説明

打撃工具

【課題】工具ビットの作業モードが切り替え可能な打撃工具において、スイッチ選択機能とハンドル防振機能の両立に資する技術を提供する。
【解決手段】モータ、工具本体、ハンドル、工具本体とハンドルとを相対移動可能に接続する防振用緩衝材161を有する打撃工具において、ハンドルに設けられたモータ駆動用の手動操作部材と、工具本体に設けられた作業モード切替部材と、作業モード切替部材が工具ビットを連続的に駆動する第1作業モードに切り替えられたときには、手動操作部材を非投入位置から投入位置側へと操作させて固定し、工具ビットを任意に駆動する第2作業モード側に切り替えられたときには、手動操作部材の固定を解除する可動部材153を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ビットに少なくとも打撃動作を行わせることにより、被加工材(コンクリート)に対しハンマ作業を遂行することが可能な打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
打撃工具である、例えば電動ハンマドリルを用いて作業をする場合において、工具ビットが長軸方向に打撃動作するハンマモードでのハンマ作業は、作業者の負担を軽減する観点からモータ駆動用の電気スイッチを操作する手動操作部材(トリガ)を当該電気スイッチが投入状態(オン状態)とされる投入位置に固定できることが好ましく、一方、工具ビットが打撃動作と長軸回りの回転動作とを行うハンマドリルモードでのハンマドリル作業では、作業の性格上、手動操作部材を固定することなく作業者が非投入位置と投入位置間で任意に操作できることが好ましい。このような手動操作部材の固定と非固定との間での切替えを可能とするスイッチ選択機能を備えた電動ハンマドリルは、例えば特開2006−957号公報(特許文献1)に開示されている。特開2006−957号公報においては、工具本体とハンドルとを連結する領域に、工具本体側の作業モード切替部材がハンマモードに切替えられたときに、当該作業モード切替部材に連動してハンドル側のトリガを、電気スイッチをオン状態とする投入位置に固定する可動部材を配置する構成としている。
一方、打撃工具では、加工作業時において、工具本体に発生する振動から作業者を保護するべく、ハンドルを工具本体(振動発生部)に対し緩衝材を介して連結して防振ハンドルを構成する場合がある。このような打撃工具は、例えば特開2006−272511号公報(特許文献2)に開示されている。
【0003】
しかしながら、打撃工具の場合、構造的な理由からスイッチ選択機能とハンドル防振機能を両立させることが難しいものであり、この点でなお改良の余地がある。
【特許文献1】特開2006−957号公報
【特許文献2】2006−272511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる点に鑑み、工具ビットの作業モードが切り替え可能な打撃工具において、スイッチ選択機能とハンドル防振機能の両立に資する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため、本発明に係る打撃工具の好ましい形態は、モータと、工具本体と、ハンドルと、防振用緩衝材と、手動操作部材と、作業モード切替部材と、可動部材とを有する。工具本体は、モータを収容するとともに、先端領域に当該モータによって駆動される工具ビットが装着可能とされる。ハンドルは、工具本体のうち工具ビットが装着される先端領域の反対側に配置される。防振用緩衝材は、工具本体とハンドルとの間に配置され、工具本体とハンドルとを工具ビットの長軸方向への相対移動可能に接続する。なお、本発明における「防振用緩衝材」とは、典型的にはバネがこれに該当するが、ゴムを好適に包含する。手動操作部材は、ハンドルに設けられ、モータに電流を通電する投入位置から通電を遮断する非投入位置側へと付勢されるとともに、常時には非投入位置に置かれ、手指によって非投入位置と投入位置の間で操作可能とされる。なお、手動操作部材の「操作」の態様としては、適宜ガイド部材を介して直線状に移動する態様、あるいは曲線状に移動する態様、更には支点を中心として回動する態様のいずれも好適に包含する。
【0006】
作業モード切替部材は、工具本体に設けられ、工具ビットを連続的に駆動する第1作業モードと、工具ビットを任意に駆動する第2作業モードとの間で作業モードの切り替え操作が可能とされる。なお、本発明における「第1作業モード」とは、手動操作部材を手指により投入位置に維持することなく、モータを連続的に駆動することによって工具ビットに打撃動作のみによるハンマ作業を行わせる作業モードがこれに該当する。また、本発明における「第2作業モード」とは、手動操作部材を投入位置と非投入位置の間で手指により操作し、モータを任意(断続的)に駆動することによって工具ビットに打撃動作と回転動作とによるハンマドリル作業、打撃動作のみによるハンマ作業、あるいは回転動作のみによるドリル作業等を行わせる作業モードがこれに該当する。また、本発明における「作業モードの切り替え操作」の態様としては、例えば作業モード切替部材を所定の軸線回りに回動させる回動操作式、あるいは作業モード切替部材を工具ビットの長軸方向に直線状に摺動させる直線操作式のいずれも好適に包含する。可動部材は、作業モード切替部材の切替操作により工具ビットの長軸方向に移動動作され、当該作業モード切替部材が第1作業モード側に切り替えられた場合には、ハンドルに近接して手動操作部材を非投入位置から投入位置側へと移動させるとともに当該投入位置に固定し、作業モード切替部材が第2作業モード側に切り替えられた場合には、ハンドルから離間して手動操作部材の固定を解除することにより、当該手動操作部材を非投入位置に復帰させて手指による操作を可能とする。
【0007】
本発明の好ましい形態では、作業モード切替部材が第1作業モード側に切り替えられ、手動操作部材が可動部材により投入位置に固定された状態において、工具本体に生じた振動が少なくとも可動部材および手動操作部材を含む振動伝達経路を通じてハンドルに伝達されることを防止するべく、当該振動伝達経路の任意の領域に防振用としての弾性部材が配置された構成とされる。なお、本発明における「弾性部材の配置」の態様としては、例えば可動部材と手動操作部材との間に弾性部材を介在状に配置する態様、あるいは可動部材、手動操作部材のうちの少なくとも1つの部材それ自体が弾性部材を含んで構成される態様等を広く包含する。また、本発明における「弾性部材」とは、典型的にはバネがこれに該当するが、ゴムを好適に包含する。
【0008】
上記のように構成された本発明によれば、作業モード切替部材によって第1作業モードが選択された場合には、可動部材によって手動操作部材が投入位置に固定される。この状態では、モータ(工具ビット)を連続的に駆動して、例えばハンマ作業を行うことが可能とされる。一方、第2作業モードが選択された場合には、手指により手動操作部材の投入操作および非投入操作を適宜行うことによって、モータ(工具ビット)を断続的(任意)に駆動して、例えばハンマドリル作業、ハンマ作業あるいはドリル作業を行うことが可能とされる。
【0009】
特に、本発明によれば、工具ビットを駆動して所定の加工作業を行なう際、工具本体に発生する振動のハンドル側への伝達を防振用緩衝材によって防止あるいは低減することができる。この場合において、打撃工具を、第1作業モードで駆動する、つまり可動部材が手動操作部材を投入位置に固定した状態で駆動すると、工具本体に生じた振動が、少なくとも可動部材および手動操作部材を含む振動伝達経路を通じてハンドルに伝達することになる。しかるに、本発明によれば、手動操作部材が可動部材により投入位置に固定された状態において、上記の振動伝達経路の任意の領域に弾性部材を配置してあるため、工具本体が振動しても、当該振動のハンドルへの伝達を弾性部材によって防止あるいは低減することができる。
すなわち、本発明によれば、工具ビットの作業モードに応じて、手動操作部材を投入位置に固定する態様と手動操作部材を手指により任意に操作可能とする態様との間での切替えを可能とするスイッチ選択機能と、ハンドルを工具本体に対して防振用緩衝材によって連結するハンドル防振機能との両立を図ることが可能となった。
【0010】
本発明に係る打撃工具の更なる形態によれば、弾性部材は、手動操作部材を構成する1つの要素として備えられている。なお、「1つの要素として備えられる」とは、例えば手動操作部材を複数の構成部材によって構成し、それら複数の構成部材を弾性部材によって相互に接続する態様がこれに該当する。
本発明によれば、手動操作部材が可動部材により投入位置に固定されて第1作業モードで駆動される場合において、可動部材から手動操作部材側に伝達された振動を当該手動操作部材自体に含まれる弾性部材によって防止あるいは低減することができる。
【0011】
本発明に係る打撃工具の更なる形態によれば、手動操作部材は、作業者により操作可能な操作部材本体部と、当該操作部材本体部に工具ビットの長軸方向に相対回動自在に取り付けられたレバーと、当該レバーが工具ビット側に回動するよう付勢する圧縮スプリングとを有する。手動操作部材は、作業モード切替部材が第1作業モードに切り替えられた状態では、可動部材によってレバーをハンドル側に向けて押されることによって操作部材本体部が圧縮スプリングを介して投入位置へと移動されて当該投入位置に固定される。
本発明によれば、上記のように構成することにより、手動操作部材の防振構造を当該手動操作部材側において合理的に構築することができる。
【0012】
本発明に係る打撃工具の更なる形態によれば、操作部材本体部を非投入位置に向けて付勢する付勢部材を有する。そして、圧縮スプリングの取付荷重は、操作部材本体部を投入位置へと移動しおえたときに付勢部材に作用する荷重よりも大きく設定されている。なお、本発明における「取付荷重」とは、圧縮スプリングを取り付ける際、当該圧縮スプリングに所定の撓みを与えるべく加える初期荷重をいう。
本発明によれば、第1作業モードでの駆動時において、可動部材よって操作部材本体部を投入位置へ確実に移動させて固定できるとともに、当該固定状態で圧縮スプリングの防振効果を奏することができる。
【0013】
本発明に係る打撃工具の更なる形態によれば、投入位置と非投入位置との間で移動することによりモータの駆動と停止を行う第2手動操作部材を更に有する。第2手動操作部材は、作業モード切替部材が第2作業モード側に切り替えられた場合には、可動部材によって非投入位置から投入位置側へと移動されるとともに当該投入位置に固定され、作業モード切替部材が第1作業モード側に切り替えられた場合には、可動部材による固定が解除されて手指による操作が可能とされる構成とした。なお、本発明における第2手動操作部材の「操作」の態様としては、適宜ガイド部材を介して直線状に移動する態様、あるいは曲線状に移動する態様、更には支点を中心として回動する態様のいずれも好適に包含する。
【0014】
本発明によれば、作業モード切替部材によって第1作業モードが選択された場合には、可動部材によって手動操作部材が投入位置に固定され、第2手動操作部材の手指による操作が可能とされる。このときは、作業者は手指により第2手動操作部材を操作して工具ビットを連続的に駆動し、ハンマ作業を行うことが可能とされる。一方、第2作業モードが選択された場合には、可動部材によって第2手動操作部材が投入位置に固定され、手動操作部材の手指による操作が可能とされる。このときは、作業者は手指により手動操作部材を操作して工具ビットを断続的に駆動し、例えばハンマドリル作業、ハンマ作業あるいはドリル作業を行うことが可能とされる。
なお、第2手動操作部材が可動部材により投入位置へと移動されて固定されるとき、第2手動操作部材は、工具本体に形成された収納空間に収納されるように構成することが好ましい。このような構成としたときは、第2手動操作部材が収納空間に収納されているか否かを目で見ることで、現在の作業モードが第1作業モードであるか第2作業モードであるかを識別できる。
【0015】
本発明に係る打撃工具の更なる形態によれば、第2手動操作部材が可動部材により投入位置に固定された状態において、第2手動操作部材と可動部材が弾性部材とは別の第2弾性部材によって弾発状に連結される構成とした。
本発明によれば、作業モード切替部材の切替操作により工具ビットの長軸方向に移動する可動部材の移動量と、当該可動部材によって操作される第2手動操作部材の移動量とに差を付与し、その移動量の差を第2弾性部材によって吸収することができる。換言すれば、第2弾性部材を設けたことで、可動部材の移動量と第2手動操作部材の移動量とにつき、任意に設定することが可能となり、設計上の自由度が高いものとなる。
【0016】
本発明に係る打撃工具の更なる形態によれば、作業モード切替部材は、工具ビットの長軸方向と交差する軸線回りに回動自在な回動操作式として構成されるとともに、軸線から所定距離だけ離間した位置で可動部材と係合して軸線回りに回動することにより当該可動部材を工具ビットの長軸方向に移動動作させる偏心軸部を有する。そして、偏心軸部が係合する可動部材の係合領域には、作業モード切替部材が第1作業モードに切り替えられる際に作業モード切替部材の回動角に対する可動部材の工具ビット長軸方向への移動量を、偏心軸部の工具ビット長軸方向成分の移動量と異ならせるカム面が形成されている。
本発明によれば、上記構成とすることで、カム面の形状を調整して可動部材の移動量を自由に設定することが可能となる。
【0017】
本発明に係る打撃工具の更なる形態によれば、防振用緩衝材が工具ビットの長軸線の両側に当該長軸線に沿って配置され、それら両防振用緩衝材の間に可動部材が配置された構成としている。このように、工具ビットの長軸線の両側に防振用緩衝材を配置したことにより、打撃工具に対し工具ビット長軸方向の押圧力を作用させつつ当該工具ビットを被加工材に押し付けて加工作業を行なう際の、当該押し付けの安定性を得ることができる。また、防振用緩衝材間に可動部材が配置されることで、合理的な配置構造が構築される。
【0018】
また、本発明に係る打撃工具の別の形態によれば、モータと、工具本体と、ハンドルと、防振用緩衝材と、手動操作部材と、作業モード切替部材と、可動部材とを有する。工具本体は、モータを収容するとともに、先端領域に当該モータによって駆動される工具ビットが装着可能とされる。ハンドルは、工具本体のうち工具ビットが装着される先端領域の反対側に配置される。防振用緩衝材は、工具本体とハンドルとの間に配置され、工具本体とハンドルとを工具ビットの長軸方向への相対移動可能に接続する。なお、本発明における「防振用緩衝材」とは、典型的にはバネがこれに該当するが、ゴムを好適に包含する。手動操作部材は、ハンドルに設けられ、モータに電流を通電する投入位置から通電を遮断する非投入位置側へと付勢されるとともに、常時には非投入位置に置かれ、手指によって非投入位置と投入位置の間で操作可能とされる。なお、手動操作部材の「操作」の態様としては、適宜ガイド部材を介して直線状に移動する態様、あるいは曲線状に移動する態様、更には支点を中心として回動する態様のいずれも好適に包含する。
【0019】
作業モード切替部材は、工具本体に設けられ、工具ビットを連続的に駆動する第1作業モードと、工具ビットを任意に駆動する第2作業モードとの間で作業モードの切り替え操作が可能とされる。なお、本発明における「第1作業モード」とは、手動操作部材を手指により投入位置に維持することなく、モータを連続的に駆動することによって工具ビットに打撃動作のみによるハンマ作業を行わせる作業モードがこれに該当する。また、本発明における「第2作業モード」とは、手動操作部材を投入位置と非投入位置の間で手指により操作し、モータを任意(断続的)に駆動することによって工具ビットに打撃動作と回転動作とによるハンマドリル作業、打撃動作のみによるハンマ作業、あるいは回転動作のみによるドリル作業等を行わせる作業モードがこれに該当する。また、本発明における「作業モードの切り替え操作」の態様としては、例えば作業モード切替部材を所定の軸線回りに回動させる回動操作式、あるいは作業モード切替部材を工具ビットの長軸方向に直線状に摺動させる直線操作式のいずれも好適に包含する。可動部材は、作業モード切替部材の切替操作により工具ビットの長軸方向に移動動作され、当該作業モード切替部材が第1作業モード側に切り替えられた場合には、ハンドルに近接して手動操作部材を非投入位置から投入位置側へと移動させるとともに当該投入位置に固定し、作業モード切替部材が第2作業モード側に切り替えられた場合には、ハンドルから離間して手動操作部材の固定を解除することにより、当該手動操作部材を復帰させて手指による操作を可能とする。
【0020】
本発明に係る打撃工具の別の形態では、作業モード切替部材が第1作業モードに切り替えられたときと第2作業モードに切り替えられたときでは、ハンドルの防振用バネ荷重が異なる構成とした。なお、本発明における「バネ荷重」とは、打撃工具に工具ビット長軸方向の押圧力を作用させつつ工具ビットを被加工材に押し付けて加工作業を行なう際に、工具本体側とハンドル側間の緩衝用バネ部材に作用する荷重、すなわちハンドルを把持して打撃工具を被加工材に押し付けたときの押圧力がこれに該当する。本発明において、作業モードに応じて防振用バネ荷重を異ならせる手段としては、作業モード切替部材が第1作業モードに切替えられ、手動操作部材が可動部材により投入位置に固定されるとき、例えば当該手動操作部材と可動部材が防振用の弾性部材を介して連結される構成とすることで実現される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、工具ビットの作業モードが切り替え可能な打撃工具において、スイッチ選択機能とハンドル防振機能の両立に資する技術が提供されることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態につき、図1〜図14を参照して説明する。本実施の形態は、打撃工具の一例として電動ハンマドリルを用いて説明する。図1には電動ハンマドリルの全体構成が示される。図1に示すように、本実施の形態に係る電動ハンマドリル101は、概括的に見て、電動ハンマドリル101の外郭を形成する本体部103、当該本体部103の長軸方向の先端領域(図示左側)においてツールホルダ(便宜上図示を省略する)に着脱自在に取付けられた長軸状のハンマビット119、本体部103の長軸方向における他端部(図示右側)に連接された作業者が握るハンドグリップ109を主体として構成される。本体部103は、本発明における「工具本体」に対応し、ハンマビット119は、本発明における「工具ビット」に対応する。また、ハンドグリップ109は、本発明における「(作業者把持用の)ハンドル」に対応する。なお、ハンマビット119は、工具ビット取り付け部としてのツールホルダに取り付けられ、その長軸方向(本体部103の長軸方向)への相対的な往復動が可能に、かつその周方向への相対的な回動が規制された状態で保持される。なお、説明の便宜上、ハンマビット119側を前、ハンドグリップ109側を後という。
【0023】
本体部103は、駆動モータ111を収容したモータハウジング105と、運動変換機構113、打撃要素115、および動力伝達機構117を収容したギアハウジング107とを主体として構成されている。駆動モータ111は本発明における「モータ」に対応する。駆動モータ111は、回転軸が本体部103の長軸方向(すなわち、ハンマビット長軸方向)と概ね直交する縦方向(図1において上下方向)となるように配置される。駆動モータ111の回転出力は、運動変換機構113によって直線運動に適宜変換された上で打撃要素115に伝達され、当該打撃要素115を介してハンマビット長軸方向(図1における左右方向)への衝撃力を発生する。また、駆動モータ111の回転出力は、動力伝達機構117によって適宜減速された上でハンマビット119に回転力として伝達され、当該ハンマビット119が周方向に回転動作される。
【0024】
ハンドグリップ109は、本体部103のうちハンマビット119の長軸方向に関しツールホルダとは反対側に設けられた作業者把持用のハンドルとして構成される。このハンドグリップ109は、ハンマビット長軸方向と交差する上下方向に延在された側面視で概ねコの字形に形成されるとともに、上下方向の一端(下端)側が回動軸163を介してモータハウジング105の後端下部に前後方向に回動可能に連接され、他端(上端)側が振動吸収用のコイルバネ161を介してモータハウジング105およびギアハウジング107の後方領域を覆うリアカバー108の後端上部に連接されている。コイルバネ161は、本発明における「防振用緩衝材」に対応する。これによって、本体部103からハンドグリップ109への振動の伝達が防止あるいは低減される防振構造のハンドグリップ109が構成される。
【0025】
運動変換機構113は、駆動モータ111の回転運動を直線運動に変換して打撃要素115に伝達するものであり、駆動モータ111によって駆動されるクランク軸121、クランクアーム123、ピストン125等からなるクランク機構によって構成される。ピストン125は、いわゆる打撃要素115を駆動する駆動子を構成するものであり、シリンダ127内をハンマビット長軸方向と同方向に摺動可能とされる。
【0026】
打撃要素115は、シリンダ127のボア内壁に摺動自在に配置されてピストン125の摺動動作により当該シリンダボア内の空気バネの作用を介して直線状に駆動される打撃子としてのストライカ129と、ツールホルダ内に摺動自在に配置されるとともに、ストライカ129の運動エネルギをハンマビット119に伝達する中間子としてのインパクトボルト131を主体として構成される。
【0027】
一方、ツールホルダにより保持されたハンマビット119は、駆動モータ111から動力伝達機構117を介してツールホルダと共に回転される構成とされる。動力伝達機構117は、図1に示すように、駆動モータ111によって回転駆動される中間ギア133と、中間軸135と、中間軸135と共に回転する第1ベベルギア137と、当該第1ベベルギア137と噛み合い係合し、本体部103の長軸回りに回転する第2ベベルギア139等からなり、駆動モータ111の回転をツールホルダに伝達し、更には当該ツールホルダに保持されたハンマビット119へと伝達する。
【0028】
便宜上図示を省略するが、中間ギア133と中間軸135との間には、駆動モータ111の回転出力をハンマビット119に伝達したり、遮断したりするクラッチが介装されている。クラッチは、中間軸135に対し周方向に固定された状態で軸方向には摺動可能に取り付けられており、当該中間軸135に沿って摺動することで、中間ギア133のクラッチ歯と噛み合い係合する動力伝達状態と、当該噛み合い係合が解除される動力遮断状態との間で切り替えられる。
【0029】
クラッチの切り替え動作は、ハンマビット119の作業モードを選択する(切り替える)作業モード切替ダイヤル151の手動操作によって行なわれる。作業モード切替ダイヤル151は、本発明における「作業モード切替部材」に対応する。作業モード切替ダイヤル151は、本体部103の外側上面(クランク機構の概ね真上)に配置され、ハンマビット119の長軸線と交差する上下方向の回動軸線151a回りに水平面内で回動操作可能とされている。作業モード切替ダイヤル151が回動操作されることによって、クラッチ切替機構118を介して動力伝達機構117のクラッチを動力伝達状態あるいは動力遮断状態のいずれかに切り替えられる。なおクラッチ切替機構118は、ギアハウジング107内に配置(一部が図1に示される)され、作業モード切替ダイヤル151の回動運動を直線運動に変換してクラッチを中間軸135に沿って移動させる手段として構成されるが、本発明には直接関係しないため、詳細については説明を省略する。
【0030】
作業モードの選択は、作業モード切替ダイヤル151を回動軸線151a回りに回動操作することによってなされる。本実施の形態では、作業モード切替ダイヤル151は、第1ハンマモード、第2ハンマモード、ハンマドリルモードおよびニュートラルモードへの切替えが可能とされており、本体部103の外側表面には、作業モード切替ダイヤル151の周方向において、第1ハンマモード、第2ハンマモード、ハンマドリルモードおよびニュートラルモードを示すための適宜目印が設けられている。
【0031】
作業モード切替ダイヤル151が回動操作され、第1ハンマモードが選択されたときおよび第2ハンマモードが選択されたときには、クラッチ切替機構118によって動力伝達機構117のクラッチが動力遮断状態とされる。この状態で駆動モータ111が通電駆動されると、運動変換機構113のみが駆動される。駆動モータ111の回転出力は、運動変換機構113に伝達され、当該運動変換機構113のピストン125がシリンダ127のボア内で往復直線運動を行う。ピストン125が直線運動を行うと、それに伴い当該ピストン125からストライカ129、インパクトボルト131を経てハンマビット119が打撃動作を行う。このように、クラッチが動力遮断状態に置かれた第1ハンマモードまたは第2ハンマモードでは、ハンマビット119が打撃動作(ハンマ動作)のみを行い、被加工材(コンクリート)にハンマ作業を遂行する。
【0032】
一方、ハンマドリルモードが選択されたときには、クラッチ切替機構118によって動力伝達機構117のクラッチが動力伝達状態とされる。この状態で駆動モータ111が通電駆動されると、運動変換機構113に加えて動力伝達機構117が駆動する。駆動モータ111の回転出力は、中間ギア133、クラッチ、中間軸135、第1および第2ベベルギア137,139を介してツールホルダおよびこのツールホルダにて保持されるハンマビット119に伝達される。かくして、クラッチが動力伝達状態に置かれたハンマドリルモードでは、ハンマビット119が軸方向の打撃動作と周方向の回転動作(ドリル動作)を行い、被加工材(コンクリート)にハンマドリル作業を遂行する。
【0033】
次に駆動モータ111(ハンマビット119)を駆動・停止を操作する操作部材(スイッチ構造)につき、図6〜図9を主体にして説明する。ハンドグリップ109側には、第1スイッチ部141をオン/オフ操作する(投入状態或いは非投入状態に設定可能な)第1操作部材143が設けられ、本体部103側には、第2スイッチ部146をオン/オフ操作する(投入状態或いは非投入状態に設定可能な)第2操作部材145が設けられている。第1操作部材143は、本発明における「手動操作部材」に対応し、第2操作部材145は、本発明における「第2手動操作部材」に対応する。第1操作部材143は、引き操作が可能なトリガ式のスイッチとして備えられ、第2操作部材145は、押し操作が可能なレバー式のスイッチとして備えられる。そして、第1操作部材143と第2操作部材145は、前後方向(ハンマビット119の長軸方向)において互いに対向状に配置され、いずれもハンドグリップ109を把持した手指で操作可能とされる。このため、片手での操作が可能となり、作業者による操作部の操作性向上が図られる。
【0034】
第1操作部材143は、中空状をなすハンドグリップ109のハンドグリップ内部空間109bに配置されている。第1操作部材143は、ハンドグリップ109の長軸方向(ハンマビット119の長軸方向と交差する上下方向)に沿って延在されるとともに、当該延在方向の下部側において取付軸142によってハンドグリップ109に前後方向(ハンマビット119の長軸方向)に回動自在に装着されている。第1操作部材143は、第1スイッチ部141をオフ状態(「非投入状態ともいう」)とするオフ位置(「非投入位置」ともいう)と、作業者の手指により上部側を引き操作されることによって第1スイッチ部141をオン状態(「投入状態ともいう」)とするオン位置(「投入位置」ともいう)との間での回動操作が可能とされている。
【0035】
第1操作部材143は、常時には第1スイッチ部141をオフ状態に付勢するべく当該第1スイッチ部141に内蔵されたスプリング(便宜上図示を省略する)によってオン位置からオフ位置へと付勢されている。ここでいうスプリングが本発明における「付勢手段」に相当する。したがって、第1操作部材143の上部側は、引き操作されていないときは、ハンドグリップ109の前面開口部から前方へと突出するオフ位置に保持され(図6参照)、手指により引き操作された、あるいは後述するスライドプレート153によって押し込まれたオン位置では、ハンドグリップ109のハンドグリップ内部空間109bに収納されてその前面がグリップ前面の外側表面と概ね面一となるように設定されている(図7参照)。第1スイッチ部141は、内蔵されたスプリングによりオフ状態となるように付勢された自動復帰式のオン・オフスイッチとして構成されている。
【0036】
一方、第2操作部材145は、本体部103に形成された後方内部空間103aに配置されている。ここでいう後方内部空間103aが、本発明における「収納空間」に相当する。この後方内部空間103aは、ギアハウジング107と当該ギアハウジング107の後面領域を覆うリアカバー108とによって囲まれる空間として備えられる。第2操作部材145は、第1操作部材143と対向してハンマビット119の長軸方向と交差する上下方向に延在される長方形の板状部材によって構成(図5参照)されるとともに、延在方向の下部側の軸部145cを受部材149によって支持されて前後方向(ハンマビット119の長軸方向)に回動自在とされる。
【0037】
なお、第2操作部材145が配置される本体部103の後方領域は、ハンマビット119から離間した領域であり、と同時にハンマビット119側から見て陰になる領域でもある。このため、当該後方領域に配置される第2操作部材145は、ハンマ作業あるいはハンマドリル作業時に発生する被加工材(コンクリート)の粉塵の影響を受け難く、防塵性が向上する。
【0038】
第2操作部材145は、手指により操作される前のオフ位置(非投入位置)と手指により操作されて第2スイッチ部146に押圧力を加えるオン位置(投入位置)との間で回動される。第2操作部材145は、常時にはスプリング147によってオン位置からオフ位置へと付勢されており、また第2操作部材145の延在方向の略中央部後面には作業者が手指により前方へ押し操作するための押しボタン部145aが形成されている。したがって、第2操作部材145の押しボタン部145aが手指により押し操作されていないときには、第2操作部材145は、オフ位置に保持されるとともに押しボタン部145aがリアカバー108に設けた開口部108aから後方へと突出する。この状態が図6および図7に示される。なお、第2スイッチ146としては、第2操作部材145により押されてオン状態に切替ると、再度押されるまでオン状態が維持される形式のスイッチが用いられている。
【0039】
受部材149は、第2スイッチ部146および第2操作部材145を支持する部材として備えられ、ギアハウジング107にネジ148(図5参照)によって止着される。受部材149は、複数の爪149aによって第2スイッチ部146を上下から挟んで保持する。また、受部材149は、第2操作部材145を支持する略U形の受部149bを有し、この受部149b内に第2操作部材145の下部領域が収容されるとともに、軸部145cが回動自在に支持される。したがって、第2操作部材145の下部領域と略U形の受部149bとが重なり合う(オーバーラップ)構造となり、ラビリンス効果によって第2操作部材145の回動軸受部への粉塵の侵入防止効果を得ることができ、前述の配置的な防塵効果と相俟って防塵性をより向上できる。
【0040】
また、第2操作部材145は、少なくとも押しボタン部145aが透光性の材料で形成されるとともに、当該押しボタン部145aの内面には、発光ダイオード(LED)のようなライト167が配置されている。このライト167は、第1操作部材143あるいは第2操作部材145の位置に応じて、すなわち選択された作業モードに応じて点灯あるいは消灯するように構成される。このことについては、後述する。
【0041】
次に、作業モード切替ダイヤル151の作業モード切替えに応じて、第1操作部材143と第2操作部材145を選択的にオン位置に強制的に固定したり、当該固定を解除して手指による操作を可能としたりするスイッチ操作手段としてのスライドプレート153につき説明する。このスライドプレート153は、図2および図6〜図13に示される。スライドプレート153は、作業モード切替ダイヤル151の作業モード切替えの回動動作に対応して偏心軸152を介してハンマビット119の長軸方向に直線状に移動される。
【0042】
スライドプレート153は、図2に示すように、ハンマビット119の長軸方向に長尺状に延在する長尺部材であり、ハンドグリップ109の本体部103との上部側連接領域109aを通してハンドグリップ109側に延在されている。スライドプレート153は、作業モード切替ダイヤル151によって第2ハンマモードT2が選択された場合には、偏心軸152によってハンドグリップ109側に向って最後端位置まで移動され、第2操作部材145の固定を解除するとともに、第1操作部材143を後方へ押してオン位置へと操作し、当該オン位置に固定する構成とされる。この状態が図2、図7、図11に示される。一方、作業モード切替ダイヤル151が第2ハンマモードT2から第1ハンマモードT1に切替え操作された場合およびハンマドリルモードHDに切替え操作された場合には、スライドプレート153はハンドグリップ109から離間する前方へと移動され、第1操作部材143の固定を解除するとともに、第2操作部材145を前方へ押してオン位置へと操作し、当該オン位置に固定する構成とされる。この状態が図8、図9、図12、図13に示される。なお、スライドプレート153と偏心軸152の連結構造の詳細については後述する。
【0043】
第1操作部材143は、図6に示すように、手指により引き操作される平断面が略U形(図4参照)の操作部材本体部143aと、当該操作部材本体部143aに対して下端部が支点(取付軸)144を中心としてスライドプレート153の移動方向(操作部材本体部143aの回動方向と同方向)に回動自在に取り付けられた平断面が略U形(図4参照)のレバー143bと、当該レバー143bを操作部材本体部143aに弾発状に連結する振動吸収用のトーションスプリング143cによって構成されている。
【0044】
レバー143bは、操作部材本体部143aの上端側に取り付けられ、操作部材本体部143aの上端面を超えて上方へと延在されるとともに、その上端部143dがスライドプレート153の後端突部153aと対向している。トーションスプリング143cは、一端がレバー143bに係止され、他端が操作部材本体部143aに係止されており、これによりレバー143bが前方へと回動するように付勢力を作用する。レバー143bに対して組付け時に付与されるトーションスプリング143cの初期荷重(取付荷重)は、手指による操作部材本体部143aの引き切り荷重(オン位置へと操作しおえたときに第1スイッチ部141に内蔵されたスプリングに作用する荷重)よりも大きく設定されている。このため、スライドプレート153が後方へと移動し、その後端突部153aでレバー143bの上端部143dを押したとき、レバー143bと操作部材本体部143aが一体状態を保持しつつ後方へと回動されることになる。すなわち、スライドプレート153による第1操作部材143のオン位置への操作は、レバー143bと操作部材本体部143aが一体化された状態で行われる構成であり、当該操作を確実に行うことができる。なお、レバー143bの前方最大回動位置は、当該レバー143bの前面が操作部材本体部143aに当接することで規定される。
【0045】
上記のトーションスプリング143cは、第1操作部材143をスライドプレート153によってオン位置に強制的に固定した状態(第2ハンマモードT2)でハンマ作業を行う場合に、本体側103に発生する主として前後方向(ハンマビット119の長軸方向)の振動を吸収し、スライドプレート153から第1操作部材143を経てハンドグリップ109へと振動が伝達することを防止あるいは低減する弾性部材として備えられる。
【0046】
第2操作部材145は、後方内部空間103a内を上方へと延在するとともに、その上端部145bがスライドプレート153に形成された長軸方向に長い長溝153b(開口)に相対移動可能に挿入されている。そして、第2操作部材145は、スライドプレート153が前方へと移動される場合に、スライドプレート153に対しコイルスプリング154を介して弾発状に連結された連係体155により前方に押されてオン位置へと移動され、当該オン位置に固定される構成とされる。コイルスプリング154は、本発明における「第2弾性部材」に対応する。
【0047】
スライドプレート153には、図2に示すように、長溝153bの後方に当該長溝153bよりも幅広の開口153cが長溝153bに連続して形成され、当該開口153c内に連係体155およびコイルスプリング154が配置されている。連係体155は、スライドプレート153に対して前後方向に相対移動可能とされ、コイルスプリング154によって前方に向けて付勢され、長溝153bと開口153cの境界に形成された段差部153fと係合する位置に保持される。なお、コイルスプリング154の付勢力は、第2操作部材145をオフ位置へと付勢するスプリング147の付勢力よりも大きい。このため、連係体155は、スライドプレート153が前方へと移動するとき、スライドプレート153と一体となって移動し、その移動途中において第2操作部材145の上端部145bと係合し、第2操作部材145をオン位置へと移動させるとともに、当該オン位置に固定する。すなわち、第2操作部材145は、スライドプレート153によってオン位置に強制的に固定された状態では、スライドプレート153とコイルスプリング147を介して弾発状に連結される。第2操作部材145がオン位置に強制的に固定された状態において、スライドプレート153が更に前方へと移動した場合には、連係体155がコイルスプリング154を圧縮しつつスライドプレート153に対し相対移動する。これにより、連係体155と第2操作部材145の係合後における、第2操作部材145の移動量とスライドプレート153の移動量との差を吸収することができる。
【0048】
なお、長溝153b内に配置されたコイルスプリング154は、互いに対向するスライドプレート153側の柱状ガイド153dと連係体155側の柱状ガイド155aに対し遊嵌状に外嵌されており、これにより安定した支持態様が得られる。
【0049】
次に、作業モード切替ダイヤル151の偏心軸152とスライドプレート153との連結構造につき主として図2を参照して説明する。スライドプレート153の前端部側には、当該スライドプレート153の移動方向(長尺方向)と交差する水平方向(左右方向)に延在する係合孔159を備えた連結部157が形成され、この係合孔159に偏心軸152が遊嵌状に係合されている。偏心軸152は、作業モード切替ダイヤル151の回動軸線151aから所定量だけ偏心した位置に設けられている。このため、作業モード切替ダイヤル151が回動軸線151a回りに回動操作されたとき、偏心軸152は、係合孔159内を延在方向(左右方向)に相対移動しつつ前後方向成分(ハンマビット119の長軸方向成分)によってスライドプレート153を前後方向に移動させる。具体的には、偏心軸152が、係合孔159の前後の係合面のうちの後側係合面159aを押すことでスライドプレート153を後方へと移動させ、前側係合面159bを押すことでスライドプレート153を前方へと移動させる。なお、偏心軸152は、最前端位置および最後端位置にあるとき、係合孔159の延在方向中央部に位置する。
【0050】
本実施の形態では、作業モード切替ダイヤル151の回動軸線151aの回りに、所定の角度(一定角度ではない)を置いて、ハンマドリルモードHD、第1ハンマモードT1、第2ハンマモードT2が設定され、ハンマドリルモードHDと第1ハンマモードT1との間および第2ハンマモードT2とハンマドリルモードHDとの間にそれぞれニュートラルモードNが設定されている。
【0051】
偏心軸152が回動軸線151a回りに後方へと回動し、第2ハンマモードT2が選択されたとき、係合孔159の中央部に位置する(偏心軸152が最後端に位置する)ように設定されている。このとき、前述したようにスライドプレート153が最後端位置まで移動され、当該スライドプレート153によって第1操作部材143が後方へと押されてオン位置に固定される(図7参照)。また、偏心軸152が第2ハンマモードT2の位置から回動軸線151aを中心として右回り(時計回り)に前方へと回動され、第1ハンマモードT1が選択されたとき、偏心軸152が係合孔159の延在方向の一端側(図12において下側)に位置し、偏心軸152が第2ハンマモードT2の位置から回動軸線151aを中心として左回り(反時計回り)に前方へと回動され、ハンマドリルモードHDが選択されたとき、偏心軸152が係合孔159の延在方向の他端側(図13において上側)に位置するように設定されている。そして、第1ハンマモードT1あるいはハンマドリルモードHDが選択されたときには、スライドプレート153が前方へと移動され、当該スライドプレート153によって第2操作部材145が前方へと押されてオン位置に固定される(図8および図9参照)。
【0052】
なお、図6および図10には第2ハンマモードT2とハンマドリルモードHDとの間のニュートラルモードNが選択された場合が示されている。このニュートラルモードNでは、スライドプレート153が概ね移動方向中間位置に置かれ、スライドプレート153の後端突部153aが第1操作部材143のレバー143bから離間し、連係体155が第2操作部材145の上端部145bから離間している。すなわち、第2ハンマモードT2とハンマドリルモードHDとの間のニュートラルモードNは、第1操作部材143および第2操作部材45をそれぞれオフ位置に置くことが可能な位置として設定されている。また、第2ハンマモードT2とハンマドリルモードHDとの間のニュートラルモードNおよびハンマドリルモードHDと第1ハンマモードT1との間のニュートラルモードNでは、ハンマモードで作業する際に、ハンマビット119の向きを正規の位置に合わせるべく、ハンマビット119(ツールホルダ)の自由回転を可能とする位置として設定されている。
【0053】
本実施の形態では、スライドプレート153の係合孔159は、前方(ハンマビット119側)に湾曲する(ハンドグリップ109側に反り返る)円弧状(弓形)に形成されている。これにより、偏心軸152が回動される際、作業モード切替ダイヤル151の回動角に対するスライドプレート153の後方への移動量が、偏心軸152の前後方向成分の移動量と異なる構成とされる。具体的には、偏心軸152が係合孔159の突状円弧面側である後側係合面159aを押しつつ最前端位置から最後端位置へと回動する場合において、スライドプレート153の後方への移動量は、回動軸線151aを横切る左右方向の軸線を境にして、偏心軸152が突状円弧面の高部から低部側へと向う前方領域(第1ハンマモードT1に向う領域およびハンマドリルモードHDと第2ハンマモードT2間のニュートラルモードNに向う領域)では偏心軸152の後方向成分の移動量よりも小さく、低部側から高部に向かう後方領域(第1ハンマモードT1あるいはニュートラルモードNを越えて第2ハンマモードT2に向う領域)では大きくなる。このように、本実施の形態では、第2ハンマモードT2が選択されたときの後方領域でのスライドプレート153の移動量を大きくしている。これにより第1操作部材143のオン位置への操作に必要なスライドプレート153の移動量を容易に確保することができる。
【0054】
なお、スライドプレート153が、偏心軸152によって係合孔159の凹状円弧面である前側係合面159bを押されて前方へと移動するときのスライドプレート153の移動量は、偏心軸152の前方向成分の移動量に比べると、偏心軸152が凹状円弧面の低部から高部側へと向う後方領域では大きく、高部から底部側へと向う前方領域では小さくなる。すなわち、上述した後方への移動時とは逆転する。
【0055】
また、本実施形態では、係合孔159の前側係合面159bには、円弧方向の中央領域に前方へと凹む逃がし凹部159cが形成されている。この逃がし凹部159cは、偏心軸152の偏心距離(回動軸線151aから偏心軸152の中心までの距離)を半径とする円弧面で形成されている。すなわち、スライドプレート153が偏心軸152によって係合孔159の前側係合面159bを押されて前方へ移動するとき、前方領域の特に前進端付近において偏心軸152が逃がし凹部159cと対向することで、その後はスライドプレート153を前方へそれ以上に移動させない構成としている。ハンマドリルモードHDあるいは第1ハンマモードT1が選択されたとき、スライドプレート153は、連係体155を介して第2操作部材145をオン位置へと移動させるが、この状態からスライドプレート153が前方へ更に移動された場合、図13に示すように、第2操作部材145を押す連係体155は、コイルスプリング154を圧縮変形させつつスライドプレート153に対して相対移動することになる。このように、前側係合面159bに逃がし凹部159cを備える構成は、スライドプレート153の前方への移動時における前端位置付近での(ハンマドリルモードHDと、他方のニュートラルモードNとの間の切替領域)、スライドプレート153に対する連係体155の相対移動量を小さくしてコイルスプリング154の不要な圧縮変形を減少する上で有効となる。
【0056】
なお、第1操作部材143における操作部材本体部143aの上端部には、角状の突起143eが形成されている。この突起143eは、作業モード切替ダイヤル151が第2ハンマモードT2に切替えられ、これに伴い後方へと移動するスライドプレート153の後端突部153aによってレバー143bの上端部143dを押された第1操作部材143がオン位置へと回動されるとき、スライドプレート153の開口153c内に突入する。この状態が図7および図11に示される。そして、第2ハンマモードT2からハンマドリルモードHDまたは第1ハンマモードT1に切替えられ、スライドプレート153が前方へ移動するときに、開口153cの後縁153eに引っ掛かることで第1操作部材143を強制的にオフ位置側へ復帰する部材として備えられている。
【0057】
また、ハンドグリップ109の本体部103との上部側連接領域109aには、前述した振動吸収用のコイルバネ161が左右2個配置され、ハンドグリップ109と本体部103とを弾発状に接続する。図2に示すように、コイルバネ161は、ハンマビット119の長軸方向を伸縮方向として当該ハンマビット119の長軸線を挟んで互いに左右に並行に配置されており、両コイルバネ161の間、従って、ハンマビット119の長軸線上にスライドプレート153が配置されている。なお、スライドプレート153およびコイルバネ161は、ゴム製の蛇腹165によって覆われている。
【0058】
次に、上記のように構成された電動ハンマドリル101の作用および使用方法を説明する。図6および図10は作業モード切替ダイヤル151の回動操作によってニュートラルモードNが選択された場合を示す。このときは、偏心軸152が係合孔159の一端側に位置し、スライドプレート153が移動方向の略中間位置にある。この状態では、図6に示すようにスライドプレート153の後端突部153aが第1操作部材143のレバー143bの上端部143dから離間し、またスライドプレート153の連係体155が第2操作部材145の上端部145bから離間している。このため、第1操作部材143および第2操作部材145が共にオフ位置にあり、第1スイッチ部141および第2スイッチ部146が共にオフ状態にあり、駆動モータ111は停止状態に置かれる。
【0059】
次に、図7および図11は作業モード切替ダイヤル151がニュートラルモードNから第2ハンマモードT2を選択した場合を示す。このときは、作業モード切替ダイヤル151の回動動作がクラッチ切替機構118を介して動力伝達機構117のクラッチに直線運動として伝達され、当該クラッチが動力遮断状態に切替えられる。と同時に、偏心軸152が最後端位置へと回動され、スライドプレート153が後方へと移動される。すると、図7に示すように、スライドプレート153の後端突部153aが第1操作部材143のレバー143bの上端部143dを後方へ押す。これにより、第1操作部材143は、操作部材本体部143aとレバー143bがトーションスプリング143cの付勢力によって一体とされた状態を維持しつつ取付軸142を中心にオン位置へと回動し、これにより第1スイッチ部141をオン状態とする。すなわち第1操作部材143は、スライドプレート153によってオン位置に強制的に固定される。
【0060】
この状態で、手指により第2操作部材145の押しボタン部145aを前方へ押すと、当該第2操作部材145が軸部145cを中心としてオン位置へと回動し、第2スイッチ部146をオン状態とする。これにより駆動モータ111が通電駆動されるが、当該通電駆動は、前述したように、第2操作部材145から手指を離しても維持される。このため、作業者は手指により第2操作部材145の押し操作を続けることなく、駆動モータ111を連続的に通電駆動し、運動変換機構113および打撃要素115を介してハンマビット119を直線状に打撃動作させ、被加工材に対してハンマ作業を連続的に行うことができる。第2ハンマモードT2は、本発明における「第1作業モード」に対応する。なお、ハンマ作業を止めるときは、第2操作部材145を再度押し操作する。これにより第2スイッチ部146がオフ状態とされ、駆動モータ111が停止される。
【0061】
この場合、電動ハンマドリル101は、ハンドグリップ109を把持し、本体部103にハンマビット119の長軸方向の押圧力を作用させつつハンマビット119を被加工材に押し付けて加工作業を行なう。このため、ハンマビット119を被加工材に押し付けたとき、ハンドグリップ109が回動軸163を中心として本体部103に接近する前方へと相対回動する。すると、第1操作部材143のレバー143bがスライドプレート153によって更に後方へと押され、トーションスプリング153cに抗して支点144を中心に回動し、その前面が操作部材本体部143aの後面から離間する。この状態が図3に示される。すなわち、第1操作部材143は、スライドプレート153によりオン位置に強制的に固定された状態において、当該スライドプレート153と弾発状に連結された状態となる。このため、ハンマ作業中に発生する振動で、スライドプレート153が本体部103と共に振動しても、スライドプレート153から第1操作部材143への振動伝達をトーションスプリング143cによって防止あるいは低減することができる。
【0062】
図8および図12は作業モード切替ダイヤル151が第1ハンマモードT1を選択した場合を示す。このときは、動力伝達機構117のクラッチが動力遮断状態とされる。と同時に、偏心軸152が前後方向の略中央位置に置かれる。このため、スライドプレート153は、第2ハンマモードT2のときの最後端位置からみると、前方へと移動される。従って、図8に示すように、スライドプレート153の連係体155が第2操作部材145の上端部145bに係合して前方へ押す。これにより、第2操作部材145が軸部145cを支点として前方のオン位置へ回動し、第2スイッチ部146をオン状態とする。
【0063】
一方、スライドプレート153の前方への移動により、スライドプレート153の後端突部153aが第1操作部材143のレバー143bから離れる。これにより第1操作部材143の固定が解除され、当該第1操作部材143の手指による操作が可能とされる。従って、手指により第1操作部材143の操作部材本体部143aを引き操作し、第1スイッチ部141をオン状態とすれば、駆動モータ111が通電駆動され、第1スイッチ部141の引き操作を解除すれば、駆動モータ111が停止する。第1ハンマモードT1では、動力伝達機構117のクラッチが動力遮断状態にあるため、駆動モータ111が通電駆動されると、ハンマビット119が直線状の打撃動作のみを行う。このように、第1ハンマモードT1では、第1操作部材143を手指により操作し、駆動モータ111を任意に駆動あるいは停止することが可能なため、ハンマビット119により被加工材に対するハンマ作業を断続的(単発的)に行うことができる。第1ハンマモードT1は、本発明における「第2作業モード」に対応する。
【0064】
図9および図13は作業モード切替ダイヤル151がハンマドリルモードHDを選択した場合を示す。このときは、動力伝達機構117のクラッチが動力伝達状態に切替えられる。と同時に、偏心軸152が第1ハンマモードT1のときよりも更に前方側に回動される。このため、図13に示すように、スライドプレート153が偏心軸152によって前方へ移動されるが、当該スライドプレート153に対してコイルスプリング154を介して連結されている連係体155は、第2操作部材145がオン位置に達した時点でそれ以上の移動を阻止されるため、コイルスプリング154を圧縮変形させつつスライドプレート153に対して相対移動する。これにより、第2操作部材145とスライドプレート153の移動量の差が吸収されることになる。第2操作部材145のオン位置への回動により第2スイッチ部146がオン状態とされる。
【0065】
一方、スライドプレート153が前方に移動されたときは、第1ハンマモードT1の場合と同様、スライドプレート153の後端突部153aが第1操作部材143のレバー143bから離れ、第1操作部材143の任意の手指操作が可能となる。また、ハンマドリルモードHDでは、クラッチ切替機構118を介して動力伝達機構117のクラッチが動力伝達状態とされる。従って、ハンマドリルモードHDでは、第1操作部材143を手指により操作し、駆動モータ111を任意に駆動あるいは停止させ、ハンマビット119に直線状の打撃動作と周方向の回動動作とを行わせ、被加工材に対するハンマドリル作業を断続的(単発的)に行うことができる。ハンマドリルモードHDは、本発明における「第2作業モード」に対応する。
【0066】
ここで、本実施の形態に係る電動ハンマドリル101の制御回路170に関し図14を参照しつつ説明する。図14には、本実施の形態の制御回路170の回路構成図が示されている。図14に示す制御回路170は、前述の駆動モータ111、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146に加え、コントローラ171によって構成されている。
【0067】
コントローラ171は、駆動モータ111を少なくとも制御する制御装置であって、回路電源部172、スイッチ検出回路173、演算・駆動部174、モータ制御回路電源部175、モータ制御部176、駆動回路177を含む構成とされている。コントローラ171は、「制御装置」に相当する。
【0068】
回路電源部172は、スイッチ検出回路173及び演算・駆動部174に対する外部電源の供給部分として構成される。スイッチ検出回路173は、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146のそれぞれが投入位置にあるか或いは非投入位置にあるかを検出するスイッチ検出回路として構成される。すなわち、このスイッチ検出回路173は、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の投入状態を検出する機能を果たす。
【0069】
演算・駆動部174は、スイッチ検出回路173における検出情報に基づいて演算を行なう演算部分と、この演算結果に応じてモータ制御回路を駆動する駆動部分とを含む。特には、この演算・駆動部174の演算部分は、電源投入状態における第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の投入状態によって、ハンマビット119による作業モードを判定する処理を少なくとも行なう。ここでいう「電源投入状態」には、電源投入がなされた状態を広く包含され、典型的には電源投入された直後の状態によって、この電源投入状態が形成される。要するにこの演算・駆動部174は、スイッチ検出回路173の検出結果に基づいて作業モードを判定する機能を果たす。演算・駆動部174によって、「作業モード判定部」が構成される。
【0070】
モータ制御回路電源部175は、モータ制御回路に対する外部電源の供給部分として構成される。モータ制御部176及び駆動回路177は、駆動モータ111の駆動を制御する機構を構成する。これらモータ制御部176及び駆動回路177によって、「駆動制御部」が構成される。
【0071】
上記構成のコントローラ171では、スイッチ検出回路173によるスイッチ検出結果に基づいて、電動ハンマドリル101が第1作業モード(前述の第2ハンマモードT2)に設定されているか、或いは第2作業モード(前述の第1ハンマモードT1若しくはハンマドリルモードHD)に設定されているかを演算・駆動部174が判定する。このような構成によれば、複数の作業モードのうちのどの作業モードに設定されているかを簡便に判定することが可能となる。特に、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の投入状態をスイッチ検出回路173によって直接的に検出することで、新たなスイッチ部を追加する必要がないため合理的である。
【0072】
以下、演算・駆動部174による電動ハンマドリル101の第1〜第4の判定結果につき説明する。
【0073】
(第1の判定結果)
電源投入時において第1スイッチ部141が投入位置にあり、且つ第2スイッチ部146が非投入位置にあることがスイッチ検出回路173によって検出されたときに、電動ハンマドリル101が第1作業モードであると判定される(第1の判定結果)。この第1作業モードでは、第1スイッチ部141が投入位置に固定されるとともに、第2スイッチ部146の投入位置と非投入位置との間の操作が有効とされている。そして、コントローラ171は、第1の判定結果に基づいて、作業モード判定後に非投入側の第2スイッチ部146が投入位置に操作されたときに駆動モータ111に駆動制御信号を出力する。これにより駆動モータ111が駆動開始される。なお、本実施の形態では、この第2スイッチ部146として特に、第2操作部材145の押圧操作時における電気的信号によって通電・遮断を行なう電子スイッチを用いることによって1クリック操作で駆動モータ111の駆動状態が継続可能とされている。この電子スイッチは、駆動モータ111のモータ電流を通電・遮断するための機械的接点を有していないスイッチとされる。このような電子スイッチによれば、第2のスイッチ部146のコンパクト化を図ることができるとともに、第2操作部材145を軽いタッチで押圧操作することが可能となるため操作性向上が図られる。この第1作業モードでは、駆動モータ111の駆動後に第2スイッチ部146が非投入位置に設定されると駆動モータ111の駆動が停止される。
【0074】
(第2の判定結果)
電源投入時において第1スイッチ部141が非投入位置にあり、且つ第2スイッチ部146が投入位置にあることがスイッチ検出回路173によって検出されたときに、電動ハンマドリル101が第2作業モードであると判定される(第2の判定結果)。この第2作業モードでは、第2スイッチ部146が投入位置に固定されるとともに、第1スイッチ部141の投入位置と非投入位置との間の操作が有効とされている。そして、コントローラ171は、第2の判定結果に基づいて、作業モード判定後に非投入側の第1スイッチ部141が投入位置に操作されたときに駆動モータ111に駆動制御信号を出力する。これにより駆動モータ111が駆動開始される。
【0075】
(第3の判定結果)
電源投入時において第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の双方が投入位置にあることがスイッチ検出回路173によって検出されたときに、電動ハンマドリル101が通常状態ではないと判定される(第3の判定結果)。具体的には、工具作業前のこのタイミングにおいて、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の双方が投入位置にある状態は、使用者の誤操作や粉塵堆積等によってスイッチが押されっぱなしの状態であるか、或いはスイッチ故障である。従って、この第3の判定結果に基づいた場合、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の双方が投入位置にあるとしても、駆動モータ111の駆動がコントローラ171により禁止される。
【0076】
このとき、警告ランプ等で使用者に現在の状態が通常状態ではないことを報知するように制御されるのが好ましい。また、複数の作業モードのうちのいずれの作業モードに設定されているかを照明によって報知するのが好ましい。本実施の形態では、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の双方が投入位置にあるとき、現在の状態が通常状態ではないことをライト167の照明によって報知することができる。この場合のライト167が、本発明における「報知部」に相当する。このような構成によれば、作業者は第2のスイッチ部146の投入状態をライト167によって容易に識別することが可能となる。このライト167の報知態様に関しては、単一色或いは複数色による照明が点滅したり点灯したりする態様を用いることができる。このライト167は、必要に応じて、第2のスイッチ部146が非投入状態であることを報知する態様、第2のスイッチ部146が投入状態であることを報知する態様、第2のスイッチ部146が非投入状態と投入状態との間で切り替わったことを報知する態様などを採り得る。その後、第1スイッチ部141と第2スイッチ部146のいずれか一方が非投入位置に設定されることによって、前述の第1作業モード或いは第2作業モードに移行する。
【0077】
(第4の判定結果)
電源投入時において第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の双方が非投入位置にあることがスイッチ検出回路173によって検出されたときに、電動ハンマドリル101が前述の第2ハンマモードT2とハンマドリルモードHDとの間のニュートラルモードにあると判定される(第4の判定結果)。このニュートラルモードでは、駆動モータ111の駆動が禁止された状態とされる。その後、このニュートラルモードから第1スイッチ部141と第2スイッチ部146のいずれか一方が投入位置に設定されることによって、前述の第1作業モード或いは第2作業モードに移行する。
【0078】
なお、スイッチ検出回路173によるスイッチ検出結果に基づく演算・駆動部174の判定は、電源投入状態において少なくとも遂行されればよく、前述のように電源投入時のタイミングで遂行されてもよいし、或いは通常の工具作業終了後等の適宜のタイミングにおいて遂行されてもよい。
【0079】
さて、本実施の形態に係る電動ハンマドリル101は、本体部103に対して下端側が回動軸163を中心にして前後方向に回動自在に連結され、上端側が振動吸収用のコイルバネ161によって連結された防振式のハンドグリップ109を備えている。このため、ハンマ作業あるいはハンマドリル作業時において、本体部103に生じた振動、特にハンマビット119の長軸方向の振動がハンドグリップ109側に伝達することをコイルバネ161によって低減することができる。
【0080】
第2ハンマモードT2を選択した状態での駆動時には、前述したように、ハンドグリップ109側に配置された第1操作部材143が本体部103側のスライドプレート153によってオン位置に強制的に固定されている。このため、剛体連結であれば、本体部103側の振動がスライドプレート153から第1操作部材143を経てハンドグリップ109に伝達されてしまうことになる。
【0081】
そこで、本実施の形態では、第1操作部材143につき、操作部材本体部143aとレバー143bによって構成するとともに、操作部材本体部143aとレバー143bをトーションスプリング143cによって連結する構成とし、トーションスプリング143cの弾性変形を利用してスライドプレート153から第1操作部材143への振動伝達を吸収する構成としている(図3参照)。すなわち、本実施の形態によれば、係る構成とすることで、第1操作部材143の防振構造につき、当該第1操作部材143側において合理的に構築したものである。これにより、第1操作部材143をオン位置に強制的に固定する第2ハンマモードT2と、第1操作部材143を作業者が任意に操作可能とする第1ハンマモードT1およびハンマドリルモードHDとの間での作業モードの選択を行なうモード選択機能と、ハンドグリップ109を本体部103に対してコイルバネ161によって接続する防振式のハンドグリップ109との両立を図ることが可能となった。
【0082】
この場合、本実施の形態では、レバー143bに対して組付け時に付与されるトーションスプリング143cの初期荷重につき、操作部材本体部143aをオン位置に操作して第1スイッチ部141をオン状態としたときに、当該第1スイッチ部141に内蔵されたオフ位置付勢用としてのスプリングに作用する荷重よりも大きく設定している。このため、第2ハンマモードT2の選択時において、第1操作部材143をオン位置に確実に固定した上で、トーションスプリング143cによる振動伝達の低減作用を得ることができる。
【0083】
なお、ハンマ作業を連続的に行う第2ハンマモードT2以外の作業モードでは、スライドプレート153による第1操作部材143の強制的な固定は解除される。このため、ハンドグリップ109への本体部103側からの振動伝達については、当該ハンドグリップ109と本体部103とを接続するコイルバネ161によって低減されることになる。つまり、本実施の形態に係る電動ハンマドリル101は、別の側面から見た場合、第2ハンマモードT2では、コイルバネ161とトーションスプリング143cによってハンドグリップ109の振動低減作用が遂行され、第2ハンマモードT2以外の作業モードでは、コイルバネ161のみによって振動低減作用が遂行される。すなわち、第2ハンマモードT2と第2ハンマモードT2以外の作業モードとでは、ハンドグリップ109の防振用バネ荷重が異なる構成であり、従って、このような構成を採用することで、作業モード選択機能と防振式ハンドグリップ109との両立を図ることが可能となる。
【0084】
また、本実施の形態では、第1ハンマモードT1あるいはハンマドリルモードHDを選択した場合において、第2操作部材145をオン位置へと押し操作するスイッチ操作用のスライドプレート153が、コイルスプリング154によって弾発状に連結された連係体155を介して第2操作部材145をオン位置へ押し操作する構成としている。このため、スライドプレート153の移動量と第2操作部材145の移動量の差を連係体155がスライドプレート153に対し相対移動することで吸収することができる。従って、スライドプレート153の移動量と第2操作部材145の移動量を、個々に任意に設定することが可能となり、設計上の自由度が高いものとなる。
【0085】
また、第1操作部材143は、スライドプレート153によってオン位置へと押し操作されたときに、ハンドグリップ109のハンドグリップ内部空間109bに収納される。また第2操作部材145は、スライドプレート153によってオン位置へと押し操作されたときに、本体部103の後方内部空間103aに収納される構成である。このため、作業者は第1操作部材143と第2操作部材145の、収納の有無の状態を目で見ることで、現在の作業モードが、連続的作業が可能な第2ハンマモードT2に選択されているか、それとも断続的作業が可能な第1ハンマモードT1あるいはハンマドリルモードHDに選択されているかを判別することができる。また、操作部の収納構造によって、スプリング(付勢手段)の付勢力が第1操作部材143や第2操作部材145を介して作業者に作用するのを防止することが可能となり、以って作業を円滑に行うのに有効とされる。
【0086】
第1操作部材143と、第2操作部材145は、互いに対向状に配置されている。このため、ハンドグリップ109を把持した手指による片手操作が可能である。また、ハンドグリップ109の前方、すなわち本体部103の後端部は、ハンマビット119から離間した領域であり、またハンマビット119側から見て、陰になる領域でもある。このため、ハンマ作業あるいはハンマドリル作業時に発生する被加工材(コンクリート)の粉塵の影響を受け難いものであり、防塵性が向上する。
【0087】
また、本実施の形態では、ハンマビット119の長軸線を挟んで両側に振動吸収用のコイルバネ161を配置し、それら両コイルバネ161の間にスライドプレート153を配置する構成としている。電動ハンマドリル101は、ハンドグリップ109を把持し、本体部103にハンマビット119の長軸方向の押圧力を作用させつつハンマビット119を被加工材に押し付けて加工作業を行なう。このため、上記のように、コイルバネ161をハンマビット119の長軸線を挟んで両側配置とすることで、ハンマビット119を被加工材に押し付けて作業する際のハンドグリップ109の安定性を得ることができる。また、コイルバネ161間にスライドプレート153を配置することで、合理的な配置構造が構築される。
【0088】
次に本発明の他の実施形態につき、図15および図16を参照しつつ説明する。この実施形態は、第1操作部材143に設けられる防振用のスプリングにつき、前述した実施の形態に係るトーションスプリング143cから圧縮コイルスプリング143fに変更したものであり、この点以外については、前述した実施の形態と同様に構成される。従って、前述した実施の形態と同様の構成部材については、同一符号を付してその説明を省略あるいは簡略する。
【0089】
図15および図16に示すように、第1操作部材143は、操作部本体部143aとレバー143bと圧縮コイルスプリング143fとを主体として構成される。レバー143bは、操作部本体部143aに支点(取付軸)144を中心としてハンマビット119の長軸方向に回動自在に取り付けられる。圧縮コイルスプリング143fは、レバー143bの下端部前面側と操作部本体部143aの後面側との間に配置され、レバー143bの上端側が前方に回動するように付勢力を作用している。そして、圧縮コイルスプリング143fの初期荷重は、前述した実施の形態におけるトーションスプリング143cと同様に設定される。圧縮コイルスプリング143fは、本発明における「弾性部材」および「圧縮スプリング」に対応する。
【0090】
従って、作業モード切替ダイヤル151が第2ハンマモードに切替えられた第2ハンマモードでの作業時には、後方へと移動するスライドプレート153の後端突部153aによってレバー143bの上端部143dが押されたとき、第1操作部材143は、操作部本体部143aとレバー143bが圧縮コイルスプリング143fによって一体化された状態のままで取付軸142を中心としてオン位置へと回動されるとともに、オン位置に強制的に固定される。この状態が図16に示される。かかる状態において、ハンマビット119を被加工材に押し付けると、レバー143bがスライドプレート153によって更に後方へと押され、圧縮コイルスプリング153cに抗して支点144を中心に回動し、その前面が操作部材本体部143aの後面から離間する。この状態が図16に二点鎖線で示される。かくして、第1操作部材143は、スライドプレート153によりオン位置に強制的に固定された状態において、当該スライドプレート153と弾発状に連結された状態となる。このため、ハンマ作業中に発生する振動で、スライドプレート153が本体部103と共に振動しても、スライドプレート153から第1操作部材143への振動伝達を圧縮コイルスプリング143fによって防止あるいは低減することができる。
【0091】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、適宜変形が可能である。本実施の形態では、スライドプレート153によって第1操作部材143がオン位置に強制的に固定された状態において、スライドプレート153と第1操作部材143とを弾性部材を介して連結する構成として、第1操作部材143上に防振用の圧縮スプリング143fあるいはトーションスプリング143cを設けたが、この構成に替えて、例えばスライドプレート153と第1操作部材143との間に弾性部材としてのバネあるいはゴムを配置する構成にしてもよいし、スライドプレート153上に弾性部材を組み込む構成にしてもよい。スライドプレート153上に弾性部材を組み込む構成は、例えばスライドプレート153の後方領域に対し弾性部材を介して第1操作部材143の押し込み部材を前後方向に相対移動可能に連結することで実現される。
【0092】
また、本実施の形態では、作業モード切替ダイヤル151の偏心軸152とスライドプレート153との連結構造につき、係合孔159を円弧状に形成することで、スライドプレート153の移動量と偏心軸152の前後方向成分の移動量とを異ならせる構成としたが、この構成に変え、係合孔159を前後方向と交差する方向に直線状に形成しても構わない。また、作業モードの切替え動作については、回動式から直線動作式に変更しても構わない。また、本実施の形態においては、ハンマビット119の作業モードとして第1ハンマモードT1、第2ハンマモードT2およびハンマドリルモードHDを有する場合で説明したが、これらの作業モード以外に更にハンマビット119に回転動作のみを行なわせるドリルモードを有する構成であっても差し支えない。
また、本実施の形態では、第2操作部材145につき、オン位置へと押し操作後、手指を離したときに当該第2操作部材145がオフ位置に自動復帰する構成としたが、押し操作後、手指を離してもオン位置に止まり、再度(次回)の押し操作によってオフ位置に戻る構成であってもよい。
【0093】
また、本実施の形態は、打撃工具として電動ハンマドリル101を例にして説明したが、ハンマビット119に打撃動作のみを行なわせるハンマに適用できることは勿論である。
【0094】
上記発明の趣旨に鑑み、下記のごとき態様が構成可能である。
(態様1)
「請求項1に記載の打撃工具であって、
前記可動部材は、移動方向において別体として形成された少なくとも2部材によって構成されるとともに、それら2部材が弾性部材によって連結されていることを特徴とする打撃工具。」
【0095】
(態様2)
「請求項7に記載の打撃工具であって、
前記係合領域は、前記ハンマビット側に湾曲する円弧状の係合孔によって構成されており、前記作業モード切替部材が第2作業モードから第1作業モードの切り替え動作されるときに前記偏心軸部が係合する側の係合面によって前記カム面が構成されていることを特徴とする打撃工具。」
【0096】
(態様3)
「態様2または請求項7に記載の打撃工具であって、
前記係合領域には、前記作業モード切替部材が第1作業モードから第2作業モードに切替えられる際、前記可動部材の前記工具ビット側への移動量を、前記偏心軸部のビット長軸方向成分の移動量よりも小さくするための逃がし部を有することを特徴とする打撃工具。」
【0097】
(態様4)
「請求項6に記載の打撃工具であって、
前記第2手動操作部材は、前記工具ビットの長軸方向と交差する方向に延在するとともに、前記可動部材から離れている側を支点として工具ビットの長軸方向に回動自在なレバー状部材によって構成されており、前記レバー状部材は、回動支点側がU形の受部材に挿入された状態で当該受部材によって回動自在に支持されていることを特徴とする打撃工具。」
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本実施の形態に係る電動ハンマドリルの全体構成を示す一部破断側面図である。
【図2】スイッチ操作用のスライドプレートの構成およびスライドプレートと振動吸収用のコイルバネの配置構成を説明する平面図である。
【図3】ハンドグリップ作動状態を示す断面図である。
【図4】図1のA−A線断面図である。
【図5】図1のB矢印方向から見た第2操作部材および受部材を示す図である。
【図6】作業モード切替ダイヤルにより操作されるスライドプレート、当該スライドプレートによって操作される第1操作部材および第2操作部材の作動態様を示す拡大断面図であり、ニュートラルモードが選択された状態を示す。
【図7】作業モード切替ダイヤルにより操作されるスライドプレート、当該スライドプレートによって操作される第1操作部材および第2操作部材の作動態様を示す拡大断面図であり、第2ハンマモードが選択された状態を示す。
【図8】作業モード切替ダイヤルにより操作されるスライドプレート、当該スライドプレートによって操作される第1操作部材および第2操作部材の作動態様を示す拡大断面図であり、第1ハンマモードが選択された状態を示す。
【図9】作業モード切替ダイヤルにより操作されるスライドプレート、当該スライドプレートによって操作される第1操作部材および第2操作部材の作動態様を示す拡大断面図であり、ハンマドリルモードが選択された状態を示す。
【図10】作業モード切替ダイヤルとスライドプレートの動作態様を示す図であり、ニュートラルモードが選択された場合を示す。
【図11】作業モード切替ダイヤルとスライドプレートの動作態様を示す図であり、第2ハンマモードが選択された場合を示す。
【図12】作業モード切替ダイヤルとスライドプレートの動作態様を示す図であり、第1ハンマモードが選択された場合を示す。
【図13】作業モード切替ダイヤルとスライドプレートの動作態様を示す図であり、ハンマドリルモードが選択された場合を示す。
【図14】本実施の形態の制御回路170の回路構成図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係る第1操作部材の構成を示す部分図であり、第2ハンマモード以外のモードが選択されたときの状態を示す。
【図16】同じく第1操作部材の構成を示す部分図であり、第2ハンマモードが選択されたときの状態を示す。
【符号の説明】
【0099】
101 電動ハンマドリル(電動工具)
103 本体部(工具本体)
103a 後部内部空間
105 モータハウジング
107 ギアハウジング
108 リアカバー
108a 開口部
109 ハンドグリップ
109a 上部側連接領域
109b ハンドグリップ内部空間
111 駆動モータ
113 運動変換機構
115 打撃要素
117 動力伝達機構
118 クラッチ切替機構
119 ハンマビット(工具ビット)
121 クランク軸
123 クランクアーム
125 ピストン
127 シリンダ
129 ストライカ
131 インパクトボルト
133 中間ギア
135 中間軸
137 第1ベベルギア
139 第2ベベルギア
141 第1スイッチ部
142 取付軸
143 第1操作部材(手動操作部材)
143a 操作部材本体部
143b レバー
143c トーションバネ(弾性部材)
143d 上端部
143e 角状の突起
143f 圧縮コイルスプリング(弾性部材)
144 支点
145 第2操作部材(第2手動操作部材)
145a 押しボタン部
145b 上端部
145c 軸部
146 第2スイッチ部
147 スプリング
148 ネジ
149 受部材
149a 爪部
149b U形の受部
151 作業モード切替ダイヤル(作業モード切替部材)
151a 回動軸線
152 偏心軸(偏心軸部)
153 スライドプレート
153a 後端突部
153b 長溝
153c 開口
153d 柱状ガイド
153e 後縁
154 コイルスプリング(第2弾性部材)
155 連係体
155a 柱状ガイド
157 連結部
159 係合孔
159a 後側係合面
159b 前側係合面
159c 逃がし凹部
161 振動吸収用のコイルバネ(防振用緩衝材)
163 回動軸
165 蛇腹
167 ライト
170 制御回路
171 コントローラ
172 回路電源部
173 スイッチ検出回路
174 演算・駆動部
175 モータ制御回路電源部
176 モータ制御部
177 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータを収容するとともに、先端領域に当該モータによって駆動される工具ビットが装着可能とされた工具本体と、
前記工具本体のうち前記工具ビットが装着される先端領域の反対側に配置された作業者が握るハンドルと、
前記工具本体と前記ハンドルとの間に配置され、前記工具本体と前記ハンドルとを前記工具ビットの長軸方向への相対移動可能に接続する防振用緩衝材と、
前記ハンドルに設けられ、前記モータに電流を通電する投入位置から前記通電を遮断する非投入位置側へと付勢されるとともに常時には非投入位置に置かれ、手指によって前記非投入位置と投入位置の間で操作可能とされたモータ駆動用の手動操作部材と、
前記工具本体に設けられ、前記工具ビットを連続的に駆動する第1作業モードと、前記工具ビットを任意に駆動する第2作業モードとの間で作業モードの切り替え操作が可能とされた作業モード切替部材と、
前記作業モード切替部材の切替操作により前記工具ビットの長軸方向に移動動作され、当該作業モード切替部材が前記第1作業モード側に切り替えられた場合には、前記ハンドルに近接して前記手動操作部材を非投入位置から投入位置側へと移動させるとともに当該投入位置に固定し、前記作業モード切替部材が前記第2作業モード側に切り替えられた場合には、前記ハンドルから離間して前記手動操作部材の前記固定を解除することにより、当該手動操作部材を非投入位置に復帰させて手指による操作を可能とする可動部材と、
を有し、
前記作業モード切替部材が前記第1作業モード側に切り替えられ、前記手動操作部材が前記可動部材により投入位置に固定された状態において、前記工具本体に生じた振動が少なくとも前記可動部材および前記手動操作部材を含む振動伝達経路を通じて前記ハンドルに伝達されることを防止するべく、前記振動伝達経路の任意の領域に防振用の弾性部材が配置されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項2】
請求項1に記載の打撃工具であって、
前記弾性部材は、前記手動操作部材を構成する1つの要素として備えられることを特徴とする打撃工具。
【請求項3】
請求項2に記載の打撃工具であって、
前記手動操作部材は、手指により操作可能な操作部材本体部と、当該操作部材本体部に前記工具ビットの長軸方向に相対回動自在に取り付けられたレバーと、当該レバーが前記工具ビット側に回動するよう付勢する圧縮スプリングとを有し、
前記手動操作部材は、前記作業モード切替部材が前記第1作業モードに切り替えられた場合には、前記可動部材によって前記レバーをハンドル側に向けて押されることで前記操作部材本体部が前記圧縮スプリングを介して投入位置へと移動されて当該投入位置に固定されることを特徴とする打撃工具。
【請求項4】
請求項3に記載の打撃工具であって、
前記操作部材本体部を前記非投入位置に向けて付勢する付勢部材を有し、
前記レバーを前記工具ビット側に回動させるように付勢する前記圧縮スプリングの取付荷重は、前記操作部材本体部を投入位置へと移動しおえたときに前記付勢部材に作用する荷重よりも大きく設定されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の打撃工具であって、
投入位置と非投入位置との間での移動によりモータの駆動と停止を行う第2手動操作部材を更に有し、
前記第2手動操作部材は、前記作業モード切替部材が前記第2作業モード側に切り替えられた場合には、前記可動部材によって非投入位置から投入位置側へと操作されるとともに当該投入位置に固定され、前記作業モード切替部材が前記第1作業モード側に切り替えられた場合には、当該可動部材による前記固定が解除されて手指による操作が可能とされる構成としたことを特徴とする打撃工具。
【請求項6】
請求項5に記載の打撃工具であって、
前記第2手動操作部材が前記可動部材により投入位置に固定された状態において、前記第2手動操作部材と前記可動部材が前記弾性部材とは別の第2弾性部材によって弾発状に連結されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の打撃工具であって、
前記作業モード切替部材は、前記工具ビットの長軸方向と交差する軸線回りに回動自在な回転操作式として構成されるとともに、前記軸線から所定距離だけ離間した位置で前記可動部材と係合して前記軸線回りに回動することにより当該可動部材を前記工具ビットの長軸方向に移動動作させる偏心軸部を有し、前記偏心軸部が係合する前記可動部材の係合領域には、前記作業モード切替部材が第1作業モードに切り替えられる際に前記作業モード切替部材の回動角に対する前記可動部材の工具ビット長軸方向への移動量を、前記偏心軸部の工具ビット長軸方向成分の移動量と異ならせるカム面が形成されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の打撃工具であって、
前記防振用緩衝材が前記工具ビットの長軸線を挟んで両側に配置され、それら両防振用緩衝材の間に前記可動部材が配置されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項9】
モータと、
前記モータを収容するとともに、先端領域に当該モータによって駆動される工具ビットが装着可能とされた工具本体と、
前記工具本体のうち前記工具ビットが装着される先端領域の反対側に配置された作業者が握るハンドルと、
前記工具本体と前記ハンドルとの間に配置され、前記工具本体と前記ハンドルとを前記工具ビットの長軸方向への相対移動可能に接続する防振用緩衝材と、
前記ハンドルに設けられ、前記モータに電流を通電する投入位置から前記通電を遮断する非投入位置側へと付勢されるとともに常時には非投入位置に置かれ、手指によって前記非投入位置と投入位置の間で操作可能とされたモータ駆動用の手動操作部材と、
前記工具本体に設けられ、前記工具ビットを連続的に駆動する第1作業モードと、前記工具ビットを任意に駆動する第2作業モードとの間で作業モードの切り替え操作が可能とされた作業モード切替部材と、
前記作業モード切替部材の切替操作により前記工具ビットの長軸方向に移動動作され、当該作業モード切替部材が前記第1作業モード側に切り替えられた場合には、前記ハンドルに近接して前記手動操作部材を非投入位置から投入位置側へと移動させるとともに当該投入位置に固定し、前記作業モード切替部材が前記第2作業モード側に切り替えられた場合には、前記ハンドルから離間して前記手動操作部材の前記固定を解除することにより、当該手動操作部材を非投入位置に復帰させて手指による操作を可能とする可動部材と、
を有し、
前記作業モード切替部材が第1作業モードに切り替えられた場合と第2作業モードに切り替えられた場合では、前記ハンドルの防振用バネ荷重が異なる構成としたことを特徴とする打撃工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−221327(P2010−221327A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70700(P2009−70700)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】