説明

手動コア回転装置

ガスタービンエンジンのコアを手動で回転させる装置であって、その装置は、駆動機構、オペレーター制御器、及びそれらと回転可能に結合するフレキシブルケーブルを含む。ガスタービンシステムのコアを手動で回転させるための方法であって、エンジンに駆動機構を固定する工程と、前記駆動機構から離れた位置且つ回転可能にオペレーター制御器を固定する工程と、前記エンジンを手動で回転するための前記オペレーター制御器を操作する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに説明される本技術は、通常ガスタービン部品に関するものであり、より具体的にはガスタービンエンジンのコアを手動で回転させる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは通常、圧縮機、燃焼器、及び少なくとも一つのタービンを含む。圧縮器は、燃料と混ざり合い燃焼器へ供給される空気を圧縮することができる。その混合物は、高燃焼ガスを発生するために着火されて、そしてその燃焼ガスはタービンへ供給されてもよい。タービンは、圧縮機を駆動するために燃焼ガスからエネルギーを抽出してもよく、そしてファン又はプロペラを駆動すること、もしくは発電機のような負荷に電力を送ることにより、飛行中の航空機を推進するための有効な仕事を生成するために抽出されてもよい。
【0003】
圧縮機及びタービンは、ケーシング内部に位置するターボ機械の回転部品を形成するようにシャフトによって結合される。このアセンブリは、ガスタービンエンジンの“コア”として言及されてもよい。メンテナンス又は修理工程の間、コア内部のこの回転ターボ機械のブレード及び他の部品を検査することがしばしば必要となる。しかしながら、このターボ機械へのアクセス及び視界は、ケーシング及びガスタービンシステムの他の要素により制限されている場合が多い。
【0004】
多くのガスタービンは、ケーシング内の開口である一つかそれ以上の検査ポートを有しており、検査ポートは内部部品を検査及び/又は点検(修理、取替え、調整、など)するために、取外し可能なプラグ又はカバーによって開けられてもよい。検査は、肉眼又は鏡若しくはボアスコープなどのその他の光学工具による目視であってよい。しかしながら、これらの検査ポートは、回転ターボ機械の特定部品だけがエンジンの停止時及びターボ機械が固定位置にある場合に見ることができるように配置されることが多い。そのため、その他の部品を見るため及び/又は点検するためにターボ機械を回転する必要が多々ある。
【0005】
回転は、アクセサリギアボックスに連結している駆動パッドを介してトルクを加えることにより通常得られる。ソケットは、ラチェットレンチ若しくは他の手工具、又は電動付駆動ユニットの出力シャフトを受け止めるために、駆動パッドに装備されることが一般的である。しかしながら、一人のオペレーターが駆動パッドに隣接しない検査ポートに近接した位置で作業する必要がある場合には、駆動パッドの手動操作が困難である。従って、ターボ機械を回転し検査又は点検するために、二人かそれ以上の人員が必要である場合がある。電動付駆動ユニットは、検査ポート近くのオペレーターにより遠隔で操作されてもよい。しかしながら、電動付駆動ユニットは高価であり時には扱いにくく、ターボ機械の回転及び運動量の“感触”をオペレーターに与えることがなく、そして正確な位置決め及び/又は回転の反転をすることを若干難しくし時間を費やすことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第2073903号
【特許文献2】米国特許第2511049号
【特許文献3】米国特許第2637233号
【特許文献4】米国特許第4876929号
【特許文献5】米国特許第5697269号
【特許文献6】米国特許第6260451号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、低価格で持ち運びが可能で且つ取り扱いが簡単なガスタービンエンジンのコアを手動で回転又は反転するための装置への需要が存在する。そしてそれは一人のオペレーターによってターボ機械を回転及び検査又は点検することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ガスタービンエンジンのコアを手動で回転させるための装置であって、その装置は、駆動機構、オペレーター制御器、及それらに回転可能に結合されるフレキシブルケーブルを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】代表的なガスタービンエンジンの断面概略図である。
【図2】手動コア回転装置を装備した代表的なガスタービンエンジンの斜視図である。
【図3】代表的な手動コア回転装置の駆動機構の部分切出図である。
【図4】代表的な手動コア回転装置のオペレーター制御器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、ファンアセンブリ12、ブースター14、高圧圧縮機16、及び燃焼器18を含む代表的なガスタービンエンジン10の断面概略図である。ガスタービンエンジン10は、高圧タービン20及び低圧タービン22を含む。ファン組立部12は、ローターディスク26から外側に放射状に延びる一連のファン翼24を含む。ガスタービンエンジン10は、取込面28及び排出面30を有する。ガスタービンエンジン10は、いかなるガスタービンエンジンであってもよい。例えばガスタービンエンジン10は、アメリカ合衆国オハイオ州コネチカットのGeneral Electric Companyから入手可能なGE90ガスタービンエンジンであってもよいがそれに限定されない。ファン組立部12、ブースター14、及び低圧タービン22は、第一ローターシャフト32によって結合されてもよく、また圧縮機16及び高圧タービン20は、第二ローターシャフト34によって結合されてもよい。
【0011】
稼働中、空気はファン組立部12を通じて流れ、圧縮された空気はブースター14を通って高圧圧縮機16に供給される。高圧縮空気は、燃料と混合され燃焼ガスを発生するために発火される燃焼器18に送られる。燃焼ガスは、タービン20及び22を駆動するために燃焼器18から供給される。低圧タービン22は、第一ローターシャフト32を経由してファン組立部12及びブースター14を駆動する。高圧タービン20は、第二ローターシャフト34を経由して圧縮機16を駆動する。高圧縮機16、高圧タービン20、及び第二ローターシャフト34は、時々検査及び/又は点検が必要となるコアと呼ばれることがあるターボ機械の回転部品を形成する。このターボ機械は、外部ケーシング70(図2に示す)に囲まれている。
【0012】
図2に示されるように、ガスタービンエンジン10は、ギアボックス(符合なし)を通じて回転ターボ機械に機械的駆動接続を提供する駆動パッド20を含む。ギアボックス及び駆動パッドの位置は、特定のエンジン用途に応じて、場所及び方向が異なってもよい。図2はまた、コアを回転するための代表的な手動装置30を示す。手動コア回転装置30は、駆動機構40、フレキシブル駆動ケーブル50、及びオペレーター制御器60を含む。
【0013】
図3は、駆動機構40の要素を詳しく示した図である。駆動機構40は、結合部41、出力シャフト42、実装ブロック49、遊星ギアボックス53、及び入力シャフト44を含む。
【0014】
稼働中、入力シャフト44はフレキシブル駆動ケーブル50からトルクを受ける。ガスタービンエンジン10のコア内部のターボ機械を回転するために、トルクは、実装ブロック49を通り遊星ギアボックス53を通過し、出力シャフト42にトルクを伝達され、結合部41を介して駆動パッド20に伝達される。
【0015】
図3に示されるように、例えばエンジンの回転位置の信号を送るためのイナンシエーター(enunciator)のような、手動コア回転操作を強化するための追加の要素が含まれてもよい。出力シャフト42は、ガスタービンエンジン10のコアの回転ごとに第二シャフト43を一回転させるための適当なギア比を有するギアセット44を介して、第二シャフト43に結合されてもよい。ギアセット44に装着されたピン45は、マイクロスイッチ46に結合されて、バッテリー47からの電流をサウンドエミッタ48に送るために使用されてもよい。その結果、回転がちょうど一回転に達したことを音によって知らせる(従って、固定された参照ポイントからの検査は、コアの周囲に配置された全ての回転要素が検査されたことになる)。
【0016】
バッテリー47、マイクロスイッチ46、及びサウンドエミッタ48は、あらゆる適当な設計及び構造であってよく、また工業的に入手可能な製品であってよい。バッテリー47はドライセルバッテリーである場合もあり、又サウンドエミッタ48は、オペレーターが所望の位置で聴き易いようにベル、ブザー、又は適当な音生成特性に適したホーンであってよい。イナンシエーターがエンジン位置の所望の表示を提供する限り、イナンシエーターのその他の位置への配置、例えばオペレーター制御器の近くなどが可能である。
【0017】
遊星ギアボックス53は、出力シャフト42及び入力シャフト44間のいかなる所望のギア比を提供することができる。入力シャフト44の一回転が出力シャフト42の一回転に満たない回転を生成するギア比を有することは、コアを回転するために必要な手動力のレベルを減らし、且つ検査及び/点検作業のためにコアの回転位置をより細かく制御することを可能にすることができる。10対1の比は、特定のエンジン用途に有効であり、また、は、コアを回転するためのオペレーターが加える力、例えば約80インチパウンド(9Nm)の概算値、の所望のレベルを実現するように特定されてもよい。高ギア(数字的に)比は、より大きなエンジンに対して必要とされる回転力を減らすために必要である場合がある。
【0018】
実装ブロック49は、出力シャフト42とカップリング41とをガスタービンエンジン10の駆動パッドに結合するためのいかなる適当なサイズ、形、物質、及び構造であってよい。テトラフルオロエチレン又はポリテトラフルオロエチレンなどのDuPont社から商業的に入手可能なTEFLON(登録商標)のような、非粘着性且つ傷がつきにくい物質で実装ブロック49を加工するか又はコーティングすることが望ましいであろう。実装ブロック49は、例えば、駆動機構を保持するために、孔やスロットなどガスタービンエンジン10と結合するための補完的要素などのいかなる適当な搭載構造を有していてもよく、固定のためにボルト又はネジを使用してもよい。
【0019】
図4に示されるように、オペレーター制御器60は、取り付け装置61及びコアの回転を制御するためのハンドル型装置62を含む。ハンドル型装置62はまた、オペレーターのハンドル型装置62の回転のオペレーター制御器の強化を提供するためのノブ63と含む。ハンドル型装置62は、あらゆる適当な従来の結合器によってフレキシブルケーブル50に装着される。ハンドル型装置62が示されるが、オペレーター用にあらゆるタイプの装置が備えられてもよく、又は、望まれれば、オペレーターがラチェットレンチのような従来工具を使用できるように工具嵌め込み機能が備えられてもよい。
【0020】
取り付け装置61は、オペレーター制御器60を例えばガスタービンエンジンへの装着、エンジン保持固定具、パイプ又はチューブ、或いはエンジンナセル又はパイロン(エンジンが航空機に装備される場合)などのアクセサリ又は要素、などの固定位置に固定するために適当なあらゆる従来の構造であってよい。必要に応じてオペレーター制御器60を固定する場合、また必要に応じて他の位置への調整又は移動のために、クランプ又はブラケットが使用されてもよい。オペレーター制御器60は、回転のし易さ及び回転の制御のために、必要に応じてオペレーターにより位置決めをされてもよい。また、オペレーター制御器60は、オペレーターが見る又は操作する必要がある検査ポート又は部品、例えば工具の点検又は修理などの可視性のために位置決めされてもよい。
【0021】
手動コア回転装置の要素は、あらゆる適切な物質から製造されることができ、また、必要に応じて標準的な商業的に入手可能な部品又は材料を取り入れてもよい。具体的に、ケーブルは、意図する用途に応じた適当な長さと可撓性を有するあらゆる種類のフレキシブルケーブルであってよい。スプリングケーブル及びソリッドケーブルが、比較的低トルクのこの低速度用途に適している場合がある。
【0022】
手動コア回転装置は、様々なエンジン及びエンジン構造に使用されるために取り入れられる一つかそれ以上の異なる実装ブロックとともに、組込キット形態として提供されてもよい。装置の保管及び移動を容易にするために、キャリングケースが備えられてもよい。その装置は外部電力又は支援装置を必要としない内蔵型であってもよいため、高い可搬性を提供する。この装置はまた、幅広い内部及び外部操作環境に適しており、耐候性となるように加工されてもよい。
【0023】
ここに説明されたタイプの手動コア回転装置は、ガスタービンエンジン以外にも他の装備に有用である場合がある。例えばそのような装置は、機械を遠隔位置から操作する必要がある自動車分野又は他の分野に利用されてもよい。ガスタービンエンジンに関して、用途は航空機タイプ用途及び地上又は海上用途を含む。
【0024】
本使用が様々な特定の代表的な実施形態を説明してきたが、当業者はこれらの代表的な実施形態が、特許請求の範囲の精神範囲内において変更され使用されることを認識している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンのコアを手動で回転させるための装置であって、
a.駆動機構と、
b.オペレーター制御器と、
c.前記駆動機構と前記オペレーター制御器とに回転可能に結合されるフレキシブルケーブルと、
を備える装置。
【請求項2】
前記駆動機構は、複数のギアボックスを有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記オペレーター制御器は、ハンドルを有する請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記駆動機構は、イナンシエーターを有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
ガスタービンシステムのコアを手動で回転させるための方法であって、
a.前記エンジンに駆動機構を固定する工程と、
b.前記駆動機構から離れた位置且つ回転可能にオペレーター制御器を固定する工程と、
c.前記エンジンを手動で回転するための前記オペレーター制御器を操作する工程と、を備える方法。
【請求項6】
前記エンジンを目視で検査する工程を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記エンジンの点検作業を行う工程を更に含む、請求項5または6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−537101(P2010−537101A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521059(P2010−521059)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/067582
【国際公開番号】WO2009/032387
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY