説明

手のひら作動式薬物送達装置

薬物などの薬剤の非経口的な送達のための装置が開示される。この装置は上部及び下部ハウジングを有し、上部ハウジングは、薬物が投与される速度を装置のユーザーが制御できるようにするため、外力の適用の結果として、下部ハウジングに対して移動するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法第119条及び/又は第120条の定めにより、先に出願された米国仮出願第61/361983号(2010年7月7日出願)及び同第61/252378号(2009年10月16日出願)に対する優先権の利益を主張するものであり、これらの仮出願は、すべての内容が参照によって本願に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、広義には、非経口的な薬物送達のための方法及び装置に関する。これらの装置は、薬物送達プロセス完了の確認を伴う手動の薬物送達を支援するものである。これらの装置は、システムの安全性と使いやすさを改善し、可聴又は他の形式のフィードバックをユーザーに提供するものであり、そのフィードバックは、薬物送達が進行中であること、完了したこと、又はそれらの両方を示して、不完全な投薬と薬剤の浪費の一方又は両方を回避すると共に、システムの安全性と使いやすさを改善するものである。
【背景技術】
【0003】
長年にわたり、非経口的な薬物送達のための一般に認められた方法は、注射器と針を使用することによるものであった。注射器は一定量の薬物を収容しており、その薬物は、予備充填された注射器に入れて販売されるか、又は、バイアル若しくは他の容器から注射器に薬物を引き抜くことによって注射器に導入される。注射器は、製造コストが安価であり、設計が簡単で効果的であることから、広く受け入れられてきた。しかしながら、ユーザーにとって、注射器と針は多数の欠点を有している。
【0004】
1つの欠点は、多くの患者が針を恐れるということである。複数回の日常的な注射を必要とするなど、自己治療が必要とされる状況においては、針に対する恐怖、多くの場合に注射に伴う痛み、針と注射器によって薬物を適切に投与するのに必要な器用さ、又は他の類似の要因により、処方された投薬計画に従って患者が薬剤を投与しないこともある。視力、器用さ、又は認知度が十分でない者にとって、針と注射器による自己投与は、必要な薬剤の受容を妨げ得る更なる問題を呈することがある。
【0005】
針と注射器による薬物治療計画に伴う社会的な偏見に加えて、患者にとってだけでなく患者の周りの者にとっても、針と注射器に伴う安全及び廃棄の問題があり、これらの問題は、汚染された針、偶発的な穿刺、相互汚染などの結果として生じ得るものである。しかしながら、これらの欠点にもかかわらず、多数の患者は、注射器内のプランジャが押し下げられるときに針の挿入及び薬物送達の速度を制御し、したがって、この種の薬物注射に伴う痛みと不快感の知覚を抑制する能力があるがために、針と注射器を使用して自身の薬剤を送達するように奨励されている。
【0006】
いくつかの進歩がこの数年間になされ、薬剤の自己投与を容易にするのに役立ってきた。そのような進歩には、痛みを軽減するために先端の幾何学的形状を改善された細い針が挙げられる。針による偶発的な穿刺に関する懸念を最小限にするために、使用前、使用後、又は使用の前後に針を包み込む安全注射器が使用されてきた。針と注射器を用いて正確にかつ安全に薬剤を自己投与するのに必要となる器用さを引き下げるために、注射器の設計におけるエルゴノミクスの改善も同様に促進されてきた。投薬の正確さを改善するために、ペンと類似した形状因子を有する予備充填式の使い捨て装置が開発され、また、針を後退させるか又は針の周りにシールドを配置することによって、針を患者から隠して恐怖と安全の問題を低減するために、自動注入器が使用されてきた。
【0007】
そのような進歩により、針と注射器に基づく薬物送達が改善されてきたが、エルゴノミック設計、ペン、及び自動注入器はすべて、元来の針と注射器の概念との相当な類似性を残しており、したがって、自身の薬剤を自己投与する必要のある患者による支持は限られている。現行のシステムは、一般的な「掴んで刺す」注入技術を示唆する形状因子を用いており、ユーザーは手のひらで装置を握り、作動ボタンの上に親指を置く。
【0008】
現行の自動注入器は、体内への薬物送達の制御を機械的システムに移している。そのようなシステムは、自動注入器の特定の機械的設計に大いに依存するため、患者は、その装置を使用するために特別な訓練を必要とすることがあり、依然として、不正確に投薬するおそれがある。この状況は、週に一度かあるいは更に少ない頻度でしか投与されない非常に高価な薬物を送達する場合に、きわめて問題が多い。
【0009】
現行の自動注入器の典型的な使用方法には、装置が薬剤を送達している間、患者が数秒間、装置を皮膚に当て付けて保持することが含まれる。多くのユーザー、特に高齢者は、腕又は手に疲労を覚え、皮膚に対して装置の圧力を不均一に及ぼすことがあるか、又は、装置を尚早に取り除くことがある。いずれの状況も、不正確な投薬、薬剤の浪費、不快感の増大などを結果として生じ得る。これらの状況のいずれにおいても、伝統的な注射器と針のシステムを含むか又はそのようなシステムから発展した現行の装置及び方法は、処方された投薬計画の有効性を損なう欠点を有している。
【0010】
最後に、健康管理に関連するあらゆる装置又はサービスもそうであるように、治療計画のうちの使用頻度の高い要素の費用が考慮されなければならない。バイアルに薬物を供給し、そのバイアルを使用して、患者の投薬の時又はその前後に、空の注射器に充填することは、最も安価な解決策となり得るが、この解決策は、高価な薬物を浪費又は損失する機会を更に増やすことになる。その薬物が冷凍を要する場合、注射器に充填する前及び充填した後に、冷凍装置から取り出され、冷凍装置に再び挿入されるたびに、その薬物は劣化を生じることがあり、それにより、長期間にわたって送達される一定量の薬物をバイアルが含む場合、予想された薬効が得られないことになり得る。予備充填式の注射器は多くの場合、信頼性と利便性の両方において利点をもたらすが、そのような装置は依然として、先述した固有の欠点を有する。
【0011】
予備充填式の自動注入器などの装置では、その装置は、種々様々な薬剤で使用するように最も一般的に製造されるものであるが、1種類の薬剤に合わせて作られるものではない。そのような装置は、バネを利用して薬物の注入速度を制御する機械的システムに依存するため、粘度の異なる多くの薬物、又は、冷凍を必要とし、温度変化の結果として粘度を相当に変化させる多くの薬物は、自動注入器設計の所定のバネ力では、過度に急速に、又は過度に緩慢に送達され得る。多くの例において、バネ力が過度に低いと、注入装置が体に挿入されている期間が長くなる結果として、薬物送達が不完全となったり、送達が完了する前に装置が取り外されたり、ユーザーに過剰な痛み及び不快感がもたらされたりすることがある。しかしながら、バネ力が過度に高いと、結果として、薬物送達が非常に急速であるがために薬物が劣化することがあり、あるいは、酸性薬物が急速に送達されること、又は皮下若しくは血管内に圧力勾配を誘発することが原因で、注入力の痛みが患者に生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、間欠的な非経口的な薬物送達の分野には、「針恐怖症」を克服し、患者に生じる痛みを軽減し、多くの薬物治療計画の安全性、信頼性、及び有効性を高め得る発展の余地が大いにある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の実施形態の側面図。
【図1B】キャップを取り外した後の図1Aの実施形態の側面図。
【図1C】インターロックボタンを押し下げた後の図1Bの実施形態の側面図。
【図1D】針ガードが後退して針が露出した後の図1Cの実施形態の側面図。
【図2A】薬物注射の間の図1Dの実施形態の側面図。
【図2B】薬物注射の完了時の図2Aの実施形態の側面図。
【図2C】針ガードが延出して針を隠蔽した後の図2Bの実施形態の側面図。
【図3】図1Aの実施形態の分解図。
【図4】図1Aの実施形態の断面図。
【図5】ラッチを示す、図1Aの実施形態の一部分の部分断面図。
【図6】ラッチを示す、図1Aの実施形態の一部分の部分断面図。
【図7】図2Aの実施形態の断面図。
【図8】図2Bの実施形態の断面図。
【図9】図2Cの実施形態の断面図。
【図10A】本発明の別の実施形態の側面図。
【図10B】キャップを取り外した後の図10Aの実施形態の側面図。
【図10C】針ガードが後退して針が露出した後の図10Bの実施形態の側面図。
【図11A】薬物注射の間の図10Cの実施形態の側面図。
【図11B】薬物注射の完了時の図11Aの実施形態の側面図。
【図11C】針ガードが延出して針を隠蔽した後の図11Bの実施形態の側面図。
【図12】図10Aの実施形態の分解図。
【図13A】図10Aの実施形態の下部ハウジングの斜視図。
【図13B】図10Aの実施形態の中部ハウジングの斜視図。
【図14】図10Aの実施形態の上部及び中部ハウジングの一部分の部分断面図。
【図15】図10Aの実施形態のラッチ止め機構を示す図。
【図16】図10Aの実施形態の別のラッチ止め機構を示す図。
【図17A】図10Aの実施形態の一部分の断面図。
【図17B】図10Aの実施形態の下部ハウジングの一部分の斜視図。
【図18】図10Aの装置の断面図。
【図19】本発明の更なる別の実施形態の分解側面図。
【図20】使用前の本発明の更なる別の実施形態の側断面図。
【図21A】図10Aの実施形態の別の設計の下部ハウジングの斜視図。
【図21B】図10Aの下部ハウジングの別の実施形態の斜視図。
【図21C】図21Bの下部ハウジングの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は、図面を参照して読まれるべきであり、図面において、異なる図面における同様の要素は、同様の符号が付けられている。図面は、必ずしも一定の比率ではないが、単に説明の目的で例示的な実施形態を示しており、また本発明の範囲を限定することを意図したものではない。詳細な説明は、本発明の原理を、限定するのではなく、一例として表すものである。
【0015】
本発明は薬物送達装置、及びその使用方法であり、この装置は、従来の注射器と針並びに自動注入型の装置の限界及び欠点のうちの多くを克服するものである。従来の装置の欠点及び限界を克服するために、また当該技術分野における満たされていない要求に対処するために、ここで開示する装置及び方法の実施形態は、ユーザーが針を見ることがなく、針に触れるおそれもなく、針恐怖症及び針感染の可能性を低減するように構成された装置を含む。これは、薬物送達後の針の自動遮蔽を含む。
【0016】
この装置の実施形態は、片手での操作を可能にし、好都合にも、脚、腕、又は腹などの別の部位の注射を可能にする、人間工学的な形状因子を有する。感圧作動を含む実施形態において、針ガードラッチが針の移動を阻止する。このようにして、この装置は、針が注射部位に対して押圧されていない場合には針を露出させない安全機構を含む。
【0017】
図1A〜1Dには、本発明の装置の一実施形態が示されており、この実施形態は、使用に先立って薬物を視認するための窓104を含む。装置の薬物が消費されたか否かをユーザーに視覚的に示すため、装置が使用された後に、着色された指示部がその窓に現れてもよい。更に、薬物が送達された後、安全性が向上し、偶発的な針穿刺の可能性が低減される。
【0018】
薬物送達の状態、及び薬物送達が完了したか否かをユーザーが認識できるようにするために、本発明のこの実施形態は、図4及び7に示す爪117及びラチェット116で示すものなどの爪とラチェットを含んでおり、この爪とラチェットは、注入が完了すると、可聴クリック音を1回又は複数回発生させるように係合する。そのような機構は、薬用量が送達されており、装置を皮膚から取り除いてよいことをユーザーに合図して、注射部位から装置が尚早に引き抜かれることを防止する。したがって、従来の自動注入器では、すべての薬用量が投与されたことを確認するためにユーザーが数秒間待つことが必要となり得るが、これとは異なり、送達プロセス全体にわたってユーザーが能動的に関与することとなる。
【0019】
より良好なフィードバックをユーザーに提供するために、開示する爪とラチェットのシステムはまた、送達の間に装置の可聴クリック音と運動を与えて、注射が進行していることを示す。更に別の実施形態において、送達の最後により大きなクリック音が単独で、又は視覚的な指示器と共に、送達が完了したことを確認するフィードバックを1回、与える。
【0020】
更に、注射器を連想させユーザーにとって不快である従来の針安全装置及び自動注入器とは異なり、本発明は、親しみやすく威圧的でないデザイン及び操作方法を有する。加えて、従来の自動挿入器とは異なり、以下に説明するように、針の挿入及び薬物の注射をユーザーが制御する。
【0021】
図1〜9に、本発明の例示的な装置が示されている。図1A〜1Dには、薬物の注射に至る様々な段階における装置の実施形態が示されており、図2A〜2Cには、薬物の注射の間及び注射後の実施形態が示されている。図1Aは、ユーザーが受け取り得るときの、使用前の構成にある装置100を示している。この弛緩状態において、上部ハウジング101は、下部ハウジング102の近位又は最上方部分の上に部分的に重なっている。装置の様々な実施形態についての説明において、近位という用語は、装置の底部表面に関連して用いられる。例えば、図1Bにおいて、近位は、装置100の底部表面又は底部131に関連して用いられている。
【0022】
図示のように、外部から視認可能な装置の特徴には、上部ハウジング101と、下部ハウジング102と、キャップ103と、窓104と、インターロックボタン105と、グリップリング106と、上部ハウジング101の底縁部111と、薬用量指示部107とが含まれる。図3は、本発明のこの実施形態の構成要素の分解図である。
【0023】
装置を使用する際の準備工程は、図1Bに示すように、下部ハウジング102に取り外し可能に装着されるキャップ103を取り外すことである。キャップ103を取り外すと、同時に針シールド113が取り外され、針ガード108が露出する。窓104及び針ガードスロット109は、それぞれ好ましくは装置の両側に存在するものであり、内部に収容された注射器118とその薬物含量をユーザーが視認及び点検することを可能にする。
【0024】
使用の際、フロア設置型の自動車ギアシフトを把持する方法と同様に、装置は、上部ハウジング101の頂部に手のひらを置くことによって把持される。グリップリング106は、装置を把持する方法に関する視覚的な手掛かりをユーザーに与える。一実施形態において、グリップリング106は、滑らない快適なグリップ表面を設けるために、カバーされるか、コーティングされるか、あるいは好適なエラストマー材料で作製され、そのエラストマー材料には、限定するものではないが、ネオプレンゴム、ウレタン、ポリウレタン、シリコーン、天然ゴム、熱可塑性エラストマー(「TPE」)、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
ユーザーは、グリップリング106及びインターロックボタン105に手のひらで下向きの圧力を加えることによって、所望の注射箇所、典型的には大腿の上部若しくは側部、腹部、又は上腕の側部若しくは後部で身体に対し装置を押圧する。手のひらでインターロックボタン105に圧力を加えると、インターロックボタン105は、図1Cに示すように、下向きに撓曲することになり、次に、図5に示す針ガードラッチ124がラッチ解除されて、針ガード108が上向きにスライドし、針110が露出する(いくつかの装置構成要素が説明の目的で図5から除かれていることに留意されたい)。針ガードラッチ124は、上部ハウジングスリーブ120の遠位端部の一部分と一体に形成されている。上部ハウジングスリーブ120は中空円筒であり、その円筒の一部分は上部ハウジング101内にあり、またその一部分は、装置が弛緩状態にあるとき、下部ハウジング102内にある。上部ハウジングスリーブ120は、以下でより詳細に説明するように、上部ハウジング101に固定的に装着され、ラッチ止め機能を果たし、下部ハウジング102に付勢要素119を閉じ込めるように作用する。
【0026】
針ガードラッチ124は、その最上方端部に、装置の長手中心軸A−A’を基準として内向きの傾斜表面127と、ストップ130とを含む。針ガードラッチ124をラッチ解除するために、インターロックボタン延長部123の遠位端部を形成する、表面127と相補的な外向きの傾斜表面128が、針ガードラッチ124上の傾斜表面127と係合する。表面127と128との係合により、針ガードラッチ124は中心軸に対して外向きに撓曲することになり、ストップ130は、針ガード108の上方移動を阻止することから解かれる。ラッチ止め機構と針ガード108は好ましくは、インターロックボタン105が完全に押し下げられない限り、針ガード108の上方移動が防止されるように構成される。これにより、他の表面との接触を原因とする汚染及び損傷から針が保護され、偶発的な針穿刺からユーザーが保護され、針が見えないように遮蔽される。
【0027】
ユーザーが、上部ハウジング101を下向きに押し続けると、針ガード108は、上向きに移動して針110を露出させユーザーの皮膚に侵入させ、下部ハウジング102の底部表面131が皮膚に対して実質的に面一となったときに停止する。針ガード108がストップ130を通り過ぎると、ユーザーは、残りの注射工程に影響を及ぼすことなく、インターロックボタン105を解放することができ、また解放しないように選択することもできる。インターロックボタン105が解放されると、弾性部材121がインターロックボタン105を上方位置に戻す。移動ガイド132は、インターロックボタンが直線的に上下移動するように作用する。
【0028】
本明細書で説明する針挿入プロセスでは、ユーザーが挿入を制御する。この特徴により、ユーザーは、インシュリン依存性糖尿病患者にしばしば利用される一般的な方法を活用することが可能となる。つまり、針を皮膚に接触させ、皮膚に穿刺することなくそこで保持された場合、数秒後、ユーザーは針の存在を感じなくなり、この時点で、針に加えられる圧力を増加させることによって、痛みを伴うことなく針を挿入することができる。
【0029】
針110がユーザーに挿入された後、注射プロセスは通常、図2A〜2Cに示すように開始される。図6を参照すると、下部ハウジング102の一部であるハウジングラッチ122が、拡大詳細図で示されており、装置の使用前の状態において上部ハウジング101が下部ハウジング102に対して移動するのを防止している(いくつかの装置構成要素が説明の目的で図6から除かれていることに留意されたい)。針ガード108が上方移動を完了すると、針ガード108上の傾斜表面133が、ハウジングラッチ122の端部を形成する表面134の傾斜部分と接触して、ハウジングラッチ122が内向きに撓曲し、したがって、上部ハウジング101及び上部ハウリングスリーブ120が下向きに移動することが可能となる。
【0030】
針110を身体に挿入した後、ユーザーは上部ハウジング101に対する圧力を維持する。図3、4、7及び8に示すように、プランジャロッド115がプランジャ112を押圧する。プランジャロッド115は上部ハウジング101に固定的に連結され、注射器118が、下部ハウジング102の中に形成された円筒に固定されるか、あるいはその円筒内に保持される。したがって、上部ハウジング101が下部ハウジングに対して下向きに移動して下部ハウジング102に被さるとき、注射器118内でプランジャロッド115及びプランジャ112が下向きに移動することによって、注射器110の内部の薬物が、針110を通じて患者へと送達される。
【0031】
ハウジングラッチ122が解除された後、最上方端部で上部ハウジング101に固定的に装着される上部ハウジングスリーブ120に下向きの力を及ぼすことによって、上部ハウジングスリーブ120の遠位端部を囲む付勢要素119が緊張状態を解かれて上部ハウジング101に下向きの力を加える。付勢要素119はまた、結果として薬物の注入をもたらす更に必要な力をユーザーが与えながら、プランジャロッド115及びプランジャ112の前進を支援するエネルギーを与えるために使用されてもよく、あるいは、付勢要素119によって供給されるエネルギーは、単にプランジャロッド15及びプランジャ112を前進させるのに十分なものであってもよい。本発明の別の実施形態において、付勢要素119は、ユーザーが必要とする更なる力の入力を伴うことなく、薬物を注射するのに十分な力を与え、したがって、針は手動で挿入され、薬物は自動で注入される注入装置が提供される。付勢要素は、所望の程度で上部ハウジングスリーブ120に下向きの力を及ぼすことが可能な任意の構成要素であってよく、また、限定するものではないが、バネ、圧縮ガスアクチュエータ、油圧駆動器、ワックスアクチュエータ、電気化学アクチュエータ、形状記憶合金、及び同様のもの、並びにそれらの組み合わせであってもよい。図1〜9に示す実施形態において、ユーザーは、上部ハウジング101を下向きに押し付けることによって、プランジャロッド115及びプランジャ112を前進させるのに必要な付加的な力を与える。したがって、ハンドルを回転させるために運転手が必要とする力を自動車のパワーステアリングが低減するのと類似した方式で、薬物を注射するためにユーザーが必要とする力が低減される。従来の自動注入器とは異なり、ユーザーは、注射に必要な力に寄与し、本発明は、薬物の注射速度をユーザーに制御させる。
【0032】
図4及び7を参照すると、本発明の実施形態の断面図が示されており、これらの実施形態はそれぞれ、薬物の送達が開始される前及び開始された後のものである。薬物が送達されているとき、上部ハウジングスリーブ120に装着された爪117が、下部ハウジング102に装着されたラチェット116に沿って移動する。爪117及びラチェット116は、少なくとも次の2つの機能を果たし得るものである。第1に、上部ハウジング101と下部ハウジング102とを引き離すことによって、上部ハウジング101が下部ハウジング102から分離することが防止される。第2に、爪117がラチェット116に沿って移動することにより、静かなクリック音が発生し、上部ハウジング101が移動しており薬物が送達されているというフィードバックがユーザーに与えられる。加えて、図8に示すように、上部ハウジング101の移動の最後に、爪117は、ラチェット116のより深い凹部に係合するように構成されてもよく、それによって、移動が最後に達し薬物が完全に送達されたという可聴合図をユーザーに与えることができる、より大きなクリック音を発生させ、更に、上部ハウジング101を定位置に固定して装置の再設定又は再使用を防止する。
【0033】
図2B及び8を参照すると、薬物が完全に注入されており、上部ハウジング101が移動の最後に達しているとき、上部ハウジング101の底縁部111が薬用量指示部107をカバーする。薬用量指示部107は、下部ハウジング102の遠位部分にある環状の着色リングである。これにより、薬物送達が完了したという視覚的な手掛かりがユーザーに与えられる。
【0034】
使用に先立って、患者は窓104を通じて薬物を視認して、透明性及び粒子性について薬物を点検することができる。使用後、プランジャ112は窓104において視認されることができ、装置が使用されたことが示される。別法として、窓は、注射が完了した後にプランジャロッド115もまた視認可能となるように設計され得る。プランジャ112及びプランジャロッド115は、装置が使用されたことを患者に明確に示すために、明るく着色されてもよい。
【0035】
図2C及び9を参照すると、注射の完了後、ユーザーは装置100を皮膚から取り除き、針ガード復帰要素114は針ガード108を延出させて針110に被せ、偶発的な針穿刺からユーザー及び他者を保護している。針ガード復帰要素は、限定するものではないが、バネ、圧縮ガスアクチュエータ、油圧駆動器、ワックスアクチュエータ、電気化学アクチュエータ、形状記憶合金、及び同様のもの、並びにそれらの組み合わせを含めて、針ガード108を延出させて針110に被せることが可能な任意の要素であってよい。針ガード108が完全に延出すると、針ガードロック125が針ガード108内のスロットに係合し、針ガード108が後退することを防止する。針ガードロック125は、上部ハウジングスリーブ120の内部表面から内向きに延在する片持ちラッチである。下部ハウジング102の一部である下部ハウジングリブ126は、スロットを閉鎖することによって、送達の間に針ガードロック125が針ガード108内のスロットに尚早に係合することを防止するように構成されてもよい。本発明の別の実施形態において、装置の再使用又は共用を防止するために、送達が完了する前に装置100が取り除かれた場合に、針ガード108が延出し定位置にロックしてもよい。
【0036】
本発明がもたらす補助送達手法では、送達プロセス全体にわたってユーザーが能動的に関与する。これは、従来の自動挿入器の作動プロセスとは区別されるものであり、従来の作動プロセスでは、ボタンを押下した後、ユーザーは、時には注射が進行中であるか否かを疑問に思いながら、数秒間、薬物が送達されるまで受動的に待機する。
【0037】
本発明の補助作動手法は、上部ハウジング101に加えられる力を変化させることによってユーザーが送達速度を制御するため、異なる薬物を送達するための注入装置の修正に伴う開発時間及び費用を低減するという更なる利点を有する。プランジャがわずかに詰まった場合、ユーザーはもう少し強い力を加えることができ、これは、最悪の状況の要件に合わせて設計されなければならない従来の自動注入器とは異なるものであり、その最悪の状況も、機構内の薬物、カートリッジ、プランジャ、針、及び摩擦によって異なる。
【0038】
別の実施形態において、インターロックボタン105及びインターロックバネ121は設計から除かれ得る。この実施形態において、上部ハウジング101は、ストップに衝突するまで下向きに自在に移動する。この移動は、上述のインターロック機構と類似した機構を使用して針ガード108をロック解除し、針ガード108を後退させるために利用される。針ガード108が完全に後退すると、針ガード108は別のラッチを解除してもよく、そのラッチによって、上部ハウジング101は、下向きの移動を停止し、上述したものと類似した方式で薬物を注射する。
【0039】
図10〜18に、本発明の更に別の実施形態が示されている。図10Aに装置200が示されており、装置200は、上部ハウジング205と、下部ハウジング202と、それらの間の中部ハウジング201とを有している。上部ハウジング205は、グリップキャップ228を含む。この弛緩状態において、上部ハウジング205は、中部ハウジング201の近位部分の上に部分的に重なっている。中部ハウジング201の最遠位部分は、下部ハウジング202内に固定的に据え付けられている。また図10Aには、上部ハウジング底縁部211、移動リッジ216、及び窓204が示されている。窓204は好ましくは、下部ハウジング202の近位部分内に据え付けられている。不図示の第2の窓が好ましくは、装置上の窓204の反対側に存在する。
【0040】
キャップ203は、下部ハウジング202に取り外し可能に装着されるものであり、図10Bにおいては、針シールド213、針シールドクランプ217、及び針ガード208が露出するように、装置200から取り外されて示されている。キャップ203を取り外す間、針シールドクランプ217が、針シールド213を把持すると同時に針シールド213を取り外し、針ガード208がユーザーに対して露出する。装置のユーザーが針ガード208を皮膚に押し付けると、この動作によって針ガード208が上向きにスライドし、図10Cに示すように、針210が露出する。
【0041】
図12は、装置200の分解図である。グリップキャップ228は、上部ハウジング205にグリップキャップ228を固定的に留め付けるグリップキャップ組立ピン230を含む。組立ピン230は、上部ハウジング205の穴242と嵌合する。好ましくは、組立ピン230は、横断面において正方形であり、丸みの付いた隅部が、組立ピン230の隅部と穴242の隅部との干渉表面をなしている。グリップキャップ228の内部表面と一体であり、その内部表面から下向きに延在するガイド233及びプランジャロッド215が示されている。プランジャロッド215は、その遠位端部にダンパー221を含む。また、プランジャ212と針シールド213とを有する注射器218が示されている。
【0042】
好ましい実施形態において、グリップキャップ228の外部表面は、滑りのない柔らかい把持感をユーザーに与えることが可能な材料でコーティング若しくは形成されるか、又はグリップキャップ228の全体がそのような材料で形成される。グリップキャップのコーティング又は形成に好適な材料には、限定するものではないが、ネオプレンゴム、ウレタン、ポリウレタン、シリコーン、天然ゴム、TPE及び類似のもの、並びにそれらの組み合わせなどのエラストマー材料が挙げられる。
【0043】
上部ハウジング205は、クリックラッチ220と、ハンドルリブガイド238と、底縁部211とを含む。クリックラッチ220、並びに本装置で使用される他のラッチには、好ましくは少なくとも2つのラッチが使用され、装置の滑らかな移動及び動作を促進するために、同じラッチが互いに対して対称に配置される。
【0044】
本体207とハンドルガイドスロット239とを有する中部ハウジング201が図12に示されており、ハンドルガイドスロット239は、本体207の近位部分の外部表面上にある。装置が使用されているとき、上部ハウジング205の一体部分であるハンドルリブガイド238は、ハンドルガイドスロット239と係合すると共にハンドルガイドスロット239内でスライドし、薬物送達の間、上部ハウジング205の滑らかで制御された移動を維持する。
【0045】
本体207は、装置が作動されると上部ハウジング205が本体207に被さって下降するため、薬用量指示部として機能することができる。すべての薬用量が送達されると、本体207は、図11Cに示すように上部ハウジング205によって完全に隠蔽される。投薬が進行中であるか又は完了したという、視認容易な視覚的フィードバックをユーザーに与えるために、本体207は好ましくは着色され、より好ましくは明るい色で着色されるか、あるいは模様を付けられる。任意選択により、送達された又は送達されるように残存している薬物の量を視覚的に計るために、目盛りが本体207に含められてもよい。
【0046】
図13を参照すると、中部ハウジング201はまた、グリップラッチ224と、クリックラッチ捕捉スロット236と、針ガードラッチ237とを含む。グリップラッチ224は、力が加えられると内部表面243に向かって外向きに移動が可能となるように、その最遠位部分にて中部ハウジング201の内部表面243に移動可能に装着された概ね矩形の要素である。グリップラッチ224はまた、ストップ表面245と、三角形のストップ244とを含み、三角形のストップ244は、最上方部分の一角から装置の中心に向かって内向きに延在している。使用前の静止した装置の状態において、グリップラッチ224は、ストップ245がグリップキャップ228のガイド233の下方移動に干渉することが原因で、上部ハウジング205が中部ハウジング201に対して移動するのを防止する。
【0047】
図12及び13を参照すると、下部ハウジング202が示されており、下部ハウジング202は、下部ハウジング基部206と、移動リッジの端部216と、窓204と、ハウジングラッチ229と、ガイドスロット227と、注射器保持クリップ235とを有している。キャップ203は、キャップ保持リング234を介して下部ハウジング基部206に取り外し可能に装着される。使用中、下部ハウジング基部206は、ユーザーの皮膚と接触するものであり、したがって好ましくは、グリップキャップ228に使用するのに好適な任意の軟質な柔軟材料で作製されている。
【0048】
窓204は、注射器218の内容物を視認するための開口部を下部ハウジング202内に形成している。窓204は、注射器218の底部がユーザーに視認可能となるように配置されており、ユーザーは、プランジャ212が注射器の底部に向かう移動の最後に達したことを確認することができる。窓204は、好都合な任意の寸法及び形状であってよく、好ましくは、長円形の形状をなし、その長軸が装置及び注射器の長軸と一直線となり、そのため、注射器の所望の長さが露出して視認される。
【0049】
ガイドスロット227は、異なる3つの構成要素、つまり、グリップキャップ228のガイド233と、グリップラッチ解放部231と、針ガード延長部241との位置合わせを維持する。ガイドスロット227は、上部ハウジング202と針ガード208の位置合わせ及び垂直移動、並びにグリップラッチ231の確実なラッチ止め及びラッチ解除を維持することによって、装置の滑らかな作動を確実にする。外向きに延在するハウジングラッチ229は、中部ハウジング201の内部表面243内にある不図示の凹部に係合することによって、中部ハウジング201を下部ハウジング202に留め付ける。この装置の再使用不能な実施形態において、ラッチ229及び凹部の形状は、中部ハウジングと下部ハウジングが分離され得ないような形状である。再使用可能な実施形態において、凹部及びラッチは、中部ハウジングと下部ハウジングとを引き離すことができるように構成される。
【0050】
図12を参照すると、針ガード208は針ガードスロット209を含み、針ガードスロット209は、一方の側をグリップラッチ解放部231によって、もう一方の側を針ガード延長部241によって形成されている。グリップラッチ解放部231は、傾斜表面240を含む。図14及び15を参照すると、グリップラッチ解放部231の傾斜表面240は、外側に向いており、グリップラッチ231が上方に移動すると、内側に向いたグリップラッチ224の傾斜表面244と係合して、グリップラッチ224を外向きに撓曲させ、ガイド233及び205の下方移動に対する障害を取り除く。
【0051】
針ガードスロット209により、プランジャの下方行程の最後にプランジャが注射器に作用するとき、窓204を利用して注射器及びプランジャを視認することが可能となる。加えて、針ガード復帰部214は、グリップラッチ解放部231と針ガード延長部241によって形成された空間の中の底部に存在する。
【0052】
装置200の独創的な態様は、注射器218が装置の内部で懸架される方式である。図12、13、及び17を参照すると、注射器218が、針シールド213とダンパー221との間で保持されており、針シールド213及びダンパー221はそれぞれ柔軟な構成要素であり、装置200が落下されるかあるいは他の形で誤って取り扱われた場合に、注射器218を保護するようになっている。装置が組み立てられるとき、注射器218は、保持クリップ235によって下部ハウジング202の空洞246内で緩く保持される。装置が使用されているときの、注射器218内にある薬剤の体積に応じて、ダンパー221がプランジャ212に接触するまでに上部ハウジング205が幾分か移動することがあり、この初期の下方移動の間、ダンパー221は空気ピストンとして作用して、プランジャロッド215の端部とプランジャ212との間に形成された間隙内の空気を圧縮し、これにより、移動に対する速度依存性の抵抗がグリップの初期の下方移動に与えられる。ダンパー221が高速で移動する場合、空気は、空気圧力の上昇を低減するほど十分には迅速に脱出することができない。ダンパー221は任意選択により、ダンパー221を通じて空気を漏出させるための、不図示の通り穴を含んでもよい。別の方法として、ダンパーは、圧力上昇を伴わない、ダンパーから生じる摩擦力に基づく抵抗を利用し、その場合、漏れも速度依存性も存在しない。あるいは、これらの組み合わせが利用されてもよい。ダンパー221がプランジャ212と接触すると、ダンパー221は、プランジャロッド215に向かって内向きに圧壊し、ダンパー221と空洞246の内部表面との間の摩擦を低減する。
【0053】
図10及び11を参照すると、ユーザーが装置200を使用することを望むとき、ユーザーは下部ハウジング202からキャップ203を取り外すが、この行為によって同時に、針シールド213が取り外され、針ガード208が露出する。ユーザーは、身体上の所望の注射部位に当て付けて装置200を把持しながら、上部ハウジング205で装置200を握持し、手のひらをグリップキャップ228の上に置き、グリップキャップ228を下向きに押し付けるが、この押し付ける行為によって針ガード208が上向きにスライドして針210が露出する。グリップキャップ228に圧力を加え続けると、結果として、針210は、ユーザーの皮膚及び皮下組織に侵入し、下部ハウジング基部206が皮膚表面に接触したとき又は針ガード208のリム245が下部ハウジング202内における移動の最後に達したときに停止する。
【0054】
図15を参照すると、針ガード208が下部ハウジング202内における上方移動の最後に達したとき、グリップラッチ復帰部231の傾斜表面240が、その反対に面し相補的に傾斜した、中部ハウジング201のグリップラッチ224の表面244に接触し、グリップラッチ224を中部ハウジング201の内壁243に向かって撓曲させる。この動作により、グリップラッチ224のストップ表面245は、グリップキャップ228のガイド233の下方移動を妨げることから解かれて、ガイド233が解放され、上部ハウジング205が下向きに移動して中部ハウジング201に被さる。
【0055】
上部ハウジング205が下向きに移動するとき、グリップキャップ228のプランジャロッド215及びダンパー221が注射器プランジャ212を下向きに押圧すると、注射器218の内部の薬剤が針210を通じて送達される。薬剤送達の最後に、本体207は上部ハウジング205で実質的に完全にカバーされ、上部ハウジング205の底縁部211は、相補的に付形された、下部ハウジング202の移動リッジ216と嵌合する。また、プランジャロッド215、ダンパー221、及びプランジャ212は、窓204内で明確に視認可能である。これらのすべての特徴により、ユーザーは、薬物が送達されたことを視覚的に確認でき、また、底縁部211が移動リッジ216に当接して急停止することにより、ユーザーは触覚で確認することができる。
【0056】
加えて、クリック機構が薬物送達の最後に作動されて、可聴フィードバックが与えられる。図14を参照すると、クリックラッチ220は、その斜面247が中部ハウジング201の頂部に接触し、スライドして頂部を過ぎると、外向きに撓曲する。斜面247が下向きに十分遠方へ移動すると、斜面247はクリックラッチ捕捉スロット236と整列し、斜面247は、中部ハウジング201の近位部分にて壁を貫いて延在する捕捉スロット236の中に滑り込み、中部ハウジング201の本体207の外部表面にスナップ嵌めされてクリック音を生じる。再使用不能型の装置において、クリックラッチ220は、捕捉スロット236によって永久的に捕捉されるものであり、再設定され得ないものである。好ましい実施形態において、装置の作動を滑らかにするために、またクリック止め(clicking)及びラッチ止め機能を向上させるために、2つのクリックラッチ220が、互いに180度反対の位置に配置される。
【0057】
ユーザーが皮膚から装置200を取り除くとき、ユーザーの皮膚に装置200を押し付けることによって圧縮された、図12にバネとして示された針ガード復帰部214が伸張し、針ガード208が下向きに延出して針210に被さり、ユーザーを偶発的な穿刺から保護する。バネに加えて、針ガード復帰部は、圧縮ガスアクチュエータ、油圧駆動器、ワックスアクチュエータ、電気化学アクチュエータ、形状記憶合金、及び類似のもの、並びにそれらの組み合わせであってもよい。針ガード208が完全に延出されると、針ガード保持器232が、下部ハウジング202上にある、図13に示すストップ248と係合し、針ガード208が下部ハウジング202から分離することを防止する。図16に針ガードラッチ237が示されており、針ガードラッチ237は、その遠位端部にて中部ハウジング201の内部表面243に移動可能に装着される。針ガード208が上向きに移動しているとき、針ガードラッチ237が、ガイド233の又は針ガード延長部241の外部表面と接触して外向きに撓曲する。針ガード208が下向きに移動し、延出して針210をカバーすると、針ガードラッチ237が滑って針ガード延長部241の頂部に被さり、針ガード208が再び後退することを防止する。
【0058】
使用に先立って、グリップキャップ228の延長ガイド233が、外向きに撓曲した状態に針ガードラッチ237を保持し、針210の挿入のために針ガード208を後退させる。2つの針ガード保持部232及び針ガードラッチ237が好ましくは使用され、装置200の中心軸の周りに180度離して設置される。薬剤の送達が完了する前に装置200が皮膚から取り除かれた場合、針ガード208が延出して針210をカバーし、装置の再使用を防止するようにロックする。別の再使用可能な実施形態において、薬剤の送達が完了する前に装置200が皮膚から取り除かれた場合、針ガード208が延出するが定位置にロックしない。
【0059】
図19は、装置200の再使用可能な別の実施形態を示すものであり、この実施形態において、上部ハウジング205及び中部ハウジング201は、下部ハウジング202から分離可能である。この実施形態において、ユーザーは中部ハウジングと下部ハウジングとを分離し、下部ハウジングの中に注射器218を挿入し、次いで中部及び上部ハウジングを再び装着する。
【0060】
図20に、装置200の更に別の実施形態が示されており、この実施形態には補助駆動器219が含められている。補助駆動器219は、粘性の薬物を送達する上で最大の実用性が見出され得るものである。この補助駆動器219は、上部ハウジング205と中部ハウジング201との間に力を加えて、上部ハウジングスリーブ120に下向きの力を及ぼす。これにより、薬物を注射するためにユーザーがグリップキャップ228に加えなければならない下向きの力の大きさが低減される。補助駆動器219は、バネ、圧縮アクチュエータ、油圧駆動器、ワックスアクチュエータ、電気化学アクチュエータ、形状記憶合金若しくは同様のもの、又はそれらの組み合わせであってもよい。別の方法として、補助駆動器は、ユーザーが必要とする更なる力の入力を伴わずに、薬物を注射するのに十分な力を与えてもよく、したがって、針が手動で挿入され、薬物が従来の自動注入器と類似した方式で自動で注入される注入装置が提供される。
【0061】
図21に、装置200の下部ハウジング202の別の実施形態が示されており、この実施形態には、再使用可能な装置用の再設定可能なクリック止め機構が含められている。この実施形態において、ガイドスロット227は、クリッカ222のガイド2225と係合する。クリック止め装置222は、針ガード復帰部214によって付勢されている。クリック止め装置222を設定するために、ユーザーは、クリッカラッチ226が延出してクリック止め装置222に被さってクリック止め装置222を押さえ付けるまで、クリッカガイド225の一方を押し下げる。グリップキャップ228が、移動の最後に下向きに移動すると、ガイド233がクリッカラッチ226上の傾斜表面に接触し、クリッカラッチ226を内向きに撓曲させ、針ガード復帰部214の力を受けて上向きに移動するようにクリッカ222を解放する。クリッカ222のクリック表面223が下部ハウジング202に接触するとクリック音が発生し、薬物が完全に送達されたことが合図される。薬物の注入の間に針ガード208が後退されると、針ガード復帰部214の圧縮が高められ、クリック止め装置に加えられる力及びクリック音の大きさが増大する。別の方法として、ユーザーが新たな注射器を装置に装填して上部ハウジングを下部ハウジングに取り付けると、クリック機構が自動的に再設定されてもよい。
【0062】
本発明の更なる実施形態が想像され得るが、添付の図面には含まれていない。これには繰り返し投与の設計が含まれ、この設計においては、上部ハウジング及び中部ハウジングの一方又は両方が、1回分(partial)の高さまで上昇し、ユーザーによって押し下げられたときに1回分の注射器を送出する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を投与するための装置であって、
底部表面と薬剤を中に収容する注射器とを有する下部ハウジングと、
本体を備える中部ハウジングと、
キャップとプランジャロッドとを備える上部ハウジングであって、前記プランジャロッドが上部ハウジングに装着され、前記上部ハウジングが前記中部ハウジングに移動可能に装着される、上部ハウジングと、を備え、
前記薬剤の実質的にすべてが送達されたとき、前記上部ハウジングは前記下部ハウジングの本体を実質的に完全にカバーする、装置。
【請求項2】
前記下部ハウジングは針ガードを更に備え、前記針ガードは、前記下部ハウジングの底部表面が皮膚表面に押し付けられたとき、上向きに移動して針を露出させる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記針ガードは、前記装置の底部が皮膚表面から取り除かれたとき、前記針ガードを延出させて前記針に被せることが可能な針ガード復帰部を更に備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記下部ハウジングは、その近位端部にある第1の表面を更に備え、前記第1の表面は、前記薬剤の送達が実質的に完了したとき、前記上部ハウジングの遠位端部を含む第2の表面と相補的でありかつ嵌合する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記下部ハウジングは、その中に少なくとも1つの窓を更に備え、前記窓を通じて前記注射器の遠位端部が視認可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記上部ハウジングに下向きの力を加えることが可能な補助駆動器を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記上部ハウジングは、前記上部ハウジングの中にありかつ前記上部ハウジングに固定的に装着された筒形スリーブを更に備え、前記筒形スリーブの遠位部分は前記中部ハウジング内に収容され、前記遠位部分は補助駆動器を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記下部ハウジングは、薬剤送達が実質的に完了したことを示すためのクリッカを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
薬剤を投与するための装置であって、
針を装着された注射器を固定的に収容するように構成された下部ハウジングと、
前記下部ハウジングに移動可能に装着された上部ハウジングであって、当該上部ハウジングに装着されたプランジャロッドを有する、上部ハウジングと、
前記下部ハウジングに向かって前記上部ハウジングを移動させる付勢力を生じるための付勢要素と、を備え、
前記付勢要素の前記付勢力は、一定量の液体を中に有する注射器が前記下部ハウジング内に存在するとき、前記上部ハウジングに対する外力の適用がなければ、前記下部ハウジングに対して前記上部ハウジングを移動させるのに不十分なものである、装置。
【請求項10】
前記付勢要素のバネの前記付勢力は、送達が意図される前記薬剤の粘度に比例して設定される、請求項9に記載の装置。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21A】
image rotate

【図21B】
image rotate

【図21C】
image rotate


【公表番号】特表2013−508032(P2013−508032A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534402(P2012−534402)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/052894
【国際公開番号】WO2011/047298
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(509087759)ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】