説明

把手付き合成樹脂壜と、該把手付き合成樹脂壜の製造方法

【課題】 把手部材を壜胴後部の凹部内へインサート成形した大容量の把手付き合成樹脂壜において、壜に対する把手部材の組付けが確実となるよう設けた。
【解決手段】 把手板12の上下の左右から左右両前外方へ突出する腕部14を介して左右一対の横向きU字形状脚板15を前方へ張出しさせて把手部材11となし、それ等一対の脚板15を壜胴後部へ形成された凹部4の壁面へインサート成形で埋設させ、上記両脚板15前部で形成する垂直部15a 間の凹部形成壁を後方張出しさせて該張出し部の左右両側部を両垂直部15a 後面へ覆合させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把手付き壜と該把手付き壜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
起立する長方形状把手板の左右両側から、横向きU字形状の脚板を左右一対として前方へ張出しさせた形状の把手部材を設けておき、それ等一対の脚板を、壜胴の後部に形成される凹部の外壁面へインサート成形で埋設した把手付き合成樹脂壜とその製造方法が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−16434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
大容量の把手付き合成樹脂壜は、容量の増大に伴って液体充填状態での重量が増大し、従って把手にかかる負担も増大して合成樹脂壜から外れ易く、よって壜と把手部材との連結を従来よりもより確実に行えるようにすることが必要である。
【0004】
本発明はそのような目的を達成することが可能としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段として把手板12上下の左右両側から、左右一対の横向きU字形状脚板15を前方へ張出しさせて把手部材11となし、それ等一対の脚板15を、壜胴後部に形成された凹部4の壁面へインサート成形で埋設した把手付き合成樹脂壜において、
上記各脚板15は、把手板上下から左右両前外方へ突出する腕部14を介し前方張出しして、後方からみて脚板前部を形成する垂直部15a が把手板12の左右側方に位置するよう設けておき、
上記両垂直部間の凹部形成壁を両垂直部よりも後方まで張出させ、かつ該張出し部分の左右両部を両垂直部の後面へ覆合させた。
【0006】
第2の手段として把手板12上下の左右両側から、左右一対の横向きU字形状脚板15を前方へ張出しさせて把手部材11となし、それ等一対の脚板15を、壜胴後部に形成された凹部4の壁面へインサート成形で埋設する把手付き合成樹脂壜の製造方法において、
上記脚板15は、把手板上下から左右両前外方へ突出する腕部14を介し前方張出しして、後方からみて脚板前部を形成する垂直部15a が把手板12の左右側方に位置するよう設けておき、
上記両垂直部間の凹部形成壁をインサート成形時の膨張により両垂直部15a よりも後方まで張出しさせると共に該張出し部分の左右両側を両垂直部15a 後方まではみ出し、これ等両垂直部後方へはみ出した凹部形成壁部分を後加工で両垂直部15a 後面へ圧接させて押潰し、これ等押潰し部分で両垂直部後面を覆合させて製造する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載のように、両脚板15を、把手板12の上下から左右両前外方へ突出する腕部14を介し前方張出しして、後方からみて脚板前部を形成する垂直部15a が把手板12の左右側方に位置するようにすることで、それ等両垂直部15a 間の距離を従来よりも拡げることが出来、従ってインサート成形において膨張する凹部形成壁は両垂直部15a 間へ張出し易く、よって従来覆合できなかった把手部材脚板15前部の垂直部15a 後面も凹部形成壁で覆合できることとなり、又それ等垂直部15a 後面を覆合する凹部形成壁は、それ等両垂直部間の凹部形成壁を、両垂直部よりも後方まで張出しさせ、かつ該張出し部分の左右両部で形成することとなるから、図1、図4が示すように、把手部材上下両面のほか、両垂直部の前面および対向面も凹部形成壁で覆われ、例えば壜の落下、又把手部材へ他物が当る等の衝撃によっても壜の凹部内から把手部材11が外れることはなく、確実に該把手部材を壜1へ固着させることが出来る。
【0008】
請求項2のようにすることで、上記垂直部15a 後方への凹部形成壁はみ出し部分の押し潰しが容易となり、両垂直部15a 後面を凹部形成壁で確実かつ容易に覆合させることが出来る。
【0009】
即ち、把手部材脚板の垂直部15a は、把手板12後方からみて、両垂直部15a が把手板の左右外方に位置するよう設けてあるから、図3が示すように、把手板の左右両側方を通って治具21を前方へ押出すことで、両垂直部15a の後面後方へはみ出す凹部形成壁部分5を垂直部後面へ押付けして、図4のように押潰された覆合部分とすることが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず把手付き合成樹脂壜について説明すると、1は二軸延伸させて形成した合成樹脂壜で、胴部2上端から肩部を介して口頸部を起立させ、該口頸部へキャップ3を着脱自在に螺合させている。
【0011】
壜1の胴後部へは図1が示すように後面および左右両側面開放の凹部4を形成しており、該凹部内へは図2が示す把手部材11がインサート成形により嵌合されている。
【0012】
該把手部材は、図が示すように縦長の長方形状でその上下両部を前上方および前下方へ屈曲させた把手板12を有し、該把手板の上下両端に前向きフランジ13を付設し、これ等前向きフランジの左右両端から左右両前外方へ突出させた腕部14を介して横向きU字形状の脚板15を前方へ張出しさせて形成している。それ等両脚板の前部は垂直部15a を形成し、図示例ではそれ等各垂直部前面の上下両部へ、対向する垂直部方向に突出する係合爪16を付設している。このように係合爪を付設し、これ等係合爪を凹部形成壁5中に埋設することで、壜に対する把手部材の組付けを更に確実とすることが出来る。尚その係合爪は各垂直部15a から左右両方向へ突出させてもよい。
【0013】
該把手部材は、図4が示すように把手板12後方からみて、上記両垂直部15a が把手板12の左右外方へ位置するよう設けるものとする。
【0014】
凹部4内への把手部材11嵌合状態において、上記前向きフランジ13、腕部14、脚板15の外面は凹部形成壁5へ接し、又両脚板垂直部15a 間の凹部形成壁はそれ等両垂直部15a よりも前方へ張出し、かつ該張出し部分の左右両側は潰されて各垂直部15a 前面を覆合するものである。
【0015】
上記した把手付き合成樹脂壜1は次のようにして製造することが出来る。
【0016】
上記把手部材11を、公知のインサート成形で、図1が示すように上下の前向きフランジ13の上面と下面へ凹部4上下後部の上面と下面との凹部形成壁を圧接させ、又腕部14および脚板15外面へ凹部形成壁の後面を圧着させ、両垂直部間の凹部形成壁は、両垂直部よりも後方まで張出しさせ、かつ図3が示すように該後方張出し部分の左右両側部は両垂直部後方へはみ出しさせてそれ等はみ出し部分の押潰しにより両垂直部後面への覆合部分17を形成する。
【0017】
上記はみ出し部分の押潰しは、図4が示すように把手板12の左右側方を通って治具21を前方へ押出すことで、該治具前面と垂直部15a 後面との間で行うことが出来る。
【0018】
上記押潰しによる両垂直部後面への凹部形成壁5の覆合は、上記インサート成形後、離型に先立って行ってもよく、又離型後に行ってもよいが、離型に先だって行う場合は、上記はみ出し部分が未だ高温状態を保つことで、上記押潰しを容易に行うことが出来る反面、上記インサート成形金型の形状により治具使用上の制約を受けることとなる。又離型後に行う場合は上記金型からの制約がない反面、成形壜が冷却しているため、上記はみ出し部分ないし押潰し用治具を加熱して行うことが必要となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一部を切欠いて示す、本発明壜の側面図である。
【図2】図1壜に使用する把手の拡大斜視図である。
【図3】一部を切欠いて示す、図1壜の平面図である。
【図4】本発明方法の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 壜 2 胴部
4 凹部 5 凹部形成壁
11 把手部材 12 把手板
13 前向きフランジ 14 腕部
15 脚板 15a 垂直部
21 治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把手板12上下の左右両側から、左右一対の横向きU字形状脚板15を前方へ張出しさせて把手部材11となし、それ等一対の脚板15を、壜胴後部に形成された凹部4の壁面へインサート成形で埋設した把手付き合成樹脂壜において、
上記各脚板15は、把手板上下から左右両前外方へ突出する腕部14を介し前方張出しして、後方からみて脚板前部を形成する垂直部15a が把手板12の左右側方に位置するよう設けておき、
上記両垂直部間の凹部形成壁を両垂直部よりも後方まで張出させ、かつ該張出し部分の左右両部を両垂直部の後面へ覆合させた
ことを特徴とする把手付き合成樹脂壜。
【請求項2】
把手板12上下の左右両側から、左右一対の横向きU字形状脚板15を前方へ張出しさせて把手部材11となし、それ等一対の脚板15を、壜胴後部に形成された凹部4の壁面へインサート成形で埋設する把手付き合成樹脂壜の製造方法において、
上記脚板15は、把手板上下から左右両前外方へ突出する腕部14を介し前方張出しして、後方からみて脚板前部を形成する垂直部15a が把手板12の左右側方に位置するよう設けておき、
上記両垂直部間の凹部形成壁をインサート成形時の膨張により両垂直部15a よりも後方まで張出しさせると共に該張出し部分の左右両側を両垂直部15a 後方まではみ出し、これ等両垂直部後方へはみ出した凹部形成壁部分を後加工で両垂直部15a 後面へ圧接させて押潰し、これ等押潰し部分で両垂直部後面を覆合させて製造する
ことを特徴とする把手付き合成樹脂壜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−44692(P2006−44692A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224933(P2004−224933)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】