打切り試験における打切り時間および試験中止基準見積もり方法・装置
【課題】 打切り時間および試験中止基準時間の適切な見積もりが、簡単にかつ迅速に行え、かつ信頼性の高いものとでき、また熟練を要しないものとする。
【解決手段】 試験対象の寿命分布となるワイブル分布を用い、その分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させて全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる過程を繰り返す。この処理を繰り返して累積分布を演算し、この累積分布からL10寿命等の信頼度に対応する時間を読み取って打切り時間とするコンピュータシミュレーションを行う。また、上記ワイブル分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させてそのうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる処理を繰り返し、この処理を繰り返して累積分布を演算する。この累積分布から、100%からL10寿命等の信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って1個破損時の試験中止基準時間とするコンピュータシミュレーションを行う。
【解決手段】 試験対象の寿命分布となるワイブル分布を用い、その分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させて全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる過程を繰り返す。この処理を繰り返して累積分布を演算し、この累積分布からL10寿命等の信頼度に対応する時間を読み取って打切り時間とするコンピュータシミュレーションを行う。また、上記ワイブル分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させてそのうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる処理を繰り返し、この処理を繰り返して累積分布を演算する。この累積分布から、100%からL10寿命等の信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って1個破損時の試験中止基準時間とするコンピュータシミュレーションを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受等の機械部品や、その試験片からなる試験対象品の寿命試験として、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命は満足すると判断する打切り試験を行う場合に、上記打切り時間を見積もる方法、装置、プログラム、並びに破損が生じたときに要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準とする基準時間を見積もる方法、装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
寿命試験は、軸受等の機械部品の性能を評価するために欠かせない試験の1つである。寿命試験には、大きく分けて(1) 実機の使用環境に近い条件で試験を行う実機試験と、(2) 比較的過酷な条件で寿命試験を行う加速試験がある。前者は、製品が有限時間内に破損するケースが極めて少ないため、ある目標時間まで破損することなく試験が継続すれば、寿命は問題ないと判断する試験である(以下、このような試験を「打切り試験」と呼ぶ)。一方、後者は、比較的短時間で破損が発生するので、ワイブルプロットで寿命が算出でき(例えば非特許文献1)、その算出寿命から性能の優劣を判定する試験である(以下、このような試験を「加速試験」と呼ぶ)。
【0003】
従来より、寿命試験は経験を積んだ熟練者が行っており、試験条件や試験個数を決める寿命試験の設計と寿命試験結果の解釈に対して経験的に確からしい判断ができたと考えられる。
図22に、従来から行われてきた寿命試験の設計と寿命試験結果の解釈の手順を、打切り試験と加速試験ごとに示す。
また、現在、寿命試験において経験的に判断されているものの詳細を、表1に示す。
【0004】
【表1】
【0005】
なお、ワイブル分布を機械部品の寿命判断に用いるものは、種々の特許文献,非特許文献に提案されている。
【特許文献1】特開2006−040203号公報
【特許文献2】特開2002−277382号公報
【特許文献3】特開2005−226829号公報
【非特許文献1】真壁肇著、信頼性工学入門79、1991年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
寿命試験の試験時間は、長く行うほど高い信頼度が得られるが、寿命試験は納期や試験機械台数等の厳しい制限下で行われ、また無駄な試験を無くすためにも、信頼性が確保できる範囲で適切な打切り時間を設定することが必要となる。試験中止基準時間についても、無駄に試験を継続しないために、適正な時間を設定することが必要となる。
上記のように、打切り試験における打切り時間の設定や、試験中に破損が生じたときに要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準については、熟練者が経験的に行ってきた。
しかし、これら打切り時間や中止基準の設定は、寿命試験の熟練者でもしばしば判断することが難しいものであり、寿命試験の経験が少ない技術者にとっては判断が困難な状況が発生すると考えられる。このため、熟練者を要するうえ、判断が迅速に行えず、また設定の基準が明確でなくて、試験結果の信頼性の面で不十分である。
【0007】
この発明の目的は、打切り時間の適切な見積もりが、簡単で迅速に行え、かつ信頼性の高いものとできて、打切り試験の結果の信頼性を向上させることができ、熟練者でなくても、適切な打切り時間の見積もりが行える方法、装置、およびその方法の実施のためにコンピュータに実行させるプログラムを提供することである。
この発明の他の目的は、試験中止基準の適切な見積もりが、簡単で迅速に行え、かつ熟練者でなくても適切に行える方法、装置、およびその方法の実施のためにコンピュータに実行させるプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の寿命打切り試験の打切り時間見積もり方法は、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験につき、上記打切り時間を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、打切り試験の対象となる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力する入力過程(A1)と、
上記コンピュータに、打切り時間を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程(A2)とを含む。
【0009】
上記コンピュータ演算処理過程(A2)として、コンピュータに次の、ワイブル分布特定手順(B21)、乱数発生手順(B22)、乱数分析手順(B23)、設定回数繰り返し手順(B24)、累積分布演算手順(B25)、および対応時間読み取り手順(B26)を実行させる。
【0010】
ワイブル分布特定手順(B21)は、次式、
【0011】
【数7】
【0012】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定する手順である。
【0013】
乱数発生手順(B22)は、特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手順である。なお、この場合、および以下の各場合において、ワイブル乱数特定手順(B21)は、乱数発生手順(B22)に含めても良い。
乱数分析手順(B23)は、上記乱数発生手順(B22)で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順である。
【0014】
上記設定回数繰り返し手順(B24)は、上記乱数発生手順(B22)および上記乱数分析手順(B23)を設定回数繰り返す手順である。
累積分布演算手順(B25)は、上記繰り返し手順(B24)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順である。
対応時間読み取り手順(B26)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする手順である。
なお、この明細書において、上記打切り時間は、時間の単位に限らず、軸受を回転させて行う試験における回転回数などのように、負荷回数によって表現された値であっても良い。
【0015】
この方法は、例えば、1ロットの機械部品の中から一部の機械部品を抜き取って寿命の打切り試験を行い、そのロットの寿命を確認する試験等において、打切り時間を定める場合に適用される。
軸受等の機械部品の寿命は、ワイブル分布に従うとされている。ワイブル分布は、ワイブルスロープm、尺度因子α、最小寿命γの3つのパラメータを持っており、ワイブルスロープmによって指数分布、対数正規分布、正規分布を表現できる万能分布として知られている。量産される軸受等では、ワイブルスロープの実績値が使用条件で既知である場合が多く、この発明方法において、ワイブルスロープには、試験対象品となる機械部品等の実績値を用いることが好ましい。実績値がない場合は、適宜の方法で見積もったワイブルスロープを用いてもよい。最小寿命γは、種々の規格、例えばISO等によって計算方法が定められており、そのように定められたいずれかの計算方法を用いることが好ましい。尺度因子αは、ワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、要求寿命の値、および上記最小寿命γから一義的に決定される演算式があり、その演算式を用いて特定しても良い。
このようにワイブル分布を特定し、その特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分だけ発生させると、その発生させたワイブル乱数は、上記試験個数分の試験対象の寿命試験を行い、寿命データを得ることに対応する。乱数分析手順では、このように得られたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する。
この乱数発生手順(B22)および上記乱数分析手順(B23)を、信頼性を得るために満足できるとして設定される回数である設定回数だけ繰り返し、その繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算すると、その累積分布は、信頼性に対応した寿命の分布となる。
そこで、上記対応時間読み取り手順(B26)として、上記累積分布において、上記入力情報のうちの要求寿命の信頼度に対応する時間を読み取ることで、その読み取った値が全数未破損時の打切り時間として適切な値となる。例えば、信頼度が90%の寿命であるL10寿命では、上記累積確率が0.9の時間を読み取ることで、読み取られた時間がL10寿命の全数未破損時の打切り時間となる。
【0016】
この発明方法によると、このように、試験対象の寿命分布となるワイブル分布を用い、その分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させて全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる過程を繰り返し、この処理を繰り返して累積分布を演算し、この累積分布から要求寿命の信頼度に対応する時間を読み取って打切り時間とするコンピュータシミュレーションを行うため、打切り時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、かつ信頼性の高いものとできて、打切り試験の結果の信頼性を向上させることができ、また熟練者でなくても、打切り時間の適切な見積もりが行えるという効果が得られる。
【0017】
この発明の寿命打切り試験の打切り時間見積もり方法において、上記乱数分析手順(B23)は、上記乱数発生手順(B22,B22′)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順(B23′)とし、
上記累積分布を演算する手順(B25)は、上記繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(B25′)とし、
上記打切り時間とする手順(B26)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間(B26′)とする手順としても良い。
【0018】
打切り試験において、信頼度が例えば90%であるL10寿命等では、全数未破損時の打切り時間に達するまでの途中で試験対象の破損が生じても、必ずしもそのロットが要求寿命を満足しないとは言えない。このような破損が生じた場合に、残りの試験対象について、打切り時間を何時間にすれば良いかを、上記のように、最も短い乱数からi個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上あるかを演算することにより、上記と同様にして、簡単かつ迅速に、かつ適切に定めることができる。
【0019】
この発明の寿命打切り試験の打切り時間見積もり装置は、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験につき、上記打切り時間を見積もる装置であって、
演算処理装置(1)と、この演算処理装置(1)の出力を画面に表示する表示装置(2)と、前記演算処理装置(1)に入力を行う入力手段(3)とを備える。
前記演算処理装置(1)は、
前記表示装置(2)の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段(7)と、
実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置(2)の画面に出力する打切り時間演算手段(8)とを含む。
【0020】
上記打切り時間演算手段(8)は、次のワイブル分布特定手段(9)、乱数発生手段(10)、乱数分析手段(11)、繰り返し手段(12)、累積分布演算手段(13)、対応時間読み取り手段(14)、および読取結果出力手段(15)を備える。
【0021】
上記ワイブル分布特定手段(9)は、次式、
【0022】
【数8】
【0023】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定する手段である。
【0024】
上記乱数発生手段(10)は、上記のように特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手段である。
上記乱数分析手段(11)は、上記乱数発生手段(10)で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手段である。
上記繰り返し手段(12)は、上記乱数発生手段(10)による上記ワイブル乱数の発生および上記乱数分析手段(11)による演算を設定回数繰り返す繰り返させる手段である。
【0025】
上記累積分布演算手段(13)は、上記乱数発生手段(10)による上記ワイブル乱数の発生および上記乱数分析手段(11)による演算の繰り返しの各回における発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表した累積分布を演算する手段である。
上記対応時間読み取り手段(14)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする手段である。
上記読取結果出力手段(15)は、上記対応時間読み取り手段(14)で読み取った打切り時間を上記表示装置(2)に出力させる手段である。
【0026】
この構成の打切り時間見積もり装置によると、この発明の打切り時間見積もり方法を実施して、打切り時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、かつ信頼性の高いものとできて、打切り試験の結果の信頼性を向上させることができ、また熟練者でなくても、打切り時間の適切な見積もりが行えるという効果が得られる。
【0027】
この発明の寿命打切り試験の打切り時間見積もり装置において、
上記乱数分析手段(11)は、上記乱数発生手段(10)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算するものとし、
上記累積分布演算手段(13)は、上記繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算するものとし、
上記対応時間読み取り手段(14)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間とするものとしても良い。
【0028】
この発明の寿命打切り試験の打切り時間見積もりプログラムは、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(B1)と、
実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置の画面に出力する打切り時間演算手順(B2)とを含み、
上記打切り時間演算手順(B2)は、次式、
【0029】
【数9】
【0030】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順(B21)と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順(B22)と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順(B23)と、
上記乱数発生手順(B22)および上記乱数分析手順(B23)を設定回数繰り返す手順(B24)と、
この繰り返し手順(24)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(B25)と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、1個破損時の打切り時間とする手順(B26)とを含む。
【0031】
この構成の打切り時間見積もりプログラムによると、この発明の打切り時間見積もり方法の実施に用いることで、打切り時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、かつ信頼性の高いものとできて、打切り試験の結果の信頼性を向上させることができ、また熟練者でなくても、打切り時間の適切な見積もりが行えるという効果が得られる。
【0032】
この打切り時間見積もりプログラムにおいて、上記乱数分析手順(B23)は、上記乱数発生手順(B22)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順(B23′)とし、
上記累積分布を演算する手順(B25)は、上記繰り返し手順(B24,B24′)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(B25′)とし、
上記打切り時間とする手順(B26)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間とする手順(B26′)としても良い。
【0033】
この発明の寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もり方法は、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、その時間までに試験対象品に破損が生じると要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準とする試験中止基準時間を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、打切り試験の対象となる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力する入力過程(C1)と、
上記コンピュータに、上記入力情報に応じて試験中止基準時間を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程(C2)とを含む。
【0034】
上記コンピュータ演算処理過程(C2)として、上記コンピュータに次のワイブル分布特定手順(D21)、乱数発生手順(D22)、乱数分析手順(D23)、設定回数繰り返し手順(D24)、累積分布演算手順(D25)、対応時間の読み取り手順(D26)を実行させる。
【0035】
上記ワイブル分布特定手順(D1)は、次式、
【0036】
【数10】
【0037】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定する手順である。
【0038】
上記乱数発生手順(D22)は、特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手順である。
上記乱数分析手順(D23)は、乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順である。
上記設定回数繰り返し手順(D24)は、上記乱数発生手順(D22)および上記乱数分析手順(D23)を設定回数繰り返す手順である。
【0039】
上記累積分布演算手順(D25)は、上記繰り返し手順(D24)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順である。
上記対応時間の読み取り手順(D26)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする手順である。
なお、この明細書において、試験中止基準時間は、必ずしも時間の単位に限らず、軸受を回転させて行う試験における回転回数などのように、負荷回数によって表現された値であっても良い。
【0040】
この方法で得られた累積分布は、要求品質を満たせなくなる累積確率と時間との関係を示す。そのため、上記対応時間読み取り手順(D26)として、上記累積分布において、入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取ることで、その読み取った値が、その時間までに試験対象品に破損が生じると要求寿命が満たせないとして試験を中止すべき時間である。例えば、信頼度が90%の寿命であるL10寿命では、上記累積確率が0.1の時間を読み取ることで、読み取られた時間を、1個破損時の試験中止基準時間とする手順である。
【0041】
この発明方法によると、このように、試験対象の寿命分布となるワイブル分布を用い、その分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させてそのうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる処理を繰り返し、この処理を繰り返して累積分布を演算し、この累積分布から、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って1個破損時の試験中止基準時間とするコンピュータシミュレーションを行うため、試験中止基準時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、また熟練者でなくても、試験中止基準時間の適切な見積もりが行えるという効果が得られる。
【0042】
この発明の試験中止基準時間見積もり方法において、
上記乱数分析手順(D23)では、乱数発生手順(D22,D22′)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順(D23′)とし、
上記累積分布を演算する手順(D25)は、上記繰り返し手順(D24)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(D25′)とし、
上対応時間の読み取り手順(D26)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、i+1個破損時の試験中止基準時間とする手順(D26′)としても良い。
【0043】
この方法によると、寿命試験中に破損が生じた場合における、残りの試験対象についての試験中止基準時間を、上記と同様に、簡単かつ迅速に、かつ適切に求めることができる。
【0044】
この発明の寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もり装置は、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、その時間までに試験対象品に破損が生じると要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準とする試験中止基準時間を見積もる装置であって、
演算処理装置(1)と、この演算処理装置(1)の出力を画面に表示する表示装置(2)と、前記演算処理装置(1)に入力を行う入力手段(3)とを備える。
前記演算処理装置(1)は、
上記表示装置(2)の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受またはその他の試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段(7)と、
実行命令の入力に応答して、試験中止基準時間を演算し演算結果を上記表示装置(2)の画面に表示させる試験中止基準時間演算手段(18)を含む。
【0045】
上記試験中止基準時間演算手段(18)は、次のワイブル分布特定手段(9A)、乱数発生手段(10A)、乱数分析手段(11A)、繰り返し手段(12A)、累積分布演算手段(13A)、対応時間読み取り手段(14A)、および読取結果出力手段(15A)を備える。
【0046】
上記ワイブル分布特定手段(9A)は、次式、
【0047】
【数11】
【0048】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定する手段である。
【0049】
上記乱数発生手段(10A)は、上記のように特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手段である。
上記乱数分析手段(11A)は、上記乱数発生手段(10A)で発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手段である。
上記繰り返し手段(12A)は、上記乱数発生手段(10A)および上記乱数分析手段(11A)の処理を設定回数繰り返させる手段である。
【0050】
累積分布演算手段(13A)は、上記乱数発生手段(10A)によるワイブル乱数の発生および上記乱数分析手段(11A)による演算の繰り返し過程の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表した累積分布を演算する手段である。
上記対応時間読み取り手段(14A)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする手段である。
上記読取結果出力手段(15A)は、上記対応時間読み取り手段で読み取った試験中止基準時間を上記表示装置(2)に出力させる手段である。
【0051】
この構成の試験中止基準時間見積もり装置によると、この発明の試験中止基準時間見積もり方法を実施して、試験中止基準時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、かつ適切なものとでき、また熟練者でなくても、試験中止基準時間の適切な見積もりが行えるとい効果が得られる。
【0052】
この発明の試験中止基準時間見積もり装置において、上記乱数分析手段(11A)は、上記乱数発生手順(10A)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算するものとし、
上記累積分布演算手順(13A)は、上記繰り返し手順(12A)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算するものとし、
上記対応時間読み取り手段(14A)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i+1個破損時の打切り時間とするものとしても良い。
【0053】
この発明の寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もりプログラムは、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(D1)と、
実行命令の入力に応答して、試験中止基準時間を演算し上記表示装置の画面に出力する試験中止基準時間演算手順(D2)とを含み、
上記試験中止基準時間演算手順(D2)は、次式、
【0054】
【数12】
【0055】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順(D21)と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順(D22)と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順(D23)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順(D24)と、
この繰り返し手順(D24)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(D25)と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする手順(D26)とを含む。
【0056】
この構成の試験中止基準時間見積もりプログラムによると、この発明の試験中止基準時間見積もり方法の実施に使用されて、試験中止基準時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、かつ適切なものとでき、また熟練者でなくても、試験中止基準時間の適切な見積もりが行えるとい効果が得られる。
【0057】
この発明の試験中止基準時間見積もりプログラムにおいて、
上記乱数分析手順(D23)は、上記乱数発生手順(D22,D22′)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順(D23′)とし、
上記累積分布を演算する手順(D25)は、上記繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(D25′)とし、
上記打切り時間とする手順(D26)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する値を読み取って、i+1個破損時の打切り時間とする手順としても良い。
【発明の効果】
【0058】
この発明の打切り時間見積もり方法、装置、およびプログラムによると、試験対象の寿命分布となるワイブル分布を用い、その分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させて全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる過程を繰り返し、この処理を繰り返して累積分布を演算し、この累積分布から信頼度に対応する時間を読み取って打切り時間とするコンピュータシミュレーションを行うようにしたため、打切り時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、かつ信頼性の高いものとできて、打切り試験の結果の信頼性を向上させることができ、また熟練者でなくても、打切り時間の適切な見積もりが行えるという効果が得られる。
【0059】
この発明の試験中止基準時間見積もり方法、装置、およびプログラムによると、試験対象の寿命分布となるワイブル分布を用い、その分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させてそのうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる処理を繰り返し、この処理を繰り返して累積分布を演算し、この累積分布から、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って1個破損時の試験中止基準時間とするコンピュータシミュレーションを行うため、試験中止基準時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、また熟練者でなくても、試験中止基準時間の適切な見積もりが行えるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
この発明の実施形態を説明する。この寿命打切り試験の打切り時間見積もり方法は、軸受を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験につき、上記打切り時間を見積もる方法である。なお、軸受の他の機械部品やその試験片の打切り試験における打切り時間を見積もる場合にも適用できる。
この実施形態の打切り時間見積もり方法は、例えば、一つのロットの軸受の中から一部の軸受を抜き取って打切り寿命試験を行い、そのロットの寿命を確認する試験等において、打切り時間を定める場合に適用される。
【0061】
以下、この実施形態を図面と共に説明する。この打切り時間見積もり方法は、図1に示すコンピュータ1に、打切り時間見積もりプログラム6を実行させることで行う。コンピュータ1はパーソナルコンピュータ等からなり、中央処理装置4およびメモリ5を有し、所定のオペレーションシステムによって動作するものである。コンピュータ1には、液晶表示装置等の画面によって表示可能な表示装置2と、キーボードやマウス等の入力装置3が接続され、あるいは付属して設けられている。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および打切り時間見積もりプログラム6により、図2に各機能達成手段をブロックで示した寿命打切り試験の打切り時間見積もり装置が構成される。同図の打切り時間見積もり装置の構成については、後に説明する。
打切り時間見積もりプログラム6はコンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図4に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
【0062】
この打切り時間見積もり方法は、図2に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程A1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程A2とからなる。
【0063】
入力過程A1では、図11に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この画面では、入力情報として打切り試験の対象となる軸受のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる。要求寿命の信頼度は、ここではL10寿命とL50寿命のいずれかを選択する表示が行われ、その選択の入力を行う。ワイブルスロープの値には、試験対象となる型番の軸受における実績値を入力する。
実績値は10個以上の試験で得た結果を用いることが望ましく、より好ましくは20個以上の試験結果である。試験個数は、より多いほど打切り時間が短くできて好ましいが、試験機の台数等で制限される場合があり、納期や種々の状況を考慮して実際に試験に用いる個数を入力する。
【0064】
図2のコンピュータ演算処理過程A2では、打切り時間を演算し、その演算結果を、図12(A)のように出力画面2bに表示する。なお、同図では全数未破損の場合の打切り時間の他に、一部の軸受が破損した場合の打切り時間を併せて表示しているが、ここでは簡明のために、全数未破損の場合について説明した後、一部破損の場合につき説明する。
【0065】
図1の打切り時間見積もりプログラム6はコンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図4に流れ図で示す手順を備える。図4(A)に示すように、打切り時間見積もりプログラム6は、促し画面出力手順B1と打切り演算手順B2とでなり、促し画面出力手順B1では、図11と共に前述した入力画面2aを出力する。この入力画面2aに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、打切り演算手順B2が実行される。同図の入力画面2aに対して入力する過程が、図3の入力過程A1であり、同図のコンピュータ演算処理過程A2は図4(A)の打切り演算手順B2を実行する過程である。
【0066】
打切り演算手順B2は、同図(B)に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順B21〜B27毎の具体的な処理例を併記してある。
理解の容易のため、この具体的処理例を参照し、具体的な数値例を用いて、コンピュータ演算処理過程A2となる打切り演算手順B2の概要を説明する。
【0067】
ある軸受製品のL10寿命(90%の確率の信頼度が得られる寿命)が1000時間以上であると保証するための全数打切り時間を見積もる場合を想定する。ここで、この試験対象となる軸受の寿命分布のワイブルスロープは、清浄油潤滑下での軸受の寿命試験の実績から1.85であると仮定する。また、試験個数が6個であるとする。
【0068】
このワイブルスロープの値1.85と、試験個数6個の値とから、この軸受の寿命分布となるワイブル分布を特定する(図4(B)の手順B21)。寿命分布の作り方については、後に説明する。
図13は、L10寿命が1000時間であるワイブルスロープ1.85の寿命分布を示している。
【0069】
まず初めに、図13のワイブル分布から6個のワイブル乱数を発生させる(図4(B)の手順B22)。ワイブル乱数の発生方法は、後に説明する。
このように発生させたワイブル乱数は、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片の寿命試験を行い、寿命データを得ることに対応している。
次に、得られた6個の乱数すべてが何時間以上になるかを調べる(手順B23)。調べたデータは、所定の記憶領域に記憶しておく。
以上の手順(B22,B23)を設定回数(例えば、5000回)繰り返す(手順B24)。なお、ワイブル分布特定手順B21は、乱数発生手順B22に含め、繰り返し毎に特定を行うようにしても良い。
【0070】
この繰り返し手順の各回における6個の乱数すべてが何時間以上になる確率が高いかを演算し、累積確率で表す累積分布を演算する(手順B25)。図14は、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験した時、6個すべての試験片が破損することなく試験が継続する時間とその発生頻度の関係(累積確率分布)を示している。
【0071】
この図から、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である軸受では、1860時間以上の時間全数未破損となる状況が10%の確率でしか起こり得ない稀な状況であることが分かる。すなわち、1860時間以上の時間6個すべての試験片が未破損という状況は、その軸受のL10寿命が90%の確率で1000時間以上である状況といえるので、1860時間はこの状況での全数打切り時間ということになる。
このように、上記累積分布(図14)において、上記入力情報のうちの信頼度(L10寿命の場合は90%)に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする(手順B26)。
このように読み取った時間を、全数未破損時の打切り時間として、図12(A)の画面の一部に示したように、表示する(手順B27)。なお、図12はL10寿命が1622時間の場合のデータであり、表示された打切り時間は、L10寿命を1000時間とした場合の打切り時間よりも長い時間となっている。
【0072】
上記ワイブル分布の特定(手順B21)の詳細について説明する。一般に軸受の寿命分布は次式1)のワイブル分布に従うと言われている。
【0073】
【数13】
【0074】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
ワイブル分布は、3つのパラメータを持っており、ワイブルスロープmによって指数分布、対数正規分布、正規分布を表現できる万能分布として知られている。参考として、図15に各種パラメータを変化させた時のワイブル分布の変化を示す。ワイブルスロープmは、分布の形状を支配するパラメータであり、この値が小さいほどばらつきの大きい分布ということができる。尺度因子αは、横軸(寿命)のスケールを変化させるもので、この値が大きいほど寿命は相対的に長くなる。最小寿命γは、寿命分布の横軸(寿命)を単にシフトさせるものである。
【0075】
この実施形態では、ワイブル乱数を発生させるが、この乱数を発生させるためにはワイブル分布の3つのパラメータを決定する必要がある。決め方の手順は、例えば以下のようになる。
1) ワイブルスロープmを実績から決定する。
2) 乱数を発生させたい分布の信頼度(例えばL10寿命であるか、あるいはL50寿 命であるか、及びその寿命)を決定する。
3) 信頼度から求めたワイブルスロープmから、最小寿命γを所定の数式を使って決定 する。例えば、L10寿命またはL50寿命から求めた尺度因子αから、
最小寿命γを、例えば、以下の2)式を使って決定する。
この式は、1990年制定のISOの最小寿命であり、実験値からの回帰式である。
【0076】
【数14】
【0077】
これは、R≦10の値で、R=0(L10寿命でのa1)のとき、この式は1になるという式である。過去のISOの最少寿命考慮の式では、L10寿命以下の寿命は、この式にL10寿命を書けた値ということで定義されている。Rは信頼度に対応する値(100−Rが信頼度となる値)である。
なお、最小寿命の定め方については、各種の規格(例えばISO)において、時代と共に変更される場合があるが、規格の変更に伴い、実施時の規格に応じた定め方を採用すれば良い。また、最小寿命は、材料試験条件によっても変化するのでより一般的な式で記述するほうが良いとの主張もあり、適宜の値を用いれば良い。
【0078】
ワイブル乱数の発生(手順B22)につき説明する。乱数とは、定性的にはでたらめな数列であって、発生頻度が均一(等確率)で、その発生に規則性がない(無規則性)というものであるが、完全な乱数を発生させることは不可能である。そこで、コンピュータで発生させることのできる疑似乱数を使う。簡易な乱数発生アルゴリズムでは、例えば10進法で20桁ぐらいの周期性が見られるが、周期性が6千桁以上の周期性となるものもあり、このような周期性の少ない乱数発生アルゴリズムを用いることが好ましい。
【0079】
この実施形態では、一様な乱数ではなく、ワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を発生させる。このため発生方法には工夫が必要になる。確率密度関数が複雑な場合、その分布に従う乱数を発生するには棄却法と呼ばれる方法を用いればよく、この実施形態においても、棄却法を用いる。
確率密度関数f(x)の変域が図16のように、0からX0 の範囲にあるとみなされるものとし、その変域内でのf(x)の最大値をMとする。RNを区間〔0,1 〕での一様擬似乱数とするとX0 ・RNにより、区間〔0,x0〕での一様擬似乱数xiを発生することができる。同様にして、M・RNにより、区間〔0,M 〕での一様擬似乱数yiを発生することができる。そこで、このようにして発生させた乱数xi,yiがf(xi)> yi となる条件を満足する場合には、乱数xiは与えられた確率密度分布に従うものとして採用し、満足しなければ、その乱数xiを不採用とする。この作業を繰り返し、確率密度分布に従う確率で乱数xiを採用し、確率密度分布に従う乱数の数列を作っていく方法を棄却法という。この方法は、条件に合わない乱数を捨てることになるので乱数発生法としては効率がよくないが、よい一様乱数さえ得られれば原理的に正しい数列が得られる方法である。
【0080】
図4に示した打切り時間見積もりプログラム6についての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この打切り時間見積もりプログラム6は、整理すると、次の手順により構成される。
【0081】
この実施形態の寿命打切り試験の打切り時間見積もりプログラムは、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受またはその他の機械部品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(B1)と、
実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置の画面に出力する打切り時間演算手順(B2)とを含む。
上記打切り時間演算手順(B2)は、次式、
【0082】
【数15】
【0083】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順(B21)と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順(B22)と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順(B23)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順(B24)と、
この繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの、全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(B25)と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする手順(B26)と、
読み取った時間を表示装置2の画面に表示する手順(B27)とを含む。
【0084】
図4(B)に示す打切り演算手順B2は、全数未破損の場合についての手順であるが、試験中に一部の軸受に破損が生じた場合は、図5に示す流れ図に従って打切り時間を求める。
【0085】
設定している全数未破損の打ち切り時間よりも短い時間で破損が発生しても、要求品質を満たせなくなる確率が高くなる最短破損時間よりは長い破損データが得られた場合、試験を継続すれば要求品質を満たすことができる可能性がまだある。この状況は、実際にしばしば起こる状況である。
全数打切り時間を経過せずに破損が発生した場合、目標品質を保証するためには、残存試験片の打ち切り時間は初めに設定した全数打切り時間よりも長くなることは容易に推測できる。ここでは、要求品質を満たすための残存軸受の打切り時間を見積もる方法について説明する。
【0086】
図5の流れ図における注釈部分を参照し、具体的数値例と共に説明する。基本的な手順は、図4と共に前述した手順と同様である。図4(B)との違いは、図5の手順B23′における発生した乱数の最も短かった時間以外の残存データが何時間以上になるかを調べる点にある。なお、図5の手順は、破損個数が2個以上の場合にも適用でき、また破損無しの場合にも適用できるが、まず、破損個数が1個の場合を説明する。
【0087】
以下、理解を簡単にするため、具体例を挙げる。試験個数6個で、その軸受のL10寿命が1000時間以上であると保証するための試験がしたい場合、前記のように1860時間が全数打切り時間になるが、1000時間で破損が発生したとする。1000時間はそのロットの寿命が要求品質を満たせなくなる確率が高くなる破損時間412時間(後に図18と共に説明する)よりも長いので、その製品のL10寿命が1000時間以上であると保証できる可能性がまだ残っていることになる。そこで、このまま試験を継続した場合、残存試験片が何時間以上未破損であれば、L10寿命が1000時間以上であると保証できるのかについて検討する。
【0088】
ここで、試験の寿命分布のワイブルスロープは1.85であると仮定する。図5において、ワイブル分布の特定手順B21′は、図4の手順B21と同様であり、図4の手順の実行時に特性したワイブル分布を用いても良い。このワイブル分布から6個のワイブル乱数を発生し(手順B22′)、得られた6個のワイブル乱数を昇順に並び替え、一番短い時間以外の残存データを得る。これは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験し、一番短い寿命データ以外の寿命データを得ることに対応している。次に、一番短い時間以外の残存データが何時間以上になるかを調べる(手順B23′)。
以上の手順B22′,B23′を設定回数(例えば5000回)だけ繰り返す(手順B24′)。
【0089】
この繰り返し過程で、一番短い時間以外の残存データが何時間以上になる確率が高いかを調べる。図17は、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験した時、6個中5個の試験片が破損することなく試験が継続する時間とその発生頻度の関係(累積確率分布)を示している。この累積確率分布を演算する(手順B25′)。
【0090】
図17から、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命であるロットでは、6個中6個の試験片が2626時間以上の時間未破損で試験が継続する状況が10%の確率でしか起こり得ない稀な状況であることが分かる。すなわち、2626時間以上の時間6個中5個の製品が未破損という状況は、そのロットの製品のL10寿命が90%の確率で1000時間以上であるといえる状況なので、2626時間は6個中1個が全数打切り時間(1860時間)以内で破損した時の新たな打切り時間の設定値ということになる。このように、上記累積分布から、信頼度(L10寿命では90%)に対応する時間を読み取って1個破損時の打切り時間と定める(手順B26′)。このように読み取った結果を、図12(A)のように、1個破損時の打切り時間として表示装置2の画面2aに表示させる。なお、図12は、L10寿命が1622時間の場合のデータであり、表示された打切り時間は、L10寿命が1000時間とした場合の打切り時間よりも長い時間となっている。
【0091】
この方法を応用すれば、試験対象軸受中、2,3…n個の試験片が打切り時間以内で破損した場合でも、要求寿命を満たすための残存試験片の打切り時間を設定することができる。i個(iは試験個数未満の零を含む任意の整数)破損した場合の打切り時間を演算する手順を、図5と共に整理すると、次の手順となる。なお、特に説明する事項の他は、図4(B)と共に説明した手順と同じである。
【0092】
図5において、i個破損した場合、乱数分析手順(B23′)は、乱数発生手順(B22′)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順とする。
累積分布を演算する手順(B25′)は、繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順とする。
打切り時間とする手順B26′は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間とする手順とする。
【0093】
これにより、試験対象軸受中、2,3…n個の試験片が打切り時間以内で破損した場合でも、要求寿命を満たすための残存試験片の打切り時間を設定することができる。
【0094】
図2と共に打切り時間見積もり装置につき説明する。この打切り時間見積もり装置は、演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータ1に入力を行う入力装置3とを備える。
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7と、実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置2の画面に出力する打切り時間演算手段8とを含む。
【0095】
打切り時間演算手段8は、ワイブル分布特定手段9、乱数発生手段10、乱数分析手段11、繰り返し手段12、累積分布演算手段13、対応時間読み取り手段14、および読取結果出力手段15を備える。
【0096】
ワイブル分布特定手段9は、図4の手順B21の処理を行ってワイブル分布を特定する手段である。
乱数発生手段10は、上記のように特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手段であり、図4の手順B22で説明した処理を行う。
乱数分析手段11は、乱数発生手段10で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手段であり、図4の手順B23で説明した処理を行う。
繰り返し手段12は、乱数発生手段10による上記ワイブル乱数の発生、および乱数分析手段11による演算を設定回数繰り返させる手段であり、図4の手順B24で説明した処理を行う。
【0097】
累積分布演算手段13は、乱数発生手段10によるワイブル乱数の発生および乱数分析手段11による演算の繰り返しの各回における発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表した累積分布を演算する手段であり、図4の手順B25で説明した処理を行う。
対応時間読み取り手段14は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする手段であり、図4の手順B26で説明した処理を行う。
読取結果出力手段15は、対応時間読み取り手段14で読み取った打切り時間を表示装置2に出力させる手段であり、図4の手順B27で説明した処理を行う。
【0098】
この構成の打切り時間見積もり装置は、全数未破損の場合の打切り時間を見積もるものであるが、一部の軸受に破損が生じた場合にも適用できる装置とする場合は、図2の構成における一部を次のように変更する。
【0099】
すなわち、乱数分析手段11は、乱数発生手順10で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算するものとする。
累積分布演算手段13は、上記繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算するものとする。
対応時間読み取り手段14は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間とするものとする。
【0100】
次に、図6ないし図10等と共に、試験中止基準時間の見積もり方法につき説明する。この見積もり方法は、打切り時間の見積もり方法で述べた打切り試験において、その時間までに機械部品に破損が生じると要求信頼度の要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準とする試験中止基準時間を見積もる方法である。
【0101】
この試験中止基準時間見積もり方法は、図6に示すコンピュータ1に、試験中止基準時間見積もりプログラム19を実行させることで行う。コンピュータ1は、実行するプログラムが試験中止基準時間見積もりプログラム19であることを除き、図1と共に前述したものと同じである。ここでは、図1の打切り時間見積もりプログラム6を記憶したコンピュータ1に、試験中止基準時間見積もりプログラム19を記憶させている。打切り時間見積もりプログラム6と、試験中止基準時間見積もりプログラム19とは、互いに一部の手順を共通とするもの、例えば両プログラム6,19が一本のプログラムとして構成されたものであっても良い。
【0102】
コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および試験中止基準時間見積もりプログラム19により、図7に各機能達成手段をブロックで示した寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もり装置が構成される。同図の打切り時間見積もり装置の構成については、後に説明する。
図6の 試験中止基準時間見積もりプログラム19はコンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図9に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
【0103】
この試験中止基準時間見積もり方法は、図8に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程C1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程C2とからなる。
【0104】
入力過程C1は、打切り時間見積もり方法につき、図3の流れ図および図11の入力画面2aと共に説明した過程と同じであり、この実施形態のように、同じコンピュータ1に打切り時間見積もりプログラム6と試験中止基準時間見積もりプログラム19の両方を実行させる場合は、打切り時間見積もり方法の入力過程A1(図3)を両見積もり方法に兼用する。
【0105】
試験中止基準時間見積もりプログラム19は、図9(A)に示すように促し画面出力手順D1と試験中止基準時間演算手順D2とからなるが、促し画面出力手順D1は、打切り時間見積もりプログラム6における促し画面出力手順B1(図4(A))と兼用される。この促し画面出力手順B1(D1)で入力画面が表示されかつ必要な情報が入力された状態で、次に入力される実行命令の違いによって、図4(A)の打切り演算手順B2が実行されるか、または図9(A)の試験中止基準時間演算手順D2が実行されるかが選択される。例えば、打切り演算手順B2は、入力画面2a(図12)中のOKキーをクリックすることで実行されるものとしたが、試験中止基準時間演算手段D2は、入力画面2aに表示された別の所定のキー(図示せず)をクリックに応答して実行されるものとする。
【0106】
試験中止基準時間演算手順D2は、図9(B)に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順D21〜D27の具体的な処理例を併記してある。
【0107】
なお、この試験中止基準時間演算手順D2の説明の前に、試験中止基準時間について説明する。打切り試験において、設定している打切り時間よりも短い時間で、試験軸受の破損が生じる場合がある。この状況は実際でもしばしば起こる状況である。従来では、そのような状況になった場合、試験を継続するか中止するかの明確な判断ができなかった。例えば、目標品質がL10寿命で1000時間を保証する試験を行っている時に、10時間で破損が発生した場合、目標品質のL10寿命より明らかに短い時間で破損しているので、そのロットの寿命はきわめて短いだろうということが常識的に推測でき、試験を中止したほうが良いという判断ができる。しかし、打切り時間よりもかなり短いものの、判断に困る程度の時間(例えば500時間等)で破損が発生する場合には、寿命試験の熟練者にも試験中止の判断が難しくなる。この実施形態は、そのロットの寿命が要求品質を満たせなくなる確率が高くなる破損時間を試算する方法である。
【0108】
図9(B)と共に、試験中止基準時間演算手順D2を説明する。基本的な手順は、打切り試験における打切り時間を見積もる手順と同様である。以下、説明を簡単にするため、具体例を挙げる。試験個数6個で、その製品のL10寿命が1000時間以上であると保証するための試験がしたい場合を考える。ここで、試験の寿命分布のワイブルスロープは1.85であると仮定する。まず初めに、L10寿命が1000時間のワイブル分布を上記と同様に特定する(D21)。このワイブル分布から6個のワイブル乱数を発生する(D22)。これは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験し、寿命データを得ることに対応している。
次に、得られた6個のワイブル乱数を昇順に並び替え、最も小さい乱数が何時間以上になるかを調べる(D23)。以上の手順D22,D23を設定回数(例えば、5000回)回繰り返す(D24)。
【0109】
この繰り返し過程で、最も小さい乱数が何時間以上になる確率が高いかを調査する。図18は、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験した時、6個中最も性能の悪い試験片が破損することなく試験が継続する時間とその発生頻度の関係(累積確率分布)を示している。この累積確率分布を演算する(D25)。
【0110】
図18において、L10寿命の信頼度である90%を100%から減算した値である10%の値を読むと、412時間という値が得られる。すなわち、図18から、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命分布をもつロットでは、6個中最も性能が悪い試験片でも412時間以上は未破損で試験が継続する確率が90%であることが分かる。この結果は、412時間以内の時間で1つでも破損が発生するという状況は、90%以上の確率で1000時間のL10寿命を保証できない状況を示しているので、412時間はそのロットの寿命が要求品質を満たせなくなる確率が高くなる破損時間ということになる。
【0111】
このように、上記累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度(L10寿命では90%)を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする(D26)。このように読み取った結果を、図12(B)に出力画面例を示すように、表示装置2の出力画面2bに表示する(D27)。なお、図12(B)は、1個が破損した場合の試験中止基準時間の他に、2個以上が破損した場合の試験中止基準時間を併せて表示している。2個以上破損の場合については、後に説明する。また、同図は、L10寿命が1622時間の場合のデータであり、表示された試験中止基準時間時間は、L10寿命が1000時間とした場合の試験中止基準時間よりも長い時間となっている。
【0112】
図9に示した試験中止基準時間見積もりプログラム19についての上記の説明は、具体的数値を例にとって説明したが、この試験中止基準時間プログラム6は、整理すると、次の手順により構成される。
【0113】
この実施形態の試験中止基準時間見積もりプログラム19は、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受またはその他の機械部品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(D1)と、
実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置の画面に出力する打切り時間演算手順(D2)とを含む。
上記打切り時間演算手順(D2)は、次式、
【0114】
【数16】
【0115】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順(D21)と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順(D22)と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順(D23)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順(D24)と、
この繰り返し手順(D24)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(D25)と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、1個破損時の打切り時間とする手順(D26)と、
この読み取った時間を表示装置2の画面に表示する手順D27)とを含む。
【0116】
この方法を応用すれば、試験軸受中2,3…n個の試験片が何時間以下で破損したら、要求寿命を満たせなくなる確率が高くなるかという計算も行える。
【0117】
図10は、試験軸受中、2個以上が破損した場合の試験中止基準時間を見積もるプログラムにおけるコンピュータ演算処理過程D2を示す。
図9の手順と異なる手順は次の事項であり、その他の図9の手順と同じである。図10の例では、乱数分析手順D22′は、上記乱数発生手順D22′で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順とする。
【0118】
累積分布を演算する手順D25′は、上記繰り返し手順D24′の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順とする。
対応時間読み取り手順D26′は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する値を読み取って、i+1個破損時の打切り時間とする手順とする。
【0119】
以上の手順により、試験軸受中2,3…n個の試験片が何時間以下で破損したら、要求寿命を満たせなくなる確率が高くなるかという計算が行える。計算結果は、図12(B)のように表示装置2の画面2bに表示する。
【0120】
図7と共に、試験中止基準時間見積もり装置につき説明する。この試験中止基準時間見積もり装置は、演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータ1に入力を行う入力手段3とを備える。
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受またはその他の機械部品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命の信頼度の選択、および選択された信頼度における要求寿命の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7と、実行命令の入力に応答して、試験中止基準時間を演算し演算結果を表示装置2の画面に表示させる試験中止基準時間演算手段18を含む。
この実施形態では、コンピュータ1のハードウェアおよび促し画面出力手段7が、打切り時間見積もり装置と兼用される。
【0121】
上記試験中止基準時間演算手段18は、次のワイブル分布特定手段9A、乱数発生手段10A、乱数分析手段11A、繰り返し手段12A、累積分布演算手段13A、対応時間読み取り手段14A、および読取結果出力手段15Aを備える。
【0122】
上記ワイブル分布特定手段9Aは、図9の手順D21の処理を行ってワイブル分布を特定する手段である。
乱数発生手段10Aは、上記のように特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手段であり、図9の手順D22で説明した処理を行う。
乱数分析手段11Aは、乱数発生手順10Aで発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手段であり、図9の手順D23Dで説明した処理を行う。
繰り返し手段12Aは、乱数発生手順10Aおよび乱数分析手順11Aの処理を設定回数繰り返させる手段であり、図9の手順D24で説明した処理を行う。
【0123】
累積分布演算手段13Aは、乱数分析手段10Aによるワイブル乱数の発生および乱数分析手段11Aによる演算の繰り返し過程の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表した累積分布を演算する手段であり、図9の手順D25Dで説明した処理を行う。
対応時間読み取り手段14Aは、上記累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする手段であり、図9の手順D27で説明した処理を行う。
【0124】
この構成の試験中止基準時間見積もり装置は、1個破損の場合の試験中止基準時間を見積もるものであるが、2個以上の軸受に破損が生じた場合にも適用できる装置とする場合は、図7の構成における一部を次のように変更する。
【0125】
すなわち、乱数分析手段11Aは、乱数発生手段10Aで発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算するものとする。
累積分布演算手段13Aは、繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算するものとする。
対応時間読取手段14Aは、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i+1個破損時の打切り時間とするものとする。
【0126】
この打切り時間見積もり方法・装置、および試験中止基準時間見積もり方法・装置の補足説明および応用につき説明する。
上記のように全数打切り時間を表示装置2の画面に出力させた後、軸受の納期が全数打切り時間よりも長いことを確認する。ここで、全数打ち切り時間より短い時間で破損が生じた場合、より長い試験が必要になるので、複数個破損時打切り時間と納期の関係も留意したほうがよい。次に、1個目の試験中止基準を見て、この1個目の試験中止基準以下の時間で破損が発生すると、試験を中止したほうが良いという判断基準も確認する。以上の検討が終了次第、試験は実施すればよい。
【0127】
もし、試験中に、1個目の試験中止基準以上、全数打切り時間以下で破損が発生した場合、例えば2000時間で剥離が発生したならば、図12の結果によると、次の打切り時間は4285時間に再設定し、試験中止基準は3個の試験片が2393時間以下で破損する状況に再設定する。
【0128】
この見積もり方法は乱数を使って計算を行っているため、計算結果は毎回同じにならないことに注意が必要である。表2に、この実施形態のプログラムを用い、目標品質、試験個数、ワイブルスロープを変えて同じ計算を5回ずつ行った結果を示す。
【0129】
【表2】
【0130】
このプログラムで計算された結果は、最大3%程度の確率的な誤差が生じる。
図19に目標品質による全数打切り時間と試験中止基準(1個破損時)の計算結果の変化を示す。打切り時間と試験中止時間は、目標品質が大きくなるにつれて、線形に長くなることが分かる。
図20に試験個数による全数打切り時間と試験中止基準(1個破損時)の計算結果の変化を示す。打切り時間と試験中止時間は、試験個数が多くなるにつれて、指数関数的に短くなることが分かる。これは、試験個数が多くなると、打切り時間が短くても目標品質を保証できるためである。また、試験中止時間が短くなる理由は、試験個数が多くなると、1個短寿命品が出ても他の試験片が長寿命であれば、目標品質を保証できる可能性が出てくるためである。
図21にワイブルスロープによる全数打切り時間と試験中止基準(1個破損時)の計算結果の変化を示す。打切り時間は、ワイブルスロープが大きくなるにつれて指数関数的に短くなり、試験中止時間はワイブルスロープが大きくなるにつれて長くなることが分かる。これは、同じL10寿命であればワイブルスロープが大きいほど寿命分布が全体的に短寿命側に分布するためである。また、試験中止時間が長くなる理由は、ワイブルスロープが大きくなると、短寿命側の寿命の発生頻度が小さくなり、短寿命が発生する可能性が少なくなるためである。
【0131】
以上のことから、打切り時間を短くするためには(納期を早めるためには)、
(1)L10寿命が短くなる試験条件を採用すること、
(2)試験個数をできるだけ多くすること、
(3)ワイブルスロープが大きくなる試験条件(寿命がそろう試験条件)で試験を実施することが重要になるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】この発明の一実施形態にかかる打切り時間見積もり装置の概略ブロック図でである。
【図2】同打切り時間見積もり装置の概念構成を示すブロック図である。
【図3】同打切り時間見積もり装置を用いた打切り時間見積もり方法の概略流れ図である。
【図4】同打切り時間見積もり方法を実施する打切り時間見積もりプログラムの流れ図である。
【図5】他の実施形態に係る打切り時間見積もりプログラムの流れ図である。
【図6】この発明の一実施形態にかかる打切り時間見積もり装置および試験中止基準時間装置を複合化した装置の概略ブロック図でである。
【図7】同複合化した装置の概念構成のブロック図である。
【図8】同装置を用いた試験中止基準時間見積もり方法の概略流れ図である。
【図9】同試験中止基準時間見積もり方法を実施する試験中止基準時間見積もりプログラムの流れ図である。
【図10】他の実施形態にかかる試験中止基準時間見積もりプログラムの流れ図である。
【図11】図1の打切り時間見積もり装置における入力画面例の説明図である。
【図12】図1の打切り時間見積もり装置および図6の装置における出力画面例の説明図である。
【図13】軸受の寿命と頻度の関係例を示すグラフである。
【図14】ワイブル乱数の所定の累積確率と寿命の関係例、および全数打切り時間の見積もり例を示すグラフである。
【図15】ワイブルスロープの各パラメータの影響例を示すグラフである。
【図16】ワイブル分布の定め方を示すグラフである。
【図17】ワイブル乱数の所定の累積確率と寿命の関係例、および1個破損時打切り時間の見積もり例を示すグラフである。
【図18】ワイブル乱数の所定の累積確率と寿命の関係例、および最短破損時間の関係例を示すグラフである。
【図19】目標品質による全数打切り時間と試験中止基準時間の計算結果の変化例を示すグラフである。
【図20】試験個数による全数打切り時間と試験中止基準時間の計算結果の変化例を示すグラフである。
【図21】ワイブルスロープによる全数打切り時間と試験中止基準時間の計算結果の変化例を示すグラフである。
【図22】従来の打切りおよび加速試験の手順を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0133】
1…コンピュータ(演算処理手段)
2…表示装置
3…入力装置
6…打切り時間見積もりプログラム
7…促し画面出力手段
8…打切り時間演算手段
9,9A…ワイブル分布特定手段
10,10A…乱数発生手段
11,11A…乱数分析手段
12,12A…繰り返し手段
13,13A…累積分布演算手段
14,14A…対応時間読み取り手段
15,15A…読取結果出力手段
19…試験中止基準時間見積もりプログラム
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受等の機械部品や、その試験片からなる試験対象品の寿命試験として、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命は満足すると判断する打切り試験を行う場合に、上記打切り時間を見積もる方法、装置、プログラム、並びに破損が生じたときに要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準とする基準時間を見積もる方法、装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
寿命試験は、軸受等の機械部品の性能を評価するために欠かせない試験の1つである。寿命試験には、大きく分けて(1) 実機の使用環境に近い条件で試験を行う実機試験と、(2) 比較的過酷な条件で寿命試験を行う加速試験がある。前者は、製品が有限時間内に破損するケースが極めて少ないため、ある目標時間まで破損することなく試験が継続すれば、寿命は問題ないと判断する試験である(以下、このような試験を「打切り試験」と呼ぶ)。一方、後者は、比較的短時間で破損が発生するので、ワイブルプロットで寿命が算出でき(例えば非特許文献1)、その算出寿命から性能の優劣を判定する試験である(以下、このような試験を「加速試験」と呼ぶ)。
【0003】
従来より、寿命試験は経験を積んだ熟練者が行っており、試験条件や試験個数を決める寿命試験の設計と寿命試験結果の解釈に対して経験的に確からしい判断ができたと考えられる。
図22に、従来から行われてきた寿命試験の設計と寿命試験結果の解釈の手順を、打切り試験と加速試験ごとに示す。
また、現在、寿命試験において経験的に判断されているものの詳細を、表1に示す。
【0004】
【表1】
【0005】
なお、ワイブル分布を機械部品の寿命判断に用いるものは、種々の特許文献,非特許文献に提案されている。
【特許文献1】特開2006−040203号公報
【特許文献2】特開2002−277382号公報
【特許文献3】特開2005−226829号公報
【非特許文献1】真壁肇著、信頼性工学入門79、1991年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
寿命試験の試験時間は、長く行うほど高い信頼度が得られるが、寿命試験は納期や試験機械台数等の厳しい制限下で行われ、また無駄な試験を無くすためにも、信頼性が確保できる範囲で適切な打切り時間を設定することが必要となる。試験中止基準時間についても、無駄に試験を継続しないために、適正な時間を設定することが必要となる。
上記のように、打切り試験における打切り時間の設定や、試験中に破損が生じたときに要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準については、熟練者が経験的に行ってきた。
しかし、これら打切り時間や中止基準の設定は、寿命試験の熟練者でもしばしば判断することが難しいものであり、寿命試験の経験が少ない技術者にとっては判断が困難な状況が発生すると考えられる。このため、熟練者を要するうえ、判断が迅速に行えず、また設定の基準が明確でなくて、試験結果の信頼性の面で不十分である。
【0007】
この発明の目的は、打切り時間の適切な見積もりが、簡単で迅速に行え、かつ信頼性の高いものとできて、打切り試験の結果の信頼性を向上させることができ、熟練者でなくても、適切な打切り時間の見積もりが行える方法、装置、およびその方法の実施のためにコンピュータに実行させるプログラムを提供することである。
この発明の他の目的は、試験中止基準の適切な見積もりが、簡単で迅速に行え、かつ熟練者でなくても適切に行える方法、装置、およびその方法の実施のためにコンピュータに実行させるプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の寿命打切り試験の打切り時間見積もり方法は、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験につき、上記打切り時間を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、打切り試験の対象となる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力する入力過程(A1)と、
上記コンピュータに、打切り時間を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程(A2)とを含む。
【0009】
上記コンピュータ演算処理過程(A2)として、コンピュータに次の、ワイブル分布特定手順(B21)、乱数発生手順(B22)、乱数分析手順(B23)、設定回数繰り返し手順(B24)、累積分布演算手順(B25)、および対応時間読み取り手順(B26)を実行させる。
【0010】
ワイブル分布特定手順(B21)は、次式、
【0011】
【数7】
【0012】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定する手順である。
【0013】
乱数発生手順(B22)は、特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手順である。なお、この場合、および以下の各場合において、ワイブル乱数特定手順(B21)は、乱数発生手順(B22)に含めても良い。
乱数分析手順(B23)は、上記乱数発生手順(B22)で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順である。
【0014】
上記設定回数繰り返し手順(B24)は、上記乱数発生手順(B22)および上記乱数分析手順(B23)を設定回数繰り返す手順である。
累積分布演算手順(B25)は、上記繰り返し手順(B24)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順である。
対応時間読み取り手順(B26)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする手順である。
なお、この明細書において、上記打切り時間は、時間の単位に限らず、軸受を回転させて行う試験における回転回数などのように、負荷回数によって表現された値であっても良い。
【0015】
この方法は、例えば、1ロットの機械部品の中から一部の機械部品を抜き取って寿命の打切り試験を行い、そのロットの寿命を確認する試験等において、打切り時間を定める場合に適用される。
軸受等の機械部品の寿命は、ワイブル分布に従うとされている。ワイブル分布は、ワイブルスロープm、尺度因子α、最小寿命γの3つのパラメータを持っており、ワイブルスロープmによって指数分布、対数正規分布、正規分布を表現できる万能分布として知られている。量産される軸受等では、ワイブルスロープの実績値が使用条件で既知である場合が多く、この発明方法において、ワイブルスロープには、試験対象品となる機械部品等の実績値を用いることが好ましい。実績値がない場合は、適宜の方法で見積もったワイブルスロープを用いてもよい。最小寿命γは、種々の規格、例えばISO等によって計算方法が定められており、そのように定められたいずれかの計算方法を用いることが好ましい。尺度因子αは、ワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、要求寿命の値、および上記最小寿命γから一義的に決定される演算式があり、その演算式を用いて特定しても良い。
このようにワイブル分布を特定し、その特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分だけ発生させると、その発生させたワイブル乱数は、上記試験個数分の試験対象の寿命試験を行い、寿命データを得ることに対応する。乱数分析手順では、このように得られたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する。
この乱数発生手順(B22)および上記乱数分析手順(B23)を、信頼性を得るために満足できるとして設定される回数である設定回数だけ繰り返し、その繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算すると、その累積分布は、信頼性に対応した寿命の分布となる。
そこで、上記対応時間読み取り手順(B26)として、上記累積分布において、上記入力情報のうちの要求寿命の信頼度に対応する時間を読み取ることで、その読み取った値が全数未破損時の打切り時間として適切な値となる。例えば、信頼度が90%の寿命であるL10寿命では、上記累積確率が0.9の時間を読み取ることで、読み取られた時間がL10寿命の全数未破損時の打切り時間となる。
【0016】
この発明方法によると、このように、試験対象の寿命分布となるワイブル分布を用い、その分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させて全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる過程を繰り返し、この処理を繰り返して累積分布を演算し、この累積分布から要求寿命の信頼度に対応する時間を読み取って打切り時間とするコンピュータシミュレーションを行うため、打切り時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、かつ信頼性の高いものとできて、打切り試験の結果の信頼性を向上させることができ、また熟練者でなくても、打切り時間の適切な見積もりが行えるという効果が得られる。
【0017】
この発明の寿命打切り試験の打切り時間見積もり方法において、上記乱数分析手順(B23)は、上記乱数発生手順(B22,B22′)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順(B23′)とし、
上記累積分布を演算する手順(B25)は、上記繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(B25′)とし、
上記打切り時間とする手順(B26)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間(B26′)とする手順としても良い。
【0018】
打切り試験において、信頼度が例えば90%であるL10寿命等では、全数未破損時の打切り時間に達するまでの途中で試験対象の破損が生じても、必ずしもそのロットが要求寿命を満足しないとは言えない。このような破損が生じた場合に、残りの試験対象について、打切り時間を何時間にすれば良いかを、上記のように、最も短い乱数からi個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上あるかを演算することにより、上記と同様にして、簡単かつ迅速に、かつ適切に定めることができる。
【0019】
この発明の寿命打切り試験の打切り時間見積もり装置は、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験につき、上記打切り時間を見積もる装置であって、
演算処理装置(1)と、この演算処理装置(1)の出力を画面に表示する表示装置(2)と、前記演算処理装置(1)に入力を行う入力手段(3)とを備える。
前記演算処理装置(1)は、
前記表示装置(2)の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段(7)と、
実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置(2)の画面に出力する打切り時間演算手段(8)とを含む。
【0020】
上記打切り時間演算手段(8)は、次のワイブル分布特定手段(9)、乱数発生手段(10)、乱数分析手段(11)、繰り返し手段(12)、累積分布演算手段(13)、対応時間読み取り手段(14)、および読取結果出力手段(15)を備える。
【0021】
上記ワイブル分布特定手段(9)は、次式、
【0022】
【数8】
【0023】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定する手段である。
【0024】
上記乱数発生手段(10)は、上記のように特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手段である。
上記乱数分析手段(11)は、上記乱数発生手段(10)で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手段である。
上記繰り返し手段(12)は、上記乱数発生手段(10)による上記ワイブル乱数の発生および上記乱数分析手段(11)による演算を設定回数繰り返す繰り返させる手段である。
【0025】
上記累積分布演算手段(13)は、上記乱数発生手段(10)による上記ワイブル乱数の発生および上記乱数分析手段(11)による演算の繰り返しの各回における発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表した累積分布を演算する手段である。
上記対応時間読み取り手段(14)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする手段である。
上記読取結果出力手段(15)は、上記対応時間読み取り手段(14)で読み取った打切り時間を上記表示装置(2)に出力させる手段である。
【0026】
この構成の打切り時間見積もり装置によると、この発明の打切り時間見積もり方法を実施して、打切り時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、かつ信頼性の高いものとできて、打切り試験の結果の信頼性を向上させることができ、また熟練者でなくても、打切り時間の適切な見積もりが行えるという効果が得られる。
【0027】
この発明の寿命打切り試験の打切り時間見積もり装置において、
上記乱数分析手段(11)は、上記乱数発生手段(10)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算するものとし、
上記累積分布演算手段(13)は、上記繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算するものとし、
上記対応時間読み取り手段(14)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間とするものとしても良い。
【0028】
この発明の寿命打切り試験の打切り時間見積もりプログラムは、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(B1)と、
実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置の画面に出力する打切り時間演算手順(B2)とを含み、
上記打切り時間演算手順(B2)は、次式、
【0029】
【数9】
【0030】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順(B21)と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順(B22)と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順(B23)と、
上記乱数発生手順(B22)および上記乱数分析手順(B23)を設定回数繰り返す手順(B24)と、
この繰り返し手順(24)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(B25)と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、1個破損時の打切り時間とする手順(B26)とを含む。
【0031】
この構成の打切り時間見積もりプログラムによると、この発明の打切り時間見積もり方法の実施に用いることで、打切り時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、かつ信頼性の高いものとできて、打切り試験の結果の信頼性を向上させることができ、また熟練者でなくても、打切り時間の適切な見積もりが行えるという効果が得られる。
【0032】
この打切り時間見積もりプログラムにおいて、上記乱数分析手順(B23)は、上記乱数発生手順(B22)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順(B23′)とし、
上記累積分布を演算する手順(B25)は、上記繰り返し手順(B24,B24′)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(B25′)とし、
上記打切り時間とする手順(B26)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間とする手順(B26′)としても良い。
【0033】
この発明の寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もり方法は、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、その時間までに試験対象品に破損が生じると要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準とする試験中止基準時間を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、打切り試験の対象となる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力する入力過程(C1)と、
上記コンピュータに、上記入力情報に応じて試験中止基準時間を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程(C2)とを含む。
【0034】
上記コンピュータ演算処理過程(C2)として、上記コンピュータに次のワイブル分布特定手順(D21)、乱数発生手順(D22)、乱数分析手順(D23)、設定回数繰り返し手順(D24)、累積分布演算手順(D25)、対応時間の読み取り手順(D26)を実行させる。
【0035】
上記ワイブル分布特定手順(D1)は、次式、
【0036】
【数10】
【0037】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定する手順である。
【0038】
上記乱数発生手順(D22)は、特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手順である。
上記乱数分析手順(D23)は、乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順である。
上記設定回数繰り返し手順(D24)は、上記乱数発生手順(D22)および上記乱数分析手順(D23)を設定回数繰り返す手順である。
【0039】
上記累積分布演算手順(D25)は、上記繰り返し手順(D24)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順である。
上記対応時間の読み取り手順(D26)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする手順である。
なお、この明細書において、試験中止基準時間は、必ずしも時間の単位に限らず、軸受を回転させて行う試験における回転回数などのように、負荷回数によって表現された値であっても良い。
【0040】
この方法で得られた累積分布は、要求品質を満たせなくなる累積確率と時間との関係を示す。そのため、上記対応時間読み取り手順(D26)として、上記累積分布において、入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取ることで、その読み取った値が、その時間までに試験対象品に破損が生じると要求寿命が満たせないとして試験を中止すべき時間である。例えば、信頼度が90%の寿命であるL10寿命では、上記累積確率が0.1の時間を読み取ることで、読み取られた時間を、1個破損時の試験中止基準時間とする手順である。
【0041】
この発明方法によると、このように、試験対象の寿命分布となるワイブル分布を用い、その分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させてそのうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる処理を繰り返し、この処理を繰り返して累積分布を演算し、この累積分布から、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って1個破損時の試験中止基準時間とするコンピュータシミュレーションを行うため、試験中止基準時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、また熟練者でなくても、試験中止基準時間の適切な見積もりが行えるという効果が得られる。
【0042】
この発明の試験中止基準時間見積もり方法において、
上記乱数分析手順(D23)では、乱数発生手順(D22,D22′)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順(D23′)とし、
上記累積分布を演算する手順(D25)は、上記繰り返し手順(D24)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(D25′)とし、
上対応時間の読み取り手順(D26)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、i+1個破損時の試験中止基準時間とする手順(D26′)としても良い。
【0043】
この方法によると、寿命試験中に破損が生じた場合における、残りの試験対象についての試験中止基準時間を、上記と同様に、簡単かつ迅速に、かつ適切に求めることができる。
【0044】
この発明の寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もり装置は、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、その時間までに試験対象品に破損が生じると要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準とする試験中止基準時間を見積もる装置であって、
演算処理装置(1)と、この演算処理装置(1)の出力を画面に表示する表示装置(2)と、前記演算処理装置(1)に入力を行う入力手段(3)とを備える。
前記演算処理装置(1)は、
上記表示装置(2)の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受またはその他の試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段(7)と、
実行命令の入力に応答して、試験中止基準時間を演算し演算結果を上記表示装置(2)の画面に表示させる試験中止基準時間演算手段(18)を含む。
【0045】
上記試験中止基準時間演算手段(18)は、次のワイブル分布特定手段(9A)、乱数発生手段(10A)、乱数分析手段(11A)、繰り返し手段(12A)、累積分布演算手段(13A)、対応時間読み取り手段(14A)、および読取結果出力手段(15A)を備える。
【0046】
上記ワイブル分布特定手段(9A)は、次式、
【0047】
【数11】
【0048】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定する手段である。
【0049】
上記乱数発生手段(10A)は、上記のように特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手段である。
上記乱数分析手段(11A)は、上記乱数発生手段(10A)で発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手段である。
上記繰り返し手段(12A)は、上記乱数発生手段(10A)および上記乱数分析手段(11A)の処理を設定回数繰り返させる手段である。
【0050】
累積分布演算手段(13A)は、上記乱数発生手段(10A)によるワイブル乱数の発生および上記乱数分析手段(11A)による演算の繰り返し過程の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表した累積分布を演算する手段である。
上記対応時間読み取り手段(14A)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする手段である。
上記読取結果出力手段(15A)は、上記対応時間読み取り手段で読み取った試験中止基準時間を上記表示装置(2)に出力させる手段である。
【0051】
この構成の試験中止基準時間見積もり装置によると、この発明の試験中止基準時間見積もり方法を実施して、試験中止基準時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、かつ適切なものとでき、また熟練者でなくても、試験中止基準時間の適切な見積もりが行えるとい効果が得られる。
【0052】
この発明の試験中止基準時間見積もり装置において、上記乱数分析手段(11A)は、上記乱数発生手順(10A)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算するものとし、
上記累積分布演算手順(13A)は、上記繰り返し手順(12A)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算するものとし、
上記対応時間読み取り手段(14A)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i+1個破損時の打切り時間とするものとしても良い。
【0053】
この発明の寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もりプログラムは、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(D1)と、
実行命令の入力に応答して、試験中止基準時間を演算し上記表示装置の画面に出力する試験中止基準時間演算手順(D2)とを含み、
上記試験中止基準時間演算手順(D2)は、次式、
【0054】
【数12】
【0055】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順(D21)と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順(D22)と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順(D23)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順(D24)と、
この繰り返し手順(D24)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(D25)と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする手順(D26)とを含む。
【0056】
この構成の試験中止基準時間見積もりプログラムによると、この発明の試験中止基準時間見積もり方法の実施に使用されて、試験中止基準時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、かつ適切なものとでき、また熟練者でなくても、試験中止基準時間の適切な見積もりが行えるとい効果が得られる。
【0057】
この発明の試験中止基準時間見積もりプログラムにおいて、
上記乱数分析手順(D23)は、上記乱数発生手順(D22,D22′)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順(D23′)とし、
上記累積分布を演算する手順(D25)は、上記繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(D25′)とし、
上記打切り時間とする手順(D26)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する値を読み取って、i+1個破損時の打切り時間とする手順としても良い。
【発明の効果】
【0058】
この発明の打切り時間見積もり方法、装置、およびプログラムによると、試験対象の寿命分布となるワイブル分布を用い、その分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させて全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる過程を繰り返し、この処理を繰り返して累積分布を演算し、この累積分布から信頼度に対応する時間を読み取って打切り時間とするコンピュータシミュレーションを行うようにしたため、打切り時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、かつ信頼性の高いものとできて、打切り試験の結果の信頼性を向上させることができ、また熟練者でなくても、打切り時間の適切な見積もりが行えるという効果が得られる。
【0059】
この発明の試験中止基準時間見積もり方法、装置、およびプログラムによると、試験対象の寿命分布となるワイブル分布を用い、その分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させてそのうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる処理を繰り返し、この処理を繰り返して累積分布を演算し、この累積分布から、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って1個破損時の試験中止基準時間とするコンピュータシミュレーションを行うため、試験中止基準時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、また熟練者でなくても、試験中止基準時間の適切な見積もりが行えるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
この発明の実施形態を説明する。この寿命打切り試験の打切り時間見積もり方法は、軸受を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験につき、上記打切り時間を見積もる方法である。なお、軸受の他の機械部品やその試験片の打切り試験における打切り時間を見積もる場合にも適用できる。
この実施形態の打切り時間見積もり方法は、例えば、一つのロットの軸受の中から一部の軸受を抜き取って打切り寿命試験を行い、そのロットの寿命を確認する試験等において、打切り時間を定める場合に適用される。
【0061】
以下、この実施形態を図面と共に説明する。この打切り時間見積もり方法は、図1に示すコンピュータ1に、打切り時間見積もりプログラム6を実行させることで行う。コンピュータ1はパーソナルコンピュータ等からなり、中央処理装置4およびメモリ5を有し、所定のオペレーションシステムによって動作するものである。コンピュータ1には、液晶表示装置等の画面によって表示可能な表示装置2と、キーボードやマウス等の入力装置3が接続され、あるいは付属して設けられている。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および打切り時間見積もりプログラム6により、図2に各機能達成手段をブロックで示した寿命打切り試験の打切り時間見積もり装置が構成される。同図の打切り時間見積もり装置の構成については、後に説明する。
打切り時間見積もりプログラム6はコンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図4に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
【0062】
この打切り時間見積もり方法は、図2に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程A1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程A2とからなる。
【0063】
入力過程A1では、図11に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この画面では、入力情報として打切り試験の対象となる軸受のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる。要求寿命の信頼度は、ここではL10寿命とL50寿命のいずれかを選択する表示が行われ、その選択の入力を行う。ワイブルスロープの値には、試験対象となる型番の軸受における実績値を入力する。
実績値は10個以上の試験で得た結果を用いることが望ましく、より好ましくは20個以上の試験結果である。試験個数は、より多いほど打切り時間が短くできて好ましいが、試験機の台数等で制限される場合があり、納期や種々の状況を考慮して実際に試験に用いる個数を入力する。
【0064】
図2のコンピュータ演算処理過程A2では、打切り時間を演算し、その演算結果を、図12(A)のように出力画面2bに表示する。なお、同図では全数未破損の場合の打切り時間の他に、一部の軸受が破損した場合の打切り時間を併せて表示しているが、ここでは簡明のために、全数未破損の場合について説明した後、一部破損の場合につき説明する。
【0065】
図1の打切り時間見積もりプログラム6はコンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図4に流れ図で示す手順を備える。図4(A)に示すように、打切り時間見積もりプログラム6は、促し画面出力手順B1と打切り演算手順B2とでなり、促し画面出力手順B1では、図11と共に前述した入力画面2aを出力する。この入力画面2aに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、打切り演算手順B2が実行される。同図の入力画面2aに対して入力する過程が、図3の入力過程A1であり、同図のコンピュータ演算処理過程A2は図4(A)の打切り演算手順B2を実行する過程である。
【0066】
打切り演算手順B2は、同図(B)に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順B21〜B27毎の具体的な処理例を併記してある。
理解の容易のため、この具体的処理例を参照し、具体的な数値例を用いて、コンピュータ演算処理過程A2となる打切り演算手順B2の概要を説明する。
【0067】
ある軸受製品のL10寿命(90%の確率の信頼度が得られる寿命)が1000時間以上であると保証するための全数打切り時間を見積もる場合を想定する。ここで、この試験対象となる軸受の寿命分布のワイブルスロープは、清浄油潤滑下での軸受の寿命試験の実績から1.85であると仮定する。また、試験個数が6個であるとする。
【0068】
このワイブルスロープの値1.85と、試験個数6個の値とから、この軸受の寿命分布となるワイブル分布を特定する(図4(B)の手順B21)。寿命分布の作り方については、後に説明する。
図13は、L10寿命が1000時間であるワイブルスロープ1.85の寿命分布を示している。
【0069】
まず初めに、図13のワイブル分布から6個のワイブル乱数を発生させる(図4(B)の手順B22)。ワイブル乱数の発生方法は、後に説明する。
このように発生させたワイブル乱数は、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片の寿命試験を行い、寿命データを得ることに対応している。
次に、得られた6個の乱数すべてが何時間以上になるかを調べる(手順B23)。調べたデータは、所定の記憶領域に記憶しておく。
以上の手順(B22,B23)を設定回数(例えば、5000回)繰り返す(手順B24)。なお、ワイブル分布特定手順B21は、乱数発生手順B22に含め、繰り返し毎に特定を行うようにしても良い。
【0070】
この繰り返し手順の各回における6個の乱数すべてが何時間以上になる確率が高いかを演算し、累積確率で表す累積分布を演算する(手順B25)。図14は、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験した時、6個すべての試験片が破損することなく試験が継続する時間とその発生頻度の関係(累積確率分布)を示している。
【0071】
この図から、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である軸受では、1860時間以上の時間全数未破損となる状況が10%の確率でしか起こり得ない稀な状況であることが分かる。すなわち、1860時間以上の時間6個すべての試験片が未破損という状況は、その軸受のL10寿命が90%の確率で1000時間以上である状況といえるので、1860時間はこの状況での全数打切り時間ということになる。
このように、上記累積分布(図14)において、上記入力情報のうちの信頼度(L10寿命の場合は90%)に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする(手順B26)。
このように読み取った時間を、全数未破損時の打切り時間として、図12(A)の画面の一部に示したように、表示する(手順B27)。なお、図12はL10寿命が1622時間の場合のデータであり、表示された打切り時間は、L10寿命を1000時間とした場合の打切り時間よりも長い時間となっている。
【0072】
上記ワイブル分布の特定(手順B21)の詳細について説明する。一般に軸受の寿命分布は次式1)のワイブル分布に従うと言われている。
【0073】
【数13】
【0074】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
ワイブル分布は、3つのパラメータを持っており、ワイブルスロープmによって指数分布、対数正規分布、正規分布を表現できる万能分布として知られている。参考として、図15に各種パラメータを変化させた時のワイブル分布の変化を示す。ワイブルスロープmは、分布の形状を支配するパラメータであり、この値が小さいほどばらつきの大きい分布ということができる。尺度因子αは、横軸(寿命)のスケールを変化させるもので、この値が大きいほど寿命は相対的に長くなる。最小寿命γは、寿命分布の横軸(寿命)を単にシフトさせるものである。
【0075】
この実施形態では、ワイブル乱数を発生させるが、この乱数を発生させるためにはワイブル分布の3つのパラメータを決定する必要がある。決め方の手順は、例えば以下のようになる。
1) ワイブルスロープmを実績から決定する。
2) 乱数を発生させたい分布の信頼度(例えばL10寿命であるか、あるいはL50寿 命であるか、及びその寿命)を決定する。
3) 信頼度から求めたワイブルスロープmから、最小寿命γを所定の数式を使って決定 する。例えば、L10寿命またはL50寿命から求めた尺度因子αから、
最小寿命γを、例えば、以下の2)式を使って決定する。
この式は、1990年制定のISOの最小寿命であり、実験値からの回帰式である。
【0076】
【数14】
【0077】
これは、R≦10の値で、R=0(L10寿命でのa1)のとき、この式は1になるという式である。過去のISOの最少寿命考慮の式では、L10寿命以下の寿命は、この式にL10寿命を書けた値ということで定義されている。Rは信頼度に対応する値(100−Rが信頼度となる値)である。
なお、最小寿命の定め方については、各種の規格(例えばISO)において、時代と共に変更される場合があるが、規格の変更に伴い、実施時の規格に応じた定め方を採用すれば良い。また、最小寿命は、材料試験条件によっても変化するのでより一般的な式で記述するほうが良いとの主張もあり、適宜の値を用いれば良い。
【0078】
ワイブル乱数の発生(手順B22)につき説明する。乱数とは、定性的にはでたらめな数列であって、発生頻度が均一(等確率)で、その発生に規則性がない(無規則性)というものであるが、完全な乱数を発生させることは不可能である。そこで、コンピュータで発生させることのできる疑似乱数を使う。簡易な乱数発生アルゴリズムでは、例えば10進法で20桁ぐらいの周期性が見られるが、周期性が6千桁以上の周期性となるものもあり、このような周期性の少ない乱数発生アルゴリズムを用いることが好ましい。
【0079】
この実施形態では、一様な乱数ではなく、ワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を発生させる。このため発生方法には工夫が必要になる。確率密度関数が複雑な場合、その分布に従う乱数を発生するには棄却法と呼ばれる方法を用いればよく、この実施形態においても、棄却法を用いる。
確率密度関数f(x)の変域が図16のように、0からX0 の範囲にあるとみなされるものとし、その変域内でのf(x)の最大値をMとする。RNを区間〔0,1 〕での一様擬似乱数とするとX0 ・RNにより、区間〔0,x0〕での一様擬似乱数xiを発生することができる。同様にして、M・RNにより、区間〔0,M 〕での一様擬似乱数yiを発生することができる。そこで、このようにして発生させた乱数xi,yiがf(xi)> yi となる条件を満足する場合には、乱数xiは与えられた確率密度分布に従うものとして採用し、満足しなければ、その乱数xiを不採用とする。この作業を繰り返し、確率密度分布に従う確率で乱数xiを採用し、確率密度分布に従う乱数の数列を作っていく方法を棄却法という。この方法は、条件に合わない乱数を捨てることになるので乱数発生法としては効率がよくないが、よい一様乱数さえ得られれば原理的に正しい数列が得られる方法である。
【0080】
図4に示した打切り時間見積もりプログラム6についての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この打切り時間見積もりプログラム6は、整理すると、次の手順により構成される。
【0081】
この実施形態の寿命打切り試験の打切り時間見積もりプログラムは、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受またはその他の機械部品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(B1)と、
実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置の画面に出力する打切り時間演算手順(B2)とを含む。
上記打切り時間演算手順(B2)は、次式、
【0082】
【数15】
【0083】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順(B21)と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順(B22)と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順(B23)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順(B24)と、
この繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの、全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(B25)と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする手順(B26)と、
読み取った時間を表示装置2の画面に表示する手順(B27)とを含む。
【0084】
図4(B)に示す打切り演算手順B2は、全数未破損の場合についての手順であるが、試験中に一部の軸受に破損が生じた場合は、図5に示す流れ図に従って打切り時間を求める。
【0085】
設定している全数未破損の打ち切り時間よりも短い時間で破損が発生しても、要求品質を満たせなくなる確率が高くなる最短破損時間よりは長い破損データが得られた場合、試験を継続すれば要求品質を満たすことができる可能性がまだある。この状況は、実際にしばしば起こる状況である。
全数打切り時間を経過せずに破損が発生した場合、目標品質を保証するためには、残存試験片の打ち切り時間は初めに設定した全数打切り時間よりも長くなることは容易に推測できる。ここでは、要求品質を満たすための残存軸受の打切り時間を見積もる方法について説明する。
【0086】
図5の流れ図における注釈部分を参照し、具体的数値例と共に説明する。基本的な手順は、図4と共に前述した手順と同様である。図4(B)との違いは、図5の手順B23′における発生した乱数の最も短かった時間以外の残存データが何時間以上になるかを調べる点にある。なお、図5の手順は、破損個数が2個以上の場合にも適用でき、また破損無しの場合にも適用できるが、まず、破損個数が1個の場合を説明する。
【0087】
以下、理解を簡単にするため、具体例を挙げる。試験個数6個で、その軸受のL10寿命が1000時間以上であると保証するための試験がしたい場合、前記のように1860時間が全数打切り時間になるが、1000時間で破損が発生したとする。1000時間はそのロットの寿命が要求品質を満たせなくなる確率が高くなる破損時間412時間(後に図18と共に説明する)よりも長いので、その製品のL10寿命が1000時間以上であると保証できる可能性がまだ残っていることになる。そこで、このまま試験を継続した場合、残存試験片が何時間以上未破損であれば、L10寿命が1000時間以上であると保証できるのかについて検討する。
【0088】
ここで、試験の寿命分布のワイブルスロープは1.85であると仮定する。図5において、ワイブル分布の特定手順B21′は、図4の手順B21と同様であり、図4の手順の実行時に特性したワイブル分布を用いても良い。このワイブル分布から6個のワイブル乱数を発生し(手順B22′)、得られた6個のワイブル乱数を昇順に並び替え、一番短い時間以外の残存データを得る。これは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験し、一番短い寿命データ以外の寿命データを得ることに対応している。次に、一番短い時間以外の残存データが何時間以上になるかを調べる(手順B23′)。
以上の手順B22′,B23′を設定回数(例えば5000回)だけ繰り返す(手順B24′)。
【0089】
この繰り返し過程で、一番短い時間以外の残存データが何時間以上になる確率が高いかを調べる。図17は、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験した時、6個中5個の試験片が破損することなく試験が継続する時間とその発生頻度の関係(累積確率分布)を示している。この累積確率分布を演算する(手順B25′)。
【0090】
図17から、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命であるロットでは、6個中6個の試験片が2626時間以上の時間未破損で試験が継続する状況が10%の確率でしか起こり得ない稀な状況であることが分かる。すなわち、2626時間以上の時間6個中5個の製品が未破損という状況は、そのロットの製品のL10寿命が90%の確率で1000時間以上であるといえる状況なので、2626時間は6個中1個が全数打切り時間(1860時間)以内で破損した時の新たな打切り時間の設定値ということになる。このように、上記累積分布から、信頼度(L10寿命では90%)に対応する時間を読み取って1個破損時の打切り時間と定める(手順B26′)。このように読み取った結果を、図12(A)のように、1個破損時の打切り時間として表示装置2の画面2aに表示させる。なお、図12は、L10寿命が1622時間の場合のデータであり、表示された打切り時間は、L10寿命が1000時間とした場合の打切り時間よりも長い時間となっている。
【0091】
この方法を応用すれば、試験対象軸受中、2,3…n個の試験片が打切り時間以内で破損した場合でも、要求寿命を満たすための残存試験片の打切り時間を設定することができる。i個(iは試験個数未満の零を含む任意の整数)破損した場合の打切り時間を演算する手順を、図5と共に整理すると、次の手順となる。なお、特に説明する事項の他は、図4(B)と共に説明した手順と同じである。
【0092】
図5において、i個破損した場合、乱数分析手順(B23′)は、乱数発生手順(B22′)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順とする。
累積分布を演算する手順(B25′)は、繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順とする。
打切り時間とする手順B26′は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間とする手順とする。
【0093】
これにより、試験対象軸受中、2,3…n個の試験片が打切り時間以内で破損した場合でも、要求寿命を満たすための残存試験片の打切り時間を設定することができる。
【0094】
図2と共に打切り時間見積もり装置につき説明する。この打切り時間見積もり装置は、演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータ1に入力を行う入力装置3とを備える。
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7と、実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置2の画面に出力する打切り時間演算手段8とを含む。
【0095】
打切り時間演算手段8は、ワイブル分布特定手段9、乱数発生手段10、乱数分析手段11、繰り返し手段12、累積分布演算手段13、対応時間読み取り手段14、および読取結果出力手段15を備える。
【0096】
ワイブル分布特定手段9は、図4の手順B21の処理を行ってワイブル分布を特定する手段である。
乱数発生手段10は、上記のように特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手段であり、図4の手順B22で説明した処理を行う。
乱数分析手段11は、乱数発生手段10で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手段であり、図4の手順B23で説明した処理を行う。
繰り返し手段12は、乱数発生手段10による上記ワイブル乱数の発生、および乱数分析手段11による演算を設定回数繰り返させる手段であり、図4の手順B24で説明した処理を行う。
【0097】
累積分布演算手段13は、乱数発生手段10によるワイブル乱数の発生および乱数分析手段11による演算の繰り返しの各回における発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表した累積分布を演算する手段であり、図4の手順B25で説明した処理を行う。
対応時間読み取り手段14は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする手段であり、図4の手順B26で説明した処理を行う。
読取結果出力手段15は、対応時間読み取り手段14で読み取った打切り時間を表示装置2に出力させる手段であり、図4の手順B27で説明した処理を行う。
【0098】
この構成の打切り時間見積もり装置は、全数未破損の場合の打切り時間を見積もるものであるが、一部の軸受に破損が生じた場合にも適用できる装置とする場合は、図2の構成における一部を次のように変更する。
【0099】
すなわち、乱数分析手段11は、乱数発生手順10で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算するものとする。
累積分布演算手段13は、上記繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算するものとする。
対応時間読み取り手段14は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間とするものとする。
【0100】
次に、図6ないし図10等と共に、試験中止基準時間の見積もり方法につき説明する。この見積もり方法は、打切り時間の見積もり方法で述べた打切り試験において、その時間までに機械部品に破損が生じると要求信頼度の要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準とする試験中止基準時間を見積もる方法である。
【0101】
この試験中止基準時間見積もり方法は、図6に示すコンピュータ1に、試験中止基準時間見積もりプログラム19を実行させることで行う。コンピュータ1は、実行するプログラムが試験中止基準時間見積もりプログラム19であることを除き、図1と共に前述したものと同じである。ここでは、図1の打切り時間見積もりプログラム6を記憶したコンピュータ1に、試験中止基準時間見積もりプログラム19を記憶させている。打切り時間見積もりプログラム6と、試験中止基準時間見積もりプログラム19とは、互いに一部の手順を共通とするもの、例えば両プログラム6,19が一本のプログラムとして構成されたものであっても良い。
【0102】
コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および試験中止基準時間見積もりプログラム19により、図7に各機能達成手段をブロックで示した寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もり装置が構成される。同図の打切り時間見積もり装置の構成については、後に説明する。
図6の 試験中止基準時間見積もりプログラム19はコンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図9に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
【0103】
この試験中止基準時間見積もり方法は、図8に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程C1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程C2とからなる。
【0104】
入力過程C1は、打切り時間見積もり方法につき、図3の流れ図および図11の入力画面2aと共に説明した過程と同じであり、この実施形態のように、同じコンピュータ1に打切り時間見積もりプログラム6と試験中止基準時間見積もりプログラム19の両方を実行させる場合は、打切り時間見積もり方法の入力過程A1(図3)を両見積もり方法に兼用する。
【0105】
試験中止基準時間見積もりプログラム19は、図9(A)に示すように促し画面出力手順D1と試験中止基準時間演算手順D2とからなるが、促し画面出力手順D1は、打切り時間見積もりプログラム6における促し画面出力手順B1(図4(A))と兼用される。この促し画面出力手順B1(D1)で入力画面が表示されかつ必要な情報が入力された状態で、次に入力される実行命令の違いによって、図4(A)の打切り演算手順B2が実行されるか、または図9(A)の試験中止基準時間演算手順D2が実行されるかが選択される。例えば、打切り演算手順B2は、入力画面2a(図12)中のOKキーをクリックすることで実行されるものとしたが、試験中止基準時間演算手段D2は、入力画面2aに表示された別の所定のキー(図示せず)をクリックに応答して実行されるものとする。
【0106】
試験中止基準時間演算手順D2は、図9(B)に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順D21〜D27の具体的な処理例を併記してある。
【0107】
なお、この試験中止基準時間演算手順D2の説明の前に、試験中止基準時間について説明する。打切り試験において、設定している打切り時間よりも短い時間で、試験軸受の破損が生じる場合がある。この状況は実際でもしばしば起こる状況である。従来では、そのような状況になった場合、試験を継続するか中止するかの明確な判断ができなかった。例えば、目標品質がL10寿命で1000時間を保証する試験を行っている時に、10時間で破損が発生した場合、目標品質のL10寿命より明らかに短い時間で破損しているので、そのロットの寿命はきわめて短いだろうということが常識的に推測でき、試験を中止したほうが良いという判断ができる。しかし、打切り時間よりもかなり短いものの、判断に困る程度の時間(例えば500時間等)で破損が発生する場合には、寿命試験の熟練者にも試験中止の判断が難しくなる。この実施形態は、そのロットの寿命が要求品質を満たせなくなる確率が高くなる破損時間を試算する方法である。
【0108】
図9(B)と共に、試験中止基準時間演算手順D2を説明する。基本的な手順は、打切り試験における打切り時間を見積もる手順と同様である。以下、説明を簡単にするため、具体例を挙げる。試験個数6個で、その製品のL10寿命が1000時間以上であると保証するための試験がしたい場合を考える。ここで、試験の寿命分布のワイブルスロープは1.85であると仮定する。まず初めに、L10寿命が1000時間のワイブル分布を上記と同様に特定する(D21)。このワイブル分布から6個のワイブル乱数を発生する(D22)。これは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験し、寿命データを得ることに対応している。
次に、得られた6個のワイブル乱数を昇順に並び替え、最も小さい乱数が何時間以上になるかを調べる(D23)。以上の手順D22,D23を設定回数(例えば、5000回)回繰り返す(D24)。
【0109】
この繰り返し過程で、最も小さい乱数が何時間以上になる確率が高いかを調査する。図18は、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験した時、6個中最も性能の悪い試験片が破損することなく試験が継続する時間とその発生頻度の関係(累積確率分布)を示している。この累積確率分布を演算する(D25)。
【0110】
図18において、L10寿命の信頼度である90%を100%から減算した値である10%の値を読むと、412時間という値が得られる。すなわち、図18から、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命分布をもつロットでは、6個中最も性能が悪い試験片でも412時間以上は未破損で試験が継続する確率が90%であることが分かる。この結果は、412時間以内の時間で1つでも破損が発生するという状況は、90%以上の確率で1000時間のL10寿命を保証できない状況を示しているので、412時間はそのロットの寿命が要求品質を満たせなくなる確率が高くなる破損時間ということになる。
【0111】
このように、上記累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度(L10寿命では90%)を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする(D26)。このように読み取った結果を、図12(B)に出力画面例を示すように、表示装置2の出力画面2bに表示する(D27)。なお、図12(B)は、1個が破損した場合の試験中止基準時間の他に、2個以上が破損した場合の試験中止基準時間を併せて表示している。2個以上破損の場合については、後に説明する。また、同図は、L10寿命が1622時間の場合のデータであり、表示された試験中止基準時間時間は、L10寿命が1000時間とした場合の試験中止基準時間よりも長い時間となっている。
【0112】
図9に示した試験中止基準時間見積もりプログラム19についての上記の説明は、具体的数値を例にとって説明したが、この試験中止基準時間プログラム6は、整理すると、次の手順により構成される。
【0113】
この実施形態の試験中止基準時間見積もりプログラム19は、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受またはその他の機械部品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(D1)と、
実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置の画面に出力する打切り時間演算手順(D2)とを含む。
上記打切り時間演算手順(D2)は、次式、
【0114】
【数16】
【0115】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順(D21)と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順(D22)と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順(D23)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順(D24)と、
この繰り返し手順(D24)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(D25)と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、1個破損時の打切り時間とする手順(D26)と、
この読み取った時間を表示装置2の画面に表示する手順D27)とを含む。
【0116】
この方法を応用すれば、試験軸受中2,3…n個の試験片が何時間以下で破損したら、要求寿命を満たせなくなる確率が高くなるかという計算も行える。
【0117】
図10は、試験軸受中、2個以上が破損した場合の試験中止基準時間を見積もるプログラムにおけるコンピュータ演算処理過程D2を示す。
図9の手順と異なる手順は次の事項であり、その他の図9の手順と同じである。図10の例では、乱数分析手順D22′は、上記乱数発生手順D22′で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順とする。
【0118】
累積分布を演算する手順D25′は、上記繰り返し手順D24′の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順とする。
対応時間読み取り手順D26′は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する値を読み取って、i+1個破損時の打切り時間とする手順とする。
【0119】
以上の手順により、試験軸受中2,3…n個の試験片が何時間以下で破損したら、要求寿命を満たせなくなる確率が高くなるかという計算が行える。計算結果は、図12(B)のように表示装置2の画面2bに表示する。
【0120】
図7と共に、試験中止基準時間見積もり装置につき説明する。この試験中止基準時間見積もり装置は、演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータ1に入力を行う入力手段3とを備える。
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受またはその他の機械部品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命の信頼度の選択、および選択された信頼度における要求寿命の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7と、実行命令の入力に応答して、試験中止基準時間を演算し演算結果を表示装置2の画面に表示させる試験中止基準時間演算手段18を含む。
この実施形態では、コンピュータ1のハードウェアおよび促し画面出力手段7が、打切り時間見積もり装置と兼用される。
【0121】
上記試験中止基準時間演算手段18は、次のワイブル分布特定手段9A、乱数発生手段10A、乱数分析手段11A、繰り返し手段12A、累積分布演算手段13A、対応時間読み取り手段14A、および読取結果出力手段15Aを備える。
【0122】
上記ワイブル分布特定手段9Aは、図9の手順D21の処理を行ってワイブル分布を特定する手段である。
乱数発生手段10Aは、上記のように特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手段であり、図9の手順D22で説明した処理を行う。
乱数分析手段11Aは、乱数発生手順10Aで発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手段であり、図9の手順D23Dで説明した処理を行う。
繰り返し手段12Aは、乱数発生手順10Aおよび乱数分析手順11Aの処理を設定回数繰り返させる手段であり、図9の手順D24で説明した処理を行う。
【0123】
累積分布演算手段13Aは、乱数分析手段10Aによるワイブル乱数の発生および乱数分析手段11Aによる演算の繰り返し過程の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表した累積分布を演算する手段であり、図9の手順D25Dで説明した処理を行う。
対応時間読み取り手段14Aは、上記累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする手段であり、図9の手順D27で説明した処理を行う。
【0124】
この構成の試験中止基準時間見積もり装置は、1個破損の場合の試験中止基準時間を見積もるものであるが、2個以上の軸受に破損が生じた場合にも適用できる装置とする場合は、図7の構成における一部を次のように変更する。
【0125】
すなわち、乱数分析手段11Aは、乱数発生手段10Aで発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算するものとする。
累積分布演算手段13Aは、繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算するものとする。
対応時間読取手段14Aは、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i+1個破損時の打切り時間とするものとする。
【0126】
この打切り時間見積もり方法・装置、および試験中止基準時間見積もり方法・装置の補足説明および応用につき説明する。
上記のように全数打切り時間を表示装置2の画面に出力させた後、軸受の納期が全数打切り時間よりも長いことを確認する。ここで、全数打ち切り時間より短い時間で破損が生じた場合、より長い試験が必要になるので、複数個破損時打切り時間と納期の関係も留意したほうがよい。次に、1個目の試験中止基準を見て、この1個目の試験中止基準以下の時間で破損が発生すると、試験を中止したほうが良いという判断基準も確認する。以上の検討が終了次第、試験は実施すればよい。
【0127】
もし、試験中に、1個目の試験中止基準以上、全数打切り時間以下で破損が発生した場合、例えば2000時間で剥離が発生したならば、図12の結果によると、次の打切り時間は4285時間に再設定し、試験中止基準は3個の試験片が2393時間以下で破損する状況に再設定する。
【0128】
この見積もり方法は乱数を使って計算を行っているため、計算結果は毎回同じにならないことに注意が必要である。表2に、この実施形態のプログラムを用い、目標品質、試験個数、ワイブルスロープを変えて同じ計算を5回ずつ行った結果を示す。
【0129】
【表2】
【0130】
このプログラムで計算された結果は、最大3%程度の確率的な誤差が生じる。
図19に目標品質による全数打切り時間と試験中止基準(1個破損時)の計算結果の変化を示す。打切り時間と試験中止時間は、目標品質が大きくなるにつれて、線形に長くなることが分かる。
図20に試験個数による全数打切り時間と試験中止基準(1個破損時)の計算結果の変化を示す。打切り時間と試験中止時間は、試験個数が多くなるにつれて、指数関数的に短くなることが分かる。これは、試験個数が多くなると、打切り時間が短くても目標品質を保証できるためである。また、試験中止時間が短くなる理由は、試験個数が多くなると、1個短寿命品が出ても他の試験片が長寿命であれば、目標品質を保証できる可能性が出てくるためである。
図21にワイブルスロープによる全数打切り時間と試験中止基準(1個破損時)の計算結果の変化を示す。打切り時間は、ワイブルスロープが大きくなるにつれて指数関数的に短くなり、試験中止時間はワイブルスロープが大きくなるにつれて長くなることが分かる。これは、同じL10寿命であればワイブルスロープが大きいほど寿命分布が全体的に短寿命側に分布するためである。また、試験中止時間が長くなる理由は、ワイブルスロープが大きくなると、短寿命側の寿命の発生頻度が小さくなり、短寿命が発生する可能性が少なくなるためである。
【0131】
以上のことから、打切り時間を短くするためには(納期を早めるためには)、
(1)L10寿命が短くなる試験条件を採用すること、
(2)試験個数をできるだけ多くすること、
(3)ワイブルスロープが大きくなる試験条件(寿命がそろう試験条件)で試験を実施することが重要になるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】この発明の一実施形態にかかる打切り時間見積もり装置の概略ブロック図でである。
【図2】同打切り時間見積もり装置の概念構成を示すブロック図である。
【図3】同打切り時間見積もり装置を用いた打切り時間見積もり方法の概略流れ図である。
【図4】同打切り時間見積もり方法を実施する打切り時間見積もりプログラムの流れ図である。
【図5】他の実施形態に係る打切り時間見積もりプログラムの流れ図である。
【図6】この発明の一実施形態にかかる打切り時間見積もり装置および試験中止基準時間装置を複合化した装置の概略ブロック図でである。
【図7】同複合化した装置の概念構成のブロック図である。
【図8】同装置を用いた試験中止基準時間見積もり方法の概略流れ図である。
【図9】同試験中止基準時間見積もり方法を実施する試験中止基準時間見積もりプログラムの流れ図である。
【図10】他の実施形態にかかる試験中止基準時間見積もりプログラムの流れ図である。
【図11】図1の打切り時間見積もり装置における入力画面例の説明図である。
【図12】図1の打切り時間見積もり装置および図6の装置における出力画面例の説明図である。
【図13】軸受の寿命と頻度の関係例を示すグラフである。
【図14】ワイブル乱数の所定の累積確率と寿命の関係例、および全数打切り時間の見積もり例を示すグラフである。
【図15】ワイブルスロープの各パラメータの影響例を示すグラフである。
【図16】ワイブル分布の定め方を示すグラフである。
【図17】ワイブル乱数の所定の累積確率と寿命の関係例、および1個破損時打切り時間の見積もり例を示すグラフである。
【図18】ワイブル乱数の所定の累積確率と寿命の関係例、および最短破損時間の関係例を示すグラフである。
【図19】目標品質による全数打切り時間と試験中止基準時間の計算結果の変化例を示すグラフである。
【図20】試験個数による全数打切り時間と試験中止基準時間の計算結果の変化例を示すグラフである。
【図21】ワイブルスロープによる全数打切り時間と試験中止基準時間の計算結果の変化例を示すグラフである。
【図22】従来の打切りおよび加速試験の手順を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0133】
1…コンピュータ(演算処理手段)
2…表示装置
3…入力装置
6…打切り時間見積もりプログラム
7…促し画面出力手段
8…打切り時間演算手段
9,9A…ワイブル分布特定手段
10,10A…乱数発生手段
11,11A…乱数分析手段
12,12A…繰り返し手段
13,13A…累積分布演算手段
14,14A…対応時間読み取り手段
15,15A…読取結果出力手段
19…試験中止基準時間見積もりプログラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験につき、上記打切り時間を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、打切り試験の対象となる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力する入力過程と、
上記コンピュータに、打切り時間を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程とを含み、
上記コンピュータ演算処理過程として、次式、
【数1】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順と、
この繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする対応時間読み取り手順、
とを実行する寿命打切り試験の打切り時間見積もり方法。
【請求項2】
請求項1において、上記乱数分析手順は、上記乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順とし、
上記累積分布を演算する手順は、上記繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順とし、
上記打切り時間とする手順は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間とする手順とした、
寿命打切り試験の打切り時間見積もり方法。
【請求項3】
軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験につき、上記打切り時間を見積もる装置であって、
演算処理装置と、この演算処理装置の出力を画面に表示する表示装置と、上記演算処理装置に入力を行う入力手段とを備え、
上記演算処理装置は、
上記表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる前記試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段と、
実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置の画面に出力する打切り時間演算手段とを含み、
上記打切り時間演算手段は、次式、
【数2】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手段と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手段と、
この乱数発生手段で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手段と、
上記乱数発生手段による上記ワイブル乱数の発生および上記乱数分析手段による演算を設定回数繰り返させる繰り返し手段と、
上記乱数発生手段による上記ワイブル乱数の発生および上記乱数分析手段による演算の繰り返しの各回における発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表した累積分布を演算する累積分布演算手段と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする対応時間読み取り手段と、
この手段で読み取った打切り時間を上記表示装置に出力させる読取結果出力手段と、
を備えた寿命打切り試験用打切り時間見積もり装置。
【請求項4】
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順と、
実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置の画面に出力する打切り時間演算手順とを含み、
上記打切り時間演算手順は、次式、
【数3】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順と、
この繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする手順とを含む、
寿命打切り試験の打切り時間見積もりプログラム。
【請求項5】
軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、その時間までに試験対象品に破損が生じると要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準とする試験中止基準時間を見積もる方法であって、 コンピュータに対し、入力情報として、打切り試験の対象となる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力する入力過程と、
上記コンピュータに、上記入力情報に応じて試験中止基準時間を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程とを含み、
上記コンピュータ演算処理過程として、次式、
【数4】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順と、
この繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする対応時間読み取り手順、とを実行する寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もり方法。
【請求項6】
請求項5において、上記乱数分析手順では、上記乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順とし、
上記累積分布を演算する手順は、上記繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順とし、
上記対応時間読み取り手順は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、i+1個破損時の試験中止基準時間とする手順とする、
寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もり方法。
【請求項7】
軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、その時間までに試験対象品に破損が生じると要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準とする試験中止基準時間を見積もる装置であって、 演算処理装置と、この演算処理装置の出力を画面に表示する表示装置と、上記演算処理装置に入力を行う入力手段とを備え、
上記演算処理装置は、
上記表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段と、
実行命令の入力に応答して、試験中止基準時間を演算し演算結果を上記表示装置の画面に表示させる試験中止基準時間演算手段を含み、
上記試験中止基準時間演算手段は、次式、
【数5】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手段と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手段と、
この乱数発生手段で発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手段と、
上記乱数発生手段による上記乱数発生および上記乱数分析手段による上記演算を設定回数繰り返させる繰り返し手段と、
上記乱数分析手段による乱数発生および上記乱数分析手段による演算の繰り返し過程の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表した累積分布を演算する累積分布演算手段と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って1個破損時の試験中止基準時間とする対応時間読み取り手段と、 この手段で読み取った試験中止基準時間を上記表示装置に出力させる読取結果出力手段と、
を備えた寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もり装置。
【請求項8】
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順と、
実行命令の入力に応答して、試験中止基準時間を演算し上記表示装置の画面に出力する試験中止基準時間演算手順とを含み、
上記試験中止基準時間演算手順は、次式、
【数6】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順と、
この繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする手順とを含む、
寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もりプログラム。
【請求項1】
軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験につき、上記打切り時間を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、打切り試験の対象となる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力する入力過程と、
上記コンピュータに、打切り時間を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程とを含み、
上記コンピュータ演算処理過程として、次式、
【数1】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順と、
この繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする対応時間読み取り手順、
とを実行する寿命打切り試験の打切り時間見積もり方法。
【請求項2】
請求項1において、上記乱数分析手順は、上記乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順とし、
上記累積分布を演算する手順は、上記繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順とし、
上記打切り時間とする手順は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間とする手順とした、
寿命打切り試験の打切り時間見積もり方法。
【請求項3】
軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験につき、上記打切り時間を見積もる装置であって、
演算処理装置と、この演算処理装置の出力を画面に表示する表示装置と、上記演算処理装置に入力を行う入力手段とを備え、
上記演算処理装置は、
上記表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる前記試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段と、
実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置の画面に出力する打切り時間演算手段とを含み、
上記打切り時間演算手段は、次式、
【数2】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手段と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手段と、
この乱数発生手段で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手段と、
上記乱数発生手段による上記ワイブル乱数の発生および上記乱数分析手段による演算を設定回数繰り返させる繰り返し手段と、
上記乱数発生手段による上記ワイブル乱数の発生および上記乱数分析手段による演算の繰り返しの各回における発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表した累積分布を演算する累積分布演算手段と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする対応時間読み取り手段と、
この手段で読み取った打切り時間を上記表示装置に出力させる読取結果出力手段と、
を備えた寿命打切り試験用打切り時間見積もり装置。
【請求項4】
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順と、
実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置の画面に出力する打切り時間演算手順とを含み、
上記打切り時間演算手順は、次式、
【数3】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順と、
この繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする手順とを含む、
寿命打切り試験の打切り時間見積もりプログラム。
【請求項5】
軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、その時間までに試験対象品に破損が生じると要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準とする試験中止基準時間を見積もる方法であって、 コンピュータに対し、入力情報として、打切り試験の対象となる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力する入力過程と、
上記コンピュータに、上記入力情報に応じて試験中止基準時間を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程とを含み、
上記コンピュータ演算処理過程として、次式、
【数4】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順と、
この繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする対応時間読み取り手順、とを実行する寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もり方法。
【請求項6】
請求項5において、上記乱数分析手順では、上記乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順とし、
上記累積分布を演算する手順は、上記繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順とし、
上記対応時間読み取り手順は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、i+1個破損時の試験中止基準時間とする手順とする、
寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もり方法。
【請求項7】
軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、その時間までに試験対象品に破損が生じると要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準とする試験中止基準時間を見積もる装置であって、 演算処理装置と、この演算処理装置の出力を画面に表示する表示装置と、上記演算処理装置に入力を行う入力手段とを備え、
上記演算処理装置は、
上記表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段と、
実行命令の入力に応答して、試験中止基準時間を演算し演算結果を上記表示装置の画面に表示させる試験中止基準時間演算手段を含み、
上記試験中止基準時間演算手段は、次式、
【数5】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手段と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手段と、
この乱数発生手段で発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手段と、
上記乱数発生手段による上記乱数発生および上記乱数分析手段による上記演算を設定回数繰り返させる繰り返し手段と、
上記乱数分析手段による乱数発生および上記乱数分析手段による演算の繰り返し過程の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表した累積分布を演算する累積分布演算手段と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って1個破損時の試験中止基準時間とする対応時間読み取り手段と、 この手段で読み取った試験中止基準時間を上記表示装置に出力させる読取結果出力手段と、
を備えた寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もり装置。
【請求項8】
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順と、
実行命令の入力に応答して、試験中止基準時間を演算し上記表示装置の画面に出力する試験中止基準時間演算手順とを含み、
上記試験中止基準時間演算手順は、次式、
【数6】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順と、
この繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする手順とを含む、
寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もりプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2008−128690(P2008−128690A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311027(P2006−311027)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]