説明

抄紙機フォーマの脱水方法及び装置

【課題】ロールブレード脱水形式のツインワイヤフォーマにおいて、原料条件の変動時に、最小限の制御で一定の繊維分散性を確保できる手段を実現する。
【解決手段】各ループをなす2つのワイヤ間に紙原料液を挟み込み、該ワイヤを走行させながら該紙原料液を脱水する抄紙機フォーマの脱水方法において、ヘッドボックス6からワイヤ1,2間に供給された紙原料液7をサクションフォーミングロール4に沿わせて脱水する第1脱水工程と、該サクションフォーミングロールの下流側でワイヤ1側に面して可撓性脱水ブレード31が配置され、ワイヤ2に面して固定脱水ブレード40が配置されてなる脱水機器に紙原料液7を挟んだワイヤ1,2を走行させて脱水する第2脱水工程とからなり、可撓性脱水ブレード31による白水wの脱水量がヘッドボックス6内の紙原料液流量の2〜5重量%となるように該ロール4の吸引手段65の真空値を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機のロールブレード脱水方式のツインワイヤフォーマにおいて、簡単な制御により製造された紙のパルプ繊維の分散性を向上させ、これによって均一な紙質の紙を製造可能とした抄紙機フォーマの脱水方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙機フォーマには、ロールブレード脱水方式のツインワイヤフォーマがある。これは、初期脱水部にサクションフォーミングロールを配設し、該サクションフォーミングロールの下流側に位置する繊維分散部に、ワイヤを挟んで一方側に複数の可撓性脱水ブレードが配置された対向脱水ブレード部と、他方側に該可撓性脱水ブレードに対して複数の固定脱水ブレードが千鳥足状に配置されたフォーミングシューとを配設したものである。
【0003】
この方式のツインワイヤフォーマのウェットエンドでは、坪量及び抄紙速度が生産する銘柄によって異なるため、予めヘッドボックスの流量やJ/W比(紙原料液速度J/ワイヤ速度W)又は対向脱水ブレード部の紙原料液に対する押圧力などを変更して地合や繊維偏向などの繊維分散性に対する最適操業条件を決定し、運転開始後は概ね一定条件で操業されている。
【0004】
しかし、紙原料液の種類や配合条件又は叩解条件の変動により、紙原料液の脱水特性が変動した場合に、該繊維分散部でパルプ繊維の分散に最適なマット濃度から外れ、紙欠陥の顕在化や繊維分散に劣るケースが発生している。
従来、抄紙機フォーマにおける紙原料液の繊維分散性の向上又は最適化技術に関し、種々な提案がなされている。
【0005】
例えば特許文献1(特許第3297057号公報)は、ロールブレード脱水方式のツインワイヤフォーマに関し、フォーミングロールのロール径及び紙原料液を挟んだワイヤの該フォーミングロールに対するラップ角を特定(数値限定)し、該フォーミングロール下流側の繊維分散部に対向脱水ブレード部を配設することで、繊維分散性を確保する技術が開示されている。
【0006】
特許文献2(特開2001−115386号公報)は、同じくロールブレード脱水方式のツインワイヤフォーマの脱水技術に関し、この技術は、繊維分散能力に優れた対向脱水ブレードに着目し、フォーミングロール下流側の繊維分散部に、ワイヤを挟んで両側に該対向脱水ブレード部とフォーミングシューとを配置し、最も繊維分散性が向上する原料濃度位置に対応したブレードの印加圧力を制御するようにしたものである。
【0007】
【特許文献1】特許第3297057号公報
【特許文献2】特開2001−115386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、紙原料液の種類や配合条件あるいは叩解条件が変動した場合の適切な制御手段について何ら開示されていない。
また特許文献2は、紙原料液の種類や配合条件あるいは叩解条件が変動すると、対向脱水ブレードの紙原料液の濃度が大きく変わる可能性がある。特許文献2にはかかる条件変動時の適切な制御手段には言及されていない。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、ロールブレード脱水形式のツインワイヤフォーマにおいて、紙原料液の種類や配合条件又は叩解条件の変動により、紙原料液の脱水特性(濾水性)が変動した場合に、最小限の制御を行なうことによって、その他の操業条件変更や紙品質に影響を与えずに一定の繊維分散性を確保できる手段を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明の抄紙機フォーマの脱水方法は、
各々ループをなす2つのワイヤ間に紙原料液を挟み込み、該ワイヤを走行させながら該紙原料液を脱水する抄紙機フォーマの脱水方法において、
ヘッドボックスから前記2つのワイヤ間に供給された紙原料液をサクションフォーミングロールに沿わせて脱水する第1脱水工程と、
該サクションフォーミングロールの下流側で該ワイヤの一方側に面して可撓性脱水ブレードが配置され、該ワイヤの他方側に面して固定脱水ブレード部が配置されてなる脱水機構に紙原料液を挟んだワイヤを走行させて紙原料液を脱水する第2脱水工程とからなり、
該可撓性脱水ブレードにより紙原料液から脱水された白水量が該ヘッドボックス内の紙原料液流量の2〜5重量%となるように該サクションフォーミングロールに設けられた吸引手段の真空値を制御するものである。
【0011】
本発明において、「可撓性脱水ブレード」とは、ワイヤに対する押し付け力を変更可能な構成を有する脱水ブレードをすべて含むものである。従って、例えばワイヤに対する押し付け力を変更することで、脱水ブレード自体は剛性であってもワイヤに対する位置を相対的に変化させることが可能な脱水ブレードも含まれる。
【0012】
紙原料液の繊維分散性を良くするためには、紙原料液中に含まれるパルプ繊維が動きやすい最適原料濃度の状態の時に外部から押し付け力を付与するようにする必要がある。本発明では、前記第2脱水工程において該押し付け力を付与している。該押し付け力により紙原料液中で水の一部がワイヤを通って脱水される過程において、ワイヤ間の原料液内にパルス状の脱水圧力が発生し、繊維の分散が促進される。繊維分散性の向上は、良好な地合及びその他の紙品質が均一な紙を得る上で重要である。
このときの押し付け力は、操業及び原料条件に応じて最適の押し付け力が予め設定されている。
【0013】
しかし、紙原料液の種類や配合条件又は叩解条件等の原料条件が変動したときには、例えばブレードの押し付け力などの操業条件を再度最適な値に設定変更する必要がある。前記操業条件が変動することにより、紙原料液の濾水性が変化し、これによって対向脱水ブレード部の原料濃度が変化するためで,対向脱水ブレード部での脱水量も変化する。このとき、ヘッドボックスの流量やJ/W比あるいは対向脱水ブレード部の原料濃度に対する押圧力などを変更して、地合や繊維配合などの繊維分散性に対する最適操業条件に再設定することで、良好な地合及びその他の紙品質が均一な紙を得ることが可能であるが、パラメータが多く、また種々の紙品質の確保だけでなく、安定した操業を確保する観点からも、一般には抄造している銘柄が同一の場合、最適条件への再設定は、ほとんどなされない。
【0014】
本発明方法は、対向脱水ブレード部における紙原料液からの脱水量に着目し、前記操業及び原料条件の変動で紙原料液の濾水性が変化し、これによって対向脱水ブレード部の脱水量が変動する場合に、対向脱水ブレード部での該脱水量を特定の範囲に調整することにより、操業条件の再設定や他の紙品質に大きな影響を与えずに一定の繊維分散性を確保できることを見出したものである。
【0015】
即ち、対向脱水ブレード部における紙原料液から脱水された白水量がヘッドボックス内の紙原料液流量の2〜5重量%とした場合に、パルプ繊維の分散性を確保できることを見出した。従って、本発明方法は、前記原料条件の変動時に、対向脱水ブレード部において紙原料液に対する可撓性脱水ブレードの押圧力あるいは位置をパラメータとして調整するのではなく、対向脱水ブレード部における紙原料液から脱水された白水量がヘッドボックス内の紙原料液流量の2〜5重量%となるように該サクションフォーミングロールの吸引手段の真空値を制御するようにしている。これによって、操業条件の変動時においても繊維分散性を向上させることができる。
【0016】
この理由は、対向脱水ブレード部での紙原料液の濃度と脱水時の紙原料液内部での水の挙動とが関係しているものと考えられる。つまり、該対向脱水ブレード部における紙原料液の濃度が低すぎる場合、紙原料液に含まれるパルプ繊維が非常に動きやすいため、対向脱水ブレード部での繊維分散状態が固定化させず、さらに下流側の繊維分散力の劣るサクションボックスなどで固定化される。
【0017】
紙原料液の濃度が高すぎる場合には、繊維の不動化が発現し、対向脱水ブレード部の繊維分散力に対して繊維の再配置が促進されないため、繊維分散の向上が望めなくなる。従って、サクションフォーミングロールでの脱水率の制御によって、対向脱水ブレード部の繊維分散力に対して繊維の再配置が適切に促進、固定化される紙原料液の濃度が対向脱水ブレード部において確保されていることがパルプ繊維の分散性を良くするものと考えられる。
【0018】
本発明方法において、2つのワイヤを介して、対向脱水ブレード部の反対側に設置した複数の固定脱水ブレードからなるフォーミングシューでの脱水量については特に詳細な作用について言及はしない。これは、対向脱水ブレード部の可撓性脱水ブレードの印加によりワイヤ間の紙原料液内に発生するパルス状の脱水圧力と、そこでの原料濃度が繊維の分散に対して支配的であることによる。これに対し、フォーミングシューでの脱水量は、対向脱水ブレード部での原料濃度に対して相対的に脱水される。
【0019】
フォーミングサクションロールの制御により対向脱水ブレード部での脱水量がヘッドボックス内の紙原料液流量の2〜5重量%に調整されたときの、フォーミングシューでの脱水量は概ねヘッドボックス内の紙原料液流量の10〜15重量%となる。また、望ましくは、対向脱水ブレード部の可撓性脱水ブレードによって分散された繊維集合体を不動化させるための一助として、フォーミングシューに紙原料液から脱水された白水を吸引する吸引手段を設けて実施してもよい。
【0020】
前記本発明方法を実施するための本発明の抄紙機フォーマの脱水装置は、
各々ループをなす2つのワイヤ間に紙原料液を挟み込み、該ワイヤを走行させながら該紙原料液を脱水する抄紙機フォーマの脱水装置において、
前記2つのワイヤ間に紙原料液を供給するヘッドボックスと、
紙原料液が供給されるワイヤの入口部に配置され、該2つのワイヤを沿わせることにより湾曲したワイヤ走路を形成するとともに、紙原料液から脱水された白水を吸引する吸引手段を備えたサクションフォーミングロールと、
該サクションフォーミングロールのワイヤ走行方向下流側に配置され、該ワイヤに面して一方側に間隔を設けて複数の可撓性脱水ブレードが配置された対向脱水ブレード部と、該ワイヤの他方側に該可撓性脱水ブレードに対して複数の固定脱水ブレードが千鳥足状に配置されたフォーミングシューとからなる脱水機器と、
該対向脱水ブレード部で脱水された白水量を検出し該検出値が設定範囲に入るように該サクションフォーミングロールの吸引手段を制御する制御装置と、を備えたものである。
【0021】
本発明装置においては、前記サクションフォーミングロールの下流側に設けられるブレード部として、該ワイヤの一方側に面して間隔を設けて複数の可撓性脱水ブレードが配置された対向脱水ブレード部と、該ワイヤの他方側に面して該可撓性脱水ブレードに対して複数の固定脱水ブレードが千鳥足状に配置されたフォーミングシューとからなる脱水機構を構成する。
【0022】
かかる構成により、該可撓性脱水ブレードにより紙原料液に対する押圧力を最適な押圧力に調整できる。該可撓性脱水ブレードで紙原料液に対する押圧力を調整することによって、対向脱水ブレード部で紙原料液から脱水された白水量を適宜に調整することができる。
なおこの脱水機器で、脱水圧力により紙原料液内のパルプ繊維の動きを活発化して繊維分散性を向上させると共にその繊維を不動化させるために、好ましくは、フォーミングシューにおいて、固定脱水ブレード間から紙原料液から脱水された白水を吸引する手段を備えるとよい。
【0023】
また前記制御装置により、可撓性脱水ブレードで脱水される白水量をヘッドボックス内の紙原料液流量の2〜5重量%となるようにサクションフォーミングロールの吸引手段の真空値を制御する。これにより、対向脱水ブレード部における紙原料液内のパルプ繊維が再配置されることで、形成される紙匹の繊維分散性を向上でき、均質な紙を製造できる。
【0024】
本発明方法において、可撓性脱水ブレードを間隔をもうけて複数段に配置したとき、対向脱水ブレード部で最上流側に配置される第1段可撓性脱水ブレードで脱水された白水量を対向脱水ブレード部で紙原料液から脱水される白水量から除外することが望ましい。該第1段可撓性脱水ブレードの上流側に配置されたサクションフォーミングロールで脱水された白水の一部は、遠心力によって下流に飛散する。
この飛散した白水は第1段可撓性脱水ブレードで脱水された白水と合流する。従って、第1段可撓性脱水ブレードで紙原料液から脱水された白水を対向脱水ブレード部で脱水された白水量に加算すると、対向脱水ブレード部で脱水された実際の白水量ではなくなってしまう。
【0025】
従って、該第1段可撓性脱水ブレードで脱水された白水を対向脱水ブレード部で脱水された白水量から除外する必要がある。これを実現する装置構成としては、第1段可撓性脱水ブレードで掻き取られた白水が下流の可撓性脱水ブレードで掻き取られた白水と合流しないように、該第1可撓性脱水ブレードに仕切りを設け、該第1可撓性脱水ブレードで脱水した白水は個別にあるいはサクションフォーミングロールで脱水された白水と合流する構成にするとよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の脱水方法によれば、紙原料液をサクションフォーミングロールに沿わせて脱水する第1脱水工程と、ワイヤの一方の面に複数の可撓性脱水ブレードが配置され、他方の面に固定脱水ブレード部が配置されてなる脱水機構で紙原料液を脱水する第2脱水工程とからなり、該可撓性脱水ブレード部で紙原料液から脱水された白水量が該ヘッドボックス内の紙原料液流量の2〜5重量%となるようにサクションフォーミングロールに設けられた吸引手段の真空値を制御するようにするため、紙原料液の種類や配合条件又は叩解動力などの原料条件が変動した場合でも、紙原料液中でのパルプ繊維を再配置し、繊維分散性を高めるため、強度が大で印刷ムラのない均質な紙を製造することができる。しかも該サクションフォーミングロールの吸引手段の真空値を制御するだけのシンプルな制御であるため、操作が容易でかつその他の紙質の変化に与える影響も軽微である。
【0027】
また本発明の脱水装置によれば、サクションフォーミングロールのワイヤ走行方向下流側に配置され、該ワイヤに面して一方側に間隔をもうけて複数の可撓性脱水ブレードが配置された対向脱水ブレード部と、該ワイヤの他方側に面して該可撓性脱水ブレードに対して複数の固定脱水ブレードが千鳥足状に配置されたフォーミングシューとからなる脱水機器と、該可撓性脱水ブレードで紙原料液から脱水された白水量を検出し該白水量検出値を設定範囲に入るように該サクションフォーミングロールの吸引手段を制御する制御装置と、を備えたため、該制御装置により、可撓性脱水ブレードを操作して紙原料液から脱水された白水量を該ヘッドボックス内の紙原料液流量の2〜5重量%となるように制御することによって、紙原料液中のパルプ繊維の分散性を高め、均質な紙を製造することができる。しかもシンプルな制御であるため、制御装置が低コストで済み、操作が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、本発明をそれのみに限定する趣旨ではない。
(実施形態1)
【0029】
本発明の第1実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1は、本実施形態が適用される、ロールブレード脱水方式のツインワイヤフォーマの全体図である。
図1において、トップワイヤ1とボトムワイヤ2と挟まれた領域に紙原料液7が供給され、両ワイヤの走行に伴って紙原料液の脱水処理が行なわれる。ヘッドボックス6内には紙原料液7が供給されており、この紙原料液7はヘッドボックス6内から、トップワイヤ1とボトムワイヤ2とにより形成されたギャップ(抄紙用隙間)5に向けて噴出される。
【0030】
なおトップワイヤ1は、サクションフォーミングロール4、サクションクーチロール12及びガイドロール21A〜21Gによってガイドされる。またボトムワイヤ2は、ブレストロール3、サクションクーチロール12及びガイドロール21H〜21Mによってガイドされる。各ワイヤ1,2は矢印で示す方向に回動される。紙原料液はワイヤ1,2間に挟まれた隙間5内をワイヤ1,2とほぼ同速で走行しながら種々の脱水機器により脱水され、紙匹14へと形成されていく。
【0031】
即ち、ヘッドボックス6からギャップ5に向けて噴出された紙原料液7は、ワイヤ1,2とともにサクションフォーミングロール4の表面に沿って走行する。紙原料液7は、サクションフォーミングロール4の表面に沿って走行しながら、サクションフォーミングロール4の外側方向に遠心力を受けて該外側方向に脱水されるとともに、サクションフォーミングロール4の図示しない吸引手段に接続された吸引部4aから吸引されて脱水される。このように紙原料液7を両側から脱水することにより、表裏両面が均質な紙を得ることができる。
【0032】
次にサクションフォーミングロール4の下流側で、ワイヤ1,2の両側にフォーミングシュー9と対向脱水ブレード部8とが配置された加圧機構10に入る。加圧機構10では対向脱水ブレード部8とフォーミングシュー9とで紙原料液7を両側から脱水するとともに、対向脱水ブレード部8の脱水量を調節することにより、紙原料液7の繊維分散を良好に保ち、紙の品質を良好に維持する。
【0033】
紙原料液7は、対向脱水ブレード部8及びフォーミングシュー9の下流側でさらにサクションボックス11及びサクションクーチロール12で真空により脱水が行なわれ、紙匹14が形成される。形成された紙匹14は、ボトムワイヤ2上に移送されてさらにサクションボックス13で脱水される。その後紙匹14はサクションピックアップロール15によってボトムワイヤ2から分離し、次工程のプレスパートへ移送される。
【0034】
対向脱水ブレード部8及びフォーミングシュー9の詳細を図2により説明する。図2は、図1の対向脱水ブレード部8及びフォーミングシュー9の一部を断面図で示したものである。図2において、フォーミングシュー9及び対向脱水ブレード部8がトップワイヤ1、紙原料液7及びボトムワイヤ2を挟んで互いに対向するように配設されている。対向脱水ブレード部8はトップワイヤ1側に設けられ、フォーミングシュー9はボトムワイヤ2側に設けられている。
【0035】
対向脱水ブレード部8は、機器本体8a上に互いに間隔を置いて設置された複数個(1〜N個)の剛体の脱水ブレード31を備えている。なお図2では、ワイヤ走行方向上流側から順に第1脱水ブレード31(No.1)、第2脱水ブレード31(No.2)、第3脱水ブレード31(No.3)、・・・、第N脱水ブレード31(No.N)という。脱水ブレード31は通常3〜5個設けられる。
【0036】
これらの脱水ブレード31は、トップワイヤ1を押圧するが、この脱水ブレード31による押圧力は、運転中に外部より流体圧によって調節可能になっている。このため、各脱水ブレード31は、ベース32、チューブ34、支持部材35を介して、機器本体8a上に支持されている。そしてチューブ34内の流体圧(例えば空気圧、油圧等)を調整することによって脱水ブレード31のトップワイヤ1への押圧力が調整される。
【0037】
これにより、ワイヤ1,2間に挟まれて走行する紙原料液7中に発生する脱水圧力が調整されながら脱水が行なわれる。ここで脱水ブレード31には、トップワイヤ1側の面(これを作用面という)に、トップワイヤ1に当接してトップワイヤ1を支持するトップワイヤ当て当接部(以下、単に当接面という)31aが設けられている。また、脱水ブレード31の基端部にはT型形状をしたアリ溝31bが形成されている。このアリ溝31bにベース32の先端部32aを嵌合させることで、脱水ブレード31をベース32に一体結合させている。
【0038】
なお、脱水ブレード31をベース32に対して抄紙幅方向へ移動させることで、脱水ブレード31をベース32に対して抜き差しできるようにしている。さらに、ベース32は、機器本体8a上の突設された支持部材35の内面に沿って案内されながら、トップワイヤ1に対して離接し得る方向に移動可能に装備されている。つまり、ベース32と機器本体8aとの間には、伸縮可能なチューブ34が介装されている。
【0039】
流体圧給排装置36によって流体(空気又は油)の給排を行なってチューブ34の内部の流体圧(例えば、空気圧又は油圧等)を調整する。これによって、チューブ34の内圧状態を調節してチューブ34のベース32への圧接状態を調節し、これにより、ベース32をトップワイヤ1に対して離接し得る方向へ移動させることができるようになっている。
【0040】
例えば、チューブ34の内圧が増大すれば、チューブ34がベース32に圧接しながら、ベース32を機器本体8aに対して離隔する方向に、つまり、ベース32が紙原料液7の走行ラインに対して接近する方向へ移動する。チューブ34の内圧が減少すれば、チューブ34のベース32への圧接が弱まり、ベース32を機器本体8aに対して接近する方向へ、つまりベース32が紙原料液7の走行ラインに対して離隔する方向へ移動するようになっている。
【0041】
このようにベース32が紙原料液7の走行ラインに対して離接する方向へ移動すると、これに応じて脱水ブレード31も移動するので、紙原料液7に作用する押圧力が調整されることになる。このため、このような機器本体8aに対して可動なベース32と、伸縮可能なチューブ34と、このチューブ34の内圧を調整する流体圧給排装置36とから、押圧力調整機構が構成される。
【0042】
一方、対向脱水ブレード部8とワイヤ1,2を挟んで反対側に配置されたフォーミングシュー9には、機器本体41上に互いに間隔を置いて設置された複数の固定脱水ブレード40を備えている。固定脱水ブレード40は、可撓性脱水ブレード31に対してワイヤ走行方向で可動式脱水ブレード31の間に位置するように、即ち、可撓性脱水ブレード31に対して千鳥足状となるように配置される。
【0043】
これらの固定脱水ブレード40は、機器本体41の取付部42に装着されており、各固定脱水ブレード40は、平面部40aと傾斜面部40bとを備えたウェッジシェイプド(wedge−shaped)脱水ブレードとして構成されている。
このうち平面部(以下、単に平面という)40aは、ボトムワイヤ2のループ内に設けられて、ボトムワイヤ2に当接してボトムワイヤ2を支持するようになっている。傾斜面部(以下、単に傾斜面という)40bは、平面40aよりも走行方向上流側に形成されており、ワイヤ走行上流側に向かって次第にボトムワイヤ2から離隔するように形成されている。
【0044】
従って、傾斜面40bとボトムワイヤ2との間には、楔状の空間(これをwedge−shaped spaceという)40cが形成されている。なお、傾斜面40bの傾斜角θをウェッジアングル(wedge−angle)という。ここで、これらの固定脱水ブレード40による押圧力は、ワイヤ1,2の張力,脱水ブレード配設位置での紙原料液7を挟んだワイヤ1,2の曲率半径及び脱水ブレード取付けピッチに基づいて決定される。
また機器本体41には、固定脱水ブレード40の間に吸引孔43が設けられ、該吸引孔43は図3に図示された真空吸引装置44に接続されている。
【0045】
紙原料液7はワイヤ1,2に挟まれた状態で対向脱水ブレード部8及びフォーミングシュー9を通過する際、可撓性脱水ブレード31及び固定脱水ブレード40によって両側から加圧され、ワイヤ間の紙原料液内に脱水圧力が発生することにより脱水される。
このとき本実施形態では、対向脱水ブレード部8で紙原料液7から脱水される白水の量を検出し、該検出値がヘッドボックス6を流れる紙原料液7の流量の2〜5重量%となるように制御する。この制御装置については図3に基づいて後述する。
【0046】
図3は、サクションフォーミングロール4と対向脱水ブレード部8及びフォーミングシュー9の一部拡大断面図である。図3において、対向脱水ブレード部8を覆うケーシング51が設けられ、対向脱水ブレード部8で脱水された白水wは、外部に飛散しないようにケーシング51で受け、ケーシング51に接続された白水排出管52から排出される。白水排出管52には脱水量検出器53が介設され、脱水量検出器53の脱水量検出値は制御装置54に送信される。なお、ケーシング51には白水の排出を容易にするため、真空吸引装置56が設けられている。
【0047】
一方、サクションフォーミングロール4の周面を形成する外筒61には、サクションフォーミングロール4の長手軸方向に平行に多数の吸引孔62が設けられている。また外筒61は図示しない回転駆動装置により、その周速度がワイヤ1,2の走行速度と適合する一定の速度で矢印a方向に回転する。外筒61の内側にはワイヤ1,2に対面する側に吸引ボックス63が設けられ、吸引ボックス63は吸引管64を介して真空吸引装置65に連通されている。吸引ボックス63は固定されており、外筒61は固定された吸引ボックス63上を摺動する。
【0048】
また、フォーミングシュー9は、複数のケーシングに分割され、それぞれのケーシングで図2に図示された吸引孔43に連通した真空吸引装置44と白水排出管45とが設けられている。なお、最上流側に設けられた固定脱水ブレード40(No.1)は、ワイヤ2の背面に付着してワイヤ2とともに連れ回る白水がフォーミングシュー9内に浸入するのを防止し、かつワイヤ1,2の変形を防止するために、ワイヤ走行方向に幅広に形成されている。
【0049】
かかる構成において、ワイヤ1,2及びワイヤ1,2間に挟まれた紙原料液7がサクションフォーミングロール4まで走行すると、ワイヤ1,2の走行路は、サクションフォーミングロール4の外筒61の曲率に合った湾曲部cを形成するため、該湾曲部に遠心力が働く。紙原料液7は、該遠心力によりサクションフォーミングロール4の外方(矢印w1の方向)に脱水される。同時に紙原料液7は吸引ボックス63上に位置した吸引孔62から白水wが吸引・保持され、w2の方向に脱水される。このように、紙原料液7をワイヤ1,2の両側から同時に脱水するので、抄紙された紙匹の表裏両面が均一な紙を製造できる。
【0050】
サクションフォーミングロール4の下流側で、紙原料液7は、フォーミングシュー9と対向脱水ブレード部8により両側から脱水される。このとき対向脱水ブレード部8の流体圧給排装置36から流体が伸縮性チューブ34に供給されて、可撓性脱水ブレード31によってトップワイヤ1に所定の押圧力を付加する。
【0051】
本実施形態では、可撓性脱水ブレード31ごとの押圧力の制御は行なわず、全脱水ブレード31で加圧力が同一の一括加圧制御を行なっている。そのため複雑な加圧制御装置を必要としない。対向脱水ブレード部8で脱水された白水は、ケーシング51で集められ、白水排出管52から排出される。このとき白水排出管52に介設された脱水量検出器53で脱水量が検出され、この脱水量検出値が制御装置54に送信される。
【0052】
制御装置54では送信された脱水量検出値がヘッドボックス6内の紙原料液7の流量の2〜5重量%となるように、サクションフォーミングロール4の真空吸引装置65の減圧値を制御する。即ち、該脱水量検出値が2重量%未満の場合は、真空吸引装置65の吸引圧力を下げ、サクションフォーミングロール4での脱水量を減らす。一方、該脱水量検出値が5重量%より大きい場合は、真空吸引装置65の吸引圧力を上げ、サクションフォーミングロール4での脱水量を増やすようにする。このようにサクションボックス11での脱水量を制御することによって、対向脱水ブレード部8での脱水量を調整している。
【0053】
図4は、坪量が30〜80g/mの紙匹を製造した場合の実験データを示す。縦軸がパルプ繊維の分散性の良否を示す坪量のばらつきの標準偏差σであり、横軸がヘッドボックス6を流れる紙原料液7の流量に対する対向脱水ブレード部8での脱水量の割合を示す。
【0054】
図4から、対向脱水ブレード部8での脱水量の割合が2〜5重量%のときに標準偏差σの値が最も小さいことがわかる。即ち、この範囲で形成された紙匹の坪量のばらつきが最も小さいことを示している。これはこの範囲で繊維分散性が良好であることを示しており、均一な紙質になっているのがわかる。
【0055】
なお、ヘッドボックスを流れる紙原料液の固形分濃度は約1重量%であり、フォーマ出口での固形分濃度は約20重量%であり、紙製造後の紙巻き取り時において約95重量%となる。本実施形態において、ヘッドボックス6での紙原料液の水量を100%としたとき、サクションフォーミングロール4で該水量の70〜80%が脱水され、対向脱水ブレード部8で該水量の2〜5%が脱水され、フォーミングシュー9で該水量の10〜15%が脱水され、下流側のサクションボックス11及び13で該水量の10〜15%が脱水される。
【0056】
本実施形態では、図3に示すように、サクションフォーミングロール4と対向脱水ブレード部8との間に白水ガイド板55を設けている。また対向脱水ブレード部8の第1脱水ブレード31(No.1)にケーシング51の一部を形成する仕切り51aを設け、第1脱水ブレード31(No.1)により脱水された白水wがケーシング51の内部に流入しないようにしている。この理由は以下のとおりである。前述の数値で示すように、サクションフォーミングロール4では紙原料液7から脱水された白水の量が非常に多い。そのため、トップワイヤ1側へ脱水される白水の全量が吸引孔62から吸引されるわけではなく、サクションフォーミングロール4で脱水した白水wは、矢印w2で示すとおり下流側に飛び散ってケーシング51の隔壁とトップワイヤ1との間の隙間からケーシング51の内部に入り込む現象が生じる。
【0057】
従って、第1脱水ブレード31(No.1)の上流側で発生する白水量を対向脱水ブレード部8で脱水される白水量として加えると、対向脱水ブレード部8の実際の白水量とは乖離してしまう。そのため本実施形態では、サクションフォーミングロール4と第1脱水ブレード31(No.1)との間に白水ガイド板55を設けて、サクションフォーミングロール4で脱水した白水が対向脱水ブレード部8側に飛び散るのを遮蔽し、かつ仕切り51aによりケーシング51の内部に該白水が浸入するのを防止している。
【0058】
このように本実施形態では、対向脱水ブレード部8の可撓性脱水ブレード31の紙原料液に対する押圧力又はその位置を調整するのではなく、サクションフォーミングロール4の真空吸引装置65の減圧値をパラメータとして調整することにより、対向脱水ブレード部8での脱水量を制御するようにしている。この制御方法は紙原料液の種類や配合条件等の原料条件が変動した場合でも同様である。
【0059】
この理由は、紙原料液に含まれるパルプ繊維が、脱水圧力の作用を受けて繊維の再配置が可能な原料濃度でかつ対向脱水ブレード部8を通過した時点では繊維が不動化するのに最適な濃度となるサクションフォーミングロール4及び対向脱水ブレード部8での脱水率の制御がパルプ繊維の分散性を良くするものと考えられる。
【0060】
このように本実施形態によれば、紙原料液の種類や配合条件など原料条件が変動した場合でも、簡単な制御装置を用いて対向脱水ブレード部8の脱水量をヘッドボックスにおける紙原料液流量の2〜5重量%になるように制御することにより、繊維分散性を良好にして、紙質が常に最適な地合になるように制御することができる。従って、均質で強度にムラがなく、凹凸がないため、印刷ムラのない上質紙を製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、ロールブレード脱水形式のツインワイヤフォーマにおいて、簡単な制御により製造された紙のパルプ繊維の分散性を向上させることにより、均一な紙質の紙を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態が適用される、ロールブレード脱水形式のツインワイヤフォーマの全体図である。
【図2】図1の加圧領域10の断面図である。
【図3】前記第1実施形態の一部拡大断面図である。
【図4】前記第1実施形態で紙匹を製造した場合の実験データである。
【符号の説明】
【0063】
1 トップワイヤ
2 ボトムワイヤ
4 サクションフォーミングロール
6 ヘッドボックス
7 紙原料液
8 対向脱水ブレード部
9 フォーミングシュー
10 加圧機構
31 可撓性脱水ブレード
31(No.1) 第1脱水ブレード
40 固定脱水ブレード
51 ケーシング
51a 仕切り
52 白水排出管
53 脱水量検出器
54 制御装置
55 白水ガイド板
65 真空吸引装置(吸引手段)
c 湾曲部
w 白水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々ループをなす2つのワイヤ間に紙原料液を挟み込み、該ワイヤを走行させながら該紙原料液を脱水する抄紙機フォーマの脱水方法において、
ヘッドボックスから前記2つのワイヤ間に供給された紙原料液をサクションフォーミングロールに沿わせて脱水する第1脱水工程と、
該サクションフォーミングロールの下流側で該ワイヤの一方側に面して可撓性脱水ブレードが配置され、該ワイヤの他方側に面して固定脱水ブレード部が配置されてなる脱水機構に紙原料液を挟んだワイヤを走行させて紙原料液を脱水する第2脱水工程とからなり、
該可撓性脱水ブレードにより紙原料液から脱水された白水量が該ヘッドボックス内の紙原料液流量の2〜5重量%となるように該サクションフォーミングロールに設けられた吸引手段の真空値を制御することを特徴とする抄紙機フォーマの脱水方法。
【請求項2】
前記可撓性脱水ブレードを互いに間隔を設けて複数段に配置し、最上流側に配置された第1段可撓性脱水ブレードで紙原料液から脱水された白水を前記白水量から除外することを特徴とする請求項1に記載の抄紙機フォーマの脱水方法。
【請求項3】
各々ループをなす2つのワイヤ間に紙原料液を挟み込み、該ワイヤを走行させながら該紙原料液を脱水する抄紙機フォーマの脱水装置において、
前記2つのワイヤ間に紙原料液を供給するヘッドボックスと、
紙原料液が供給されるワイヤの入口部に配置され、該2つのワイヤを沿わせることにより湾曲したワイヤ走路を形成するとともに、紙原料液から脱水された白水を吸引する吸引手段を備えたサクションフォーミングロールと、
該サクションフォーミングロールのワイヤ走行方向下流側に配置され、該ワイヤに面して一方側に間隔を設けて複数の可撓性脱水ブレードが配置された対向脱水ブレード部と、該ワイヤの他方側に該可撓性脱水ブレードに対して複数の固定脱水ブレードが千鳥足状に配置されたフォーミングシューとからなる脱水機器と、
該対向脱水ブレード部で脱水された白水量を検出し該検出値が設定範囲に入るように該サクションフォーミングロールの吸引手段を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする抄紙機フォーマの脱水装置。
【請求項4】
前記フォーミングシューの固定脱水ブレード間から紙原料液から脱水された白水を吸引する吸引手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の抄紙機フォーマの脱水装置。
【請求項5】
前記対向脱水ブレード部の可撓性脱水ブレードのワイヤ脱水面を覆うように形成されるとともに、紙原料液から脱水された白水を集めて排出する排出路を備えたケーシングと、該排出路に設けられた白水量検出器と、を備え、
該第1可撓性脱水ブレードで脱水された白水が該排出路に流入しないようにする仕切りを設けたことを特徴とする請求項3に記載の抄紙機フォーマの脱水装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−240161(P2008−240161A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77671(P2007−77671)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(507009216)メッツォ ペーパー インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】