説明

手術用縫合糸の製造方法

【課題】本発明は手術縫合糸に関するものである。
【解決手段】結び目を生じさせず縫おうとする身体切開部位を針が一度通過した後、その貫通された身体部位で、縫合糸で手軽く結び目の効果を出すことができるようにする末端ループ生分解性手術用縫合糸の製造に関するものである。より具体的にはツイスターブレイダーを利用して手術用縫合糸を製造する際においてループ形態を特徴とする末端ループ手術用縫合糸製造に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は末端部位がループ(loop)形態である手術用縫合糸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の手術用縫合糸は、単純に糸を針に連結して製造する方式である。このような単純な方式を改善して本発明では、縫合糸の末端部位をループの形態をとることによって、手術用縫合糸で切開部位を縫う時(特に、内視鏡を利用して手術する場合)、末端部の結び目作業が非常に容易に遂行されるようにする。
【0003】
以下、背景技術に対して詳しく説明する。
【0004】
手術用縫合糸は、使う材料によって、吸水性縫合糸と非吸水性縫合糸とで分けられる。非吸水性縫合糸は、主に血管及び整形外科手術時に使われる。反面、生分解性縫合糸は、主に成形外科、肌固定及び軟組織の縫合に使われる。例えば、使う材料がポリエチレン(polyethylene)、テレフタラート(terephthalate)、ナイロン(nylon)、ポリプロピレン(polypropylene)、シルク(silk)等の場合は非吸水性縫合糸であり、よく知られた1,4−ジオキサン−2−オン、ε−カプロラクトン(ε−caprolactone)、グリコライド(glycolide)、L(−)ラクチド、D(+)ラクチド等の材料で使われた縫合糸は吸水性縫合糸である。
【0005】
手術用縫合糸は、使う用途によって縫合糸の糸に針を付着して製作されることが一般的であり、特殊に針の付着なしに販売されるか、または縫合糸の両サイドに針が付着して販売される。
【0006】
縫合糸の用途は、外科手術時、組織を縫合するか、または挿入したインプラントを組織に固定させるのに主に使われる。また、手術用縫合糸は、多様な外科手術のために多くの種類のサイズが製造されるが、主に組織の強度及び状態によって使われるサイズが決まる。主にUSP3&4からUSP7−0まで製造される(アメリカ食品医薬品安全庁基準)。
【0007】
手術用縫合糸は、製造方式によって、ブレイダー方式とモノフィラメントの方式に製造され、手術用縫合糸の製造工程はおおよそ段階3で分けられる。
【0008】
段階1は、生分解縫合糸の糸をモノフィラメントあるいはブレイダー方式で製造し、段階2は、製造された糸を針に付着させ、段階3は、付着した縫合糸をE.O(ethylene oxide)滅菌あるいはガンマ滅菌してカートンボックスに盛って製造する。この時、段階1で、マルチフィラメントの縫合原糸を製造するのであって、既存方式は放射器によって製造されたFDY(fully drawing yarn)をブレイダーでブレーディングして製造された縫合原糸を750mmで切断して両末端部位を生体接着剤で付着して、糸が解けないようにし、一方は針の耳に引入した後、針を圧搾して糸−針組合された手術用縫合糸を製造する。このような製造された糸針組合手術用縫合糸をE.O(ethylene oxide)に滅菌して包装及び販売する。
【0009】
以下本発明と直接的に係わるループ末端部を持つ縫合糸に対して説明する。
【0010】
糸針組合手術用縫合糸を利用して切開部位を縫う作業を行う時(特に内視鏡を利用して手術する時)、一度組織を通過した後、糸が解けることを防止するために結び目を作る。内視鏡を利用して結び目を作りのため、非常に高い難易度の演習が必要であり、結び目を作ることがとても難しい。
【0011】
最初の内視鏡の使用は、1012年のアラブ系医者Abulkasimによって膣(vagina)に光を反射させる反射鏡を挿入しての使用から始まり、徐々に副鼻腔と膀胱検査に使うようになった。このような検査用内視鏡は、身体上の穴がある部位にだけ使うことができたが、1910年スウェーデン医者Jacobaeusが初めて腹腔を検査するために膀胱鏡を使うようになった。
【0012】
1970年後半から1980年初に至って内視鏡手術は診断的な目的から手術的目的に発展するようになったが、ドイツ外科医であるKurt Semmが腹腔鏡手術において開拓者としての役目を果たした。1980年後半に入って、医療技術の発達によって腹腔鏡手術も革命的に発展しながら開腹手術で最小浸湿手術(Minimally Invasive surgery)という新しいパラダイムが生ずるようになった。
【0013】
内視鏡手術は、内視鏡が付着された装置を、小さな部位の切開後にその穴を通じて身の中に電燈と画像装置を投入して手術部位の診断及びやっとこ装置を利用して手術を進行する装置である。内視鏡手術法の開発によって切開部位は非常に小さな部位の切開で済むため患者の負担が減り、手術後に回復時間が非常に早めるという長所を有する。内視鏡手術後に切開部位は、手術用縫合糸を利用して必ず縫合するようになった。
【0014】
このような切開された部位を縫う時は、最初縫合糸の末端部結び目を作らなければならないし、医師らは、このような結び目作りに熟練されるように多くの時間と努力を向けなければならなかった。本発明は、このような結び目作り作業をより容易に遂行して、手術時間の短縮及び安全な手術になることができる縫合糸構造とその製造方法を提示しようとする。
【0015】
以下従来技術を参照されたい。
【0016】
内視鏡手術用で使う末端ループ縫合糸は、ずっと前に知られた。欧州特許第559429号A1は、末端ループを、スリップノット(slip knot)を利用して製作され、米国特許第5,100,421号は、末端ループ縫合糸を利用した内視鏡手術法を提示した事がある。
【0017】
しかし、このような末端ループを持つ縫合糸の製造工程に係わる特許は、ほとんど知られていないし、ただループ形態を持つという最終形態を持つ縫合糸に対してのみ技術が公開されている。
【0018】
米国特許第5,259,846号は、縫合糸の糸を単純に針の耳に連結してループを形成するのが特徴であり、これはループが約760mmとして非常に大きく、糸が二重であるので、厚くなり、また、針の耳も楕円あるいは8字形で厚くなる問題点が生じた。
【0019】
本発明は、ツイスターブレイダーを利用して末端ループを作った後、一筋で合わせてブレーディングをすることによって、針耳には一筋の糸を連結する構造でツイスターブレイダーを利用した末端ループの製造工程に対する特許である。
【0020】
また、本発明は、糸が二重で厚くないので、傷組織を通過する時、損傷が少なく、針耳も厚くないように製作する長所がある。
【0021】
糸が厚くなることを解決するために、欧州特許559429号A1は、糸の末端部位に1次結び目を作って1次ループを作り、またこの糸を1次結び目を通過して2次ループを製造するようになる。すなわち、スリップノット(slip knot)は図1のように、2つの他の種類の結び目を作り、結局1つの結び目は固定し、他の種類の結び目は滑って結び目を堅くする。
【0022】
すなわち、もっと詳しくは、欧州特許559429号A1はスリップノット(slip knot)に関するものである。一番ありふれた方法は、1つの綱の終り部分をその綱の中間に鉤形に巻いた後、また末端部分に1次結び目を作る。それからその綱中間に2次で滑る結び目が付けられる。この時、綱を引っ張れば、滑る結び目がしっかりと締めてくれる。
【0023】
しかし、この糸の短所は、末端部位に結び目を作ると、糸が組織を通過することによって敏感な組織を傷つけてしまうおそれがある。また、糸をループで一度通過して結び目を作っても、結び目が厚く傷組織を刺激することによって、水ぶくれが発生するか、または分解される間、持続的に刺激を与えるという短所がある。
【0024】
本発明は、縫合糸末端のループに結び目が別に存在しなくて、前記のような問題点は全然発生しない。すなわち、手術の時及び手術の後、傷組織の刺激を最小するためにループの連結部位が滑りやすく改善した発明である。
【0025】
手術用縫合糸で切開部位を縫う作業を遂行するためには、一番目に針が人体切開部位を貫いた後、その針に縛られている縫合糸の末端部に結び目が必ずあることによって、次々と切開部位を縫う作業がずっと続けることができる。これは通常の針作業をする時、糸の端部に結び目があって、針が最初衣服を通過した後、糸の末端部にある結び目がストッパ(stopper)役目をすることと類似の原理である。
【0026】
図2は、本発明の縫合糸(針が結合された状態)として、切開部位を縫う状態を図示している。
【0027】
本発明は、手術縫合糸に関するものとして、結び目を生じさせず縫おうとする身体切開部位を針が一度通過した後、その貫通された身体部位で縫合糸により手軽く結び目の効果を出す末端ループ生分解性手術用縫合糸の製造に関するものである。より具体的には、ツイスターブレイダーを利用して手術用縫合糸を製造するにおいてループ形態を特徴とする末端ループ手術用縫合糸製造に関するものである。
【0028】
すなわち、ツイスターブレイダーを利用して、1次にPGLA(polyglycolide−co−L−lactide) FDY(fully drawing yarn)をブレーディングした後、また上部のブレーディングされた部分をコアで入れて、ブレーディングして末端ループ手術用縫合糸を製造した後に、この糸を針に付着して製造する末端ループ生分解手術用縫合糸の製造に関するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は手術縫合糸製造方法に関することとして、本発明の目的は、縫合手術で必ず必要な”熟練された結び目技術”が必要なしに、容易に縫合手術ができる縫合糸構造を提供することにある。すなわち結び目を作らなくても縫おうとする身体切開部位を針が一度通過した後、その貫通された身体部位で、縫合糸で手軽く結び目の効果を発揮することができるループ末端構造の手術用縫合糸の製造方法を提示することを目的とする。
【0030】
また、本発明では、手術の時または手術の後、縫合糸末端の結び目によって身体切開部位に刺激及び傷つけないし、刺激・傷による炎症の心配がない構造を持つ縫合糸製造方法を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、上述した問題点を解決して前記目的を果たすために案出されたものである。
【0032】
特に、内視鏡手術の時、末端ループ縫合糸構造を取り入れて従来の1次結び目に対応する作業を非常に容易にできるようにした。
【0033】
上述したように、従来は、切開された部位を縫合する時、手術用縫合糸で傷部位を1回通過後に結び目を作って続いて縫合することが一般的である。したがって、一回の結び目でも非常に熟練された技術を要した。
【0034】
本発明のように、一番目の結び目を容易に安定的に縫合糸末端にループを形成すれば、傷組織の1回通過後、糸をループで通過するだけで自然に結び目が作られるようにすることによって、手術時間をかなり減らすことができる。
【0035】
すなわち、放射器を利用して、製造されたマルチフィラメントまたはモノフィラメントをボビンに巻いて、多数のボビンを準備する段階s10;
【0036】
その次に、ボビンに巻かれた糸をシース(sheath)にしてブレイダー装置のキャリア(carrier)にそれぞれさす段階s20;
【0037】
その次に、ブレーディングを実施してブレイダーコレクター(braid collector、A)を通過させて、テイクオフローラー(take off roller、B、C)、ワイヤアイレット(wire eyelet、E)、トラバースアイレット(traverse eyelet、F)を順に通過させた後、リールボビン(reel bobbin、G)で巻いてシースブレーディングされた糸を編む段階s30;
【0038】
一定の長さ位ブレーディングされた後にリールボビン(reel bobbin、G)に巻かれたブレーディング縫合糸を切り捨てる段階s40;
【0039】
前記のように作られたシースブレーディングされた糸またはシース−コア(sheath−core)でブレーディングされた糸22をまた180度回転させて(下方向に)折って、すなわちブレイダーコレクター(braid collector、A)上部にある縫合糸を折って、ブレイダーコレクター(braid collector、A)の穴に通過させてループを作る段階s50; を含むことを特徴とする。
【0040】
このように逆にヤーンを通過した縫合糸、すなわちシースブレーディングされた糸21またはシース−コアでブレーディングされた糸22をコアで使いながら、シース−コア(sheath−core)ブレーディングを実施する。
【0041】
この時、コアを取り囲みながらコアの長さ方向に対して45度位に斜め下方向に同時にブレーディングする段階s60;を経ることによって、ループ末端構造を持つ手術用縫合糸製造が完了する。
【0042】
一方、前記ブレーディングされた縫合糸を針端部に引入し、針を圧搾して縫合糸針結合体を完成する段階s70が加えられることもできる。この時、針が合わされた状態である。
【0043】
前記手術用縫合糸の材料として、モノマーがグリコライド(glycolide)、L−ラクチド(L−lactide)、D−ラクチド(D−lactide)、D,L−ラクチド(D,L−lactide)、p−ジオキサノン(p−dioxnaone)、ε−カプロラクトン(ε−caprolactone)、炭酸トリメチレン(trimethylenecarbonate)の単独重合あるいはグリコライド(glycolide)とL−ラクチド(L−lactide)組合共重合、L−ラクチド(L−lactide)とε−カプロラクトン(ε−caprolactone)の組合共重合、または前記7種モノマーの2種類組合共重合、3種類組合共重合、4種類組合共重合を使用及び放射してマルチフィラメントを製造するか、またはこれらの組合で合成された共重合体の材料で製造されることを特徴とする。
【0044】
一方、前記手術用縫合糸の材料となることができるマルチフィラメント材料としては、ポリグリコール酸(Polyglycolicacid(PGA))、ポリグリコリック−co−ラクチド(Polyglycolic−co−lactide、PGLA、ここでラクチドはD−form、L−form、DL−formをすべて含む)、ポリp−ジオキサノン(Polyp−dioxanone(PDO))、ポリ(グリコリド−co−ε−カプロラクトン)(polyglycolic−co−ε−caprolactone(PGCL))、ポリε−カプロラクトン(polyε−caprolactone(PCL))、ポリ炭酸トリメチレン(Polytrimethylenecarbonate(PTMC))の単一成分重合ポリマーまたはこれら成分を組み合わせて重合した共重合体のポリマーを使って製造するか、あるいは非生分解性であるナイロン、ポリエステル、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン、シルクの中から選択されたいずれか一種類であることを特徴とする。
【0045】
前記ブレーディングする装置としては、ツイスト 8 キャリアブレイダー(twist 8 carrier braider)、ツイスト 12 キャリアブレイダー(twist 12 carrier braider)、ツイスト 16 キャリアブレイダー(twist 16 carrier braider)、ツイスト 32 キャリアブレイダー(twist 32 carrier braider)、ツイスト 64 キャリアブレイダー(twist 64 carrier braider)を使って製造することもできる。
【発明の効果】
【0046】
本発明を通じて、従来高度の熟練度が必要な縫合手術結び目作りを非常に簡単で容易く行うことができるようになった。
【0047】
本発明の効果を要約すれば、内視鏡手術時傷組織を一度通過した後、結び目を非常に容易に安定的に作ることができて、手術時間の短縮、患者の苦痛低減、手術熟練度の不用、安定した結び目による再手術防止などの著しい発明の効果を期待することができる。
【0048】
言い換えれば、縫合糸末端のループ構造は、その表面が滑りやすく、でこぼこ突き出された結び目がないため、糸の末端部位にループを製作することによって、手術の時、初期結び目を非常に容易く作ることができ、傷組織に刺激を与えず痛症減少及び炎症誘発を無くすことができる。
【0049】
また、本発明の縫合糸の末端部位には1個だけのループを形成されるので、既存縫合糸にあった結び目構造による手術時の所要時間、要求手術熟練度、組織損傷の可能性などの問題点を一挙に解決することができる画期的な発明である。
【0050】
本発明の著しい効果は次のようである。
【0051】
すなわち、従来は、内視鏡手術時、傷部位の縫合には非常に熟練した専門医師が必要であったが、本発明のループ構造は非常に簡単で手軽く傷部位の縫合手術作業を施行することができるので、”結び目作りにおいて熟練された医師”になるための数多い試行錯誤、手術時の誤り、長い所要時間などの問題点を一気に解決することができる。
【0052】
従来の内視鏡による縫合手術法は、手に直接縫合するのではなく、道具を利用して縫合糸の結び目を作らなければならなかったが、これは非常に熟練された医者が必要だった。特に、外科医あるいは内科医が結び目が解けることを防止するために、手術時の時間消耗が大きく、手術作業の疲労度がずっと高かった。
【0053】
そして、本発明によるループ構造の縫合糸を通じて、再び解けない安定した結び目を施行することができ、手術信頼度を大幅に向上することができる。
【0054】
さらに、本発明は糸が二重で厚くないため、傷組織を通過する時、損傷が少なく、針耳も厚くないように製作できるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】引用技術を説明するための図面である。
【図2】本発明の縫合糸と針が結合された図面である。
【図3】図2の実際サンプル写真である。
【図4】スモールボビンを図示した写真である。
【図5】ブレイダー装置の概路図である。
【図6】ループの形成工程を説明するための図面である。
【図7】本発明を利用して身体切開部位を縫って結び目を作る図面である。
【図8】ブレーディング装置の全体撮影写真である。
【図9】一次コアとシースがブレーディングされて縫合糸を製作することを説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
前記のような本発明の実施例を添付された図面を参照して詳しく説明する。
ただ、本発明は実施例によって限定されず、本発明が属する技術分野において通常の知識を有するものであれば本発明の思想と精神を逸脱することなく、本発明を修正または変更できるであろう。
【0057】
まず、用語に対してあらかじめ説明しようとすると、以下の記載内容中、USPはUnited States Pharmaceupeiaの略字であり、米国薬局方を指し、EPはEuropean Pharmaceupeiaの略字であり、欧州薬局方を指し、FDYは完全延伸糸(fully drawing yarn)の略字であり、ポリマーチップをとかしてマルチ放射器に入れて放射し、完全に延伸させて作られた多くの筋で成り立った(おおよそ200〜600筋)延伸糸として、一筋の直径は1.5μmであるものを指す。一方、E.Oガスはエチレンオキサイドの略字であり、滅菌ガスを指す。
【0058】
本発明に対する理解を助けるために、図7を先に説明する。本発明の縫合糸が針70に結合された状態で、身体切開部位40を縫う場面である。この時、ループ25に針を通過させて簡単に安定した結び目を作ることができる。
【0059】
図2は本発明によるループ型手術用縫合糸と針が一緒に結合された図面であり、図3は図2の実際に製作したサンプルを撮影した写真である。図2及び図3の端部にはループ型構造を取り揃えた縫合糸を見られる。
【0060】
以下、本発明のループ構造の縫合糸製造方法を説明する。
【0061】
実施例1
まず、PGLA(Poly glycolide−co−L−lactide)ポリマーチップ(固有粘度が 1.6dl/g、摂氏30度、0.1% ヘキサフルオロイソプロパノール溶液(以下”HFIP”))をマルチ放射器で放射して、製造された640筋のFDYマルチフィラメントをスモール(small)ボビンにそれぞれ1km程度を巻いて、全部で16個のスモールボビンを準備する。
【0062】
その次に前記巻かれたスモールボビンをシース(sheath)によりツイスターブレイダー(Braider)のキャリア(carrier)にそれぞれはめる。図4は、この工程まで用意したものを撮影した写真である。
【0063】
前記のように準備が完了した後の工程(図5及び図6参照)は、次のようである。図5はスモールボビンに巻かれている糸をブレーディングするための装置としてキャリアツイストブレイダーだと言う。
【0064】
すなわち、スモールボビンに巻かれたFDYマルチフィラメントをブレイダーコレクター(braid collector、A)で通過させた後、テイクオフローラー(take off roller、B、C)、ワイヤアイレット(wire eyelet、E)、トラバースアイレット(traverse eyelet、F)を順に通過させた後、リールボビン(reel bobbin、G)で巻く。
【0065】
その次に一定の長さ(望ましくは、85センチメートル位)位ブレーディングされた後にリールボビン(reel bobbin、G)に巻かれたブレーディング縫合糸を切り捨てる。
【0066】
段階1
段階1は、スモールボビンに巻かれている糸を単純に編むシースブレーディング(sheath braiding)を行う。
【0067】
シースブレーディングは、スモールボビンに巻かれている細い糸をお互いに編み出す作業である。
【0068】
段階2
段階2は、段階1から作られたシースブレーディングされた糸21またはシース−コアブレーディングされた糸22の中間一側を、180度回転させて(下方向に)折った後(すなわち、U−ターンさせる)、これを丸くループ25形態で巻き、前記ループの形成前にブレーディングされた直線形態の先端部位(コア)をまたブレイダーコレクター(braid collector、A)の穴に通過させる工程を行う。図6はループ形成工程がより容易く把握されるように図示されている。
【0069】
段階3
前記コアに対してシースコア(sheath−core)ブレーディングを実施するが、この時コアを中心に下側方向にブレーディングを実施する。
【0070】
この時、コアで使うということは中芯で使ってその周りに糸を巻くという意味である。
【0071】
図面符号22はシース−コア(sheath−core)ブレイダーとして、これは中心部分にあるもうブレーディングされている縫合糸であるコアとシースブレーディングされた糸を合わせたものを言う。
【0072】
前記製造工程で、約800mm程度のシース−コア(sheath−core)をブレーディングするのが望ましいが、このような糸の長さは800mmに限定されず、多様に変形可能である。
【0073】
その次に、このような製造された糸をメタノールで洗浄した後、末端に針を付着して末端ループ手術用縫合糸を完成させる。この時、針の端部には糸を収容するように収容溝が用意されており、ここに前記製造された糸を入れた後、針の端部を圧搾して完成させる。
【0074】
また、前記工程中、望ましい末端ループの外径は7mmであり、糸の全長は480mm程度であるが、ここに限定されず、より大きくあるいは小さくループの大きさを形成することができるので、使用用途によってループ直径が1mm以上100mm以下ループ構造も可能である。
【0075】
一方、手術用縫合糸の材料では、モノマーがグリコライド(glycolide)、L−ラクチド(L−lactide)、D−ラクチド(D−lactide)、D,L−ラクチド(D,L−lactide)、p−ジオキサノン(p−dioxnaone)、ε−カプロラクトン(ε−caprolactone)、炭酸トリメチレン(trimethylenecarbonate)の単独重合あるいはグリコライド(glycolide)とL−ラクチド(L−lactide)組合共重合、L−ラクチド(L−lactide)とε−カプロラクトン(ε−caprolactone)の組合共重合、または前記7種のモノマーの2種類組合共重合、3種類組合共重合、4種類組合共重合を使用及び放射してマルチフィラメントを製造するか、または、これらの組合で合成された共重合体の材料で製造されることを特徴とする。
【0076】
実施例2
本発明の実施例2では、前記実施例1の糸の材料を異にする。すなわち、原料がPGA(Polyglycolide)ポリマーチップ(固有粘度が1.5dl/g、摂氏30度、0.1% HFIP溶液条件下)をマルチ放射器で放射して製造されたFDYマルチフィラメントを使って縫合糸の糸材料にし、前記ループ形態を作る工程を経って最終完成品を作ることができる。
【0077】
一方、本発明である末端ループ製造装置は、ツイスターブレイダーだけで限定されない。すなわち、8キャリアブレイダー、12キャリアブレイダー、16キャリアブレイダー、32キャリアブレイダー、64キャリアブレイダーなどツイスト2〜252キャリアブレイダーを使うことができる。
【0078】
実施例3(図9参照)
本実施例では、前記実施例1での、段階1で成り立つ”シースブレーディング(sheath braiding)”の代わりに”シース−一次コアブレーディング”という段階が行われるという点で異なる。
【0079】
図9では、このような段階が図示されており、図9での段階2と段階3工程は前記実施例1と同じ方法で行われる。
【0080】
前記”一次コア”という用語は、多くの筋のシース(sheath)がこの一次コアを中心にブレーディングされるということを意味する。図9の段階1で濃く図示された筋部分が一次コア50にあたる。
【0081】
そして、前記実施例1で使われた”コア”という用語は、本実施例3では”二次コア”という用語と等しい意味を持つ。
【0082】
シース−一次コアブレーディングを実施する段階1(図9)後には、図9の段階2のように、ループ形態に巻いた後、この状態(ループ前段部)を二次コアにし、ブレーディング(シース−二次コアブレーディング)を行う(図9、段階3)。
【0083】
このようなシース−二次コアブレーディングは、上述したシース−コアブレーディングと実質的に工程方法が等しい。
【0084】
前記一次コアでは、PGLA FDY 50筋のフィラメント(filament)を使うことができるが、その他生体分解性マルチフィラメントを使うこともできる。
【0085】
そしてシース(sheath)としてはモノフィラメントあるいはマルチフィラメントが使われることができる。
【0086】
実施例4
実施例4では、実施例3での一次コアとしてマルチフィラメントが使われる代りに、モノフィラメントが使われるという点以外は実施例3と等しい。
【0087】
本実施例4の一次コアではPDO USP 6−0モノフィラメントを使うのが望ましいが、そのほか生体分解性モノフィラメントを使うこともできる。
【0088】
実施例5
本実施例では、マルチフィラメントとモノフィラメントを混用してブレーディングされたものを”一次コア”として使うことに特徴がある。その他の工程は実施例3と等しい。
【0089】
すなわち、前記実施例において、前記s20段階で、一次コア50をマルチフィラメントとモノフィラメント中でいずれか1つを使って製造することができる。
【0090】
前記シース20は、モノフィラメントとマルチフィラメント中でいずれか1つを使って製造することも可能である。
【0091】
また、前記s20段階で、前記一次コア50をマルチフィラメントとモノフィラメントを混合して製造し、前記シース20はモノフィラメントとマルチフィラメントの中でいずれか1つあるいはモノフィラメントとマルチフィラメントを混合して製造することもできる。
【0092】
一方、本発明による縫合糸に対する物性測定を次のように行った。
【0093】
1)直径測定方法:
アメリカ食品医薬品安全庁のUSP921の方式で測定し、測定機は株式会社ミツトヨによるダイヤルゲージを使ってマルチフィラメントの縫合糸に張力を加えて測定した。また、縫合糸の糸を一度測定後、角度を90度回して測定し、10回の測定値の平均値で決定した。
【0094】
2)EP結び目測定方法:
Instron社の伸長強度機を使って手術用縫合糸を、一度結び目をつけてEP simple knot方式で5筋の測定値を平均値で決めた。
【0095】
3)結び目強力維持率測定方法:
製造された縫合糸の初期EP結び目強力を測定する。その後1Mリン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline)を製作してpH7.4で作る。試験用チューブに製造された縫合糸を約2m入れて、1Mリン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline)を満たして縫合糸が漬かるようにする。振盪槽(Shaking bath)の温度を37℃にした後に製造された試験用チューブを入れて14日後に取り出してEP結び目強力を測定して結び目強力維持率を計算する。
【0096】
このような方法による物性測定すると下表のようである。
【0097】
【表1】

【0098】
前記説明したように、本発明では内視鏡手術時、ツイスターブレイダーを利用して末端ループが非常に滑りやすい生分解手術用縫合糸の製造方法を開発した。
内視鏡による手術時、切開された部位を縫合する時は手術用縫合糸で傷部位を1回通過後に結び目を容易に作ることができる。すなわち、あらかじめ縫合糸の末端にループを形成させると、傷組織の1回通過後、糸をループで通過さえすれば自然に結び目が作られるので、手術時間を減らすことができる。
【0099】
また、非常に熟練を要する結び目作りを一回で解決するので、内視鏡手術時結び目の誤りも減らすことができる。
【0100】
結論的に本発明による、末端ループ構造の生分解縫合糸は、内視鏡手術に適用される場合、時間及び費用を大幅に減少させることがができ、縫合糸結び目と係わった熟練度が不必要だという大きな利点がある。
【産業上利用可能性】
【0101】
本発明の手術用縫合糸の製造方法は、主に成形外科、肌固定及び軟組織の縫合、インプラントを組織に固定するなど多様な外科手術用縫合糸の製造方法に適用される。
【符号の説明】
【0102】
20 シース(sheath)
21 シースブレーディング(braiding)された糸
25 ループ
22 シース−コアでブレーディングされた糸
40 身体切開部位
50 一次コア
70 針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性縫合糸において、
その一端部は結び目がないループ構造であり、他端部は針と結合され、
前記一端部以外の部分はツイスティングブレーディングされて一筋で作られたことを特徴とする生分解性縫合糸。
【請求項2】
放射器を利用して、製造されたマルチフィラメントまたはモノフィラメントをボビンに巻いて多数のボビンを準備する段階s10と、
その次に、ボビンに巻かれた糸をシース(sheath)20及び一次コア50にしてブレイダー装置のキャリア(carrier)にそれぞれさす段階s20と、
その次に、ブレーディングを実施してブレイダーコレクター(braid collector、A)を通過させて、テイクオフローラー(take off roller、B、C)、ワイヤアイレット(wire eyelet、E)、トラバースアイレット(traverse eyelet、F)を順に通過させた後、リールボビン(reel bobbin、G)で巻いてシースブレーディングされた糸21あるいはシース−コアブレーディングされた糸22を編む段階s30と、
前記s30段階で一定の長さ位ブレーディングされた後にリールボビン(reel bobbin、G)に巻かれたブレーディング縫合糸を切り捨てる段階s40と、
前記s40段階でブレーディングされた糸の一側を、180度回転させて(下方向に)折った後、これを丸くループ25形態で巻いた後、前記ループの形成前にブレーディングされた直線形態の先端部位をまたブレイダーコレクター(braid collector、A)の穴に通過させる段階s50と、
前記s50段階でのブレイダーコレクターの穴に通過された部分(ニ次コア)に対して、シース−二次コアブレーディングを下側方向に実施する段階s60と、
を含むことを特徴とする手術用縫合糸の製造方法。
【請求項3】
放射器を利用して、製造されたマルチフィラメントまたはモノフィラメントをボビンに巻いて、多数のボビンを準備する段階s100と、
その次に、ボビンに巻かれた糸をシース(sheath)20にしてブレイダー装置のキャリア(carrier)にそれぞれさす段階s200と、
その次に、ブレーディングを実施してブレイダーコレクター(braid collector、A)を通過させて、テイクオフローラー(take off roller、B、C)、ワイヤアイレット(wire eyelet、E)、トラバースアイレット(traverse eyelet、F)を順に通過させた後、リールボビン(reel bobbin、G)で巻いてシースブレーディングされた糸21を編む段階s300と、
前記s300段階で一定の長さ位ブレーディングされた後にリールボビン(reel bobbin、G)に巻かれたブレーディング縫合糸を切り捨てる段階s400と、
前記s400段階でブレーディングされた糸の一側を、180度回転させて(下方向に)折った後、これを丸くループ25形態で巻いた後、前記ループの形成前にブレーディングされた直線形態の先端部位をまたブレイダーコレクター(braid collector、A)の穴に通過させる段階s500と、
前記s500段階でのブレイダーコレクターの穴に通過された部分(コア)に対して、シース−コアブレーディングを下側方向に実施する段階s600と、
を含むことを特徴とする手術用縫合糸の製造方法。
【請求項4】
手術用縫合糸の材料として、
モノマーがグリコライド(glycolide)、L−ラクチド(L−lactide)、D−ラクチド(D−lactide)、D,L−ラクチド(D,L−lactide)、p−ジオキサノン(p−dioxnaone)、ε−カプロラクトン(ε−caprolactone)、炭酸トリメチレン(trimethylene carbonate)の単独重合あるいはグリコライド(glycolide)とL−ラクチド(L−lactide)組合共重合、L−ラクチド(L−lactide)とε−カプロラクトン(ε−caprolactone)の組合共重合、または前記7種モノマーの2種類組合共重合、3種類組合共重合、4種類組合共重合を使用及び放射してマルチフィラメントを製造するか、またはこれらの組合で合成された共重合体の材料で製造されることを特徴とする請求項2または3に記載の手術用縫合糸の製造方法。
【請求項5】
手術用縫合糸の材料となることができるマルチフィラメント材料としては、
ポリグリコール酸(Polyglycolicacid(PGA))、ポリグリコリックコラクチド(Polyglycolic−co−lactide、PGLA、ここでラクチドはD−form、L−form、DL−formをすべて含む)、ポリp−ジオキサノン(Polyp−dioxanone(PDO))、ポリ(グリコリド−co−ε−カプロラクトン)(polyglycolic−co−ε−caprolactone(PGCL))、ポリε−カプロラクトン(polyε−caprolactone(PCL))、ポリ炭酸トリメチレン(Polytrimethylenecarbonate(PTMC))の単一成分重合ポリマーまたはこれら成分を組み合わせて重合した共重合体のポリマーを使って製造するか、あるいは非生分解性であるナイロン、ポリエステル、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン、シルクの中から選択されたいずれか一種類であることを特徴とする請求項2または3に記載の手術用縫合糸の製造方法。
【請求項6】
ブレイダー装置がツイスト2〜252キャリアブレイダー(twist 2〜252 carrier braider)を使って製造することを特徴とする請求項2または3に記載の手術用縫合糸の製造方法。
【請求項7】
前記s60及びs600段階でブレーディングされた縫合糸を、
針端部に引入して、針を圧搾して縫合糸針結合体を完成する段階s70をさらに含むことを特徴とする請求項2または3に記載の手術用縫合糸の製造方法。
【請求項8】
前記s20段階で、一次コア50はマルチフィラメントとモノフィラメント中でいずれか1つを使って製造し、
前記シース20はモノフィラメントとマルチフィラメント中でいずれか1つを使って製造することを特徴とする請求項2に記載の手術用縫合糸の製造方法。
【請求項9】
前記s20段階で、前記一次コア50はマルチフィラメントとモノフィラメントを混合して製造し、
前記シース20はモノフィラメントとマルチフィラメント中でいずれか1つあるいはモノフィラメントとマルチフィラメントとを混合して製造することを特徴とする請求項2に記載の手術用縫合糸の製造方法。
【請求項10】
前記シース20は、モノフィラメントとマルチフィラメント中でいずれか1つあるいはモノフィラメントとマルチフィラメントとを混合して製造することを特徴とする請求項3に記載の手術用縫合糸の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図6】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−511322(P2013−511322A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539826(P2012−539826)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【国際出願番号】PCT/KR2011/002691
【国際公開番号】WO2011/155700
【国際公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(510038533)メタ バイオメド カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】