説明

手洗装置

【課題】床面の専有面積が小さく、トイレなどの狭い場所であってもスペース効率良く設置することができ、しかも部品点数が少なくて単純な構成を有する手洗装置を提供する。
【解決手段】手洗ボール22を有する手洗部21と手洗部から下方に延長される枠部25とが一体成形されてなる本体20を有し、枠部の左右方向の一方側に給排水管を配置するための配置空間(30)が設けられ、枠部に対して着脱可能に設けられるカバー部材40が配置空間を前側から覆う。また、扉部材50が枠部の左右方向の他方側を覆う。カバー部材と扉部材は略同様の外観形状を有していて、扉部材を閉めたときに略連続する凸曲面状となり、且つ、これらの下方には下端に向かうにつれて内側に後退する傾斜面43,51が形成されている。本体は床から浮いた状態で壁に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手洗装置に関し、特にトイレなどの狭い場所に設置するに適した手洗装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトイレ装置の多くはトイレタンクの上部に手洗器が設けられていたが、近年ではトイレタンクのないタンクレストイレが普及しつつあり、この場合にはタンクレストイレとは別に手洗装置を設置する必要がある。
【0003】
トイレとは別途に設置される手洗装置の一例が下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特許第3560281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の従来技術によると、手洗器の下にベースキャビネット装置が設置されるため、行動可能な床面が狭くなり、また、床面の掃除がしにくくなるという問題がある。これらの問題は、特にトイレなどの狭い場所に設置する場合には致命的な欠点となる。
【0005】
また、この手洗装置は主として洗面器とベースキャビネット装置とから構成されるが、手洗器、配管カバー、手洗器カバー、扉など多数の部材を必要とするので、組み立て作業に多工程を要し、コスト増を招く。
【0006】
したがって、本発明は、従来技術の上記欠点を解決し、床面の専有面積が小さく、トイレなどの狭い場所であってもスペース効率良く設置することができ、しかも部品点数が少なくて単純な構成を有する手洗装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、請求項1に係る本発明は、手洗ボールを有する手洗部と手洗部から下方に延長される枠部とが一体成形されてなる本体を有し、枠部の左右方向の一方側に給排水管を配置するための配置空間が設けられ、枠部に対して着脱可能に設けられて配置空間を前側から覆うカバー部材を備え、枠部の左右方向の他方側を覆う扉部材を備え、カバー部材と扉部材は略同様の外観形状を有していて、扉部材を閉めたときに略連続する凸曲面状となり、且つ、これらの下方には下端に向かうにつれて内側に後退する傾斜面が形成されていることを特徴とする手洗装置である。
【0008】
請求項2に係る本発明は、前記カバー部材が枠部の左右方向の他方側に延長して該他方側の枠部内に嵌合される収納部を備え、この収納部を前側から覆うように前記扉部材が設けられることを特徴とする請求項1記載の手洗装置である。
【0009】
請求項3に係る本発明は、本体が床から浮いた状態で壁に固定されることを特徴とする請求項1または2記載の手洗装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の手洗装置によれば、手洗ボールを有する手洗部と手洗部から下方に延長される枠部とが一体成形されてなる本体を有するので、部品点数が少なく、施工も容易である。
【0011】
本体の枠部の左右方向の一方側に給排水管を配置するための配置空間が設けられるので、枠部の左右方向の他方側にトイレタリー用品などを収納する収納空間を確保することができる。
【0012】
カバー部材は本体枠部に着脱可能に設けられるので、給排水管の点検や修理の際はカバー部材を外して作業を行うことができる。
【0013】
カバー部材と扉部材は略同様の外観形状を有し、扉部材を閉めたときに略連続する凸曲面状を呈するので、すっきりした外観を与える。
【0014】
カバー部材と扉部材には、下端に向かうにつれて内側に後退する傾斜面が形成されているので、足元が広くなり、掃除も容易である。本体を床から浮かせた状態にして壁に固定する場合にはこの効果がより顕著となる。したがって、トイレなどの狭い場所であってもスペース効率良く設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1〜図6に本発明の一実施形態による手洗装置10の構成を示す。この手洗装置10は、本体20と、カバー部材40と、扉部材50の3部材から構成される。これら各部材は、アクリル、ポリエチレン(PE)、プリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PSt)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)などの各種合成樹脂板、あるいはこれらを複合した複合板(たとえば、板の表面側にメタクリル酸メチル樹脂((PMMA)、アクリル樹脂の一種)、裏面側にアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂を積層してなる複合板)を真空成形加工法で所定形状に成形することにより得られる。
【0016】
本体20は手洗部21と枠部25とを有する一体成形品である。手洗部21は、手洗ボール22と、給水栓取付部23と、バックガード24とを備える。バックガード24は手洗いの際の水跳ねによって壁が汚れることを防止する。
【0017】
手洗ボール22の底の正面視右より位置に排水口36が設けられる。排水口36は後述の排水管11に通じている。給水栓取付部23は手洗ボールの右側に設けられ、給水栓Wを取り付けるための取付穴37を有する。給水栓Wは後述の給水管12に通じている。
【0018】
手洗部21の下端両側縁に沿ってビス孔38が設けられ(図6)、これらビス孔38にビス(図示せず)などでタオルハンガー39が取り付けられる。タオルハンガー39は金属などで形成された帯状または棒状の長尺材であり、手洗部21の下端部において手洗部21から若干の隙間を残した状態で手洗部21と同調した湾曲形状を呈するように設けられる(図4)。
【0019】
枠部25は、手洗部21から一体に下方に延長する左右一対の縦枠26,27および中央枠28と、これらの下端を一体に連結して水平方向に延長する下枠29とを有する(図6)。
【0020】
手洗部21の下方において枠部25の正面視右側に形成される空間、すなわち右縦枠26と中央枠28と下枠29に囲まれる空間30は、枠部25の背面から下方にかけて連続し、排水管11や給水管12などを収容して壁または床に通すための配管スペースとして利用される。
【0021】
この実施形態では、排水管11および給水管12を壁に通して給排水するタイプの手洗装置10であるので、排水管11の外径に相当する大きさの半円形切り欠き(符号なし)を設けた一対の板部材31,31をビス、両面接着テープ(図示せず)などで背面側開口部30aに位置する壁面に取り付けて、排水管11の周りに生ずる隙間に蓋(図示せず)を保持する。給水管12が壁面を貫通する面にはドーナツ状の蓋部材(図示せず)を取り付ける。この場合は、下枠29に板状の蓋(図示せず)をビス(図示せず)などで取り付けて、空間30の底面側開口部30bに蓋をする。
【0022】
底面から給排水するタイプの手洗装置の場合には、空間30の底面側開口部30bに排水管11および給水管12を通す。この場合は、下枠29の下端と床13(図7)との間に露出する排水管11,給水管12を覆い隠すため、これらの間隔に略一致する高さ寸法の略コの字形の床排水用カバー(図示せず)を取り付けることが好ましい。
【0023】
手洗部21の下方において枠部25の正面視左側に形成される空間、すなわち左縦枠27と中央枠28と下枠29に囲まれる空間には背面板32が取り付けられる。背面板32は枠部25の強度を増大させると共に、この背面板32にビスなどを打ち込むことができるので本体20の壁への固定が容易になる。この背面板32には上下二箇所に孔33,34が形成されている。
【0024】
左縦枠27には、扉部材50を回転可能に取り付けるための上下一対のヒンジ19,19が固着されている。
【0025】
カバー部材40は、枠部25の内部空間を閉止するために枠部25の開放前面に着脱可能に取り付けられる。一例として、枠部25の空間30に対応する表面側4箇所に凸状の着脱部35を設け、これら着脱部35に対応するカバー部材40の裏面側箇所にも着脱部を設けて、これら着脱部同士の係脱を介してカバー部材40を取り付けることができる。着脱部35としてはベルクロテープ(面ファスナー)、永久磁石などを用いることができる。
【0026】
カバー部材40は、枠部25の正面視右側の空間(配管スペース)30を閉止するカバー部41と、枠部25の正面視左側の空間に収容嵌合される収納部42とを有する一体成形品である。
【0027】
カバー部41の下方には、下端に向かうにつれて内側に後退する傾斜面43が形成されると共に、上方左側縁には凹み44が形成されている。凹み44は、閉じた状態にある扉部材50を開放するときに指を差し込む操作部として機能するので、操作用のつまみ部を別途扉部材50に設ける必要がなくなり、扉部材50の外観をすっきりさせる。
【0028】
収納部42は、トイレットペーパー、トイレブラシ、洗剤スプレーなどのトイレタリー用品を収納するために利用され、任意に棚板45を有する。この実施形態では棚板45の幅を収納部42の幅の略二分の一程度として、その左側空間にトイレブラシなどの長尺部材を収納できるようにしている。
【0029】
ヒンジ19,19を介して本体枠部25の左縦枠27に回転可能に取り付けられる扉部材50は、カバー部41に同調した形状を有しており、扉部材50を閉じたときに、これらが略連続して平面視略湾曲凸面形状を呈する(図3〜図5)。また、カバー部41と同様に、その下方に下端に向かうにつれて内側に後退する傾斜面51が形成され、扉部材50を閉じたときに、これらの傾斜面43,51が同調して正面視略半円弧状の上縁を有する後退面として看取される(図1,図5,図7)。傾斜面43,51の傾斜角度α(図2)は垂直面に対して10〜30度程度とすることが好ましく、この実施形態では約15度である。傾斜角度αが10度に満たないと足元空間を広くすると共に掃除をしやすくする効果が十分に得られず、30度を越えると角張って見えるようになるので視覚的なデザイン効果が薄くなる。
【0030】
図7はこの手洗装置10の設置状態を示す。この設置例では、床13から浮かせた状態で手洗装置10を壁14に固定している。これにより本体20と床面13との間に隙間ができるので、カバー部41および扉部材50の下方に形成される傾斜面43,51と相俟って、床面13近くの足元空間が広く使え、掃除もしやすい。したがって、トイレなどの狭い空間にもスペース効率良く設置することができる。図7中、符号15は便器、16はカウンター、17はトイレットペーパーホルダー、18は幅木である。幅木18がある場合は、本体枠部25の下端が幅木18の上端に接するか、あるいはその上方に位置するように本体20を壁14に固定することが好ましい。
【0031】
本体20を壁14に固定する方法は限定的ではないが、たとえば壁14にフック受け金具を固定すると共に本体20の背面側にフック掛け金具を固定して、本体20側のフック掛け金具を壁14側のフック受け金具に掛けることによって固定することができる。この状態で、本体枠部25の任意位置でビスを用いて枠部25を壁14に固定すれば、確実・安定した設置状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態による手洗装置の正面図である。
【図2】この手洗装置の右側面図である。
【図3】この手洗装置の平面図である。
【図4】この手洗装置の分解斜視図である。
【図5】図1中A−A切断線による断面図である。
【図6】この手洗装置の本体の斜視図である。
【図7】この手洗装置の設置状態斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
10 手洗装置
20 本体
21 手洗部
22 手洗ボール
25 枠部
26,27 縦枠
28 中央枠
29 下枠
30 空間(配管スペース)
40 カバー部材
41 カバー部
42 収納部
43 傾斜面
50 扉部材
51 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手洗ボールを有する手洗部と手洗部から下方に延長される枠部とが一体成形されてなる本体を有し、枠部の左右方向の一方側に給排水管を配置するための配置空間が設けられ、枠部に対して着脱可能に設けられて配置空間を前側から覆うカバー部材を備え、枠部の左右方向の他方側を覆う扉部材を備え、カバー部材と扉部材は略同様の外観形状を有していて、扉部材を閉めたときに略連続する凸曲面状となり、且つ、これらの下方には下端に向かうにつれて内側に後退する傾斜面が形成されていることを特徴とする手洗装置。
【請求項2】
前記カバー部材が枠部の左右方向の他方側に延長して該他方側の枠部内に嵌合される収納部を備え、この収納部を前側から覆うように前記扉部材が設けられることを特徴とする請求項1記載の手洗装置。
【請求項3】
本体が床から浮いた状態で壁に固定されることを特徴とする請求項1または2記載の手洗装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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