退避された退避位置と前記横枠体から伸びて前記レールに係合して前記基枠を固定する固定位置との間で上下方向に移動可能に前記横枠体に設けられ、
前記連動機構は、前記保持部材を係合位置にロックする第1ロック位置と前記上部材を固定位置にロックする第2ロック位置との間で回転可能に前記横枠体に設けられかつ前記保持部材が係合位置から解除位置に回転するときにこの保持部材の移動に伴って第1ロック位置から第2ロック位置に回転し前記保持部材が解除位置から係合位置に移動すると自重で第2ロック位置から第1ロック位置に回転するロックカムと、前記上部材の退避位置から固定位置への移動を許容する第1位置と前記上部材を固定位置にロックする第2位置との間で回転可能に前記横枠体に設けられているリンクカムと、一端が前記ロックカムに係合し他端が前記リンクカムに当接して前記ロックカムを第1ロック位置にロックするロックカムロック位置と他端が第2位置に位置された前記リンクカムに当接し一端が前記ロックカムの回転を許容するとともに前記ロックカムが第2ロック位置のときに他端から一端への移動を防止して前記リンクカムを第2位置にロックするリンクカムロック位置との間で移動可能に前記横枠体に一端から他端側に付勢されて設けられているロックバーと、前記保持部材を解除位置にロックするロック位置と前記保持部材の係合を解除する解除位置との間で回転可能に前記横枠体に解除位置からロック位置側に付勢されて設けられている係合フックとを有している請求項1に記載の扉付移動壁。
【請求項3】
前記上部材は、前記縦枠体内で上下方向に移動可能に設けられ上端が前記縦枠体の上端から上方に進退する圧接バーと、前記圧接バーの上端に上下方向に移動可能でその上端から突出する方向に付勢されて設けられた平板状の圧接板と、前記圧接板から前記圧接バーの長手方向に突出して設けられ前記レールの下面に設けられた挿入穴に挿入されて前記圧接板が前記挿入穴が設けられている表面に面接触し前記基枠の上部が固定される位置決めピンとを有し、
前記下部材は、前記縦枠体内で上下方向に移動可能に設けられ下端が前記縦枠体の下端から下方に進退し、下端である先端が前記床に設けられた係合穴に挿入されて係合し前記基枠の下部を固定する係合凸部として形成されている移動バーであり、
前記固定機構は、前記上部材と前記下部材との他に、前記圧接バーと前記移動バーとの間に設けられ前記圧接バー及び前記移動バーをそれぞれ突出方向又は退避方向に連動させて作動させる連動操作部とを備えた請求項1又は2に記載の扉付移動壁。
【請求項4】
前記扉は、矩形平板状に形成され、上下の回転軸を介して前記基枠に回転可能に取り付けられ、
前記基枠は、前記縦枠体の下端から前記横枠体側に突出する受け部を有し、
前記上方の回転軸である第1回転軸は、上部が前記横枠体の前記縦枠側の端部近傍内で回転可能に吊り下げ支持され、下方が横枠体から下方に延び前記扉の上端の一方の角部である第1角部近傍に取り付けられてなり、
前記下方の回転軸である第2回転軸は、前記受け部又は前記扉の下端の前記第1角部側の下角部近傍に取り付けられ、かつ、前記扉の下角部近傍又は前記受け部に回転可能に支持され、
前記保持部材は、前記扉を解除可能に吊り下げ支持する吊部材である請求項1〜3のいずれか1項に記載の扉付移動壁。
【請求項5】
前記保持部材は、一方の端部である基部が回転可能に前記横枠体に設けられ、かつ、他方の端部がこの端部近傍の一方の側部に切り欠きが形成されてフック部として形成されてなり、
前記扉に、前記保持部材のフック部が係合して前記扉が吊り下げ支持される支持ピンを取付位置が調節可能に取り付けた請求項4に記載の扉付移動壁。
【請求項6】
前記第1回転軸の前記扉の幅方向に対する位置の調節を行う第1軸調節部と、前記第2回転軸の前記扉の幅方向に対する位置の調節を行う第2軸調節部とを備えた請求項4又は5に記載の扉付移動壁。
【請求項7】
前記第1軸調節部は、前記扉にこの扉の幅方向にスライド可能に設けられ前記第1回転軸が挿入される第1スライド部材と、前記第1スライド部材に前記扉の第1角部とは反対側の角部である第2角部から前記第1角部への前記扉の第1幅方向に螺合されて先端が前記扉に固定された第1固定部材に当接する第1アジャスタ部材とを有し、第1アジャスタ部材を先端が前記スライド部材との螺合箇所から離れる方向にこの第1スライド部材に対して回転させることで前記扉の上方が前記第1回転軸に対して前記第1幅方向とは反対方向の第2幅方向に移動し、かつ、第1アジャスタ部材を先端が前記第1スライド部材の螺合箇所に近づく方向にこの第1スライド部材に対して回転させることで前記扉の上方が前記第1回転軸に対して前記第1幅方向に移動するように構成され、
前記第2軸調節部は、前記扉にこの扉の幅方向にスライド可能に設けられ前記受け部に固定された前記第2回転軸が回転可能に挿入される軸穴を有している第2スライド部材と、前記扉に固定された第2固定部材に前記第2幅方向に螺合されて先端が前記第2回転軸に当接する第2アジャスタ部材とを有し、第2アジャスタ部材を先端が前記扉の固定部材との螺合箇所から離れる方向にこの固定部材に対して回転させることで前記扉の下方が前記第2回転軸に対して前記第2幅方向に移動し、かつ、第2アジャスタ部材を先端が前記固定部材の螺合箇所に近づく方向にこの固定部材に対して回転させることで前記扉の下方が前記第2回転軸に対して前記第1幅方向に移動するように構成されている請求項6に記載の扉付移動壁。
【請求項8】
前記横枠体の両端部近傍に、前記吊車装置の連結部が取り付けられる吊車取付部材がそれぞれ固定され、前記第1回転軸は、それら吊車取付部材が固定される前記横枠体の固定箇所の間であって前記縦枠体側の固定箇所の近傍に配置されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の扉付移動壁。
【請求項9】
前記吊部材は、前記吊車取付部材が固定される前記横枠体の固定箇所の間であって前記縦枠体から離れた側の固定箇所の近傍に配置されている請求項8に記載の扉付移動壁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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