説明

打込み深さ調整手段を備える締結工具

【課題】本発明は、簡易な打込み深さ調整手段を有する手持ち式締結工具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の手持ち式締結工具は、ピンガイド(10)を通して支持材内に締結具を打ち込むシャフト(3)を有するピストン(1)を推進するエンジン(4)を具備し、ピストンの推進終了時であって停止手段に対する当接による停止時におけるピンガイド(10)から外側へのピストンのシャフト(3)の打込み深さを調整する手段(11、15)を備える。ピンガイド(10)は移動可能に取り付けれ、打込み深さを調整する手段は、調整用節部(11)であって、該調整用節部(11)の回転作用によりピンガイド(10、19、20)に対して当接してピンガイドを前方に押すように構成された節部用シャフト(15)を備える調整用節部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、釘止め式あるいはステープル止め式の手持ち式締結工具に関する。
【背景技術】
【0002】
このような工具は、燃料(具体的には、ガス状あるいは粉体状の燃料)の点火作用により打込み動作をもたらすべく構成される推進式エンジンとして称されうるものと、支持材内へ締結具を打ち込むためのロッドを備えるピストン(あるいは、重し)とを備える。
【0003】
工具の前方部分には、打ち込まれるべき締結具が配置される締結具ガイドがある。点火は、締結具ガイドを介して工具が支持材に対して当接された後のみにもたらされることができる。
【0004】
支持材内への締結具の侵入深さは、締結具の長さに依存し、また、発射終了時に締結具ガイドから外側に突出するピストンロッドの長さに依存する。したがって、打込み深さを、締結具の長さや、締結具のヘッド部の支持材内への埋め込みの必要性に応じて正確に調整したい、また、アクセサリーが支持材に固定される場合には該アクセサリーの破損の回避の要望に応じて正確に調整したい、あるいは同様に例えば、支持材の破損の回避あるいは損傷領域の形成の回避の要望に応じて正確に調整したい、という要望があることがわかっている。
【0005】
打込み深さ調整装置を提供することは既に提案されているが、それらは非常に複雑なものであった。第1部分が持ち上げられ、2本のネジが抜かれ、キーが移動され、ネジが再び締め込まれ、第1部分が所定位置に戻され、これらの全てが器具を使用してなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願 EP 1,934,018号
【特許文献2】米国特許 5,385,286号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、とりわけ簡易な調整装置を備える工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、手持ち式締結工具であって、ピンガイドを通して支持材内に締結具を打ち込むシャフトを有するピストンを推進する(押出す)エンジンを具備し、ピストンの推進終了時であって停止手段に対する当接による停止時におけるピンガイドから外側へのピストンシャフトの打込み深さを調整する手段を備える手持ち式締結工具に関し、ピンガイドが移動可能に取り付けれ、打込み深さを調整する手段が、調整用節部であって、該節部の回転作用によりピンガイドに対して当接してピンガイドを前方に押すように構成された節部用シャフトを備える調整用節部を有することを特徴とする。
【0009】
発射後であって推進終了時における工具のピストンの位置は、停止手段により事前設定され、ピンガイドが前方に押されれば押されるほど、ピストンシャフトの打込み深さは低減される。
【0010】
発射後に作業者が節部を多く回転させすぎたことに気付いた場合においては、次の発射前に、作業者が節部を逆方向に回転させ、新たな工具の当接時においては、ピンガイドは、良好な位置にて節部用シャフトに対して当接するように配置されるように戻される、ということは留意されるべきである。
【0011】
欧州特許出願 EP 1,934,018号の工具もまた、調整用節部を備えて打込み深さを調整する手段を有する。しかしながら、この節部は、一方の方向および他方の方向において直接的にセンサーロッドと協働し、節部と協働するセンサーロッドの部分は、非常に正確な調整を得られるようにネジ切りされている。米国特許 5,385,286号は、ほぼ同様のタイプの深さ調整手段を開示している。
【0012】
本発明の工具の好適な実施形態においては、推進エンジンは流体燃料による内燃機関とされ、工具のバレル(barrel)上にケージ用ヨーク(cage yoke)により滑動可能に取り付けられたケージにより閉鎖されうる燃焼チャンバー(燃焼室)を備え、ピンガイドが滑動可能に取り付けられ、燃焼チャンバーおよびケージが互いに一体化され、調整用節部がケージ用ヨーク上に回転可能に取り付けられる。
【0013】
好適には、節部用シャフトはケージ用ヨークのブリッジ(橋)にわたり延在し、節部を回転させることにより、ケージ用ヨークのブリッジにわたる節部用シャフトの平行移動をもたらす。
【0014】
好適には、節部用シャフトの前端部は、ケージ用ヨークに対する後方当接縁部を具備する。
【0015】
調整用節部は、割出し式回転をもたらすディスク部分であってケージ用ヨークと弾性的に協働するように構成されたディスク部分を有する。
【0016】
本発明は、添付された図面を参照する本発明の工具の好適な実施形態の以下の記載から、より良く理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】発射後であってピストン推進終了時の閉鎖状態であって、ピンガイドから外側のピストンの打込み深さを有していない状態における、工具の前部部分の斜視図である。
【図2】本工具の図1と同様の図であって、4分の1の部分の軸方向断面を含んで示された図である。
【図3】本工具の図1と同様の図であって、ピストンガイドの外側からピストンが突出している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に記載される手持ち式工具は、いわゆるガス式釘打ち機と称されるものであり、すなわち、プランジャーあるいはピストン1を前方へ推進して、本実施形態の釘のような締結具を支持材内へ打ち込むために、本実施形態のようなガス状の燃料と空気のような酸化剤との混合物を燃焼させる燃焼チャンバーを備える。ピストン1は、ヘッド部2とシャフト3とを有する。ヘッド部2は、シリンダー4内における混合物の点火作用により、停止ダンパー5に対して当接するまで平行移動可能に取り付けられる。点火前に、ケージ6の移動により燃焼チャンバーは閉鎖され、該ケージ6は、ヨーク8にて固定されるアーム7により延長され、ヨークと一体化される。ピストンシャフト3は、バレル9内にて平行移動可能に取り付けられ、該バレル9はピンガイド10により前方に延在し、該ピンガイドは、本実施形態においては入れ子式にバレル9内に移動可能に取り付けられ、発射する事前に、釘が導入される。ケージ用ヨーク8は、バレル9の周囲に滑動可能に取り付けられる。工具は、ピンガイド10の前方端部100の外側へのピストンシャフト3の前方端部30の打込み深さを調整する節部(knurl)11を有し、このような打込み深さは、発射後においてピストンがダンパー5に対して当接してヘッド部2により停止されるような推進終了時に調整される。図1及び図2においては、打込み深さがゼロに調整されている。
【0019】
節部11は、節部用シャフトの後方シャフト部分14及び前方シャフト部分15のためのベアリングとして作用するケージ用ヨーク8の前方ブリッジ13と後方ブリッジ12との間に回転可能に取り付けられる。節部用シャフトの後方シャフト部分14は、チャンバー(室)の当接スプリング16のためのガイド(案内)として作用し、スプリング16が座屈することを防止し、工具が当接されるときやチャンバーが開放されるときにチャンバーの閉鎖体で生じるスプリング(バネ)とのチャンバーの当接を防止する。
【0020】
節部11の前方シャフト部分15は、その端部にバッファーガイド10のためのスラストディスク(thrust disk)17を有し、該スラストディスクの周辺縁部は、ケージ用ヨーク8の前方ブリッジ13に対する後方支持縁部18を形成する。節部用シャフト15のスラストディスク17と協働するために、ピンガイドは、節部用シャフト15のスラストディスク17の推力を受けるための当接ディスク20を後方端部に備える脚部19を有する。
【0021】
調整用節部11は、その前方部にて、節部の残りの部分と弾性的に接続される割り出しディスク21を形成するように部分的に横方向スリットが入れられ、該割り出しディスク21は、スリットの幅を低減して割り出し位置から割り出しディスクを開放しうるように、節部の主部分に対して後方に変形されうる。具体的には、節部11の割り出しディスク21は軸線方向に突出するボス22を有し、該ボスは、ケージ用ヨーク8の前方ブリッジ13の対応凹み部23内に収容されうるように構成される。
【0022】
節部11が回転されると、節部用シャフトは前方に平行移動され、ケージ用ヨーク8の前方ブリッジ13を介して節部の前方シャフト部分15のスラストディスク17とピンガイド10の脚部19の支持ディスク20とにより、ピンガイド10も前方に平行移動される。
【0023】
節部が回転されるときに節部用シャフトを平行移動させる実施形態には種々の形態の可能性が考えられる。前方シャフト部分15に雄ネジが形成され、ケージ用ヨーク8の前方ブリッジ13に雌ネジが形成されてもよく、畝(land)や溝や四角物(squares)や他のピンを介して節部11によりシャフトが回転されてもよい。均等な手段としては、例えば2つのシャフト及びブリッジ部材のいずれか一方のシャフト上のフィンガー(指部)であって、両部材の他方の部材上のガイド通路内に案内されるようなフィンガーが考えられる。
【0024】
スラストディスク17を備える前方シャフト部分15により、節部11は、ピンガイド10の脚部19を前方に押し、ピンガイドの前方端部100の端部横断面と、ピストンシャフト3との間の距離を低減することを可能とする。ピンガイドが前方に移動されすぎると、続く工具の当接により補償されうる。
【0025】
図1及び図2においては、ピンガイドから外側へのピストンシャフト3の突出は、ゼロに調整される。
【0026】
図3における図1及び図2の参照番号と同じ参照番号は同様の要素を示すものであり、図3においては、推進終了後であって停止時におけるピストンシャフト3が、節部11の更なる回転移動によりもたらされた軸線方向の小距離dにてバッファーガイドの外側から突出する。
【0027】
一方向あるいは他方向に節部11を回転させるためには、割り出しディスク21を後方に押し戻し、節部を回転開始させることで十分である。節部の割り出し位置は、割り出しディスク21上のボス22の数量、及び、ケージ用ヨーク8の前方ブリッジ13における凹み部23の数量に依存する。
【符号の説明】
【0028】
1 ピストン
3 シャフト
4 シリンダー
10 ピンガイド
11 調整用節部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち式締結工具であって、ピンガイド(10)を通して支持材内に締結具を打ち込むシャフト(3)を有するピストン(1)を推進するエンジン(4、6)を具備し、前記ピストンの推進終了時であって停止手段に対する当接による停止時における前記ピンガイド(10)から外側への前記ピストンの前記シャフト(3)の打込み深さを調整する手段(11、15)を備える手持ち式締結工具において、
前記ピンガイド(10)は移動可能に取り付けれ、
前記打込み深さを調整する手段は、調整用節部(11)であって、該調整用節部の回転作用により前記ピンガイド(10、19、20)に対して当接して前記ピンガイドを前方に押すように構成された節部用シャフト(15)を備える調整用節部を有する、ことを特徴とする締結工具。
【請求項2】
前記推進エンジンは、流体燃料による内燃機関とされ、工具のバレル(9)上にケージ用ヨーク(8)により滑動可能に取り付けられたケージ(6)により閉鎖されうる燃焼チャンバーを備え、前記ピンガイド(10)が滑動可能に取り付けられ、前記燃焼チャンバーおよび前記ケージ(6)が互いに一体化され、前記調整用節部(11)が前記ケージ用ヨーク(8)上に回転可能に取り付けられる、請求項1に記載の締結工具。
【請求項3】
前記節部用シャフト(15)は、ケージ用ヨーク(8)のブリッジ(13)にわたり延在し、前記調整用節部(11)を回転させることにより、ケージ用ヨーク(8)のブリッジ(13)を通した前記節部用シャフト(15)の平行移動をもたらす、請求項1または請求項2に記載の締結工具。
【請求項4】
前記節部用シャフト(15)の前端部は、前記ケージ用ヨーク(8)に対する後方当接縁部(18)を有する、請求項1から請求項3のいずれか一つの請求項に記載の締結工具。
【請求項5】
前記調整用節部(11)は、割出し式回転をもたらすディスク部分(21)であって前記ケージ用ヨーク(8)と弾性的に協働するように構成されたディスク部分を有する、請求項1から請求項4のいずれか一つの請求項に記載の締結工具。
【請求項6】
前記節部用シャフト(15)は、その端部に前記ピンガイド(10)のためのスラストディスク(17)を有する、請求項1から請求項5のいずれか一つの請求項に記載の締結工具。
【請求項7】
前記ピンガイド(10)は、当接ディスク(20)を後方端部に備える脚部(19)を有する、請求項6に記載の締結工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−121168(P2011−121168A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273824(P2010−273824)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(506380787)ソシエテ ドゥ プロスペクティオン エ ディンベンティオン テクニク スピ (14)
【Fターム(参考)】