説明

手術台用アンダーマット

【課題】電気手術器の使用に際して対極板の装着作業を容易にするとともに、手術中における対極板の剥れ等を有効に防止可能な手段を提供すること。
【解決手段】1又は複数枚の絶縁材2により構成される絶縁層3の表面にシート材4を積層して成る手術台用アンダーマット1において、電気手術器における対極板として用いる1枚あるいは互いに絶縁された2枚の電極板5を、前記絶縁材2間に配設し、あるいは前記シート材4の表面に配設することでアンダーマット1に備えたことを特徴としており、これにより、電気手術器の使用に際して、対極板を患者に装着することなく、患者の体内に流入した高周波電流を電極板を介して装置本体に戻すことが可能となり、作業効率を上げることができるとともに、電極板と患者との接触面積を多く確保することができるとともに接触面積が一定以下になるおそれがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手術台用アンダーマットに係り、より詳しくは、生体に高周波を流す電気手術器等の対極板を備えた手術台用アンダーマットに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、近年、手術の際には電気手術器が用いられることが多くなっている。この電気手術器について説明すると、図6は電気手術器の構成を示すブロック図であり、図において31が電気手術器である。そして、一般的にこの電気手術器31は、高周波発生回路を有する装置本体32と、接続コード33を介して前記装置本体32に接続されたメス34を有しており、メス34は、メスホルダー3401と、このメスホルダー3401に接続されたメス先電極3402を具備している。また、メス先電極3402を介して患者の体内に流入した高周波電流を装置本体32に戻すための対極板35が、コード36を介して前記装置本体32に接続されている。
【0003】
そして、この構成において、患者の臀部、腿等の広い面積の部分に対極板35を密着させ、この状態において、装置本体32からメス先電極3402に高周波電流を流し、このメス先電極3402を患部に当てることで、患部の切開あるいは凝固を行なうが可能となる。
【0004】
ところで、前述したように、電気手術器により手術等をおこなっているときには、患者に流入した高周波電流は対極板35を介して装置本体32に戻されるが、このとき、対極板35と患者との接触面積が小さいと、接触面に熱スポットが生じてしまい対極板35と患者との接触部分で熱傷をしてしまう等の事故が起こり得るため、一般的に対極板は広い面積を必要としている。
【0005】
しかしながら、広い面積の対極板を患者に装着した場合であっても、手術中において対極板が剥がれてしまうことも考えられ、また対極板の装着忘れ等も考えられるために、これら対極板の剥れによる接触面積の減少、あるいは対極板の装着忘れ等による事故を防止するために、一般的に電気手術器では、使用時において対極板と患者の接触状態の監視が行なわれており、接触面積が一定以下になった場合にはブザー等の警報手段が作動し、更にメス先電極への高周波電流の供給が遮断されることとしており、これにより安全確保がなされている。
【特許文献1】特許第3714982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、一般的に電気手術器では安全確保のための手段が講じられているが、その一方、対極板と患者との接触面積が一定以下になった場合に高周波電流の供給が遮断され、それにより手術が中断してしまうおそれも考えられるために、対極板の装着には細心の注意が必要であるとともに、手術中においても対極板の剥れ等に注意しなければならない。
【0007】
そこで、本発明は、対極板の装着作業を容易にするとともに、手術中における対極板の剥れ等を有効に防止可能な手段を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ところで、一般的に手術においては、手術台の汚れ等を最小限にするために、手術台と患者との間にアンダーマットを敷くことが行なわれている。
【0009】
そこで、本発明者はこのアンダーマットの存在に着目し、対極板の装着作業を容易にするとともに、手術中における対極板の剥れ等を有効に防止可能な手段を発明した。
【0010】
即ち、本発明は、1又は複数枚の絶縁材により構成される絶縁層の上面にシート材を積層して成る手術台用アンダーマットにおいて、電気手術器における対極板として用いる電極板を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
従来の対極板はこれを剥がす際に粘着剤が原因で生じる、角質剥離等の患者リスクが発生しているが、本発明の手術台用アンダーマットでは、電気手術器における対極板として用いる電極板を備えているために、このアンダーマット上に患者を寝かせることのみで、メス先電極を介して患者の体内に流入した高周波電流を、アンダーマットに備えた電極板を介して電気手術器の装置本体に戻すことができるため、患者リスクを回避するとともに、対極板を患者に貼着する作業が不要となり、作業効率を上げることができる。
【0012】
そしてこのとき、本発明の手術台用アンダーマットでは、電極板の上に患者が寝る形態となるために、電極板と患者との接触面積を多く確保することができるとともに、対極板と患者との接触面積が一定以下になるおそれがないため、電極の接触面積を監視する必要がなくなり、それにより装置の製造コストを下げることも可能であり、更に、電極と患者の接触面積の減少による手術の中断等も無くなる。
【0013】
また、従来から、面積を広くしてその上に患者を寝かせる形態の対極板が提供されてはいるが、この場合は製造コストが上がってしまうという問題点がある。それに対して、本発明のアンダーマットでは、コストを上げること無く電極板と患者との接触面積を多く確保することができるという利点がある。即ち、例えば容量型対極板の場合には、前記特許第3714982号公報に記載されているように、合成樹脂等からなる絶縁層の上面に電極板を配設し、この電極板の上面に合成樹脂フィルム等の絶縁シートを配設して構成されているため、対極板の面積を広くした場合には、電極板のみならず、電極板を挟持する絶縁層も広くしなければならず、製造コストが上がってしまう。これに対して本発明では、アンダーマットに電極板を備えた形態としているために、広い面積とした電極板のみを使用するのみでよく、電極板を挟持する絶縁シート等を別途用意する必要がないために、面積を広くしてその上に患者を寝かせる形態とした対極板に比較してコストを抑えることが可能であり、そのため、アンダーマットとともに使い捨てにすることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の手術台用アンダーマットでは、1又は複数枚の絶縁材により構成される絶縁層を有しており、この絶縁層の上面にはシート材が積層されている。
【0015】
そして、この絶縁層とシート材とで構成される本発明の手術台用アンダーマットでは、電気手術器における対極板として用いる電極板を備えており、この電極板は、前記絶縁材間に配設されているか、あるいは、前記シート材の表面に配設され、電気手術器の装置本体と接続コードによって接続可能としている。
【0016】
ここで、一般的に対極板と患者との接触状態を監視する方法としては、生体表面と対極板との間の電気抵抗を測定する導電型対極板を用いる方法や、対極板とメス先電極との間に流れた検知電流を検出する容量型対極板があり、対極板の構成としては1枚の対極板と複数枚に分割された対極板があるが、本発明における電極板を複数枚の対極板として用いる場合には、前記電極板を、互いに絶縁された一対の電極板で構成するとよい。
【実施例1】
【0017】
本発明の手術台用アンダーマット(以下単に「アンダーマット」という。)の実施例について図面を参照して説明すると、図1は本実施例のアンダーマットの構造を示す断面図、図2は本実施例のアンダーマットの平面を示す図であり、図において1が本実施例のアンダーマットである。
【0018】
そして、本実施例のアンダーマット1では、PP材、PET材等によりなる絶縁材2を2層にして構成した絶縁層3を有している。
【0019】
また、この絶縁層3の上面側には、不織布等により構成されたシート材4が積層され、これによりアンダーマット1の基本構成が形成されている。
【0020】
次に、図において5は、電気手術器の対極板として用いる電極板である。即ち、本実施例のアンダーマット1では、前記絶縁層3内に、前記絶縁材2に挟持される形態において、アルミ製薄板よりなる電極板5が挿装されている。
【0021】
そして、前記電極板5には、コネクタ部6を介して接続コード7が接続されており、この接続コード7は、使用に際しては電気手術器の装置本体に接続されることとしている。
【0022】
従って、本実施例のアンダーマット1では、その上に患者を寝かせた状態で電気手術器による手術をした場合には、患者の体内に流入した高周波電流は、電極板5を介して電気手術器の装置本体に戻されることとなるため、患者に対極板を装着する必要が無くなる。
【0023】
なお、前記電極板5は、手術台上に患者を寝かせた際に患者の体全体を十分に支持可能な大きさにするとよい。
【0024】
次に、このように構成される本実施例のアンダーマット1の作用について説明すると、本実施例のアンダーマット1を手術台の上に敷くとともに、このアンダーマット1上に患者を寝かせ、更に、前記接続コード7を図示しない電気手術器の装置本体に接続した状態において、メス先電極により患者の手術等を行うと、患者の体内に流入した高周波電流は、患者の下に位置する電極板5を介して、装置本体に戻ることが可能となる。
【0025】
このように、本実施例のアンダーマット1では、その内部に、電気手術器の対極板として機能する電極板を備えているために、電気手術器の使用に際して対極板を患者に装着する必要がなく、作業効率が格段に向上する。
【0026】
そしてこのとき、本実施例のアンダーマット1では、電極板を、手術台上の患者の体全体を十分に支持可能な大きさにしてあるために、手術中等において患者の位置や向き等が変わった場合でも、電極板と患者との接触面積が一定以下に減少することがなく、そのため、電極板と患者との接触面積の減少による熱傷等を未然に防止することが可能であるとともに、対極板を患者に装着した場合のように対極板の剥がれや装着忘れを監視する必要もない。
【0027】
また、面積を広くしてその上に患者を寝かせる形態とした対極板と異なり、本実施例のアンダーマット1では、アンダーマットに対極板として機能する電極板を備えた形態としているため、電極板を挟持する絶縁シート等を別途用意する必要がなく、コストを抑えることが可能であり、そのために、アンダーマットとともに使い捨てにすることも可能である。
【0028】
なお、本実施例のアンダーマット1において電極板5と患者との接触状態を監視する場合には、電極板5に検知電流を流し、電極板5と電気手術器のメス先電極との間を流れた電流値を監視して電極板の静電容量の変化を検知するか、あるいは、患者と対極板との間の電気容量を測定するとよく、このとき、図3に示すように、電極板5を、互いに絶縁された状態の一対の電極板片5A、5Bで構成し、それぞれの電極板片5A、5Bに接続コード7を接続してもよい。
【0029】
このように、本実施例のアンダーマット1では、その内部に、電気手術器の対極板として機能する電極板を備えているために、電気手術器の使用に際して対極板を患者に装着する必要がなく作業効率が格段に向上するのみならず、手術中等において患者の位置や向き等が変わった場合でも、電極板と患者との接触面積が一定以下に減少することがなく、そのため、電極板と患者との接触面積の減少による熱傷等を未然に防止することが可能であるとともに、対極板を患者に装着した場合のように対極板の剥がれや装着忘れを監視する必要もない。
【実施例2】
【0030】
次に、本発明の手術台用アンダーマットの第2実施例について図面を参照して説明すると、図4は第2実施例のアンダーマットの構造を示す断面図、図5は本実施例のアンダーマットの平面を示す図であり、図において11が本実施例のアンダーマットである。
【0031】
そして、本実施例のアンダーマット11では、PP材、PET材等によりなる絶縁材2を2層にして構成した絶縁層3と、この絶縁層3の表面側に積層した不織布等により構成されたシート材4とで構成されるアンダーマット11において、前記シート材4上に、電気手術器の対極板として用いる電極板5を配設した形態としている。
【0032】
ここで、本実施例における前記電極板5について説明すると、本実施例においては、上面に絶縁材としてのPETフィルム502を備えたアルミ製薄板の電極板本体501とで電極板5を構成し、この電極板5を接着剤等により前記シート材4の上面に貼着しているとともに、この電極板5に、コネクタ部6を介して接続コード7を接続しており、使用に際しては、前記接続コード7を電気手術器の装置本体に接続することとしている。
【0033】
このように、本実施例のアンダーマット11では、不織布等のシート材4の上に、電気手術器の対極板として機能する電極板を備えているために、前述の第1実施例の場合と同様に、その上に患者を寝かせることのみで、患者の体内に流入した高周波電流を、電極板を介して装置本体に戻すことが可能である。
【0034】
そしてそのとき、前述の実施例の場合と同様に、対極板を患者に装着する必要がなく作業効率が格段に向上するとともに、電極板を手術台上の患者の体全体を十分に支持可能な大きさにすることで、手術中等において患者の位置や向き等が変わった場合でも、電極板と患者との接触面積が一定以下に減少することがなく、そのため、電極板と患者との接触面積の減少による熱傷等を未然に防止することが可能であるとともに、対極板を患者に装着した場合のように対極板の剥がれや装着忘れを監視する必要もなく、更に、面積を広くしてその上に患者を寝かせる形態とした対極板と異なり、コストを抑えることが可能であり、そのためにアンダーマットとともに使い捨てにすることも可能である。
【0035】
なお、本実施例においても、電極板5を、図3に示すように、互いに絶縁された状態の一対の電極板で構成してもよく、また、電極板と患者との接触状態を監視するために、電極板5に検知電流を流し、電極板5と電気手術器のメス先電極との間を流れた電流値を監視して電極板の静電容量の変化を検知し、あるいは、患者と対極板との間の電気容量を測定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のアンダーマットでは、電気手術器における対極板として用いる電極板を備えているために、電気手術器による手術の際に使用されるアンダーマットの全般に適用可能である。
【0037】
また、本発明のアンダーマットは、一般的電気手術器だけでなく、電気手術器と同じ構成の高周波電流を用いる、例えば、ラジオ波凝固装置等においても適用可能である。即ち、ラジオ波凝固装置は電気手術器と同等の高周波を用いて、例えば肝臓等腫瘍に熱集中させ腫瘍を壊死させるが、一般的に電気手術器より治療電流が多く、現在これらの装置においては、電気手術器の対極板(対極板電極面積15cm×10cm)を2枚以上の枚数を貼付したり、又は電気手術器の対極板より大きい面積を持つ対極板を使用しているが、本発明のアンダーマットは、ラジオ波凝固装置の対極板としても十分な接触面積を確保出来るため、電極板と患者との接触面積が一定以下に減少することがなく接触面積の減少による熱傷等を未然に防止することが可能であるとともに、対極板を患者に装着した場合のように対極板の剥がれや装着忘れを監視する必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のアンダーマットの第1実施例の構造を示す断面図である。
【図2】本発明のアンダーマットの第1実施例の平面を示す図である。
【図3】電極板の他の構成を説明するための図である。
【図4】本発明のアンダーマットの第2実施例の構造を示す断面図である。
【図5】本発明のアンダーマットの第2実施例の平面を示す図である。
【図6】一般的な電気手術器を説明するための図である。
【符号の説明】
【0039】
1、11 アンダーマット
2 絶縁材
3 絶縁層
4 シート材(不織布)
5 電極板
501 電極板本体
502 絶縁材
5A、5B 電極板片
6 コネクタ
7 接続コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数枚の絶縁材(2)により構成される絶縁層(3)の上面にシート材(4)を積層して成る手術台用アンダーマット(1)において、電気手術器の対極板として用いる電極板(5)を備えたことを特徴とする手術台用アンダーマット。
【請求項2】
前記電極板(5)を前記絶縁材(2)間に配設したことを特徴とする請求項1に記載の手術台用アンダーマット。
【請求項3】
前記電極板(5)を前記シート材(4)の上面に配設したことを特徴とする請求項1に記載の手術台用アンダーマット。
【請求項4】
前記電極板(5)は互いに絶縁された一対の電極板片(5A、5B)で構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の手術台用アンダーマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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