説明

手工具装置のための収容ハウジング

【課題】電子部品を、装置の外部から視認可能もしくは物理的にアクセス可能であり、電子機器を保護するため収容空間を填隙剤で充填可能にする収容ハウジングを得る。
【解決手段】開口15を設けた第1ハウジング部分13と、開口15を閉じるため第2ハウジング部分14とを有し、ハウジング部分13,14により収容空間16を構成し、また、電子部品17,18,19を取り付けた基板20であって、第1ハウジング部分13内部において開口15から距離Aだけ離間して配置した該基板20を有する手工具装置のための収容ハウジングにおいて、前記第2ハウジング部分に少なくとも1個のスリーブ部分26を設け、スリーブ部分26の軸線方向自由長Lを、少なくとも基板20と開口15との間の距離Aに等しい長さとする。少なくとも1個のスリーブ部分26により生ずる内部空間27に通じるアクセス開口29を、第2ハウジング部分14に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1前段に示すような、手工具装置のための収容ハウジングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばハンマドリルやチゼルハンマ、丸のこ、糸のこ、研磨機、ドライバなどの、手工具装置を制御するために、電子装置を収容ハウジング内部に設置する。このような収容ハウジングは、開口を設けた第1ハウジング部分と、開口を閉じるための第2ハウジング部分を有し、これらハウジング部分が、1個の収容空間を構成する。第1ハウジング部分内部には、電子部品を取り付けた基板を、開口から離間して配置する。
【0003】
特許文献1から、手工具装置のための収容ハウジングが知られており、この収容ハウジングは、開口を設けたバスタブ(浴槽)形状の第1ハウジング部分を含み、その内部には、例えば制御用部品や光学的な表示素子、プラグなどの電子部品を取り付けた基板を、開口から離間して配置する。基板の保護のために、第1ハウジング部分の開口を、第2ハウジング部分として構成したカバープレートによって覆い、このカバープレートは固定機構によって第1ハウジング部分に固定する。カバープレートは、表示素子の光を視認できるように、少なくとも光学的な表示素子の領域では、透明または半透明にする。
【特許文献1】スイス国特許第665150号明細書
【0004】
この既知の従来技術の欠点は、第1ハウジング部分と第2ハウジング部分の間に、水分や埃が収容空間に入り込むことがあり、電気系統の故障を引き起こすことである。
【0005】
このような収容ハウジングを、外部からの侵入、とりわけ水分や埃が収容部分に入り込むことから保護するために、収容空間、ハウジング部分相互を組み付けた後、填隙材によって充填する。
【0006】
既知の従来技術には、装置の外部視認可能もしくは物理的にアクセス可能な電子部品も、同様に完全に封入されてしまうという欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電子部品それぞれが、装置の外部から視認可能もしくは物理的にアクセス可能であり、電子機器を保護するため収容空間を填隙剤で充填可能にする収容ハウジングを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。従属請求項において、好適な実施態様を示す。
【0009】
本発明によれば、第2ハウジング部分に少なくとも1個のスリーブ部分を設け、このスリーブ部分の軸線方向自由長を、少なくとも基板と開口との間の距離に等しい長さにする。
【発明の効果】
【0010】
少なくとも1個のスリーブ部分を第2ハウジング部分に設け、例えば、基板上に配置した光学的な表示素子を外部から視認可能に、もしくは基板上に配置したプラグを外部から物理的にアクセス可能にする。少なくとも1個のスリーブ部分の軸線方向長さは、ハウジング部分相互を組み付けた後、ハウジング部分の遊端領域の遊端が、基板の表面に圧着する寸法を選択する。収容空間の残存する領域は、双方のハウジング部分を組み付けた後に、適切な填隙材によって充填し、周囲の封鎖領域は、少なくとも1個のスリーブ部分によって生ずる内部空間、及び従って、内部空間に設置した電子部品に填隙材が侵入するのを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
少なくとも1個のスリーブ部分により生ずる内部空間に通じるアクセス開口を、第2ハウジング部分に設けると好適であり、このアクセス開口を通して、基板に配置した電子部品、例えばプラグに対して、外部から物理的にアクセス可能になる。視認可能な電子部品、例えばLEDの場合、電子部品に対するアクセス可能性は必ずしも要求されず、第2ハウジング部分は、少なくとも1個のスリーブ部分の領域において、透明もしくは少なくとも半透明であればよい。
【0012】
少なくとも1個のスリーブ部分の少なくとも遊端領域を、弾性変形可能な材料により形成すると好適であり、これによって、遊端が、双方のハウジング部分を組み付けたときに折り返り、収容空間と基板との間の、及び従って、少なくとも1個のスリーブ部分によって生ずる内部空間に対する確実な封止が保証される。例えば、弾性変形可能な材料としてエラストマが使用できる。代わりに、少なくとも1個のスリーブ部分全体、もしくは第2ハウジング部分全体を、弾性変形可能な材料により形成することができる。
【0013】
少なくとも1個のスリーブ部分の周縁にアンダーカットを設けると好適である。アンダーカットは、第1ハウジング部分の周端縁の形状に合わせて形成すると好適であり、アンダーカットによる補完結合によって、第1ハウジング部分と第2ハウジング部分を容易に固定することが可能になる。この補完結合は、残存する収容空間を填隙材でしている間に、双方のハウジング部分の位置を保持し、第1ハウジング部分における開口及び内部空間に、填隙材が収容空間から流れ込むのを防ぐ。
【0014】
少なくとも1個のスリーブ部分を、その遊端領域において、じょうご状に延ばして形成すると好適であり、これによって、双方のハウジング部分を組み付けた際に、少なくとも1個のスリーブ部分の遊端領域が、確実な封止を生ずるよう、基板に向かって外側に折り返り、少なくとも部分的に基板の表面に面接触する。
【0015】
少なくとも1個のスリーブ部分の厚みを、遊端に向かうに従って小さくなるように形成すると好適であり、これによって、双方のハウジング部分を組み付けた際に、少なくとも1個のスリーブ部分の遊端領域が容易に変形し、簡単に基板に圧着できる。
【0016】
以下の詳細な説明及び特許請求の範囲全体から、本発明のさらなる好適な実施態様と特徴の組み合わせが得られるであろう。
【0017】
次に、図面につき本発明の実施例をさらに詳述する。基本的に、図面において同一の部分には、同一の参照符号を付して説明する。
【実施例】
【0018】
手工具装置(図示せず)のための図1〜図3に示す収容ハウジングは、長孔として形成した開口15を設けたバスタブ形状の第1ハウジング部分13と、開口15を閉鎖する第2ハウジング部分14とを有し、ハウジング部分13,14により収容空間16を構成する。第1ハウジング部分13内部には、電子部品17、LED18及びプラグ19を取り付けた基板20を、開口15から距離Aだけ離間させて配置する。
【0019】
第2ハウジング部分14には、3個のスリーブ部分26を設け、スリーブ部分26の軸線方向自由長Lを、プリント基板20と開口15との間の距離Aよりも大きく構成する。スリーブ部分26の軸線方向自由長Lは、少なくとも距離Aに相当するので、スリーブ部分26の遊端領域28は、第1ハウジング部分と第2ハウジング部分とを組み付けた状態で、3個の内部空間27が形成されると、筒状の封鎖領域を覆うプリント基板20の表面21に密着し、収容領域16を内部空間27に対して封鎖する。第2ハウジング部分内部では、内部空間27毎にそれぞれアクセス開口29を設け、これによって、内部空間27内部に設置すべきLED18を外部から視認できるとともに、プラグ19に対して外部から物理的にアクセスできる。
【0020】
スリーブ部分26の遊端領域28は、エラストマ材料により形成し、じょうご状に延ばし、このときスリーブ部分26の厚みは、遊端に向かうに従って小さくなるように形成する。この実施例では、スリーブ部分26は、軸線方向延長部では、双曲線形状の外側輪郭を有する。
【0021】
アンダーカット31を形成するために、ハウジング部分26に、第1ハウジング部分13の遊端縁32に合致する周方向窪みを設ける。アンダーカット31によって生ずる補完結合によって、第2ハウジング部分及び従ってスリーブ部分26の遊端領域28は、填隙材23をハウジング部分13における注入開口22を介して注入し、収容空間16を充填する際に、基板20の表面21に対する着床状態を保持する。填隙材23は、第1ハウジング部分と第2ハウジング部分との組み付け後に生ずる収容空間16を充填し、視認不要で、物理的にアクセス不能な電子部品17を完全に、ならびにプリント基板20を、LED18およびプラグ19の領域を除いて、封入する。したがって、電子機器の故障の原因となる水分や埃が、収容空間16に侵入することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】収容ハウジングの平面図である。
【図2】図1におけるII-II線上の収容ハウジングの縦断面図である。
【図3】スリーブ部分を有する第2ハウジング部分の拡大詳細図である。
【符号の説明】
【0023】
11 収容ハウジング
13 第1ハウジング部分
14 第2ハウジング部分
15 開口
16 収容空間
17 電子部品
18 LED
19 プラグ
20 基板
21 表面
22 注入開口
23 シーリング填隙材
26 スリーブ部分
27 内部空間
28 遊端領域
29 アクセス開口
31 アンダーカット
32 遊端縁
A 距離
L 長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口(15)を設けた第1ハウジング部分(13)と、前記開口(15)を閉じるため第2ハウジング部分(14)とを有し、前記ハウジング部分(13,14)により収容空間(16)を構成し、また、電子部品(17,18,19)を取り付けた基板(20)であって、前記第1ハウジング部分(13)内部において前記開口(15)から距離(A)だけ離間して配置した該基板(20)を有する手工具装置のための収容ハウジングにおいて、
前記第2ハウジング部分に少なくとも1個のスリーブ部分(26)を設け、
前記スリーブ部分(26)の軸線方向自由長(L)を、少なくとも前記基板(20)と前記開口(15)との間の前記距離(A)に等しい長さとしたことを特徴とする収容ハウジング。
【請求項2】
前記少なくとも1個のスリーブ部分(26)により生ずる内部空間(27)に通じるアクセス開口(29)を、前記第2ハウジング部分(14)に設けたことを特徴とする請求項1に記載の収容ハウジング。
【請求項3】
前記少なくとも1個のスリーブ部分(26)の少なくとも遊端領域(28)を、弾性変形可能な材料により形成することを特徴とする請求項1または2に記載の収容ハウジング。
【請求項4】
前記少なくとも1個のスリーブ部分(26)に、周方向のアンダーカット(31)を設けることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の収容ハウジング。
【請求項5】
前記少なくとも1個のスリーブ部分(26)を、その遊端領域(28)において、じょうご状に延ばして形成することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の収容ハウジング。
【請求項6】
前記少なくとも1個のスリーブ部分(26)の厚みを、遊端に向かうに従って小さくなるように形成することを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の収容ハウジング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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