説明

手洗い洗濯用洗剤組成物

【課題】冷涼感・洗濯のし易さ(揉み洗いやすさ)を同時に達成し、手洗い洗濯を快適に行うことができる手洗い用洗剤組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(a)メントール0.1〜2.5質量%、(b)平均分子量が50万以上の有機ポリマーであって、構成モノマーの60モル%以上がスルホン酸基若しくはその塩型の基又は硫酸基若しくはその塩型の基を有する有機ポリマーからなる群から選ばれる1種以上の有機ポリマー0.6質量%以上、並びに、(c)(c1)界面活性剤、(c2)アルカリ剤及び(c3)金属イオン封鎖剤からなる群から選ばれる1種以上の洗剤成分を含有する手洗い洗濯用洗剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷涼感を有し、かつ衣類の手もみ洗いを改善した手洗い洗濯用洗剤組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯方法としては、大きく分けて手洗い洗濯と洗濯機洗濯の2種類がある。近年では洗濯機の普及により洗濯機による洗濯が増加する傾向にあるが、汚れ落ちや経済性の観点から、依然、手洗い洗濯も行われている。
【0003】
手洗い洗濯は、洗濯機による洗濯と比較した場合、汚れの落ち具合、被洗浄物の種類等、状況に応じたキメ細かい洗浄が可能となる一方、洗濯をする者にとって、周囲の環境、特に暑い時期においては汗をかいたりして不快な作業になり、肉体的、精神的疲労感を伴うことがあった。また、被洗浄物同士をこすり合わせる「もみ洗い」は、被洗浄部位に機械力をかけやすく、最も自然な手洗い方法の1つであるが、長時間の作業は、洗濯をする者の負担となる。そのため、早く終わらせたいという気持ちになることから、その結果、汚れ落ちも不充分なまま終了することがあった。従って、手洗い洗濯には疲労感が消失するような快適性が求められていた。
【0004】
特許文献1には、l−メントール等を配合して、手洗いでの洗濯の際に作業者に冷涼感を与えることができる洗剤が開示されている。また、特許文献2にも、メントール等の冷涼感を付与できる成分を配合した顆粒状洗剤組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、驚くべきことに、メントールを配合すると衣類の滑り性が低下することから、揉み洗いがしにくくなるため、反って手洗い洗濯がしにくくなり疲労感が出てしまう、または不快因子になるという課題のあることが判明した。もみ洗い時に生じる局所的な摩擦は、人の場合は手の擦り傷、切り傷の原因となり、被洗浄物の場合は、繊維の磨耗、いわゆる「布の傷み」となって現れる。繊維の傷みは、衣類の耐用期間を短くするのみならず、汚れの付着性の点では促進因子となり、洗浄に必要な肉体的負担がさらに増加する原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−160914号公報
【特許文献2】国際公開第01/34753号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
手洗い洗濯では、作業者に冷涼感を与えることで、特に周囲の環境によっては快適さや楽しさを与えることができる。しかしながら、単なる冷涼剤を添加するのみでは、手洗い洗濯時の衣類の滑り性が低下し、揉み洗いがし難くなる。その結果、洗濯時の快適さが損なわれることが判明した。このように手洗い洗濯の基本は、衣類の汚れを取ることに加えて、揉み洗いのし易さや冷涼感にあることが判った。
【0008】
本発明の課題は、冷涼感・洗濯のし易さ(揉み洗いやすさ)を同時に達成し、手洗い洗濯を快適に行うことができる手洗い用洗剤組成物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記(a)〜(c)を含有する手洗い洗濯用洗剤組成物に関する。
(a)メントール 0.1〜2.5質量%
(b)(b1)平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマー、及び(b2)平均分子量が50万以上の有機ポリマーであって、構成モノマーの60モル%以上がスルホン酸基若しくはその塩型の基又は硫酸基若しくはその塩型の基を有する有機ポリマーからなる群から選ばれる1種以上の有機ポリマー 0.6質量%以上
(c)(c1)界面活性剤、(c2)アルカリ剤及び(c3)金属イオン封鎖剤からなる群から選ばれる1種以上の洗剤成分
【0010】
また、本発明は、下記工程(イ)と(ロ)を含む、手洗い洗濯用洗剤組成物の製造方法に関する。
工程(イ):(a)メントール〔以下、(a)成分という〕と油性溶媒とを含有する液状プレミックスを調製する工程
工程(ロ):工程(イ)で得られた液状プレミックスと、(b)(b1)平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマー、及び(b2)平均分子量が50万以上の有機ポリマーであって、構成モノマーの60モル%以上がスルホン酸基若しくはその塩型の基又は硫酸基若しくはその塩型の基を有する有機ポリマーからなる群から選ばれる1種以上の有機ポリマー〔以下、(b)成分という〕と、(c)(c1)界面活性剤、(c2)アルカリ剤及び(c3)金属イオン封鎖剤からなる群から選ばれる1種以上の洗剤成分〔以下、(c)成分という〕と、を混合する工程
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、手洗い洗濯の際に手もみ洗いがし易く、かつ冷涼感を感じることで、非常に快適な洗濯ができる手洗い洗濯用洗剤組成物及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<(a)成分>
本発明においては、(a)成分のメントール、特にl−メントールと(b)成分とを組合せることにより、非常に快適な手洗い洗濯を達成することができる。ここで、メントールの手洗い洗濯用洗剤組成物への添加方法については、特に制限されるものではないが、例えば、常温(25℃)で固体であるl−メントールを用いる場合には、(1)固体を粉砕して細かくして添加する方法、(2)メントールを融点以上で溶かし、造粒中もしくはアフターブレンド等で噴霧して添加する方法、及び(3)メントールを油性溶剤に溶かした後に、例えば、造粒中もしくはアフターブレンド等で噴霧して添加する方法などを挙げることができる。中でも、ハンドリング性の観点から、上記(3)の添加方法がより好ましい。
【0013】
上記(3)の添加方法についてより詳細に説明する。ここで、用いる油性溶媒としては、特に制限されるものではないが、アルコール系化合物、エステル系化合物、エーテル系化合物、アルデヒド系化合物、ケトン系化合物、テルペン炭化水素またはそれらが混合されている油性溶媒であって、常温(25℃)でメントールを溶解もしくは微分散し均一の液状物にできるものであれば用いることができる。特に、洗剤組成物に添加されるという観点から、常温で揮発しにくく、かつ、メントールを溶解できるものであって、更には洗濯液中でも安定的に存在しうる油性溶媒を選ぶことが望ましい。油性溶媒には、例えば、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレート、ミリスチン酸イソプロピルなどが挙げられる。一方、油性溶媒の量が多くなると、添加される液状成分が増えるため、粉末物性低下の恐れがある。従って、液状成分の使用量をできるだけ少なくするために、油性溶媒として、もしくは油性溶媒の一部として、洗剤用香料成分を用いることが望ましい。更にはメントール臭と相性のよいシトラス系の香料成分、例えばリモネン、シトラールなどが含まれていることが望ましい。
【0014】
液状プレミックス中の(a)成分と油性溶媒との合計量は0.15質量%以上が好ましく、より好ましくは0.3〜2.0質量%、更に好ましくは0.5〜1.5質量%である。また、液状プレミックスにおいては、ハンドリングの観点から、(a)成分/油性溶媒の質量比は2/1〜1/4が好ましく、より好ましくは2/1〜1/3、更に好ましくは2/1〜1/2である。
【0015】
更に、液状プレミックスの温度は、常温(25℃)で液状であればよく、洗剤への添加時の温度は問わないが、安定性の点から60℃以下が好ましい。また、粘度は常温(25℃)で100mPa・s以下が好ましく、更に50mPa・s以下が好ましい。一方、10mPa・s以上が好ましい。
【0016】
液状プレミックス添加後の粉末物性の観点から、上記(c)洗剤成分100質量部に対して、液状プレミックス0.15質量部以上、更に0.5〜1.5質量部を混合することが好ましい。
【0017】
<(b)成分>
本発明で用いられる(b)成分の有機ポリマーは、特定の冷涼剤を添加したことに伴う衣類の滑り性や揉み洗いし易さを改善する成分であって、以下の(b1)及び(b2)からなる群から選ばれる1種以上の有機ポリマーである。好ましくは、(b2)の有機ポリマーである。
【0018】
(b1)平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマー
(b1)の有機ポリマーを用いることにより、メントール添加による衣類の滑り性や揉み洗いし易さを改善できるという効果、即ち、家庭で行われる手洗い洗濯に使用した際に、手洗いにおける感触が向上し、同時に肉体的な負荷を緩和し、さらに、衣類のケア及び手擦れ低減をもなしうるという効果が奏される。また、洗濯機洗濯に使用する際にも、そのすべり性が衣類の傷みを防ぎ、衣類間がすべることで洗濯機中でのからまりをも防止することで、型崩れを防ぐ等の衣類ケアの効果がある。
【0019】
(b2)平均分子量が50万以上の有機ポリマーであって、構成モノマーの60モル%以上がスルホン酸基又はその塩型の基、又は硫酸基又はその塩型の基を有する有機ポリマー
(b2)の有機ポリマーを用いることにより、再汚染防止性を劣化させることなく、家庭で行われる手洗い洗濯に使用した際に、手洗いにおける感触が向上し、同時に肉体的な負荷を緩和し、さらに、衣類のケア及びハンドケアをもなしうるという効果が奏される。また、洗濯機洗濯に使用する際にも、そのすべり性が衣類の傷みを防ぎ、衣類や繊維間がすべることで洗濯機中でのからまりや変形をも防止することで、型崩れを防ぐ等の衣類ケアの効果がある。
【0020】
〔平均分子量の定義〕
本発明で用いられる有機ポリマーの平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)測定により決定できる。標準サンプルにはポリエチレンオキサイド(PEO)を使用し、PEO換算分子量を用いる。なお本発明においては、数平均分子量や重量平均分子量ではなく、GPC溶出曲線の検出強度が最も高い留分のPEO換算値(以下、ピークトップ分子量と言う)をもって、平均分子量とする。即ち、例えば「平均分子量が150万以上の有機ポリマー」とは、そのピークトップ分子量がPEO換算分子量にして150万以上の値を呈する有機ポリマーを示す。
【0021】
〔GPC法測定条件〕
カラムはPW/GMPWXL/GMPWXL(東ソー(株)製)、溶離液に0.2Mリン酸バッファー(KH2PO4、Na2HPO4、pH=7)/CH3CN=9/1(重量比)を用い、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/min、サンプル濃度は1〜100μg/mLとする。検出器は、RALLS(90°光散乱解析計)を用いる。尚、RID(示差屈折計)を用いても平均分子量の概算値は見積もることができる。RIDを用いたGPC分析は、例えば、カラム:GMPWXL+GMPWXL、溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1(重量比)、カラム温度:40℃、流速:0.5mL/min、濃度:0.05mg/mLとして測定する。
【0022】
以下に本発明に用いられる有機ポリマーについてより詳細に説明する。
(b1)の有機ポリマー
曳糸性を有する有機ポリマーとしては、平均分子量が大きい有機ポリマーほど、より少量で目的とする「すべり性」を実現することができるので、メントール配合洗剤において有利に働かせることができる。より希薄濃度でも十分な「すべり性」を実現するという点から、平均分子量は200万以上が好ましく、250万以上がより好ましく、300万以上がさらに好ましい。一方、溶解性の観点からは、平均分子量は、10,000万以下が好ましく、3,000万以下がより好ましく、2,000万以下がさらに好ましい。
【0023】
本発明でいう曳糸性を有する有機ポリマー(以下、曳糸性有機ポリマーともいう)は、その水溶液が前記の曳糸性を呈する、有機ポリマーのことである。この曳糸性有機ポリマーは、一般に、高分子量の有機高分子が発現する所謂「増粘性有機ポリマー」とは異なる。本発明に於いて曳糸性有機ポリマーは、好ましくはその濃度30g/L以下の水溶液が曳糸性を呈する有機ポリマーであり、より好ましくはその濃度10g/L以下の水溶液が曳糸性を呈する有機ポリマーであり、さらに好ましくはその濃度5g/L以下の水溶液が曳糸性を呈する有機ポリマーである。
【0024】
本発明において、有機ポリマーの曳糸性の有無は、以下の方法で判定する。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.07重量%と無水炭酸ナトリウム0.07重量%を含有する水溶液に、その水溶液粘度が約500mPa・s、約200mPa・s、約100mPa・s、約20mPa・s(B型粘度計、0°DH、60r/min、25℃で測定した値)となるポリマー濃度で有機ポリマーを添加した混合水溶液を調製し、得られた混合水溶液の曳糸性を下記〔曳糸性判定法〕に準じた方法で判定し、いずれかの粘度で曳糸性を有する場合、曳糸性有機ポリマーとする。
【0025】
〔曳糸性判定法〕
先端内径1mmのパスツールピペット(ガラス、例えばASAHITECHNO GLASS、IK−PAS−5P)より静かに滴下操作をした際に、糸を曳いた水溶液を、本発明において曳糸性を呈する水溶液とする。長く糸を曳く溶液を強い(又は高い)曳糸性を持つ水溶液とする。水溶液は25℃で、よく攪拌して判定に用い、少なくともパスツールピペットの先端を落下地点から5mm離して滴下操作を行うこととする。曳糸性の強い水溶液に関しては、より高い位置から滴下操作を行うと、より確認しやすい。滴下操作は複数回行って確認しても構わない。通常、滴下操作の際に確認される「糸」は、1mmより幅が細いものである。本物性については、サーモハーケ社伸張粘度測定装置CaBER1(Capillary Breakup Extensional Rheometer)のような機器により測定することもできる。
【0026】
(b2)の有機ポリマー
本発明で用いられるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーは、ビニル系重合体であっても良いし、縮合重合系ポリマーであっても良いし、ポリエーテル系ポリマーであっても良い。
【0027】
本発明で用いられるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーがビニル系重合体である場合、モノマーユニットであるスルホン酸基及び/又はその塩型の基、及び/又は硫酸基及び/又はその塩型の基を有するビニル系構成モノマーとしては、特に限定されるものでないが、例えば、重合性が高く、高分子量体を得やすいことから、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−アルキル(炭素数1〜4)プロパンスルホン酸、及びスチレンスルホン酸由来の基が好ましく、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びスチレンスルホン酸由来の基がさらに好ましく、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸由来の基がさらに好ましい。
【0028】
スルホン酸基又は硫酸基の塩型の基を形成する対イオンとしては、特に限定されるものではないが、例えばナトリウムイオン、カリウムイオンの様なアルカリ金属のイオン、又はアンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオンがさらに好ましい。
【0029】
本発明におけるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーにおいて、前記構成モノマーは、単独で又は2種類以上を併用してもよく、構成モノマーが2種以上である場合、これらの構成モノマーの配置としては、特に限定はなく、ランダム配置でも交互配置でもブロック配置でもよい。
【0030】
本発明におけるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーがビニル系重合体である場合、ビニル系重合体の合成法は特に限定されず、公知の方法を選択できる。例えば、スルホン酸基(及び/又はその塩型の基)、及び/又は硫酸基(及び/又はその塩型の基)を含有するビニル系モノマーを単独重合しても良いし、これとスルホン酸基(及び/又はその塩型の基)、及び/又は硫酸基(及び/又はその塩型の基)を含有しない他のモノマーとを前者のモル分率が60モル%以上となる比率で共重合しても良い。あるいはまた、既存の任意のポリマーに、構成モノマーの60モル%以上の比率でスルホン酸基(及び/又はその塩型の基)、及び/又は硫酸基(及び/又はその塩型の基)を導入して用いても良い。
【0031】
かかるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーは、洗剤が扱う代表的な汚れ粒子である、泥やすすといった固体粒子を考えた場合、洗濯液中で、これらのいずれの汚れ粒子とも親和性が低いと考えられる。このため、泥、すす、いずれの粒子が洗濯浴中に存在する場合であっても、該ポリマーの高重合体がすべり性を発現できるような濃度で洗濯液中に存在する場合において、複数の粒子に同時に吸着して凝集の原因とならないと考えられ、従って繊維と粒子のバインダーとなって汚れが衣類に再付着しにくい。すなわち本発明の曳糸性有機ポリマーがスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーである場合においては、ポリマーを構成するモノマーの内、これらのスルホン酸系モノマー、硫酸系モノマーのモル分率が多いものほど好ましい。
【0032】
スルホン酸基(及び/又はその塩型の基)、又は硫酸基(及び/又はその塩型の基)を含有する構成モノマーの量は、全構成モノマー中において60モル%以上が好ましく、66モル%以上がより好ましく、85モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。
【0033】
本発明におけるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーとしては、平均分子量が50万以上の分子が用いられる。平均分子量が大きい分子ほど、より少量で目的とする「すべり性」を実現することができる。より希薄濃度でも十分なすべり性を実現するという点から、平均分子量は100万以上が好ましく、150万以上がより好ましく、200万以上がさらに好ましく、250万以上がさらに好ましく、300万以上がさらに好ましく、450万以上がさらに好ましく、500万以上がさらに好ましく、600万以上がさらに好ましい。ただし、溶解性の観点からは、平均分子量は、3,000万以下が好ましく、2,000万以下がより好ましい。より具体的には、国際公開第2005/78059号パンフレットに記載の曳糸性ポリマーから選択して用いることができる。
【0034】
また、本発明におけるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーの物性においても、「すべり性」の発現に好適な物性は、「曳糸性」である。曳糸性の高いポリマーほど、より少量の配合量で「すべり性」を発現させることができるので、メントール配合洗剤において有利に働かせることができる。本発明においては、曳糸性が高いとは、より低濃度の水溶液、及びより低い粘度の水溶液が曳糸性を呈することを意味する。分子量が高く、架橋性の低い直鎖状のポリマーほど曳糸性が高く、良く「すべり性」を発現し、本発明において好ましいポリマーである。
【0035】
<(c)成分>
本発明の手洗い洗濯用洗剤組成物は、(c)成分として、(c1)界面活性剤〔以下、(c1)成分という〕、(c2)アルカリ剤〔以下、(c2)成分という〕及び(c3)金属イオン封鎖剤〔以下、(c3)成分という〕からなる群から選ばれる1種以上の洗剤成分を含有する。(c1)成分、(c2)成分及び(c3)の2種以上、更には(c1)、(c2)及び(c3)成分のそれぞれを含有することが好ましい。
【0036】
〔(c1)成分〕
洗浄性を高める点で、界面活性剤は、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤を主界面活性剤として使用することができる。中でも、陰イオン性界面活性剤が好ましい。
【0037】
陰イオン界面活性剤としては、特に限定されるものでないが、例えば、炭素数10〜18のアルキル鎖を持つ直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルファスルフォ脂肪酸メチルエステル塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、アルキル又はアルケニルリン酸エステル又はその塩等のアルカリ金属塩が好ましく、牛脂やヤシ油由来の脂肪酸塩を配合してもよい。特に、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。アニオン界面活性剤は、本発明に規定される有機ポリマーの「曳糸性」、また有機ポリマーによる「すべり性付与効果」をさらに高める効果をもつ。この点から、洗剤組成物中のアニオン界面活性剤の含有量は、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、12重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましく、18重量%以上がさらに好ましく、20重量%以上がさらに好ましい。また、粉末物性の観点から、40重量%以下が好ましく、35重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。
【0038】
また、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン〔好ましくはオキシエチレン及び/又はオキシプロピレン〕アルキルエーテルが好適である。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキシド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、脂肪酸グリセリンモノエステルも使用できる。非イオン性界面活性剤は、耐硬水性が良好であるうえに、皮脂汚れなどの油性汚れの洗浄力が際立っている。起泡性やすすぎ性の観点から15重量%以下の使用が好ましく、5重量%以下、更に3重量%以下、更に0重量%(不含)がより好ましい。
【0039】
本発明の洗剤組成物には、さらにベタイン型両性界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、石鹸、陽イオン界面活性剤等の界面活性剤も適宜配合することができる。
【0040】
〔(c2)成分〕
洗浄性の点からは、アルカリ剤を洗剤組成物に配合することが好ましい。アルカリ剤の例としては、デンス灰やライト灰と総称される炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、並びにJIS1号、2号、3号珪酸ナトリウム等の非晶質のアルカリ金属珪酸塩、結晶性アルカリ金属珪酸塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩は、本発明に規定される有機ポリマーによる「すべり性」をさらに高める効果をもつ。この点から、洗剤組成物中のアルカリ金属炭酸塩の含有量は、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、7重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましい。また、配合のバランスの観点から、40重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0041】
〔(c3)成分〕
ビルダーとして、金属封鎖剤を手洗い洗濯用洗剤組成物に配合し、洗濯水中の硬度成分を捕捉することは、洗浄性の点から非常に効果的である。また、金属イオン封鎖剤は、本発明に規定されるポリマーによる「すべり性」をさらに高める効果を持つ。特にカルシウムイオン捕捉能100mgCaCO3/g以上である金属イオン封鎖剤を配合することがより効果的である。かかる金属イオン封鎖剤としては、結晶性アルミノ珪酸塩(ゼオライト)、結晶性珪酸ナトリウム、アクリル酸重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、トリポリリン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸が挙げられる。中でも、ゼオライトがより好ましい。ただし、炭酸ナトリウム、非晶質珪酸ナトリウムは、本発明においては金属イオン封鎖剤に含まれないこととする。
【0042】
<(d)成分>
本発明の手洗い洗濯用洗剤組成物においては、メントールの効果維持の観点から、(d)リモネン、シトラール、テルピノーレン、リナロール、ジヒドロミルセノール、α−ピネン、β−ピネン、ミルセン、l−メントン、ライム油からなる群から選ばれる1種以上の香料成分〔以下、(d)成分という〕を含有することが好ましい。(d)成分は、複数を組み合わせた香料組成物として用いることができる。
【0043】
なお、本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、(d)成分以外にも、香料成分として、オレンジ油、カンフェン、ジュニパーベリー油、ペッパーオイル油等の香料成分を含有することができる。これらその他の香料成分は、複数を組み合わせた香料組成物として用いることができる。
【0044】
<手洗い洗濯用洗剤組成物>
本発明の手洗い洗濯用洗剤組成物は、(a)成分を0.1〜2.5質量%、好ましくは0.3〜2.5質量%、より好ましくは0.5〜2質量%含有する。また、(b)成分を0.6質量%以上、好ましくは0.6〜2質量%、より好ましくは0.6〜1.5質量%含有する。また、(c)成分のうち、(c1)の組成物中の含有量は10〜40、更に15〜35質量%、より更に15〜30質量%が好ましい。また、(c2)の組成物中の含有量は5〜30、更に7〜25質量%、より更に10〜20質量%が好ましい。また、洗剤組成物中の(c3)成分の含有量は、洗浄性の観点から、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましい。また、配合のバランスの観点から、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。
【0045】
本発明の手洗い洗濯用洗剤組成物中の(d)成分の含有量は、(a)成分のメントールの効果向上の観点から、0.05重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましく、0.15重量%以上がさらに好ましい。また、手洗い洗濯用洗剤組成物としての香調のバランスの観点から、1.5重量%以下が好ましく、1.2重量%以下がより好ましく、1.0重量%以下が特に好ましい。また、(a)成分/(d)成分の質量比は、2/1〜1/2が好ましく、1.8/1〜1/1がより好ましい。また、(d)成分は、香料成分の全量〔この量には(a)成分の量は含まない〕中、30質量%以上、更に40質量%以上を占めることが好ましい。
【0046】
本発明の(a)成分は、手洗い洗濯の際に作業者に冷涼感を与える成分であり、本発明の(b)成分のような有機ポリマーは、手洗い洗濯における繊維製品(衣類等)の滑り性を向上させる成分である。しかし、本発明者らは、単にこれらを組み合わせても、冷涼感と滑り性の両方が十分に発現しないことを見出し、(a)成分の含有量、(b)成分の含有量、(b)成分の種類を最適化することで、更に、必要に応じて、(d)成分の種類を最適化することで、冷涼感と滑り性の両方に優れた手洗い洗濯用洗剤組成物を実現したものである。
【0047】
本発明の手洗い洗濯用洗剤組成物においては、洗剤組成物で通常用いられる公知の洗剤成分を含有することができる。例えば、(b)成分以外のポリマー、芒硝などを挙げることができる。
【0048】
本発明の手洗い洗濯用洗剤組成物による手洗い洗濯では、該組成物を2〜5g/Lの濃度で含有する洗濯液を用いることが好ましい。
【実施例】
【0049】
水に、表1〜3に挙げる各種洗剤成分を洗剤濃度として3.5g/Lになるように添加し、ビーカーで30分撹拌し、洗剤水溶液を調製した。使用した水の硬度は5°DH、水温30℃であった。桶に洗剤水溶液を移し、肌着(グンゼYG、Lサイズ)と市販のタオル(武井タオル(株))各1枚を浸し、15分静置した。モニター2名(男女1名ずつ)それぞれが、肌着とタオルをそれぞれ合計30分揉み洗いし、滑り性、並びに冷涼感について以下の方法で評価した。
【0050】
<滑り性評価>
タオルはパイル地があり評価が容易であるため、滑り性の評価にはタオルを用いた。比較例1を基準としたときのスコアを示し、0点以上を合格とする。スコアはモニター2名での合計点で算出される。比較例1(基準)より滑るものには+1点、同等であれば0点、基準より劣るものは−1点で示した。
【0051】
<冷涼感の評価>
洗濯液に手をつけながら、タオル、肌着を交互に1時間揉み洗いした。揉み洗いしているときに冷涼感を感じたかどうか、下記の基準で判定した。スコアはモニター2名の合計点で示され、0点以上であれば洗濯中に速やかに冷涼感を感じることができる判断される。また、合計点が−1点以下では、洗濯中は殆ど冷涼感を感じることができないため、冷涼感に劣るものと判断される。
洗濯開始から10分以内に冷涼感を感じた +1点
洗濯開始から10分を超え20分以内に冷涼感を感じた 0点
洗濯開始から20分を超えてから冷涼感を感じた −1点
【0052】
更に、実施例4の洗剤組成物を、日常、主に手洗い洗濯を行っているタイ人のモニター4名に、洗濯温度25〜30℃、浴比10〜20、洗剤濃度3.5g〜5g/Lの条件で手洗い洗濯に使ってもらったところ、以下のような感想を得た。
○泡が柔らかく手もみしやすいし汚れ落ちがよかった。手が熱くならないので気持ちよく洗えるし、もっと洗濯したくなる。 4名中4名
○手が涼しく熱くならないので、途中で休んだり、手を冷やしたりする必要がなく、洗濯時間が短くて効率的である。 4名中2名
○滑りやすく手の摩擦が少ないので手が痛くならない。 4名中3名
以上のように、冷涼感と滑り性(揉み洗いし易さ)を両立することで、究極に快適な手洗い用洗剤となる。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
表中の成分は以下のものである。
・l−メントール:合成メントール、高砂香料工業株式会社製
【0057】
・合成ポリマー:下記合成例により製造された、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムとアクリル酸ナトリウムとのコポリマー(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム/アクリル酸ナトリウム=95/5、モル比)
(合成例)
シュガーエステル(S−770、三菱化学フーズ(株))6.00gをn−ヘキサン800gに溶解させて窒素雰囲気下で還流したところに、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸600g、水酸化ナトリウム160g、アクリル酸10g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミダイン)ジヒドロクロライド(V−50、和光純薬工業(株)製)0.80gをイオン交換水510gに溶解させたものを10℃以下に保ちながら1時間かけて滴下し分散させ、さらに30分攪拌した。共沸脱水/乾燥後、無色粒状ポリマー674g(99.7%)を得た。得られたポリマーのGPC測定の結果、ピークトップ分子量780万であった。平均粒径は、220μmであった。また、得られたポリマーは曳糸性を有していた。
【0058】
・LAS−Na:アルキル基の炭素数が10〜16の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製 ネオペレックスG−15)
・炭酸ナトリウム:山東海化進出口有限公司製
・シリケート:TOKUYAMA SIAM SILICA CO.LTD.製珪酸ナトリウム
・硫酸ナトリウム:江蘇南風元明粉有限公司製
・ゼオライト:HUIYING CHEMICALS CO.,LTD.製
・コポリマー:アクリル酸/マレイン酸コポリマー(Rohm and Hass,Inc.製、ACUSOL479N、重量平均分子量 7万)
【0059】
・香料組成物(d1):下記の組成を有する香料組成物
(1)リモネン 67.0質量%
(2)シトラール 4.0質量%
(3)テルピノーレン 8.8質量%
(4)α−ピネン 2.5質量%
(5)β−ピネン 1.1質量%
(6)ミルセン 0.5質量%
(7)リナロール 8.8質量%
(8)ジヒドロミルセノール 4.4質量%
(9)L−メントン 1.8質量%
(10)ライム油 1.1質量%
(1)〜(10)の合計: 100.0質量%
【0060】
・香料組成物(x1):下記の組成を有する香料組成物
(イ)オレンジ油 79.5質量%
(ロ)1,4−シネオール 4.1質量%
(ハ)カンフェン 5.1質量%
(ニ)ジュニパーベリー油 2.0質量%
(ホ)ペッパーオイル油 1.1質量%
(へ)p−サイメン 8.2質量%
(イ)〜(へ)の合計: 100.0質量%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c)を含有する手洗い洗濯用洗剤組成物。
(a)メントール 0.1〜2.5質量%
(b)(b1)平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマー、及び(b2)平均分子量が50万以上の有機ポリマーであって、構成モノマーの60モル%以上がスルホン酸基若しくはその塩型の基又は硫酸基若しくはその塩型の基を有する有機ポリマーからなる群から選ばれる1種以上の有機ポリマー 0.6質量%以上
(c)(c1)界面活性剤、(c2)アルカリ剤及び(c3)金属イオン封鎖剤からなる群から選ばれる1種以上の洗剤成分
【請求項2】
更に、(d)リモネン、シトラール、テルピノーレン、リナロール、ジヒドロミルセノール、α−ピネン、β−ピネン、ミルセン、l−メントン、ライム油からなる群から選ばれる1種以上の香料成分を含有する、請求項1記載の手洗い洗濯用洗剤組成物。
【請求項3】
下記工程(イ)と(ロ)を含む、手洗い洗濯用洗剤組成物の製造方法。
工程(イ):(a)メントール〔以下、(a)成分という〕と油性溶媒とを含有する液状プレミックスを調製する工程
工程(ロ):工程(イ)で得られた液状プレミックスと、(b)(b1)平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマー、及び(b2)平均分子量が50万以上の有機ポリマーであって、構成モノマーの60モル%以上がスルホン酸基若しくはその塩型の基又は硫酸基若しくはその塩型の基を有する有機ポリマーからなる群から選ばれる1種以上の有機ポリマー〔以下、(b)成分という〕と、(c)(c1)界面活性剤、(c2)アルカリ剤及び(c3)金属イオン封鎖剤からなる群から選ばれる1種以上の洗剤成分〔以下、(c)成分という〕と、を混合する工程

【公開番号】特開2012−149115(P2012−149115A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6808(P2011−6808)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】