説明

手摺棒状材とその加工方法及びこれに用いる曲げ加工治具

【課題】耐光性の良い、金属製の表皮層を有する手摺棒状材とその加工方法とそれに用いる曲げ加工治具を提供する。
【解決手段】直線状の手摺からなる手摺棒状材1であって、半硬質樹脂製の円柱基層3に金属製の薄板からなる表面層2を被覆・仕上げしてなり、該手摺棒が現場で曲げ加工治具にて曲げ加工しうる手摺棒状材1と、金属製の薄板を曲げて熔接するパイプ状の表面層2を製造工程と、該パイプ内に半硬質樹脂製の円柱基層3を挿入・製造する工程と、前記表面層2の表面を研磨する仕上げ工程と、現場にて曲げ加工治具で曲げ加工する工程とからなる手摺棒状材1の加工方法及び直線状の手摺からなる手摺棒状材を現場で曲げ加工する曲げ加工治具であって、基台上に間隔を開けて配位した左右サイドローラとその中央手前に配位した押えローラとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺棒状材とその加工方法に係るものであり、さらに詳しくは建築現場において曲折しうる直線状の手摺棒状材とその加工方法及びそれに用いる曲げ加工治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に廊下や階段や浴室や壁等に設置される手摺は、直線状のものだけに限らず、手摺の末端や階段の踊場等で、手摺に曲折部が必要になる。そのため従来は、直線状の手摺棒状材に、曲折したコーナージョイント部を連結していた(例えば特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2006−2522号公報
【特許文献2】特開2009−46841号公報
【0003】
しかし、コーナージョイント部をいくつも連結する必要も生じ、煩雑であり手触りも好ましいものとはいえなかった。そのため、直線状の手摺棒状材を予め曲げておくことも求められる。しかし、その曲げるカーヴは均一でないため、いくつもの手摺を用意しなければならず、実用的ではない。
【0004】
そのため、現場のカーヴに合わせて、現場で曲げうる直線状の手摺棒状材が宿望されている(例えば特許文献3)。しかし特許文献3は、コイルバネを内蔵させたもので、高価で実用性の乏しいものであった。
【特許文献3】特開2004−60150号公報
【0005】
そこで、外周部に屈曲しうる樹脂被覆層を形成した手摺棒状材が、いくつか提案されている(例えば特許文献4、特許文献5)。
【特許文献4】特開2004−360405号公報
【特許文献5】特開2005−36624号公報
【0006】
特許文献4と特許文献5は、軟質樹脂からなる硬度60〜100の中間層に、硬質樹脂からなる0.5〜3mm厚の表皮層を形成させることにより、曲げ加工時に外側の白化発生を防止し、内側のしわ発生を防止させたものである。
【0007】
同じく、外周部に屈曲しうる樹脂被覆層を形成した別の手摺棒状材として、市場に広く出回っているものもある(例えば特許文献6、特許文献7)。
【特許文献6】特開平10−88763号公報
【特許文献7】特開平7−207867号公報
【0008】
特許文献6は、軟質又は半硬質ポリ塩化ビニ−ルの基層に、可塑剤を含む半硬質ポリ塩化ビニ−ルに微粒子木粉を入れた表面層を形成したものである。また特許文献7は、軟質又は半硬質熱可塑性合成樹脂の基層に、軟質又は半硬質熱可塑性合成樹脂に微粒子木粉を入れた表面層を形成したものである。
【0009】
従って、特許文献6と特許文献7は、木目模様の表現された手摺であって、建築現場において曲げ加工に耐えして、円弧状曲折部を得ることのできるものとなっている。しかし、特許文献6と特許文献7の手摺棒状材は、耐久性に問題があり、特に耐光性が悪く屋外での使用に支障があった。また、ステンレス等の金属製表皮の手摺に対する要望も依然として根強いものがある。
【0010】
その際、直線状の手摺棒状材を、建築現場において曲げ加工するための曲げ加工治具が必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の事情に鑑み本発明は、耐光性の良い、金属製の表皮層を有する手摺棒状材とその加工方法と曲げ加工治具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために、直線状の手摺からなる手摺棒状材であって、半硬質樹脂製の円柱基層に金属製の薄板からなる表面層を被覆・仕上げしてなり、該手摺棒が現場で曲げ加工治具にて曲げ加工しうる手摺棒状材を構成するものである。
【0013】
また本発明は上記目的を達成するために、金属製の薄板を曲げて熔接するパイプ状の表面層の製造工程と、該パイプ内に半硬質樹脂製の円柱基層を挿入・製造する工程と、前記表面層の表面を研磨する仕上げ工程と、現場にて曲げ加工治具で曲げ加工する工程とからなる手摺棒状材の加工方法を構成するものである。
【0014】
更に、本発明は上記目的を達成するために、直線状の手摺からなる手摺棒状材を現場で曲げ加工する曲げ加工治具であって、基台上に間隔を開けて配位した左右サイドローラとその中央手前に配位した押えローラとからなり、該全ローラは円形でその側面は手摺の径に相当する凹状溝状からなって、前記左右サイドローラは円形の軸を基台の前方に回動自在に枢着し、一方押えローラは円形の軸を基台上の螺旋螺子棒の先端に回動自在に枢着し、該螺旋状螺子棒はその中間を基台に固着したブラケットに挿通され、該螺旋状螺子棒の後端を回動してその先端の押えローラが前方に作動し、前記左右サイドローラと押えローラ側面の凹状溝内にセットした直線状の手摺を屈曲して曲げうるようにした手摺棒状材の曲げ加工治具を構成するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の手摺棒状材は、建築現場において、その現場に即応した形状に曲げ加工することができるので、コーナージョイントや屈曲手摺を現場に持ち込む必要がなくなった。
【0016】
本発明の手摺棒状材は、曲げ加工したものが、曲折部分にひび割れや皺や剥離を発生することなく、綺麗な円弧状の曲折部を形成することができる。
【0017】
本発明の手摺棒状材は、耐光性や耐久性がよく、屋外で長時間使用しても支障がない。
【0018】
本発明の手摺棒状材は、金属製の触感と相俟って、高級建材の様相を現出することができる。
【0019】
本発明の手摺棒状材用曲げ加工治具を使用して曲げた手摺棒状材は、コーナー部分に、ひび割れや皺や剥離を起こさず、綺麗な曲げ加工品をうることができる。
【0020】
本発明の手摺棒状材用曲げ加工治具は、軽量・小型にコンパクトにできているので、現場に持ち込むのに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明の手摺棒状材の曲げ加工した後の状態を示す斜視図、図2は、本発明の手摺棒状材の加工工程を示す斜視図、図3は、本発明の手摺棒状材を現場で曲げ加工する際の曲げ加工治具で、(イ)は上からみた平面図、(ロ)は(イ)をI−I´線で切断した断面図、図4は本発明の実施例で手摺棒状材の管体の製造装置の斜視図である。
【0023】
本発明の直線状の手摺からなる手摺棒状材は、図1の1であり、パイプ状の表面層2と、円柱状の基層3とからなっている。この手摺棒状材1は、先ず図2に示すように、一点破線で示すような金属製の薄板21を、図2の実線のように曲げて熔接22することにより、表面層2は製造される。本実施例の金属は、1.2mm厚のステンレス鋼を使用しているが、この厚みは、必ずしも限定されるものではないが、1.0mm厚のものを使用することも好ましい。また本実施例に使用のステンレス鋼は、絞り材用のステンレス鋼で、軟質化と低耐力化を図ったオーステナイト系ステンレス鋼を使用しており、特にCrの成分が18パーセント以下の絞り時に割れの発生しにくい、加工に適した延性の得られる軟らかい材料を使用している。なお基層3を、円柱状としてはいるが、中まで全部詰まったものでなくてもよく、例えば中に金属製の芯材やパイプを嵌合したものでもかまわない。
【0024】
図4に示すように、管体の素材である、例えばオーステナイト系ステンレス鋼帯板11 がアンコイラー12 から連続的に供給され、成形ロール13 〜22 によって順次管状に成形される。次いで、ステンレス鋼帯板11の軸線方向に亘るスリット状の被溶接部である継ぎ目部が形成され溶接時の太さに縮径され、溶接トーチ24を備えた溶接装置23で加熱溶接され、スクイズロール25,26で圧接される。その後冷却装置27を通り、冷却水をシャワー状にかけて冷却され、サイジングロール群28〜33で管体を縮径し、次いで縦矯正ロール34〜39、横矯正ロール40〜45で整形されるものである。
【0025】
先程の熔接箇所は、仕上げする必要がある。従って、表面層2の表面を研磨にて仕上げる工程が施される。研磨には、鏡面仕上げのように、表面をピカピカに仕上げる場合もあるが、本実施例の場合には、ヘアーライン加工仕上げにしている。ヘアーライン加工仕上げしたものは、表面に軽い縦筋が入る状態にはなっているが、表面は金属製の光沢を有し、満足のいくものとなっている。
ヘアーライン加工仕上げ装置48は、図3に示すように、モータ47に駆動される回転ブラシ46が交換自在に装着され、熔接箇所が回転ブラシ46によってヘアーライン加工される。なお、その後切断装置49によって切断された金属管を往復走行させながら ヘアーライン加工仕上げ装置48で研磨し、金属管を一研磨幅分の角度で回転させ、次いで金属管を往復走行させながら ヘアーライン加工仕上げ装置48で研磨して金属管の全周をヘアーライン加工仕上げしてもよい。
【0026】
次に、このパイプ状の表面層2内に、半硬質樹脂製の円柱基層3を挿入・製造する工程によって、手摺棒状材1は作られる。本実施例の場合には、別途作られた円柱状の基層3を、表面層2内に挿入した。しかし、パイプ状の表面層2内に直接、半硬質樹脂製の基層3を注入して製造することもできる。半硬質樹脂としては、本実施例の場合、66ナイロンを使用した。しかし、ポリ塩化ビニ−ル樹脂等を使用することもできる。ここで半硬質樹脂とは、ひび割れや皺等を生じずに、曲げ加工に対応しうるものであり、本実施例の場合、66ナイロンでロックウエル硬度が80HRC以下、好ましくは、60〜80HRC、ASTM、D−785試験法、Rスケールで80〜120のものからなっている。従って、手で曲げられるような軟らかいものではないが、建築現場での曲げ加工治具による曲げには十分耐えうるものである。
【0027】
このようにして製造された本発明の手摺棒状材1は、現場に即した形状に曲げ加工される。ただし、本発明の手摺棒状材1は、丈夫の半硬質樹脂製の基層3と、金属製の薄板からなる表面層2とからなるため、手や足で容易に曲げることはできない。そのため、曲げ加工治具が使用される。図3は、建築現場に搬送される曲げ加工治具100であり、小型・軽量でコンパクトに造られている。
【0028】
曲げ加工治具100は、基台110上に間隔を開けて配位した左右サイドローラ120,130と、その中央手前に配位した押えローラ140とからなっている。全ローラ120,130,140は、円形で側面が手摺棒状材1の径3mmに相当する凹状溝141からなっており、全ローラ120,130,140の先端が直線状に配位した状態で、手摺棒状材1を装着しうるようになっている。
【0029】
押えロ−ラ140は、螺旋螺子棒150の先端に、回動自在に枢着されており、螺旋状螺子棒の後端手前に連結されたキャップ154を回動させ、その先端の押えローラ140を前方に作動させれば、左右サイドローラ120,130と押えローラ140との3点で把持された手摺棒状材1を曲げることができる。押えローラ140は、曲率の相違する各種のものを取り揃えており、屈曲の度合いに応じ、押えローラ140を変えて曲げることができる。
【0030】
左右サイドローラ120,130は、半円形からなり、その軸122,132を基台110の前方奥の方に回動自在に枢着している。一方、押えローラ140は、その手前にあって、本実施例の場合、円形で、その軸142を螺旋螺子棒150の先端に回動自在に枢着している。ただし、この押えローラ140は、1種だけではなく、曲率の相違する円形ないし半円形の径のものを、3種程度取り揃えており、屈曲したい曲げの度合いに応じて変更し、その曲げ角度を調節しうるようになっている。
【0031】
この螺旋螺子棒150は、その中間を基台110に固着152,152したブラケット153に挿通・螺合されている。そして、螺旋螺子棒150の後端には、基台110から隔離されたキャップ154が連結されている。キャップ154は、上下に穴155を貫通し、この穴155に、梃子棒156を差し込んで回せば、螺旋螺子棒150が回動し、その先端の押えローラ140が前後動するようになっている。従って、基台110は、梃子棒156が回動しうるように、図示してないが、架台上に設置されている。
【0032】
そのため、全ローラの先端が一直線状になった時点で、左サイドローラ120の凹溝から、押えローラ140の凹溝141、右サイドローラ130の凹溝へと、曲げ加工しようとする直線状の手摺棒状材1をセットする。そして、梃子棒156を回して先端の押えローラ140を前進させると、押えローラ140は、図3のように、間隔を開けて配位した左右サイドローラ120,130の間に進行して、手摺棒状材1は曲げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の手摺棒状材の曲げ加工した後の状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の手摺棒状材の加工工程を示す斜視図である。
【図3】本発明の手摺棒状材を現場で曲げ加工する際の曲げ加工治具で、(イ)は上からみた平面図、(ロ)は(イ)をI−I´線で切断した断面図である。
【図4】本発明の実施例で手摺棒状材の管体の製造装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 手摺棒状材
2 表面層
21 金属製の薄板
22 金属製薄板の熔接
3 基層
100 曲げ加工治具
110 曲げ加工治具の基台
120 左サイドロ−ラ
130 右サイドロ−ラ
140 押えロ−ラ
141 凹状溝
150 螺旋螺子棒
154 螺旋螺子棒のキャップ
155 キャップの穴
156 キャップに差し込む梃子棒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状の手摺からなる手摺棒状材であって、半硬質樹脂製の円柱基層に金属製の薄板からなる表面層を被覆・仕上げしてなり、該手摺棒状材が現場で曲げ加工治具にて曲げ加工しうることを特徴とする手摺棒状材。
【請求項2】
金属製の薄板を曲げて熔接するパイプ状の表面層を製造工程と、該パイプ内に半硬質樹脂製の円柱基層を挿入・製造する工程と、前記表面層の表面を研磨する仕上げ工程と、現場にて曲げ加工治具にて曲げ加工する工程とからなることを特徴とする手摺棒状材の加工方法。
【請求項3】
前記金属が、ステンレス・アルミニウム・鉄からなる請求項1または請求項2の手摺棒状材とその加工方法。
【請求項4】
前記薄板が、1.0mm〜1.2mm厚からなる請求項1または請求項2の手摺棒状材とその加工方法。
【請求項5】
前記仕上げの研磨工程が、ヘアーライン加工からなる請求項2の手摺棒状材の加工方法。
【請求項6】
直線状の手摺からなる手摺棒状材を現場で曲げ加工する曲げ加工治具であって、基台上に間隔を開けて配位した左右サイドローラとその中央手前に配位した押えローラとからなり、該全ローラは円形でその側面は手摺の径に相当する凹状溝状からなって、前記左右サイドローラは円形の軸を基台の前方に回動自在に枢着し、一方押えローラは円形の軸を基台上の螺旋螺子棒の先端に回動自在に枢着し、該螺旋状螺子棒はその中間を基台に固着したブラケットに挿通され、該螺旋状螺子棒の後端を回動すればその先端の押えローラが前方に作動し、前記左右サイドローラと押えローラ側面の凹状溝内にセットした直線状の手摺を屈曲して曲げうるようにしたことを特徴とする手摺棒状材の曲げ加工治具。
【請求項7】
基台に軸で回動自在に枢着した左右サイドローラが、押えローラを前方に作動した際、両開きに回動するようにした請求項1記載の手摺棒状材の曲げ加工治具。
【請求項8】
押えローラが、円形ないし半円形からなり、径の異なる部品を取り揃えるようにした請求項1記載の手摺棒状材の曲げ加工治具。












【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−281085(P2010−281085A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134414(P2009−134414)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(509156077)
【出願人】(509156088)
【Fターム(参考)】