説明

把持具

【課題】 鉗子などの引き抜き部材によって確実に把持することができるとともに、把持した後は断面積の小さい小腔から排液チューブを引き抜くことができるような把持具を提供すること。
【解決手段】 把持具100は、排液チューブAの一端に固定される本体部10と、鉗子40によって把持される把持部20と、屈曲可能であるとともに本体部10と把持部20とを連結する連結部30とを備えるように構成している。したがって、鉗子40は把持部20を確実に把持する。また、連結部30が屈曲して本体部10および排液チューブAを牽引するように作用する。このため、排液チューブAを引き抜き方向に方向変換させることができる。よって、鉗子40に伴って排液チューブAを人体から導出させる際に、小腔を通過するときの通過断面積を十分小さくすることができ、確実に排液チューブAを導出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内、特に胸腔、腹腔内に留置された排液チューブ(ドレナージチューブ)の一端を鉗子などの引き抜き部材によって体外に引き抜く際に、排液チューブの一端に取り付けられて引き抜き部材によって把持される把持具に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術においては、体内、例えば胸腔や腹腔内の排液を外部に排出するための排液チューブがしばしば用いられる。この排液チューブの留置方法を、胸腔ドレナージチューブを例にとって説明すると、まず、排液チューブの一端側を、例えば手術等における胸腔の切開部分から体内へ挿入する。また、上記切開部分の近傍に位置する体表部分から胸腔につながる小腔を形成する。ついで、上記小腔から鉗子等の引き抜き部材を胸腔内に潜り込ませ、排液チューブの一端を把持する。
【0003】
そして、排液チューブの他端側を胸腔に留置させた状態で、引き抜き部材を引き抜く。すると、排液チューブの一端は体外に引き出されるとともに、排液チューブの他端は胸腔内に留置される。したがって、胸腔が排液チューブを通じて体外に連通されることになる。この状態で、排液チューブの一端に吸引バックなどを接続し、排液チューブの一端側を他端側に対して負圧にすることで、胸腔内の膿、血液、滲出液などが、排液チューブを通じて体外(吸引バック)に排出される。
【0004】
ところで、上記した排液チューブの留置方法においては、引き抜き部材として一般的に鉗子が用いられるが、鉗子によって排液チューブの一端を体外に引き出す際に、鉗子が排液チューブをうまく把持できない場合がある。このため、排液チューブの一端部分を斜めに切断することによって鉗子で把持しやすいように形状加工したり、また、排液チューブの把持を容易にするために排液チューブの一端に把持具を取り付けたものが提案されている。その他、特許文献1には、排液チューブの一端に先進部を取り付け、この先進部の内側にガイドワイヤを通し、ガイドワイヤに沿って排液チューブを誘導していくことによって、排液チューブの一端側を体外に導出する方法も提案されている。
【特許文献1】実開平2−77054号公報
【発明の開示】
【0005】
鉗子などの引き抜き部材によって排液チューブの一端を引き出す場合において、引き抜き部材を体内に潜り込ませるために人体に形成する小腔は、患者の負担を軽減するためにも、できるだけ小さいものが好ましい。したがって、排液チューブの一端を把持した引き抜き部材を体内から引き抜くときには、小腔を通過する排液チューブの通過断面積が小さくなるように、引き抜き部材の引き抜き方向に平行な方向に排液チューブを沿わせて引き抜く必要がある。しかしながら、従来の引き抜き方法では、必ずしも引き抜き部材の引き抜き方向に沿って排液チューブを把持しているとは限らず、往々にして引き抜き方向に対して斜めに把持してしまう場合が多い。このような把持状態では、引き抜き部材の引き抜き方向に対して排液チューブが斜めを向いているので、排液チューブが干渉して、形成面積の小さい小腔から排液チューブを引き抜くことができない場合がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、鉗子などの引き抜き部材によって確実に把持することができるとともに、把持した後は断面積の小さい小腔から排液チューブを引き抜くことができるような把持具を提供することを目的とする。
【0007】
前述した目的を達成するため、本発明に係る把持具の特徴は、体内の排液を体外に排出するための可撓性の排液チューブの一端に取り付けられ、体内に留置された前記排液チューブの一端側を体外に引き抜くための引き抜き部材によって把持される把持具において、前記排液チューブの一端に固定される本体部と、前記引き抜き部材によって把持される把持部と、屈曲可能であるとともに前記本体部と前記把持部とを連結する連結部とを備えるものとしたことである。
【0008】
上記した本発明の把持具は、鉗子などの引き抜き部材によって把持される把持部を有するので、この把持部により引き抜き部材に確実に把持される。また、本発明の把持具は、本体部と把持部とを連結する連結部が屈曲可能に構成される。したがって、引き抜き部材によって排液チューブの一端の向きと異なった方向に把持部が引き抜かれると、連結部は引き抜き部材の引き抜き方向に沿うように屈曲する。この状態でさらに引き抜き方向に引き抜かれると、連結部には引き抜き方向に沿った引っ張り力が作用し、この引っ張り力は連結部から本体部に伝達される。このため、本体部は引き抜き方向に沿って連結部に牽引される状態となる。
【0009】
このとき、本体部は連結部から引き抜き方向への外力を受けるため、この外力のモーメントで引き抜き方向に向くように方向転換する。本体部は排液チューブの一端に取り付けられているから、上記モーメントにより、排液チューブも本体部とともに引き抜き方向に向くように方向変換される。このようにして、本発明の把持具を用いることにより、排液チューブが引き抜き部材による引き抜き方向に方向変換される。
【0010】
したがって、鉗子などの引き抜き部材が小腔から引き抜かれると、それに連なって把持具および排液チューブが小腔から引き抜かれるが、排液チューブは引き抜き方向に沿って導出されるため、小腔を通過する際の通過断面積は排液チューブの径方向断面積程度とすることができる。このように、本発明によれば、排液チューブの一端側が小腔を通過するときの通過断面積を十分小さくすることができるので、形成面積の小さい小腔から確実に排液チューブを導出することができる。
【0011】
本発明において、「屈曲可能」とは、連結部が引き出し部材による引き出し方向に沿うように曲がることが可能という意味である。したがって、座屈などの変形による折れ曲がりの他、湾曲などによる変形をも含むものとする。また、構造的に屈曲している場合も含むものとする。屈曲可能な連結部の構成としては、例えば紐状部材、ゴム状部材、樹脂状部材など、屈曲可能な材質で形成した構成を挙げることができる。また、連結部が構造的に屈曲可能なものとしては、例えば、連結部が自在継ぎ手によって本体部と把持部とを連結する構成や、連結部の一端が本体部の内部で玉継ぎ手などによって連結されるとともに他端が把持部に連結する構成を挙げることができる。また、連結部が屈曲可能な方向は、引き抜き部材による引き抜き方向に屈曲可能であればよいが、自在方向に屈曲可能なものであれば、引き抜き方向がどのような方向となってもその方向に沿うことができるので、より好ましい。
【0012】
また、本発明において、前記本体部は、前記排液チューブの内部に面する内表面部と、前記排液チューブの外部に露呈している外表面部とを有するとともに、前記内表面部から前記外表面部にかけて貫通した貫通通路が形成されており、前記連結部は、前記貫通通路内を挿通して配置されており、一端が前記排液チューブの内部に位置するとともに他端に前記把持部が連結され、前記一端には、前記本体部に前記内表面部から係合することによって前記連結部が前記本体部から抜け落ちるのを防止するストッパが取り付けられているように構成すると良い。
【0013】
上記のように構成すれば、連結部を本体部の貫通通路および排液チューブ内に収納しておくことができるので、連結部の配置スペースを節約でき、コンパクトに把持具を構成できる。また、鉗子などの引き抜き部材で把持部が把持されて引き抜かれる際に、連結部が貫通通路および排液チューブ内から引き出されるように構成することもできる。このように連結部を引き出し可能に構成すれば、把持部と本体部とを連結部の引き出し長さ分だけ離間させることができる。よって、鉗子などの引き抜き部材が本体部と干渉するのを防止でき、上記干渉によって本体部および排液チューブが引き抜き方向に方向転換するのを阻害することがないように構成できる。
【0014】
また、前記把持部には、複数の突起部が間隔を置いて配置されているのがよい。鉗子などの引き抜き部材に把持される把持部に複数の突起部が間隔を置いて形成されていれば、引き抜き部材はいずれかの突起部に係合することによって、把持部を把持することができる。このため、引き抜き部材によって把持しやすくなる。この場合、前記突起部は、球状、直方体状、円錐台形状のいずれかの形状を呈しているとよい。このような形状とすることにより、より引き抜き部材で把持しやすくなる。
【0015】
また、前記本体部には、前記引き抜き部材が前記本体部を把持した場合に、滑りによって前記引き抜き部材を前記把持部に誘導する滑り面が形成されているとよりよい。このような滑り面が本体部に形成されていれば、万一引き抜き部材が本体部を把持しようとした場合でも、この滑り面によって引き抜き部材が本体部の表面を滑り、最終的には把持部に行き着いて、把持部を把持することになる。このため、把持部による把持をより確実に行うことができる。
【0016】
上記構成を実現する例として、本体部に上記貫通通路を形成するとともに、本体部の表面に先端が先細りとなるテーパー形状に形成された滑り面を形成する。そして、把持部が上記滑り面の尖端部分(小径端面部分)に位置するように連結部を排液チューブおよび本体部の貫通通路内に収納しておく。このような構成において、引き抜き部材が滑り面を把持した場合には、引き抜き部材は滑り面を滑って滑り面の尖端部分に誘導される。尖端部分には把持部が位置しているので、引き抜き部材はこの把持部を把持する。さらに把持部を把持した引き抜き部材が引き抜き方向に移動すると、連結部が排液チューブおよび貫通通路から引き出され、屈曲するとともに本体部を牽引する。こうして、本体部および排液チューブが方向変換される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る把持具について、図面を用いて詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る把持具100の一部を断面図とした正面図、図2は図1におけるA方向矢視図である。図からわかるように、把持具100は、本体部10、把持部20、連結部30を備えて構成される。把持部20と連結部30とは一体的に形成されている。
【0018】
図3は、本体部10のみを示す正面図である。本体部10は、図3に示すように軸Lを中心として対称形状に形成され、接続口部11および誘導部12を備えて構成されている。接続口部11は、排液チューブの一端が接続される部分であり、図に示すように軸Lに沿った方向に笠形状を積み重ねたような周知の接続口形状とされる。誘導部12は、接続口部11に軸L方向に連なって形成され、図において左方から右方へ行くにつれて外径が小さくなる滑り面12aと、この滑り面12aの図示左端に形成される大径端面12bと、滑り面12aの図示右端に形成される小径端面12cを持つ。なお、本実施形態では、軸L方向に沿った断面における滑り面12aの曲線形状は、図からわかるように、左方から右方へ行くにつれて曲率が大きくなる(曲率半径が小さくなる)ような傾斜角度とされ、半楕円形状あるいは半砲弾形状に形成されている。
【0019】
誘導部12の大径端面12bには、接続口部11が連結している。この連結部分において、大径端面12bの径の方が、接続口部11の径よりも大きくされている。この大径端面12bには、排液チューブの一端が当接される。また、本体部10には、接続口部11の図示左端面である一方端面11aから誘導部12の小径端面12cにかけて、軸L方向に沿って貫通通路13が形成されている。
【0020】
本実施形態において、誘導部12は、ポリカーボネート(PC)樹脂で形成されているが、その他の硬質プラスチック樹脂あるいは金属材料で形成されていてもよい。また、滑り面12aは、鉗子に把持された際に鉗子が滑って誘導部12をつかみ損なう程度に滑らかな面となるように形成されている。
【0021】
図4は、把持部20および連結部30を示す正面図である。把持部20は、鉗子などに把持される部分であり、図において左方から右方に行くにつれて径が小さくなる円錐台形状の突起部21が複数個(図においては4個)形成されている。また、隣り合う突起部21の間には、突起部21の最大径よりも小さい径を有する接続部22が介在しており、この接続部22がスペーサとなって、各突起部21が所定の間隔(接続部22の長さ分の間隔)を置いて配置されている。なお、この突起部21と接続部22は、隣り合う一組の突起部21と接続部22とを一体に形成するようにしてもよいし、また、それぞれ別体で形成してもよい。
【0022】
連結部30は、把持部20の後端部(図示左端部)に連なって形成されており、棒状部31とストッパ32とを備えて構成されている。棒状部31は、図に示すように、長尺状に形成されるとともに先端(図示右端)が把持部20に連結されている。また、棒状部31は、本体部10に形成された貫通通路13の内径よりも小さい径となる外径を持っている。また、棒状部31の軸方向長さは、貫通通路13の軸L方向長さよりも長く形成されている。ストッパ32は、棒状部31の後端部(図示左端部)に形成されており、本実施形態では角部が丸められた直方体形状に形成されている。ストッパ32における棒状部31と垂直な方向の外径は、貫通通路13の内径よりも大きくされている。
【0023】
また、本実施形態において、把持部20および連結部30は、ポリ塩化ビニル樹脂などの、軟質樹脂で一体に成形されるが、これに限定されない。例えば、ポリエチレン樹脂、その他の熱可塑性エラストマーの材質で成形することもできる。特に連結部30は、僅かな力で折れ曲がったり湾曲したりして、屈曲可能なものであれば、どのような材質でもよい。例えば糸を結った紐のようなものであってもよい。ただし、把持部20と一体に成形する際の成形性を考慮すると、軟質樹脂材料により成形するのがよい。
【0024】
図1に示すように、本体部10の貫通通路13内には、把持部20および連結部30の一部が挿通されている。また、本体部10の小径端面12c側からは、把持部20が突出し、本体部10の一方端面11a側からは、連結部30の棒状部31およびストッパ32が突出している。そして、排液チューブが接続口部11から把持具100に取り付けられる。図5は、把持具100に排液チューブAを取り付けた状態を示す図である。図5に示すように、排液チューブAは、接続口部11の笠状に形成された部分でその一端側が広げられて、この笠状部分に弾性的に固着され、その先端面が誘導部12の大径端面12bに当接されている。この状態では、接続口部11が排液チューブに内挿され、接続口部11の一方端面11aが排液チューブの内部空間に面した内表面部とされる。一方、誘導部12の滑り面12aおよび小径端面12cは、排液チューブの外部に露呈された外表面部とされる。
【0025】
したがって、図5からわかるように、連結部30において、接続口部11の一方端面11a側から突出した部分の棒状部31およびストッパ32は、排液チューブA内に配置される。一方、誘導部12の小径端面12c側から突出した把持部20は、排液チューブAの外部に配置されて、上記小径端面12cから顔を出した状態とされる。
【0026】
図6は、誘導部12の小径端面12c付近の拡大図である。図に示すように、本体部10に形成された貫通通路13は、その小径端面12c側の開口部付近において、図において左方から右方にいくにつれて径がわずかに小さくなるように形成された縮径部13aを有している。この縮径部13aの小径端面12cにおける開口径は、棒状部31および把持部20の接続部22の径よりも大きく、把持部20の突起部21の最大外径よりもわずかに小さくされる。そして、図に示すように、突起部21のうちの最も後端(図示左端)寄りの突起部21aが貫通通路13内に配置され、他の3つが外部に突出した状態とされている。
【0027】
小径端面12cにおける貫通通路13の開口径が突起部21の最大外径よりも小さくされているため、外部に突出した突起部21は、貫通通路13内に入り込むことができない。このため、外部に突出した突起部21がストッパとなって、棒状部31が図において左方向にこれ以上移動することはない。一方、貫通通路13内の突起部21aは、図示右方向に移動して貫通通路13から突出しようとするときには、自らを変形させて縮径された小径端面12cの開口部を潜り抜けなければならない。そのため、変形に伴う抵抗力によって、簡単には貫通通路13から突出できないようにされ、これに伴って棒状部31の図示右方向の移動も、所定の抵抗力を持って規制される。
【0028】
このように、貫通通路13の開口端(小径端面12c)側に縮径部13aを設け、突起部21が小径端面12cで引っ掛かることを利用して、把持部20および連結部30を本体部10に固定しておくことができる。このような固定によって、把持具100の輸送時などにおいて把持部20および連結部30を構成する部品が本体部10に対してがたつかないようにすることができる。なお、図6に示す状態は、貫通通路13の一方端面11aに開口している側から把持部20を押し込み、小径端面12c側から把持部20を押し出し、図6に示す状態で押し込みを停止することによって実現できる。
【0029】
上記のように構成された本実施形態の把持具100において、まず図5に示すように排液チューブAを取り付けて、排液チューブAの一端に本体部10を固定させる。ついで、外科手術などで切開した切開部位から、この排液チューブAを、本体部10の固定されている側(先端側)を先頭にして体内に挿入させる。また、上記切開部位の近傍の位置の体表面に、切開部位に連通する小腔を形成しておく。そして、切開部位から体内に入れた排液チューブAの先端側を上記小腔の開口部に近づけるように、排液チューブAを手技で操作する。そして、小腔から鉗子を差込み、この鉗子で把持具100を把持する。
【0030】
図7は、鉗子40で把持具100を把持した後に、鉗子40を引き上げて排液チューブAを小腔から引き出す際の動作を示す図である。本実施形態では、小腔から差し込んだ鉗子40により、図7(a)に示すような状態で把持具100が把持されたものとする。なお、小腔から鉗子40を差し込んで把持具100を把持する操作は盲目的な操作であり、鉗子40によって把持具100をどのような姿勢で把持しているかわからない場合が多い。したがって、図7(a)のような、鉗子40が斜め横方向から把持具100を把持することも、しばしば起こる。
【0031】
図7(a)に示す把持状態は、は、鉗子40が把持具100のうち本体部10の誘導部12に形成された滑り面12aを斜め横方向から把持した状態である。ここで、誘導部12は硬質プラスチック(ポリカーボネート樹脂)で形成されており、また滑り面12aは滑らかに形成されているため、鉗子40は、自らが発生する把持力によって滑り面12a上を滑る。また、滑り面12aは、大径端面12bから小径端面12cに向かって外径が小さくなるように形成されているため、鉗子40は、大径端面12b側から小径端面12c側へと図の矢印Bのように滑る。そして、小径端面12cから本体部10を滑落する。
【0032】
小径端面12cには貫通通路13が開口しており、この開口からは把持部20が突出している。したがって、小径端面12cから滑落した鉗子40は、滑落した先で把持部20を把持することになる。この状態を、図7(b)に示す。このように、鉗子40がたとえ本体部10を把持した場合においても、滑り面12aによって鉗子40が把持部20まで誘導され、最終的に鉗子40は把持部20を把持することになる。つまり、誘導部12は、鉗子40を把持部20に誘導する機能を有する。このため、鉗子40で確実に把持部20を把持することができる。
【0033】
鉗子40が把持部20を把持したのを操作者が確認したら、次に、鉗子40を人体から引き抜く。この場合において、鉗子40は、人体に形成された小腔から引き抜かれるので、引き抜く方向も小腔が形成されている部分に沿って引き抜かれる。例えばこの方向を図7(b)の矢印C方向とする。図に示すように、矢印C方向は排液チューブAの向きとは異なった方向とされている。鉗子40が図示矢印C方向に引き抜かれると、鉗子40に把持された把持部20が鉗子40とともに移動する。また、把持部20に連結した連結部30が貫通通路13および排液チューブA内から所定長さだけ引き出される。また、連結部30は軟質樹脂で形成されており、屈曲可能であるので、引き出された部分は図7(c)のように屈曲する。
【0034】
さらに鉗子40が引き抜かれると、それに伴って連結部30が排液チューブAおよび貫通通路13から引き出され、やがて、図7(d)に示すように、連結部30の末端に位置するストッパ32が本体部10の接続口部11に形成された一方端面11aに当接し、係合する。この係合により本体部10と連結部30とが連結され、把持部20は連結部30により本体部10と連結された状態となる。また、この当接で、連結部30が本体部10から脱落するのを防止するとともに、連結部30の棒状部31がそれ以上引き出されるのが規制される。このため、棒状部31の既に引き出された部分が鉗子40から引っ張り力を受けて緊張し、図に示すように、本体部10から突出した部分で屈曲するとともに、その先の部分が鉗子40の引き抜き方向に沿うように伸ばされる。このような状態では、連結部30の棒状部31に引き抜き方向に沿って引っ張り力が作用した状態とされ、この引っ張り力は連結部30から本体部10に伝達される。このため、本体部10は引き抜き方向に沿って連結部30に牽引される状態となる。
【0035】
このとき、本体部10は連結部30から引き抜き方向への外力を受けるため、この外力のモーメントで引き抜き方向に向くように方向転換する。ここで、本体部10は排液チューブAの一端に取り付けられているから、上記モーメントにより、排液チューブAも本体部10とともに引き抜き方向に向くように矢印D方向に回転力を受け、方向変換される。このようにして、本発明の把持具100を用いることにより、排液チューブAが鉗子40による引き抜き方向に方向変換される。この状態を図7(e)に示す。
【0036】
したがって、鉗子40が小腔から引き抜かれると、それに連なって把持具100および排液チューブAが小腔から引き抜かれるが、排液チューブAは引き抜き方向に沿って導出されるため、小腔の周囲の部位に引っかかるなどの干渉を起さず、速やかに引き抜くことができる。このため、形成面積の小さい小腔から確実に排液チューブAを導出することができる。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、把持具100は、排液チューブAの一端に固定される本体部10と、鉗子40によって把持される把持部20と、屈曲可能であるとともに本体部10と把持部20とを連結する連結部30とを備えるように構成している。したがって、上述のように作用して排液チューブAを鉗子40による引き抜き方向に方向変換させることができ、鉗子40に伴って排液チューブAを人体から導出させる際に、小腔を通過するときの通過断面積を十分小さくすることができる。よって、確実に排液チューブAを導出することができる。
【0038】
また、本体部10には、排液チューブAの内部に面する一方端面11aから排液チューブAの外部に露呈している小径端面12cにかけて貫通した貫通通路13が形成されており、連結部30は、貫通通路13内を挿通して配置され、その一端が排液チューブAの内部に位置するとともにその他端に把持部20が連結されるように構成されている。また、連結部30の上記一端には、本体部10に一方端面11a側から係合することによって本体部10と把持部20とを連結するとともに、連結部30が本体部10から抜け落ちるのを防止するストッパ32が取り付けられている。したがって、連結部30を本体部10の貫通通路13および排液チューブA内に収納しておくことができ、連結部30の配置スペースを節約でき、コンパクトに把持具100を構成できる。
【0039】
また、鉗子40で把持部20が把持されて引き抜かれる際に、連結部30が貫通通路13および排液チューブA内から引き出されて排液チューブから導出されるので、把持部20と本体部10とを連結部30の引き出し長さ分だけ離間させることができる。このため、鉗子40による引き抜きの最中に鉗子40が本体部10に干渉することがない。よって、上記干渉によって本体部10および排液チューブAの方向転換が阻害されるのを防止することができる。
【0040】
また、把持部20には、複数の突起部21が接続部22をスペーサとして間隔を置いて配置されている。このため、鉗子40が把持部20を把持するときに、鉗子40はいずれかの突起部21に係合し、確実に把持部20を把持することができる。また、本体部10の誘導部12には滑り面12aが形成されており、鉗子40が滑り面12aを把持した場合に、鉗子40は滑り面12aを滑って把持部20に誘導される。この滑り面12aにより、鉗子40が本体部10を把持しても、最終的には把持部20に行き着いて、把持部20が確実に把持できる構成とされる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態につき説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本体部10の形状につき、上記実施の形態では図3に示すような形状に基づき説明したが、図8に示すように、接続口部11を円筒形状にしたり、また滑り面12aの傾斜角度を変えたりして種々変更することができる。さらに、把持部20の形状、特に突起部21の形状も、図9に示すように、球状、直方体状としてもよい。また、ストッパ32の形状も、図9に示すような円錐状、球状のようにすることもできる。これらの変更は、本発明に従う作用効果を奏する形状であれば、いかなるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る把持具の正面図である。
【図2】図1におけるA方向矢視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る本体部の正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る把持部および連結部の正面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る把持具に排液チューブを取り付けた状態の正面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る誘導部の小径端部付近の拡大図である。
【図7】本発明の実施形態における、鉗子によって排液チューブを引き抜く際の動作を示す図である。
【図8】本発明の実施形態における、本体部の他の例を示す正面図である。
【図9】本発明の実施形態における、把持部および連結部の他の例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0043】
10…本体部、11…接続口部、11a…一方端面、12…誘導部、12a…滑り面、12b…大径端面、12c…小径端面、13…貫通通路、13a…縮径部、20…把持部、21…突起部、21a…突起部、22…接続部、30…連結部、31…棒状部、32…ストッパ、40…鉗子、100…把持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内の排液を体外に排出するための可撓性の排液チューブの一端に取り付けられ、体内に留置された前記排液チューブの一端側を体外に引き抜くための引き抜き部材によって把持される把持具において、
前記排液チューブの一端に固定される本体部と、
前記引き抜き部材によって把持される把持部と、
屈曲可能であるとともに前記本体部と前記把持部とを連結する連結部とを備えることを特徴とする把持具。
【請求項2】
請求項1に記載の把持具において、
前記本体部は、前記排液チューブの内部に面する内表面部と、前記排液チューブの外部に露呈している外表面部とを有するとともに、前記内表面部から前記外表面部にかけて貫通した貫通通路が形成されており、
前記連結部は、前記貫通通路内を挿通して配置されており、一端が前記排液チューブの内部に位置するとともに他端に前記把持部が連結され、前記一端には、前記本体部に前記内表面部から係合することによって前記連結部が前記本体部から抜け落ちるのを防止するストッパが取り付けられていることを特徴とする把持具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の把持具において、
前記把持部には、複数の突起部が間隔を置いて配置されていることを特徴とする把持具。
【請求項4】
請求項3に記載の把持具において、
前記突起部は、球状、直方体状、円錐台形状のいずれかの形状を呈していることを特徴とする把持具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の把持具において、
前記本体部には、前記引き抜き部材が前記本体部を把持した場合に、滑りによって前記引き抜き部材を前記把持部に誘導する滑り面が形成されていることを特徴とする把持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−185441(P2007−185441A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7828(P2006−7828)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000228888)日本シャーウッド株式会社 (170)
【Fターム(参考)】