説明

手品具

【課題】様々な手品で用いることができ、より不思議に見せることのできる手品具を提供する。
【解決手段】回転自在な車輪軸に軸着された車輪を有する走行体であって、前記走行体に、所定の距離を走行させると前記車輪の回転を停止させる停止装置を備え、前記停止装置は、係止突起を有する歯車と、前記係止突起を有する歯車と前記車輪軸に設けた歯車とを歯合させる歯車と、前記係止突起と係合可能とされる係止部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さまざまな手品に使用可能な手品具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、相手が選んだものを当てる手品は人気がある。例えば、本願出願人が出願した特許2675772号公報「コマ当てトリック手品具」のようにコマを当てる手品具もある。これは、磁石を利用したコマ当てトリック手品具であり、内部に磁石が内設され、複数のコマのうち1個のコマを指し示すように回転する回転指示体と、この回転指示体を覆う不透明なカバーと、内部に磁石が内設され、該回転指示体の磁石との磁気力の作用により回転指示体を回転操作により回転させたり停止させたりする回転操作体とで構成されている。この手品具は、該回転指示体を不透明カバーで覆った後、回転指示体を操作し、該回転操作体で回転停止させ、回転操作体の周囲に配置された複数個のコマのうちの使用者が望む1個のコマを指し示すことができるものである。
【特許文献1】特許2675772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、相手自身が、手品具を操作することによって、相手自身が選んだものが当たるという、より不思議に見せることのできる手品具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、回転自在な車輪軸に軸着された車輪を有する走行体であって、前記走行体に、所定の距離を走行させると前記車輪の回転を停止させる停止装置を備え、前記停止装置は、係止突起を有する歯車と、前記係止突起を有する歯車と前記車輪軸に設けた歯車とを歯合させる歯車と、前記係止突起と係合可能とされる係止部とを有し、前記係止突起を有する歯車が所定の回転を行うと前記係止突起と係止部が係合して、前記車輪の回転を停止させることを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の発明は、請求項1において、前記走行体は、前記係止突起を有する歯車を摺動させ、この係止突起を有する歯車と車輪軸に設けた歯車との回転伝達を遮断することにより停止装置を無効にするスイッチを備えたことを特徴する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、使用者が望む位置で走行体を停止させることができ、様々な手品で用いることができる手品具を提供することができる。また、この手品具を用いることにより、より不思議に見せるようにした手品を行うことができる。
【0007】
そして、観客が選んだカードなどを当てるトリックを、熟練者でなくても簡単に見せることができる手品具とすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
回転自在な車輪軸に軸着された車輪を有する走行体とし、所定の距離を走行させると前記車輪を停止させる停止装置を備え、前記停止装置は、係止突起を有する第一歯車と、前記第一歯車及び前記車輪軸に設けた歯車と歯合する第二歯車と、前記係止突起と係止する係止部とを有している。また、前記手品具は、前記停止装置を無効にするスイッチを備え、前記スイッチは、前記第一歯車を摺動させ、前記第二歯車と第一歯車との歯合状態を解除することにより、係止突起を有する第一歯車と車輪軸に設けた歯車との回転伝達を遮断して、停止装置を無効にするものである。
【実施例1】
【0009】
以下、図を参照して、本発明を適用した実施の形態について説明する。図1を用いて手品具について説明する。手品具としての走行体10は、前輪部12、後輪部14、車台58、停止装置、スイッチ72及びカバー70となる部品で構成されている。
【0010】
図2の走行体10の分解斜視図面を用いて、まず走行体10の構成となる部品について説明する。実施例の走行体10は、前輪及び後輪となる4つの車輪を有し、自動車の形を模して形成されている。
【0011】
この走行体10の前方側の車輪となる前輪部12は、前輪タイヤ16と、前輪軸18で構成され、この前輪部12は、車台58の前方方向に車台58に回動自在に軸支されている。前輪軸18は、細い棒状体で、その両端を覆うように、前輪軸18の両端の外囲にゴム製の輪となる前輪タイヤ16が外嵌している。
【0012】
そして、走行体10の後方側の車輪となる後輪部14は、後輪ホイル22、後輪タイヤ26及び後輪歯車30を有する後輪軸で構成され、この後輪部14は、車台58の後方方向に車台58に回動自在に軸支されている。この後輪部14の後輪ホイル22は、円柱状に形成され、その中央には、後輪軸の両端に形成される四角形突起28と嵌着する四角形凹部24が形成されている。また、後輪ホイル22には、路面との摩擦を増すように後輪ホイル22の外囲に外嵌するゴム製の輪となる後輪タイヤ26を備えている。そして、後輪軸の中央に、第二歯車56と歯合する後輪歯車30が鍔状に形成されている。また、この後輪軸の両端は、四角形突起28として、後輪ホイル22に形成された四角形凹部24と嵌着するようになっている。したがって、後輪タイヤ26の回転によって、該後輪部14の構成となる後輪ホイル22、後輪軸及び後輪歯車30も一体に回転するようにされるものである。
【0013】
また、前輪部12や後輪部14を取り付ける車台58は、自動車の下方部分を模した形に形成されている。そして、車台58の内部には、長手方向に平行に2つの線条となるリブ60が形成されている。該リブ60の車台58の前方側及び後方側には、前輪部12と後輪部14を軸支するU字形状の切欠となる前輪部受け66と後輪部受け68が形成されている。
【0014】
また、車台58の最後方には、車台58の短手方向と平行な溝となるスイッチ溝部62が形成され、該スイッチ溝部62には、後述するスイッチ72が摺動可能に挿着される。そして、該スイッチ溝部62の近傍には、後述する停止装置32の底部よりも僅かに大きな凹部となる停止装置凹部64が形成され、該停止装置凹部64には、車輪の回転を制御する停止装置32が嵌合するものである。
【0015】
そして、スイッチ72は、直方体形状に形成され、直方体の一側面には、対向する両側辺となる上辺及び下辺より、鍔状に膨出した鍔部74を形成している。この鍔部74は、上述した車台58のスイッチ溝部62に挿着され、該スイッチ72は、車台58の短手方向に摺動自在とされている。また、対向する側面は、車台58の最後方よりも外方に突出させるようにして自動車のナンバープレートを模して形成するように周囲4辺を膨出させている。
【0016】
また、スイッチ72の鍔部74が形成された面の一側辺となる右辺から、中央方向へ傾斜する薄板方形状の引掛部76が膨出するように形成されている。この該引掛部76は、停止装置32の摺動基部42の引掛受部48と係合するものである。
【0017】
そして、停止装置32は、基部カバー34、摺動基部42、第一歯車52、第二歯車56で構成されている。この停止装置32の摺動基部42は、断面を方形状とした短筒形状に形成され、方形状の両側面の前方側には、第一歯車52を軸支する軸穴44が形成されている。また、この両側面の後方側には、凸部50が形成されている。そして、軸穴44が形成された側面の一方の内側には、後述する第一歯車52に形成された係止突起54と係止する線条に突出した係止部46が形成されている。また、摺動基部42の軸穴44の形成されていない一側面となる摺動基部42の後方には、傾斜した凹部が形成され、上述したスイッチ72の引掛部76と係止する引掛受部48が形成されている。
【0018】
そして、基部カバー34は、略直方体形状に形成され、この基部カバー34の前面及び後面の下方には、摺動基部42が貫通する摺動開口38が形成されている。この基部カバー34内に、摺動基部42の前方及び後方部分が、それぞれ摺動開口38から突出するように内設されている。この摺動基部42は、該摺動開口38により上下左右に動くことが規制され、前後方向のみに摺動可能とされるものである。また、基部カバー34の前面側には、内側に突出する三角形状の凸部となるラッチ40が形成されている。そして、この基部カバー34の左右の側面のやや後方位置には、第二歯車56を軸支する軸穴36が形成され、第二歯車56を回動自在に軸支している。そして、基部カバー34左右側面の後方下方に、後輪部14が位置するU字型の切欠が形成されている。
【0019】
また、第一歯車52は、平歯車で、摺動基部42の軸穴44に回動自在に軸支されており、この第一歯車52は、摺動基部42の内側に位置している。また、第一歯車52の側面には、上述した摺動基部42の内側に形成された係止部46と係止する係止突起54が形成されている。次に、第二歯車56は、大歯車と小歯車からなり、基部カバー34の軸穴36に回動自在に軸支され、やや後方に位置しており、第二歯車56の大歯車は、後輪歯車30と歯合し、第二歯車56の小歯車は、第一歯車52と歯合する(図3参照)。したがって、第二歯車56は、後輪軸に設けた後輪歯車30と係止突起54を設けた第一歯車52とを歯合させる減速歯車とされるものである。
【0020】
そして、この走行体10のカバー70は、自動車の上方部分を模した形に形成されている。このカバー70は、自動車の下方部分を模した形に形成された車台58の上方を覆うものである。
【0021】
次に、図4を用いてスイッチ72の動作例について説明する。図4(A)は、スイッチ72を車台58の右方向に摺動させた図であり、図4(B)は、スイッチ72を車台58の左方向に摺動させた図である。
【0022】
スイッチ72を図4(A)から図4(B)の如く車台58の左方向へ摺動させると、該スイッチ72の引掛部76と係合されている摺動基部42は、引掛部76の傾斜により車台58の後方へと摺動させられ、摺動基部42に軸支された第一歯車52は、基部カバー34に軸支された第二歯車56の小歯車と歯合するようになる。これにより、図3に示すように後輪部14の回転によって、第二歯車56を介して、第一歯車52が回転を行い、該後輪部14が所定の回転を行うと、第一歯車52に形成された係止突起54と、摺動基部42に形成された係止部46とが当接して、第一歯車52の回転を抑止し、後輪部14の回転を停止させる。つまり、走行体10の後輪部14が所定の回転(所定の距離を走行)を行うと、係止突起54と係止部46が当接し、走行体10は停止するものである。
【0023】
また、スイッチ72を図4(B)から図4(A)の如く、車台58の右方向へ摺動させると、該スイッチ72の引掛部76と係合されている摺動基部42は、引掛部76の傾斜により車台58の前方へと摺動させられ、摺動基部42に軸支された第一歯車52は、基部カバー34の前方に形成されたラッチ40と歯合するようになり、第一歯車52は、回転不能となると共に、第二歯車56の小歯車と歯合状態が解除されるようになるものである。つまり、第一歯車52と第二歯車56との歯合状態は、第一歯車52が軸止された摺動基部42が前方へ摺動されることにより、解除され、この停止装置32を無効にすることができる。したがって、スイッチ72を右方向へと摺動させ、停止装置32を無効とされた走行体10は、如何なる距離を走行させても停止することがなくなるものである。
【0024】
また、例えば、第一歯車52及び第二歯車56を摺動基部42に軸支し、左右方向にスイッチ72を摺動させ、摺動基部42を前後に摺動させることによって、後輪部14の後輪歯車30と第二歯車56の大歯車との歯合状態を開放して後輪軸に形成された後輪歯車30の回転が、係止突起を有する第一歯車52に伝達されないようにしても構わない。
【0025】
そして、スイッチ72の操作を確実に行う為に、摺動基部42の側面やスイッチ溝部62にノッチ(図示しない)を形成し、スイッチ72を左右のいずれか一方で係止されるようにしたり、摺動基部42が、走行体10の前方か後方のいずれか一方の位置で、基部カバー34と係止されるようにしたりしても構わない。
【0026】
次に、この手品具としての走行体10の簡単な使用例を説明する。この手品の概要は、複数枚のカードを使って観客の選んだ1枚を当てる手品である。
【0027】
この手品を行う為の準備として、1組のトランプなどのカードを用意する。この手品に使用される複数枚のカードのうち、1枚のカードだけ、左上隅と右下隅に点を描くなど、すぐに裏から判別できるようにする。
【0028】
また、手品具の走行体10の準備として、走行体10のスイッチ72を左方向に摺動させ、停止装置32の第一歯車52と第二歯車56を歯合した状態にし、予め、走行体10の停止装置32の係止突起54と係止部46を当接させ係合した状態にし、走行体10を前進できない状態にする。
【0029】
次に、この手品の手順を説明する。まず、使用者が判別可能とされる特定のカードを、複数枚のカードの1番下とするようにする。この複数枚のカードを裏向きに広げ、観客に好きな1枚のカードを選んでもらい、そのカードを見て覚えてもらう。その後、複数枚のカードを重ねて閉じ、選んだカードをその1番上に戻してもらう。その後、複数枚のカード全体を中程で2つに分け、上下を入れ替えて重ねると、相手の選んだカードは、特定のカードの直下に位置することになる。
【0030】
次に、各カード78が等間隔となるように帯状に広げ、特定のカード80が確認できるようにする。相手のカードはそのすぐ左側にあることになる。その後、図5(A)に示すように帯状に広げたカードの左前方に、走行体10を載置する。その後、図5(B)に示すように走行体10を1センチほど持ち上げ、車軸を回転させることなく右方向に移動させ、特定のカード80の左側にある相手のカードの前に走行体10を載置し、走行体10のタイヤとテーブルを接触させる。すぐに続けて、図5(C)に示すように帯状に広げたカードの右前方まで、走行体10を後進させる。これにより、走行体10の停止装置32の係止突起54と係止部46の当接状態は解除され、走行体10を相手のカードの位置から後進走行させた分だけ、第一歯車52が逆回転する。
【0031】
次に、図5(D)に示すように観客に、走行体10の上に指を当ててもらい、走行体10を前方に走行させてもらう。これにより、走行体10は、先程、後進走行させた分だけ、第一歯車52が正回転し前進走行する為、走行体10は、特定のカード80の左側にある相手のカードの前で停止するようになる。その後、停止した走行体10の前に位置するカードを表向きにして、観客の選んだカードであることを確認するようにする。この時に、走行体10を持ち上げ、観客に気づかれないように走行体10のスイッチ72を右方向に摺動させて、テーブルの上に戻す。これにより、後輪歯車30から停止装置32の第一歯車52への回転伝達を遮断した状態にすることによって、手品後に、走行体10を走行させても、タネも仕掛けもないように見せることができるものである。
【0032】
このようにして観客は単純な走行玩具に見える走行体10が、自分が選んだ特定のカード80を知って停車する不思議な現象を体験することとなる。
【0033】
以上説明したように構成することにより、様々な手品で用いることができ、より不思議に見せることのできる手品具を提供することができる。また、好ましい実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々に改変できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る手品具の外観を示す図である。
【図2】本発明に係る手品具の走行体の分解斜視図面である。
【図3】本発明に係る手品具の停止装置の側面を示す図面である。
【図4】本発明に係る手品具の停止装置の断面図である。
【図5】本発明に係る手品具の使用例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10 走行体
12 前輪部
14 後輪部
16 前輪タイヤ
18 前輪軸
22 後輪ホイル
24 四角形凹部
26 後輪タイヤ
28 四角形突起
30 後輪歯車
32 停止装置
34 基部カバー
36 軸穴
38 摺動開口
40 ラッチ
42 摺動基部
44 軸穴
46 係止部
48 引掛受部
50 凸部
52 第一歯車
54 係止突起
56 第二歯車
58 車台
60 リブ
62 スイッチ溝部
64 停止装置凹部
66 前輪部受け
68 後輪部受け
70 カバー
72 スイッチ
74 鍔部
76 引掛部
78 カード
80 特定のカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在な車輪軸に軸着された車輪を有する走行体であって、前記走行体に、所定の距離を走行させると前記車輪の回転を停止させる停止装置を備え、前記停止装置は、係止突起を有する歯車と、前記係止突起を有する歯車と前記車輪軸に設けた歯車とを歯合させる歯車と、前記係止突起と係合可能とされる係止部とを有し、前記係止突起を有する歯車が所定の回転を行うと前記係止突起と係止部が係合して、前記車輪の回転を停止させることを特徴とした手品具。
【請求項2】
請求項1において、前記走行体は、前記係止突起を有する歯車を摺動させ、この係止突起を有する歯車と車輪軸に設けた歯車との回転伝達を遮断することにより停止装置を無効にするスイッチを備えたことを特徴とした手品具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−73350(P2008−73350A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257916(P2006−257916)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(391010529)株式会社テンヨー (33)
【Fターム(参考)】