説明

手動操作用手段の取出機構

【課題】電動シャッター装置の手動操作用手段に関連し、組立て性に優れるとともに、汎用性の高い構成について提案する。
【解決手段】シャッター装置の巻取ドラム3の内部に配置されるクラッチ装置5の操作紐11(手動操作用手段)を、前記巻取ドラム3の外部に取出すための取出機構9であって、前記取出機構9は、前記操作紐11を前記巻取ドラム3の内外に挿通させるための挿通部91aを有し、前記挿通部91aは、前記巻取ドラム3内に配置されるモーター4の固定軸43の外周面43aと、前記巻取ドラム3の内周面3aの間の位置に配置される、こととする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口部などに設けられる電動シャッター装置に関するものであり、より詳しくは、電気的に駆動される巻取ドラムを手動で回転可能にするための手動操作用手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の開口部などに設けられる電動シャッター装置においては、モーターにて巻取ドラムを回転駆動し、巻取ドラムに取り付けられるシャッターカーテンの上昇/降下を行うこととしている。そして、このような電動シャッター装置においては、停電時など、モーターの駆動制御ができない異常時においても、シャッターカーテンの上昇/降下を手動で行うことができるように、手動操作用手段が設けられており、これについて開示する文献も存在する(特許文献1、2参照。)。
【0003】
特許文献1に開示される技術では、巻取ドラム内において、その長手方向の一側にモーター(モーター駆動部)とクラッチ装置が配置され、他側に筒状のスプリングシャフト(スプリングドラム)が配置される構成において、クラッチ装置を介してモーター駆動部と巻取ドラムが駆動連結される構成としている。また、クラッチ装置には、筒状のスプリングシャフトの内部に通される操作紐(ケーブル)の一端が接続されている。そして、この操作紐の他端が巻取ドラムの外部にて引っ張られることで、クラッチ装置と巻取ドラムの駆動連結が解除される構成としている。
【0004】
また、特許文献2に開示される技術では、特許文献1と同様に、巻取ドラム内において、その長手方向の一側にモーター(モーター駆動部)とクラッチ装置が配置され、他側に筒状のスプリングシャフト(スプリング装置)が配置される構成において、クラッチ装置を介してモーターと巻取ドラムが駆動連結される構成としている。そして、モーターの筒状のケース内には、中空軸が設けられ、この中空軸の内部に通される操作紐(ワイヤ)の一端がクラッチ装置(回り止め部材)に接続される。そして、操作紐の他端が巻取ドラムの外部にて引っ張られることで、クラッチ装置と巻取ドラムの駆動連結が解除される構成としている。
【0005】
以上の説明から判るように、特許文献1に開示される技術では、スプリングドラムの内部に操作紐が通される構成となっている。また、特許文献2に開示される技術では、モーターの中空軸の内部に操作紐が通される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−138779号公報
【特許文献2】特開2002−256785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示されるような構成では、操作紐をスプリングシャフトの内部に通す必要があるため、専用の工具を用いることが必要になることや、組立てに手間と時間がかかるといった問題がある。
【0008】
また、特許文献1に開示されるような構成では、操作紐の端部をスプリングシャフトの外部へ取出す必要があるため、操作紐の長さを巻取ドラムの長さ寸法に応じて設定する必要がある。つまり、例えば、巻取ドラムが短いシャッター装置の場合では、クラッチ装置とスプリングシャフトの距離が小さいため、操作紐は短いもので対応することができるが、巻取ドラムが長い装置の場合では、クラッチ装置とスプリングシャフトの距離が大きくなり、これに応じて、操作紐も長いものを準備する必要がある。このようなことであると、大小のシャッター装置において部品の共通化が図れないという弊害につながることになる。
【0009】
また、特許文献2に開示されるような構成では、操作紐を中空軸の内部に通す必要があるため、専用の工具を用いることが必要になることや、組立てに手間と時間がかかるといった問題がある。
【0010】
また、特許文献2に開示されるような構成では、中空軸の外部に配置される回り止め部材と、中空軸の内部に通される操作紐を連結するために、中空軸について専用設計されたものが用いられる必要があり、広く市販されているモーターについて、追加で技術(中空軸に操作紐を通す構成)を適用することは困難である。
【0011】
そこで、本発明は、以上の問題点に鑑み、電動シャッター装置の手動操作用手段に関連し、組立て性に優れるとともに、汎用性の高い構成について提案するものである。
【0012】
また、本発明の他の課題は、広く市販されているモーターについても適用が可能な、手動操作用手段に関する新規な構成を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0014】
即ち、請求項1に記載のごとく、
シャッター装置の巻取ドラムの内部に配置されるクラッチ装置の手動操作用手段を、前記巻取ドラムの外部に取出すための取出機構であって、
前記取出機構は、
前記手動操作用手段を前記巻取ドラムの内外に挿通させるための挿通部を有し、
前記挿通部は、
前記巻取ドラム内に配置されるモーターの固定軸と、前記巻取ドラムの間に配置される、こととするものである。
【0015】
また、請求項2に記載のごとく、
前記モーターは、円筒状の外筒ケースを有し、前記外筒ケースの一端から出力軸が延出され、前記外筒ケースの他端から前記固定軸が延出される、構成とするものである。
【0016】
また、請求項3に記載のごとく、
前記取出機構は、前記外筒ケースの外周面と前記巻取ドラムの間に設けられる第一のアタッチメントを有し、
前記第一のアタッチメントは、前記外筒ケース側に固定され、
前記第一のアタッチメントに、前記挿通部が前記巻取ドラムの内外方向に貫通するように設けられる、構成とするものである。
【0017】
また、請求項4に記載のごとく、
前記第一のアタッチメントは、円環状の部材にて構成され、
前記挿通部は、前記第一のアタッチメントの内周面に溝状に形設される、こととするものである。
【0018】
また、請求項5に記載のごとく、
前記第一のアタッチメントは、前記外筒ケースの外周面の一部を覆う少なくとも一つのスペーサー部材にて構成され、
前記スペーサー部材にて前記外筒ケースと前記巻取ドラムの間に連通スペースが形設され、
前記連通スペースにて前記挿通部が構成される、こととするものである。
【0019】
また、請求項6に記載のごとく、
前記第一のアタッチメントと前記巻取ドラムの間には、
前記第一のアタッチメントに対して相対回転自在であって、前記巻取ドラム側に固定される第二のアタッチメントが設けられる、こととするものである。
【0020】
また、請求項7に記載のごとく、
前記挿通部は、前記外筒ケースの前記固定軸側の端面に設けられ、
前記外筒ケースの外周面には、前記外筒ケースの内外に通じる連通孔が形設され、
前記連通孔から前記外筒ケース内へと前記手動操作用手段が挿入され、
前記挿通部から前記外筒ケース外へと前記手動操作用手段が取出される、こととするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0022】
即ち、請求項1に記載の発明においては、
手動操作用手段(操作紐)がスプリングシャフトの側からではなく、モーターの側から巻取ドラムの外部へ取出されるため、大小のシャッター装置において、操作紐の共通化を図ることができる。また、モーターの固定軸の内部に手動操作用手段を通す必要がなく、組立てが容易であって、広く市販されているモーターについても本発明を適用することが可能となる。
【0023】
また、請求項2に記載の発明においては、
従来「チューブラモーター」の名称で広く知られている筒状のモーターについて、本発明を適用することができ、汎用性の高い構成とすることができる。
【0024】
また、請求項3に記載の発明においては、
広く市販されているモーターについて、特段の加工を必要とせずに、本発明を適用することが可能となる。
【0025】
また、請求項4に記載の発明においては、
組立て時においては、第一のアタッチメントの内側に手動操作用手段を通すとともに、溝部に向かって手動操作用手段を入れ込むようにして組立てを行えるようになって、組立て性に優れた構成が実現できる。
【0026】
また、請求項5に記載の発明においては、
連通スペースを挿通部として使用することが可能となる。
【0027】
また、請求項6に記載の発明においては、
第二のアタッチメントを適宜設計することにより、様々な断面形状の巻取ドラムの形状に対応することが可能となる。
【0028】
また、請求項7に記載の発明においては、
特に別部材を用いることなく、取出機構を構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】手動操作用手段の取出機構を適用し得るシャッター装置の巻取装置の概要について示す図。
【図2】モーター、クラッチ操作機構、手動操作用手段の取出機構について説明する正面図。
【図3】モーター、クラッチ操作機構、手動操作用手段の取出機構について説明する斜視図。
【図4】手動操作用手段の取出機構について説明する端部側面図。
【図5】クラッチ操作機構について説明する軸断面図。
【図6】(a)は待機状態におけるクラッチ操作機構について説明する正面図。(b)は操作状態におけるクラッチ操作機構について説明する正面図。
【図7】(a)は挿通部を貫通孔の形態で設ける例について示す図。(b)はスペーサー部材の間にて挿通部を形成する例について説明する図。(c)は第二のアタッチメントを用いない例について説明する図。(d)は外筒ケースの端部蓋から操作紐を取出す例について説明する図。(e)は外筒ケース内に操作紐を通す例について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず、本発明を適用し得るシャッター装置の巻取装置の構成について説明する。
図1に示すごとく、巻取装置1は、モーター4によって巻取ドラム3を回転駆動する構成とするものであり、操作スイッチ15が操作されることによって、巻取ドラム3に取り付けられるシャッターカーテン2が電動で上昇/降下する構成となっている。モーター4は、スプリングシャフト8aから遠い側の端部において、その固定軸43が巻取ドラム3の一端の外側に配置されるブラケット16に対して固定される。
【0031】
また、図1に示すごとく、巻取ドラム3とモーター4は、クラッチ装置5を介して連結され、モーター4による回転トルクがクラッチ装置5を介して巻取ドラム3に伝達されるようになっている。このクラッチ装置5は、通常時においては、クラッチ「入り」の状態となって、モーター4による巻取ドラム3の回転駆動がなされ、シャッターカーテン2の上昇/降下が電動で行われ得るようになっている。一方で、停電時などにおいては、クラッチ「切り」の状態となって、シャッターカーテン2の上昇/降下が手動で行われ得るようになっている。
【0032】
また、図1に示すごとく、巻取ドラム3は、ドラムリング7を介してスプリング8と連結され、スプリング8の弾性力による回転トルクが巻取ドラム3に伝達されるようになっている。このスプリング8は、スプリングシャフト8aに巻き回されており、一端がスプリングシャフト8aに固定され、他端がドラムリング7に固定される。スプリングシャフト8aは、モーター4から遠い側の端部において、巻取ドラム3の他端の外側に配置されるブラケット17に対して固定される。
【0033】
また、図1に示すごとく、巻取ドラム3の長手方向(回転軸の軸心方向)において、その一側にモーター4とクラッチ装置5が配置され、他側にスプリング8とスプリングシャフト8aとドラムリング7が配置されるようになっている。このような配置設計においては、巻取ドラム3の幅(軸方向の長さ)が異なる場合でも、モーター4などの各パーツを共通化することができる。つまり、このような配置設計の場合には、幅の小さい巻取ドラムが設けられる小型のシャッター装置と、幅の広い巻取ドラムが設けられる大型のシャッター装置について、モーター4などの各パーツを共通化できるものとなっている。
【0034】
また、図1に示すごとく、クラッチ装置5は、モーター4の出力軸41と巻取ドラム3を連結するものである。このクラッチ装置5には、操作紐11の一端側が接続され、操作紐11の他端側は、巻取装置1(巻取ドラム3)の外部に配置される操作ハンドル13と接続される。そして、この操作ハンドル13の操作によって、クラッチ装置5によるモーター4の出力軸41と巻取ドラム3の連結が解除され、手動によってシャッターカーテンの上昇/降下を行えるようになっている。
【0035】
次に、図2などを用いて、モーター4と手動操作用手段(操作紐11)の取出機構9について説明する。
図2及び図3に示すごとく、モーター4は、「チューブラモーター」の名称で広く知られている筒状のモーター4にて構成されるものである。この形態のモーター4は、円筒状の外筒ケース42内にギヤなどの駆動機構が収容される。外筒ケース42の一端側からは固定軸43が外筒ケース42と同軸上に延出される。この固定軸43は、外筒ケース42に対し相対回転不能なものであって、図1に示されるブラケット16に対して固定される。
【0036】
また、図2及び図3に示すごとく、モーター4において、外筒ケース42の他端側からは、出力軸41が外筒ケース42と同軸上に延出される。この出力軸41は、外筒ケース42に対し相対回転可能なものであって、外筒ケース42内の駆動機構によって回転駆動される。
【0037】
また、図2乃至図4に示すごとく、外筒ケース42における固定軸43側の端部には、操作紐11の取出機構9が設けられる。この取出機構9は、第一のアタッチメント91、及び、第二のアタッチメント92を有して構成される。
【0038】
また、図2乃至図4に示すごとく、第一のアタッチメント91は、環状の部材であって、外筒ケース42の外周を取り囲むようにして、外筒ケース42の外周に固定されるものであり、円筒状の外筒ケース42を有するモーター4について特段の加工を必要とせずに、後付で固定できるようになっている。このような後付の固定を可能とする形態は、市販のモーター4を使用して本発明を実施する場合に有効であることはもちろんのこと、既設のシャッター装置に組み込まれている同形態のモーターを使用して本発明を実施する場合においても有効である。
【0039】
また、図2乃至図4に示すごとく、第一のアタッチメント91の外周には、第二のアタッチメント92が取り付けられる。この第二のアタッチメント92は、環状の部材であって、第一のアタッチメント91の外周を取り囲むとともに、第一のアタッチメント91に対して相対回転可能に設けられており、外筒ケース42に取り付けられる第一のアタッチメント91の周りを第二のアタッチメント92が回転できるようになっている。また、第二のアタッチメント92は、巻取ドラム3の内側に固定され、巻取ドラム3と一体となって回転するようになっている。また、第二のアタッチメント92の外周面の形状は、巻取ドラムの形状に合わせて適宜設計されるものであり、これにより、様々な断面形状の巻取ドラムの形状に対応することが可能となる。
【0040】
以上の構成により、図4に示す構成において、固定軸43側に固定される第一のアタッチメント91と外筒ケース42を回転軸として、巻取ドラム3と第二のアタッチメント92が一体となって回転するようになっている。
【0041】
また、図2乃至図4に示すごとく、第一のアタッチメント91には、操作紐11(カバー材12)を通すための挿通部91aが設けられる。図3に示すごとく、本実施形態の挿通部91aは、第一のアタッチメント91の内周面91bに、略U字状の溝部をモーター4(外筒ケース42)の軸方向に貫通するように設けることで構成されている。そして、このような挿通部91aによって、外筒ケース42と第一のアタッチメント91の間において、操作紐11が通されるようになっている。また、図4に示すごとく、挿通部91aは、固定軸43の外周部43aと、巻取ドラム3の内周部3aの間に配置されるようになっている。以上のようにして、固定軸43と巻取ドラム3の間に、巻取ドラム3とともに回転しない挿通部91aが設けられるようになっている。
【0042】
また、図2乃至図4に示すごとく、操作紐11は、チューブ状のカバー材12の内部に通されており、このカバー材12内を移動し得るようになっている。操作紐11の一端は、カバー材12から取出されてクラッチ操作機構60側に連結され、操作紐11の他端は、カバー材12から取出されて操作ハンドル13(図1)側に連結される。なお、本実施形態では、クラッチ装置5を金属ワイヤ等からなる操作紐11が引っ張られることで作動する機械式のクラッチ装置を用いた場合としたが、電磁式(電動式)のクラッチ装置を用いる場合には、操作紐11の代わりに、通信線が使用され、この通信線が手動操作用手段として挿通部91aに通されることとなる。
【0043】
また、図2乃至図4に示すごとく、第一のアタッチメント91は第二のアタッチメント92の回転に連動せず静止したままとなるため、巻取ドラム3とともに第二のアタッチメント92が回転した場合でも、挿通部91aは静止したままとなり、この挿通部91aに通される操作紐11(カバー材12)も静止したままとなる。以上のようにして、巻取ドラム3(第二のアタッチメント92)の回転に連動させずに、第一のアタッチメント91を通して操作紐11の一端側を巻取ドラム3の内部から外部へと取出すことができるようになっている。
【0044】
次に、図2などを用いてクラッチ操作機構60について説明する。
図2に示すごとく、モーター4において、出力軸41側の端部となる位置には、クラッチ操作機構60が設けられている。このクラッチ操作機構60は、外筒ケース42の外周に固定されるレバーブラケット61と、このレバーブラケット61に対し回動可能に設けられる切替レバー62を有する構成としている。
【0045】
また、図2及び図3に示すごとく、レバーブラケット61は、円環状の部材にて構成され、外筒ケース42の外周を取り囲んで締め付けるようにして外筒ケース42の外周に固定される固定バンド61aを有しており、これにより、円筒状の外筒ケース42を有するモーター4について特段の加工を必要とせずに、後付で固定できるようになっている。このような後付の固定を可能とする形態は、市販のモーター4を使用して本発明を実施する場合に有効であることはもちろんのこと、既設のシャッター装置に組み込まれている同形態のモーターを使用して本発明を実施する場合においても有効である。
【0046】
また、図2及び図5に示すごとく、レバーブラケット61には、ピン61bが挿通固定される回動固定部61cが設けられており、ピン61bに対して切替レバー62が回動可能に取り付けられる。切替レバー62は、その長手方向における中途部がピン61bに取り付けられている。切替レバー62の下端部には、操作紐11の端部抜止11aが係止される係止部62aが設けられている。切替レバー62の上端部には、クラッチ装置5の連結軸51の端面に突出される筒状の被押圧部51aに当接する作用部62bが設けられている。
【0047】
なお、図2に示すごとく、レバーブラケット61の回動固定部61cと、切替レバー62の下端部62cと、上述の第一のアタッチメント91の挿通部91aは、モーター4の軸心を中心とする角度において、略同一の角度に配置されるようになっており、これにより、切替レバー62と第一のアタッチメント91の間において、操作紐11がよじれることが無く、略まっすぐに伸びた状態で配置され得るようになっている。
【0048】
また、図5に示すごとく、切替レバー62はピン61bに対し回動可能に設けられつつ、ピン61bに巻き回されたコイルバネ61dの一端が係止することによって、図6(a)に示すごとく、切替レバー62の係止部62a側がクラッチ装置5の連結軸51に近づくように回動付勢された状態が維持されるようになっている。この図6(a)の状態が、クラッチ操作機構60が作動しない待機状態となる。
【0049】
一方、この待機状態において、図6(b)に示すごとく、操作紐11の引っ張り操作がなされると、切替レバー62がコイルバネ61d(図5)の付勢力に抗して回動し、切替レバー62の作用部62bがクラッチ装置5の連結軸51に近づくように回動操作される。
【0050】
また、図5に示すごとく、クラッチ装置5の連結軸51には、モーター4の出力軸41を挿入するための連結孔52が設けられており、この連結孔52の内壁には、その軸方向に係合平面部52aが形設されている。また、モーター4の出力軸41においても、その外周において軸方向に係合平面部41aが形設されている。そして、係合平面部52aに係合平面部41aを当接させる回転角度の関係において、連結孔52に出力軸41を挿入することで、連結軸51と出力軸41が連結され、出力軸41の回転によって連結軸51が回転するようになっている。
【0051】
また、図6(a)(b)に示すごとく、クラッチ装置5において、連結軸51は、クラッチ本体部53と一体で回転するとともに、クラッチ本体部53に対して軸方向に進退可能に設けられており、クラッチ本体部53内の図示せぬバネ機構によってモーター4に近づく方向へと付勢され、切替レバー62が操作されない限りは、図6(a)に示される状態が維持されるようになっている。また、クラッチ本体部53にはドラムリング53aが固定されており、このドラムリング53aが巻取ドラム3(図1)と連結される構成となっている。
【0052】
以上の構成により、図6(a)に示す待機状態においては、連結軸51に出力軸41が挿入された状態となって、連結軸51によるクラッチ装置5とモーター4の連結状態が維持されるようになっている。そして、この連結状態では、モーター4の出力軸41の回転によって巻取ドラム(ドラムリング53a)が回転駆動されるとともに、モーター4が停止して出力軸41が静止している状態では、この出力軸41の静止に伴って巻取ドラム(ドラムリング53a)の回転が規制される。
【0053】
一方で、図6(b)に示すごとく、停電時などにおいてシャッターカーテンの上昇/降下を手動で行おうとする場合において、操作紐11の引っ張り操作がなされると、切替レバー62が回動し、作用部62bによって連結軸51の被押圧部51aが押圧され、モーター4から離れる方向に連結軸51が押し込まれる。これによって、連結軸51によるクラッチ装置5とモーター4の連結状態が解除される。
【0054】
以上のようにして本発明を実施することができる。
即ち、図1乃至図4に示すごとく、
シャッター装置の巻取ドラム3の内部に配置されるクラッチ装置5の操作紐11(手動操作用手段)を、前記巻取ドラム3の外部に取出すための取出機構9であって、
前記取出機構9は、
前記操作紐11を前記巻取ドラム3の内外に挿通させるための挿通部91aを有し、
前記挿通部91aは、
前記巻取ドラム3内に配置されるモーター4の固定軸43の外周面43a(図4)と、前記巻取ドラム3の内周面3a(図4)の間の位置に配置される、
こととするものである。
【0055】
この構成によれば、図1乃至図4に示すごとく、手動操作用手段としての操作紐11がスプリングシャフト8aの側からではなく、モーター4の側から巻取ドラム3の外部へ取出されるため、大小のシャッター装置において、操作紐11の共通化を図ることができる。また、モーター4の固定軸43の内部に操作紐11を通す必要がなく、組立てが容易であって、広く市販されているモーターについても本発明を適用することが可能となる。
【0056】
また、図1乃至図4に示すごとく、前記モーター4は、円筒状の外筒ケース42を有し、前記外筒ケース42の一端から出力軸41、前記外筒ケース42の他端から前記固定軸43が延出される構成とするものである。
【0057】
この構成によれば、従来「チューブラモーター」の名称で広く知られている筒状のモーターについて、本発明を適用することができ、汎用性の高い構成とすることができる。
【0058】
また、図4に示すごとく、
前記取出機構9は、前記外筒ケース42の外周面42aと前記巻取ドラム3の外周面3aの間に設けられる第一のアタッチメント91を有し、
前記第一のアタッチメント91は、前記外筒ケース42側に固定され、
前記第一のアタッチメント91に、前記挿通部91aが前記巻取ドラム3の内外方向に貫通するように設けられる、構成とするものである。
【0059】
この構成によれば、図2乃至図4に示すごとく、広く市販されているモーターについて、特段の加工を必要とせずに、本発明を適用することが可能となる。
【0060】
また、図3に示すごとく、
前記第一のアタッチメント91は、円環状の部材にて構成され、
前記挿通部91aは、前記第一のアタッチメント91の内周面91bに溝状に形設される、こととするものである。
【0061】
この構成によれば、図3に示すごとく、組立て時においては、第一のアタッチメント91の内側に操作紐11(カバー材12)を通すとともに、溝部に向かって操作紐11(カバー材12)を入れ込むようにして組立てを行えるようになって、組立て性に優れた構成が実現できる。
【0062】
また、図2乃至図4に示すごとく、前記第一のアタッチメント91と前記巻取ドラム3の間には、前記第一のアタッチメント91に対して相対回転自在であって、前記巻取ドラム3の内側に固定される第二のアタッチメント92が設けられる、こととするものである。
【0063】
この構成によれば、図2乃至図4に示すごとく、第二のアタッチメント92を適宜設計することにより、様々な断面形状の巻取ドラムの形状に対応することが可能となる。
【0064】
また、以上に説明した実施形態の他の構成によっても、本発明は実施することができる。
例えば、図7(a)の構成は、第一のアタッチメント91Aにおいて、貫通孔形状の挿通部91Aaを形成する構成とするものである。また、図7(b)の構成では、第一のアタッチメントを、前記外筒ケース42の外周面の一部を覆う少なくとも一つのスペーサー部材91B(この例では3個)で構成し、各スペーサー部材91Bの間に間隔が開けられる構成とすることで、外筒ケース42と第二のアタッチメント92の間に連通スペース91Baを形成し、この連通スペース91Baに操作紐11が通される構成とするものである。なお、図7(c)に示すように第二のアタッチメントが省略される形態においては、外筒ケース42と巻取ドラム3の間に連通スペースが形成されることになる。また、図7(b)の例では、扇状のスペーサー部材91Bを3個用いる形態としたが、この他にも、C字状のスペーサー部材を1個用いる形態なども考えられる。
【0065】
以上のように、第一のアタッチメントについては、図3及び図4に示す形態の他にも、多種のものが考えられ、操作紐11(カバー材12)を巻取ドラムの外部に取出すことができる形態とすれば、本発明を実施できるものとなる。
【0066】
また、図7(c)に示す形態は、第二のアタッチメント92(図4)を用いない構成であり、第一のアタッチメント91Cが巻取ドラム3と相対回転可能に設けられ、巻取ドラム3が第一のアタッチメント91Cの周りを回転する構成とするものである。上述したように、第二のアタッチメント92(図4)は、巻取ドラム3の内側に固定するものであって、第二のアタッチメントを適宜設計することによって巻取ドラムの断面形状に対応させるものであるが、図7(c)では、この第二のアタッチメントを省略し、第一のアタッチメント91Cの外周面91gと、巻取ドラム3の内週面3gを摺接させる形態とするものである。
【0067】
さらに、図7(d)に示す形態は、外筒ケース42Aの外周面42gに連通孔42hを形設するとともに、外筒ケース42Aの端面から操作紐11(カバー材12)を取出す構成とするものである。この形態は、外筒ケース42A内に操作紐11を通すスペースが有る場合に可能な形態である。この形態であっても、固定軸43と巻取ドラム3の間に、巻取ドラム3とともに回転しない挿通部91gが形成されることとなる。なお、図7(d)の形態では、外筒ケース42Aの端面蓋42mに挿通部91gの孔加工が施されるものであるが、外筒ケース42に端面蓋42mがなく開放端面にて構成される場合においては、加工をせずに外筒ケース42Aの開放端面から操作紐11を取出すことが可能なものとなる。
【0068】
このように、図7(d)に示す形態においては、挿通部91gは、外筒ケース42Aの前記固定軸側の端面(端面蓋42mの箇所)に設けられ、
前記外筒ケース42Aの外周面42gには、前記外筒ケース42Aの内外に通じる連通孔42hが形設され、
前記連通孔42hから前記外筒ケース42A内へと前記操作紐11(手動操作用手段)が挿入され、
前記挿通部91gから前記外筒ケース42A外へと前記操作紐11(手動操作用手段)が取出される、
構成とするものである。
【0069】
このような構成によれば、特に別部材を用いることなく、取出機構を構成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、クラッチ装置の手動操作用手段をモーターの固定軸側から巻取ドラム外へ取出すための取出機構として、幅広く適用することができ、また、広く市販されているモーターを利用して実施することが可能なものである。
【符号の説明】
【0071】
1 巻取装置
2 シャッターカーテン
3 巻取ドラム
4 モーター
5 クラッチ装置
7 ドラムリング
8 スプリング
8a スプリングシャフト
9 取出機構
11 操作紐
12 カバー材
13 操作ハンドル
41 出力軸
42 外筒ケース
43 固定軸
51 連結軸
53 クラッチ本体部
60 クラッチ操作機構
61 レバーブラケット
62 切替レバー
91 第一のアタッチメント
92 第二のアタッチメント



【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャッター装置の巻取ドラムの内部に配置されるクラッチ装置の手動操作用手段を、前記巻取ドラムの外部に取出すための取出機構であって、
前記取出機構は、
前記手動操作用手段を前記巻取ドラムの内外に挿通させるための挿通部を有し、
前記挿通部は、
前記巻取ドラム内に配置されるモーターの固定軸と、前記巻取ドラムの間に配置される、
手動操作用手段の取出機構。
【請求項2】
前記モーターは、円筒状の外筒ケースを有し、前記外筒ケースの一端から出力軸が延出され、前記外筒ケースの他端から前記固定軸が延出される構成とする、
ことを特徴とする、請求項1に記載の手動操作用手段の取出機構。
【請求項3】
前記取出機構は、前記外筒ケースの外周面と前記巻取ドラムの間に設けられる第一のアタッチメントを有し、
前記第一のアタッチメントは、前記外筒ケース側に固定され、
前記第一のアタッチメントに、前記挿通部が前記巻取ドラムの内外方向に貫通するように設けられる、
ことを特徴とする、請求項2に記載の手動操作用手段の取出機構。
【請求項4】
前記第一のアタッチメントは、円環状の部材にて構成され、
前記挿通部は、前記第一のアタッチメントの内周面に溝状に形設される、
ことを特徴とする、請求項3に記載の手動操作用手段の取出機構。
【請求項5】
前記第一のアタッチメントは、前記外筒ケースの外周面の一部を覆う少なくとも一つのスペーサー部材にて構成され、
前記スペーサー部材にて前記外筒ケースと前記巻取ドラムの間に連通スペースが形設され、
前記連通スペースにて前記挿通部が構成される、
ことを特徴とする、請求項3に記載の手動操作用手段の取出機構。
【請求項6】
前記第一のアタッチメントと前記巻取ドラムの間には、
前記第一のアタッチメントに対して相対回転自在であって、前記巻取ドラム側に固定される第二のアタッチメントが設けられる、
ことを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の手動操作用手段の取出機構。
【請求項7】
前記挿通部は、前記外筒ケースの前記固定軸側の端面に設けられ、
前記外筒ケースの外周面には、前記外筒ケースの内外に通じる連通孔が形設され、
前記連通孔から前記外筒ケース内へと前記手動操作用手段が挿入され、
前記挿通部から前記外筒ケース外へと前記手動操作用手段が取出される、
ことを特徴とする、請求項2に記載の手動操作用手段の取出機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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