説明

手押し式芝刈機

【課題】把持しやすく、押しやすい芝刈機のグリップを提供する。
【解決手段】
芝刈機10は、芝刈機本体20と、芝刈機本体20から伸びるアーム32、34と、アーム32、34の先端32b、34bに設けられたグリップ50を備えている。グリップ50の両端部52、54はアーム面Aの一方側に位置しており、グリップ50の中央部56はアーム面Aの他方側に位置しており、グリップ50がアーム面Aと交差するように構成されている。ここでいうアーム面Aとは、芝刈機10の左右方向に伸びる直線に平行であるとともに、アーム32、34が位置する仮想平面を意味する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手押し式(ウォークビハインド型)の芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に、手押し式の芝刈機が開示されている。この芝刈機は、刈刃を有する芝刈機本体と、芝刈機本体から伸びるアームを有している。アームの先端には、ユーザによって把持されるグリップが設けられている。ユーザは、グリップを把持し、芝刈機を押しながら歩くことで、芝生を刈り込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−346530号公報
【特許文献2】特開2009−225693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手押し式の芝刈機では、把持しやすく、かつ、押しやすいグリップが求められる。そこで、本発明は、手押し式の芝刈機において、把持しやすく、かつ、押しやすいグリップを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、手押し式の芝刈機において、グリップをアーム面と交差させる。それにより、グリップを把持しやすく、かつ、押しやすくすることができる。ここでいうアーム面とは、芝刈機の左右方向に伸びる直線に平行であって、かつ、アームが位置する仮想平面を意味する。
【0006】
上記の技術的思想を得るために、本発明者は、特許文献1、2に開示された芝刈機のグリップの検証を行った。その結果、特許文献1に開示された芝刈機のグリップでは、被験者が、押しやすいと感じる一方で、把持しにくいと感じることが判明した。それに対し、特許文献2に開示された芝刈機のグリップでは、被験者が、把持しやすいと感じる一方で、押しにくいと感じることが判明した。
【0007】
特許文献1に開示された芝刈機では、グリップがアーム面上に位置している。グリップがアーム面上に位置していると、ユーザによってグリップに加えられた力が、芝刈機本体へアームに沿って真っ直ぐに伝えられる。この場合、アームが湾曲したり、アームが芝刈機本体に対して回転したりすることがないので、ユーザはグリップを押しやすいと感じる。その一方で、グリップがアーム面上に位置していると、ユーザがグリップを把持したときに、ユーザの手の平が下方又は上方を向く。一般に、人が手を前方へ挙げると、手の平は真上や真下を向かずに、自然と軽く内側を向く。そのことから、ユーザがグリップを把持したときに、ユーザの手の平が真上又は真下を向くと、手が捻られた状態となるため、ユーザはグリップを把持しにくいと感じる。特に、長時間に亘ってグリップを握り続けたときに、ユーザは疲労感を感じやすい。
【0008】
特許文献2に開示された芝刈機では、グリップがアーム面と角度を成す面上に位置している。グリップがアーム面に対して角度を成していると、ユーザは、手の平が内側を向くように、グリップを上方又は下方から把持することができる。そのことから、ユーザは、グリップを把持しやすいと感じる。その一方で、特許文献2に開示された芝刈機では、グリップの全体が、アーム面に対して一方側に位置している。このような構造であると、ユーザがグリップを押したときに、アームに対して回転モーメントが生じて、アームが湾曲したり、アームが芝刈機本体に対して回転しようとする。その結果、ユーザは、グリップを押しにくいと感じてしまう。
【0009】
以上の知見に基づき、本発明では、芝刈機のグリップをアーム面と交差させる。この構成によると、グリップがアーム面に対して角度を成すとともに、グリップの一部がアーム面上に位置する。グリップがアーム面に対して角度を成すことから、ユーザは、手の平が内側を向くようにグリップを握ることができる。グリップの一部がアーム面上に位置することから、ユーザはアームに沿ってグリップを押すことができる。その結果は、ユーザは、グリップを把持しやすく、かつ、押しやすいと感じることができる。
【0010】
本発明の一実施形態では、手押し式の芝刈機が、芝刈機本体と、芝刈機本体から後上方に伸びるアームと、アームの先端に設けられたグリップを備え、当該グリップがアーム面と交差していることが好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態では、グリップの両端部がアーム面の一方側に位置するとともに、グリップの中央部がアーム面の他方側に位置することが好ましい。この構造では、グリップがアーム面と少なくとも二度交差するので、ユーザが両手でグリップを把持するときに、グリップのアーム面と交差する二箇所を、左右の手でそれぞれ把持することができる。
【0012】
上記した実施形態では、グリップの両端部をアーム面の下方側に位置させるとともに、グリップの中央部をアーム面の上方側に位置させることができる。あるいは、グリップの両端部をアーム面の上方側に位置させるとともに、グリップの中央部をアーム面の下方側に位置させることもできる。本発明者の検証によれば、多くの被験者が前者の構造を使いやすいと感じる一方で、後者の構造を使いやすいと感じる被験者も存在することが確認されている。
【0013】
前記したグリップは、アームの延長線と交差することがより好ましい。この構造によると、ユーザは、アームの延長線上でグリップを把持することができ、アームに沿ってグリップを押しやすくなる。
【0014】
前記したグリップは、アーム面に対して角度を成す平面、特に、垂直な平面に沿って伸びていることが好ましい。この構造によると、ユーザがアームに沿ってグリップを押したときに、グリップを把持するユーザの手が滑りにくくなる。
【0015】
本発明の一実施形態では、前記したグリップを、左右一対のグリップとし、左右の各グリップが、アーム面と交差するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】走行式芝刈機を示す斜視図。
【図2】実施例のハンドルユニットの斜視図。
【図3】実施例のハンドルユニットの平面図。
【図4】実施例のハンドルユニットの背面図。
【図5】実施例のハンドルユニットの右側面図。
【図6】ハンドルユニットの変形例を示す平面図。
【図7】ハンドルユニットの他の変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、実施例の芝刈機10を示している。芝刈機10は、手押し式(ウォークビハインド型)の芝刈機である。即ち、ユーザは、芝刈機10を押しながら歩くことで、芝生を刈り込むことができる。
【0018】
図1に示すように、芝刈機10は、芝刈機本体20と、芝刈機本体20から後上方に伸びる左アーム32及び右アーム34と、左アーム32及び右アーム34に設けられたハンドルユニット40と、芝刈機本体20の後部に設けられた集草かご28を備えている。芝刈機本体20は、複数の車輪22、24を有しており(一部の車輪は図示されていない)、芝生上を走行可能に構成されている。また、芝刈機本体20は、芝生を刈り込む刈刃(図示省略)と、刈刃を駆動するモータ(図示省略)を有している。
【0019】
左アーム32及び右アーム34は、芝刈機本体20から互いに平行に伸びている。左アーム32の基端32aは、芝刈機本体20の左側面に取り付けられており、芝刈機本体20に対して回転可能に支持されている。右アーム34の基端34aは、芝刈機本体20の右側面に取り付けられており、芝刈機本体20に対して回転可能に支持されている。各々のアーム32、34の回転軸は左右方向に平行であるとともに、左右のアーム32、34の回転軸は同一直線上に位置している。
【0020】
ハンドルユニット40は、左アーム32の先端32b及び右アーム34の先端34bに固定されている。ハンドルユニット40は、ユーザに把持されるグリップ50と、グリップ50の下面に設けられたメインスイッチ62と、グリップ50の上面に設けられたロックスイッチ64を備えている。メインスイッチ62とロックスイッチ64は、グリップ50を把持するユーザによって操作される。メインスイッチ62は、芝刈機本体20の刈刃を駆動/停止するためのスイッチであり、ロックスイッチ64は、メインスイッチ62をロック/アンロックするためのスイッチである。
【0021】
次に、芝刈機10の使用方法について説明する。ユーザは、芝刈機10の後方でグリップ50を把持し、芝刈機10を押しながら歩く。このとき、ユーザは、ロックスイッチ64によるロックを解除し、メインスイッチ62を操作する。メインスイッチ62への操作に応じて、芝刈機本体20ではモータが刈刃を駆動する。芝刈機本体20は、ユーザに押されながら芝生上を走行し、刈刃によって芝生を刈り込んでいく。なお、本実施例の芝刈機10の使用方法は、従来の芝刈機の使用方法と比較して、特別に異なるものではない。
【0022】
次に、図2から図5を参照して、ハンドルユニット40の構造について詳細に説明する。図2は、ハンドルユニット40の斜視図である。図3は、ハンドルユニット40の平面図である。図4は、ハンドルユニット40の背面図である。図5は、ハンドルユニット40の右側面図であり、ハンドルユニット40の左側面を示す。
【0023】
ハンドルユニット40は、左右方向に伸びる下梁部46と、下梁部46の両端からそれぞれ伸びる一対の側柱部48と、一対の側柱部48の上端を互いに接続するグリップ50を有している。下梁部46と一対の側柱部48とグリップ50は一連に連なっており、ハンドルユニット40は、略長方形のループ形状を有している。下梁部46には、左アーム32に固定される左ソケット部42と、右アーム34に固定される右ソケット部44が設けられている。各々の側柱部48は、下梁部46に接続された下端部から、グリップ50に接続された上端部に向けて、後方(下方)に傾斜している。グリップ50には、図4に示すように、滑り止めの溝68がグリップ50の長手方向に沿って複数形成されている。複数の滑り止めの溝68は、グリップ50のユーザが把持する範囲に合わせて形成されている。
【0024】
グリップ50は、アーチ状に湾曲しており、左右対称な形状を有している。ここで、グリップ50は、アーム面Aに対して平行でなく、アーム面Aに対して垂直な平面Bに沿って伸びている。ここでいうアーム面Aとは、芝刈機10の左右方向に伸びる直線に平行であるとともに、左右のアーム32、34が位置する仮想平面を意味する。このようなグリップ50の形状によると、ユーザがグリップ50を左右の手で把持したときに、各々の手の平が軽く内側を向くことになる。このような姿勢は、ユーザが自然に前方へ手を挙げたときの姿勢に近い。従って、ユーザはグリップ50を楽に握り続けることができる。さらに、グリップ50が、アーム面Aに対して垂直な平面Bに沿って伸びているので、ユーザが芝刈機10を強く押した場合でも、グリップ50を把持するユーザの手が滑りにくい。
【0025】
手押し式の芝刈機10では、グリップ50を把持するユーザが、左右のアーム32、34に沿ってグリップ50を押す必要がある。そうでなければ、左右のアーム32、34に回転モーメントが発生してしまい、回転可能に支持されている左右のアーム32、34が、芝刈機本体20に対してぐらついてしまう。この点に関して、本実施例のハンドルユニット40では、グリップ50がアーム面Aと交差するように配置されている。この構成によると、ユーザは、グリップ50のアーム面Aと交差する部分を把持し、左右のアーム32、34に沿って真っ直ぐにグリップ50を押すことができる。
【0026】
特に、本実施例のハンドルユニット40では、グリップ50の両端部52、54がアーム面Aの一方側に位置するとともに、グリップ50の中央部56がアーム面Aの他方側に位置している。従って、グリップ50は、左端部52から中央部56までの区間でアーム面Aと一度交差し、中央部56から右端部54までの区間でアーム面Aと再度交差している。この構成によると、ユーザは、グリップ50のアーム面Aと交差する二箇所を、左右の手でそれぞれ把持することができる。
【0027】
特に、本実施例のハンドルユニット40では、グリップ50が、左右のアーム32、34の延長線と交差するように構成されている。この構成によると、ユーザは、左右のアーム32、34の延長線上で、グリップ50を把持することができ、左右のアーム32、34に沿って真っ直ぐにグリップ50を押すことができる。
【0028】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0029】
上記した実施例では、グリップ50がアーム面Aに対して垂直な平面Bに沿って伸びているが、グリップ50が位置する平面Bは、アーム面Aに対して必ずしも垂直である必要はない。グリップ50は、アーム面Aに対して60度、120度、135度といった角度を成す平面に沿って伸びるものであってもよい。あるいは、グリップ50が位置する平面Bの角度を、アーム面Aに対して調整可能に構成することも好ましい。
【0030】
上記した実施例では、グリップ50がアーチ状に湾曲しているが、グリップ50はV字状に屈曲するものであってもよいし、U字状に湾曲するものであってもよい。グリップ50は、ユーザの把持する部分がアーム面Aと交差するものであればよく、その形状は特に限定されない。
【0031】
上記した実施例では、芝刈機10が左右一対のアーム32、34を有しているが、芝刈機10は、単一のアームを有するものであってもよいし、三本以上のアームを有するものであってもよい。
【0032】
図6に示すように、ハンドルユニット40では、左グリップ152と右グリップ154からなる一対のグリップ50を設けることもできる。図6に示すハンドルユニット40では、左グリップ152がアーム面Aと交差しているとともに、右グリップ154もアーム面Aと交差している。この構成によっても、ユーザは、一対のグリップ50を楽に把持することができるとともに、左右のアーム32、34に沿ってグリップ50を押すことができる。なお、芝刈機本体20が比較的に小型の場合は、ユーザが片手でも芝刈機10を押すことが可能であるので、ハンドルユニット40には左右のグリップ152、154の一方のみを設けてもよい。
【0033】
上記した実施例のハンドルユニット40では、グリップ50を逆向きに湾曲又は屈曲させてもよい。即ち、図1から図5に示すハンドルユニット40では、ユーザが芝刈機本体20の後方でグリップ50を把持したときに、グリップ50の両端部52、54がアーム面Aの下方側に位置するとともに、グリップ50の中央部56がアーム面Aの上方側に位置する。それに対して、図7に示すハンドルユニット40の変形例は、ユーザが芝刈機本体20の後方でグリップ50を把持したときに、グリップ50の両端部52、54がアーム面Aの上方側に位置するとともに、グリップ50の中央部56がアーム面Aの下方側に位置するように構成されている。このハンドルユニット40では、左右の手の甲が下側を向くように、ユーザはグリップ50を下側から把持することができる。この場合、各々の手の平が軽く内側を向くことになり、ユーザの手の姿勢が自然なものとなることから、ユーザはグリップ50を楽に握り続けることができる。
【0034】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0035】
10:芝刈機
20:芝刈機本体
22:車輪
32:左アーム
34:右アーム
40:ハンドルユニット
50:グリップ
52:グリップの左端部
54:グリップの右端部
56:グリップの中央部
152:左グリップ
154:右グリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手押し式の芝刈機であって、
芝刈機本体と、
芝刈機本体から後上方に伸びるアームと、
アームの先端に設けられているグリップを備え、
芝刈機本体の左右方向に伸びる直線に平行であるとともにアームが位置する仮想平面をアーム面としたときに、前記グリップがアーム面と交差することを特徴とする芝刈機。
【請求項2】
前記グリップの両端部が前記アーム面の一方側に位置するとともに、前記グリップの中央部が前記アーム面の他方側に位置することを特徴とする請求項1に記載の芝刈機。
【請求項3】
前記グリップの両端部が前記アーム面の下方側に位置するとともに、前記グリップの中央部が前記アーム面の上方側に位置することを特徴とする請求項2に記載の芝刈機。
【請求項4】
前記グリップは、前記アームの延長線と交差することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の芝刈機。
【請求項5】
前記グリップは、前記アーム面に対して角度を成す平面に沿って伸びていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の芝刈機。
【請求項6】
前記グリップは、前記アーム面に対して垂直な平面に沿って伸びていることを特徴とする請求項5に記載の芝刈機。
【請求項7】
前記グリップは、左右一対のグリップであって、
左右の各グリップが、前記アーム面と交差していることを特徴とする請求項1に記載の芝刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−44896(P2012−44896A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188451(P2010−188451)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】