説明

抄紙機に用いるエンドレスベルト用の基材

本発明による抄紙機のエンドレスベルト用の基材は、ポリマー又はゴム材料でコート又は含浸した複数の成形層を有する。各成形層は、繊維材料であってもよい。少なくとも1つの層は、成形強化成分のマトリックスを有する。各層は、ポリマー樹脂又はゴム材料で最初にコートされ、その後、ベルトの基材を形成するように、結合/スタックされ、且つ硬化/結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙工業用のプロセスベルトに関する。特に、成形成分の個々の層は、ポリマー樹脂で最初にコート又は含浸され、その後、抄紙機に適用するためベルトの基材を形成するように組み合わされる(combine)。さらに特に、本発明による基材は、ポリマー樹脂材料でコート又は含浸された複数の成形層を有する積層体であってもよい。各成形層は、繊維層又は樹脂でコート又は含浸された繊維層であってもよい。
【背景技術】
【0002】
製紙工程中、セルロース製繊維ウェブは、繊維スラリー、つまりセルロース製繊維の水性懸濁液を、抄紙機の形成部において移動する形成布上に堆積させて形成される。この形成布を介して、スラリーから、大量の水が排出され、形成布の表面上にセルロース製繊維ウェブが残存する。
【0003】
新規に形成されたセルロース製繊維ウェブは、形成部から一連のプレスニップを有するプレス部へと進む。セルロース製繊維ウェブは、プレス布で支持されたプレスニップ又は場合によっては斯かる2つのプレス布間を通過する。プレスニップにおいて、セルロース繊維ウェブには、圧縮力がかけられ、水を絞り出し、且つセルロース製繊維ウェブから紙シートへとするように互いにウェブにおいてセルロース繊維が接着する。この水は、プレス布又は布に受容され、理想的には、紙シートに戻らない。
【0004】
紙シートは、最終的に、蒸気で内的に加熱される少なくとも一連の回転可能乾燥ドラム又はシリンダーを有する乾燥部へと進む。新規に形成された紙シートは、ドラムの表面に近接して紙シートを保持する、乾燥布により、上述の一連のドラムの周囲に連続するセルペンタイン路(serpentine path)に向けられる。この加熱されたドラムは、紙シートの水分含量を、蒸発により所望のレベルにまで低下させる。
【0005】
形成布、プレス布及び乾燥布の全ては、抄紙機上でエンドレスループの形態を取り、コンベアの機能を有することを理解すべきである。さらに、製紙工程は、かなりの速度で進行する連続工程であることも理解すべきである。つまり、上述の繊維スラリーは、形成部において形成布上に連続的に堆積される一方、新規の製造された紙シートは、乾燥部から出た後、ロール上に連続的に巻き取られる。
【0006】
これら布は、一般的に、織布又はその他の種類の基礎布を有する。さらに、これら織基礎布は、他により形成されたエンドレスループ内で少なくとも1つの基礎布を配置してプレス布の場合のように他に結合するようにこれら基礎布を介して人造繊維バットを針状化(needling)して積層されてもよい。これら織基礎布は、機械上で継ぎ合わせ可能なタイプであってもよい。いずれにしても、これら布は、長手方向に測定した特定の長さと、これを横切る方向に測定した特定の幅とを有する、エンドレスループの形態であり、或いは、斯かる形態に継ぎ合わせ可能なものである。
【0007】
螺旋に巻かれた布(Rexfeltらによる特許文献1参照。)、編地及び積層された布を含む種々の適用例において、適当な位置にヤーンを保持し布を互いに結合する機構が必要である。例えば、人造繊維バッティング(staple fiber batting)は、布を共に保持するように、多層プレス布を介して針状化されてもよい。他の方法としては、布を結合又は成形することが含まれる。
【0008】
製紙工業のプロセスベルトに使用する種々のタイプの布が提案されている。多くのベルトは、水や油に対して不透過性を付与するため、樹脂で含浸された基材で構成される。いくつかのベルトは、ゴム又はポリウレタンのシートを採用して、これらに、ベルトを形成するように基材に熱及び圧力をかけて形成されてもよい。また、製紙工程に使用するロールカバーを形成するように、積層技術を使用してもよい。
【0009】
製紙工業用のプロセスベルトに適用可能な積層された基材のいくつかの例は、以下の通り提案されている。
【0010】
特許文献2は、高い引張強度が必要なベルトに使用する強化積層体を製造する工程を示す。このベルトは、螺旋に巻かれ基礎の横方向のマージン間に延びるねじ山(screw thread)又はスレッドである連続した強化コードを積層して作製される。このベルトは、巻かれた残骸上に配置された上部プライ(top ply)により最終仕上げされ、統合したベルト構造を形成するように熱と圧力とでその後硬化される。
【0011】
特許文献3は、複合積層体を示す。この積層体は、熱溶解型熱可塑性材料と、人造繊維で初期に構築されたスパンヤーンで形成された織布材料とを有する。これらは、ベルトを形成するように熱と圧力とを用いて互いに組み合わされる。
【0012】
特許文献4は、疎水性などの異なる特性を有する各層で、支持体構造として、積層された多層の成形シートを有するプレス布を開示する。また、プレス布用の基材を形成するように螺旋に巻かれ、或いは平行なストリップに配置された種々の「準組立体(subassembly)」を開示する。この組立体は、積層を含む技術で形成される。
【0013】
特許文献5は、通気性又は溝の排水性の崩壊を阻止するように、互いに相対して異なる硬度を有する第1及び第2の積層体を有する溝を有するシュー型のプレスベルトを開示する。
【0014】
特許文献6は、溝を有する外部表面を有する層を螺旋に巻き取ることにより組立てられる積層された長いニップを有するプレスベルトを開示する。
【0015】
特許文献7は、コア部材と弾性積層体層とからなるエンドレス型のコンベアベルトを示す。これらの層は、熱と圧力とを用いてともに結合させるプレス機を通過される。
【0016】
特許文献8は、ベルト用の支持構造を形成するように、螺旋に巻き取られた基礎布とその他の種類の材料とを有する積層体を教示する。
【0017】
さらに、特許文献9に示されるように、シュー型の長いニップを有するプレスベルトは、特別なベルトを必要とする。このベルトは、静止する圧力シュー上を直接摺動接触することによりもたらされる加速した摩耗から、紙ウェブを支持し運搬し脱水するプレス布を防御するように設計される。斯かるベルトは、ベルトがプレス布と略同程度の速度でニップを介して移動しつつその周面に含まれる油を保持するにつれ、油の潤滑膜上に静止するシュー上に乗り上げ、或いは摺動する表面に平滑且つ不透過性を付与されるべきである。
【0018】
特許文献9に記載の種類のベルトは、通常エンドレスループの形態の織基礎布を合成ポリマー樹脂で含浸して典型的に製造される。この樹脂は、基礎布が織られるヤーンが上述の長いニップを有するプレスベルトのアーチ状の圧力シュー成分と直接接触することを防御され得るように、ベルトの内部表面上に少なくとも所望の厚みを有するコーティングを好ましく形成する。このコーティングは、特に、潤滑されたシューに対して簡単に摺動するように、且つベルトの構造体から種々の潤滑油が浸透してプレス布又は布及び繊維ウェブを汚染するのを阻止するように、平滑で且つ不透過性の表面を有しなければならない。
【0019】
特許文献9に記載のベルトの基礎布は、単繊維から単一又は多層の編物に編まれてもよく、且つ含浸材料がこの編物を全体的に含浸することを可能とするのに十分開口されるように、編まれてもよい。これにより、最終的なベルトに形成する可能性のある種々のボイドが消失する。斯かるボイドは、ベルトとシューとに使用される潤滑剤がベルトを通過し、且つプレス布又は布及び繊維ウェブを汚染することを可能とするものであってもよい。
【0020】
上述の含浸材料が固体状に硬化される場合、機械的な連結により上述の基礎布を最初に結合し、硬化された含浸材料は、基礎布のヤーンを取り巻く。加えて、この硬化された含浸材料と基礎布のヤーンの材料との間を化学的に結合又は接着してもよい。
【0021】
伸長されたニッププレスにおいて紙ウェブを脱水中に発生する問題は、ニップの前方のベルトにおいて、隆起が発達する点であり、これにより、基材から樹脂が剥離するというベルトの欠損が発生する。この問題は、特許文献10及び11において認識されている。熱可塑性又は熱硬化性ポリマー材料で基礎布を含浸することにより、この問題が克服することを、特定のベルト構造体で示唆されている。
【0022】
特許文献9に記載のベルトの基礎布を織るのに使用される単繊維は、円形の断面を有する。この単繊維は、細長いシリンダーの形態であると考えてもよい。円形の断面が特定の規定された表面領域を単繊維に与えることは、周知である。さらに、上述の硬化された含浸材料と基礎布との間を機械的に連結する強度並びに種々の化学的結合及び接着の強度は、基礎布のヤーンが円形断面を有する場合、最小限となる。結果として、基礎布からのコーティングの剥離が発生する可能性がある。
【0023】
剥離の問題に対する解決法は、表面領域を増加させ、且つ基礎布を構築するヤーンの断面形状を変更することにより、与えられる。硬化された含浸材料と基礎布との接続は、非円形の断面を有するヤーンを用いて、強化される。
【0024】
さらに、先行技術(例えば、特許文献9)において、ポリマー樹脂でコート又は含浸された織布を有する長いニップを有するプレスベルトは、基材を樹脂で最初にコート又は含浸し、その後コート又は含浸された基材を硬化して、ベルトを形成することにより、製造される。ところが、本発明では、織布基材の個々の成分/層をポリマー樹脂で最初にコーティング又は含浸し、基材を形成するように、このようにコート又は含浸された成分/層を組合せ、且つその後ベルトを形成するように基材を硬化することにより、優れたベルト製品が得られる。
【特許文献1】米国特許第5,360,656号明細書
【特許文献2】米国特許第3,673,023号明細書
【特許文献3】米国特許第4,109,543号明細書
【特許文献4】米国特許第4,541,895号明細書
【特許文献5】米国特許第4,908,103号明細書
【特許文献6】米国特許第5,208,087号明細書
【特許文献7】米国特許第5,240,531号明細書
【特許文献8】米国特許第5,792,323号明細書
【特許文献9】米国特許第5,238,537号明細書
【特許文献10】米国特許第4,229,253号明細書
【特許文献11】米国特許第4,229,254号明細書
【特許文献12】米国特許第5,750,151号明細書
【特許文献13】米国特許第5,753,085号明細書
【特許文献14】米国特許第6,362,300号明細書
【特許文献15】米国特許第5,976,307号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、ポリマー性のコーティング/含浸材料が個々の層の一部となった複数の成形層を有する積層体を提供する。各成形層は、「布地層(textile layer)」又は樹脂でコート又は含浸された布地層であってもよい。成形成分の個々の層は、ポリマー樹脂で最初にコート又は含浸され、その後、抄紙機に適用し得るベルトの基材を形成するように組み合わされる。つまり、この基材は、ベルトを実際に構築するために製造するのに先だってコート又は含浸される個々の成分を有する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明において、少なくとも一つに強化剤を有する上述の個々の成分は、ポリウレタンなどの液体のポリマー樹脂などの種々の適当なコーティング又は含浸材料でコート又は含浸されてもよく、その方法は、例えば、特許文献9に開示の所定の方法などであってもよく、樹脂が布に流動するのに十分な温度で、ポリマー樹脂を用いて上述の基礎構造を加熱する方法を含む。
【0027】
上述の通り例えばポリマー樹脂でコート又は含浸された成形成分の層は、積層体を形成するように、積層され、且つ結合される。この積層体は、細糸(fine yarn)を用いて、層を結合し或いは本技術分野公知の針状化技術(needling technique)により、得てもよい。また、この積層体は、1つ以上の織層に熱可塑性樹脂を導入し、且つこの熱可塑性樹脂が流動し層化された成分の結合が起こるのに十分な温度で基材をさらすことにより、得てもよい。
【0028】
同様に、本発明の工程において、「プレポリマー及び硬化剤」のマトリックスを有する繊維ウェブの層は、この構造体を適当な硬化温度とすることにより、或いはこの構造体中で化学的硬化及び硬化反応を惹起することにより、積層され、且つ結合されてもよい。この積層された基材の特定及び使用の要件、例えば、シュー型プレスベルト又はシート支持体のような脱水性や、ニップにおける均一な圧力分布や、紙のシートを一箇所から他の箇所へと移動するのが簡単なようにする特性は、トランスファーベルトの場合におけるこれら工程に適用可能なように、予め決定されていてもよい。言い換えれば、特定の所定の特性(ベルトのフェース及びシュー側又はフェースや背面における異なる特性を含む)を有するベルトは、基材を形成するのに使用する「層」又は構造を変更して、製造されてもよい。
【0029】
基材の個々の成分は、単繊維、多重繊維、諸より単繊維(plied monofilament)、連続的で微細なフィラメント(continuous fine filament)及び人造繊維から形成されてもよい。これらの単繊維は、単一の連続したフィラメントを有してもよく、これらは、ポリアミドやポリエステルなどの合成ポリマー材料を有し、約0.004〜0.06インチの径を有し、撚られていても、撚られていなくてもよい。上述の多重繊維は、微細で連続した複数のストランド(strand)と、一般にいくらか高度に撚られたストランドの束(bundle)から構成された柔軟性を有するヤーンを有してもよい。上述の人造繊維は、カーディングやスパンボンドなどの種々の織物技術の一つにより層に形成される比較的短い繊維を有してもよい。スパンボンドされたウェブ及びその調製方法は、本技術分野において周知である。例えば、Bregnalaによる特許文献12は、工業用のポリオレフィン(ポリプロピレン)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド(ナイロン−6)及びポリウレタンなどの熱可塑性ポリマーに由来する多重繊維の成形によるスパンボンドウェブの構築法を述べる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図面を参照すると、図1は、本発明の教示による抄紙機に使用する長いニップのプレスベルトの積層された基材1を示す。基材1は、表面層2と、中間層3と、強化中央コア4と、バッキング層5とを有する。各層は、個々に、ポリマー樹脂でコートされ、組み合わされ(combined、以下同様)、且つ本技術分野公知の方法を含む種々の方法で固定されており、この複合体は、抄紙機に適用可能なベルトの基材を形成する。
【0031】
本発明のベルトの基材は、複数の成形層を有する積層体であって、ポリマー性のコーティング又は含浸材料が、少なくとも1つの個々の層の一部である。また、このポリマー性のコーティング又は含浸材料は、他の各層の一部であってもよい。各成形層は、「布地層」又は樹脂でコート/含浸された布地層であってもよい。これら個々の層は、ポリマー樹脂で最初にコート/含浸され、その後、抄紙機に適用するためにベルトの基材を形成するように組み合わされてもよい。この布地性の基材の各層のコーティング/含浸は、Fitzpatrickによる特許文献13に記載の工程により、実行されてもよい。この文献は、抄紙機用の長いニッププレスベルトを提供するものであって、少なくともひとつの側面上にポリマー樹脂材料で含浸及びコートした布地基材を有するものである。このポリマー樹脂材料は、平滑な表面と均一な厚みとを有するベルトを提供するように硬化された後、研磨(ground)され、且つ磨かれる(buffer)。この布地基材は、複数のローブを有する、非円形の断面を有する布地成分(単繊維、連続した微細なフィラメント又は人造繊維)を含む。斯かる断面は、この布地成分に円形断面を有する同等のデニールの成分で提供されるものよりも大きな表面領域を提供する。結果として、この布地基材に対するポリマー樹脂コーティングの機械的連結性並びに化学的結合及び接着性は、強化される。加えて、複数のローブを有する非円形断面を有する布地成分は、ひとつの側面に適用されるポリマー樹脂材料が他面に流動するのを阻止し得るように、布地基材の透過性を低下させる。個々の層の組合せ及び各層の積層は、柔軟性接着剤で接着するのに加えて、加熱ロール、ホットエアボックス若しくはチャンバー又は熱を適用するその他の方法により、好ましく行われる。代替的に、各層は、個々の層間の化学的反応を惹起することにより、共に積層されてもよい。
【0032】
本発明によるベルトの基材の少なくとも1つの層は、製紙工程中、機械方向(MD)及び機械を横切る方向(CD)(長手方向及び横方向)のいずれにおいても安定性をベルトに提供するように、強化材料の成分で強化されてもよい。図1において、強化中央コア4は、この強化材料を含む。
【0033】
上述の布地基材は、単一又は複合的な単一若しくは多層の編みの織物であってそのヤーンがポリエステル若しくはポリアミドなどのポリマー樹脂材料である織物、連続したフィラメントのMD(機械方向)若しくはCD(機械を横切る方向)の不織マトリックス、繊維の不織シース(nonwoven sheath)、フィルム若しくは成形メッシュ、又はこれらを組み合わせたものとして、構築されてもよい。
【0034】
また、ポリマー樹脂材料は、布地基材を含浸し、上述の層に油や水に対して透過性を付与する。このポリマー樹脂材料は、ポリマー樹脂材料が上述の布地基材上にさらに適用される以下の工程に続く硬化工程の間、泡の形成を阻止するように、ポリウレタン、好ましくは100%の固体成分であってもよい。硬化後、このポリマー樹脂材料は、上述の層を平滑な表面で均一な厚みを有するように、研磨されてもされなくてもよく、且つ磨かれても磨かれなくてもよい。上述の布地基材の両側面がポリマー材料でコートされるところで、この両方の層上で硬化されたコーティングは、平滑な表面と均一な厚みとを有するように、研磨され且つ磨かれてもよい。このポリマーコーティング材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はゴム材料であってもよい点に留意する。例えば、コーティング材料として、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びシリコーンは、使用可能な樹脂である。
【0035】
本発明における工程には、上述の表面層2、中間層3、強化中央コア4又はバッキング層5の一つ以上の成分に(ポリマーを形成するように)熱可塑性又はプレポリマー及び硬化性ポリマーを導入するステップを有する。又は、上述の各層間で熱可塑性ポリマーであってもよい可能性のある材料の層を導入し、上述の表面層2、中間層3、強化中央コア4又はバッキング層5の成分を組合せ、且つこの組合せを積層工程において上昇された温度と圧力にさらすことにより、上述の表面層2、中間層3、強化中央コア4又はバッキング層5の成分を結合するステップを有する。上昇された温度において軟化し流動する種々の熱可塑性ポリマーは、コーティング又は含浸樹脂として使用されてもよい。
【0036】
プレポリマーを硬化するプレポリマー硬化剤工程は、本技術分野において述べられている。例えば、モルフォリン触媒の存在下でウレタンプレポリマーを湿気硬化する工程は、特許文献14に開示され、硬化ウレタンアクリレートプレポリマーのコーティングは、特許文献15に報告されている。
【0037】
特許文献14は、シラン付加物を含有する一成分の湿気硬化型ポリウレタン組成物に関する。この文献では、この組成物は、硬化条件を変更しても接着不良は発生せず、この組成物は、種々の材料、特にガラスやアルミなどに優れた接着性を示し、先に適用された例はないと述べる。さらに、この文献において、この組成物は、優れた硬化性と、高い発泡耐性と、良好な伸長性とを示すと述べる。この湿気硬化型ポリウレタン組成物は、ウレタンプレポリマーと、ジモルフォリノジエチルエーテル(i)及びN,N−ジメチルアミノエチルモルフォリン(ii)を有するモルフォリン触媒とを有する。このポリウレタン組成物において、ジモルフォリノジエチルエーテル(i)のポリウレタン組成物における含量は、重量比で0.15%未満であることが好ましく、N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリン(ii)のポリウレタン組成物における含量は、重量比で0.04〜2%であることが好ましい。
【0038】
特許文献15では、外皮フレームをフォトマスクプレートから除去する方法及び装置を開示しており、この外皮フレームは、接着材料により、フォトマスクプレートの表面に接着されている。この外皮フレームとフォトマスクプレートとを分離するように応力を適用して、この接着材料に応力が適用される。外皮フレーム接着されている表面と逆のフォトマスクプレートの第2の表面は、接着材料の温度を上昇させ、且つ外皮フレームの温度よりもフォトマスクプレートの温度を上昇させるように、加熱される。この接着材料に対する応力は、接着材料がフォトマスクプレートから外皮フレームを開放するまで、その後保持される。
【0039】
加えて、上述の基材の全体には、上述の個々の各層のコーティングと同様の様式で、ポリマー樹脂でさらにコート又は含浸されてもよい。代替的に、この基材は、プレポリマー及び硬化剤でコート又は含浸されてもよい。また、ポリマーの硬化を達成するように室温又は加熱状態で保持されてもよい。上述のプレポリマーの硬化は、硬化工程を調節するように、上述のマトリクスに触媒を導入して、達成されてもよい。この硬化工程は、ベルトの前面及び背面上に異なる特性を有する所望の特性を有するベルト製品の基材を提供するように、プレポリマー及び硬化材料並びにこの工程の条件を選択することにより、調節されてもよい。
【0040】
本発明による基材の主要な機能は、ベルトに方向安定性を付与することである。さらに、本発明による基材は、追加のポリマー樹脂材料が続いて適用されてもよい十分なボイドと表面領域とを提供してもよい。本発明による基材は、また、任意で異なるポリマー樹脂材料のコーティング用に反対側面上に十分なサイトが利用可能なように、基材の反対側面にポリマー樹脂材料の透過を阻止してもよい。
【0041】
さらに、ベルトの外部表面が所定の厚みの樹脂コーティングを有する場合、上述の基材の層のいくつかを曝露することなくその表面上に、溝、ブラインドドリルされたホール(blind−drilled hole)又はその他のキャビティーが形成されるようにしてもよい。これらの特徴は、プレスニップにおいて紙ウェブから圧縮された水の一時的な貯蔵場を規定し、上述の樹脂コーティングの硬化の後に行われる異なる製造ステップにおいて、溝を形成したり穿孔(drill)したりすることにより、通常製造される。本発明におけるベルトは、その外部表面に、溝やブラインドドリルされたホールなどを有してもよい。
【0042】
本発明による上述の実施例は、抄紙機用のコートされたプロセスベルトに関する基材又は基礎基材用のプレアッセンブリについて述べてきた。本願に使用する基材の構造は、織物や、織地、成形メッシュ、スパイラルリンク、MD若しくはCDヤーンアレイなどの不織材料、織材料及び不織材料の螺旋巻きストリップなどを含む。これらの基材は、単繊維、諸より単繊維、多重繊維及び諸より多重繊維のヤーンを有してもよく、単一層、多層又は積層体であってもよい。これらのヤーンは、ポリアミドやポリエステル樹脂など、工業用布技術において当業者がこの目的で用いる種々の合成ポリマー樹脂から典型的に成形される。
【0043】
上述の布地基材の構築に使用するヤーンをここで参照すると、上述の単繊維、多重繊維、連続する微細なフィラメント及び/又は人造繊維は、円形又は非円形の断面を有してもよい。好ましくは、非円形の断面形状を有するものは、特徴付け(profiled)、或いは多重にローブを付される(multi−lobed)。
【0044】
図2は、本発明の基材1の調製に用いる布地ヤーン9の断面図を示す。図1の符号4で示した強化成分は、布の安定性を提供するように、長手方向及びこれを横切る方向に織り交ぜられた種々の従来の布地ヤーンを有する。合成繊維の、単繊維、多重繊維、連続的な微細のフィラメント又はスパンヤーンなどを選択してもよい。これらヤーンの繊維は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアラミド及びこれらの混合物並びにこれらに類似するものに由来する樹脂で構成される。布地ヤーン9は、ポリエステルやポリアミドなどのポリマー樹脂から成形して常套的に調製される。或いは、本技術分野公知の方法により斯かる樹脂から、例えば、樹脂に対する所望する向上された接着力を有するヤーンをもたらす円形の構成よりも大きな表面領域を提供する多重ローブ6を用いて調製されてもよい。斯かる多重ローブ6を2つ有するヤーンについて、図2に示す。
【0045】
図3は、本発明の基材1に含まれる布地ヤーン7の代替的な構造に関する断面図である。この布地ヤーン7は、図2の3つのローブを有するヤーン6及び他の多重ローブのヤーンに類似する2つのローブ8を有し、円形断面を有するヤーンよりも大きな表面領域を有する。また、3つ又は多重のローブを有するヤーンと同様、この2つのローブを有するヤーン7は、公知の方法によりポリマー樹脂から成形して調製される。
【0046】
特徴付け又は多重にローブを付けられた断面のフィラメント及び繊維は、円形の断面を有する同様のデニールのものに比べて大きな表面領域を有する。本発明において、フィラメント及び/又は繊維の表面領域がより大きくなることにより、コーティング材料の化学的結合又は接着力が増加するのに利用可能となる。特徴付け又は多重でローブを付けられた断面は、布地基材を介して流動し得るコーティング材料の量を制限するとともに、硬化されたコーティング材料と布地基材との間の機械的連結性を向上させる。特徴付け又は多重のローブを付けられた断面のフィラメント及び繊維は、反対側がコーティングを有さないように、或いは異なるポリマー樹脂材料の任意のコーティングに利用可能な十分な数のサイトを保持するように、反対側にポリマー樹脂材料が通過するのを阻止し、或いは調製するように、布地基材の透過性を低下させてもよい。このフィラメント及び繊維は、基材に円形断面のヤーンを使用して得られ得るものよりも重量に対する表面領域の比率をより高くする。
【0047】
この布地基材が単繊維を有する場合、単一又は多重層の編みパターンで、機械(長手)方向及び機械を横切る(横)方向の単繊維ヤーンから織り交ぜられてもよい。布地基材又は不織スパンボンドシートなどに使用するため不織マトリックスを形成するのに連続フィラメントを使用してもよい。人造繊維は、布地基材として、バットの形態に最終的に使用されてもよい。このバットは、基礎布に針状化されてもよく、或いは布地基材を提供するように別に使用されてもよい。複数のローブを有し断面形状を有する単繊維、連続フィラメント又は人造繊維は、本発明のベルト用の布地基材の製造に使用されてもよい。上述した人造繊維のバットは、基材に針状化されてもよい。
【0048】
上述の事項に対する改変は、本技術分野における当業者に明らかであって、添付した特許請求の範囲を超えるものではない。例えば、基材1及び/又はその成分である図1に示す表面層2、中間層3、強化中央コア4、及びバッキング層5は、全幅構造を必要とするものではなく、代わって、図4に示すように、Rexfeltによる特許文献1に開示のようなストリップ34の材料であってもよく、その後、全幅構造16に形成されてもよい。なお、特許文献1を参照して本願に取り込む。ストリップ34は、処理が全部終了した後、巻き取られなくてもよく、ロールのセットに巻き取られてもよい。繊維材料のこれらのロールは、保管されてもよく、且つその後、例えば、上述の特許文献の教示の方法により、エンドレスな全幅構造16を形成するのに使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例によるベルトの積層された基材の側方断面図である。
【図2】図1に示す成分に用いた非円形断面の織ヤーンの実施例に関する断面図である。
【図3】図1に示す成分に使用される代替的な織ヤーンに関する断面図である。
【図4】本発明のベルトの基材に係る代替的な実施例に関する斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1 基材
2 表面層
3 中間層
4 強化中央コア
5 バッキング層
6 多重ローブ
7 布地ヤーン
8 ローブ
9 布地ヤーン
16 全幅構造
34 ストリップ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機に適用するエンドレスベルトを製造するのに有用な基材であって、
複数の成形層と、
個々の層の一部であるポリマーコーティング材料若しくはポリマー含浸材料又はゴム材料と、
を有し、
各成形層は、布地層又は樹脂若しくは前記ゴム材料でコート/含浸された布地層であり、
前記の層の少なくとも1つは、強化成分のマトリックスを有することを特徴とする基材。
【請求項2】
前記の層は、積層体の形態に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の基材。
【請求項3】
必要な数の前記の層は、抄紙機における前記ベルトの特定の適用例に応じて、積層されることを特徴とする請求項2に記載の基材。
【請求項4】
前記成形層は、織物、不織物、又は織材料及び不織材料の螺旋巻きストリップから構成されることを特徴とする請求項1に記載の基材。
【請求項5】
前記不織材料は、スパンボンド、ウェットレイド、編地、成形又は螺旋リンクであることを特徴とする請求項4に記載の基材。
【請求項6】
当該基材は、ポリマー樹脂材料又は前記ゴム材料で少なくとも1つの外部表面上にコートされることを特徴とする請求項1に記載の基材。
【請求項7】
前記ポリマー樹脂材料は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性ポリマーであることを特徴とする請求項6に記載の基材。
【請求項8】
前記の樹脂は、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びシリコーンからなる群に由来することを特徴とする請求項7に記載の基材。
【請求項9】
少なくとも1つの成形層は、円形断面を有するヤーンで構成されることを特徴とする請求項1に記載の基材。
【請求項10】
前記強化成分は、合成繊維の、単繊維、多重繊維、連続的で微細なフィラメント又はスパンヤーンから作製されることを特徴とする請求項1に記載の基材。
【請求項11】
前記のフィラメント又は繊維は、特徴付け又は多重にローブを付けられた断面を有することを特徴とする請求項10に記載の基材。
【請求項12】
当該基材の外部表面は、溝又はブラインドドリルされたホールを有することを特徴とする請求項1に記載の基材。
【請求項13】
前記の層は:
a.表面層と;
b.中間層と;
c.強化中央コア層と;
d.バッキング層と;
を有することを特徴とする請求項1に記載の基材。
【請求項14】
抄紙機に適用するのに用いるエンドレスベルトの基材を製造する方法であって:
a.成形されたコート又は含浸層を形成するように、強化材料を有する少なくとも1つの層を含む、材料の複数の層の少なくとも1つをコーティング又は含浸するステップと;
b.構造を形成するように、前記のコーティングされ、又は含浸された層を組み合わせるステップと;
c.積層体を形成するように、前記構造を処理するステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項15】
少なくとも1つの層は、円形断面を有するヤーンで構成されることを特徴とする請求項14に記載の基材。
【請求項16】
前記の層は、単繊維、多重繊維、連続的な微細なフィラメント又は人造繊維で構成されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記のフィラメント又は繊維は、特徴付け又は多重にローブを付けられた断面を有することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基材の外部表面に溝又はブラインドドリルされたホールを形成するステップをさらに有することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記の少なくとも1つの層は、ポリマー樹脂でコート又は含浸されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマー樹脂は、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びシリコーンからなる群に由来することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマー樹脂は、シートの形態であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記強化材料は、織物、不織物、又は織材料及び不織材料の螺旋巻きストリップから構成されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記不織材料は、スパンボンド、ウェットレイド、編地、成形又は螺旋リンクであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
抄紙機に適用するのに使用されるエンドレスベルトの基材を製造する方法であって:
a.構造体を形成するように、プレポリマー及び硬化剤のマトリックスを有する材料の成形層を組み合わせるステップと;
b.積層体を形成するように、前記構造体を処理するステップと;
c.前記構造体を硬化するステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項25】
抄紙機用のプロセスベルトの製造方法であって:
成形材料の複数の層の少なくとも1つをポリマー樹脂又はゴム材料でコーティング又は含浸するステップであって、該少なくとも1つの層は、前記のベルトの機械方向(MD)又は機械を横切る方向(CD)の安定のため、強化成分を有する、ステップと;
基材又は基礎基材を形成するように、前記の層を組み合わせるステップと;
前記基材又は前記基礎基材をエンドレスベルトに形成するステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項26】
前記のベルトを、該ベルトの少なくとも1つの外部側表面上において、ポリマー樹脂又はゴム材料でコーティングするステップをさらに有することを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記の層は、各層間の化学反応を惹起することにより、共に積層されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記の層は、熱及び圧力を用いて、共に積層されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項29】
個々の層は、織物や、スパイラルリンク、MD若しくはCDヤーンアレイなどの不織物や、編地、成形メッシュ、ストリップの幅よりも大きな幅を有する基材を形成するように、最終的に螺旋に巻き取られる材料ストリップなどから本質的になる群から選択された構造で形成されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項30】
個々の層の成分は、熱可塑性材料、熱硬化性材料、反応性材料又はゴム材料のひとつであることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項31】
個々の布地層は、スパンボンド、ウェットレイド、エアレイド工程のひとつで、ポリマー樹脂又はゴム材料で含浸されて、製造されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項32】
ベルトの基材を形成するように、ポリマー樹脂又はゴム材料で最初にコートされその後組み合わされる成形材料の層を有する抄紙機用のプロセスベルトであって、
少なくとも1つの層は、当該ベルトの機械方向(MD)又は機械を横切る方向(CD)の安定のため、強化成分を有することを特徴とするベルト。
【請求項33】
最終的に形成される当該ベルトは、少なくとも1つの外部表面上に、樹脂コート又はゴム材料を有することを特徴とする請求項32に記載のベルト。
【請求項34】
前記の層は、各層間の化学反応を惹起して、共に積層されることを特徴とする請求項32に記載のベルト。
【請求項35】
前記の層は、熱及び圧力を用いて、共に積層されることを特徴とする請求項32に記載のベルト。
【請求項36】
個々の層は、織物や、スパイラルリンク、MD若しくはCDヤーンアレイなどの不織物や、編地、成形メッシュ、ストリップの幅よりも大きな幅を有する基材を形成するように、最終的に螺旋に巻き取られる材料ストリップなどから本質的になる群から選択された構造で形成されることを特徴とする請求項32に記載のベルト。
【請求項37】
前記ポリマー樹脂は、熱可塑性材料、熱硬化性材料、反応性材料又はゴム材料のひとつであることを特徴とする請求項32に記載のベルト。
【請求項38】
個々の布地層は、スパンボンド、ウェットレイド、エアレイド工程のひとつで、ポリマー樹脂又はゴム材料で含浸されて、製造されることを特徴とする請求項32に記載のベルト。
【請求項39】
前記ポリマー樹脂材料は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の基材。
【請求項40】
前記の樹脂は、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びシリコーンからなる群に由来することを特徴とする請求項1に記載の基材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−524768(P2007−524768A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517569(P2006−517569)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/020101
【国際公開番号】WO2005/005721
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】