説明

抄紙機または抄紙機に対応するものに関連する気体を除去する装置

本発明は、脱気槽(40)を備える、抄紙機、板紙機、または対応するウェブ形成機のアプローチシステム内でのワイヤ水処理に関連する装置に関する。この槽は、脱気槽内部を減圧させる装置に接続される。少なくとも1本のワイヤ水供給管(44)が槽内に延び、供給管は、槽内の液位(49)よりも上の減圧空間中に開く。ワイヤ水排出ダクト(46)が槽の底部(43)に接続される。供給管が、槽内の液位よりも上の減圧空間に延び、それにより、ワイヤ水は、供給管の縁(59)を超えて槽内の液位上に溢れ、ワイヤ水排出コンジットが下方に延び、ポンプ(12)に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
紙料およびワイヤ水の脱気は、製紙、特に印刷紙等級および筆記紙等級の紙を製造する高速抄紙機を使用する製紙において重要である。脱気は、再生紙および古紙という原材料を使用して低坪量の製品を製造する場合、他の等級の紙および高速板紙機にとっても極めて重要である。紙料中の再生紙および古紙含有量の増大と同時に、紙料およびワイヤ水の空気含有量が徐々に増大した。本発明は、脱気槽を備える、抄紙機、板紙機、または対応するウェブ形成機のアプローチシステム内でのワイヤ水処理に関連する装置に関する。この槽は、脱気槽内部を減圧する装置に接続される。少なくとも1本のワイヤ給水管が槽内に延び、この管は、槽内の液位よりも上の減圧空間に対して開かれる。ワイヤ水排出コンジットが、槽の底部に接続される。
【背景技術】
【0002】
空気を完全に除去する現行の脱気技術は、減圧下で動作し、高い位置に位置決めされ、主に、気圧による溢れ(barometric overflow)を使用する脱気槽からなる従来の脱気システムを備える。したがって、脱気装置は抄紙機の上に配置される。したがって、紙料および水を脱気システムに配布し、かつ脱気システムから配布するために、紙料清掃装置がシステム内に含まれている場合には紙料清掃装置へも、長い管路が必須である。当業者の中で上記脱気システムのうち最も知られているものは、商標名Deculator(登録商標)(Andritz)によるシステムである。
【0003】
脱気槽は大きな槽であり、その中に、抄紙機に供給される繊維懸濁液が希釈混合液の形態で送出される。この槽の動作原理は、減圧下で繊維懸濁液を煮沸し、それにより、気体をいわゆる気体空間内に分離し、この気体を槽から除去することである。抄紙機に送出されている懸濁液は、槽の底にある開口を介して排出される。したがって、この概念は生来、槽から可能な限り気体のない繊維懸濁液を排出することである。槽の気体除去効率を最大にするために、真空が、真空ポンプによって槽内に供給され、それにより、気体は真空ポンプによって槽から引き出される。気体除去効率は、処理される紙料および液体を、ノズルを介して槽内の液位よりも上に導入し、例えば、脱気槽の天井に衝突させることによってさらに強化され、それにより、液体が槽内にすでに存在する液体に接触する前に、処理される液体中に泡の形態で存在する可能性がある気体が分離される。紙料と同じ脱気槽内でワイヤ水から気体を分離してもよく、または例えば、(特許文献1)ならびに図6および図7において後に示されるように、別個の槽内でワイヤ水から気体を分離してもよい。
【0004】
最新の傾向は、ワイヤ水のみから空気が除去される、容積がより小さな抄紙機アプローチシステムにいくらか関連する。この部分脱気は、より低額の投資が求められる特定の用途において適切であり得る。脱気水は、濃度調整のために、ポンプおよび紙料清掃機内に導入されると共に、最終的な濃度プロファイリングのためにヘッドボックスに直接導入される。
【0005】
空気を含有する高濃度紙料は、ヘッドボックス紙料濃度1.0%においてヘッドボックスへの総流量の約20容量%(10〜25%)を示す。高濃度紙料内の総空気は、1.0容量%〜10容量%の範囲でばらつき得る。しかし、アプローチシステム内の総空気は、ワイヤ水の空気含有量および一次ファンポンプ内で混合される高濃度紙料とワイヤ水流との比率にも依存する。ヘッドボックス供給における空気量は、流速速と空気含有量との比率に基づいて容易に計算することができる。
【0006】
通常、Deculator(登録商標)脱気装置を有する従来のアプローチシステムでは、すべての空気は、ヘッドボックス内に供給される前に、低濃度紙料(高濃度紙料が第1のファンポンプ内でワイヤ水と混合されたもの)から除去されている。1990年代後半以来、増大し続けているヘッドボックスの交換数の増大は、濃度プロファイリング(CP)型のヘッドボックス技術に基づいている。大半の場合において、CPへの希釈ワイヤ水は脱気され、ワイヤ水は、ヘッドボックス前でスクリーニングされる。希釈水の量は、層流の約8〜20%を示す。脱気装置を濃度プロファイリング希釈水ループに加えることにより、メインラインにも脱気システムが設けられた場合、ヘッドボックス内での紙料の完全な脱気が保証される。希釈水が、紙料から気体を除去せずにヘッドボックス内に取り入れられた場合、比例した量の空気が層流内に存在する。層流内の空気量は、抄紙機の要件を容易に超え得る。
【0007】
用途によっては、希釈ワイヤ水からの空気除去は、妥当であるとしかみなすことができない。この場合、空気が除去されていなければ、高濃度紙料を起源とする比例量の空気が層流内に残留する。ヘッドボックス内で許容できる総空気含有量は、機械の問題のない動作性および良好な紙質を可能にする、機械の供給業者によって規定される保証値に基づく。
【0008】
以下のヘッドボックス脱気保証値は、設置された抄紙機からの参照である。ある抄紙機供給業者は、LWC用途に対して空気含有量0.2%を規定しており、別の機械供給業者は、新聞紙用途に対して0.3%、板紙機には0.7%を規定している。
【0009】
用紙および板紙の製造での再生原料の使用の増大によっても、抄紙機アプローチシステムでの空気含有量が高くなった。高速多層板紙機およびOCCおよびMOW原料を使用するより低速のテストライナ・波形中芯(fluting)板紙機では、供給パルプは通常、5〜8%量の空気を含有する。再生原料を使用する新聞紙用途でも、5〜10%の空気含有量が一般に、アプローチシステム内で脱気前に測定されている。脱気なしでは、過度の空気が、機械の動作性および紙質に有害な影響を及ぼす恐れがある。
【0010】
通常、ワイヤ水は、いわゆるワイヤ水水路によって抄紙機のウェットエンドからワイヤピット内に送り込まれる。長いワイヤ水水路内を移動する際、水面にはより大きな気泡が生じるが、表面下では、ワイヤピットの底部およびポンプに前進する水中に連行されたより小さな気泡が移動する。サイロによっては、ワイヤピットのカバーに配置された、空気を除去するための排出口に接続され、蒸気除去すなわちわずかな減圧が提供されるものがある。しかし、その場合、システムは、ワイヤ水の適正な脱気を保証しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】フィンランド共和国特許第100950号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一目的は、上記問題をなくし、ワイヤ水を脱気する経済的な装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これら目的を達成するために、本発明は、脱気槽を備える、抄紙機、板紙機、または対応するウェブ形成機のアプローチシステム内のワイヤ水処理における装置に関し、槽は、脱気槽内部を減圧する装置に接続され、少なくとも1本のワイヤ水供給管が上記槽内に延び、供給管は、槽内の液位よりも上の減圧空間中に開き、ワイヤ水排出ダクトが槽の前記底部に接続される。本発明の特徴は、少なくとも1本の供給管が、槽内の液位よりも上の減圧空間に延び、それにより、ワイヤ水は、供給管の縁を超えて減圧空間内かつ槽内の液面上に流入すること、およびワイヤ水排出コンジットが下方に延び、ポンプに接続されることである。好ましくは、脱気槽は機械と同じ高さに配置され、脱気ダクトに接続されたポンプは、地下の高さに配置され、ポンプまで脱気ダクトが延びる。ワイヤ水は、減圧によって脱気槽に流入する。上記少なくとも1本の供給管は、移行管を介してワイヤ水源に接続され、ワイヤ水源の高さは、好ましくは、供給管の排出縁よりも高い。
【0014】
部分脱気の消費エネルギーはより小さく、脱気システムは、異なる製造に向けて調整可能であり、かつ柔軟性を有する。必要な配管がより少ないため、アプローチシステムの容積が低減する。完全な脱気が要求される場合、すなわち、紙料の脱気も要求される場合、従来の高架脱気(elevated deaeration)を代替のシステムとして用いる。
【0015】
本発明の特徴は、ワイヤ水槽および脱気プロセスの動作が、抄紙機の近傍の小さな床面積上の同じ1つの装置内で組み合わせられることである。本発明は、さらに発展した構成を提供する。消費エネルギーがよりよく調整され、既知のシステムよりも低い。
【0016】
空気除去が有利であるが、完全な脱気が必要ない用途の場合、完全な脱気は依然として極めて重要であるが、部分脱気をシステム内で適用することが可能である。本発明の主原理は、ワイヤ水および場合によっては前の工程で水を減圧下にある脱気槽内に集めることである。水は、抄紙機から移行管を介して脱気槽に送出され、脱気される。移行管の本数は、ワイヤ水の流速に応じて1本または複数本である。本発明による脱気の原理では、繊維内に拘束された気泡を消滅しなければならない紙料脱気におけるようなワイヤ水の衝突(impinging of wire water)は必要ない。したがって、本発明では、脱気装置内への供給は比較的穏やかであり得、ワイヤ水は供給管の縁または槽内の液面上の管を超える溢れとしてのみ流れる。供給管の上縁は、脱気槽内の液位の上になければならず、好ましくは、ワイヤ水源の表面、すなわち、流入口表面、例えば、抄紙機の排水口等よりも下になければならず、好ましくは、約0.3m〜0.5m下にある。供給管を液位より上に位置させることにより、水は強制的に脱気装置内の脱気槽の液位よりも上にある減圧空間内に流入し、気泡が液体中に混入しないようにすると共に、供給管からの水が液面上に落ちる前に脱気される。
【0017】
本発明による装置は、ロケーションおよび動作原理:液体の衝突が必要なく、消費エネルギーが低減され、供給流が重力および減圧によって支援され、流入ならびに液面が穏やかであり、かつ減圧が調整可能な点において、従来の装置と異なる。本発明によれば、他のシステムとは異なり、気泡の混入は生じない。気泡が混入した場合、気泡の除去は、気泡を減圧空間内に運ぶ場合、より困難である。ワイヤ水を脱気する本発明による装置は、物理的な最大限度まで大きな減圧を使用する。他のシステムは、ワイヤ水槽のカバーにある流出コンジットに接続された不十分な蒸気除去またはわずかな減圧を使用し、脱気装置にオーバーフロー排水路が設けられている場合、脱気装置の供給側に循環させることができる。
【0018】
本発明では、1つまたは複数の制御弁が、ワイヤ水が形成されるポイントと脱気装置の供給口との間の移行管に配置されて、その水が形成されるポイントでの表面を制御する。脱気装置の供給口は減圧下にあり、減圧により、水が蒸気装置内に引き込まれる。他方、ワイヤ水の供給ポイントと脱気槽との間の1本または複数本の移行管に、脱気槽内の表面を調整するための1つまたは複数の制御弁を設けてもよい。脱気槽のワイヤ水源は通常、抄紙機等のウェブ形成機のワイヤ水排出口またはワイヤ水サイロ(ワイヤピット)である。
【0019】
本発明によるワイヤ水を脱気するシステムは、好ましくは、抄紙機に隣接して、抄紙機の高さに配置され、それにより、移行管を可能な限り短くすることができる。移行管は、任意の方向から脱気槽に接続することができる。例えば、ツインワイヤフォーマに、ヘッドボックスの前にワイヤ水排出口およびヘッドボックスの後に別のワイヤ水排出口を設けることができる。移行管の本数は、ワイヤ水の流速に依存する。脱気槽のドロップレッグ(drop leg)の高さが、地下の高さと機械の高さまでの建物の構造に基づいて調整される。装置の最小高さも、脱気要件および減圧要件に基づいて決めることができる。本発明は、構造が柔軟であり、処理可能容量の制限なしで、新しいシステムおよび既存のシステムに適用することが可能である。
【0020】
システムは、例えば、液封真空ポンプによって生み出される減圧下で動作する。減圧システムはワンポンプ(one−pump)システムであり、減圧レベルを調整する調整可能な速度駆動機構(speed drive)が設けられる。もし真空ポンプが故障した場合に備えて、システムに予備ポンプを並列して設けてもよく、または処理可能容量に余裕がある場合には、抄紙機の共通吸引管路への迂回路を設けてもよい。
【0021】
減圧システムは、大気圧に排出するため、建物の任意の高さに配置することができる。アプローチシステムが加圧リジェクト液体サイクロン(pressurized reject hydrocyclone)を備える場合、加圧リジェクト液体サイクロンは、建物の地下の高さ位置または機械の高さ位置に配置することができる。
【0022】
ワイヤ水を脱気するシステムが、既存の抄紙機アプローチシステム内の濃度プロファイリング希釈水ループ内に適用された場合、移行管は、既存のワイヤ水サイロ内の液位よりも下に接続される。この場合、重力による排出流に抵抗するために液位間に高さの差もある。減圧により、水は液位制御弁を通って脱気槽の減圧空間内に引き込まれ、上記槽の排出管は、ヘッドボックスの希釈水供給ポンプに直接接続される。本発明によるシステムに必要なポンプは1つだけであり、その一方で、従来の脱気装置は、2つのポンプ:ワイヤ水サイロから脱気装置までの希釈水供給ポンプおよび脱気装置からヘッドボックスまでのヘッドボックス希釈水供給ポンプを必要とする。
【0023】
本発明による構造は、好ましくは、垂直円筒形型の槽であり、この槽は、好ましくは、円錐形の上端および底部に円錐形狭窄部を有し、円錐形狭窄部には、ワイヤ水排出ダクト、ドロップレッグが関連付けられる。上部は凸状であり得る。ドロップレッグに加えて、ドロップレッグまたは脱気装置の下の狭窄部に接続された、必要な他の排出コンジットがあり得る。槽内の停留時間は、空気除去にとって重要である。泡が表面を介して減圧空間内に出られるようにする適正な停留時間は、槽内の液体に関して計算されている。
【0024】
本発明の効果としては、
−容易に適合可能な構造、
−柔軟なレイアウト、
−抄紙機アプローチシステムおよび脱気システムのコスト低減、
−消費エネルギーの低減を伴う十分な脱気効率
−アプローチシステムの容積低減、
−配管量の低減、
−紙の等級変更中の切り替え時間の短縮、
−脱気槽への希釈水供給ポンプがなくなること、
−メインライン内のワンポンプシステムも可能なこと
が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明について、添付図面を参照してより詳細に説明する。
【0026】
【図1】空気をワイヤ水から除去する本発明による槽を詳細に示す。
【図2】ワイヤ水脱気槽が抄紙機に直接接続された、本発明の一実施形態を示す。
【図3】ワイヤ水脱気槽が抄紙機に直接接続され、そこに濃度プロファイリング希釈水ループが接続された、本発明の一実施形態を示す。
【図4】ワイヤ水脱気槽が既存のワイヤピットに接続された、本発明の一実施形態を示す。
【図5】ワイヤ水脱気槽がワイヤ水サイロに接続され、紙料脱気も備えた、本発明の一実施形態を示す。
【図6】それ自体が既知の高架脱気槽内の紙料およびワイヤ水の両方から空気を除去する先行技術による解決策を示す。
【図7】それ自体が既知の別個の高架脱気槽内の紙料およびワイヤ水の両方から空気を除去する先行技術による解決策を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図6に示す先行技術による抄紙機アプローチシステムは、ワイヤ水サイロ、すなわち、ワイヤピット10と、ファンポンプ12と、いくつかの段を有する遠心式清掃プラント14と、減圧装置17を有する脱気槽16と、抄紙機24と、抄紙機ヘッドボックス22と、ワイヤ水収集水路20とを備える。上記構成要素は、抄紙機24に関連して位置決めされ、以下のように動作するように配置される。ワイヤ水がワイヤ水サイロ内に収集され、ワイヤ水サイロは、先行技術によるシステムでは通常、図示されるように、ミルの地下の高さPに配置され、ワイヤ水サイロ内に、新しい紙料、二次紙料(secondary stock)、および/または損紙で構成され得る、製紙に使用される繊維材料(高濃度紙料)ならびに填料が、流路26を介して機械チェストから添加される。ミルの地下の高さPに配置されたファンポンプ12により、上記製紙紙料およびワイヤ水サイロ10からの必要とされる希釈水が、通常、機械室の床の高さK(ヘッドボックスを有する抄紙機の場所の高さ)に配置される遠心式清掃プラント14に供給される。遠心式清掃プラント14内で許容された製紙紙料は、上記混合ポンプ12および脱気槽16内の減圧によって生み出される圧力により、機械質の床の高さよりも上の高さTに配置された脱気槽16内にさらに運ばれる。脱気槽16は通常、槽内の製紙紙料の液位を一定に維持するオーバーフローを備える。脱気槽16から、真空装置17によって気体が可能な限り除去された本質的に気体のない製紙紙料が、コンジット28から、ミルの地下の高さに配置されたヘッドボックス供給ポンプ(図示せず)に流れ、このヘッドボックス供給ポンプは、製紙紙料をヘッドボックススクリーン(図示せず)にさらに供給し、このヘッドボックススクリーンは、製紙紙料流を抄紙機のヘッドボックス22内へのコンジット30から受け入れる。
【0028】
脱気槽16内において、ライン32を介してワイヤ水サイロ10からポンプ33によって槽16の他端に供給されるワイヤ水からも空気が除去される。ワイヤ水は、ワイヤ水が槽の天井に衝突するように、脱気槽まで延びるいくつかの供給管を介して脱気槽内に送出される。衝突および真空装置17によって生じる減圧の作用下で、気体はワイヤ水から分離される。脱気されたワイヤ水は、ライン34からポンプ(図示せず)によってスクリーンを介してヘッドボックス22内に送出され、ヘッドボックス22において、ワイヤに供給される紙料の最終濃度調整(プロファイリング)が実行される。オーバーフローの部分は、ライン36を介してファンポンプ12に循環する。
【0029】
紙料およびワイヤ水は、図6の連結では、脱気槽16内の共通気体空間内で処理されるが、既知のように、図7により、同様の構造を有し、機械の高さよりも上の高さTに配置される別個の脱気槽16および16’内で処理されてもよい。
【0030】
図6は、それ自体が周知の先行技術によるワイヤピット解決策も示す。ワイヤピットは、ミルの地下の高さに配置される垂直円筒形ベッセル10を備え、この垂直円筒形ベッセル10の上部には、1つまたは複数のワイヤ水水路20が配置され、ワイヤ水水路20を通して、ワイヤ水は本質的に、ワイヤピット内のすでに存在するワイヤ水の表面層上に流入する。ワイヤピット内の液位は、排水口38によって一定に維持される。一定の液位により、ワイヤピットの底部に本質的に一定の静水圧が常に存在することが保証される。ワイヤピット10の上端には、更に天井および気体排出コンジット39が設けられ、ワイヤ水から分離された気体が気体排出コンジット39を介してワイヤピット10から除去される。高濃度紙料用の管26および再循環管36の両方が、ワイヤピット10の底部に繋がる。
【0031】
図6および図7による継手の本質的な問題は、複数の主プロセス装置がかなり異なる高さに配置され、広い空間および長い配管を必要とすることである。
【0032】
図1aは、本発明によるワイヤ水脱気槽(受槽)40をより詳細に示す。この構造は、円錐形端42、43を有する垂直円筒形型の槽41に基づく。本発明の主原理は、ワイヤ水および場合によっては前の水を減圧下にある脱気槽40内に集めることである。水は、抄紙機から移行管を介して受槽に送出され、脱気される。移行管の本数は、流速に応じて1本または複数本である。脱気槽内で、移行管は、エルボーおよび上向き方向の管ヘッドを通常有する供給管44内で終端する。槽の上部には、槽の上部内の脱気槽内の液面よりも上に減圧空間を生成し、ワイヤ水から分離された気体を除去するために、減圧装置内へのコンジット45が設けられる。脱気されたワイヤ水を排出する排出管46、ドロップレッグは、脱気槽の底部に接続され、この底部は、好ましくは円錐形に、窄まる。さらに、脱気槽には、好ましくは、液位を調整する排水口47が設けられる。
【0033】
本発明による脱気の原理では、空気を分離するために、ワイヤ水を衝突しない。したがって、本発明による脱気装置への供給は、比較的穏やかであり、供給管44の排出ヘッド59の上縁を超えるオーバーフロー48のみである。供給管の上縁は、脱気槽内の液位49の上になければならず、通常、流入口表面、例えば、抄紙機の排水口50(図1b)の高さよりも下になければならない。液位よりも上に延びる供給管により、水は強制的に脱気装置内の液位よりも上にある減圧空間内に流入し、気泡が液体中に混入しないこと及び水が液面上に落ちる前に脱気されることが保証される。
【0034】
図1bは、供給管44の本数が2本以上、すなわち2本である、一実施形態の上面図および側面図である。4本、6本等のより多くの本数が必要とされることもある。移行管の本数は、ワイヤ水の流速に依存する。図示されるように、供給管の上端は、ワイヤ水の供給ポイント、すなわち、通常、抄紙機のワイヤ水排出口よりも低い。脱気槽、ドロップレッグの排出ダクトは通常、建物の地下の高さまで延びる。排出ダクト46に加えて、数本の排出コンジット51、例えば、オーバーフロー47用の排出コンジットおよびヘッドボックス希釈水コンジットを設けてよい。
【0035】
図2は、図1によるワイヤ水を脱気する脱気槽40を新しい抄紙機アプローチシステム内でどのように適用することができるかを示す。槽40自体は、機械の高さKに配置される。脱気槽は、抄紙機のワイヤ水排出口に直接接続され、図6に示されるような別個のワイヤ水サイロまたはワイヤピット10は必要ない。ワイヤ水は、1本または複数本の移行管52を介して抄紙機のワイヤ部から槽内に導入され、それにより、移行管は、供給管44として続き、図1に関連して説明したように槽内に入る。移行管は、抄紙機のワイヤ水排出口に接続することができる。
【0036】
脱気槽40の上部から、コンジット45は真空装置53に繋がる。1つまたは複数の制御弁54は、移行管の水形成ポイントと脱気槽の供給口との間に配置され、抄紙機のワイヤ水の排出ポイント55における液位を制御する。
【0037】
本質的に気体のないワイヤ水が、脱気槽40の排出口46を介して排出され、このワイヤ水は、先行技術によるワイヤピットと同様の方法で排出ダクトの下部において高濃度紙料26を受ける。ヘッドボックス再循環流56もドロップレッグの底部、ファンポンプ12の吸込コーン内に導入される。ワイヤ水は紙料を希釈し、そうして得られた低濃度紙料は、好ましくは、ファンポンプ12によって遠心式清掃機14に供給され、さらにライン30及び機械スクリーン(図示せず)を介してヘッドボックス22内に供給される。遠心式清掃機14は、地下の高さに配置される。
【0038】
既知のシステム、図6および図7では、デキュレータ(Deculator)型の脱気槽用のファンポンプ(12)が常に必要とされると共に、この脱気槽の後、機械スクリーンの前にヘッドボックスファンポンプ(図6および図7において詳細に図示されず)が常に必要とされる。図2のような本発明によるシステムでは、脱気槽へのワイヤ水供給がポンプを必要とせず、水は減圧によって脱気槽に入るため、ヘッドボックス希釈ラインに必要なのは1つのみのポンプである。また、遠心式清掃機が使用されない(多くの板紙機用途)場合、メインラインは第2のポンプを必要としない。しかし、遠心式清掃機がメインラインに必要とされる場合、清掃機の許容逆圧と清掃機の公称差圧を含む組合せ圧力が、遠心式清掃機のために規定された最大供給圧力を超える場合のみ、清掃機後に二次ファンポンプが必要である。
【0039】
図3に示される装置は、脱気槽40内で脱気されたワイヤ水の一部分が、紙料の濃度プロファイリングのためにヘッドボックス内で希釈水として使用されることを除き、図2に対応する。ワイヤ水は、管46’を介しスクリーン(図示せず)を通って供給される。
【0040】
図4は、図6に関連して説明した、それ自体が既知のワイヤ水サイロ10に接続された本発明によるワイヤ水脱気装置を示す。図6に関連して説明したように、ワイヤ水は、抄紙機から既知の方法でワイヤ水サイロ10に送出される。ワイヤピット10は、本発明により、脱気のために1本または複数本の移行管52’を介してワイヤ水脱気槽40に接続される。ワイヤピット内の液位は、脱気槽供給管の排出口よりも高い。減圧により、ワイヤ水は、液位調整弁を通って脱気槽40の減圧空間内に流れ、上記槽の排出管は、ヘッドボックスの希釈水混合ポンプに直接接続される。この本質的に気体のないワイヤ水は、スクリーンを通して供給される紙料の濃度プロファイリングのためにヘッドボックス内の希釈水として使用される。したがって、ワイヤ水は、ポンプ33’を使用して脱気槽40、ドロップレッグ46からスクリーニングを介してライン34’から抄紙機ヘッドボックス22に供給される。
【0041】
この適用例では完全な脱気を要せず、空気は、ワイヤ水のみから除去され、紙料からは除去されず、紙料は、ワイヤ水サイロ、すなわちワイヤピット10からポンプ12によって遠心式清掃プラント14および機械スクリーン(図示せず)を介してライン30からヘッドボックス中に取り込まれる。
【0042】
図5は、ワイヤ水がチャネル20を介して抄紙機から送出される、それ自体が既知のワイヤ水サイロを備えた抄紙機アプローチシステムを示す。高濃度紙料26は、ワイヤピット内に送出され、さらに希釈供給管12に送出される。必要であれば、低濃度紙料が、ライン58を介し、遠心式清掃機14を通って、図6に関連して説明したように、機械の高さよりも高い位置Tに配置された脱気槽16に紙料の脱気のために送出される。
【0043】
さらに、本発明による方法において、ワイヤ水をワイヤピット10から少なくとも1本の移行管52’を介して脱気槽40中に送出することにより、空気がワイヤ水から除去される。減圧するために、脱気槽40はここでは、ライン57を介して紙料の脱気槽16と同じ真空源に接続され、または図2に示される別個の真空装置53に接続されてもよい。
【0044】
脱気されたワイヤ水は、脱気槽40からスクリーン(図示せず)およびライン34’を介してヘッドボックス22にポンプ33’によって供給され、ヘッドボックス22において、脱気されたワイヤ水は、抄紙機の動作を妨害しないことを保証するために、気体のない液体を必要とする紙料の濃度プロファイリングに使用することができる。
【0045】
本発明によるアプローチシステム、例えば、図2〜図5に示される実施形態による効果は、ワイヤ水からの空気除去が、本質的に機械と同じ高さに配置された脱気槽内で実行され、それにより、スペースおよび配管に対する条件が本質的に、先行技術によるアプローチシステム、例えば、図6におけるアプローチシステム等よりも少ないことである。本発明の効果は、特に、アプローチシステムにおいて部分空気除去のみが要求される場合に明白になる。
【符号の説明】
【0046】
10 ワイヤ水サイロ、ワイヤピット
12 混合ポンプ
14 遠心式清掃機
15 繊維回収路
16、16’ 脱気槽
17 真空装置
20 ワイヤ水収集水路
21 機械チェスト
22 抄紙機ヘッドボックス
24 抄紙機
25 抄紙機白水槽
26 繊維材料
27 抄紙機からのワイヤ水排出
28 機械スクリーンへの紙料流
30 機械スクリーンからの紙料流
32 脱気槽へのワイヤ水
33 ワイヤ水ポンプ
34、34’ 希釈スクリーンへのワイヤ水
36 循環水
38 ワイヤピットのオーバーブロー
39 ワイヤピットからの気体排出コンジット
40 ワイヤ水脱気槽
41、42、43 ワイヤ水脱気槽の円筒体および両端
44 供給管
45 真空装置へのコンジット
46 空気が除去されるワイヤ水の排出ダクト
47 排出口
48 供給管からの流れ
49 脱気槽内の液位
50 抄紙機からのワイヤ水排出の高さ
51 脱気槽の流出コンジット
52、52’ 移行管
53 真空装置
54 制御弁
55 抄紙機からのワイヤ水排出
56 ヘッドボックス再循環流
57 真空装置へのコンジット
58 低濃度紙料ライン
59 供給管の排出縁
【図1a】

【図1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱気槽を備え、該脱気槽は、該脱気槽内部を減圧する装置に接続され、前記槽の内部内に、少なくとも1本のワイヤ水供給管が延び、前記ワイヤ水供給管はワイヤ水源に接続され、前記槽内の前記液位よりも高い位置の減圧空間中に開口し、前記槽の底部にワイヤ水排出ダクトが接続される、抄紙機、板紙機、または対応するウェブ形成機のアプローチシステム内のワイヤ水処理における装置であって、少なくとも1本の供給管が、前記脱気槽内の前記液位よりも高い位置に延び、前記供給管が排出縁を有し、該排出縁を超えて前記ワイヤ水が前記減圧空間内かつ前記槽内の前記液面上に流入すること、および前記ワイヤ水排出ダクトが下方に延び、ポンプに接続されることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記脱気槽が前記機械の高さに配置され、前記排出ダクトに接続されたポンプが、地下の高さの位置に配置され、前記ポンプまで前記排出ダクトが延びることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも1本の供給管が、移行管によって前記ワイヤ水源に接続され、前記ワイヤ水源の高さは、前記供給管の前記排出縁よりも高いことを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記脱気槽が円筒形ベッセルを備え、前記円筒形ベッセルの上部には、前記減圧する装置内へのコンジットが設けられ、前記円筒形ベッセルが、排出ダクト、好ましくは排出管に繋がる、円錐形に窄まる底部を備えることを特徴とする、請求項1、2、または3に記載の装置。
【請求項5】
前記円筒形ベッセルが、円錐形または凸状の上部を備えることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
オーバーフロー構造が、前記脱気槽の上部に配置され、前記ワイヤ水の水位を本質的に一定に維持することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記供給管の本数が2本以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
移行管が、前記供給管に接続され、前記移行管が、前記ウェブ形成機のワイヤ水流出コンジットに接続されて、いわゆるワイヤピットなしで、前記ワイヤ水を前記脱気槽内に直接送出することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ワイヤ水排出口の前記液位が、前記脱気槽内の前記供給管の前記排出縁よりも高いことを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
該装置がワイヤピットを備え、前記ワイヤ水が前記ウェブ形成機から前記ワイヤピットに送出されること、および移行管が前記脱気槽の前記供給管に接続され、前記移行管が前記ワイヤピットに接続され、前記ワイヤ水を前記槽内に送出することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記ワイヤピット排出の前記液位が、前記脱気槽内の前記供給管の前記排出縁よりも高いことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記脱気槽の前記ワイヤ水排出ダクトに接続された前記ポンプが、前記抄紙機または前記抄紙機に対応するものの前記ヘッドボックスに接続されて、前記ヘッドボックス内で紙料を希釈するために使用される前記ワイヤ水を送出することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記脱気槽からの前記ワイヤ水排出ダクトがポンプに接続され、該ポンプが紙料希釈ポンプであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記脱気槽のワイヤ水排出ダクトの本数が、2本以上であることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項15】
1つまたは複数の制御弁が、移行管または前記ワイヤ水源と前記脱気槽との間の管に設けられて、前記ワイヤ水源内の液位を調整することを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項16】
1つまたは複数の制御弁が、移行管または前記ワイヤ水源と前記脱気槽との間の管に設けられて、前記脱気槽の液位を調整することを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項17】
前記脱気槽の容積が、所望の脱気に到達するのに適正な停留時間が前記脱気槽内の前記ワイヤ水に与えられるような大きさであることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−523832(P2010−523832A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501540(P2010−501540)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/FI2008/000048
【国際公開番号】WO2008/119872
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(500403468)
【Fターム(参考)】