説明

打たせ湯ノズル

【課題】浴室内の浴槽に温水を落下させる打たせ湯ノズルであって、ノズル下端の吐水口12aの形状が楕円形であるものにおいて、止水時に吐水口12aでの水の表面張力によりノズル内に水が残留することを防止できるようにする。
【解決手段】吐水口12aの形状である楕円形の短軸方向片側のノズル側面の下端部に、吐水口12aに達する切り欠き12bを形成する。吐水口12aでの水の表面張力のバランスが、切り欠き12bに生ずる表面張力の影響で崩されて、止水時にノズル内に水が残留しなくなる。また、切り欠き12bは、吐水口12aの形状である楕円形の長軸方向両側に非切り欠き部12cが残るように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内の浴槽に向けて温水を落下させる打たせ湯ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室暖房機に、浴槽に向けて温水を落下させる打たせ湯ノズルを付設し、入浴者が浴槽内で打たせ湯を楽しむことができるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、特許文献1には打たせ湯ノズルの形状が記載されていないが、一般的には、ノズル下端の吐水口の形状を円形にしている。これに対し、本願発明者は、鋭意努力の結果、吐水口の形状を楕円形にすると、吐水口から吐出する水流が落下途中で適度な大きさの水滴に分離し、この水滴が入浴者に断続的に当たって適度なマッサージ効果が得られることを知見するに至った。
【0004】
然し、吐水口を楕円形にすると、止水時に吐水口での水の表面張力によりノズル内に水が残り易くなることが判明した。ノズル内に残った水は、浴室暖房機の運転時の振動でノズルから垂れ落ち、ユーザに不快感を与えてしまう。
【特許文献1】特開2003−83557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、吐水口の形状を楕円形にしたものにおける止水時の水の残留を防止できるようにした打たせ湯ノズルを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、浴室内の浴槽に向けて温水を落下させる打たせ湯ノズルであって、ノズル下端の吐水口の形状が楕円形であるものにおいて、この楕円形の短軸方向片側のノズル側面の下端部に、吐水口に達する切り欠きが形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、吐水口での水の表面張力のバランスが、吐水口の短軸方向片側の切り欠きに生ずる表面張力の影響で崩される。そのため、止水時にノズル内に水が残留することを防止できる。
【0008】
また、本発明において、切り欠きは、吐水口の形状である楕円形の長軸方向両側に非切り欠き部が残るように形成されることが望ましい。これによれば、切り欠きを形成しても、吐水口から切り欠き側に片寄って温水が吐出することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1を参照して、BRは浴室を示している。浴室BRには、洗い場BRaの横方向一方(右方)に位置させて浴槽BTが設置されている。また、浴室BRの天井部には、浴槽BTの上方に位置させて浴室暖房機1が設置されている。
【0010】
浴室暖房機1の暖房機本体2の下面には、浴室BR内に露出するカバー3が設けられている。カバー3には、図2、図3に示す如く、横方向一方の半部の略全域に亘る固定ルーバ4a付きの吸込み口4と、吸込み口4の横方向他方に位置する可変ルーバ5a付きの吹出し口5とが形成されている。
【0011】
暖房機本体2内には、吸込み口4と吹出し口5とを連通する通風路6と、通風路6を介して浴室BRの空気を循環させる循環ファン7と、通風路6に流れる空気を加熱する加熱手段たる放熱器8とが設けられている。放熱器8には、図外の給湯暖房熱源機の暖房部で加熱された熱媒体(水、不凍液等)が供給される。そして、循環ファン7の作動により吸込み口4から通風路6に吸込まれた浴室BRの空気が放熱器8で加熱され、温風となって吹出し口5から浴室BR内に送風される。
【0012】
吸込み口4の上側にはフィルタ9が装着されている。そして、カバー3の吸込み口4と吹出し口5との間の部分に、フィルタ9の側端の把手部9aが収まる出入れ口10を形成し、フィルタ9を出入れ口10を通して抜き差し自在としている。
【0013】
また、カバー3には、吹出し口5の横方向他方に隣接する部分に位置させて一対のミストノズル11が設けられている。各ミストノズル11は、給湯暖房熱源機の暖房部からの熱媒体を供給する図外の液々熱交換器で加熱された温水を噴霧する。噴霧された温水ミストは吹出し口5から送風される温風に乗って浴室BR内に供給される。
【0014】
また、浴室暖房機1は、給湯暖房熱源機の給湯部からの温水を浴槽BTに向けて落下させる打たせ湯ノズル12を備えている。以下、この点について説明する。
【0015】
本実施形態では、吸込み口4の前後方向中央部を吸込み口4の横方向一方の側縁(吹出し口5とは逆側の側縁)から吸込み口4の横方向中央部に亘って閉塞する閉塞板部4bを設けている。そして、この閉塞板部4bに横長の透孔4cを開設して、打たせ湯ノズル12を透孔4cに臨むように配置している。尚、打たせ湯ノズル12に干渉することなくフィルタ9を抜き差しできるように、閉塞板部4b上に位置するフィルタ9の部分は切り欠かれている。
【0016】
図4を参照して、打たせ湯ノズル12の上端には、前後方向に屈曲するエルボ管13がクリップ13aを用いて連結されている。そして、打たせ湯ノズル12への温水の供給を制御する制御弁14の前後方向の孔軸を持つ流出孔14aにエルボ管13をクリップ14bを用いて回動自在に連結している。これにより、打たせ湯ノズル12は、流出孔14aの前後方向の孔軸を中心にして横方向に揺動自在となる。その結果、横長の透孔4c内で打たせ湯ノズル12が横方向に変位自在となる。
【0017】
また、図3を参照して、閉塞板部4bの透孔4cの形成部分は、打たせ湯ノズル12の揺動中心と同心の断面円弧状に形成されている。そして、閉塞板部4bの上面に当接する断面円弧状の目隠し板15を打たせ湯ノズル12に連結し、透孔4cを通して内部が見えることを防止している。尚、図4では目隠し板15を省略している。
【0018】
また、本実施形態の打たせ湯ノズル12の上端部の断面形状は、図5(b)に示す如く円形であるが、ノズル下端の吐水口12aの形状は、図5(c)に示す如く横方向を短軸方向とする楕円形に形成されている。尚、打たせ湯ノズル12の上端部の内径をR1、吐水口12aの長軸方向の径をR2、吐水口12aの短軸方向の径をR3として、R1及びR2は例えば18mmに設定され、R3は例えば5mmに設定される。
【0019】
このように吐水口12aを楕円形に形成すると、吐水口12aから吐出する水流が落下途中で適度な大きさの水滴に分離し、この水滴が入浴者に断続的に当たって適度なマッサージ効果が得られる。然し、吐水口12aが扁平になるため、止水時に吐水口12aでの水の表面張力により打たせ湯ノズル12内に水が残留しやすくなる。
【0020】
そこで、本実施形態では、打たせ湯ノズル12に、前記楕円形の短軸方向片側のノズル側面の下端部に位置させて、図4及び図5(a)に示す如く吐水口12aに達する切り欠き12bを形成している。これによれば、吐水口12aでの水の表面張力のバランスが、吐水口12aの短軸方向片側の切り欠き12bに生ずる表面張力の影響で崩される。そのため、止水時に打たせ湯ノズル12内に水が残留することを防止できる。
【0021】
また、本実施形態では、吐水口12aの形状である楕円形の長軸方向両側に非切り欠き部12cが残るように切り欠き12bを形成している。これによれば、切り欠き12bを形成しても、吐水口12aから切り欠き12b側に片寄って温水が吐出することを防止できる。
【0022】
このことを確かめるため、吐水口12aの長軸方向の径R2が18mm、短軸方向の径R3が5mmの打たせ湯ノズル12を用い、非切り欠き部12cの幅Wと切り欠き12bの高さHとを変えて実験した。その結果、Wが1.5mm未満でHが6mmを超えると、切り欠き12bが大きくなり過ぎて、吐水口12aから切り欠き12b側に片寄って温水が吐出し、温水の落下位置がずれたり、水流が水滴状にうまく分離しなくなることが分かった。また、Wが3mmを超えHが4mm未満になると、切り欠き12bが小さくなり過ぎて、吐水口12aでの水の表面張力のバランスが然程崩れず、止水時に打たせ湯ノズル12内に水が残留してしまった。従って、非切り欠き部12cの幅Wは吐水口12aの長軸方向の径R2の9〜16%、切り欠き12bの高さHは4〜6mmに設定することが好ましい。
【0023】
また、切り欠き12bは、打たせ湯ノズル12の横方向一方のノズル側面、即ち、洗い場BRa側とは反対側のノズル側面に形成することが望ましい。これによれば、入浴者から切り欠き12bが見えず、体裁が良好に保たれる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態の切り欠き12bの形状は方形であるが、三角形や半円形の切り欠きを形成してもよい。また、上記実施形態は、浴室暖房機1に付設する打たせ湯ノズル12に本発明を適用したものであるが、浴室暖房機とは分離独立して設ける打たせ湯ノズルにも同様に本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態の打たせ湯ノズルを具備する浴室暖房機の設置状態を示す説明図。
【図2】図1の浴室暖房機の斜め下方から見た斜視図。
【図3】図1の浴室暖房機の切断側面図。
【図4】実施形態の打たせ湯ノズルの斜視図。
【図5】(a) 実施形態の打たせ湯ノズルの横方向一方から見た側面図、(b)図5(a)のb−b線切断面図、(c)図5(a)のc−c線切断面図。
【符号の説明】
【0026】
BR…浴室、BT…浴槽、12…打たせ湯ノズル、12a…吐水口、12b…切り欠き、12c…非切り欠き部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内の浴槽に向けて温水を落下させる打たせ湯ノズルであって、ノズル下端の吐水口の形状が楕円形であるものにおいて、
この楕円形の短軸方向片側のノズル側面の下端部に、吐水口に達する切り欠きが形成されることを特徴とする打たせ湯ノズル。
【請求項2】
前記切り欠きは、前記楕円形の長軸方向両側に非切り欠き部が残るように形成されることを特徴とする請求項1記載の打たせ湯ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−115322(P2010−115322A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290265(P2008−290265)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】