説明

把持機構指標を有するフィルタ式顔面装着呼吸マスク

【課題】適合目的でマスクを把持すべき場所をすぐに識別する分かりやすい方法をユーザーに提供すること。
【解決手段】ハーネス14と、マスク本体12と、第1のフランジ30a及び第2のフランジとを有するフィルタ式顔面装着呼吸マスク10。マスク本体12は濾過構造体16を含み、第1及び第2のマスク本体の側部に配置される第1及び第2のフランジのような把持機構を有する。第1及び第2のしるしは、第1及び第2のフランジ上にそれぞれ設置される。呼吸マスクのマスク本体の把持機構の上にしるしを設けることは、着用者に、着用、取り外し、及び調整の間にマスクを把持すべき場所を知らせるのに有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク本体上に位置付けられる把持機構を有する呼吸マスクに関する。把持機構は、着用する、若しくは取り外す、又は調整するために、ユーザーがマスク本体を把持すべき場所の目安を提供するしるしを含む。
【背景技術】
【0002】
呼吸マスクは一般に、(1)不純物又は汚染物質が着用者の呼吸器系に入るのを防ぐこと、並びに(2)他の人又は他の物が、着用者によって吐き出された病原体及び他の汚染物質にさらされることから守ること、の2つの一般的目的の少なくとも1つのために、人の呼吸経路を覆って着用されるものである。第1の状況では、呼吸マスクは、空気が着用者にとって有害な粒子を含んでいる環境、例えば、自動車車体修理工場において着用される。第2の状況では、呼吸マスクは、他の人又は他の物に対する汚染の危険性がある環境、例えば、手術室又はクリーンルームにおいて着用される。
【0003】
これらの目的のいずれか(又は両方)を満たすためのさまざまな呼吸マスクが設計されてきた。これら呼吸マスクの一部は、マスク本体自体がフィルタ機構として機能するため、「フィルタ式顔面装着」として分類されてきた。取り付け可能なフィルタカートリッジと共にゴム又はエラストマーのマスクを使用する呼吸マスク(例えば、米国再発行特許第39,493号(Yuschak et al.)及び米国特許第4,098,270号(Dolby)を参照のこと)又はインサート成形されたフィルタ要素(例えば、米国特許第4,790,306号(Braun)を参照のこと)とは異なり、フィルタ式顔面装着呼吸マスクは、フィルタカートリッジを取り付ける又は交換する必要がないように、濾材がマスク本体のほぼ全体を覆うように設計される。フィルタ式顔面装着呼吸マスクは、一般に、2種類の構造、即ち、成型呼吸マスク及び平坦折り畳み式呼吸マスクの一方の形式を取る。
【0004】
成型フィルタ式顔面装着呼吸マスクは、マスク本体にカップ状の構造を与えるために、熱接着繊維の不織ウェブ又は透かし編目のプラスチックメッシュを通常含んできた。成型呼吸マスクは、使用中及び保管時の双方で同一の形状を維持する傾向がある。成型フィルタ式顔面装着呼吸マスクを開示している特許の例には、米国特許第7,131,442号(Kronzer et al.)、同第6,923,182号、同第6,041,782号(Angadjivand et al.)、同第4,850,347号(Skov)、同第4,807,619号(Dyrud et al.)、同第4,536,440号(Berg)、及び米国意匠特許第285,374号(Huber et al.)が挙げられる。
【0005】
平坦折り畳み式呼吸マスクは、その名前が暗に示しているように、出荷及び保管のために折り畳まれることができ、使用するためにカップ状の構造に開くことができる。米国特許第6,568,392号及び同第6,484,722号(Bostock et al.)並びに同第6,394,090号(Chen)は、平坦折り畳み式呼吸マスクの例を開示している。
【0006】
呼吸マスクを着用する前に、呼吸マスクの着用者が使用説明書を読んで理解することがとても重要である。例えば、ユーザーが平坦折り畳み式呼吸マスクに不慣れであることは、不適当な取り扱い、並びに着用及び取り外しの手違いを引き起こす場合がある。このような誤った使用は、不適切かつ不快な適合をもたらす場合があり、このことが、保護の欠如をもたらす可能性があり、また、呼吸マスクに対するユーザーの認識を低下させる可能性がある。
【0007】
一部のフィルタ式顔面装着呼吸マスクは、ユーザーの着脱を補助するための把持機構を備えてきた。米国特許第6,948,499号及び同第6,945,249号(Griesbach,III et al.)は、このようなフィルタ式顔面装着呼吸マスクの例を開示している。この呼吸マスクには「タブ」の形態の把持機構が備わっているが、把持機構は、ユーザーに、着用、取り外し、及び調整操作の間にマスクを把持すべき場所を直感的に知らせるあらゆるタイプのしるしを含まない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、把持機構は見てすぐに分かるものではない場合が多く、その結果、着用者に使用されない場合が多い。しかしながら、以下に記載のように、本発明は、適合目的でマスクを把持すべき場所をすぐに識別する分かりやすい方法をユーザーに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(a)ハーネスと、(b)把持機構がその上に位置付けられるマスク本体であって、把持機構が、適合のためにマスク本体を把持すべき場所の目安を提供するためのしるしを有する、マスク本体と、を備える、新しいフィルタ式顔面装着呼吸マスクを提供する。
【0010】
本発明者らは、把持機構の上のしるしの使用は、着用者の顔への密着適合を達成しかつ維持するのに有益であることを発見した。把持機構は、着用、及び続く調整及び取り外しの間、その上で着用者の指がマスク本体を容易に把持してマスク本体を適切に位置決めすることができる、固体表面を提供する。しるしは、把持機構が位置付けられている場所の目安、及びこれらの適合操作の間の機構の把持の仕方の目安を着用者に提供し、その結果、着用者のトレーニングを容易にする。
【0011】
文字ではなくイメージが、さまざまな製品の操作に関する情報をユーザーに伝えるためのますます一般的な手段になってきている。多くのイメージが普遍的な承認を獲得してきた。本発明においてしるしの意図するところは、再配置する及び取り外すときにマスク本体を保持するための呼吸マスク上の正しい場所の連想を、ユーザーの考えのなかに創り出すことである。しるしは、例えば、指紋の紋様という形をとってもよい。指紋の紋様は、溶着領域と非溶着領域との間のコントラスト、又はイメージとして見られるように、超音波結合された材料の領域内に組み込まれることができ、更に、これらの領域のマスクの厚さを変化させることによって、着用者の指先で感知されてもよい。しかしながら、イメージはまた把持機構の上に印刷されて、マスクの残りの部分との視覚コントラストを更に大きくすることができる。しるしが概ね円形である場合、三日月形状、又は更には小径穴を把持機構に切り込むことによって効果を得ることができ、この穴又は開口部は、汚染された表面から離して簡単に保管するためにマスクを釘又はフックに掛けることができるといった追加的な機能、又は更には分配方法としての追加的な機能を有する。
【0012】
用語
以下に記載される用語は、定義されるような意味を持つ。
【0013】
「二分する」は、ほぼ等しい2つの部分に分けることを意味する。
【0014】
「含む(又は、含んでいる)」は、特許専門用語において標準であるその定義を意味し、「備える」、「有する」、又は「含有する」とほぼ同義であるオープンエンド型の用語である。「備える」、「含む」、「有する」及び「含有する」、並びにこれらの変形は、一般的にオープンエンド型の用語であるが、本発明は、「本質的に〜から成る」等のより狭義の用語を使用して適切に記載することもでき、これは、本発明の呼吸マスクがその意図される機能を果たす際の性能に対して悪影響を及ぼす物体又は要素のみを除外するという点で、オープンエンド型の用語に準ずる用語である。
【0015】
「清浄な空気」は、汚染物質を取り除くために濾過された、ある体積の大気中の周囲空気を意味する。
【0016】
「汚染物質」は、粒子(粉塵、ミスト及びフュームを含む)及び/又は一般には粒子とみなされない場合もあるが(例えば、有機蒸気等)、空気中に浮遊していることがある他の物質を意味する。
【0017】
「横断寸法」は、呼吸マスクを正面から見たときに、呼吸マスクの側方から側方まで横方向に延びる寸法を意味する。
【0018】
「カップ状の構造」は、人の鼻及び口を適切に覆うことが可能な任意の容器型の形状を意味する。
【0019】
「外部気体空間」は、吐き出された気体が、マスク本体及び/又は呼気弁を通過し、それらを越えた後に入る、周囲大気中の気体空間を意味する。
【0020】
「フィルタ式顔面装着」は、マスク本体自体が、マスク本体を通過する空気を濾過するように設計され、マスク本体にこの目的を達成するための別個の識別可能なフィルタカートリッジ又はインサート成型されたフィルタ要素が取り付けられていない、又は成型されていないことを意味する。
【0021】
「フィルタ」又は「フィルタ層」は、通気性材質の1つ以上の層を意味し、その層は、それを通り抜ける空気流から汚染物質(粒子など)を除去するという主目的に適している。
【0022】
「濾材」は、それを通過した空気から汚染物質を取り除くために設計された通気性構造体を意味する。
【0023】
「濾過構造体」は、濾材又はフィルタ層、及び所望によりその他の層を含む構成体を意味する。
【0024】
「第1側部」は、マスク本体を横断寸法に対して垂直に二分する平面の一方の側に位置するマスク本体の領域を意味する。
【0025】
「適合」は、着用する、取り外す、又はマスク本体の位置を調整する、のうちの1つ又はこれらの組み合わせを意味する。
【0026】
「フランジ」は、人が把持するのに十分な表面積を有する突出部を意味する。
【0027】
「正面方向に」は、マスク本体が折り畳まれた状態のときに、マスク本体周辺部から離れて延びることを意味する。
【0028】
「ハーネス」は、マスク本体を着用者の顔面上で支持する助けとなる構造体又は部品の組み合わせを意味する。
【0029】
「しるし」は、識別マーク、パターン、画像、開口部、材質、又はこれらの組合せを意味する。
【0030】
「一体的(integral)」は、同時に一緒に製造されていること、即ち、一部分として一緒に作製され、後に一緒に接合される別個に製造された2つの部分ではないことを意味する。
【0031】
「内部気体空間」は、マスク本体と人の顔面との間の空間を意味する。
【0032】
「横方向に」は、マスク本体が折り畳まれた状態のときに、マスク本体を横断寸法に対して垂直に二分する平面から離れて延びることを意味する。
【0033】
「境界線」は、折り目、継ぎ目、溶着線、接着線、ステッチ線、ヒンジ線及び/又はこれらの任意の組み合わせを意味する。
【0034】
「マスク本体」は、人の口及び鼻を覆って適合し、外部気体空間から内部気体空間を分離して画定する助けとなる通気性の構造体(層及び部品を互いに接合させる継ぎ目及び結合部を含む)を意味する。
【0035】
「ノーズクリップ」は、少なくとも着用者の鼻の周りの密封性を高めるために、マスク本体上で使用するように適応した(ノーズフォーム以外の)機械的装置を意味する。
【0036】
「周辺部」は、マスク本体の外側縁部を意味し、人が呼吸マスクを着用したときに、この外側縁部は、一般に着用者の顔に隣接して配置される。
【0037】
「プリーツ」とは、それ自体の上に折り返しできるように設計された、又は折り返されている部分を意味する。
【0038】
「ポリマー」及び「プラスチック」はそれぞれ、1つ以上のポリマーを主に含み、同様に他の成分も含有してよい材料を意味する。
【0039】
「複数」は、2つ以上を意味する。
【0040】
「呼吸マスク」は、呼吸するための清浄な空気を着用者に提供するための、人が着用する空気濾過装置を意味する。
【0041】
「第2側部」は、マスク本体を横断寸法に対して垂直に二分する平面の一方の側に位置するマスク本体の領域を意味する(第2側部は第1側部に対向している)。
【0042】
「密着適合」又は「密着して適合する」とは、本質的に気密な(又は実質的に漏れのない)適合が(マスク本体と着用者の顔面との間に)もたらされることを意味する。
【0043】
「タブ」は、別の構成要素に取り付けるための十分な表面積を呈する部位を意味する。
【0044】
「横断方向に延びている」は、ほぼ横断寸法方向に延びていることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】人の顔に着用した状態での、本発明によるフィルタ式顔面装着呼吸マスク10の正面斜視図。
【図2】図1に示す呼吸マスク10の平面図。
【図3】拡大平面図。
【図4】図2の線4−4に沿ったマスク本体12の断面図。
【図5】図4の線5−5に沿った濾過構造体16の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明を実用化すると、マスク本体上に配置される把持機構を有するフィルタ式顔面装着呼吸マスクが提供される。しるしは、適合の間にユーザーに把持されるように機構が設計されていることをユーザーが容易に分かることができるように、把持機構上に設置される。把持機構は、開いた構造では、マスク本体から横方向及び正面方向に延びる第1及び第2のフランジを含んでもよい。第1及び第2のフランジは、マスク本体のそれぞれの側部に「取っ手」を提供して、使用中に着用者がマスク本体を適切に位置決めできるようにする。着用者は、所望の顔面適合位置にマスクを移動させるためにマスク本体をつまむ必要がない。このようにフランジは、マスクの調整を達成するためのきわめて簡便な手段を提供する。しるしは、フランジが、着用、取り外し、及び調整の間にマスク本体を把持すべき場所であることをユーザーに知らせる役割をする。
【0047】
図1は、着用者が呼吸するための清浄な空気を提供するために、本発明により使用することができる平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスク10の一例を示す。図示するように、フィルタ式顔面装着呼吸マスク10は、マスク本体12及びハーネス14を含む。マスク本体12は、吸気が着用者の呼吸器系に入る前に通過する濾過構造体16を有する。濾過構造体16は、着用者が清浄な空気を吸い込むことができるように、周囲環境から汚染物質を取り除く。マスク本体12は、頂部18及び底部20を含む。頂部18及び底部20は、境界線22により隔てられている。この特定の実施形態では、境界線22は、マスク本体の中央部の両端間を横断方向に延びるプリーツである。マスク本体12は、上部セグメント24a及び下部セグメント24bを含む周辺部も含む。ハーネス14は、タブ28aにステープル留めされたストラップ26を有する。図示するように、タブ28aは、フランジ30aの一体的部分である。
【0048】
図2は、呼吸マスク10が、マスク本体12の対向する側部に位置決めされた第1及び第の2フランジ30a及び30bを有し得ることを図示している。ストラップ26は、例えば、ステープルを使用して各タブ28a、28bに取り付けられる。フランジ30a及び30bは、マスク本体から横方向及び正面方向に突出し、そうしてユーザーに把持機構を提供する。それぞれのフランジは、マスク本体をx方向で二分する平面Pから離れて延びるという点で、マスク本体から横方向に突出している。フランジ30a及び30bはまた、矢印yで記される方向に、周辺部24aから離れマスク本体12の前側縁部22へ向かって延びるという点で、マスク本体12から正面方向にも延びている。それぞれのフランジが典型的に占める表面積は、約1〜15平方センチメートル(cm)、より典型的には約2〜12cm、更により典型的には約5〜10cmである。それぞれのフランジはまた、典型的にマスク本体から少なくとも2ミリメートル(mm)離れ、より典型的には少なくとも5mm、更により典型的には少なくとも1〜2センチメートル(cm)離れて延びる。フランジ30a、30bは、マスク本体に一体的に、又は非一体的に配置され、マスク本体を含む1つ以上又は全てのさまざまな層を含んでもよい。即ち、フランジは、マスク本体の作製に使用される材料の延出部分であってもよい、又は、硬質若しくは半硬質プラスチックのような別個の材料で作製されてもよい。フランジ30a、30bは、それぞれ、フランジの1つ以上の側部に位置付けられるしるし32a、32bを有する。図のように、しるし32、32は、ユーザーの対置できる指、例えば、親指と人差し指との間でマスク本体を把持できる場所をユーザーに知らせるための、指紋の形態であってもよい。しるしは、他の形状及び形態、例えば、同心円、楕円形、又は矩形を呈することができる。あるいは、しるしは、着用者が対置できる指の間の接触を感じることができるような、フランジに開いた穴を含むことができる。
【0049】
図3は、しるし32b内に設けられてもよい穴33の例を示す。このしるしは、溶接パターン、印字画像、1つ以上の開口部、カットスリット、穿孔、べたつき感、又はこれらの組み合わせで形成される。しるしは、典型的には約1〜6平方センチメートル(cm)、より典型的には約2〜4cmの表面積を占める。インクなどの別のアイテムをマスク本体の表面に加えてしるしを形成してもよいが、しるしは、典型的には、マスク本体自体の材料から一体的かつ排他的に、例えば、溶接パターンとして形成される。しるしは、それぞれのフランジの対向する主表面にある、目立つ溶接パターンであってもよい、即ち、溶接部はフランジの厚さを通って延在する。したがって、マスク本体を含む層は、把持機構の上部又は底部表面から溶接パターンが目立つように、共に溶接されてもよい。一体的フランジは、フランジの剛性を高めるためにフランジ上に備わる追加的な溶着部又は接着部34を有し得る。あるいは、層と層との間に接着層を使用してフランジの剛性を高めてもよい。以下に記載の、たわみ剛性試験を用いると、フランジの曲げ弾性率は、フランジの主要面に沿って曲げた場合、少なくとも10メガパスカル(MPa)、より典型的には、少なくとも20MPaであってよい。上端部での曲げ弾性率は、典型的には100MPa未満、より典型的には、60MPa未満である。これらの数値(すなわち、上限及び下限の双方での)は、試験を試料の縁部に沿って行なった場合の約2倍の大きさである。フランジの剛性は、修正ASTM D790法「Flexural Properties of Unreinforced and Reinforced Plastics and Electrical Insulating Materials」、方法I「Three Point Bend Testing」を用いて測定してもよい。曲げ弾性率は、ASTM D790に従い、応力ひずみプロット図の線形領域で算出することができる。図2においてタブ28a及び28bは、周辺セグメント24aの一部となる共有の縁部を有するように図示されているが、これらタブは、図1に示すように、マスクが着用者の顔面上に置かれた場合、マスク本体周辺部の顔面接触する周辺部を超えて延びていてもよい。顔面接触する周辺部は、通常、ブラケット状領域35内部に存在し、そのためタブ周辺部の一部ではない。マスク本体周辺部は、マスク本体12のさまざまな層を互いに接合するための一連の接着部又は溶着部34’を有してもよい。フランジ30a、30bが濾過構造体16と接する場所に、固着線36が更に設けられてもよい。上部18は、マスク本体の第1の側部からマスク本体の第2の側部まで延びる少なくとも1つの折り目線38を含んでもよい。一体的フランジ以外のその他の把持機構の例には、フラップ、ループ、及びポストなどの、マスク本体に取り付けられる他の構成要素の追加が挙げられ、プラスチック射出成形部分;プラスチック、金属、及び/又はセルロース材料で作製されるダイカット部分;機械的なクリップ留め装置;プラスチック、金属、及び/又はセルロース材料で作製される接着付着された装置;及び取り付けプロセスの間に変形するリベットのような機械的に取り付けられた装置;を挙げることができる。「Flat Fold Respirator Having Flanges Disposed On The Mask Body」と題される米国特許出願第12/338,084号は、フランジを把持機構として使用する、本明細書における使用に好適なフィルタ式顔面装着呼吸マスクの例を開示している。
【0050】
図4は、本発明に関連して使用され得るマスク本体12のプリーツ状構造の例を示している。図示のように、マスク本体12は、既に図1及び2を参照して言及したプリーツ22及び38を含んでいる。マスク本体12の上部又はパネル18もまた、プリーツ40を含んでいる。マスク本体12の下部又はパネル20は、プリーツ42、44、46、48、50、及び52を含んでいる。マスク本体12の下部20は、上部18より広い濾材表面積を含んでもよい。マスク本体12はまた、マスク本体の周辺部に沿って固定される周辺ウェブ54を含んでいる。ノーズクリップ56は、マスク本体の上部18の中央で、濾過構造体16と周辺ウェブ54との間の周辺部に隣接して配置されてもよい。ノーズクリップ56は、着用者の鼻の輪郭に適合するように着用者の手作業で調整することが可能となる、柔軟な金属又はプラスチックで作製されてもよい。周辺ウェブ54は、周辺部24a、24bでマスク本体の上に折り重ねてもよい。周辺ウェブ54はまた、縁部24a及び24bの周囲で折り畳まれて固定される内側カバーウェブ58の延出部分であってもよい。あるいは、周辺ウェブは外側カバーウェブ60の延出部分であり得る。図示されるように、上部18は、マスク本体12が折り畳まれた状態では、プリーツ状のパネルのように見え、同様に下部20(図1)も、マスクが折り畳まれた保管状態では、プリーツ状のパネルのように見える。本発明による平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスクを提供するために、図示されるよりも多い又は少ないプリーツを使用してもよい。
【0051】
図5は、濾過構造体16が、内側カバーウェブ58、外側カバーウェブ60、及びフィルタ層62のような1つ以上の層を含み得ることを図示している。内側及び外側カバーウェブ58及び60は、フィルタ層62を保護し、フィルタ層62からの繊維が緩んでマスク内側に入り込むのを防ぐために備えられてよい。呼吸マスクの使用中、空気はマスク内側に入り込む前に層60、62、及び58を順次通過する。マスクの内部気体空間内に配置された空気は、その後、着用者により吸引されてよい。着用者が息を吐くと、空気は逆方向に層58、62、及び60を順次通過する。あるいは、吐き出された空気が内部気体空間から急速に排除され外部気体空間に入ることを可能にして、空気が濾過構造体16を通過するのを最小限とする呼気弁(図示せず)をマスク本体に備えてもよい。典型的には、カバーウェブ58及び60は、濾過構造体の、特に着用者の顔面と接触する側で、心地よい感覚をもたらす不織布材を選択肢として作製されている。本発明の支持構造体に使用可能なさまざまなフィルタ層及びカバーウェブの構成体の詳細を以下に記述する。着用者への適合及び快適性を向上させるために、エラストマーのフェースシール材を、濾過構造体16の周辺部に固定することができる。このようなフェースシール材は、呼吸マスクを着用したときに、周辺部から内側に向かって放射状に延び、着用者の顔に接触することができる。フェースシール材の例は、米国特許第6,568,392号(Bostock et al.)、同第5,617,849号(Springett et al.)、及び同第4,600,002号(Maryyanek et al.)、並びにカナダ特許第1,296,487号(Yard)に記載されている。濾過構造体はまた、少なくとも1つ以上の層58、60、又は62に対して、典型的には外側カバーウェブ60の外側表面に対して、構造的な網又はメッシュを並置してもよい。そのようなメッシュの使用は、2008年12月18日出願の「Expandable Face Mask with Reinforcing Netting」と題される米国特許出願第12/338,091号に記載されている。
【0052】
本発明に関して使用される濾過構造体は、さまざまな異なる形状及び構造を呈してもよい。通常、濾過構造体の形状及び構造は、マスク本体の全般的形状に対応する。濾過構造体は、フィルタ層及び2つのカバーウェブを含む多層にて図示されているが、濾過構造体は、フィルタ層又はフィルタ層の組み合わせのみから構成されてもよい。例えば、プレフィルタを上流側に配置して、より微細かつ選択的なフィルタ層を下流側に配置することができる。加えて、活性炭などの収着剤材料を、濾過構造体を構成している繊維及び/又はさまざまな層の間に配置することができる。更に、収着層と共に別の粒子フィルタ層を使用して、粒子と蒸気の両方に対するフィルタリングを提供することができる。濾過構造体は、カップ状の構造を提供する補助となる1つ以上の補強層を含んでもよい。濾過構造体はまた、その構造的完全性に貢献する1つ以上の水平及び/又は垂直の境界線を有する場合もある。
【0053】
本発明のマスク本体に使用される濾過構造体は、粒子捕捉タイプ又はガス及び蒸気タイプのフィルタであり得る。濾過構造体はまた、例えば、液体エアロゾル又は液体の飛沫(例えば、血液)がフィルタ層を貫通するのを防ぐために、フィルタ層の一方の側から他方へと液体が移動するのを防止するバリア層であってもよい。用途に応じて、本発明の濾過構造体の構築には、類似の又は異なる濾材の複数の層を使用することができる。本発明の層状マスク本体に有効に使用できるフィルタは、マスク着用者の呼吸労力を最小限に抑えるために、一般に圧力低下が小さい(例えば、面速度毎秒13.8センチメートルで約195〜295パスカル)。フィルタ層は更に可撓性であることができ、予想される使用条件においてそれらの構造を概ね維持するよう、十分な剪断強さを有することができる。粒子捕捉フィルタの例としては、微細な無機繊維(グラスファイバーなど)又はポリマー合成繊維の1枚又はそれより多くのウェブが含まれる。合成繊維ウェブには、メルトブローン法などのプロセスによって製造されるエレクトレット帯電ポリマーマイクロファイバーが含まれる。帯電したポリプロピレンから形成されたポリオレフィンマイクロファイバーは、粒子捕捉用途に特に有用である。別のフィルタ層は、呼吸空気中の有害な又は悪臭のある気体を除去するための吸着剤成分を含んでもよい。吸着剤は、接着剤、結合剤、又は線維構造によりフィルタ層内に拘束される粉末又は顆粒を含んでもよい(米国特許第6,334,671号(Springett et al.)、及び同第3,971,373号(Braun)を参照のこと)。吸着剤層は、繊維性フォーム又は網状発泡体などの基材にコーティングすることにより、薄く密着した層を形成することができる。吸着剤材料としては、活性炭(化学処理済み、又は未処理)、多孔質アルミナ−シリカ触媒基材、及びアルミナ粒子を挙げることができる。さまざまな構造に適合可能な収着性濾過構造体の一例が、米国特許第6,391,429号(Senkus et al.)に記載されている。
【0054】
フィルタ層は、典型的には、所望の濾過効果を達成するように選択される。フィルタ層は、通常、粒子及び/又はその他の汚染物質を、フィルタ層を通過する気体流から高い割合で除去する。繊維性フィルタ層については、通常は、成型作業中に互いに結合してしまわないように、濾過する物質の種類に基づいて選択された繊維が選ばれる。前述したように、フィルタ層はさまざまな形状及び構成で提供されることができ、典型的には、約0.2ミリメートル(mm)〜10mm、より典型的には約0.3mm〜5mmの厚さを有し、また略平面状のウェブであっても、又は波形を付けて、拡張された表面積を提供してもよい(例えば、米国特許第5,804,295号及び同第5,656,368号(Braun et al.)を参照のこと)。フィルタ層には更に、接着剤又は他の任意の方法によって接合された複数のフィルタ層も含まれ得る。基本的に、フィルタ層の形成用として知られている(又は後に開発される)任意の好適な材料を、フィルタ材料として使用することができる。Wente,Van A.の「Superfine Thermoplastic Fibers」(48 Indus.Engn.Chem.,1342 et seq.(1956))に教示されているようなメルトブローン繊維ウェブ、特に、持続的帯電(エレクトレット)型のメルトブローン繊維ウェブは、特に有用である(例えば、米国特許第4,215,682号(Kubik et al.)を参照のこと)。これらのメルトブローン繊維は、約20マイクロメートル(μm)未満(「ブローンマイクロファイバー」をBMFと称する)、一般に約1〜12μmの有効繊維直径を有するマイクロファイバーであってもよい。有効繊維直径は、Davies,C.N.、「The Separation Of Airborne Dust Particles」、Institution Of Mechanical Engineers、ロンドン、会報1B、1952年に従って測定され得る。特に好ましいのは、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)及びこれらの組み合わせから形成される繊維を含むBMFウェブである。米国再特許第31,285号(van Turnhout)に教示されている帯電小繊維化フィルム繊維も適している場合があり、またロジン−ウール繊維ウェブ、及びグラスファイバー若しくは溶液ブローンのウェブ、又は静電スプレー繊維、特にマイクロフィルム形態のものも適している場合がある。電荷は、米国特許第6,824,718号(Eitzman et al.)、同第6,783,574号(Angadjivand et al.)、同第6,743,464号(Insley et al.)、同第6,454,986号及び同第6,406,657号(Eitzman et al.)、並びに同第6,375,886号及び同第5,496,507号(Angadjivand et al.)に開示されているように、繊維を水と接触させることにより、繊維に付与することができる。電荷はまた、米国特許第4,588,537号(Klasse et al.)に開示されているようなコロナ帯電により、又は、同第4,798,850号(Brown)に開示されているような摩擦帯電(tribocharging)により、繊維に付与されてもよい。更に、ハイドロ帯電プロセスにより製造されたウェブの濾過性能強化のため、添加剤を繊維に含めることができる(米国特許第5,908,598号(Rousseau et al.)を参照)。特に、フッ素原子をフィルタ層の繊維表面に配置することにより、油性ミスト環境での濾過性能を改善することができる(米国特許第6,398,847 B1号、同第6,397,458 B1号、及び同第6,409,806 B1号(Jones et al.)を参照のこと)。エレクトレットBMFフィルタ層の典型的な坪量は、1平方メートルあたり約10〜100グラムである。例えば、‘507号特許(Angadjivand et al.)に記載されている技法によって帯電させた場合、またJones et al.の特許に記載されるようにフッ素原子を含む場合、坪量はそれぞれ、約20〜40g/m及び約10〜30g/mとなる。
【0055】
内側カバーウェブは、着用者の顔に接触するために滑らかな表面を提供するのに用いられることができ、また外側カバーウェブは、マスク本体内の遊離繊維を封入するため、又は審美的理由から用いられることができる。カバーウェブは、フィルタ層の外側(又は上流側)に配置されたときにプレフィルタとして機能することができるが、典型的には、濾過構造体に対して何らかの実質的なフィルタ効果を提供するものではない。適度な快適さを得るため、内側カバーウェブは比較的坪量が低く、比較的細い繊維で形成されている。より詳細には、カバーウェブは、坪量約5〜50g/m(典型的には10〜30g/m)を有するように作られてもよく、使用する繊維の平均繊維直径は、多くの場合、約5〜24マイクロメートル、典型的には約7〜18マイクロメートル、より典型的には約8〜12マイクロメートルである。カバーウェブに適した材料としては、ブローンマイクロファイバー(BMF)材料、特にポリオレフィンBMF材料、例えば、ポリプロピレンBMF材料(ポリプロピレン混合物、及びポリプロピレンとポリエチレンとの混合物も含む)及びスパンボンド繊維が挙げられる。本発明で使用されるカバーウェブは好ましくは、処理後にウェブ表面からの繊維の突出が非常に少なく、よって滑らかな外側表面を有する。本発明で用いてもよいカバーウェブの例は、例えば、米国特許第6,041,782号(Angadjivand)、同第6,123,077号(Bostock et al.)及び国際公開第96/28216A号(Bostock et al.)に開示されている。
【0056】
ハーネスに使用されるストラップは、さまざまな材料、例えば、熱硬化性ゴム、熱可塑性エラストマー、編組み又は編込みされた織糸/ゴムの組み合わせ、非弾性の編組み構成要素、及びその他から作製され得る。ストラップは、弾性材料、例えば弾性の編組み材料から形成されてもよい。ストラップは、好ましくはその全長の2倍より大きく拡張され、その弛緩状態に戻り得る。ストラップはまた、その弛緩状態の長さの3倍又は4倍まで延びることが可能であり、かつ張力が取り除かれると、なんら損傷を受けずにその元の状態に戻ることができる。したがって、弾性限度は、ストラップの弛緩状態における長さの2倍、3倍、又は4倍以上であるのが好ましい。典型的には、ストラップは、長さ約20〜30cm、幅3〜10mm、厚さ約0.9〜1.5mmである。ストラップは、連続ストラップとして第1タブから第2タブまで延びてもよく、又はストラップは、更なる締結具又はバックルにより互いに接合され得る複数の部品を有してもよい。例えば、ストラップは、マスク本体を顔面から除去する際に、着用者に迅速に分離され得る締結具により一緒に接合された第一及び第二の部品を有してもよい。本発明に関連して使用し得るストラップの例は、米国特許第6,332,465号(Xue et al.)に示されている。ストラップの1つ以上の部分を一緒に接合するのに使用し得る締結機構又留め金機構の例は、例えば、次の米国特許第6,062,221号(Brostrom et al.)、同第5,237,986号(Seppala)、及び欧州特許第1,495,785A1号(Chien)に示されている。
【0057】
内部気体空間から呼気を排除し易くするために、マスク本体に呼気弁を更に取り付けてもよい。呼気弁の使用は、マスク内部からの暖かい湿った呼気を急速に除去することにより、着用者の心地よさを改善し得る。例えば、米国特許第7,188,622号、同第7,028,689号、及び同第7,013,895号(Martin et al.)、同第7,428,903号、同第7,311,104号、同第7,117,868号、同第6,854,463号、同第6,843,248号、及び同第5,325,892号(Japuntich et al.)、同第6,883,518号(Mittelstadt et al.)、及び同再特許第37,974号(Bowers)を参照。本質的に、呼気を内部気体空間から外部気体空間へと迅速に運搬するために、好適な圧力低下を提供し、かつマスク本体に適切に固定され得る任意の呼気弁を、本発明に関連して使用してもよい。
【0058】
本発明に関して使用されるノーズクリップは、本質的に、着用者の鼻への適合を改善する補助となる任意の追加部品であってよい。この領域における着用者の顔面の輪郭には実質的な変化があるため、ノーズクリップは、マスク本体がこの領域で適切な適合を達成する良好な補助となり得る。例えばノーズクリップは、マスク本体が、着用者の鼻の上及び鼻と頬との間の領域に対して所望の適合関係に保持されるべく成形することができるアルミニウムなどの柔軟で軟らかい帯状の金属を含んでもよい。好適なノーズクリップの一例が、米国特許第5,558,089号及び意匠特許第412,573(Castiglione)に示されている。他のノーズクリップが、米国特許出願第12/238,737号(2008年9月26日出願)、同公開第2007−0044803A1号(2005年8月25日出願)、及び同第2007−0068529A1号(2005年9月27日出願)に記載されている。
【0059】
本発明を特定の平坦折り畳み式マスクを参照して記載してきたが、本発明は、例えば、米国特許第7,069,930号(Bostock et al.)、及び同第6,394,090号(Chen)に示されているもののような他の構造を有する平坦折り畳み式マスクと共に使用されてもよく、又は成形マスクと共に使用されてもよい(例えば、米国特許第7,131,442号(Kronzer et al.)、同第6,923,182号(Angadjivand et al.)、同第6,827,764号(Springett et al.)を参照のこと)。本発明はまた、前掲の成形マスクに関連して使用されてもよい。
【実施例】
【0060】
呼吸マスクの濾過構造体は、3層の不織布材及び他の呼吸マスク構成要素から形成した。マスクを、予備成形品製造工程、及びマスク仕上げ工程の2つの主要な工程で組み立てた。予備成形品製造の段階には、不織繊維ウェブの積層及び固定工程、プリーツ折り目線形成工程、並びにノーズクリップ取り付け工程が含まれていた。マスク仕上げ工程の作業には、エンボス加工された折り目線に沿ってプリーツを折る工程、マスク側縁部を本発明が特許請求するしるしと融着する工程、タブを最終形態に切り出す工程、及びヘッドバンドを取り付ける工程が含まれていた。
【0061】
呼吸マスクの本体は、不織布材の3層、即ち、外側カバーウェブ(205mm×300mm)、フィルタ材料(205mm×300mm)、及び内側カバーウェブ(238mm×300mm)で形成された。外側及び内側カバーウェブは、34グラム/平方メートル(gsm)のポリプロピレンスパンボンド不織布であった。マスク本体に使用したフィルタ材料は、エレクトレット帯電したブローンマイクロファイバーポリプロピレンのウェブであり、坪量59gms、硬度6%、及び有効繊維寸法7.5マイクロメートルであった。
【0062】
層のそれぞれを重ね合わせて呼吸マスク本体を作成し、次にこれを点結合のパターンを用いて互いに超音波溶着した。超音波溶着は、Branson,Danbury,Connecticutから入手の2000型超音波溶着装置を使用し、ホーン振幅、周波数、及び加圧保持時間をそれぞれ、100%、20kHz、及び0.6秒としてラム圧483キロパスカル(kPa)で操作して達成した。平頂角型ペグを備えたアンビルに対して操作し、これらペグは個々のフェース面積が1.6平方ミリメートルで、ペグ中心間が約1センチメートルの間隔で格子状に配列されており、溶着装置の平坦なフェースのホーンをこのアンビルに対して接触圧約6MPaで作動させた。不織布の層を固定し、プリーツの位置を画定する折り目線を、固定した不織布の層にエンボス加工した。折り目線のエンボス加工は、USM Corporation,Haverhill,Massachusettsから入手のダイ打抜き機、Hytronic Cutting Machine Model Bを149000 N(15トン)の力で折り目形成(crease)ルールダイと共に使用して行なった。そのダイは、予備成形品の全長を横断する、縁部にアールが付いた9本のバーを有しており、予備成形品にプレスすると、不織布層に線を作り出した。これらエンボス加工された線は、ウェブを相互に接触点で圧縮したが、材料を貫通又は有意に融着することはなかった。
【0063】
予備成形品製造作業の最終工程として、内側カバーウェブの拡張縁部を予備成形品の縁部に巻き付けて所定の位置に超音波溶着した。超音波溶着は、Branson,Danbury,Connecticutから入手の超音波溶着装置2000X型を使用し、ホーン振幅、周波数、及び加圧保持時間をそれぞれ、100%、20kHz、及び0.5秒としてラム圧448kPaで操作して行った。接触面積4.1平方センチメートルのアンビルに対して、特定のラム圧及びホ−ン条件を用いて操作し、結果的に8.5MPaの接触圧で予備成形品の材料を結合した。予備成形品の周辺縁部の結合に使用したアンビルの区域は、個々のフェース面積が1.6平方ミリメートルの、図2のパターン34’に配列された平頂角型ペグで構成された。溶着装置の平坦なフェースのホーンをこのアンビルに対して作動させ、周辺ウェブを予備成形品に固定した。このプロセスを用いて、ノーズクリップを予備成形品の頂部に取り付け、外側カバーウェブと内側カバーウェブの折り返された縁部との間に封入した。ノーズクリップは、可鍛性で、可塑的に変形可能な、図2に示す形状のアルミニウムの帯で、長さ9cm、幅0.5cm、厚さ1mmであった。
【0064】
マスクの仕上げ工程の作業では、図4に示すように、折り目線に沿ってプリーツが折られた。マスクの中央の折り目より上に位置するプリーツは、マスクを開くと折り目の外側が下方に向くように折られたが、これは着用時にマスクの折り目にごみ等が溜まることを防ぐ助けとなるために行った。予備成形品に適正なプリーツ処理をして中央の折り目を中心に折り、マスクの側縁部(図2の28a及び28b)を融着するため、そして把持しるしを含む補強フランジ(図2の32a及び32b)の結合層を作り出すために、予備成形品を超音波溶着した。超音波溶着は、Branson,Danbury,Connecticutから入手の超音波溶着装置2000x型を使用し、ホーン振幅、周波数、及び加圧保持時間をそれぞれ、100%、20kHz、及び0.8秒としてラム圧483kPaで操作して行った。フランジ材料を結合するためのアンビルの接触区域は、平頂角型ペグで構成されており、それらペグは1.04平方ミリメートルの個々のフェース面積を有し、それらの平坦側面から2.88ミリメートルの間隔を置いて配列され、本発明の特許請求するしるしの形状を含んでいた。得られた結合パターンを図2に30aとして示す。マスクの側縁部の結合を形成するアンビルのバーは長さ95.25ミリメートル、幅9.525ミリメートルであり、結果として得られた結合パターンは図2の36で示される。溶着装置の平坦なフェースのホーンをアンビルに対して作動させ、結果としてのしるし溶着パターン(図2及び図3に示されている)を形成し、フランジの結合層を作り出した。アンビルの傾斜バー要素がマスクの側縁部を封止し、ピン溶着表面がフランジ材料を融着させて堅固化した。マスク仕上げ作業の最終工程として、この補強フランジを所望の形状に切り出し、ヘッドバンドをタブにステープル留めした。フランジは幅1.0cm、長さ5.0cmで、ヘッドバンドを取り付けるタブ部分に位置決めされる0.5cmのアールが付いたヘッド部を備えていた。ヘッドバンドは、Stanley Bostitch,East Greenwich,Rhode Islandから入手の手持ちホチキスP6C−8型、及び亜鉛めっきのホッチキス針No.STH5019 0.635cm(1/4インチ)を使用してタブのアールが付いたヘッド部に取り付けた。マスクからフランジの切片を切り出し、たわみ剛性試験で概説した方法に従い試験を行なった。フランジ切片の試験は、試料の平坦面に沿った方向、及びフランジ全長に沿って配向される試料の縁部に沿った方向の2つの配向で行った。試料の平坦表面に沿って曲げた場合、曲げ弾性率は27MPaであった。試料の縁部に沿って曲げた場合、曲げ弾性率は66MPaであった。ヘッドバンドは、幅7.9mm、厚さ0.8mmでProvidence Braid Co.,Pawtucket,Rhode Islandから入手の試料番号125−1であった。フランジは、マスク本体への取付け線に平行な軸を中心に回転可能であり、開いて着用した際、より強固なマスク本体を提供した。フランジの上に設けられたしるしは、マスク本体を把持すべき場所の目安として容易に見ることができる。
【0065】
本発明は、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、さまざまな変形及び変更を加えられてもよい。したがって、本発明は、上記に限定されず、添付された請求項及びすべてのその等価物に記述する制限によって規制される。
【0066】
更に本発明は、ここに具体的に開示されていない要素がなくとも適切に実施可能であり得る。
【0067】
上記の全ての特許及び特許出願は、「背景技術」部分のものを含め、全体的に参考として本明細書に組み込まれる。そのような組み込まれる文献の開示と上記明細書との間に不一致又は矛盾がある限りにおいては、上記明細書が優先する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ式顔面装着呼吸マスクであって、
(a)ハーネスと、
(b)把持機構がその上に位置付けられるマスク本体であって、前記把持機構が、適合のために前記マスク本体を把持すべき場所の目安を提供するためのしるしを有する、マスク本体と、を備える、フィルタ式顔面装着呼吸マスク。
【請求項2】
前記マスク本体が、前記マスク本体と一体に形成される第1及び第2のフランジを含み、前記第1及び第2のフランジが、各フランジの対向する主表面上で目立つ第1及び第2のしるしを有する、請求項1に記載のフィルタ式顔面装着呼吸マスク。
【請求項3】
フィルタ式顔面装着呼吸マスクの製造方法であって、
(a)把持機構がその上に位置付けられるマスク本体を提供する工程と、
(b)適合目的で前記マスク本体を把持すべき場所の目安を呼吸マスクのユーザーに提供するために、前記把持機構の上にしるしを設ける工程と、
(c)ハーネスを前記マスク本体に固定する工程と、を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−92698(P2011−92698A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−209645(P2010−209645)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】