説明

手すりベルト用洗浄艶出し剤

【課題】 エスカレーター或いは動く歩道等の手すりベルトを洗浄すると同時に艶出し効果を有し、しかもべたつき感のない手すりベルト用洗浄艶出し剤を得る。
【解決手段】 手すりベルトの表面を洗浄するとともに艶出しする手すりベルト用洗浄艶出し剤であて、その主成分が流動パラフィン、テルペノイド、水添ポリイソブテン、ラノリン、植物性油の一つ或いは二つ以上からなり液状界面活性剤で乳化した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーター或いは動く歩道等の手すりベルトを洗浄すると同時に艶出しする手すりベルト用洗浄艶出し剤に関する。
【背景技術】
【0002】
百貨店やホームセンター、公共施設や駅舎など多くの場所に設置されているエスカレーターや動く歩道には、安全上の観点から利用者が掴まるための手すりベルトが設けられている。しかし、これらの手すりベルトは汚れ易く、汚れが著しいと、衛生的観点から掴まろうとする利用者が少なくなり、折角の手すりベルトの機能が発揮されないといったことが懸念される。
【0003】
そこで、手すりベルトの汚れを除去し、美感を取り戻す清掃作業が行われている。従来、手すりベルトの汚れを除去する作業は、洗浄剤として中性洗剤や弱アルカリ性洗剤などの洗剤を用い、これを希釈して洗浄液とし、ウエスに染みこませてベルト表面を押さえ拭きする手法が一般的だった。しかし、中性洗剤や弱アルカリ性洗剤などの洗剤を薄めた洗浄液で拭くだけでは手すりベルトの表面の軽度な汚れは除去できても、その後の表面艶出し効果が得られない。そのため汚れを除去した後で、艶出し剤として市販されているシリコーンエマルジョンを内容とする艶出し剤(例えば、特許文献1参照。)の希釈液で拭き上げて艶出し作業を行っていた。
【特許文献1】特開平11−92797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、手すりベルトの清掃にあっては、中性洗剤や弱アルカリ性洗剤などの洗剤を薄めた洗浄液で拭くだけでは表面の汚れは除去できても、その後の表面艶出し効果が得られないといったことから、汚れを除去した後でシリコーンエマルジョンを内容とする艶出し剤で拭き上げることで表面に薄い皮膜を残して艶出し効果を図っているが、シリコーンのもつべたつき感等でベルトに手を触れることを躊躇することが多く、折角の手すりベルトの十分な効果が得られないといった問題があった。また、前記艶出し剤が固形分をベルト表面に残すタイプであると連続稼働中に密着不良を引き起こした場合に、固形分がベルト表面から剥離し機械上に落下して思わぬ故障の原因となることも予想されるため使用をはばかるといった問題もあった。
【0005】
本発明の目的は、エスカレーター或いは動く歩道等の手すりベルトを洗浄すると同時に艶出し効果を有し、しかもべたつき感のない手すりベルト用洗浄艶出し剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の目的を達成すべく、一般にベルトに使用されるSBR、クロロスルフォン化ポリエチレン、ウレタンなど素材に対して洗浄性及び艶出し効果のある成分を鋭意検討した結果、ある種の液状油が効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は手すりベルトの表面を洗浄するとともに艶出しする手すりベルト用洗浄艶出し剤であて、その主成分が流動パラフィン、テルペノイド、水添ポリイソブテン、ラノリン、植物性油の一つ或いは二つ以上からなり液状界面活性剤で乳化したことを特徴とする。
【0008】
前記流動パラフィンの動粘度は、100以下であることが好ましい。また、前記テルペノイドは液状であってモノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン及びその混合物或いは水素添加物及びその混合物であることが好ましい。また、前記水添ポリイソブテンの動粘度は、30以下であることが好ましい。また、前記ラノリンは液状ラノリン或いは酢酸液状ラノリンであることが好ましい。また、前記植物性油は中鎖脂肪酸トリグリセリド、或いはホホバ油であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る手すりベルト用洗浄艶出し剤によれば、その主成分となる流動パラフィン、テルペノイド、水添ポリイソブテン、ラノリン、植物性油はべたつき感がなく、手すりベルトにシリコーンエマルジョンでは得られない手触り感及び艶を得ることができた。
【0010】
主成分はベルト上に付着した手あかや機械油を溶解し洗浄効果を発現する。また、乳化剤として使用した液状界面活性剤は泥汚れ等の水溶性汚れに対して洗浄効果を発揮した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る手すりベルト用洗浄艶出し剤の実施の形態を説明する。
本発明に係る手すりベルト用コーティング剤は、流動パラフィン、テルペノイド、水添ポリイソブテン、ラノリン、植物性油の一つ或いは二つ以上を主成分としている。
【0012】
前記流動パラフィンは、その動粘度(SUS・37.8℃)が100以下であることが好ましい。100以上であると、仕上がり表面が不均一になり易くまたべたつき感を感じるといった問題が生じることになる。
【0013】
本発明で使用される流動パラフィンとしては、例えば、コスモホワイトP60,同P70(コスモ石油ルブリカンツ株式会社)、ダフニーオイルCP−12N,同15N,同32N,同68N(出光興産株式会社)、スモイルP−55,同P−60,同P−70,同P−85、モレスコバイオレスU−6(村松石油株式会社)、カーネーション、クレアロール(島貿易株式会社)等が挙げられる。
【0014】
また、テルペノイドにあっては、液状であってモノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン及びその混合物或いは水素添加物及びその混合物であることが好ましい。
【0015】
液状のモノテルペンとしてはゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、リモネン、カルボン、ヨノン、ツヨンが、、液状のセキステルペンとしてはファルネソール、ネロリドール、フムレン、カリオフィレン、カジノール、カジネンが、液状のジテルペンとしてはフィトール、アビエチン酸が、液状のトリテルペンとしてはスクアレン等のテルペノイドが挙げられる。
【0016】
そして、前記液状のセスキテルペンの混合物としてはエスターF(日本テルペン化学株式会社)が、また、前記液状のジテルペン又は液状のトリテルペンの混合物の水素添加物としてはYSオイルDX(ヤスハラケミカル株式会社)、日香HC(日本香料薬品株式会社)等が挙げられる。
【0017】
また、前記水添ポリイソブテンにあっては、その動粘度(SUS・37.8℃)が30以下であることが好ましい。30以上であると仕上がり表面が不均一になり易くまたべたつき感を感じるといった問題が生じることになる。
【0018】
水添ポリイソブテンとしてはパールリーム6、同EX(日本油脂)等が挙げられる。
【0019】
また、ラノリンにあっては、液状ラノリン或いは酢酸液状ラノリンであることが好ましい。液状ラノリンとしてはフルイランSP、リキッドメディランウルトラ(クローダ)が、酢酸液状ラノリンとしてはアセランSP(クローダ)が挙げられる。
【0020】
また、植物性油にあっては、中鎖脂肪酸トリグリセリド、或いはホホバ油であることが好ましい。
【0021】
前記した成分の一つ或いは二つ以上の組合せからなる主成分(油)に対して、液状の界面活性剤を使用して乳化し水分散物とする。
【0022】
使用する界面活性剤のイオン性に関して、特に制限は無いが乳化力、洗浄力を考慮すると非イオン性界面活性剤がより好ましい。但し、環境側面からフェニル基を含有しない界面活性剤の使用が更に好ましい。
【0023】
以上のようにして得られた主成分の乳化物に、必要に応じて防腐防ばい剤、酸化防止剤等を添加する。
【0024】
ここで、防腐防ばい剤としては、例えばハロアリルスルホン系の1−[(ジヨードメチル)スルホニル]−4−メチルベンゼン、ヨードプロパギル系の3−ヨード−2プロパギルブチルカーバメート、N−ハロアルキルチオ系のN,N−ジメチルN’−(フルオロジメチルチオ)−N’−フェニルスルファニド、ベンツチアゾール系の2−(4−チアゾリル)ベンツチアゾール、ニトチリル系の2,3,5,6−テトラクロルイソフタロニトリル、ピリジン系のテトラクロル−4−メチルスルホニルピリジン、8−オキシキノリン系の8−オキシキノリン銅、ベンゾチアゾリン系の2−(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、イソチアゾリン系の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン,2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、フェノール系のp−クロル−m−クレゾール、第4アンモニウム塩系のテトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリアジン及びチアジアジン系のヘキサヒドロ−1,3,5−トリエチル−s−トリアジン、3,5−ジメチル−テトラヒドロ−1,3,5,2H−チアジジアン−2−チオン、アニリド系の3,4,5−トリブロムサリチルアニリド、アダマンタン系の1−(3−クロルアリル)−3,5,7−トリアゾニアアダマンタンクロリド、ジチオカーバイト系のテトラメチルチウラムジスルフィド、無機塩系のメタホウ酸バリウム、ブロム化インダノン系の2,2’−ジブロム−1−インダノン、ベンジルブロムアセテート等及び天然系抗菌剤或いは食品添加物或いは化粧品等に使用される原料を使用することができる。
【0025】
酸化防止剤としては、プラスチック用フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤も使用することができるが、人の手が触れるベルト表面であることを考慮するとエリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、オルソトリビグマイト、ジブチルヒドロキシトルエン、チオブチルプロピオン酸シラウリル、天然ビタミンE,dl−α−トコフェロール、d−σトコフェロール、パラヒドロキシアニソール、フィチン酸、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸オクチル、没食子酸プロピルなど化粧品或いは食品添加物に用いられるものがより好ましい。
【実施例】
【0026】
次に、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明に係る手すりベルト用洗浄艶出し剤の特徴について例証する。但し、本発明はこれらの実施例及び比較例によって何ら制限されるものではない。
【0027】
実施例1〜6及び比較例1〜3
表1(実施例)、表2(比較例)に示す組成を有する手すりベルト用洗浄艶出し剤を調製し、手すりベルトの表面の洗浄艶出しを行った後、手すりベルトの洗浄性、光沢性、触感性の試験を行い評価した。
表中の数字は手すりベルト用洗浄艶出し剤の成分の重量%を示す。
【表1】

【表2】

【0028】
注1 アセランSP(液体):クローダジャパン(株)製
注2 フルイランSP(液体):クローダジャパン(株)製
注3 エスターF(液体):日本テルペン化学(株)製
注4 モレスコバイオレス U−6(液体):村松石油(株)製
注5 スーパースクワレン(液体):新日石トレーディング(株)製
注6 YSオイルDX(液体):ヤスハラケミカル(株)製
注7 レオドールTW−O120V(液体):花王(株)製
注8 ノニオンOP−80R(液体):日本油脂(株)製
注9 エマルゲン105(液体):花王(株)製
注10 エマルゲン408(液体):花王(株)製
注11 カルナバ1号(液体):ブラジル産
注12 P2003(液体):旭化成ワッカーシリコーン(株)製
注13 ルナックOP(液体):花王(株)製
注14 モルホリン(液体):日本乳化剤(株)製
注15 レオドールTW−S320V(固体):花王(株)製
注16 ビオサイド800S(液体):タイショーテクノス(株)製
(試験項目の評価方法)
[洗浄性試験]
上記実施例及び比較例で配合した液を、綿製の布に含浸させ堅く絞った状態で汚染したハイパロンベルト上を拭きあげた。往復5回拭きした後、表面の明度(L値)を色彩色差計で測定し、綿製布の明度:89と、ハイパロンベルト上を拭きあげた綿製布の明度を比較した。試験結果を表3に示す。
【表3】

【0029】
汚れを除去した綿製布は明度が落ちるので、低い値が洗浄性が優れる。
[光沢試験]
同上で拭きあげ前後のハイパロンベルト表面の60°光沢値の変化を比較した。試験結果を表4に示す。
【表4】

【0030】
[触感試験]
配合した液を、綿製布に含浸させ堅く絞った状態で洗浄済みのハイパロンベルトを拭きあげ乾燥後にべたつき感を指感で評価した。試験結果を表5に示す。
【表5】

【0031】
表5中、「1」はややべたつく、「2」はどちらともいえない、「3」はややサラサラ、「4」はサラサラ感を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手すりベルトの表面を洗浄するとともに艶出しする手すりベルト用洗浄艶出し剤であて、その主成分が流動パラフィン、テルペノイド、水添ポリイソブテン、ラノリン、植物性油の一つ或いは二つ以上からなり液状界面活性剤で乳化したことを特徴とする手すりベルト用洗浄艶出し剤。
【請求項2】
前記流動パラフィンの動粘度は、100以下であることを特徴とする請求項1に記載の手すりベルト用洗浄艶出し剤。
【請求項3】
前記テルペノイドは液状であってモノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン及びその混合物或いは水素添加物及びその混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の手すりベルト用洗浄艶出し剤。
【請求項4】
前記水添ポリイソブテンの動粘度は、30以下であることを特徴とする請求項1,2または3に記載の手すりベルト用洗浄艶出し剤。
【請求項5】
前記ラノリンは液状ラノリン或いは酢酸液状ラノリンであることを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の手すりベルト用洗浄艶出し剤。
【請求項6】
前記植物性油は中鎖脂肪酸トリグリセリド、或いはホホバ油であることを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載の手すりベルト用洗浄艶出し剤。

【公開番号】特開2009−13375(P2009−13375A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179981(P2007−179981)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(390039712)株式会社リンレイ (18)
【Fターム(参考)】