説明

手持ち器具の把手構造

【課題】 高齢者、障害者、幼児などの使用に適する飲食具や歯ブラシ等の手持ち器具とするために、作用部分の把手に対する位置を任意に変更することができる把手を提供する。
【解決手段】 連結部と把手本体部2と固定機構部から構成され、連結部の基部13が球状外周面を備え、先部11側に器具の主要部となる作用部12が設けられると共に、基部に基方が開口して、開口部が弾性によって拡窄し且つ球状外周面と同心の球状凹部を形成し、把手本体部2には、先端に基部13が収納される装着凹部23を備え、固定機構部が、連結部の球状凹部に圧入装着される球形連結部31と所定の拡大頭部33に突設して把手本体部を貫通する連結棒32とで形成し、作用部12が所望の方向に向けた後に連結固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者、障害者、幼児などの使用に適する飲食具や歯ブラシ等の手持ち器具に使用される把手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者等は、必ずしも棒状柄の先部に、直線的に掬い部を設けたスプーンや刺突部を設けたフォークなどの通常の形態の飲食具は使い難いので、従前より種々の変形飲食具が提案されている。また歯ブラシについても同様な提案がなされている。
【0003】
例えば特開2002−85486号公報(特許文献1)には、グリップ部とグリップ部を握った際の人差指と中指の間にスプーンを突出させた飲食具が開示されている。
【0004】
また特開2001−2886516号公報(特許文献2)には、握り柄の軸中心から口元に近づくように掬い部を傾斜させたスプーンが開示されている。
【0005】
更に特開2000−253982号(特許文献3)には、形状記憶樹脂を用い使用者自身の使い易い形状に変形させる柄部を備えた飲食具は高価であるので、撓曲できる板状の金属板製柄の中間部分を捻った形状のスプーンが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−85486号公報。
【特許文献2】特開2001−2886516号公報。
【特許文献3】特開2000−253982号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記文献1,2開示の飲食具は、握り柄部分と掬い部とは所定の角度に定まっており、飲食具の使用者毎に対応していない。そして文献3記載の握り柄の形状を変化させることができる飲食具は、必ずしも所望の変形状態が維持されずに、洗浄などによって撓曲状態が変化してしまう可能性が高い。また逆に撓曲性を少なくして変形に要する力を大きくすると、使用者の所望の形状とすることができにくい。
【0008】
そこで本発明は、所望の掬い部や刺突部などの器具作用部を所望の角度に容易に固定できる新規な飲食具を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る手持ち器具の把手構造は、基部が球状外周面を備え、先部側に器具の主要部となる作用部が設けられると共に、基部に基方が開口して、開口部が弾性によって拡窄し且つ球状外周面と同心の球状凹部を形成した連結部と、先基が貫通して先端に前記連結部の基部が収納される装着凹部を備え、基端に拡大頭部の受け部を設けた把手本体部と、連結部の球状凹部に圧入装着される球形連結部及び所定の拡大頭部に把手本体部を貫通する連結棒を突設して、連結棒と球形連結部に連結固定手段を備えさせた固定機構部で構成されることを特徴とするものである。
【0010】
而して連結部の基部の球状凹部内に球形連結部を圧入装着し、前記基部を把手本体部の装着凹部内に収納し、把手本体部の基端から連結棒を差し入れ、連結棒と球形連結部の連結固定で、連結部と把手本体部と固定機構部全体を一体化して手持ち器具の把手を構成するものである。
【0011】
特に連結部は基部が装着凹部内において任意方向で収納でき、且つ球形連結部も球状凹部内で任意方向に移動できるので、作用部を所望の方向に向けた後連結部を連結固定することで、把手本体部に対して所望方向に作用部が設けられている手持ち器具を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記構成を備えているものであるから、作用部が任意方向に設定できると共に、特に強い力が加わらない限り通常の使用並びに洗浄などにおいて、当該形態が維持されるものであり、且つ製造コストも低くでき、高齢者や介護用に最適な手持ち器具の提供を容易にしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態は本発明を飲食具(スプーン)に適用した例を示した。
【0014】
実施形態の飲食具は、連結部1と把手本体部2と、固定機構部3で構成される。連結部1は、先部11にスプーンの掬い部(作用部)12を突設したものであり、基部13は球状外周面を備えると共に、内部に前記球状外周面と同心の球状凹部14を形成しているものである。
【0015】
前記球状凹部14は、基方が開口し且つ開口部が弾性によって拡窄するようにしている。例えば連結部1を適宜な弾性を備えた樹脂製に形成し、開口部直径を球状凹部14の直径より小さく形成し、且つ開口部縁から適宜な切り込みを設けることで、拡窄機能を付与することができる。
【0016】
把手本体部2は、先部体21と本体22で構成され、先部体21は、本体22の先部に嵌合装着されるもので、先端に前記連結部1の基部13がぴったりと収納される装着凹部23を備え、装着凹部23には基端方向への貫通孔が形成されている。
【0017】
本体22は、握持に適する太さを備えた筒状体で、基端の貫通孔開口端周囲に受け部24を設けてなる。この受け部24は後述する球形頭部33と対応する皿状凹部に形成したものである。
【0018】
固定機構部3は、球形連結部31と、連結棒32を突設した球形頭部(拡大頭部)33とで構成される。
【0019】
球形連結部31は、前記連結部1の球状凹部14に圧入装着される大きさで、螺孔34を備えたナット構造である。また連結棒32の先端部分には、ネジ35を刻設したものである。
【0020】
而して連結部1の球状凹部14内に球形連結部31を圧入装着し、その状態で連結部1の基部13を、本体22と連結されている先部体21の装着凹部23内に収納し、本体22の基端の貫通孔から連結棒32を差し入れ、連結棒32の先端ネジ35を球形連結部31の螺孔34に螺合緊締すると、球形連結部31が基端方向に引っ張られ、これに伴なって連結部1の基部13が装着凹部23の内壁に押し付けられることで、全体が一体化するものである。
【0021】
特に装着凹部23と基部13と球状連結部31が同心球面を備えているので、球形頭部33で球形連結部31と連結棒32の緊締螺合を緩めて、作用部12を所望方向に移動させた後、球形頭部33を操作して緊締すると、作用部12は当該位置で固定されることになる。
【0022】
従って簡単な操作で、使用者が望む方向に作用部が配設されたスプーンを得ることができるものである。
【0023】
尚本発明は前記のスプーンに限定されるものではなく、掬い部に替えて刺突部を採用してフォークとしても良いし、また連結部1への作用部12の付設構造も、着脱構造を採用することで汎用性を有する把手を提供するようにしても良い。
【0024】
勿論本発明は、上記実施形態のように飲食具に限定されるものではなく、歯ブラシ等その他の手持ち器具全てに適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態を示す全体の分解図。
【図2】同作用部の移動固定の説明図(平面視断面図)。
【図3】同作用部の移動固定の説明図(正面図)。
【符号の説明】
【0026】
1 連結部
11 先部
12 掬い部(作用部)
13 基部
14 球状凹部
2 把手本体部
21 先部体
22 本体
23 装着凹部
24 受け部
3 固定機構部
31 球形連結部
32 連結棒
33 球形頭部(拡大頭部)
34 螺孔
35 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部が球状外周面を備え、先部側に器具の主要部となる作用部が設けられると共に、基部に基方が開口して、開口部が弾性によって拡窄し且つ球状外周面と同心の球状凹部を形成した連結部と、先基が貫通して先端に前記連結部の基部が収納される装着凹部を備え、基端に拡大頭部の受け部を設けた把手本体部と、連結部の球状凹部に圧入装着される球形連結部及び所定の拡大頭部に把手本体部を貫通する連結棒を突設して、連結棒と球形連結部に連結固定手段を備えさせた固定機構部で構成されることを特徴とする手持ち器具の把手構造。
【請求項2】
固定機構部の連結棒と球形連結部との連結固定手段を、連結棒の先端にネジを刻設し、球形連結部をナット構造としてなる請求項1記載の手持ち器具の把手構造。
【請求項3】
連結部の先部に掬い部又は刺突部を設けて飲食具としてなる請求項1又は2記載の手持ち器具の把手構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−6587(P2006−6587A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187303(P2004−187303)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000130536)株式会社サクライ (3)
【Fターム(参考)】