説明

抄紙機用フォーマ及びフォーマ装置並びにフォーマの掻取型ブレード制御方法。

【課題】掻取型ブレードを適切に調整することができるようにした抄紙機用フォーマ及び抄紙機用フォーマ装置並びに抄紙機用フォーマの掻取型ブレード制御方法を提供する。
【解決手段】ループ状に形成されて紙原料液を挟んで湿紙として搬送する第1ワイヤ3A及び第2ワイヤ4Aと、両ワイヤ3A,4Aにより形成されるギャップに紙原料液2Aを噴射するヘッドボックス40Aと、第2ワイヤ4Aと接するサクションフォーミングロール12Aと、その下流に、第2ワイヤ4Aに摺接するフォーミングシュー13Aと、サクションフォーミングロール12Aとフォーミングシュー13Aとの間に配設され、第1ワイヤ3Aに摺接し、第1ワイヤ3Aに対して進退する方向あるいは第1ワイヤ3Aの走行方向と略平行に変位制御可能な掻取型ブレード14Aを備え、湿紙の厚さに基づいて掻取型ブレードの位置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機において、紙原料液から湿紙を形成するフォーマ及び複数のフォーマからなるフォーマ装置並びにフォーマの掻取型ブレード制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙機のフォーマ部ではヘッドボックスから噴射したパルプ懸濁液(紙原料液)をワイヤ等により保持した状態で脱水することにより、流動状態にあるパルプ繊維をマット状にして湿紙を形成する。
湿紙が形成されていく過程では、脱水機器の形状、脱水能力あるいは配置によっては脱水不足や湿紙形成能力の低下が生じ、紙の欠陥や紙品質の低下を招くため、脱水安定性や脱水能力を高めることが重要である。一方、近年益々要求が高まる生産能力の向上のため、更により高速でより高坪量まで安定して脱水及び紙層形成できるフォーマが求められるようになってきた。
【0003】
そこで、脱水を安定させたり脱水能力自体を高めたりして脱水性能を従来以上に向上することが課題となっており、フォーマの脱水性能を向上させるための技術も種々提案されている。
例えば特許文献1には上側抄網ベルト(トップワイヤ)と下側抄網ベルト(ボトムワイヤ)との間に紙原料液を噴射して湿紙を形成するツインワイヤ式のフォーマが提案されている。
【0004】
この特許文献1によると、図8に示すように、フォーマがトップワイヤ103とボトムワイヤ104とを備えており、紙原料液102が上下のワイヤ103,104の間に形成される抄紙用ギャップの上端部に向けて噴射される。紙原料液102がトップワイヤ103あるいはボトムワイヤ104に着地する部分(着地点)の近傍には、ブレストロール111及び真空ロールであるサクションフォーミングロール112が備えられており、ブレストロール111及びサクションフォーミングロール112は上下のワイヤ103,104を上下方向から挟み込むように配置されている。トップワイヤ103はこのブレストロール111及びガイドロール116a,116b,116cにより、ボトムワイヤ104はこのサクションフォーミングロール112及びガイドロール116a,116b,116d等により、それぞれ案内されて回転走行し、両ワイヤ103,104間に抄紙用ギャップが形成される。そして、サクションフォーミングロール112の下流側には、トップワイヤ103に外側(つまり、各ワイヤ103,104を挟んでサクションフォーミングロールの反対側)から摺接するようにフォーミングシュー113が備えられている。また、フォーミングシュー113の下流には、ボトムワイヤ104に外側から摺接するようにサクションボックス117が備えられている。
【0005】
これにより、上下のワイヤ103,104及びワイヤに挟まれた紙原料液102は、着地点からサクションフォーミングロール112の外周に沿って下斜め方向に湾曲し、その後、フォーミングシュー113の曲率面に沿って逆方向に湾曲した後、サクションボックス117に沿って略直線状に形成されるため、S字状にラップ(つまり、ロール等に沿って湾曲)しながら走行することになる(以下、単にS字ラップという)。
【0006】
特許文献1にて提案された脱水機器の配置は、例えば特許文献2や特許文献3で提案されているような主に上質紙等の薄紙を対象としたフォーマにおいての脱水機器の配置と比較して、上下のワイヤ103,104がロールにラップする角度が大きく、脱水距離が長く取れるため、特に、原料の脱水抵抗が高くフォーミングロールでの脱水能力をより多く要求される高坪量の板紙あるいは段ボール等の中芯紙を抄造するのに適している。
【0007】
この特許文献1の技術を多層抄紙フォーマ(多層フォーマ)に適用し、上流で抄紙された湿紙に下流でさらに抄き合わせて、より高坪量の湿紙を得る技術が特許文献4に記載されている。この特許文献4における脱水機器の配置は基本的には特許文献1と同種のものである。
特許文献4と同じく下流で抄き合わせる他の技術としては特許文献5のものが挙げられる。この技術でも、フォーミングロール出側のワイヤは下方に向かって走行し、特許文献3及び4に比べると脱水距離が長く取れるため、上記同様に原料の脱水抵抗が高く、フォーミングロールでの脱水能力をより多く要求される高坪量の板紙・中芯紙を抄造するのに適している。
【特許文献1】特開平11−269793号公報
【特許文献2】特許第3297057号公報
【特許文献3】特開平2004−19076号公報
【特許文献4】特開平10−183487号公報
【特許文献5】米国特許第5788816号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、高坪量紙を製造するには、ヘッドボックスからの紙原料液(パルプ懸濁液)の噴射量(単位時間当たりの固形分量)を多くすることになるが、一台のフォーマでは抄造可能な坪量には限界があるので、厚紙或いは板紙などの高坪量紙を製造するには、フォーマ部に複数のフォーマを直列に備え、一つのフォーマで形成した湿紙の上に別のフォーマで形成した湿紙を重ね合わせていき大きな坪量の湿紙を形成する、いわゆる上述のような多層フォーマが適用される。
【0009】
抄紙機の生産能力をさらに向上させ、より高速でより高坪量であっても安定して脱水及び紙層形成できるフォーマが求められている現在、以下の2点が課題として挙げられる。
第一の課題は一つのフォーマで形成できる坪量の限界を引き上げることであり、第二の課題は湿紙と湿紙とをの抄き合わせ面の層間強度を高くすることである。
特許文献1及び特許文献4のものではサクションフォーミングロールの出側付近で上下のワイヤと各ワイヤに挟み込まれた紙原料液とを対向方向(トップワイヤ側)からフォーミングシューで押さえつけることによりS字ラップを形成している。これにより、特許文献5のものに比べて、サクションフォーミングロール出側以降で遠心側に膨れようとするトップワイヤを押さえ込み、ワイヤの変形や坪量の幅方向における不安定な紙層形成を抑制する働きがある。
【0010】
ところで、S字ラップを適切に形成する為にはトップワイヤ側から上下のワイヤを押さえつける押し込み量を形成される湿紙の厚さに応じて調整することが望ましい。ところが、複数の脱水ブレード及び真空装置などが付加されているフォーミングシューによってS字ラップを形成する場合には、後述する理由により適切なS字ラップを形成することに限界がある。このため、一つのフォーマで形成できる坪量の限界をより引き上げることには一定の制限がある。
【0011】
すなわち、フォーミングシュー本体は比較的大きな箱状の機器であり、これを運転中に形成される湿紙の厚さに応じて調整することは困難であるため、一般的にはフォーミングシューの配置位置が生産需要の中心となる坪量に対応した位置にセットされ、その後はほとんど調整されないのが通常である。
また、フォーミングシューの位置調整を行う際にもっとも精緻に位置調整されるのがフォーミングシュー先端(上流側端部)の第一ブレード(リードインブレード)の位置であり、このリードインブレードとワイヤとのあたり角度を主として調整できるように、リードインブレードの先端を回転中心として回動するようにフォーミングシューボックスの調整がなされるため、フォーミングシュー下流側のワイヤとの接触状態が不十分となる可能性がある。
【0012】
この接触不十分な状態は、より高坪量を抄紙する場合であるほどますます顕著となり、これに起因して紙層形成が不安定になって紙欠陥や力学物性の低下を誘発してしまう。
この課題を解決するために、本発明者らは、平成16年及び17年紙パルプ技術協会年次大会において、図9に示すように一つの掻取型ブレード115をサクションフォーミングロール112Aの出側付近に配設して、S字ラップを形成できるとともに、上下のワイヤ103A,104Aに対する押し込み量(押し付け力)を、紙欠陥の発生や不安定な紙層形成が最小となるように調整可能な装置構成を提案した。
【0013】
これは押し込み量が小さすぎる場合には、ワイヤと掻取型ブレード115との接触状態が不十分となり上述したように不安定な紙層形成を引き起こす。また、ブレードの先端とワイヤとの間に接触ムラが発生し、局所的に隙間が生じることにより、その隙間から脱水された水が浸入する(白水の潜り込みという)ことなどにより、ストリークや紙幅方向での地合いムラなどを顕在化させる。一方、押し込み量が過大になると、ワイヤ間の原料層に過度のせん断力を与え、やはり不安定な紙層形成を引き起こし紙の力学物性が減少するなどの原因となる。
【0014】
したがって、一つの掻取型ブレード115の押し込み量は、製品の品質を確保でき且つフォーマにおいて必要な紙層形成能力を確保できるものに設定すべきである。
第二の課題である抄き合わせ面の層間強度を高くすることについては、重ね合わせる湿紙同士が十分結合するために、各湿紙のお互いに重ね合わさる面には、微細繊維の歩留まりが十分にあることが好ましい。
【0015】
ところが、特許文献1の技術では、下流側フォーマに搬送される際に上向きになる湿紙の上面は、トップワイヤ103に摺接してフォーミングシュー113によって脱水されるため、フォーミングシュー113での脱水作用によって、湿紙上面の微細繊維が脱落する。このため、特許文献1のものでは湿紙の上面側の繊維が粗くなり、上から湿紙を重ね合わせた場合に抄き合わせ面の接着強度が相対的に低下し、最終製品の層間強度の低下、あるいは、これを防止するために強度確保を目的とした層間接着剤などの薬品の添加量が増加するなどの不都合が生じる。
【0016】
この課題を解決するために、本発明者らは、上記平成16年及び17年紙パルプ技術協会年次大会において、フォーミングシュー113Aが下面側のワイヤに摺接するように備えられたツインワイヤ式のフォーマを提案している。
このフォーマは、図9に示すように、サクションフォーミングロール112Aの下流に備えるフォーミングシュー113Aをサクションフォーミングロール112Aと同様にボトムワイヤ104A側に配置しており、フォーミングシュー113Aによって脱水された面を下向きにして、フォーマから下流側のプレス部又は下流側フォーマに搬送されるように構成されている。
【0017】
このようにすれば、湿紙の上面側はフォーミングシュー113Aと接することがなく、湿紙上面側の微細繊維は脱水作用によって脱落することなく紙層形成されるので、下流で他の湿紙と重ね合わせる場合に微細繊維の多い面と重ね合わせることができ、最終製品の層間強度の向上、あるいは、上記の添加薬品量の低減など紙品質上及び操業上において有効である。
【0018】
ところが、上記の提案技術において上記の第一の課題及び第二の課題をより高精度に解決するためには、本来、掻取型ブレード115によるワイヤの押し込み量がフォーマの運転状態に応じて調整されることが好ましいが、上記提案技術では、掻取型ブレード115の位置調整は運転開始前に行われるのみであったり、あるいは、運転開始後は作業者により手動で定期的に位置調整が行われるのみであり、掻取型ブレード115の押し込み量の調整にかかる精度に限界があった。
【0019】
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、掻取型ブレードを用いてサクションフォーミングロールからフォーミングシューへ走行する上下のワイヤ及びそのワイヤに挟まれた紙原料層がS字ラップするように配設され、フォーミングシューによる脱水面を下向きにして湿紙を排出可能な構成としながら、製造する紙品質を向上させ且つ必要な脱水能力を得られるようにS字ラップを構成する掻取型ブレードを適切に調整することができるようにした抄紙機用フォーマ及び抄紙機用フォーマ装置並びに抄紙機用フォーマの掻取型ブレード制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の目的を達成するために、請求項1記載の本発明の抄紙機用フォーマは各々ループ状に形成されて紙原料液を挟んで湿紙として搬送する第1ワイヤ及び第2ワイヤと、上記第1ワイヤと上記第2ワイヤとにより形成される抄紙用ギャップの上流端部に上記紙原料液を噴射するヘッドボックスと、上記抄紙用ギャップの上流端部近傍に配設され、上記第2ワイヤと接するサクションフォーミングロールと、上記サクションフォーミングロールよりも下流に、上記第2ワイヤに摺接するように配設されたフォーミングシューと、を備え、上記サクションフォーミングロールが、上記フォーミングシュー及びフォーミングシューの下流に備えられたクーチロールよりも上方に配置されるとともに、上記サクションフォーミングロールと上記フォーミングシューとの間に配設され、上記第1ワイヤに摺接し、上記第1ワイヤに対して進退する方向あるいは上記第1ワイヤの走行方向と略平行に変位制御可能な掻取型ブレードと、上記掻取型ブレードを通過する上記湿紙の厚さに基づいて上記掻取型ブレードの位置を制御する制御手段と、を備えていることを特徴としている。
【0021】
また、請求項2記載の本発明の抄紙機用フォーマは請求項1のものにおいて、上記ヘッドボックスから噴射される上記紙原料液の吐出条件情報と上記フォーミングロールの脱水条件情報から上記掻取型ブレードを通過する上記湿紙の厚さを取得する湿紙厚取得手段と、演算された厚さに応じて上記掻取型ブレードの位置を制御する制御手段と、を備えていることを特徴としている。
【0022】
また、請求項3記載の本発明の抄紙機用フォーマは、請求項2のものにおいて、上記ヘッドボックスからの吐出条件情報から上記フォーミングロール上に進入する紙原料液中の単位時間当たりの固形分量と、上記フォーミングロールの脱水量ある意は脱水率と、上記フォーミングロールの原料歩留りの値とから上記湿紙の厚さを算出することを特徴としている。
【0023】
この場合、上記湿紙厚取得手段が、上記ヘッドボックスの噴出量と上記紙原料液の流量と上記紙原料液の濃度と抄紙速度とを含む上記紙原料液の吐出条件情報を取得し、取得した吐出条件情報からフォーミングロール上に進入する紙原料液中の単位時間当たりの固形分量(坪量に相当する)を求める固形分量算出手段と、脱水量計測装置あるいはあらかじめ坪量及び抄紙速度ごとに検量された脱水能力線図から上記フォーミングロールの脱水率又は脱水量を取得してこの脱水率又は脱水量から掻取型ブレードの入り側付近の紙原料液の濃度を取得する紙原料液の濃度取得手段と、上記フォーミングロールでの脱水時に白水と共に排出される固形分量を取得し、原料吐出時の固形分量(単位時間当たりの固形分量)からこの排出される固形分量を差し引くことにより、上記フォーミングロールの原料歩留りの値を取得する歩留まり取得手段と、を備えるようにする。そして、固形分量(坪量)及び掻取型ブレードの入り側付近の紙原料液の濃度に対する原料厚さ特性図を予め用意して、この原料厚さ特性図を用いて、原料歩留りを考慮した固形分量と紙原料液の濃度とから、原料厚さ(湿紙厚さ)を求めるようにすることができる。
【0024】
また、請求項4記載の本発明の抄紙機用フォーマは請求項2のものにおいて、上記湿紙厚取得手段は、上記掻取型ブレードの上流近傍で、ワイヤ厚さを含む原料厚さを計測する変位センサを備えていることを特徴としている。
また、請求項5記載の本発明の抄紙機用フォーマは請求項1〜4のいずれか1項のものにおいて、上記ヘッドボックスは、上記抄紙用ギャップの上流端部に向けて水平よりも上方に向けて上記紙原料液を噴射することを特徴としている。
【0025】
また、請求項6記載の本発明の抄紙機用フォーマは請求項1〜5のいずれか1項のものにおいて、上記掻取型ブレードの長さが10mmから200mmの範囲であることを特徴としている。
また、請求項7記載の本発明の抄紙機用フォーマは請求項1〜6のいずれか1項のものにおいて、上記第2ワイヤが上記サクションフォーミングロールの周面に接する位置から離れる位置までの接触量である上記フォーミングロールにおけるラップ角が、70度以上125度以下であるとともに、上記フォーミングロールの直径が1500mm以上2100mm以下であることを特徴としている。
【0026】
また、請求項8記載の本発明の抄紙機用フォーマは請求項1〜7のいずれか1項のものにおいて、上記フォーミングシューの下流側に、上記第1ワイヤに摺接するように配設されたサクションボックスを少なくとも1つ以上備えていることを特徴としている。
また、請求項9記載の本発明の抄紙機用フォーマ装置は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の抄紙機のフォーマが適用された第1フォーマと、上記第1フォーマの下流側に少なくとも一つの下流側フォーマとを備え、上記第1フォーマにおいて形成した上記湿紙の上に、下流側フォーマにおいて形成した上記湿紙を重ね合わせる多層フォーマとして構成されたことを特徴としている。
【0027】
また、請求項10記載の本発明の抄紙機用フォーマ装置は請求項9のものにおいて、上記下流側フォーマの少なくとも一つに請求項1〜8のいずれか1項に記載の抄紙機のフォーマが適用されたことを特徴としている。
この場合、第1フォーマの直ぐ下流の下流側フォーマに請求項1〜8のいずれか1項に記載の抄紙機のフォーマを適用するのが好ましい。これにより、湿紙の微細繊維が歩留まっている面同士が接触するように湿紙を重ね合わせることになり、層間の接着強度が高まることで、最終製品の層間強度向上あるいは薬品量低減ができる。
【0028】
また、下流側の抄き合わせ用フォーマとして請求項8記載の本発明の抄紙機用フォーマを適用した場合には第2ワイヤ側にトランスファーサクションボックスを配設したことにより、形成された湿紙を円滑に第2ワイヤ側へ移送させることができ、安定した抄き合わせを実現できる。
また、請求項11記載の本発明の抄紙機用フォーマは請求項10のものにおいて、上記下流側フォーマは、上記フォーミングシューの下流側に、上記第2ワイヤに摺接するように配設されたサクションボックスを少なくとも1つ以上備え、上記サクションボックスのうち最下流のサクションボックスが上記各ワイヤが互いに離隔する際に上記湿紙を上記第2ワイヤに移送するトランスファーサクションボックスとして配設されたことを特徴としている。
【0029】
また、請求項12記載の本発明の抄紙機用フォーマは請求項10又は11のものにおいて、上記下流側フォーマの少なくとも一つには、上記各ワイヤを挟んで上記フォーミングシューと対向する位置に、可撓性を有する複数のブレードを上記第1ワイヤに摺接するように配設されたことを特徴としている。
たとえば最下流で形成される湿紙は、上流側で使用する原料と異なる原料で抄紙し、製品紙表層の面感を向上させる目的で抄き合わされる場合がある。上記フォーミングシューの対向位置から可撓性を有する複数のブレードを印加することによりパルス上の脱水圧力が原料層に作用し、繊維分散性が向上、地合に優れた紙層形成を行うことができる。
一般に、表層の面感向上を目的に抄き合わされる湿紙の坪量は、低坪量の場合が多いが、一方で紙欠陥や地合不良が目立ちやすいため、より美観に優れた製品紙を抄造するには湿紙の厚さに応じて変位制御可能な上記掻取型ブレードと可撓性を有する複数のブレードを配設することが有効である。
【0030】
また、請求項13記載の本発明の抄紙機用フォーマの掻取型ブレード制御方法は、各々ループ状に形成され第1ワイヤ及び第2ワイヤによって形成される抄紙用ギャップに紙原料液を挟んで搬送しながら上記紙原料液を脱水して湿紙を形成する抄紙機用フォーマであって、上記抄紙用ギャップの上流端部近傍に上記第2ワイヤと接するように配設されたフォーミングロールと、上記フォーミングロールよりも下流に上記第2ワイヤに摺接するように配設されたフォーミングシューと、を含む脱水機器と、上記フォーミングロールと上記フォーミングシューとの間に上記第1ワイヤに摺接するように配設され上記第1ワイヤに対して進退する方向あるいは上記第1ワイヤの走行方向と略平行に変位可能な掻取型ブレードの制御方法であって、掻取型ブレードを通過する上記湿紙の厚さ情報に基づいて上記掻取型ブレードの変位を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0031】
請求項1記載の本発明の抄紙機用フォーマ及び請求項13記載の本発明の抄紙機用フォーマの掻取型ブレード制御方法によれば、掻取型ブレードの第1ワイヤに対する進退する方向もしくはワイヤ走行方向のいずれかもしくは両方向を湿紙の厚さに基づいて適切に制御するので、製品紙の品質を確保しながら第2ワイヤがフォーミングシューに確実に圧接して遠心力などによる不安定な紙層形成及び過度な押し付けによる紙原料液へのせん断力を抑制し、1つのフォーマによってより高い坪量の紙を製造することが可能になる。
【0032】
請求項2記載の本発明の抄紙機用フォーマによれば、上記ヘッドボックスから噴射される上記紙原料液の吐出条件情報と上記サクションフォーミングロールの脱水条件情報から上記掻取型ブレードを通過する湿紙の厚さを推定する演算手段と、演算された厚さに応じて上記掻取型ブレードの位置を制御する制御手段を備えているので、坪量の変動や銘柄変更に伴う坪量の増減があっても掻取型ブレードの変位量を適切かつリアルタイムに変更でき、紙欠陥の発生抑制及び製品紙の高い品質確保ができる。
【0033】
請求項3記載の本発明の抄紙機用フォーマによれば、サクションフォーミングロールにおける原料歩留りを考慮して湿紙の厚みを求めるため、さらに湿紙の厚さの推定精度を向上させることができる。さらに、湿紙の厚さを推定する演算手段として、ヘッドボックス開度(噴射量)、原料の流量及び濃度、抄紙速度を含む上記紙原料液の吐出条件情報をDCS(Distributed Control System)などの抄紙機制御装置から入手し、上記サクションフォーミングロールの脱水量を、脱水量計測装置あるいはあらかじめ坪量及び抄紙速度ごとに検量された脱水能力線図から入手し、さらにサクションフォーミングロールでの脱水によって原料液から流出した固形分を差し引くために、上記サクションフォーミングロールの原料歩留りを歩留り計測装置あるいはあらかじめ坪量、抄紙速度及び歩留り向上剤添加量ごとに検量された歩留り能力線図から入手あるいは原料と上記サクションフォーミングロールで脱水された白水の濃度を計測して歩留りを計算した結果を入力するように構成すれば、たとえば脱水量や原料歩留りをリアルタイムで計測する設備を有していない抄紙機でも精度良く湿紙の厚さを推定でき、坪量の変動や銘柄変更に伴う坪量の増減があっても掻取型ブレードの変位量をさらに適切かつリアルタイムに変更でき、紙欠陥の発生抑制及び製品紙の高い品質確保ができる。
【0034】
請求項4記載の本発明の抄紙機用フォーマによれば、湿紙の厚さを上記吐出条件情報や上記サクションフォーミングロールの脱水条件情報から推定するための演算を行うことなく、湿紙の厚さ変化で変動する第1ワイヤの変位量を計測し、上記掻取型ブレードの位置を制御するため、制御のための装置構成が簡潔でかつ掻取型ブレードの変位量をさらに適切かつリアルタイムに変更でき、紙欠陥の発生抑制及び製品紙の高い品質確保ができる。
【0035】
請求項5記載の本発明の抄紙機用フォーマによれば、ヘッドボックスからの水滴や固着物の落下等により、上記ヘッドボックスから吐出される原料が乱れて紙欠陥を誘発したり、粕が抄き込まれて下流での紙切れしたりすることを低減することができる。
請求項6記載の本発明の抄紙機用フォーマによれば、掻取型ブレードの長さを10mm〜200mmに設定することで、上記サクションフォーミングロールと上記フォーミングシューとの間でS字のラップを形成し、上記サクションフォーミングロール出側以降において遠心側に膨れようとするワイヤを押さえ込み、ワイヤの変形や坪量の幅方向における不安定な紙層形成を抑制する。水のもぐりこみ抑制やワイヤとの接触による摩擦などの点から、より好ましくは掻取型ブレードの長さは90mm〜150mmが良い。
【0036】
請求項7記載の本発明の抄紙機用フォーマによれば、原料液を表裏バランスよく脱水し、かつ初期脱水として十分な脱水能力を確保できる。
請求項8記載の本発明の抄紙機用フォーマによれば、サクションボックスによって第1ワイヤ側からも脱水することで湿紙の水分濃縮を促進することができる。特に高坪量紙の場合、湿紙の水分濃縮状態を促進・調整することが益々要求され、かつフォーミングシューと逆面側から濃縮を行うため、効率的にかつ表裏バランスよく脱水濃縮できる。
【0037】
請求項9記載の本発明の抄紙機用フォーマ装置によれば、上流側の第1フォーマから、排出された湿紙の上面側はフォーミングシューによる微細繊維の脱落がないため、上面表層の微細繊維が十分歩留まっており、下流側フォーマにおいて形成した湿紙を上から重ね合わせる場合に上面側の微細繊維で他方の湿紙と密着、接着強度が相対的に増加するため、最終製品の層間強度向上あるいはスターチなどの層間強度向上のための薬品量低減ができる。また、第1フォーマによって従来よりも高い坪量の湿紙を1台のフォーマで製造することが可能となるので、高坪量の製品紙を生産する際に必要な抄き合わせ層数を低減することができる。
【0038】
請求項10記載の本発明の抄紙機用フォーマ装置によれば、上流側の第1フォーマから排出された湿紙の上面側はフォーミングシューによる微細繊維の脱落がないため、上面表層の微細繊維が十分歩留まっており、下流側フォーマにおいて形成した湿紙は第1フォーマとは逆に第2ワイヤにフォーミングシューが配設されているため、上から重ね合わせる場合に下面表層に微細繊維が歩留まっているため、これかが抄き合わされることによって湿紙間の密着が更に増し、最終製品の層間強度向上あるいはスターチなどの層間強度向上のための薬品量低減ができる。
【0039】
したがって、高坪量の湿紙同士を抄き合わせる場合の多い第1フォーマとその直後の下流フォーマとの抄き合わせにおいて、その下流フォーマを請求項1〜8のいずれか1項に記載の抄紙機用フォーマとすることが望ましい。
請求項11記載の本発明の抄紙機用フォーマによれば、サクションボックスによって湿紙の水分濃縮を促進するとともに、その後のトランスファーボックスによって下流側へ向かう第2ワイヤへ円滑に移送されるため、安定した抄き合わせを行うことができる。
【0040】
請求項12記載の本発明の抄紙機用フォーマ装置によれば、上記下流側フォーマにフォーミングシューと対向する位置が少なくとも一つに請求項1〜8のいずれか1項に記載の抄紙機のフォーマであり、上記フォーミングシューの対向位置に、可撓性を有する複数のブレードを上記下流用フォーマの第1ワイヤに摺接するように配設されているため、該ブレードを印加することによりパルス上の脱水圧力が原料層に作用し、繊維分散性が向上、地合に優れた紙層形成を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図5は本発明の第1実施形態にかかる抄紙機用フォーマ及びフォーマ装置を説明するためのものであって、図1はそのフォーマ装置の構成を模式的に示す図、図2はそのフォーマの構成を模式的に示す部分構成図、図3は紙原料の濃度と原料厚さとの対応関係を坪量毎に示すグラフ、図4は掻取型ブレード位置の位置と破裂強度との対応関係を示すグラフ、図5(A)〜(C)はいずれも、掻取型ブレードの位置とワイヤとの関係を示す部分拡大図である。
【0042】
まず、本実施形態にかかる抄紙機用フォーマについて説明する。図1に示すように、本実施形態では、第1フォーマ1A及び第2フォーマ1Bが備えられ、これらの2組のフォーマ1A,1Bからなる二層フォーマとして構成されており、各フォーマ1A,1Bでそれぞれ形成した紙層を重ね合わせて坪量の大きい紙層を形成することにより、厚紙や板紙等の坪量が大きい製品紙を抄造することができる構成になっているが、坪量が小さい製品紙を抄造する際には、第1フォーマ1Aのみを用いればよい。
【0043】
ここでは、第1フォーマ1Aの下流側に第2フォーマ1Bが配置されており、後述するように第1フォーマ1Aで形成される湿紙W1の上に第2フォーマ1Bで形成される湿紙W2が重ね合わされるようになっている。
以下、各フォーマ1A,1Bでそれぞれ形成した紙層を重ね合わせて高坪量の製品紙を生産する場合を説明する。
【0044】
まず、第1フォーマ1Aの構成について説明する。図1に示すように、第1フォーマ1Aは、ヘッドボックス40A,トップワイヤ(第1ワイヤ)3A,ボトムワイヤ(第2ワイヤ)4A,ブレストロール11A,サクションフォーミングロール12A,フォーミングシュー13A,掻取型ブレード14A,サクションボックス15A,センターロール16A,トランスファーボックス17A及び上記ワイヤをサポートする複数のロールを備えている。
【0045】
上側に配置されたトップワイヤ3A及び下側に配置されたボトムワイヤ4Aはいずれもメッシュ形状をなしており、それぞれエンドレスに循環するループ状に構成されている。
ヘッドボックス40Aは噴出口が略水平(略真横)あるいは水平(真横)よりもやや上向きに傾斜した方向に紙原料液2Aを噴射するように設置されている。ブレストロール11Aとサクションフォーミングロール12Aでガイドされたトップワイヤ3Aとボトムワイヤ4Aはギャップ(抄紙用ギャップ)を形成し、このギャップ空間の上流端部に向かって紙原料液2Aが吐出される。その後、紙原料液2Aはトップワイヤ3Aとボトムワイヤ4Aとによって把持され、順次サクションフォーミングロール12A,フォーミングシュー13A,サクションボックス15Aで脱水され、湿紙を形成するようになっている。
【0046】
特に、サクションフォーミングロール12A,フォーミングシュー13A,サクションボックス15A,センターロール16Aは、上方からこの順に配置されており、これらに沿って移動するトップワイヤ3A及びボトムワイヤ4Aは、サクションフォーミングロール12から下方に向かっている。センターロール16Aによって、ワイヤ及び湿紙は水平方向へと方向転換し、両ワイヤ3A,4Aが互いに離接する際にトランスファーボックス17Aによる吸引によりボトムワイヤ4Aへ湿紙を移送されるようになっており、下流に搬送される。
【0047】
また、サクションフォーミングロール12Aはロール径が1500mm(ミリメートル)〜2100mmの範囲で形成されており、ロール周面を形成するロールセルには多数の吸引孔が設けられ、ロールセル内部には真空吸引可能なボックスが組み込まれている真空吸引ロールであり、トップワイヤ3Aとボトムワイヤ4Aとに把持された紙原料液2Aはサクションフォーミングロール12Aの周面に接して湾曲して走行するようになっている。
【0048】
つまり、サクションフォーミングロール12Aでは、ワイヤに挟まれた紙原料液2Aがこのロール面に沿って走行するときに、紙原料液2Aが両ワイヤ3A,4Aで形成されたギャップ空間に呑み込まれる際の衝突圧及びボトムワイヤ4Aがロールに接触している際に発生するワイヤ間面圧に加え、紙原料液2A中の水分がトップワイヤ3A側には遠心力により、ボトムワイヤ4A側には真空吸引により脱水され、両面脱水されるようになっている。
【0049】
なお、サクションフォーミングロール12Aのロール表面に、両ワイヤ3A,4Aよりも目の粗いシュリンクワイヤを巻くなどして、吸引孔による局所的な脱水ムラを軽減することが望ましい。つまり、吸引孔に近い部分と吸引孔から遠い部分とでは紙原料液2Aの脱水度合いが異なるため紙原料液に局所的に脱水ムラが生じるのである。
また、両ワイヤ3A,4Aがサクションフォーミングロール12Aの周面に接する位置から離れる位置までの接触量をサクションフォーミングロール12Aに接している角度で示す場合、これをラップ角というが、このラップ角は、70度以上125度以下であることが好ましい。ラップ角がこの範囲よりも小さいと真空吸引領域(即ち、ボトムワイヤ4Aとサクションフォーミングロール12Aとが接する領域に対応する)が小さいため真空吸引による脱水を十分に行なうことができない。また、ラップ角がこの範囲よりも大きいと、真空吸引による脱水が過剰になって原料内の繊維が不動化し、フォーミングシュー13Aで適切な繊維分散を行うことができず、繊維が絡み合ったフロック(繊維塊)が顕在化し、地合の悪い不均一な紙層構造になり易い。
【0050】
また、ラップ角の上限はボトムワイヤ4A及びボトムワイヤ4A回りの機器類の配置からも規制される。
フォーミングシュー13Aは、サクションフォーミングロール12Aの下流側で、ボトムワイヤ4Aに摺接するように配設されている。このフォーミングシュー13Aには、図2に示すように複数の脱水ブレードが互いに間隔をあけて設けられており、これらの脱水ブレードの頂面(摺接する面)が並んで形成されるフォーミングシュー13Aの頂面は曲率半径R上に位置するように形成されている。
【0051】
ボトムワイヤ4A及びトップワイヤ3Aは、この脱水ブレードに摺接することで曲率半径Rのループ状に走行するようになっており、紙原料液2Aは、ボトムワイヤ4A及びトップワイヤ3Aに挟まれた略曲率半径Rのループ上を走行するようになっている。
フォーミングシュー13Aでの脱水についてより詳しく説明すると、フォーミングシュー13Aの頂面が曲率半径Rの凸状に形成され、ボトムワイヤ4A及びトップワイヤ3Aがこのフォーミングシュー13Aにワイヤテンション(両ワイヤ3A,4Aの引張応力)によって押し付けられながら走行するとともに、サクションフォーミングロール12Aと同等あるいはより高い真空を印加させ、これにより、概ねフォーミングシュー13A側に脱水を行い、湿紙(紙原料液2A)の脱水を促進する。
【0052】
この際、両ワイヤ3A,4Aが個々の脱水ブレード上を移動する際に発生する脱水圧力が、パルス状となって原料層に作用するため、繊維分散が促進される。
したがって、フォーミングシュー13Aによる脱水能力を高めるほど、フォーミングシュー13側へ脱水される割合は高まり、紙原料液2Aの微細繊維分布も、フォーミングシュー13側の面と他方の面とで異なるものになり、フォーミングシュー13A側の面では、真空印加による脱水により水分除去が促進される一方で、フォーミングシュー13A側の面の微細繊維が水分とともに奪われてしまうことになる。
【0053】
フォーミングシュー13Aの下流側には、サクションボックス15Aがトップワイヤ3Aに摺動するように配設されている。サクションボックス15Aはフォーミングシュー13Aで不動化した湿紙からさらに水分を除去するために設けられ、通常フォーミングシュー13Aよりも高い真空を印加し、この真空により紙原料液2Aをトップワイヤ3A側からさらに脱水するようになっている。これにより、フォーミングシュー13Aで除去されなかった水分を取り去ってさらに湿紙を濃縮する。
【0054】
特に高坪量の湿紙の場合には、フォーミングシュー13Aの脱水ブレードにより、フォーミングシュー13A面側の水分が掻き取られて除去される際に、反対面であるボトムワイヤ4A接触面側の水分はフォーミングシュー13A側に完全には移動していない。このため、フォーミングシュー13Aと対向方向からサクションボックス15Aにて吸引を行う事によって水分除去を行うことが効果的である。このとき、紙原料層はフォーミングシュー13Aでの脱水により繊維は概ね不動化してマット状となっており、サクションボックス15Aでの脱水量もフォーミングシュー13Aでの脱水量に比べて少ないため、脱水に伴う微細繊維の脱落は軽微で、サクションボックス15A側の微細繊維の量はフォーミングシュー13A側の微細繊維量に対して多い。
【0055】
なお、不動化とは原料から水分が除去されてある程度高濃度化して紙原料層の繊維同士が十分に接近した状態になると繊維同士が拘束しあって脱水時に紙原料液層に生じる水流があっても繊維が移動しなくなることをいう。このとき、紙原料液層の繊維(特にフォーミングシュー13A側)はマットを形成してフィルターのような目の詰まった状態となり、脱水とともに失う微細繊維の量なども減少する。
【0056】
そして、サクションフォーミングロール12A、フォーミングシュー13A及びサクションボックス15Aを経て十分に脱水された紙原料液2Aは、十分に固相を呈した紙層(湿紙)W1を形成するようになっている。サクションボックス15Aの下流側では両ワイヤ3A,4Aの経路がセンターロール16Aを経て略水平になり、トランスファーボックス17Aにおいて、湿紙をボトムワイヤ4A側に移送してトップワイヤ3Aと分離し、ボトムワイヤ4Aの下方に備えられた種々脱水機器あるいはワイヤサポート機器(図示せず)によって、湿紙W1はボトムワイヤ4の側に案内され次工程に搬送されるようになっている。
【0057】
掻取型ブレード14Aは、サクションフォーミングロール12Aとフォーミングシュー13Aとの間の、ボトムワイヤ4Aがサクションフォーミングロール12Aから離隔する位置よりも下流側に設けられている。
掻取型ブレード14Aの形状は脱水された水がトップワイヤ3Aと掻取型ブレード14Aとの間に潜りこまない様にブレードの先端がワイヤに対して的確に接触するために掻取形状をしている。なお、トップワイヤ3と接触する部分の長さは10mm〜200mmの範囲内であることが好ましい。
【0058】
この掻取型ブレード14Aは、トップワイヤ3Aに摺接し、トップワイヤ3Aを外側からボトムワイヤ4A側に押し込むようにトップワイヤ3Aに対して進退する方向もしくあるいはワイヤ両ワイヤ3A,4Aの走行方向と略平行な方向のいずれかもしくは両方向に変位可能に構成されている。
まず、図2を参照して、このコントロールブレード14Aの役割を説明する。図2に示すように、サクションフォーミングロール12A及びその下流に隣接するフォーミングシュー13Aはいずれも両ワイヤ3A,4Aがワイヤに印加されるテンションによって圧接し、真空力とともに脱水を実現できる。しかし、サクションフォーミングロール12A及びフォーミングシュー13Aは、いずれもボトムワイヤ4A側に設けられているので、トップワイヤ3Aについてはその位置を規制する機器はブレストロール11Aとサクションボックス15Aしかなく、ボトムワイヤ4Aに比べて極めて長い距離をワイヤのテンション、あるいは、サクションフォーミングロール12A,フォーミングシュー13Aによりボトムワイヤ4A及び原料液を介して印加される真空力によって保持されることになる。
【0059】
したがって、紙原料液2A層やトップワイヤ3Aに作用する遠心力の影響でトップワイヤ3Aが遠心方向に膨れたりして、幅方向で紙層の形成が不安定になったり、欠陥を誘発したりする。そこで、掻取型ブレード14Aにより、トップワイヤ3A側から両ワイヤ3A,4A及び紙原料液2A層をサクションフォーミングロール12A及びフォーミングシュー13Aに向けて押し付けるように構成している。
【0060】
しかし、この掻取型ブレード14Aによる両ワイヤ3A,4Aへの押し付けが強すぎると、両ワイヤ3A,4Aがサクションフォーミングロール12及びフォーミングシュー13Aに確実に圧接されるものの、両ワイヤ3A,4A間に働く圧縮力が過剰になり、脱水能力は向上するものの紙繊維が部分的に破壊されるなど紙繊維構造に悪影響が生じて製品紙の力学物性が低下したり、繊維が局所的によれたりする紙欠陥が発生するなどの製品の品質低下を招いてしまう。
【0061】
一方、掻取型ブレード14Aによる両ワイヤ3A,4Aへの押し付けが弱すぎると、該ブレード先後端での両ワイヤ3A,4Aに対する当りが悪くなって、脱水された白水がブレード面とトップワイヤ3Aの間にもぐりこんでストリーク状の紙欠陥(筋状の傷等)を誘発したり、上述のように幅方向での不均一な紙層形成を発生させる。
これらの度合いは、両ワイヤ3A,4Aとその間にある紙原料液2A層の厚さによって異なる。そこで、本発案では、掻取型ブレード14Aは、図示しないアクチュエータによってトップワイヤ3Aに対する進退する方向もしくはワイヤ走行方向のいずれかもしくは両方向に変位可能に構成されており、掻取型ブレード14Aの位置は、演算装置等で構成される制御装置(制御手段)30によって制御されるようになっている。
【0062】
(掻取型ブレード14Aの進退位置)
ここで、制御装置30による掻取型ブレード14Aの位置制御について図3及び図4を参照して説明する。
両ワイヤ3A,4Aに挟まれる紙原料液2A層の厚さは、抄紙目標の紙の坪量とそのときの原料濃度に依存する。ある原料性状における原料濃度と坪量に対するサクションフォーミングロール12Aの出側付近での原料厚さを図3に示す。
ここではサクションフォーミングロール12A出側付近での原料濃度は約3%である。図3(A)に示すようにこのときの原料厚さは目標とする坪量によって数ミリ変化することがわかる。
【0063】
一般に、抄紙する紙の坪量には範囲があり、いずれの坪量条件でも安定して紙層形成ができるようサクションフォーミングロール下流の脱水機器先端の位置は、平均的な厚さの位置に設定されるか、最も多く生産する坪量に対して適切になるように設定される。
しかし、図3に示すようにより高坪量の紙を生産できるようにするには紙の坪量の生産可能幅を拡大する必要があり、例えば75から200g/mまで抄紙する場合には、紙原料液2A層の厚さの差は約3mmになると推察される。そのため、これらの厚さ変化に追従して掻取型ブレード14Aの位置を変化させることが安定した紙層形成を行う上で重要となる。
【0064】
特に、低坪量に適切な設定位置で高坪量条件の紙を抄紙した場合、上述したように両ワイヤ3A,4A間に働く圧縮力が過剰になり、脱水能力は向上するものの紙繊維が部分的に破壊されるなど紙繊維構造に悪影響が生じて製品紙の力学物性が低下したり、繊維が局所的によれたりする紙欠陥が発生するなどの製品の品質低下を招いてしまう。
その一例として、掻取型ブレード14Aの位置をワイヤに対して進退する方向に変化させたときの製品紙の比破裂強度を図4に示す。図4は、坪量175g/mの場合においての掻取型ブレード14Aの適正位置をブレード位置0mmとし、トップワイヤ3A方向に押し込んだ変位量を正としてブレードの進退量を表している。
【0065】
異なる坪量に対して設定すべきブレード位置は、図3の紙原料厚さ特性図から、坪量175g/mに(紙原料厚さ:5.6mm)比べて、坪量140g/m(紙原料厚さ:4.6mm)では約1mm,坪量75g/m(紙原料厚さ:2.8mm)では約3mm押し込んだ位置が適正位置である。ここで、これら低坪量に最適な設定位置において、坪量175g/m量を抄紙した場合、図4から例えば75g/mに適正な位置のままであると、破裂強度が87%しか発現しないことが判る。これは、高坪量紙を生産するのに伴い、紙原料厚さが大きくなったにもかかわらず、設定すべきブレード位置が低坪量に適切な設定位置であったために、掻取型ブレード14Aの先端及び後端で原料層に過度なせん断力が加わり、紙層の一部が不安定に形成されたためと考えられる。
【0066】
上述の現象を模式的に表したものが図5である。例えば、図5(A)に示すように坪量が低い場合に適した掻取型ブレード14Aの設定条件にて高坪量を抄紙する場合には図5(B)に示すように、トップワイヤ3Aが過度に押し込まれる結果、両ワイヤ3A,4A及び紙原料液2A層に過度な曲率のS字状のラップ(S字ラップ)が形成され、紙原料液2A層に高いせん断力が発生する。そこで、掻取型ブレード14Aの位置を後退させ、図5(C)に示すように適度なS字のラップを形成するようにブレード位置を再調整することにより、紙層の一部が不安定に形成されることを回避できる。
本実施形態では、掻取型ブレード14Aの位置調整をワイヤに対して進退方向に行ったが、ワイヤ進行方向あるいは進退方向及びワイヤ進行方向の双方で実施してもよい。
【0067】
(掻取型ブレード14Aの位置制御演算)
掻取型ブレード14Aの位置制御は、掻取型ブレード14Aの入り側付近(あるいはサクションフォーミングロール12Aの出側付近)の紙原料液2Aの厚さ(以下、湿紙厚さという)によって制御することが最良である。
【0068】
このときの湿紙厚さは図3(A)に示すように、紙原料液2Aの濃度と原料液に含まれる固形分量すなわち坪量によって決まる。
したがって、制御装置30は紙原料液2Aの濃度と紙原料液2Aに含まれる固形分量についてのデータ(データ31A)を図示省略のDCSなどの抄紙機制御装置、あるいは、図示省略の計測装置から取得し、取得したデータを用いて湿紙厚さを演算するようになっている。制御装置30におけるこの湿紙厚さを演算等により取得する機能を湿紙厚取得手段とする。
【0069】
湿紙厚取得手段による湿紙厚さの演算方法は、要求される精度や計測環境によって種々選択できる。
簡易的には(紙原料液の原料濃度及び抄紙速度をそれぞれ基準値とすると)、ヘッドボックス40Aの開度と概略の脱水量から計算できる。なお、ヘッドボックス40Aの開度とは紙原料液の吐出量を制御するためのヘッドボックス40Aの開口部の高さであり、ヘッドボックスから吐出されて原料の着地後形成される湿紙の厚さはこの開度(単位時間当たりの吐出量に対応する量)に所定の縮流係数を乗じて吐出時の縮流効果を計算したものとなる。
【0070】
つまり、この湿紙厚さの演算は、湿紙厚さをD,ヘッドボックスの開度をK,ヘッドボックスからの吐出量に対する脱水された白水の割合である脱水率をRとすると、次式で表せる。
D(mm)=R(%)×K(mm)×縮流係数
ここで、サクションフォーミングロールの脱水率はヘッドボックスの流量を100%としたときの脱水量の割合であり、通常70〜80%脱水される。ヘッドボックスの開度は一般に高坪量ほど大きく、坪量に応じて10〜20mm程度の範囲で設定される。
【0071】
さらに、より詳細に湿紙厚さを求めたい場合には、図3(A)に示すような(i)固形分量(坪量)及び紙原料液の濃度に対する原料厚さ(湿紙厚さ)特性図をあらかじめ調査しておいてリファレンスデータとし、(ii)DCS(Distributed Control System)などの抄紙機制御装置から得られる単位時間当たりの固形分量から坪量を算出し、(iii)脱水量計測装置としての図示省略の脱水量センサの信号からサクションフォーミングロール12Aの脱水率(又は、脱水量)を求めて掻取型ブレード14Aの入り側付近の原料濃度を算出して、レファレンスデータの坪量と原料濃度との関係から厚さを求めることができる。なお、単位時間当たりの固形分量は、ヘッドボックスの開度K,紙原料液の濃度,抄紙速度で決まる。
【0072】
さらに詳細に湿紙厚さを求めたい場合には、サクションフォーミングロール12Aでの歩留まりを考慮するため、制御装置30が、サクションフォーミングロール12Aでの脱水時に白水と共に排出される固形分量(坪量相当)を取得し、原料吐出時の固形分量(坪量相当)から差し引いてサクションフォーミングロールの原料歩留まりの値を取得し、この原料歩留まりを考慮して掻取型ブレード14Aの入り側付近の坪量を求めてもよい。つまり、上述のごとく、レファレンスデータの坪量と原料濃度との関係から厚さを求める際に用いる単位時間当たりの固形分量(坪量)として、原料歩留まりの値に相当する固形分量(坪量)を用いるのである。この場合、制御装置30におけるこの歩留まりを算出する機能を歩留まり取得手段とする。
【0073】
なお、センサを有しない場合はリファレンスデータとして、坪量や抄紙速度あるいは薬品添加量に対する脱水量や歩留まり量の関係をあらかじめマップ又はテーブルとした脱水能力線図にしておき、DCSなどの抄紙機制御装置から得られる一般的な速度情報や原料吐出情報に基づいて、厚さ推定に要する関連情報を設定してもよい。
あるいは、これら上記の演算工程を省き、原料厚さを直接計測してもよい。この場合、サクションフォーミングロール12Aの出側付近もしくは掻取型ブレード14Aの入り側付近に変位センサ(図示省略)を設置し、トップワイヤ3Aの相対変位量を原料厚さの変化として捕らえ、図示しないアクチュエータを制御してもよい。
【0074】
(第2フォーマ)
次に、第2フォーマ1Bについて説明する。図1に示すように、第2フォーマ1Bはヘッドボックス40B,トップワイヤ3B,ボトムワイヤ4B,ブレストロール11B,サクションフォーミングロール12B,フォーミングシュー13B,トランスファーボックス17B,掻取型ブレード14B,抄き合わせロール21Bを備えており、両ワイヤ3B,4Bはエンドレスに循環するループ状に構成されている。トップワイヤ3Bはブレストロール11B,掻取型ブレード14Bに摺設し、ボトムワイヤ4Bはサクションフォーミングロール12B,フォーミングシュー13B,トランスファーボックス17C,抄き合わせロール21Bに摺設し、それぞれエンドレスに循環するループ状に構成されている。
【0075】
そして、第2フォーマ1Bは抄き合わせロール21Bが第1フォーマ1Aのボトムワイヤ4Bの上部に配設され、第1フォーマ1Aで抄紙された湿紙W1がボトムワイヤ4Aで搬送され、その湿紙W1の上面に第2フォーマ1Bで抄紙された湿紙W2を重ねあわせるように配設されている。
その下流側にはトランスファーボックス17Bが配設され、第1フォーマ1A及び第2フォーマ1Bで抄紙された湿紙をボトムワイヤ4A側に移送し、図示しないサクションボックスで更に脱水しながら、クーチロール19へ搬送され、ピックアップロール20にて次工程であるプレスパートへと搬送される。
【0076】
ヘッドボックス40Bからトップワイヤ3Aとボトムワイヤ4Aで形成されるギャップ空間に向かって紙原料液2Bが吐出される。紙原料液2Bは、ブレストロール11Bとサクションフォーミングロール12Bとによってトップワイヤ3B及びボトムワイヤ4Bにより形成される抄紙用ギャップに挟み込まれ、サクションフォーミングロール12B,フォーミングシュー13B,トランスファーボックス17Cの順に脱水され、第1フォーマ1Aで抄紙された湿紙に重ね合わせるのに都合の良い水分量の湿紙W2を形成するようになっている。
【0077】
このとき、第2フォーマ1Bに求められる坪量条件によっては、フォーミングシュー13Bとトランスファーボックス17Cとの間にサクションボックスを追加してもよい。
トランスファーボックス17Cは湿紙の水分調整を促進すると共に第2フォーマ1Bで形成された湿紙W2をボトムワイヤ4B側に移送する。
ここで、第1フォーマ1Aにより形成した湿紙W1はトップワイヤ3Aと接する面を上面とし、第2フォーマ1Bにより形成した湿紙W2はトップワイヤ3Bと接する面を下面とすると、湿紙W1及び湿紙W2は、抄き合わせロール21Bで湿紙W1の上面と湿紙W2の下面とが貼り合わされるようにして湿紙W1の上に湿紙W2が重ね合わされ、トランスファーボックス17Bで第1フォーマのボトムワイヤ4Aに移送され、下流側の複数のサクションボックスで更に脱水を促進するとともに湿紙同士の結合強度を増加させ、クーチロール19へ搬送され、ピックアップロール20にて次工程であるプレスパートへと搬送される。
【0078】
なお、各湿紙W1,W2はともにボトムワイヤ4A及び4Bに接触する面は表面の微細繊維がフォーミングシュー13A及び13Bでの脱水により脱落するため離脱してしまうため粗い状態であるが、トップワイヤ3A及び3Bに接触する湿紙反対面は、微細繊維が多く残留しており、その面同士が互いに接合しあうため、密着度合が増し、重ね合わせ面間の層間強度の向上に有利な構成となっている。
【0079】
また、第2フォーマでの掻取型ブレード14Bも第1フォーマでの掻取型ブレード14Aの掻取型ブレード14Aの進退位置制御演算と同様に、紙原料層の厚さに応じて適切な変位量となるように図示しないアクチュエータによって制御されるため、第2フォーマで抄紙される湿紙W2も高坪量時に紙繊維が部分的に破壊されるなど紙繊維構造に悪影響が生じて製品紙の力学物性が低下したり、繊維が局所的によれたりする紙欠陥が発生するなどの製品の品質低下を招いてしまったり、低坪量時に脱水された白水が掻取型ブレード14B面とトップワイヤ3Bの間に潜り込んでストリーク状の紙欠陥を誘発したり、上述のように幅方向での不均一な紙層形成を発生させることなく、安定した紙層形成を行うことができる。
なお、第2フォーマの下流にさらに複数のフォーマを配設し、抄き合わせ総数を増やすほか、例えば、第2のフォーマあるいはさらにその下流に少なくとも1台を従来より一般的に用いられている長網式のミニ・フォードリニアとしても良い。
【0080】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態について図6,7を用いて説明する。図6,7はいずれも本発明の第2実施形態にかかる抄紙機のフォーマ及びフォーマ装置を説明するためのものであって、図6はその概略構成を示す構成図、図7は対向脱水ブレード及びフォーミングシューによる脱水状態を模式的に示す図である。
【0081】
なお、本実施形態は第1実施形態のものと同様の要素を含んでおり、第1実施形態の同様なものについては説明を省略して同符号を用いる。
図6に示すように、第1フォーマ1Aの下流側に、第2フォーマ1Bを配し、更にその下流に第3フォーマ1Cを配設した点が第1実施形態と異なる。第3フォーマ1Cは対向脱水ブレード22Cを備えていることを除いて第2フォーマ1Bと同様に構成されている。
【0082】
一般に複数のフォーマからなる多層フォーマにおいて、第3あるいは第4のフォーマとして第2フォーマよりも下流に配されるフォーマは、製品紙の表面品質を向上させるために第1及び第2のフォーマに比べてより上質な原料や色合いの異なる原料が使用される場合があり、この場合下流側のフォーマで形成する湿紙の坪量は上流側の第1フォーマ及び第2フォーマにて形成される湿紙の坪量と比較して小さいことが多い。
【0083】
このような場合には、下流側のフォーマで形成する湿紙の力学物性の低下を招かないことはもちろんのこと、更に面方向における繊維分散性に優れ(つまり、湿紙の表面の繊維の密度が均等に配置され)、地合に良好な紙層形成が求められる。
本実施形態では、より繊維分散性に優れる表層湿紙W3を得るために、第3フォーマのフォーミングシュー13Cの両ワイヤ3C,4C対向側にトップワイヤ1Cを介して対向脱水ブレード22Cを配設している。
【0084】
対向脱水ブレード22Cは図7に示すように複数の対向ブレード41を備えており、各脱水ブレードには加撓性を有するエアチューブで形成された加撓性体42が備えられている。
このように、加撓性体42を介して対向ブレード41をフォーミングシューに押し付けることによって対向脱水ブレード22Cとフォーミングシュー13Cとの間を走行する紙原料層2Cにパルス状の脱水圧力を作用させて、原料層内の繊維分散性を向上させることができる。なお、フォーミングシュー13Cの脱水ブレード及び対向脱水ブレード22の対向ブレード41の形状については図7のものは一例であり、これに示すものに限定しない。
【0085】
これにより、フォーミングシュー13C単体のみにおいて紙原料液2C層を脱水する場合と比較して、紙原料液2Cに作用するパルス状の脱水圧力印可回数をより増加させると共に、その圧力値を向上させることができるため、繊維分散性を向上させることができる。
一方、第3フォーマ1Cで抄紙する坪量は概ね100g/m以下であり、第1及び第2フォーマ1A,1Bで抄紙される坪量よりも小さいため、掻取型ブレード14Cの位置調整制御による高坪量でも安定して抄紙する性能と効果は相対的に減少するが、紙原料液2C層の厚さに最適な位置調整が行われることにより、各原料が有する力学物性を最大限に発現させることが可能である。
【0086】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0087】
例えば、上述の実施形態では操業情報から掻取型ブレード入り側の原料層厚みを演算したが、抄紙機に取り付けられた坪量センサや抄き合わせ前後の湿紙厚さを変位計で計測し、これに所定の係数を掛け合わせて、掻取型ブレードを制御してもよい。
また、掻取型ブレードの変位制御方向はワイヤに対して進退する方向にのみ制御するだけでなく、ワイヤ走行方向あるいは双方の方向に制御してもよい。
【0088】
また、上述の実施形態においては、抄紙機のフォーマ部において、フォーマを複数配置する構成となっているがこれに限らずフォーマを単数でもよい。この場合には当然、湿紙を重ね合わせる際の密着性の向上という効果は得られないものの、坪量情報に基づいて掻取型ブレード14が適切に調整されることにより、より高坪量の製品を抄造することができる。
【0089】
さらに、第2フォーマ及びその下流にはさらに複数のフォーマを配設し、抄き合わせ総数を増やすほか、例えば、第2のフォーマあるいはさらにその下流に少なくとも1台を従来より一般的に用いられている長網式のミニ・フォードリニアとしても良いし、抄き合わせる原料種や各層の坪量範囲によっては、最下流でないギャップフォーマに対向脱水ブレードを配設してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるフォーマの構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかるフォーマの構成をフォーマを備えた抄紙機の概略構成を模式的に示す部分構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるフォーマにおいて紙原料の濃度と原料厚さとの対応関係を坪量毎に示すグラフである。
【図4】本発明の第1実施形態にかかるフォーマにおいて掻取型ブレード位置の位置と破裂強度との対応関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる抄紙機用フォーマ及びフォーマ装置を説明するためのものであって、(A)〜(C)はいずれも、掻取型ブレード図1の部分拡大図の位置とワイヤとの関係を示す部分拡大図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる抄紙機のフォーマ部(フォーマ装置)の概略構成を示す構成図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる抄紙機のフォーマ装置の対向脱水ブレード及びフォーミングシューによる脱水状態を模式的に示す図である。
【図8】従来技術における抄紙機のフォーマの概略構成を示す構成図である。
【図9】従来技術における抄紙機のフォーマの概略構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0091】
1A 第1フォーマ
1B 第2フォーマ
1C 第3フォーマ
2A,2B 紙原料液
3A,3B,3C 第1ワイヤ(トップワイヤ)
4A,4B,4C 第2ワイヤ(ボトムワイヤ)
11A,11B,11C ブレストロール
12A,12B,12C サクションフォーミングロール
13A,13B,13C フォーミングシュー
14A,14B,14C 掻取型ブレード
15A サクションボックス
16A センターロール
17A〜17E トランスファーボックス
19 クーチロール
20 ピックアップロール
21B,21C 抄き合わせロール
22C 対向脱水ブレード
30 制御装置
31A,31B,31C 操業情報
40A,40B,40C ヘッドボックス
41 対向ブレード
42 加撓性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々ループ状に形成されて紙原料液を挟んで湿紙として搬送する第1ワイヤ及び第2ワイヤと、
上記第1ワイヤと上記第2ワイヤとにより形成される抄紙用ギャップの上流端部に上記紙原料液を噴射するヘッドボックスと、
上記抄紙用ギャップの上流端部近傍に配設され、上記第2ワイヤと接するサクションフォーミングロールと、
上記サクションフォーミングロールよりも下流に、上記第2ワイヤに摺接するように配設されたフォーミングシューと、を備え、
上記サクションフォーミングロールが、上記フォーミングシュー及びフォーミングシューの下流に備えられたクーチロールよりも上方に配置されるとともに、
上記サクションフォーミングロールと上記フォーミングシューとの間に配設され、上記第1ワイヤに摺接し、上記第1ワイヤに対して進退する方向あるいは上記第1ワイヤの走行方向と略平行に変位制御可能な掻取型ブレードと、
上記掻取型ブレードを通過する上記湿紙の厚さに基づいて上記掻取型ブレードの位置を制御する制御手段と、
を備えている
ことを特徴とする、抄紙機用フォーマ。
【請求項2】
上記ヘッドボックスから噴射される上記紙原料液の吐出条件情報と上記フォーミングロールの脱水条件情報から上記掻取型ブレードを通過する上記湿紙の厚さを取得する湿紙厚取得手段と、
上記湿紙厚取得手段により取得された上記湿紙の厚さに応じて上記掻取型ブレードの位置を制御する制御手段と、を備えている
ことを特徴とする、請求項1記載の抄紙機用フォーマ。
【請求項3】
上記湿紙厚取得手段は、上記ヘッドボックスからの吐出条件情報から上記フォーミングロール上に進入する紙原料液中の単位時間当たりの固形分量と、上記フォーミングロールの脱水量ある意は脱水率と、上記フォーミングロールの原料歩留りの値とから上記湿紙の厚さを算出する
ことを特徴とする、請求項2記載の抄紙機用フォーマ。
【請求項4】
上記湿紙厚取得手段は、上記掻取型ブレードの上流近傍で、ワイヤ厚さを含む原料厚さを計測する変位センサを備えている
ことを特徴とする、請求項2記載の抄紙機用フォーマ。
【請求項5】
上記ヘッドボックスは、上記抄紙用ギャップの上流端部に向けて水平よりも上方に向けて上記紙原料液を噴射する
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の抄紙機用フォーマ。
【請求項6】
上記掻取型ブレードの長さが10mmから200mmの範囲である
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の抄紙機用フォーマ。
【請求項7】
上記第2ワイヤが上記サクションフォーミングロールの周面に接する位置から離れる位置までの接触量である上記フォーミングロールにおけるラップ角が、70度以上125度以下であるとともに、上記フォーミングロールの直径が1500mm以上2100mm以下である
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の抄紙機用フォーマ。
【請求項8】
上記フォーミングシューの下流側に、上記第1ワイヤに摺接するように配設されたサクションボックスを少なくとも1つ以上備えている
ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の抄紙機用フォーマ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の抄紙機のフォーマが適用された第1フォーマと、
上記第1フォーマの下流側に少なくとも一つの下流側フォーマとを備え、
上記第1フォーマにおいて形成した上記湿紙の上に、下流側フォーマにおいて形成した上記湿紙を重ね合わせる多層フォーマとして構成された
ことを特徴とする、抄紙機用フォーマ装置。
【請求項10】
上記下流側フォーマの少なくとも一つに請求項1〜9のいずれか1項に記載の抄紙機のフォーマが適用された
ことを特徴とする、請求項9記載の抄紙機用フォーマ装置。
【請求項11】
上記下流側フォーマは、上記フォーミングシューの下流側に、上記第2ワイヤに摺接するように配設されたサクションボックスを少なくとも1つ以上備え、
上記サクションボックスのうち最下流のサクションボックスが上記各ワイヤが互いに離隔する際に上記湿紙を上記第2ワイヤに移送するトランスファーサクションボックスとして配設された
ことを特徴とする、請求項10記載の抄紙機用フォーマ装置。
【請求項12】
上記下流側フォーマの少なくとも一つには、上記各ワイヤを挟んで上記フォーミングシューと対向する位置に、可撓性を有する複数のブレードを上記第1ワイヤに摺接するように配設された
ことを特徴とする、請求項10又は11記載の抄紙機用フォーマ。
【請求項13】
各々ループ状に形成され第1ワイヤ及び第2ワイヤによって形成される抄紙用ギャップに紙原料液を挟んで搬送しながら上記紙原料液を脱水して湿紙を形成する抄紙機用フォーマであって、上記抄紙用ギャップの上流端部近傍に上記第2ワイヤと接するように配設されたフォーミングロールと、上記フォーミングロールよりも下流に上記第2ワイヤに摺接するように配設されたフォーミングシューと、を含む脱水機器と、上記フォーミングロールと上記フォーミングシューとの間に上記第1ワイヤに摺接するように配設され上記第1ワイヤに対して進退する方向あるいは上記第1ワイヤの走行方向と略平行に変位可能な掻取型ブレードの制御方法であって、
掻取型ブレードを通過する上記湿紙の厚さ情報に基づいて上記掻取型ブレードの変位を制御する
ことを特徴とする、抄紙機用フォーマの掻取型ブレード制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−297738(P2007−297738A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126857(P2006−126857)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】