説明

手術用吸引管

【課題】 使い勝手のよい手術用吸引具を実現する。
【解決手段】 吸引管4と吸引ホースとの接続口金6を持ち手1内の吸引通路2を介して持ち手の前後に連通して配すると共に、持ち手に吸引通路に連通して開口する吸引調節孔3を設けた吸引管において、持ち手を幅方向に弧状に窪ませた上面P1と同じく幅方向に弧状に窪ませた左右の側面P2、P3からなる三面形状とすると共に、各面がなす稜線を切り落とす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は例えば脳神経外科手術などに使用するための手術用吸引具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば脳神経外科手術において、患部に溜まった血液、体液やあるいは組織片を吸引するために吸引具が用いられている。この種の吸引具は、術者が摘んで持つ持ち手の前後に患部に接して吸引するための吸引管と吸引ホースとの接続口金をそれぞれ突設した構成からなる。そして、吸引管と接続口金とは持ち手内の吸引通路を介して連通され、持ち手には吸引通路に連通して開口する吸引調節孔が設けられ、上記の吸引調節孔の開閉具合の調節により吸引力を調節していた。
【0003】
前記の従来技術の吸引具においては、吸引調節孔は特許文献1に記載のもののように、それを覆うスライド式の蓋体のスライドにより開閉具合を調整するものの他に、特許文献2、3に記載のもののように、露出した吸引調節孔を持ち手を摘む術者の指腹で覆って開閉具合を調整するものがあった。
【0004】
【特許文献1】実公平3−17880号公報
【特許文献2】特開2000−300573号公報
【特許文献3】特開平5−168697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の吸引具においては術者において予め吸引管部分を作業に応じた湾曲度合いに折り曲げて使用することが通例であり、吸引具は軸方向に対する方向性を有することとなる。その結果、軸方向にみだりに回転しないように持ち手を摘むことが要請された。
【0006】
この場合、特許文献3に記載の吸引具のように持ち手の断面を角形とすれば、持ち手が軸方向にみだりに回転することは防止できる。しかしながら、この場合は同時に持ち手自体に軸方向に対する方向性が生じることになり、手術の過程において被吸引箇所との兼ね合いで持ち手に対しそれを摘んでいる指腹を軸方向に回転して摘む位置をずらしたい場合に動きがぎこちなくなり、ミクロン単位での挙動が問題となるマイクロサージェリーの現場においては好ましくなかった。
【0007】
また、断面が角形の場合は持ち手は2本の指腹のみで挟むように摘むしかないので、摘んでいる指腹を中心として吸引具が軸線と直交する方向に振れるおそれがあった。
【0008】
また、露出した吸引調節孔を指腹で覆って開閉具合を調整するタイプの場合は、持ち手を支持する2本の指のうちの1本を調整のために動かすので、それにより吸引具全体が不用意に動いてしまわないように細心の注意を払わなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は以上の従来技術の吸引具の欠点を解消することを目的として創作されたものであり、吸引管と吸引ホースとの接続口金を持ち手内の吸引通路を介して持ち手の前後に連通して配すると共に、持ち手に吸引通路に連通して開口する吸引調節孔を設けた吸引管において、持ち手を幅方向に弧状に窪ませた上面と同じく幅方向に弧状に窪ませた左右の側面からなる三面形状とすると共に、各面がなす稜線を切り落としたことを特徴とする。
【0010】
また、ここでは第2発明として前記の吸引具において、吸引調節孔を菱形状とし、その対角線が持ち手の前後方向および左右方向に揃うように持ち手の上面に配した発明も開示する。
【発明の効果】
【0011】
以上の構成よりなるこの発明の吸引具によれば、第一に持ち手が三面からなる逆三角形になっているので、それを3本の指腹を使用して持つことができ、持ち手が軸方向にみだりに回転することを防止できる。また、2本の指腹で挟んで持つ場合と異なり吸引具が軸線と直交する方向に振れるおそれも防止できる。
【0012】
一方、持ち手の各面がなす稜線を切り落としてなだらかにしているので、持ち手に対しそれを摘んでいる指腹を軸方向に移動して摘む位置をずらしたい場合でもスムーズに指腹を隣接する面に移動させることが可能となる。一方、各面は幅方向に弧状に窪ませてあるので、前記のように稜線を切り落としても窪みに落ち込んでいる指腹は摘む力を弱めない限りみだりに隣接面に移動することはない。
【0013】
また、持ち手を3本の指腹を使用して持つので吸引調節孔を親指でも人指し指でも操作することができ、術者の好みにあったよりきめ細かい調節操作が可能となる。そして、この場合1本の指を吸引調節孔の調節操作のために動かしても、残る2本の指でしっかりと持ち手を保持しているので吸引具全体が不用意に動いてしまうことがない。
【0014】
さらに、第2発明の場合は吸引調節孔を菱形状とし、その対角線が持ち手の前後方向および左右方向に揃うように持ち手の上面に配しているので、指腹を前方、後方どちらにずらしても調節操作が可能となり、使い勝手がよりよくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の手術用吸引具の具体的実施例を添付図面に基づいて説明する。図1はこの発明の吸引具の全体を示す図である。図中符号1は術者が吸引具を持つための持ち手であり、患部に接して血液、体液やあるいは組織片を吸引するための吸引管4が前方に突設されると共に、後方には吸引ホースとの接続口金6が突設される。上記持ち手1内には前後に貫通する吸引通路2が穿設され、上記の吸引管4および接続口金6はこの吸引通路を介して連通される。また、持ち手1の上面には上記の吸引通路2に連通して開口する吸引調節孔3が設けられ、露出した吸引調節孔を持ち手を摘む術者の指腹で覆って開閉具合を調整する構造となっている。なお、この実施例では吸引具は金属で構成されることを想定している。
【0016】
図2および図3は持ち手1の詳細を示す図である。この持ち手1は幅方向に弧状に窪ませた上面P1と同じく幅方向に弧状に窪ませた左右の側面P2、P3からなる三面形状からなり、各面がなす稜線を切り落とすことによりなだらかな切り落とし部R1、R2、R3が構成される。また、吸引調節孔3を菱形状とされ、その対角線が持ち手1の前後方向および左右方向に揃うように持ち手の上面P1に配される。
【0017】
また、術者において予め吸引管部分を作業に応じた湾曲度合いに折り曲げて使用することを想定して、吸引管4は先端を徐々に細くすることにより折り曲げやすくしている。
【0018】
一方、接続口金6は連結管5を介して持ち手1から距離を置いて配すると共に、緩やかに湾曲させることにより、作業にあたって接続される吸引ホースが邪魔にならないように配慮されている。
【0019】
図4および図5はこの発明の吸引具の持ち方の例を示す図である。図4においては親指の指腹F1で持ち手1の上面P1を、人指し指の指腹F2、中指の指腹F3で持ち手1の側面P2、P3を摘む持ち方を図示している。また、図5においては人指し指の指腹F2で持ち手1の上面P1を、中指の指腹F3、親指の指腹F1で持ち手1の側面P2、P3を摘む持ち方を図示している。この発明においては上記の2様の持ち方を選択できるので、術者の利き指を吸引調節孔3に臨ませることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の手術用吸引具の平面図。
【図2】同上、持ち手部分の斜視図。
【図3】同上、持ち手部分の断面図。
【図4】同上、使用方法を示す斜視図。
【図5】同上、使用方法を示す斜視図。
【符号の説明】
【0021】
1 持ち手
2 吸引通路
3 吸引調節孔
4 吸引管
6 接続口金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引管と吸引ホースとの接続口金を持ち手内の吸引通路を介して持ち手の前後に連通して配すると共に、持ち手に吸引通路に連通して開口する吸引調節孔を設けた吸引管において、持ち手を幅方向に弧状に窪ませた上面と同じく幅方向に弧状に窪ませた左右の側面からなる三面形状とすると共に、各面がなす稜線を切り落としたことを特徴とする手術用吸引具。
【請求項2】
吸引調節孔を菱形状とし、その対角線が持ち手の前後方向および左右方向に揃うように持ち手の上面に配した請求項1記載の手術用吸引具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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