説明

手編み玉掛索のラベル取り付け法

【課題】ワイヤロープを用いて手編み玉掛索を製作する途中で、ラベルの幅狭な先端側をワイヤロープの本線内部に差し込んで取り付けることにより、手編み玉掛索からラベルが簡単に外れることがないようにした手編み玉掛索のラベル取り付け法を提供することにある。
【解決手段】ワイヤロープ11を用いて手編み玉掛索を製作する途中で、種類などの必要事項が記載されたラベル8の幅狭な先端側81をワイヤロープ11の本線11a内部に差し込んで取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤロープの先端を折り返して輪状にした手編み玉掛索に取り付けるラベルの技術に係り、特に、ワイヤロープを用いて手編み玉掛索を製作する途中で、ラベルのこより状にした先端側をワイヤロープの本線内部に差し込んで取り付けることにより、手編み玉掛索からラベルが簡単に外れることがないようにした手編み玉掛索のラベル取り付け法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手編み玉掛索はその先端側の輪状の部分に物を吊り下げることができる。これに対して台付索は先端側の輪状の部分に物を吊り下げることができない。しかし、手編み玉掛索と台付索は共に、ワイヤロープの先端側が輪状に形成された形状になっていて似ているので、外形だけからでは玉掛索なのか台付索なのかの見分けが簡単にできない。
このため、図7に図示するように手編み玉掛索には、玉掛索用などの種類、用途、その他の必要事項を記載したラベル101が取り付けられている。ラベル101は、その一端側をワイヤロープの側周面に一周させ、一周したその先端側をラベル101の基部側に重ね、重ねた部分をホッチキス102によって綴じることにより、手編み玉掛索に取り付けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記したように、手編み玉掛索に取り付けられるラベルはホッチキスによって綴じられているため、手編み玉掛索の使用中やその前後の取り扱い中、或いは収納やその取り出し中に、簡単に外れることがあった。そして、ラベルが外れると、ワイヤロープの種類、長さ、ロープ径などが分からなくなる。この場合、ホッチキスに代えて、ラベルの一周した先端側を基部側に重ね、重ねた部分を逢着することも考えられるが手間がかかり面倒である。
【0004】
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、ワイヤロープを用いて手編み玉掛索を製作する途中で、ラベルの幅狭な先端側をワイヤロープの本線内部に差し込んで取り付けることにより、手編み玉掛索からラベルが簡単に外れることがないようにした手編み玉掛索のラベル取り付け法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の目的を達成するために、請求項1に係る手編み玉掛索のラベル取り付け法の発明は、ワイヤロープを用いて手編み玉掛索を製作する途中で、種類などの必要事項が記載されたラベルの幅狭な先端側をワイヤロープの本線内部に差し込んで取り付ける手段によりなるものである。
【0006】
また、請求項2に係る手編み玉掛索のラベル取り付け法の発明は、ワイヤロープを用いて手編み玉掛索を製作する途中で、種類などの必要事項が記載されたラベルの幅狭な先端側をワイヤロープの本線内部に差し込んで、ラベルの先端側を本線内部の心綱と螺旋状に絡ませて取り付ける手段によりなるものである。
【0007】
ここで、請求項1又は請求項2の好ましい態様として、ラベルの幅狭な先端側の先端には膨らみ部が形成されている。
【0008】
また、ここで、請求項1〜請求項3の好ましい態様として、ラベルの幅狭な先端側はこより状に形成されている。
【0009】
また、ここで、請求項1〜請求項3の好ましい態様として、ラベルの幅狭な先端側はその両幅側端が鋸歯状の幅狭鋸歯片に形成されている。
【発明の効果】
【0010】
以上の記載より明らかなように、この発明に係る手編み玉掛索のラベル取り付け法によれば、ワイヤロープを用いて手編み玉掛索を製作する途中で、作業を繰り返す間に、ワイヤロープの本線側の内部では、挿入したラベルの幅狭な先端側が心綱と螺旋状に絡み合って、ラベルの先端側はワイヤロープの本線側から抜けなくなる。このように、ワイヤロープを用いての手編み玉掛索の製作を利用してラベルを手編み玉掛索に取り付けることができる。
【0011】
請求項3のように、ラベルの幅狭な先端側の先端に膨らみ部が形成されている場合には、この膨らみ部がストッパーの機能を果たして心綱の間で引っ掛かって増々外れにくくすることができる。
【0012】
また、請求項4のように、ラベルの幅狭な先端側がこより状に形成されている場合には、ラベルの先端側を幅狭にするために切り欠くことなく、ラベルの先端側をこより状に捻るだけで簡単に幅狭にすることができる。
【0013】
また、請求項5のように、ラベルの先端側が幅狭鋸歯片に形成されている場合には、幅狭鋸歯片の両幅側端の鋸歯状の凹凸部分がサイドストッパーの機能を果たして心綱の間で引っ掛かってさらに増々外れにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に記載の発明を実施するための最良の形態に基づいて、この発明をより具体的に説明する。
【0015】
ワイヤロープ11を用いて手編み玉掛索を製作する方法においては、既知の編み込み方法、例えば巻差し方法、かご差し方法などを用いる。このうち、巻差し方法はワイヤロープ11の先端をストランド1〜6の単位に解いて、そのストランド1〜6をワイヤロープ本線11aのストランドA〜Fの間に通して、本線11aのより方向と同方向に巻いて行く方法である。
【0016】
かご差し方法はワイヤロープ11の先端をストランド1〜6の単位に解いて、そのストランド1〜6をワイヤロープ本線11aのストランドA〜Fの間に通して、本線11aのより方向と反対方向に巻いて行く方法である。
【0017】
これらの既知の編み込み方法において、ワイヤロープ11の先端側の心綱7を入れる前後に、種類などの必要事項が記載されたラベル8の先端側81をワイヤロープ本線11aの内部の心綱7に沿うように挿入し、その後は引き続きなされる編み込み方法によって、内部の両心綱7とラベル8の先端側81とは螺旋状に絡み合うことになり、ワイヤロープ本線11aから抜けなくなるのである。
【0018】
ラベル8には種類として玉掛索の文字が記載されており、これ以外に例えばワイヤロープ11の直径、長さ、加工種別などの必要事項が記載されている。ラベル8は、破れにくように、その材質には例えば繊維性のものが使用されたり、油などが付着しにくい材質のものが使用される。
【0019】
ラベル8は横長な長方形の形状に形成され、又その先端側81は幅が狭くなった幅狭に形成されていて、ワイヤロープ本線11aの内部に挿入され易くすると共に内部の両心綱7と螺旋状に絡み合い易くなるように形成されている。
【0020】
ラベル8の先端側81は、幅狭な構造として、例えばこより状81aにねじられた構造からなっている。こより状81a以外の形状として、先端側81の幅が狭くなるように切り欠かれた幅狭片81bに形成されていたり、また、先端側81の幅が狭くなるように切り欠かれると共にその両幅側端が鋸歯状の幅狭鋸歯片81cに形成されて、さらに抜けにくい形状に形成されていることもある。
【0021】
また、ラベル8の先端側81の先端には膨らみ部82が形成されている。膨らみ部82はラベル8の先端を例えば丸めて形成されている。膨らみ部82はその径が先端側81の幅より広くて太くなっていて、この膨らみ部82によってもラベル8は両心綱7及びワイヤロープ本線11aから簡単に外れないようにもなっている。
【0022】
既知の編み込み方法の例えばかご差し方法の手順で、本願発明の手編み玉掛索を製作する方法について、以下説明する。
かご差し方法の手順に沿って、先ずワイヤロープ11の端部側に輪状12を作る。
ワイヤロープ11の先端側を折り返し、折り返した先端側をワイヤロープ11を構成する6組のストランド1〜6と心綱7とをバラバラに分け、先端部分が折り返される基側となるワイヤロープ11の本線の6組のストランドA〜Fによってより込まれている部分の特定の間に、きめられた順序で各ストランド1〜6を通し決まった間から抜き出して、ワイヤロープ11の端部側に輪状12を作る。心綱7には例えば麻芯が使用される。
図2に基づいて簡単に説明すると、以下の手順で行われる。
(1)ストランド1をワイヤロープ11の本線11a側のストランドA・Fの間から心綱7の左を通してストランドB・Cの間に抜く。
(2)ストランド2をワイヤロープ11の本線11a側のストランドA・Fの間から心綱7の左を通してストランドC・Dの間に抜く。
(3)ストランド3をワイヤロープ11の本線11a側のストランドA・Fの間から心綱7の右を通してストランドD・Eの間に抜く。
(4)ストランド4をワイヤロープ11の本線11a側のストランドA・Fの間から心綱7の右を通してストランドE・Fの間に抜く。通したストランド4を締め込む。
(5)ストランドA・Fの間からストランドB・Cの間にスパイキを差してストランドA・Fの間にワイヤロープ11の先端側の心綱7を入れるが、この心綱7の入れる作業の前又は後に、ラベル8の先端側81をストランドA・Fの間から入れ、ワイヤロープ11の本線11a側の内部の心綱7に沿うように取り付ける。この場合、ワイヤロープ11の本線11a側の内部に入れたラベル8の先端側81が外れないように、スパイキを捻って、ストランドA・Fの間を締め戻す。
(6)ストランド5をワイヤロープ11の本線11a側のストランドA・Bの間から通してストランドA・Fの間に抜く。ストランドA〜Fのよりを戻す。
(7)ストランド6をワイヤロープ11の本線11a側のストランドB・Cの間から通してストランドA・Bの間に抜く。ストランドA〜Fのよりを戻す。ハンマで軽く均す。
以上の手順でワイヤロープ11の端部側には輪状12が作られる。
【0023】
次に、かご差し方法の手順に沿って、ワイヤロープ11を構成する6組のストランド1〜6の先端側をワイヤロープ11の本線11aの表面に通して抜き出す丸差し作業を所定回数、例えば3回繰り返して行う。日本国の法規では3回以上が要求されている。
図2に基づいて簡単に説明すると、以下の手順で行われる。
(1回差し)
(8)ストランド1をワイヤロープ11の本線11a側のストランドC・Dの間から心綱7の左を通してストランドE・Fの間に抜く。
(9)ストランド2をワイヤロープ11の本線11a側のストランドD・Eの間から通してストランドA・Fの間に抜く。
(10)ストランド3をワイヤロープ11の本線11a側のストランドE・Fの間から通してストランドA・Bの間に抜く。
(11)ストランド4をワイヤロープ11の本線11a側のストランドA・Fの間から通してストランドB・Cの間に抜く。
(12)ストランド5をワイヤロープ11の本線11a側のストランドA・Bの間から通してストランドC・Dの間に抜く。ストランドA〜Fのよりを戻す。
(13)ストランド6をワイヤロープ11の本線11a側のストランドB・Cの間から通してストランドD・Eの間に抜く。ハンマで軽く均す。
以上で1回差しが終了し、この作業を後2回続ける。
合計3回繰り返すことにより、丸差しは終わる。
【0024】
前記した作業において、各ストランド1〜6がワイヤロープ11の本線11a側の一方側のストランドA〜Fの各間に通し易くし、又他方側のストランドA〜Fの各間から抜きやすくするために、図示しないスパイキという差し棒が使用されて、各間が広げられているのは勿論である。また、各ストランド1〜6を通した後は、スパイキを捻って、抜けないように締め込む。
【0025】
前記の作業を繰り返す間に、ワイヤロープ11の本線11a側の内部では、両心綱7及びラベル8の幅狭な先端側81は螺旋状に絡み合って、ラベル8の先端側81はワイヤロープ11の本線11a側から抜けなくなる。
【0026】
特に、ラベル8の幅狭な先端側81の先端に膨らみ部82が形成されている場合には、この膨らみ部82がストッパーの機能を果たして両心綱7の間で引っ掛かって増々外れにくくなる。また、ラベル8の先端側81が幅狭鋸歯片81cに形成されている場合には、幅狭鋸歯片81cの両幅側端の鋸歯状の凹凸部分がサイドストッパーの機能を果たして両心綱7の間で引っ掛かってさらに増々外れにくくなる。
【0027】
なお、この発明は上記発明を実施するための最良の形態に限定されるものではなく、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。前記の発明を実施するための最良の形態においては、既知の編み込み方法としてかご差し方法の手順に沿って説明したがこれに限定されるものではなく、例えば巻差し方法、などを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ワイヤロープの先端側を折り返して輪状を作る説明図である。
【図2】ストランドをワイヤロープの本線に通し及び抜き出す経路説明図である。
【図3】(A)〜(C)はラベルの斜視図である。
【図4】製作途中のラベルが取り付けられた手編み玉掛索の端部側の正面図である。
【図5】製作後のラベルが取り付けられた手編み玉掛索の端部側の正面図である。
【図6】手編み玉掛索の編み込み部分の部分内部図である。
【図7】手編み玉掛索に従来によるラベルの取り付け説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1〜6 ストランド
A〜F ストランド
11 ワイヤロープ
11a 本線
12 輪状
7 心綱
8 ラベル
81 先端側
81a こより状
81b 幅狭片
81c 幅狭鋸歯片
82 膨らみ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープを用いて手編み玉掛索を製作する途中で、種類などの必要事項が記載されたラベルの幅狭な先端側をワイヤロープの本線内部に差し込んで取り付けることを特徴とする手編み玉掛索のラベル取り付け法。
【請求項2】
ワイヤロープを用いて手編み玉掛索を製作する途中で、種類などの必要事項が記載されたラベルの幅狭な先端側をワイヤロープの本線内部に差し込んで、ラベルの先端側を本線内部の心綱と螺旋状に絡ませて取り付けることを特徴とする手編み玉掛索のラベル取り付け法。
【請求項3】
ラベルの幅狭な先端側の先端には膨らみ部が形成されている請求項1又は請求項2記載の手編み玉掛索のラベル取り付け法。
【請求項4】
ラベルの幅狭な先端側はこより状に形成されている請求項1〜請求項3記載の手編み玉掛索のラベル取り付け法。
【請求項5】
ラベルの幅狭な先端側はその両幅側端が鋸歯状の幅狭鋸歯片に形成されている請求項1〜請求項3記載の手編み玉掛索のラベル取り付け法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−224442(P2007−224442A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45146(P2006−45146)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(390022035)有限会社勝山ロープ (4)
【Fターム(参考)】